説明

廃水処理装置

【課題】簡単な構造で、回転体の円板内側部分が嫌気性となることを防止して好気処理を安定して効率よく行うことができる廃水処理装置を提供する。
【解決手段】複数の円板11b,12bを間隔をおいて回転軸11a,12aに取り付けて回転体11,12を形成する。円板11b,12bの下部を処理槽10a内の水中に浸漬させながら回転させて、水中の汚濁成分を円板11b,12bに付着した活性汚泥に吸着させる。回転体11,12を、双方の回転体11,12の円板11b,12bが間隔をおいて交互に重なり合うように並列に配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃水処理装置に係り、詳しくは、回転円板式の廃水処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
小規模下水処理や産業廃水処理向けに、回転円板式の廃水処理装置が一般に採用されている。回転円板式の廃水処理装置は、処理槽に設けた回転軸に複数の円板を所定間隔で配設し、各円板の下部を水中に浸漬させた状態でゆっくりと回転させるものであり、円板に付着した活性汚泥は、空気中に露出したときに大気から酸素を吸収し、廃水中では廃水中から汚濁成分を吸着することにより、汚濁成分を好気的に分解する。円板表面では新しい微生物が増殖を続ける一方で、活性が低下した微生物は円板表面から脱落していく(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平10−216760号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、従来の回転円板式の廃水処理装置では、円板の外周部分に比べて内周部分における空気の流通量が少なくなる傾向にあり、内周部分の円板表面に付着した活性汚泥への酸素供給量が不足すると、内周部分の酸化還元電位が極端に低い嫌気状態となってしまうことがあった。このようにして嫌気状態になってしまうと、活性汚泥がその活性を失うばかりでなく、発酵が進行しやすくなり、腐敗臭により、悪臭の発生源になることがあった。
【0004】
また、円板表面の活性汚泥は微生物の繁殖により肥大化した後、円板表面から脱落するが、このとき、内周側の腐敗した汚泥から発生した細かな粒子が処理水とともに流出し、処理性を悪化させてしまうことがある。さらに、汚泥の脱落は、回転円板上で不均一に起きるため、回転軸に大きな負荷がかかり、回転軸が折れ曲がってしまう虞もある。これを防止するために回転軸を太くしたりする必要があり、装置製作費の高騰を招くとともに。回転軸の駆動に要するエネルギーも増大する。
【0005】
そこで本発明は、簡単な構造で、円板内周部分が嫌気性となることを防止し、好気処理を安定して効率よく行うことができる廃水処理装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため本発明の廃水処理装置は、複数の円板を間隔をおいて回転軸に取り付けて回転体を形成し、該回転体を処理槽の上部に配置し、各円板の下部を処理槽内の水中に浸漬させながら回転させて、水中の汚濁成分を円板に付着した活性汚泥に吸着させて処理する廃水処理装置において、複数の前記回転体を、隣り合う回転体の円板が間隔をおいて交互に重なり合うように並列に配置したことを特徴とし、前記回転体は、隣り合う回転体の回転軸近傍まで円板が重なるように回転軸を近接させて配置すると良く、また、前記処理槽に吸気部と排気部とをそれぞれ設けると好適である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の廃水処理装置によれば、回転体の円板は、隣り合う回転体の円板が間隔をおいて交互に重なり合うことから、円板に付着する活性汚泥の厚さを常に一定に維持したまま回転体の運転を継続することができ、円板内周部分が嫌気性となることを防止し、好気処理を安定して効率よく行うことができる。また、前記間隔を調整することにより、隣り合う円板表面の活性汚泥を合体させることなく、円板に活性汚泥を薄く付着させることができるので、回転体に多くの円板を設けることができ、廃水中の汚濁成分を効率よく処理することができる。さらに、円板表面の活性汚泥を薄い状態に維持できることから、内側の活性汚泥にも酸素を良好に到達させることができ、嫌気状態となることがないので、活性汚泥がその活性を失ったり、悪臭の発生源となる虞がない。
【0008】
