説明

廃水処理装置

【課題】高BOD廃水でも、亜硝酸化嫌気性脱窒処理を簡単な装置構成で効率よく行うことができ、連続型にも、バッチ式にも適用が可能な廃水処理装置を提供する。
【解決手段】
アンモニア性窒素濃度が500ppm以上の廃水のアンモニア除去を行う廃水処理装置において、廃水中のアンモニウムイオンを亜硝酸イオンに酸化する好気処理部13と、生成した亜硝酸イオンと廃水中のアンモニウムイオンとを嫌気状態で反応させて窒素ガスを生成させる嫌気処理部14とを、拡散現象によってアンモニウムイオン及び亜硝酸イオンが通過可能なイオン透過部21を有する仕切部材12で区画し、仕切部材19の通水抵抗は、圧力10kPaでの通水量が500L/分/m以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃水処理装置に関し、詳しくは、廃水中に高濃度で含まれるアンモニア性窒素の除去処理を部分亜硝酸化及び嫌気性アンモニア酸化により行う廃水処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水処理技術においてアンモニア含有廃水中の窒素除去技術としては、従来から循環式硝化脱窒法が広く知られている。しかしながら、この技術は、設置面積を広く必要とすることや循環ポンプの設置等、設備面におけるコストが高く、またアンモニアを全量硝化するために過剰に曝気を行う必要があり、さらに脱窒の際の栄養源としての水素供与体を添加しなければならないといったランニングコスト面においても問題点がある。
【0003】
しかし、近年、アンモニア性窒素を含有する有機性廃液の処理方法において、廃液中のアンモニア性窒素を亜硝酸化細菌により部分的に亜硝酸化し、生成する亜硝酸化液を嫌気性アンモニア酸化法により、脱窒する処理方法が知られている。
【0004】
この技術は、硝化反応の際、アンモニアから亜硝酸までの部分酸化のため、硝化に要する曝気量を削減できることに加えて、この反応に関わる微生物が自栄養性の細菌であるため、水素供与体であるメタノール等の有機物の添加を必要とせず、薬品コストの削減につながり、かつ、生成汚泥量が従来に比べて大幅に減少するといった利点がある(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
さらに、この嫌気性アンモニア酸化法を利用した技術として、SNAP法やCanon法が提案されている。SNAP法は、一槽でのアンモニア除去法であり、槽底部中央からの曝気により槽内に対流を発生させ、槽周辺部に設置した付着固定担体表面に好気性微生物であるアンモニア酸化細菌を付着させるとともに、担体内部の嫌気部分に嫌気性アンモニア酸化細菌を生息させ、この両者の働きによって硝化・脱窒を行う処理方法である。一方のCanon法は、リアクタに酸素を制限的に供給することで流入水中のアンモニアの半量をアンモニア酸化細菌の働きで硝酸に変換し、一槽で窒素除去を行う方法である。
【0006】
しかしながら、この両方法は、いずれもリアクタ内を低DOとし、嫌気性アンモニア酸化細菌を優先させる方法であるため、亜硝酸生成速度が低く、脱窒の速度も低下するといった問題を有している。また、低C/N比の廃水に対しては有効であるが、高BODの廃水への適用は困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−74253号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述のように、SNAP法やCanon法のように一槽での脱窒処理は種々の問題点を有しているが、前記特許文献1に記載された方法では、前述のような利点は有しているものの、複数の処理槽を設置する必要があり、設備面におけるコストに問題があるだけでなく、BOD、DOの持込、亜硝酸/アンモニア濃度比の微調整等の問題がある。
【0009】
