廃水処理における不溶化アルミニウム化合物の低減方法ならびに装置
【課題】 フッ素含有廃水処理で発生するアルミニウム化合物を含有するスラッジの処理において、アルカリ不溶化合物の生成を抑え、再利用できるアルミニウムの回収率を上げる方法ならびに装置を提供する。
【解決手段】 前記スラッジのアルミニウム溶出工程の前に該スラッジに含まれるイオン性カルシウムの当量以上の炭酸塩を該スラッジに投入することと、該スラッジのpHを8以上9.5以下に調整して反応させることと、該スラッジからアルミニウムを溶出する工程における、該スラッジのpHを10以上12.5以下に調整することを特徴としたアルミニウム化合物の回収方法、および該方法を含む廃水処理方法。ならびに前記各手段を備えたアルミニウム化合物の回収装置。
【解決手段】 前記スラッジのアルミニウム溶出工程の前に該スラッジに含まれるイオン性カルシウムの当量以上の炭酸塩を該スラッジに投入することと、該スラッジのpHを8以上9.5以下に調整して反応させることと、該スラッジからアルミニウムを溶出する工程における、該スラッジのpHを10以上12.5以下に調整することを特徴としたアルミニウム化合物の回収方法、および該方法を含む廃水処理方法。ならびに前記各手段を備えたアルミニウム化合物の回収装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、廃水処理に利用されたアルミニウム系凝集剤の再生方法に関し、特にフッ素や燐を含有する廃水の処理に使用されたアルミニウム系凝集剤を対象として、回収されたアルミニウム化合物を含有するスラッジより、アルミニウム成分を溶解させて不溶成分と溶解性分を分離し、溶解したアルミニウム成分を再度廃水処理の凝集剤として利用する分野における不溶性アルミニウム化合物を低減して回収率を上げる方法に関する。
【0002】
【従来の技術】図4を用いてフッ素廃水の処理技術について説明する。
【0003】フッ素廃水の処理方法として図4に示すCaF2生成工程、Al(OH)3生成工程および固液分離工程で構成さた技術が知られている。即ち、CaF2生成工程は、フッ素廃水にCaを加えてFイオンとCaイオンを反応させて固体のCaF2にする工程であり、Fイオン濃度として約10ppm程度まで処理される。フッ素含有廃水が燐含有廃水である場合も、同様にCaを加えて燐とカルシウムの塩を生成させて除去することが知られている。
【0004】次にAl(OH)3生成工程では、前記CaF2として除去しきれなかった残留Fイオンを取り除くために、廃水にアルミニウム水溶液(例えば硫酸アルミニウム(硫酸礬土)やポリ塩化アルミニウム溶液)を添加して、pH6〜8程度にして水酸化アルミニウムの固体を生成させて、この固体にFイオンを吸着させて除去するものである。
【0005】この場合、添加するアルミニウムの量は廃水中に含まれるFイオン濃度や処理したい濃度によって適宜決定されるが、通常はアルミニウム濃度として数十ppm程度であり、これより少なく添加した場合は、Fイオンを吸着除去する目的よりは、生成したCaF2の凝集を助け沈降性を向上させることが主たる目的である。
【0006】また、廃水に燐酸イオンが含まれている場合は、Fイオンのみならず燐酸イオンもまた水酸化アルミニウムの固体に吸着して除去される。
【0007】固液分離工程では、生成したCaF2、Al(OH)3*F(フッ素を吸着した水酸化アルミニウム、Al(OH)(3-m)Fm)と水分を分離し、分離された水は放流し、固体(スラッジ)は通常廃棄物として回収される。尚、図4ではCaF2生成工程とAl(OH)3生成工程を別々に示しているが、この工程を同時に行ってもかまわない。
【0008】従って、上記フッ素処理工程で廃棄されるスラッジは、CaF2やAl(OH)3*Fを主成分とするものであり、この中からアルミニウム成分を回収して再度利用する技術として特開平1-107890号公報や特開平10-5769号公報が知られている。
【0009】図3を用いて、スラッジからアルミニウム成分を回収し再度利用する方法を説明する。
【0010】アルミニウム成分を回収する方法は図3に示すように、フッ素処理工程とスラッジのアルミニウムを回収するアルミニウム回収工程、および回収したアルミニウム水溶液をフッ素処理工程に再度利用する工程により構成されている。
【0011】フッ素処理工程は、前記図4に示した工程と同じであり、アルミニウム回収工程は、図6に示すように、少なくともアルミニウム溶解工程、固液分離工程で構成される。
【0012】アルミニウム回収工程について、図6を用いて説明する。
【0013】アルミニウム溶解工程とは、特開平1-107890号公報によればスラッジに水酸化ナトリウムを加えてpHを7以上好ましくは9以上にして水溶性アルミニウムを生成させる工程であり、特開平10-5769号公報によれば、スラッジに水酸化ナトリウムを加え、pHを10以上にすることとされている。そして固液分離工程において溶解したアルミニウム成分(以下アルミニウム水溶液と称す)と溶解しなかったスラッジを分離し、アルミニウム水溶液をフッ素処理工程で利用するものである。
【0014】アルミニウム回収工程において、スラッジ中にイオン性カルシウムが含まれていると、アルミニウムとカルシウムが結合し、アルカリにしても溶解しない物質、例えばCaAl2O4{またはCa(Al(OH)4)2}などが生成するため、再利用できる水溶性アルミニウムの量が低減してしまう。このため、アルカリで溶解する前にカルシウムイオンを除去する必要があり、特開平10-5769号公報では、図6に示すように、アルミニウム溶解工程の前に炭酸処理工程を導入し、アルカリにする前に炭酸塩を好ましくは炭酸水素ナトリウムをスラッジに添加しイオン性のカルシウムをCaCO3として固体化し除去する工夫がなされている。
【0015】また、同じく特開平10-5769号公報では回収するアルミニウムよりフッ素を除去するために、図6に示したスラッジ濃縮工程やカルシウム処理工程を付加している。
【0016】即ち、スラッジ濃縮工程は、スラッジの水分を取り除く目的で行われ、これ以降のカルシウム処理工程、炭酸処理工程、アルミニウム溶解工程での薬剤投入量の削減と、カルシウム処理工程でのCaF2の生成効率をあげることに寄与するものである。
【0017】またカルシウム処理工程は、スラッジに吸着しているFイオンをカルシウムと反応させてCaF2として脱着し、固体化させるために行われ、スラッジの水分が少ないほど効率的に行われる。なぜなら、スラッジに吸着しているFイオンが水溶液に脱着した場合、水分の量が少ないほどFイオン濃度は大きくなり、カルシウムとの反応が効率的に行われるからである。
【0018】
【発明が解決しようとする課題】しかし、炭酸イオンはpHにより解離状態が変化する物質であり、CaCO3を効率よく生成させるためには、pHをアルカリ側にする必要がある。一方、pHをアルカリ側にすると、カルシウムイオンは炭酸イオンとの反応だけでなく、アルミン酸イオン{AlO2-または(Al(OH)4)-}との反応も進行してしまい、アルカリにしても溶解しないCaAl2O4が生成する。このため、沈殿スラッジに炭酸塩を添加してpHを10以上にするという従来の炭酸処理操作では、アルミニウムの不溶化を防ぐことはできないため、再利用できるアルミニウムの回収率が小さいものであった。
【0019】本発明の目的は、アルミニウム化合物を含有するスラッジをアルカリで溶解する際、不溶性のアルミニウムを低減させて、再利用するアルミニウムの回収率を増加させることである。
【0020】
【課題を解決するための手段】即ち、本発明は、フッ素および/または燐の除去を目的としたシステムにおいて用いられる、アルミニウム化合物の回収方法であって、アルミニウム化合物を主成分とし、カルシウム、およびフッ素および/または燐を含有するスラッジを処理してアルミニウム成分を溶解させる工程と、不溶成分と溶解成分を分離する工程とを有する、アルミニウム化合物の回収方法において、アルミニウム溶出工程の前に該スラッジに含まれるイオン性カルシウムの当量以上の炭酸塩を該スラッジに投入することと、該スラッジのpHを8以上9.5以下に調整して反応させることと、該スラッジからアルミニウムを溶出する工程における、該スラッジのpHを10以上12.5以下に調整することを特徴としたアルミニウム化合物の回収方法であり、また該アルミニウム化合物回収方法を含む、廃水からのフッ素および/または燐除去方法である。
【0021】さらに、フッ素および/または燐の除去を目的とした装置におけるアルミニウム化合物の回収装置であって、アルミニウム化合物を主成分とし、カルシウム、およびフッ素または燐を含有するスラッジを導入する手段と、該スラッジを処理してアルミニウム成分を溶解させる手段と、不溶成分と溶解成分を分離する手段と、溶解したアルミニウム成分を含む溶液を送り出す手段を有するアルミニウム化合物の回収装置において、アルミニウム溶出の前に該スラッジに含まれるイオン性カルシウムの当量以上の炭酸塩を該スラッジに投入する手段と、該スラッジのpHを8以上9.5以下に調整して反応させる手段と、該スラッジからアルミニウムを溶出する際に該スラッジのpHを10以上12.5以下に調整する手段を有することを特徴としたアルミニウム化合物の回収装置、ならびに該アルミニウム化合物回収装置を含む、廃水からのフッ素および/または燐除去装置である。
【0022】〔作用〕以下、前記効果をもたらすための本発明の作用について説明する。
【0023】まず、炭酸イオンは次の解離平衡をすることが知られている。
【0024】
HCO3-=H++CO32- (1)この解離平衡定数K1はpK1=-log(K1)=10.3であるので、カルシウムイオンと次の反応を行うCO32-イオンはpHが10.3以上になると支配的に存在する。
【0025】
Ca2++CO32-→CaCO3 (2)(1)と(2)の反応をまとめればCa2++HCO3-→H++CaCO3 (3)と示される。