また、隣り合う回転体の回転軸近傍まで円板が重なるように、回転体の回転軸を近接させて配置することにより、円板が廃水に接している部分よりも回転軸に近い部分にまで活性汚泥を広げることができ、活性汚泥を良好な状態に維持することができ、処理槽の小型化を図ることができる。
【0009】
さらに、処理槽に吸気部と排気部とをそれぞれ設けることにより、ファンを用いて吸排気したり、回転体の回転により自然吸排気することが可能となり、活性汚泥に効率よく酸素を供給することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の一形態例を図面に基づいて詳しく説明する。図1乃至図3は、本発明の第1形態例を示すもので、図1は廃水処理装置の要部正面図、図2は廃水処理装置の要部平面図、図3は第1形態例の廃水処理装置を組み込んだ廃水処理フローを示す説明図である。本形態例の廃水処理装置10は、処理槽10aと、該処理槽10aの上部に取り付けられる第1回転体11と、第2回転体12とを備えている。
【0011】
第1回転体11と第2回転体12とは、略同一の構造を有するもので、同径の回転軸11a,12aの軸方向に、同径の複数の円板11b,12bが所定間隔で配設されている。第1回転体11と第2回転体12とは、第1回転体11に設けられた複数の円板11bと、第2回転体12に設けられた複数の円板12bとが、双方の回転軸11a,12aの近傍まで交互に重なり合うように、回転軸11a,12aを近接させて配置させている。また、双方の回転軸11a,12aは逆方向に回転するように電動機等の駆動源にそれぞれ接続されている。
【0012】
図3に示されるように、処理槽10aには、一側部に廃水の流入部13が、他側部に好気処理水の流出部14がそれぞれ設けられている。処理槽10a内の水位は、第1回転体11及び第2回転体12の回転軸11a,12aよりも下方位置とし、円板11b,12bの面積の約10%が廃水中に浸漬するように設定している。なお、水位設定は、流出部13あるいはその下流側に堰を設けるなど周知の方式で容易に行うことができる。
【0013】
このように形成した廃水処理装置10において、下水や産業廃水等の原水は、必要に応じて適当な前処理が施された後、汚泥経路15からの返送汚泥とともに、前記流入部13から処理槽10a内に流入する。第1回転体11と第2回転体12とは、駆動源の作動により互いに逆方向にゆっくりとした速度で回転する。
【0014】
第1回転体11と第2回転体12の回転に伴って、円板11b,12bは活性汚泥混合水中に浸漬された水面下の状態と、水面上に露出した状態とを繰り返す。円板11b,12bの表面に付着した活性汚泥は、水面上に露出したときに空気中の酸素を取り込むとともに、水面下となったときに廃水中の有機物を取り込み、摂取した酸素を用いて廃水中の有機物を代謝することにより、廃水の好気処理が行われる。
【0015】
第1回転体11と第2回転体12の円板同士の間隔は、適宜設定すれば良いが、例えば円板11b,12bの厚さを2mm、重なり合う円板同士の隙間を1mmに設定し、円板11b,12bの表面に付着する活性汚泥の厚さを0.5mmの厚さに維持すれば良い。このとき、重なり合わない部分での円板同士の間隔は3mmとなり、第1回転体11及び第2回転体12の回転中に円板間に空気を良好に流すことができる。
【0016】
このようにして処理された好気処理水は、流出部14から流出し、脱窒槽16に送られ、微生物等を用いた嫌気性生物処理で脱窒される。脱窒槽16で脱窒された嫌気処理水は、経路17を介して最終沈殿池18に送られ、固液分離される。最終沈殿池18の上澄み水は、経路19から抜き出されて滅菌処理等が施された後に放流され、上澄み水の一部は、経路20を介して前記脱窒槽16の上部から間欠的にスプレーされ、これによって脱窒槽16で浮上する一部の汚泥を沈降させるようにしている。さらに、最終沈殿池18の沈殿汚泥の一部は返送汚泥として、前記汚泥経路15から処理槽10aに返送され、余剰分は抜き出されて脱水等の処理が行われる。
【0017】
上述のように、本形態例では、2つの回転体11,12を、双方の円板11b,12bが間隔をおいて交互に重なり合うように配置したことから、円板11b,12bに付着する活性汚泥の厚さを常に一定に維持したまま回転体11,12の運転を継続することができ、円板内周部分が嫌気性となることを防止し、好気処理を安定して効率よく行うことができる。また、円板11b,12bの間隔を適宜設定することにより、隣り合う円板表面の活性汚泥を合体させることなく、且つ、円板11b,12bに活性汚泥を薄く付着させることができるので、回転軸11a,12aに多くの円板11b,12bを設けることができ、廃水中の汚濁成分を効率よく処理することができる。さらに、円板表面の活性汚泥を薄い状態に維持できることから、内側の活性汚泥にも酸素を良好に到達させることができ、嫌気状態となることがないので、活性汚泥がその活性を失ったり、悪臭の発生源となる虞がない。