そこで本発明は、高BOD廃水でも、亜硝酸化嫌気性脱窒処理を簡単な装置構成で効率よく行うことができ、連続型にも、バッチ式にも適用が可能な廃水処理装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の廃水処理装置は、アンモニア性窒素濃度が500ppm以上の廃水からアンモニアの除去処理を行う廃水処理装置において、前記廃水を曝気処理して廃水中のアンモニウムイオンを亜硝酸イオンに酸化する好気処理部と、生成した亜硝酸イオンと廃水中のアンモニウムイオンとを嫌気状態で反応させて窒素ガスを生成させる嫌気処理部とを備えるとともに、前記好気処理部と前記嫌気処理部とを、拡散現象によって前記アンモニウムイオン及び亜硝酸イオンが通過可能なイオン透過部を有する仕切部材で区画し、該仕切部材の通水抵抗は、圧力10kPaでの通水量が500L/分/m以下である
ことを特徴としている。
【0011】
また、前記廃水中のBOD濃度が500ppm未満の場合は、前記好気処理部が前記廃水を導入する手段を有し、かつ、前記嫌気処理部が処理水を導出する手段を有する連続型の廃水処理装置が好適で、前記廃水中のBOD濃度が500ppm以上の場合は、前記好気処理部が廃水を導入する手段と処理水を導出する手段とを有するバッチ式の廃水処理装置が好適である。前記仕切部材は、金属性通水性板材で形成することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の廃水処理装置によれば、好気処理部と嫌気処理部との間の水(液)の対流(循環)を必要最小限に抑えることができるので、嫌気処理部へのBOD、DOの持込みを抑制して高効率、高負荷での運転が可能となり、アンモニア性窒素濃度が500ppm以上の廃水の処理も確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明を連続型廃水処理装置に適用した一形態例を示す概略系統図である。
【図2】本発明をバッチ式廃水処理装置に適用した一形態例を示す概略系統図である。
【図3】仕切部材の概略を示す要部の斜視図である。
【図4】通孔を有する複数枚の邪魔板を配置した仕切部材の一例を示す要部の断面図である。
【図5】仕切部材の種々の形状例を示す各正面図である。
【図6】仕切部材の種々の形状例を示す各断面側面図である。
【図7】仕切部材を複数枚設けたときの種々の配置例を示す各断面側面図である。
【図8】本発明の廃水処理装置の他の形態例を示す概略系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は本発明を連続型廃水処理装置に適用した一形態例を示す概略系統図である。この連続型廃水処理装置は、処理槽11の内部を仕切部材12によって好気処理部13と嫌気処理部14とに区画したものであって、好気処理部13の底部には、水中に酸素を供給するための散気装置15が設けられている。
【0015】
また、好気処理部13には所定量の廃水を連続的に導入する廃水導入手段16と、好気処理部13内が生成した硝酸性窒素(亜硝酸イオン)によって酸性に傾くのを抑えて適切なpHに保つためのアルカリ剤を添加するアルカリ剤添加手段17と、好気処理部13内のpHを測定して前記アルカリ剤の添加量を調整するためのpH計18とが設けられ、嫌気処理部14には処理水導出手段19が設けられている。
【0016】
この連続型廃水処理装置では、廃水導入手段16から連続的に導入された廃水は、好気処理部13での好気処理と嫌気処理部14での嫌気処理とによってアンモニアの除去処理が行われ、アンモニア性窒素濃度が低下した処理水が嫌気処理部14の処理水導出手段19から常時抜き取られることにより、連続的に廃水処理が行われる。このとき、廃水中のBOD濃度が500ppm未満の場合は、好気処理部13での汚泥生成量が少なく、嫌気処理部14に汚泥が流入しても嫌気性アンモニア酸化菌への影響が少ないため、このような連続型廃水処理装置の使用が好適であり、廃水処理を連続的に効率よく行うことができる。
【0017】