【0026】一方、水酸化アルミニウムとアルミン酸の解離平衡は次式が知られている。
【0027】
Al(OH)3+OH-=Al(OH)4- (pK2=10:K2は平衡定数)(4)この解離平衡定数K2はpK2=11.2(出典:化学便覧)であるので、Caイオンと次の反応を行うAl(OH)4-イオンはpHが11以上になると支配的に存在することになる。
【0028】
Ca2++2Al(OH)4-→CaAl2O4+4H2O (5)(4)と(5)の反応をまとめれば Ca2++2Al(OH)3+2OH-→CaAl2O4+4H2O (6)と示される。
【0029】従って、平衡論的には、カルシウムイオンがCaCO3として沈殿する条件であるpH10程度以上においては、反応(3)のみならず、(6)も同時に進行し、CaAl2O4の沈殿を多量に随伴すると考えられ、アルミニウムのかなりの部分がカルシウム化合物となって不溶化されてしまうと思われる。
【0030】一方、pHが10より小さい領域では、CO32-イオンやAl(OH)4-イオンの存在は支配的ではないものの、平衡論的に見合った量は常に存在しており、したがって反応(2)および(5)は前記強アルカリ領域よりはかなり遅いものの、たしかに進行する。ここで、両反応は競合的であり、初期における沈殿形成速度は反応速度定数に依存する。沈殿反応が進行するとCO32-やAl(OH)4-が消費されるため、平衡を保つため再び(1)や(4)の反応により消費された分だけCO32-やAl(OH)4-が供給されるが、この供給反応速度にも差があり、沈殿反応の速度にも影響を与える。このようにpHが10より小さい領域でも反応速度は小さいが(3)や(6)の反応が進行することになるが、これら(3)および(6)の反応にはH+やOH-が介在し、pHを制御することで反応速度を制御することが可能である。
【0031】実際のアルミニウムを主成分としたスラッジには、一次処理で分離しきれなかった燐-カルシウム-フッ素を含む微細な固体やアルミニウム固体が吸着した燐酸も含まれるため、カルシウム-燐-フッ素の複数の平衡関係が複雑に絡んでくる。
【0032】ここで、本発明のpH範囲、たとえば8以上9.5以下に保持すると、反応(3)の速度>反応(6)の速度を保つことができ、カルシウムの生成物はCaCO3生成物量>CaAl2O4生成物量となる。
【0033】このように、pHを本発明の範囲、たとえば8以上9.5以下で炭酸塩をスラッジに添加すれば、不溶性アルミニウム化合物であるCaAl2O4の生成を抑えながらカルシウムをCaCO3として固定することが可能となり、この工程のあとでアルカリを更に添加してpHを10以上12.5以下にすれば、カルシウムイオンは既にCaCO3として固体状になっているので、(5)の反応を進行させることなく、(4)の反応が進行しアルミン酸イオンとしてアルミニウムをスラッジより回収することができるようになる。
【0034】またこのときに添加する炭酸塩として、アルカリ性である炭酸ナトリウムを用いることで、スラッジのpHは水酸化ナトリウムなどのアルカリを添加することなく、本発明に用いられる好適なpH、たとえば8以上9.5以下に調整することが可能となるだけでなく、炭酸ナトリウムの水への溶解度は炭酸水素ナトリウムの水への溶解度より大きいため、添加する薬液の濃度を大きくすることができ、従って、薬液タンクを小さくすることができたり、配管などに炭酸塩が析出しにくくなり配管の閉塞なども防止することが可能となる。
【0035】
【発明の実施の形態】〔構成の説明〕次に、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0036】図3を参照すると、本発明の実施の形態は、フッ素を処理する工程とアルミニウム回収工程、および回収したアルミニウム水溶液を再度フッ素処理工程に利用する3つの工程により構成されている。更にフッ素処理工程は、図4に示したCaF2生成工程、Al(OH)3生成工程および固液分離工程で構成される。またアルミニウム回収工程は、図1に示すように、少なくとのアルミニウム不溶化工程、アルミニウム溶解工程および固液分離工程で構成され、アルミニウム不溶化工程とは、図2に示す炭酸添加工程、pH調整工程、反応工程で構成される。
【0037】尚、図1のアルミニウム回収工程には、回収するアルミニウムよりフッ素を除去するためにスラッジ濃縮工程やカルシウム処理工程を付加しているが、必ず必要というわけではない。即ちスラッジ濃縮工程とは、スラッジの水分取り除く目的で行われ、これ以降のカルシウム処理工程、アルミニウム不溶化工程、アルミニウム溶解工程での薬剤投入量の削減とカルシウム処理工程でのCaF2生成効率をあげることに寄与するものである。
【0038】またカルシウム処理工程とは、スラッジに吸着しているFイオンをカルシウムと反応させてCaF2として脱着し固体化させるために行われ、スラッジの水分が少ないほど効率的に行われる。なぜなら、スラッジに吸着しているFイオンが水溶液に脱着した場合、水分の量が少ないほどFイオン濃度は大きくなり、カルシウムとの反応が効率的に行われるからである。
【0039】〔動作の説明〕フッ素処理工程の動作を図4R>4を用いて説明する。
【0040】CaF2生成工程は、フッ素廃水にCaを加えてFイオンとCaイオンを反応させて固体のCaF2にする工程(以下フッ素1次処理と称す)であり、Fイオン濃度として約10ppm程度まで処理される。
【0041】Al(OH)3生成工程(以下フッ素2次処理と称す)は、前記CaF2として除去しきれなかった残留Fイオンを取り除くために、廃水にアルミニウム回収工程より供給されたアルミニウム水溶液と、補充分のアルミニウム水溶液(例えば硫酸礬土やポリ塩化アルミニウム溶液)を添加して、pH6〜8程度にして水酸化アルミニウムの固体を生成させて、この固体にFイオンを吸着させて除去するものである。このときの補充分のアルミニウム水溶液は、アルミニウム回収工程で回収できなかったアルミニウム量を補充する量程度であればよい。
【0042】固液分離工程では、生成したCaF2、Al(OH)3*F(フッ素を吸着した水酸化アルミニウム)と水分を分離する。分離された水は放流し、固体(スラッジ)はアルミニウム回収工程に供給される。尚、図4ではCaF2生成工程とAl(OH)3*F生成工程を別々に示しているが、この工程を同時に行ってもかまわない。
【0043】また図5の様に、CaF2生成工程とAl(OH)3*F生成工程の間に固液分離工程を設けて、1次処理工程のスラッジ、2次処理工程のスラッジを別々に排出してもかまわないが、この場合、アルミニウム回収工程に供給されるスラッジは、2次処理より排出されたスラッジである。またこの場合、1次処理で生成したCaF2の凝集沈降性を向上させる目的で、少量のアルミニウム化合物を添加することが多いが、後述するアルミニウム回収工程で発生するスラッジを利用することも可能である。
【0044】次にアルミニウム回収工程の動作について図1を用いて説明する。
【0045】スラッジ濃縮工程では、フッ素処理工程より供給されたスラッジの濃度をあげる目的で行われるが、必ず必要なわけではない。スラッジの濃度をあげる(スラッジに含まれる水分を除去する)ことの効果としては、これ以降のカルシウム処理工程、アルミニウム不溶化工程、アルミニウム溶解工程での薬剤投入量の削減と、カルシウム処理工程でのCaF2生成効率をあげることに寄与するものである。例えばスラッジに含まれる水分(以下スラッジ含水率と称す)99%を濃縮工程で95%まで除去すれば、スラッジの体積は1/5、水分は19/99に削減され、薬品の添加量を約1/5にできるものである。
【0046】また、FとCaの反応は、FやCaの濃度が大きい程反応は速くなることが知られているが、Caの濃度を上げることは、反応後に残留するカルシウム量も多くなることから、後述するCaとAlの不溶性化合物が生成するという点では、Caを添加することは得策ではなく、F濃度を上げた方が良い。
【0047】前述のスラッジ含水率を99%から95%にすればフッ素の濃度(=スラッジに含まれるフッ素量/スラッジの体積)を5倍にするものであり、反応速度が速くなるため、CaF2生成効率が向上する。また、CaF2を生成してFを除去する場合、生成したCaF2の水への溶解のため、Fは約10ppm程度までしか除去されない。もし濃縮前のF濃度が100ppm、濃縮後のF濃度が500ppmであったとするなら、濃縮をしない場合のFの除去率は[除去前後の濃度差]/[除去前の濃度]=(100−10)/100=90%であるのに対し、濃縮をする場合のFの除去率は[除去前後の濃度差]/[除去前の濃度]=(500−10)/500=98%となる。
【0048】カルシウム処理工程では、スラッジに含まれるFをCaF2として除去するためにCa化合物を添加する。この場合、添加量は、スラッジに含まれるFの当量以上であれば良いが、スラッジにはフッ素処理工程で添加した余剰または未反応のCaイオンが数百ppm程度残留していることが多く、不足分を補充する程度が望ましい。この処理後スラッジはアルミニウム不溶化工程に供給される。
【0049】アルミニウム不溶化工程を更に詳しく示した図2を用いて説明する。
【0050】まず炭酸添加工程では、スラッジに含まれるイオン性カルシウムの当量以上の炭酸塩をスラッジに投入する。炭酸塩としてNaHCO3を加えた場合は、スラッジのpHはほぼフッ素処理工程から排出されたpHの6〜8の範囲となっており、投入した炭酸のスラッジ内での形態は、イオン性カルシウムとは反応しないHCO3-となっている。
【0051】一方、炭酸塩としてNa2CO3を加えた場合、スラッジのpHはアルカリ側に変動するが、pHが8〜9.5内におさまる添加量であればNa2CO3の方が好ましい。なぜなら、次工程のpH調整工程でのNaOHの添加量を削減、場合によっては省くことが可能となるだけでなく、NaHCO3の水への溶解度は10%であるのに対して、Na2CO3は30%であり、薬液の濃度を大きくすることができる(即ち薬液タンクを小さくすることができる)、配管などに析出しにくい、等の点で有利になるためである。
