説明

廃水処理システム

【課題】 特にPVA廃水を処理するにあたり、従来装置と比較して、短期間かつ低コストで廃水処理を効果的に実現する廃水処理システムを提供すること。
【解決手段】 本発明の廃水処理システムは、ポリビニルアルコールを含む廃水に食塩を混合し電気分解し、セルロース系繊維構造物の漂白工程及び/又は液体アンモニア加工工程の廃水と前記電気分解された廃水を合わせ、前記合わされた廃水を脱窒素及び活性汚泥処理することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業廃水の電気分解を含む廃水処理システムに関し、特に、主にポリビニルアルコールを含む産業廃水を経済的にかつ効果的に処理する廃水処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
産業廃水に含まれるポリビニルアルコール(PVA)は、織物や編物などの漂白・染色工場から排出される物質であるが、生物分解性が悪く、活性汚泥法で処理すると20日以上の長期間の処理が必要とされている。
【0003】
そのため、現状では濃縮して焼却されることが多いが、焼却費用や焼却灰の処理コストが掛かる、また、焼却による二酸化炭素の排出の観点から問題視されている。
【0004】
<1>特開平11−309468号公報に記載されているように、金属触媒の存在下、酸化剤を添加して、有機物を酸化させる方法も多数開示されている。しかし、これらの方法は、使用する酸化剤が劇物で取り扱いが難しく、コストも高いのが難点である。
【0005】
次に、電気分解による方法も提案されている。
<2>例えば、特開平6−254568号公報においては、電解質溶液である又は電解質溶液とした廃棄液に直流電流を流すことにより、これによって生成する発生基活性酸素が、廃棄液中の被酸化物質と反応しこれを酸化分解させる廃棄液処理工程を有する方法を提案している。
<3>特開2000−254650号公報では、陰極に酸素含有ガスを供給して過酸化水素を生成させ、かつ陽極に酸溶液添加口から無機酸を供給して次亜塩素酸等の酸化生成物を生成させて、前記両化合物により被処理液の処理を行う。これにより殺菌力が向上するとともに共存する酸化生成物の酸性により陰極表面近傍も中性から酸性に維持されて金属水酸化物の析出が抑制される水処理方法と装置が提案されている。
【0006】
<4>特開2003−326263号公報では、濃縮電気分解水処理法は、被処理水を濃縮して濃縮被処理液を得る濃縮工程及び、当該濃縮工程の後に前記濃縮被処理液を電気分解処理する電気分解工程を備え、好適には、上記電気分解工程の後に、更に、電気分解後の処理液を、濃縮工程で得られた濃縮被処理液以外の分離水で希釈する希釈工程を備える。又、更に、上記濃縮工程の前に、被処理水を生物分解処理する生物分解処理工程を備える濃縮電気分解水処理法が提案されている。
【0007】
しかしながら、PVAを電気分解処理のみで行う場合、PVAの分解が十分でなく、また、一般的に電気分解を用いた方法においては、充分な電極の反応面積を確保するためには装置の投資が高価になってしまうという問題がある。
【0008】
【特許文献1】特開平11−309468号公報
【特許文献2】特開平6−254568号公報
【特許文献3】特開2000−254650号公報
【特許文献4】特開2003−326263号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、特にPVA廃水を処理するにあたり、従来装置と比較して、短期間かつ低コストで廃水処理を効果的に実現する廃水処理システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は、上記課題に鑑み、PVAを数質量%含まれる廃水に食塩を添加し電気分解する。漂白加工や液体アンモニア加工工程の廃水と前記電気分解処理した廃水とを合流させ、この合流させた廃水を脱窒素及び活性汚泥処理工程に通すようにした廃水処理システムを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
本発明は、
<1>ポリビニルアルコールを含む廃水に食塩を混合し電気分解し、セルロース系繊維構造物の漂白工程及び/又は液体アンモニア加工工程の廃水と前記電気分解された廃水を合わせ、前記合わされた廃水を脱窒素及び活性汚泥処理することを特徴とする廃水処理システム、
<2>前記電気分解したポリビニルアルコールを含む廃水とセルロース系繊維構造物の前記漂白工程及び/又は液体アンモニア加工工程の廃水を、1:25〜1:35の割合で合わせて、脱窒素及び活性汚泥処理することを特徴とする<1>記載の廃水処理システム、
<3>上記電気分解の電極1組当りの処理条件は、処理時間(滞留)が30〜60分、電流が400〜500A、電圧が6〜10V、電極1組当りの処理量が2〜3m/日、食塩(NaCl)濃度が3000〜5000mg/Lとしたことを特徴とする<1>、<2>記載の廃水処理システム、
である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の廃水処理システムは、
<1>PVA廃水処理に掛かる期間を、生分解性処理のみの場合に比べ大幅に短縮できる、約20日から2〜4日に短縮、
<2>PVA廃水処理装置の稼動維持費用を大幅に低減できる、
<3>PVAの焼却処理よりも処理費用を低減できる、
等の効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1を用いて、本発明の廃水処理システムを説明する。
本発明の廃水処理システムは、PVAを数質量%含む廃水に食塩を添加し電気分解する。漂白加工や液体アンモニア加工工程の廃水と前記電気分解処理した廃水とを合流させ、この合流させた廃水を脱窒素及び活性汚泥処理工程に通すことで、PVAなどの汚染物質を早期に分解処理する。
【0014】
図2を用いて、本発明の電気分解装置を説明する。
電気分解は、廃水1中に食塩を混ぜ電気分解すると、溶解している塩素イオンは陽極で酸化されて塩素イオンが生成し、塩素の一部は更に水と反応して次亜塩素酸イオンを生成し、この塩素及び次亜塩素酸がCOD成分を酸化分解し、CODMn値の低減と生物分解性成分を生成する。
図2中上部から装置内に廃水1を導水し、逆コの字状に形成された電極部の水路6を流れていく。この水路6の凸状部の電極5aを陽極、凹状部の電極5bを陰極のよう配し、電極の間を廃水1が流れ、電圧が掛けられた電極間を流れることにより、廃水1内に入れた食塩が電気分解する。この水路6を直線状、または曲線状にすることも可能であるが、廃水1が電極間を流れて電気分解される時間をコントロールする、また廃水1と電極の接触面積を増やすには、図2のように廃水1の流れの方向を変えることが好ましい。
【0015】
PVAを含む廃水の電気分解装置の設定条件を決定するために、PVA排水のCODMn濃度が27,000mg/Lの時の条件を、電圧約9V、電流500A、処理量100L、電極1setで、表1の実験を行った。
【表1】