【0018】
また、双方の回転体11,12の円板11b,12bは、双方の回転軸11a,12aの近傍まで重なるように、回転軸11a,12aを近接させて配置することにより、円板11b,12bが廃水に接している部分よりも回転軸11a,12aに近い部分にまで活性汚泥を広げることができ、活性汚泥を良好な状態に維持することができ、処理槽10aの小型化を図ることができる。
【0019】
図4及び図5は本発明の第2形態例を示し、図4は廃水処理装置の要部正面図、図5は廃水処理装置の要部平面図である。図6及び図7は本発明の第3形態例を示し、図6は廃水処理装置の要部正面図、図7は廃水処理装置の要部平面図である。なお、以下の説明において、第1形態例で示した廃水処理装置における構成要素と同一の構成要素には、それぞれ同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0020】
第2形態例では、処理槽10aの一側部に吸気部10bを、他側部に排気部10cをそれぞれ設けている。これにより、図4及び図5の矢印に示すように、円板同士の間に形成される空間を、空気が円板11b,12b表面の活性汚泥と接触しながら流れ、円板11b,12bに付着した活性汚泥の全体に効果的に酸素を供給することができ、効果的な好気処理を行うことができる。
【0021】
第3形態例では、処理槽10aの上部に吸気部10bを、一側部と他側部に排気部10c,10cをそれぞれ設けている。これにより図6及び図7の矢印に示すように空気が流れ、より効果的に円板11b,12bに付着した活性汚泥の全体に効果的に酸素を供給することができる。
【0022】
上述の第2,第3形態例の吸排気は、ファンを用いて強制的に行っても良く、円板の回転により自然通気でも良い。
【0023】
なお、本発明の上述の各形態例のように、2つの回転体を並列に設けるものに限らず、3つ以上の回転体を並列に設けることもでき、回転軸や円板の径が異なるものでも良い。また、回転体を同方向に回転させても良い。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1形態例を示す廃水処理装置の要部正面図である。
【図2】同じく廃水処理装置の要部平面図である。
【図3】第1形態例の廃水処理装置を組み込んだ廃水処理フローを示す説明図である。
【図4】本発明の第2形態例を示す廃水処理装置の要部正面図である。
【図5】同じく廃水処理装置の要部平面図である。
【図6】本発明の第3形態例を示す廃水処理装置の要部正面図である。
【図7】同じく廃水処理装置の要部平面図である。
【符号の説明】
【0025】
10…廃水処理装置、10a…処理槽、10b…吸気部、10c…排気部、11…第1回転体、12…第2回転体、11a,12a…回転軸、11b,12b…円板、13…流入部、14…流出部、15…汚泥経路、16…脱窒槽、17,19,20…経路、18…最終沈殿池

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の円板を間隔をおいて回転軸に取り付けて回転体を形成し、該回転体を処理槽の上部に配置し、各円板の下部を処理槽内の水中に浸漬させながら回転させて、水中の汚濁成分を円板に付着した活性汚泥に吸着させて処理する廃水処理装置において、複数の前記回転体を、隣り合う回転体の円板が間隔をおいて交互に重なり合うように並列に配置したことを特徴とする廃水処理装置。
【請求項2】
前記回転体は、隣り合う回転体の回転軸近傍まで円板が重なるように回転軸を近接させて配置することを特徴とする請求項1記載の廃水処理装置。
【請求項3】
前記処理槽に吸気部と排気部とをそれぞれ設けたことを特徴とする請求項1又は2記載の廃水処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−209850(P2007−209850A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−29765(P2006−29765)
【出願日】平成18年2月7日(2006.2.7)
【出願人】(390014074)前澤工業株式会社 (134)
【Fターム(参考)】