【0052】次に、このスラッジはpH調整工程で、NaOHなどのアルカリを添加して、pHを8以上9.5以下に調整される。このpH範囲では炭酸イオンのほとんどはイオン性カルシウムとは反応しないHCO3-となっているものの、一部はカルシウムイオンと反応するCO32-として存在するため、このpH範囲でスラッジを保持すればカルシウムイオンをCaCO3として固体化することが可能となる。
【0053】次に、スラッジは一部存在するCO32-とカルシウムイオンとCaCO3の反応を行わせるための反応工程へ送られる。この工程はpHを8以上9.5以下に調整されスラッジを熟成させる目的で行われ、好ましくは30分以上充分な攪拌を行っている反応槽で行われることが望ましい。尚、上記炭酸添加工程、pH調整工程および反応工程は、別々の反応槽で行っても、同じ反応槽で行ってもかまわない。
【0054】以上の炭酸添加工程、pH調整工程および反応工程からなるアルミニウム不溶化工程の後、スラッジは図1に示したアルミニウム溶解工程に送られ、NaOHなどのアルカリを添加して、pHを10以上12.5以下にする。より好ましくは10以上であり、11以下である。pHを12.5以上にすることは、極端にアルカリおよび再度中和するのに要する酸の消費が拡大することと、スラッジに有機物が混入している場合、ケン化反応などが促進され、発泡するという問題が生じることがあり、あまり好ましいとはいえない。これにより、スラッジに含まれるアルミニウムはアルミン酸イオン{AlO2-またはAl(OH)4-}として溶解する。
【0055】図7は、(回収アルミニウム溶液/供給スラッジ)=溶液回収率と、反応時間の関係を示した図である。具体的には、フッ素含有廃水に利用したスラッジ(含水率96%、アルミニウム濃度120000ppm、フッ素濃度2300ppm、カルシウムイオン濃度500ppm)に、炭酸ナトリウムをカルシウムイオンの0.5〜3倍当量を添加し、pHを9に調整した後、図7に示す反応時間攪拌しながら熟成させ、所定時間後にpHを12に調整してアルミニウム成分を溶解させ、次にこの溶液を30分間静置して、固体と液体に分離し、全体積に対する液体の比率を溶液回収率として求めた図である。(なお、この実験では原料廃水ならびにスラッジは有機物をほとんど含まないため、pHを上限近くまで上げた)。
【0056】図7より、約1時間以上の熟成を行わせれば、ほぼ溶液回収率は一定になること、また炭酸の添加量が、カルシウムイオンの1倍当量以上であれば溶液回収率にあまり差がないことが判明する。また上記スラッジを、一連のアルミニウム不溶化工程を行わずそのままpHを12にして溶解工程を行った場合、溶液回収率は0.05以下で、実質的には固液分離ができない状態であった。
【0057】図8と図9は、フッ素含有廃水に利用したスラッジ(含水率98%、アルミニウム濃度12000ppm、フッ素濃度2300ppm、カルシウムイオン濃度500ppm)に炭酸水素ナトリウムを、カルシウムイオンの2倍当量および6倍当量を添加し、pHを6〜10に調整した後、攪拌しながら熟成させ、1.5時間後にpHを12に調整してアルミニウム成分を溶解させ、次にこの溶液を30分間静置して、固体と液体に分離し、全体積に対する液体の比率を溶液回収率として求めた図8と、溶液に含まれるアルミニウム濃度(回収アルミニウム溶液のアルミニウム濃度)を分析し、{回収アルミニウム溶液のアルミニウム濃度/供給したスラッジのアルミニウム濃度(12000ppm)}=濃度回収率として求めた図9である。
【0058】図8より、炭酸を添加して調整するpH(以下炭酸処理pHと称す)が本発明の8〜9.5の範囲では、溶液回収率は比較的大きい値となるが、それ以外の範囲では小さい。また図9より、濃度回収率では、炭酸処理pHが7〜9.5の範囲で大きいが、それ以外では小さくなる。回収されるアルミニウムは、この溶液回収率と濃度回収率の積になるが、これらの結果から、本発明の炭酸処理のpHとしては8〜9.5で回収されるアルミニウム量が大きいことになり好ましい。より好ましくは、8.5以上であり、また、9.2以下である。
【0059】例えば、炭酸処理pHが9の場合、回収率は[溶液回収率0.65]*[濃度回収率0.85]=0.55であるのに対し、炭酸処理pHが7.5の場合の回収率は、[溶液回収率0.25]*[濃度回収率0.8]=0.2であり、炭酸処理pHが10の場合には、回収率は[溶液回収率0.4]*[濃度回収率0.7]=0.28となり小さい。
【0060】アルミニウム溶解工程の後、スラッジに含まれる固体成分CaF2、CaCO3と水溶液成分AlO2-または(Al(OH)4)-は、次の固液分離工程で分離され、分離された水溶液はフッ素処理工程に利用される。また固体成分はそのまま廃棄物として回収されるか、図5R>5のように、フッ素処理工程が1次処理と2次処理が別々になっている場合は、1次処理工程に再度供給することが望ましい。
【0061】なぜなら、このスラッジはCaF2、CaCO3などを主成分とし、1次処理でのCaF2を形成する反応をなんら妨害しないだけでなく、むしろこれら微細な固体が核となってCaF2生成反応を促すこと、および、スラッジに含まれる水分はアルミニウム成分を含んでいるため、CaF2などの固体成分の凝集性を促すためである。
【0062】
【実施例】〔実施例の構成の説明〕図10および図11に本発明の不溶性アルミニウム化合物の低減方法を用いたフッ素廃水の処理実施例を示した。図10は、図5に示したフッ素処理を1次処理と2次処理に分けた工程に対応しており、図11は図1のアルミニウム回収工程に対応した実施例である。
【0063】図10のフッ素処理実施例において、Ca(OH)2スラリー溶液(図では単にCaと記した)を添加する反応槽110、硫酸礬土(図では単にAlと記した)およびpHを調整するためNaOHまたはH2SO4(図では単にpH調整剤と記した)を添加する反応槽150、高分子凝集剤を添加する凝集槽155および生成した固体と1次処理水を分離する沈降分離槽160と、回収アルミニウム溶液、補充のための硫酸礬土(図では単にAl補給と記した)およびpHを調整するためH2SO4(図では単にpH調整剤と記した)を添加する反応槽210、高分子凝集剤を添加する凝集槽250および生成した固体と処理水を分離する沈降分離槽260で構成されている。
【0064】また図11のアルミニウム回収処理は、供給されたスラッジのスラリー濃度を高める濃縮槽310、CaCl2溶液(図では単にCaと記した)を添加する反応槽320、炭酸塩としてNa2CO3溶液(図では単に炭酸塩と記した)およびNaOH(図では単にpH調整剤と記した)を添加する反応槽330、さらにNaOHを添加する反応槽340、高分子凝集剤を添加する凝集槽350および生成した固体と回収アルミニウム溶液を分離する沈降分離槽360で構成されている。
【0065】〔実施例の動作の説明〕フッ素を数十ppm以上含まれるフッ素廃水は反応槽110に供給される。ここに、Ca(OH)2スラリー溶液を約フッ素の2倍当量〜3倍当量を添加することで、フッ素は固体のCaF2となり水溶液にはフッ素が10〜30ppm程度まで低減することができる。また後述するスラッジCをこの反応槽に添加することで、スラッジの水分に含まれるAl成分が生成したCaF2の凝集剤として働き、またスラッジに含まれる微細な固体成分がCaF2を形成する核としての作用をする。
【0066】次にこれら溶液は反応槽150に送られ、ここで硫酸礬土とのNaOHが添加される。硫酸礬土は、フッ素を更に排除する目的(2次処理としての目的)で添加するのではなく、生成したCaF2の凝集を行わせるために添加するので、ここではAl濃度として数ppmになる程度であればよい。
【0067】Al成分を凝集剤として働く水酸化アルミニウムにするには、溶液のpHを6〜8程度にする必要があり、硫酸礬土を多く入れている場合は、酸性側になるのでNaOHを、スラッジCが多く流入している場合は、アルカリ側になるのでH2SO4を添加してpHの調整が行われる。次に、この溶液(固体と溶液の混在した状態)は、更に凝集沈降性を向上させるため、凝集槽155で高分子凝集剤を添加した後、沈降分離槽160で固体と液体に分離される。
【0068】分離された1次処理水には、フッ素が10〜30ppm程度含まれており、更に処理するために反応槽210へ送られる。一方固体として分離されたスラッジAは、CaF2が主成分であり廃棄物として処理される。
【0069】反応槽210では、回収アルミニウム溶液と補給分の硫酸礬土を添加する。補給量はアルミニウム回収工程で消失する量であり、先に示した回収率が0.55である場合、反応槽210内のAl濃度を仮に100ppmになるような運転をしている場合は(反応槽210内のAlの濃度として100ppm程度以上でないと、Fの吸着処理即ちF濃度として10ppm以下にする処理がなされない)、そのうち45ppm分を補給Al量で補うことになる。また、スラッジBの引き抜くアルミニウムの回収速度、即ち回収アルミニウム溶液の供給速度は、反応槽210内Alの濃度が補給分以外の55ppmを満足するように決定される。
【0070】また回収アルミニウム溶液は、pHが10以上の高アルカリであり、水酸化アルミニウムを形成するpHを6〜8に調整するためH2SO4が添加される。この段階で、残留していたFは、水酸化アルミニウムに吸着し、処理水のF濃度は、5ppm程度まで低減されている。この後、生成した水酸化アルミニウムの凝集沈降性を向上させるため、凝集槽250で高分子凝集剤が加えられ、次に沈降分離槽260で固体と液体に分離される。