水質基準の指標の一つである水質汚濁負荷量はCOD(Chemical Oxygen Demmand:化学的酸素要求量)濃度と排水流量との積で定義されており,一日平均排水量が50m以上の事業所はその汚濁負荷量を測定するとともに,その規制値を遵守することを義務づけられている。
【0016】
前記表1より、PVA排水のCODMn濃度が約27,000mg/Lの時、電気分解処理条件は、電圧9V、電流500A,処理量100L/電極1set、NaCl濃度3,000mg/L、電気分解処理時間に余裕をみて45分が好ましいことがわかった。
【0017】
電気分解装置は、ポリビニルアルコール(PVA)が約2質量%含まれるPVA廃水1を、処理時間は、30〜60分とし、30分未満では未処理となることがあり、また、60分を超えると効率が悪くなる。電流と電圧は、400〜500A、6〜10Vとし、この条件以下では処理能力が落ち、また、この条件を超えると水温の上昇が起きたり電極の寿命が短くなるなどの影響がでる。電極1組当りの処理量は、2〜3m/日で、食塩(NaCl)濃度は、3000〜5000mg/Lとし、3000mg/L未満のときは処理能力が低下し、5000mg/Lを超えると未利用分が増えて効率が下がるなどの影響がでる。
【0018】
電極は、廃水中の汚染物質により、炭素、鉄、チタン、ステンレススチールなどが用いられ、腐食耐性などよりチタンがより好ましく用いられる。
【0019】
PVA廃水1にはPVA以外の懸濁物が含まれており、この懸濁物は、電気分解で発生する微細気泡に付着し浮上する。懸濁物を含む浮上した泡は、電気分解処理槽からオーバーフローし、次の処理に送られる。
電気分解処理されたPVA廃水1約100ton/日は、漂白工程や液体アンモニア加工の廃水約2,900ton/日と合され、合わせて約3,000ton/日の廃水が次工程の脱窒素及び活性汚泥処理にかけられる。
【0020】
次に、脱窒素及び活性汚泥処理装置について説明する。
漂白工程や液体アンモニア加工工程等の廃水2と電気分解処理されたPVA廃水1は、両廃水が合されてから脱窒素及び活性汚泥処理装置により廃水中の窒素やアンモニアを分解して窒素が取り除かれるとともに、微生物(バクテリア)によりPVAや水中汚染物質が分解・沈殿されて、水と分離される。
脱窒素及び活性汚泥処理装置は、処理槽内部に様々なバクテリアを繁殖させて汚染物質をバクテリアにて分解させるものである。バクテリアは、水中の汚染物質を分解するに当って最適なものを選択すれば良い。
【実施例】
【0021】
PVAを約2質量%含有するPVA廃水1(約100ton/日)を、下記の条件に設定された電気分解装置を通し、また、漂白工程や液体アンモニア加工工程からの廃水2(約2,900ton/日)を合わせて約3,000ton/日の混合廃水3を、脱窒素及び活性汚泥装置に通した。
【0022】
電気分解装置の各種条件を下記のように設定した。
条件
廃水処理量 :100m(ton)/日
電極1組当たりの処理量:2〜3m/日