【0071】分離された処理水はフッ素が5ppm程度まで処理されており、この後必要なら後処理を行い放流される。一方固体として分離されたスラッジBは、フッ素を吸着した水酸化アルミニウムが主成分であるが、1次処理でCaを添加しているため、カルシウムイオンも数百ppm残留している。このスラッジBは、濃縮槽310に送られる。尚、アルミニウム回収処理として濃縮工程やカルシウム処理工程を含まない、図13に示した実施例の場合は、反応槽330に送っても良い。
【0072】濃縮槽310でスラッジの水分を取り除き、この水分(上澄液)にはFが5ppm程度しか含まれていないが、固体成分もある程度含まれているため、1次処理工程の反応槽110または2次処理工程の反応槽210へ送られる。濃縮されたスラッジの濃度は、スラッジの初期濃度や沈降性、濃縮槽の規模、移送ポンプの能力にもよるが、約5%程度であればよい。
【0073】次の反応槽330では、CaCl2溶液が加えられる。加える量は、反応槽330のCa濃度がスラッジに含まれるFの当量程度になるようにする。即ち、供給されたスラッジに含まれるカルシウムイオンが500ppmでフッ素イオンが2000ppm相当吸着されているなら、添加するカルシウムは1500ppm程度になるよう調整される。カルシウムがFの当量程度存在すると、吸着していたフッ素イオンはCaF2になり脱着される。尚、カルシウムを補給しない場合であっても、残留しているカルシウムと吸着しているフッ素イオンは反応するため、一部のフッ素イオンをCaF2にして脱着することが可能である。
【0074】次に反応槽330では、未反応のカルシウムイオン、例えば上記全カルシウムイオンを2000ppmになるよう調整した場合、約300〜500ppmが残留する。このため、炭酸ナトリウム溶液を、残留したカルシウム量の当量程度添加し、更にpHを8以上9.5以下、より好ましくは8.5以上9.2以下になるようにNaOH溶液を添加する。そして、この反応槽に滞留している時間でカルシウムイオンを炭酸カルシウムに反応させるため、反応槽330の大きさは、少なくとも滞留時間が1時間以上になることが望ましい。
【0075】次に反応槽340でNaOHを加えてpHを10以上12.5以下、できれば10以上11以下にしてアルミニウム成分を溶解させる。このとき、スラッジに内に含まれるCaCO3やCaF2はこのpHでは溶解しない。次にこれら溶液は凝集槽350で高分子凝集剤を添加した後、沈降分離槽360で未溶解のCaCO3やCaF2(スラッジC)と、溶解したアルミニウム溶液に分離される。スラッジCは反応槽110に戻されるが、スラッジAとともに廃棄してもかまわない。また回収したアルミニウム溶液は、再度反応槽210へ戻される。
【0076】〔発明の他の実施形態にかかる実施例〕図12はフッ素処理として1次処理のスラッジおよび2次処理のスラッジを別々に回収しない、図4に示す工程の実施例である。また、図13は図1に示すアルミニウム回収工程でスラッジ濃縮工程およびカルシウム処理工程を省いた場合の実施例である。
【0077】図12の実施例の場合、スラッジABに含まれる固体成分は、フッ素を吸着した水酸化アルミニウムのみならず、前述のスラッジBにはあまり含まれていないCaF2や反応しきれなかったCa(OH)2などが含まれており、前述のスラッジBよりCaイオン源が含まれている。従って、特にカルシウム処理工程を持たなくとも、残留しているCa(OH)2を利用して、水酸化アルミニウムに吸着しているフッ素を脱着してCaF2に変換することができる。またスラッジDには、フッ素処理工程から送られたCaF2などの不溶成分の比率が多くなっているため、フッ素処理工程には戻さずそのまま廃棄される。
【0078】あるいは次のような運転も考えられる。即ち、スラッジABの一部は廃棄し、他方は反応槽330に供給する。また、これによって発生したスラッジDは全量反応槽110に戻す。この際廃棄するスラッジAB量は、アルミニウム回収工程で発生する不溶固体成分の比率で決まってくるが、簡易的には沈降分離槽360の固体/液体の界面が一定の深さを保つように調整すればよい。
【0079】
【発明の効果】第1の効果は、再利用できるアルミニウムの量が増えることである。
【0080】その理由は、本発明のアルミニウム不溶化方法を用いることで、アルミニウムと結合して再利用できないCaAl2O4の生成を抑えることができることと、これら不溶性の固体成分の比率が多くなれば、スラッジに含まれる水分も増えるため、アルミニウム回収工程で発生した不溶性固体を廃棄する場合は、この固体と一緒に水分としてアルミニウム成分が排出されてしまうためである。
【0081】第2の効果は、フッ素処理で発生する汚泥の量を削減することである。
【0082】その理由は、廃棄されていたアルミニウムの一部を繰り返し利用しているためであり、既に説明したように、例えば炭酸処理pHが9の場合、回収率は、[溶液回収率0.65]*[濃度回収率0.85]=0.55であるのに対し、炭酸処理pHが7.5の場合の回収率は、[溶液回収率0.25]*[濃度回収率0.8]=0.2であり、炭酸処理pHが10の場合の回収率は、[溶液回収率0.4]*[濃度回収率0.7]=0.28となる。従って、スラッジのアルミニウムを全く再利用しない場合より、本発明のアルミニウム不溶化方法を用いてアルミニウムを回収再利用すれば、汚泥量は45%削減できる。これは、従来のアルミニウム回収方法より更に半分の汚泥発生量となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明におけるアルミニウムの回収工程を示す図である。
【図2】本発明におけるアルミニウム不溶化工程を示す図である。
【図3】本発明でも用いられる、公知のアルミニウム成分を回収し再度利用するシステムフローを示す図である。
【図4】本発明でも用いられる、公知のフッ素処理工程の動作を示す図である。
【図5】本発明におけるフッ素処理工程の他の動作を示す図である。
【図6】本発明でも用いられる、公知のアルミニウム回収工程を示す図である。
【図7】本発明における溶液回収率と反応時間の関係を示した図である。
【図8】本発明における溶液回収率と炭酸処理pHの関係を示した図である。
【図9】本発明における濃度回収率と炭酸処理pHの関係を示した図である。
【図10】本発明におけるフッ素処理の一実施形態を示す図である。
【図11】本発明におけるアルミニウム回収処理の一実施形態を示す図である。
【図12】本発明におけるフッ素処理の他の実施形態を示す図である。
【図13】本発明におけるアルミニウム回収処理の他の実施形態を示す図である。
【符号の説明】
110、150、210、320、330、340:反応槽
155、250、350 :凝集槽
160、260、360 :沈降分離槽
310 :濃縮槽
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、廃水処理に利用されたアルミニウム系凝集剤の再生方法に関し、特にフッ素や燐を含有する廃水の処理に使用されたアルミニウム系凝集剤を対象として、回収されたアルミニウム化合物を含有するスラッジより、アルミニウム成分を溶解させて不溶成分と溶解性分を分離し、溶解したアルミニウム成分を再度廃水処理の凝集剤として利用する分野における不溶性アルミニウム化合物を低減して回収率を上げる方法に関する。
【0002】
【従来の技術】図4を用いてフッ素廃水の処理技術について説明する。
【0003】フッ素廃水の処理方法として図4に示すCaF2生成工程、Al(OH)3生成工程および固液分離工程で構成さた技術が知られている。即ち、CaF2生成工程は、フッ素廃水にCaを加えてFイオンとCaイオンを反応させて固体のCaF2にする工程であり、Fイオン濃度として約10ppm程度まで処理される。フッ素含有廃水が燐含有廃水である場合も、同様にCaを加えて燐とカルシウムの塩を生成させて除去することが知られている。
【0004】次にAl(OH)3生成工程では、前記CaF2として除去しきれなかった残留Fイオンを取り除くために、廃水にアルミニウム水溶液(例えば硫酸アルミニウム(硫酸礬土)やポリ塩化アルミニウム溶液)を添加して、pH6〜8程度にして水酸化アルミニウムの固体を生成させて、この固体にFイオンを吸着させて除去するものである。
【0005】この場合、添加するアルミニウムの量は廃水中に含まれるFイオン濃度や処理したい濃度によって適宜決定されるが、通常はアルミニウム濃度として数十ppm程度であり、これより少なく添加した場合は、Fイオンを吸着除去する目的よりは、生成したCaF2の凝集を助け沈降性を向上させることが主たる目的である。
【0006】また、廃水に燐酸イオンが含まれている場合は、Fイオンのみならず燐酸イオンもまた水酸化アルミニウムの固体に吸着して除去される。
【0007】固液分離工程では、生成したCaF2、Al(OH)3*F(フッ素を吸着した水酸化アルミニウム、Al(OH)(3-m)Fm)と水分を分離し、分離された水は放流し、固体(スラッジ)は通常廃棄物として回収される。尚、図4ではCaF2生成工程とAl(OH)3生成工程を別々に示しているが、この工程を同時に行ってもかまわない。
【0008】従って、上記フッ素処理工程で廃棄されるスラッジは、CaF2やAl(OH)3*Fを主成分とするものであり、この中からアルミニウム成分を回収して再度利用する技術として特開平1-107890号公報や特開平10-5769号公報が知られている。
【0009】図3を用いて、スラッジからアルミニウム成分を回収し再度利用する方法を説明する。
【0010】アルミニウム成分を回収する方法は図3に示すように、フッ素処理工程とスラッジのアルミニウムを回収するアルミニウム回収工程、および回収したアルミニウム水溶液をフッ素処理工程に再度利用する工程により構成されている。
【0011】フッ素処理工程は、前記図4に示した工程と同じであり、アルミニウム回収工程は、図6に示すように、少なくともアルミニウム溶解工程、固液分離工程で構成される。
【0012】アルミニウム回収工程について、図6を用いて説明する。
【0013】アルミニウム溶解工程とは、特開平1-107890号公報によればスラッジに水酸化ナトリウムを加えてpHを7以上好ましくは9以上にして水溶性アルミニウムを生成させる工程であり、特開平10-5769号公報によれば、スラッジに水酸化ナトリウムを加え、pHを10以上にすることとされている。そして固液分離工程において溶解したアルミニウム成分(以下アルミニウム水溶液と称す)と溶解しなかったスラッジを分離し、アルミニウム水溶液をフッ素処理工程で利用するものである。
【0014】アルミニウム回収工程において、スラッジ中にイオン性カルシウムが含まれていると、アルミニウムとカルシウムが結合し、アルカリにしても溶解しない物質、例えばCaAl2O4{またはCa(Al(OH)4)2}などが生成するため、再利用できる水溶性アルミニウムの量が低減してしまう。このため、アルカリで溶解する前にカルシウムイオンを除去する必要があり、特開平10-5769号公報では、図6に示すように、アルミニウム溶解工程の前に炭酸処理工程を導入し、アルカリにする前に炭酸塩を好ましくは炭酸水素ナトリウムをスラッジに添加しイオン性のカルシウムをCaCO3として固体化し除去する工夫がなされている。
【0015】また、同じく特開平10-5769号公報では回収するアルミニウムよりフッ素を除去するために、図6に示したスラッジ濃縮工程やカルシウム処理工程を付加している。
【0016】即ち、スラッジ濃縮工程は、スラッジの水分を取り除く目的で行われ、これ以降のカルシウム処理工程、炭酸処理工程、アルミニウム溶解工程での薬剤投入量の削減と、カルシウム処理工程でのCaF2の生成効率をあげることに寄与するものである。
【0017】またカルシウム処理工程は、スラッジに吸着しているFイオンをカルシウムと反応させてCaF2として脱着し、固体化させるために行われ、スラッジの水分が少ないほど効率的に行われる。なぜなら、スラッジに吸着しているFイオンが水溶液に脱着した場合、水分の量が少ないほどFイオン濃度は大きくなり、カルシウムとの反応が効率的に行われるからである。
【0018】
【発明が解決しようとする課題】しかし、炭酸イオンはpHにより解離状態が変化する物質であり、CaCO3を効率よく生成させるためには、pHをアルカリ側にする必要がある。一方、pHをアルカリ側にすると、カルシウムイオンは炭酸イオンとの反応だけでなく、アルミン酸イオン{AlO2-または(Al(OH)4)-}との反応も進行してしまい、アルカリにしても溶解しないCaAl2O4が生成する。このため、沈殿スラッジに炭酸塩を添加してpHを10以上にするという従来の炭酸処理操作では、アルミニウムの不溶化を防ぐことはできないため、再利用できるアルミニウムの回収率が小さいものであった。
【0019】本発明の目的は、アルミニウム化合物を含有するスラッジをアルカリで溶解する際、不溶性のアルミニウムを低減させて、再利用するアルミニウムの回収率を増加させることである。
【0020】
【課題を解決するための手段】即ち、本発明は、フッ素および/または燐の除去を目的としたシステムにおいて用いられる、アルミニウム化合物の回収方法であって、アルミニウム化合物を主成分とし、カルシウム、およびフッ素および/または燐を含有するスラッジを処理してアルミニウム成分を溶解させる工程と、不溶成分と溶解成分を分離する工程とを有する、アルミニウム化合物の回収方法において、アルミニウム溶出工程の前に該スラッジに含まれるイオン性カルシウムの当量以上の炭酸塩を該スラッジに投入することと、該スラッジのpHを8以上9.5以下に調整して反応させることと、該スラッジからアルミニウムを溶出する工程における、該スラッジのpHを10以上12.5以下に調整することを特徴としたアルミニウム化合物の回収方法であり、また該アルミニウム化合物回収方法を含む、廃水からのフッ素および/または燐除去方法である。
【0021】さらに、フッ素および/または燐の除去を目的とした装置におけるアルミニウム化合物の回収装置であって、アルミニウム化合物を主成分とし、カルシウム、およびフッ素または燐を含有するスラッジを導入する手段と、該スラッジを処理してアルミニウム成分を溶解させる手段と、不溶成分と溶解成分を分離する手段と、溶解したアルミニウム成分を含む溶液を送り出す手段を有するアルミニウム化合物の回収装置において、アルミニウム溶出の前に該スラッジに含まれるイオン性カルシウムの当量以上の炭酸塩を該スラッジに投入する手段と、該スラッジのpHを8以上9.5以下に調整して反応させる手段と、該スラッジからアルミニウムを溶出する際に該スラッジのpHを10以上12.5以下に調整する手段を有することを特徴としたアルミニウム化合物の回収装置、ならびに該アルミニウム化合物回収装置を含む、廃水からのフッ素および/または燐除去装置である。
【0022】〔作用〕以下、前記効果をもたらすための本発明の作用について説明する。
【0023】まず、炭酸イオンは次の解離平衡をすることが知られている。
【0024】
HCO3-=H++CO32- (1)この解離平衡定数K1はpK1=-log(K1)=10.3であるので、カルシウムイオンと次の反応を行うCO32-イオンはpHが10.3以上になると支配的に存在する。
【0025】
Ca2++CO32-→CaCO3 (2)(1)と(2)の反応をまとめればCa2++HCO3-→H++CaCO3 (3)と示される。
【0026】一方、水酸化アルミニウムとアルミン酸の解離平衡は次式が知られている。
【0027】
Al(OH)3+OH-=Al(OH)4- (pK2=10:K2は平衡定数)(4)この解離平衡定数K2はpK2=11.2(出典:化学便覧)であるので、Caイオンと次の反応を行うAl(OH)4-イオンはpHが11以上になると支配的に存在することになる。
【0028】
Ca2++2Al(OH)4-→CaAl2O4+4H2O (5)(4)と(5)の反応をまとめれば Ca2++2Al(OH)3+2OH-→CaAl2O4+4H2O (6)と示される。
【0029】従って、平衡論的には、カルシウムイオンがCaCO3として沈殿する条件であるpH10程度以上においては、反応(3)のみならず、(6)も同時に進行し、CaAl2O4の沈殿を多量に随伴すると考えられ、アルミニウムのかなりの部分がカルシウム化合物となって不溶化されてしまうと思われる。
【0030】一方、pHが10より小さい領域では、CO32-イオンやAl(OH)4-イオンの存在は支配的ではないものの、平衡論的に見合った量は常に存在しており、したがって反応(2)および(5)は前記強アルカリ領域よりはかなり遅いものの、たしかに進行する。ここで、両反応は競合的であり、初期における沈殿形成速度は反応速度定数に依存する。沈殿反応が進行するとCO32-やAl(OH)4-が消費されるため、平衡を保つため再び(1)や(4)の反応により消費された分だけCO32-やAl(OH)4-が供給されるが、この供給反応速度にも差があり、沈殿反応の速度にも影響を与える。このようにpHが10より小さい領域でも反応速度は小さいが(3)や(6)の反応が進行することになるが、これら(3)および(6)の反応にはH+やOH-が介在し、pHを制御することで反応速度を制御することが可能である。
【0031】実際のアルミニウムを主成分としたスラッジには、一次処理で分離しきれなかった燐-カルシウム-フッ素を含む微細な固体やアルミニウム固体が吸着した燐酸も含まれるため、カルシウム-燐-フッ素の複数の平衡関係が複雑に絡んでくる。
【0032】ここで、本発明のpH範囲、たとえば8以上9.5以下に保持すると、反応(3)の速度>反応(6)の速度を保つことができ、カルシウムの生成物はCaCO3生成物量>CaAl2O4生成物量となる。
【0033】このように、pHを本発明の範囲、たとえば8以上9.5以下で炭酸塩をスラッジに添加すれば、不溶性アルミニウム化合物であるCaAl2O4の生成を抑えながらカルシウムをCaCO3として固定することが可能となり、この工程のあとでアルカリを更に添加してpHを10以上12.5以下にすれば、カルシウムイオンは既にCaCO3として固体状になっているので、(5)の反応を進行させることなく、(4)の反応が進行しアルミン酸イオンとしてアルミニウムをスラッジより回収することができるようになる。
【0034】またこのときに添加する炭酸塩として、アルカリ性である炭酸ナトリウムを用いることで、スラッジのpHは水酸化ナトリウムなどのアルカリを添加することなく、本発明に用いられる好適なpH、たとえば8以上9.5以下に調整することが可能となるだけでなく、炭酸ナトリウムの水への溶解度は炭酸水素ナトリウムの水への溶解度より大きいため、添加する薬液の濃度を大きくすることができ、従って、薬液タンクを小さくすることができたり、配管などに炭酸塩が析出しにくくなり配管の閉塞なども防止することが可能となる。
【0035】
【発明の実施の形態】〔構成の説明〕次に、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0036】図3を参照すると、本発明の実施の形態は、フッ素を処理する工程とアルミニウム回収工程、および回収したアルミニウム水溶液を再度フッ素処理工程に利用する3つの工程により構成されている。更にフッ素処理工程は、図4に示したCaF2生成工程、Al(OH)3生成工程および固液分離工程で構成される。またアルミニウム回収工程は、図1に示すように、少なくとのアルミニウム不溶化工程、アルミニウム溶解工程および固液分離工程で構成され、アルミニウム不溶化工程とは、図2に示す炭酸添加工程、pH調整工程、反応工程で構成される。