電流・電圧 :500A・9V/電極1組
NaCl濃度:3,000mg/L
【0023】
このときの電気分解処理後で脱窒素及び活性汚泥処理前の廃水CODMn値と脱窒素及び活性汚泥処理処理後の処理水CODMn値を、表2に示す。表2中、2日間づつ工場休業日のためPVA廃水がない日は測定していない。
【表2】

【0024】
廃水3のCODMnは、600〜1,000mg/Lの間であったが、脱窒素及び活性汚泥処理後の処理水4のCODMnは、80mg/L以下となっている。なお、この処理水4はこの後、加圧浮上装置やPH調整などの処理が行われ、外部に排水される。ここで、CODMnを80mg/L以下したが、工場から排水される際には、規制値である日間平均20mg/L以下および最大25mg/L以下をクリアするためのものである。
【0025】
比較例
実施例と比較するために、PVA廃水1を電気分解処理せずに、漂白加工や液体アンモニア加工工程の廃水と合わせて、脱窒素及び活性汚泥処理装置で処理をし、6日間の混合排水3と処理水4のCODMn(mg/L)を測定した。測定時間は、毎日10時とし、測定方法はJIS K 0102 17(100℃における過マンガン酸カリウムによる酸素消費量)に基づき、測定結果を表3に示した。
【0026】
【表3】

表3から、電気分解処理されないPVA含有廃水が混合廃水3として現れたのが第2日目の測定時であり、これが処理水4として現れたのが第5日目のため、混合廃水3は脱窒素及び活性汚泥処理装置内において約3日間で処理され、その後廃水される。このことから、PVAは脱窒素及び活性汚泥処理装置内において約3日間で分解処理されていることが解る。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の廃水処理システムの説明図。
【図2】本発明の廃水処理システムに用いられる電解装置の概略説明図。
【符号の説明】
【0028】
1 PVA廃水
2 漂白等の廃水
3 混合廃水
4 処理水
5a 電極a
5b 電極b
6 水路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリビニルアルコールを含む廃水に食塩を混合し電気分解し、セルロース系繊維構造物の漂白工程及び/又は液体アンモニア加工工程の廃水と前記電気分解された廃水を合わせ、前記合わされた廃水を脱窒素及び活性汚泥処理することを特徴とする廃水処理システム。
【請求項2】
前記電気分解したポリビニルアルコールを含む廃水とセルロース系繊維構造物の前記漂白工程及び/又は液体アンモニア加工工程の廃水を、1:25〜1:35の割合で合わせて、脱窒素及び活性汚泥処理することを特徴とする請求項1記載の廃水処理システム。
【請求項3】
上記電気分解は電極1組当りの処理条件を、廃水のCODMnが20000〜30000mg/L当り、処理時間(滞留)が30〜60分、電流が400〜500A、電圧が6〜10V、電極1組当りの処理量が2〜3m/日、食塩(NaCl)濃度が3000〜5000mg/Lとしたことを特徴とする請求項1、2記載の廃水処理システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−188488(P2008−188488A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−22756(P2007−22756)
【出願日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【出願人】(000004374)日清紡績株式会社 (370)
【出願人】(000120401)荏原実業株式会社 (31)
【Fターム(参考)】