【0037】尚、図1のアルミニウム回収工程には、回収するアルミニウムよりフッ素を除去するためにスラッジ濃縮工程やカルシウム処理工程を付加しているが、必ず必要というわけではない。即ちスラッジ濃縮工程とは、スラッジの水分取り除く目的で行われ、これ以降のカルシウム処理工程、アルミニウム不溶化工程、アルミニウム溶解工程での薬剤投入量の削減とカルシウム処理工程でのCaF2生成効率をあげることに寄与するものである。
【0038】またカルシウム処理工程とは、スラッジに吸着しているFイオンをカルシウムと反応させてCaF2として脱着し固体化させるために行われ、スラッジの水分が少ないほど効率的に行われる。なぜなら、スラッジに吸着しているFイオンが水溶液に脱着した場合、水分の量が少ないほどFイオン濃度は大きくなり、カルシウムとの反応が効率的に行われるからである。
【0039】〔動作の説明〕フッ素処理工程の動作を図4R>4を用いて説明する。
【0040】CaF2生成工程は、フッ素廃水にCaを加えてFイオンとCaイオンを反応させて固体のCaF2にする工程(以下フッ素1次処理と称す)であり、Fイオン濃度として約10ppm程度まで処理される。
【0041】Al(OH)3生成工程(以下フッ素2次処理と称す)は、前記CaF2として除去しきれなかった残留Fイオンを取り除くために、廃水にアルミニウム回収工程より供給されたアルミニウム水溶液と、補充分のアルミニウム水溶液(例えば硫酸礬土やポリ塩化アルミニウム溶液)を添加して、pH6〜8程度にして水酸化アルミニウムの固体を生成させて、この固体にFイオンを吸着させて除去するものである。このときの補充分のアルミニウム水溶液は、アルミニウム回収工程で回収できなかったアルミニウム量を補充する量程度であればよい。
【0042】固液分離工程では、生成したCaF2、Al(OH)3*F(フッ素を吸着した水酸化アルミニウム)と水分を分離する。分離された水は放流し、固体(スラッジ)はアルミニウム回収工程に供給される。尚、図4ではCaF2生成工程とAl(OH)3*F生成工程を別々に示しているが、この工程を同時に行ってもかまわない。
【0043】また図5の様に、CaF2生成工程とAl(OH)3*F生成工程の間に固液分離工程を設けて、1次処理工程のスラッジ、2次処理工程のスラッジを別々に排出してもかまわないが、この場合、アルミニウム回収工程に供給されるスラッジは、2次処理より排出されたスラッジである。またこの場合、1次処理で生成したCaF2の凝集沈降性を向上させる目的で、少量のアルミニウム化合物を添加することが多いが、後述するアルミニウム回収工程で発生するスラッジを利用することも可能である。
【0044】次にアルミニウム回収工程の動作について図1を用いて説明する。
【0045】スラッジ濃縮工程では、フッ素処理工程より供給されたスラッジの濃度をあげる目的で行われるが、必ず必要なわけではない。スラッジの濃度をあげる(スラッジに含まれる水分を除去する)ことの効果としては、これ以降のカルシウム処理工程、アルミニウム不溶化工程、アルミニウム溶解工程での薬剤投入量の削減と、カルシウム処理工程でのCaF2生成効率をあげることに寄与するものである。例えばスラッジに含まれる水分(以下スラッジ含水率と称す)99%を濃縮工程で95%まで除去すれば、スラッジの体積は1/5、水分は19/99に削減され、薬品の添加量を約1/5にできるものである。
【0046】また、FとCaの反応は、FやCaの濃度が大きい程反応は速くなることが知られているが、Caの濃度を上げることは、反応後に残留するカルシウム量も多くなることから、後述するCaとAlの不溶性化合物が生成するという点では、Caを添加することは得策ではなく、F濃度を上げた方が良い。
【0047】前述のスラッジ含水率を99%から95%にすればフッ素の濃度(=スラッジに含まれるフッ素量/スラッジの体積)を5倍にするものであり、反応速度が速くなるため、CaF2生成効率が向上する。また、CaF2を生成してFを除去する場合、生成したCaF2の水への溶解のため、Fは約10ppm程度までしか除去されない。もし濃縮前のF濃度が100ppm、濃縮後のF濃度が500ppmであったとするなら、濃縮をしない場合のFの除去率は[除去前後の濃度差]/[除去前の濃度]=(100−10)/100=90%であるのに対し、濃縮をする場合のFの除去率は[除去前後の濃度差]/[除去前の濃度]=(500−10)/500=98%となる。
【0048】カルシウム処理工程では、スラッジに含まれるFをCaF2として除去するためにCa化合物を添加する。この場合、添加量は、スラッジに含まれるFの当量以上であれば良いが、スラッジにはフッ素処理工程で添加した余剰または未反応のCaイオンが数百ppm程度残留していることが多く、不足分を補充する程度が望ましい。この処理後スラッジはアルミニウム不溶化工程に供給される。
【0049】アルミニウム不溶化工程を更に詳しく示した図2を用いて説明する。
【0050】まず炭酸添加工程では、スラッジに含まれるイオン性カルシウムの当量以上の炭酸塩をスラッジに投入する。炭酸塩としてNaHCO3を加えた場合は、スラッジのpHはほぼフッ素処理工程から排出されたpHの6〜8の範囲となっており、投入した炭酸のスラッジ内での形態は、イオン性カルシウムとは反応しないHCO3-となっている。
【0051】一方、炭酸塩としてNa2CO3を加えた場合、スラッジのpHはアルカリ側に変動するが、pHが8〜9.5内におさまる添加量であればNa2CO3の方が好ましい。なぜなら、次工程のpH調整工程でのNaOHの添加量を削減、場合によっては省くことが可能となるだけでなく、NaHCO3の水への溶解度は10%であるのに対して、Na2CO3は30%であり、薬液の濃度を大きくすることができる(即ち薬液タンクを小さくすることができる)、配管などに析出しにくい、等の点で有利になるためである。
【0052】次に、このスラッジはpH調整工程で、NaOHなどのアルカリを添加して、pHを8以上9.5以下に調整される。このpH範囲では炭酸イオンのほとんどはイオン性カルシウムとは反応しないHCO3-となっているものの、一部はカルシウムイオンと反応するCO32-として存在するため、このpH範囲でスラッジを保持すればカルシウムイオンをCaCO3として固体化することが可能となる。
【0053】次に、スラッジは一部存在するCO32-とカルシウムイオンとCaCO3の反応を行わせるための反応工程へ送られる。この工程はpHを8以上9.5以下に調整されスラッジを熟成させる目的で行われ、好ましくは30分以上充分な攪拌を行っている反応槽で行われることが望ましい。尚、上記炭酸添加工程、pH調整工程および反応工程は、別々の反応槽で行っても、同じ反応槽で行ってもかまわない。
【0054】以上の炭酸添加工程、pH調整工程および反応工程からなるアルミニウム不溶化工程の後、スラッジは図1に示したアルミニウム溶解工程に送られ、NaOHなどのアルカリを添加して、pHを10以上12.5以下にする。より好ましくは10以上であり、11以下である。pHを12.5以上にすることは、極端にアルカリおよび再度中和するのに要する酸の消費が拡大することと、スラッジに有機物が混入している場合、ケン化反応などが促進され、発泡するという問題が生じることがあり、あまり好ましいとはいえない。これにより、スラッジに含まれるアルミニウムはアルミン酸イオン{AlO2-またはAl(OH)4-}として溶解する。
【0055】図7は、(回収アルミニウム溶液/供給スラッジ)=溶液回収率と、反応時間の関係を示した図である。具体的には、フッ素含有廃水に利用したスラッジ(含水率96%、アルミニウム濃度120000ppm、フッ素濃度2300ppm、カルシウムイオン濃度500ppm)に、炭酸ナトリウムをカルシウムイオンの0.5〜3倍当量を添加し、pHを9に調整した後、図7に示す反応時間攪拌しながら熟成させ、所定時間後にpHを12に調整してアルミニウム成分を溶解させ、次にこの溶液を30分間静置して、固体と液体に分離し、全体積に対する液体の比率を溶液回収率として求めた図である。(なお、この実験では原料廃水ならびにスラッジは有機物をほとんど含まないため、pHを上限近くまで上げた)。
【0056】図7より、約1時間以上の熟成を行わせれば、ほぼ溶液回収率は一定になること、また炭酸の添加量が、カルシウムイオンの1倍当量以上であれば溶液回収率にあまり差がないことが判明する。また上記スラッジを、一連のアルミニウム不溶化工程を行わずそのままpHを12にして溶解工程を行った場合、溶液回収率は0.05以下で、実質的には固液分離ができない状態であった。
【0057】図8と図9は、フッ素含有廃水に利用したスラッジ(含水率98%、アルミニウム濃度12000ppm、フッ素濃度2300ppm、カルシウムイオン濃度500ppm)に炭酸水素ナトリウムを、カルシウムイオンの2倍当量および6倍当量を添加し、pHを6〜10に調整した後、攪拌しながら熟成させ、1.5時間後にpHを12に調整してアルミニウム成分を溶解させ、次にこの溶液を30分間静置して、固体と液体に分離し、全体積に対する液体の比率を溶液回収率として求めた図8と、溶液に含まれるアルミニウム濃度(回収アルミニウム溶液のアルミニウム濃度)を分析し、{回収アルミニウム溶液のアルミニウム濃度/供給したスラッジのアルミニウム濃度(12000ppm)}=濃度回収率として求めた図9である。
【0058】図8より、炭酸を添加して調整するpH(以下炭酸処理pHと称す)が本発明の8〜9.5の範囲では、溶液回収率は比較的大きい値となるが、それ以外の範囲では小さい。また図9より、濃度回収率では、炭酸処理pHが7〜9.5の範囲で大きいが、それ以外では小さくなる。回収されるアルミニウムは、この溶液回収率と濃度回収率の積になるが、これらの結果から、本発明の炭酸処理のpHとしては8〜9.5で回収されるアルミニウム量が大きいことになり好ましい。より好ましくは、8.5以上であり、また、9.2以下である。
【0059】例えば、炭酸処理pHが9の場合、回収率は[溶液回収率0.65]*[濃度回収率0.85]=0.55であるのに対し、炭酸処理pHが7.5の場合の回収率は、[溶液回収率0.25]*[濃度回収率0.8]=0.2であり、炭酸処理pHが10の場合には、回収率は[溶液回収率0.4]*[濃度回収率0.7]=0.28となり小さい。
【0060】アルミニウム溶解工程の後、スラッジに含まれる固体成分CaF2、CaCO3と水溶液成分AlO2-または(Al(OH)4)-は、次の固液分離工程で分離され、分離された水溶液はフッ素処理工程に利用される。また固体成分はそのまま廃棄物として回収されるか、図5R>5のように、フッ素処理工程が1次処理と2次処理が別々になっている場合は、1次処理工程に再度供給することが望ましい。
【0061】なぜなら、このスラッジはCaF2、CaCO3などを主成分とし、1次処理でのCaF2を形成する反応をなんら妨害しないだけでなく、むしろこれら微細な固体が核となってCaF2生成反応を促すこと、および、スラッジに含まれる水分はアルミニウム成分を含んでいるため、CaF2などの固体成分の凝集性を促すためである。
【0062】
【実施例】〔実施例の構成の説明〕図10および図11に本発明の不溶性アルミニウム化合物の低減方法を用いたフッ素廃水の処理実施例を示した。図10は、図5に示したフッ素処理を1次処理と2次処理に分けた工程に対応しており、図11は図1のアルミニウム回収工程に対応した実施例である。
【0063】図10のフッ素処理実施例において、Ca(OH)2スラリー溶液(図では単にCaと記した)を添加する反応槽110、硫酸礬土(図では単にAlと記した)およびpHを調整するためNaOHまたはH2SO4(図では単にpH調整剤と記した)を添加する反応槽150、高分子凝集剤を添加する凝集槽155および生成した固体と1次処理水を分離する沈降分離槽160と、回収アルミニウム溶液、補充のための硫酸礬土(図では単にAl補給と記した)およびpHを調整するためH2SO4(図では単にpH調整剤と記した)を添加する反応槽210、高分子凝集剤を添加する凝集槽250および生成した固体と処理水を分離する沈降分離槽260で構成されている。
【0064】また図11のアルミニウム回収処理は、供給されたスラッジのスラリー濃度を高める濃縮槽310、CaCl2溶液(図では単にCaと記した)を添加する反応槽320、炭酸塩としてNa2CO3溶液(図では単に炭酸塩と記した)およびNaOH(図では単にpH調整剤と記した)を添加する反応槽330、さらにNaOHを添加する反応槽340、高分子凝集剤を添加する凝集槽350および生成した固体と回収アルミニウム溶液を分離する沈降分離槽360で構成されている。
【0065】〔実施例の動作の説明〕フッ素を数十ppm以上含まれるフッ素廃水は反応槽110に供給される。ここに、Ca(OH)2スラリー溶液を約フッ素の2倍当量〜3倍当量を添加することで、フッ素は固体のCaF2となり水溶液にはフッ素が10〜30ppm程度まで低減することができる。また後述するスラッジCをこの反応槽に添加することで、スラッジの水分に含まれるAl成分が生成したCaF2の凝集剤として働き、またスラッジに含まれる微細な固体成分がCaF2を形成する核としての作用をする。
【0066】次にこれら溶液は反応槽150に送られ、ここで硫酸礬土とのNaOHが添加される。硫酸礬土は、フッ素を更に排除する目的(2次処理としての目的)で添加するのではなく、生成したCaF2の凝集を行わせるために添加するので、ここではAl濃度として数ppmになる程度であればよい。
【0067】Al成分を凝集剤として働く水酸化アルミニウムにするには、溶液のpHを6〜8程度にする必要があり、硫酸礬土を多く入れている場合は、酸性側になるのでNaOHを、スラッジCが多く流入している場合は、アルカリ側になるのでH2SO4を添加してpHの調整が行われる。次に、この溶液(固体と溶液の混在した状態)は、更に凝集沈降性を向上させるため、凝集槽155で高分子凝集剤を添加した後、沈降分離槽160で固体と液体に分離される。
【0068】分離された1次処理水には、フッ素が10〜30ppm程度含まれており、更に処理するために反応槽210へ送られる。一方固体として分離されたスラッジAは、CaF2が主成分であり廃棄物として処理される。
【0069】反応槽210では、回収アルミニウム溶液と補給分の硫酸礬土を添加する。補給量はアルミニウム回収工程で消失する量であり、先に示した回収率が0.55である場合、反応槽210内のAl濃度を仮に100ppmになるような運転をしている場合は(反応槽210内のAlの濃度として100ppm程度以上でないと、Fの吸着処理即ちF濃度として10ppm以下にする処理がなされない)、そのうち45ppm分を補給Al量で補うことになる。また、スラッジBの引き抜くアルミニウムの回収速度、即ち回収アルミニウム溶液の供給速度は、反応槽210内Alの濃度が補給分以外の55ppmを満足するように決定される。
【0070】また回収アルミニウム溶液は、pHが10以上の高アルカリであり、水酸化アルミニウムを形成するpHを6〜8に調整するためH2SO4が添加される。この段階で、残留していたFは、水酸化アルミニウムに吸着し、処理水のF濃度は、5ppm程度まで低減されている。この後、生成した水酸化アルミニウムの凝集沈降性を向上させるため、凝集槽250で高分子凝集剤が加えられ、次に沈降分離槽260で固体と液体に分離される。
【0071】分離された処理水はフッ素が5ppm程度まで処理されており、この後必要なら後処理を行い放流される。一方固体として分離されたスラッジBは、フッ素を吸着した水酸化アルミニウムが主成分であるが、1次処理でCaを添加しているため、カルシウムイオンも数百ppm残留している。このスラッジBは、濃縮槽310に送られる。尚、アルミニウム回収処理として濃縮工程やカルシウム処理工程を含まない、図13に示した実施例の場合は、反応槽330に送っても良い。
【0072】濃縮槽310でスラッジの水分を取り除き、この水分(上澄液)にはFが5ppm程度しか含まれていないが、固体成分もある程度含まれているため、1次処理工程の反応槽110または2次処理工程の反応槽210へ送られる。濃縮されたスラッジの濃度は、スラッジの初期濃度や沈降性、濃縮槽の規模、移送ポンプの能力にもよるが、約5%程度であればよい。
【0073】次の反応槽330では、CaCl2溶液が加えられる。加える量は、反応槽330のCa濃度がスラッジに含まれるFの当量程度になるようにする。即ち、供給されたスラッジに含まれるカルシウムイオンが500ppmでフッ素イオンが2000ppm相当吸着されているなら、添加するカルシウムは1500ppm程度になるよう調整される。カルシウムがFの当量程度存在すると、吸着していたフッ素イオンはCaF2になり脱着される。尚、カルシウムを補給しない場合であっても、残留しているカルシウムと吸着しているフッ素イオンは反応するため、一部のフッ素イオンをCaF2にして脱着することが可能である。
【0074】次に反応槽330では、未反応のカルシウムイオン、例えば上記全カルシウムイオンを2000ppmになるよう調整した場合、約300〜500ppmが残留する。このため、炭酸ナトリウム溶液を、残留したカルシウム量の当量程度添加し、更にpHを8以上9.5以下、より好ましくは8.5以上9.2以下になるようにNaOH溶液を添加する。そして、この反応槽に滞留している時間でカルシウムイオンを炭酸カルシウムに反応させるため、反応槽330の大きさは、少なくとも滞留時間が1時間以上になることが望ましい。
【0075】次に反応槽340でNaOHを加えてpHを10以上12.5以下、できれば10以上11以下にしてアルミニウム成分を溶解させる。このとき、スラッジに内に含まれるCaCO3やCaF2はこのpHでは溶解しない。次にこれら溶液は凝集槽350で高分子凝集剤を添加した後、沈降分離槽360で未溶解のCaCO3やCaF2(スラッジC)と、溶解したアルミニウム溶液に分離される。スラッジCは反応槽110に戻されるが、スラッジAとともに廃棄してもかまわない。また回収したアルミニウム溶液は、再度反応槽210へ戻される。
【0076】〔発明の他の実施形態にかかる実施例〕図12はフッ素処理として1次処理のスラッジおよび2次処理のスラッジを別々に回収しない、図4に示す工程の実施例である。また、図13は図1に示すアルミニウム回収工程でスラッジ濃縮工程およびカルシウム処理工程を省いた場合の実施例である。
【0077】図12の実施例の場合、スラッジABに含まれる固体成分は、フッ素を吸着した水酸化アルミニウムのみならず、前述のスラッジBにはあまり含まれていないCaF2や反応しきれなかったCa(OH)2などが含まれており、前述のスラッジBよりCaイオン源が含まれている。従って、特にカルシウム処理工程を持たなくとも、残留しているCa(OH)2を利用して、水酸化アルミニウムに吸着しているフッ素を脱着してCaF2に変換することができる。またスラッジDには、フッ素処理工程から送られたCaF2などの不溶成分の比率が多くなっているため、フッ素処理工程には戻さずそのまま廃棄される。
【0078】あるいは次のような運転も考えられる。即ち、スラッジABの一部は廃棄し、他方は反応槽330に供給する。また、これによって発生したスラッジDは全量反応槽110に戻す。この際廃棄するスラッジAB量は、アルミニウム回収工程で発生する不溶固体成分の比率で決まってくるが、簡易的には沈降分離槽360の固体/液体の界面が一定の深さを保つように調整すればよい。
【0079】
【発明の効果】第1の効果は、再利用できるアルミニウムの量が増えることである。
【0080】その理由は、本発明のアルミニウム不溶化方法を用いることで、アルミニウムと結合して再利用できないCaAl2O4の生成を抑えることができることと、これら不溶性の固体成分の比率が多くなれば、スラッジに含まれる水分も増えるため、アルミニウム回収工程で発生した不溶性固体を廃棄する場合は、この固体と一緒に水分としてアルミニウム成分が排出されてしまうためである。
【0081】第2の効果は、フッ素処理で発生する汚泥の量を削減することである。
【0082】その理由は、廃棄されていたアルミニウムの一部を繰り返し利用しているためであり、既に説明したように、例えば炭酸処理pHが9の場合、回収率は、[溶液回収率0.65]*[濃度回収率0.85]=0.55であるのに対し、炭酸処理pHが7.5の場合の回収率は、[溶液回収率0.25]*[濃度回収率0.8]=0.2であり、炭酸処理pHが10の場合の回収率は、[溶液回収率0.4]*[濃度回収率0.7]=0.28となる。従って、スラッジのアルミニウムを全く再利用しない場合より、本発明のアルミニウム不溶化方法を用いてアルミニウムを回収再利用すれば、汚泥量は45%削減できる。これは、従来のアルミニウム回収方法より更に半分の汚泥発生量となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明におけるアルミニウムの回収工程を示す図である。
【図2】本発明におけるアルミニウム不溶化工程を示す図である。
【図3】本発明でも用いられる、公知のアルミニウム成分を回収し再度利用するシステムフローを示す図である。
【図4】本発明でも用いられる、公知のフッ素処理工程の動作を示す図である。
【図5】本発明におけるフッ素処理工程の他の動作を示す図である。
【図6】本発明でも用いられる、公知のアルミニウム回収工程を示す図である。
【図7】本発明における溶液回収率と反応時間の関係を示した図である。
【図8】本発明における溶液回収率と炭酸処理pHの関係を示した図である。
【図9】本発明における濃度回収率と炭酸処理pHの関係を示した図である。
【図10】本発明におけるフッ素処理の一実施形態を示す図である。
【図11】本発明におけるアルミニウム回収処理の一実施形態を示す図である。
【図12】本発明におけるフッ素処理の他の実施形態を示す図である。
【図13】本発明におけるアルミニウム回収処理の他の実施形態を示す図である。
【符号の説明】
110、150、210、320、330、340:反応槽
155、250、350 :凝集槽
160、260、360 :沈降分離槽
310 :濃縮槽
【特許請求の範囲】
【請求項1】 フッ素および/または燐の除去を目的としたシステムにおいて用いられる、アルミニウム化合物の回収方法であって、アルミニウム化合物を主成分とし、カルシウム、およびフッ素および/または燐を含有するスラッジを処理してアルミニウム成分を溶解させる工程と、不溶成分と溶解成分を分離する工程とを有する、アルミニウム化合物の回収方法において、アルミニウム溶出工程の前に該スラッジに含まれるイオン性カルシウムの当量以上の炭酸塩を該スラッジに投入することと、該スラッジのpHを8以上9.5以下に調整して反応させることと、該スラッジからアルミニウムを溶出する工程における、該スラッジのpHを10以上12.5以下に調整することを特徴としたアルミニウム化合物の回収方法。
【請求項2】 前記スラッジが少なくともフッ素を含有することを特徴とする、請求項1に記載の回収方法。
【請求項3】 前記炭酸塩に炭酸ナトリウムを用いる請求項1または2記載の回収方法。
【請求項4】 前記スラッジが、フッ素および/または燐を含む廃水をpH6〜8で処理することで形成されたものであることを特徴とする、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の回収方法。
【請求項5】 前記スラッジが、前記炭酸塩の投入前に濃縮されることを特徴とする、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の回収方法。
【請求項6】 請求項1および3ないし5のいずれか1項に記載のアルミニウム化合物回収方法を含む、廃水からのフッ素および/または燐除去方法。
【請求項7】 前記廃水が少なくともフッ素を含有することを特徴とする、請求項6に記載のフッ素および/または燐除去方法。
【請求項8】 前記イオン除去方法において、廃水に添加するカルシウムが、上流側で該イオン除去のため添加および/または補充されるカルシウム塩と、下流工程から回収され上流の該カルシウム添加工程に戻されるスラッジの一部からのみ供給されることを特徴とする、請求項7に記載のフッ素および/または燐除去方法。
【請求項9】 フッ素および/または燐の除去を目的とした装置におけるアルミニウム化合物の回収装置であって、アルミニウム化合物を主成分とし、カルシウム、およびフッ素および/または燐を含有するスラッジを導入する手段と、該スラッジを処理してアルミニウム成分を溶解させる手段と、不溶成分と溶解成分を分離する手段と、溶解したアルミニウム成分を含む溶液を送り出す手段を有する、アルミニウム化合物の回収装置において、アルミニウム溶出の前に該スラッジに含まれるイオン性カルシウムの当量以上の炭酸塩を該スラッジに投入する手段と、該スラッジのpHを8以上9.5以下に調整して反応させる手段と、該スラッジからアルミニウムを溶出する際に該スラッジのpHを10以上12.5以下に調整する手段を有することを特徴としたアルミニウム化合物の回収装置。
【請求項10】 前記回収装置がスラッジの濃縮手段を有することを特徴とする、請求項9に記載のアルミニウム化合物の回収装置。
【請求項11】 請求項9または10に記載のアルミニウム化合物回収装置を含む、廃水からのフッ素および/または燐除去装置。
【請求項1】 フッ素および/または燐の除去を目的としたシステムにおいて用いられる、アルミニウム化合物の回収方法であって、アルミニウム化合物を主成分とし、カルシウム、およびフッ素および/または燐を含有するスラッジを処理してアルミニウム成分を溶解させる工程と、不溶成分と溶解成分を分離する工程とを有する、アルミニウム化合物の回収方法において、アルミニウム溶出工程の前に該スラッジに含まれるイオン性カルシウムの当量以上の炭酸塩を該スラッジに投入することと、該スラッジのpHを8以上9.5以下に調整して反応させることと、該スラッジからアルミニウムを溶出する工程における、該スラッジのpHを10以上12.5以下に調整することを特徴としたアルミニウム化合物の回収方法。
【請求項2】 前記スラッジが少なくともフッ素を含有することを特徴とする、請求項1に記載の回収方法。
【請求項3】 前記炭酸塩に炭酸ナトリウムを用いる請求項1または2記載の回収方法。
【請求項4】 前記スラッジが、フッ素および/または燐を含む廃水をpH6〜8で処理することで形成されたものであることを特徴とする、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の回収方法。
【請求項5】 前記スラッジが、前記炭酸塩の投入前に濃縮されることを特徴とする、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の回収方法。
【請求項6】 請求項1および3ないし5のいずれか1項に記載のアルミニウム化合物回収方法を含む、廃水からのフッ素および/または燐除去方法。
【請求項7】 前記廃水が少なくともフッ素を含有することを特徴とする、請求項6に記載のフッ素および/または燐除去方法。
【請求項8】 前記イオン除去方法において、廃水に添加するカルシウムが、上流側で該イオン除去のため添加および/または補充されるカルシウム塩と、下流工程から回収され上流の該カルシウム添加工程に戻されるスラッジの一部からのみ供給されることを特徴とする、請求項7に記載のフッ素および/または燐除去方法。
【請求項9】 フッ素および/または燐の除去を目的とした装置におけるアルミニウム化合物の回収装置であって、アルミニウム化合物を主成分とし、カルシウム、およびフッ素および/または燐を含有するスラッジを導入する手段と、該スラッジを処理してアルミニウム成分を溶解させる手段と、不溶成分と溶解成分を分離する手段と、溶解したアルミニウム成分を含む溶液を送り出す手段を有する、アルミニウム化合物の回収装置において、アルミニウム溶出の前に該スラッジに含まれるイオン性カルシウムの当量以上の炭酸塩を該スラッジに投入する手段と、該スラッジのpHを8以上9.5以下に調整して反応させる手段と、該スラッジからアルミニウムを溶出する際に該スラッジのpHを10以上12.5以下に調整する手段を有することを特徴としたアルミニウム化合物の回収装置。
【請求項10】 前記回収装置がスラッジの濃縮手段を有することを特徴とする、請求項9に記載のアルミニウム化合物の回収装置。
【請求項11】 請求項9または10に記載のアルミニウム化合物回収装置を含む、廃水からのフッ素および/または燐除去装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
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【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2000−140890(P2000−140890A)
【公開日】平成12年5月23日(2000.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平10−319374
【出願日】平成10年11月10日(1998.11.10)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成12年5月23日(2000.5.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成10年11月10日(1998.11.10)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】
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