図2は本発明をバッチ式(回分式)廃水処理装置に適用した一形態例を示す概略系統図である。このバッチ式(回分式)廃水処理装置は、廃水を導入する廃水導入手段16と、処理水を導出する処理水導出手段19とが、共に好気処理部13に設けられていることが、前記連続型廃水処理装置と異なるだけであり、その他の点は共通しているので、前記図1の形態例に示した各構成要素と同一の構成要素には、それぞれ同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0018】
このバッチ式廃水処理装置では、廃水導入手段16から好気処理部13を介して処理槽11内に所定量の廃水を導入し、好気処理部13での好気処理と嫌気処理部14での嫌気処理とを所定時間行ってアンモニアの除去処理を行った後、アンモニア性窒素濃度が低下した処理水を好気処理部13の処理水導出手段19から抜き取ることにより、1回分の廃水処理が行われる。このバッチ式廃水処理装置は、廃水中のBOD濃度が500ppm以上のときに好適である。すなわち、BOD濃度が500ppm以上の場合は、好気処理部12での汚泥生成量が多くなり、嫌気処理部14へ汚泥が大量に流入すると嫌気性アンモニア酸化菌の活動を阻害する可能性があるため、好気処理部13から処理水とともに生成汚泥を排出する必要がある。
【0019】
図3は前記連続型廃水処理装置やバッチ式廃水処理装置で処理槽11内を好気処理部13と嫌気処理部14とに区画する仕切部材12の概略を示す要部の斜視図である。この仕切部材12は、水中における面積の70%以上をイオン透過部21、残りの面積を通水部22としている。通水部22は、好気処理部13と嫌気処理部14との間の水が通過を許容する開口となっており、このような通水部22を仕切部材12の一部に設けることにより、好気処理部13から嫌気処理部14への移動する水が仕切部材12を通過しないので、仕切部材12への汚泥の付着を軽減させることができる。
【0020】
前記イオン透過部21は、好気処理部13と嫌気処理部14との間の水の流通を実質的に遮断するとともにアンモニウムイオン(NH4)及び亜硝酸イオン(NO2)が通過(拡散)可能な材料、例えば、スポンジ型成型体、ろ布、パンチング板等のいずれか又はこれらを組み合わせたもの、あるいは、図4に示すように、水が直接的に流れないように交互に複数の邪魔板23a,23bを配置して通水抵抗を大きくしたものなどで形成することができる。
【0021】
すなわち、イオン透過部21は、イオンを拡散現象によって好気処理部13と嫌気処理部14とに移動させ、水の移動を最小限としている。このため、好気処理部13から嫌気処理部14への水中の酸素の移動を制限し、嫌気処理部14が好気性状態になることを防止できる。また、イオンに比べて分子量が大きい有機化合物の拡散速度が比較的遅いことから、好気処理部13内のBOD成分が嫌気処理部14へ移動することも抑制することができる。
【0022】
仕切部材12におけるイオン透過部21と通水部22との面積比は、処理対象となる廃水の性状や処理槽11の容積、好気処理部13と嫌気処理部14との容積比、仕切部材12の全体の面積等の様々な条件に応じて適宜設定することができるが、通常は、イオン透過部21の面積を70〜99%にする必要があり、70%未満では水の流通によって嫌気処理部14に溶存酸素が流入して嫌気性状態を保てなくなり、99%を超えると、前述のファウリング抑制効果が損なわれる。
【0023】
また、仕切り部材12は、好気処理部13と嫌気処理部14との間における水の流通(対流)を抑制できればよく、一枚である必要はなく、複数枚を併設してもよく、前記図4に示したように、通孔を有する複数枚の邪魔板23a,23bを適当な間隔で重ねて配置した構造とすることもできる。
【0024】
仕切部材12の材質や形状は適宜選択できるが、全体としての通水抵抗が一定以上である必要がある。ここでは、通水抵抗を圧力10kPaでの仕切部材12の単位面積[m]当たりの通水量Q10で表すと、好ましい仕切部材12の通水量Q10は500L/分/m以下であり、特に好ましいのは100L/分/mである。通水量Q10が500L/分/m以下であれば、対流を抑制するための通液抵抗が確保され、イオンを優先的に移動させることができる。仕切部材12の表面積は材質、廃液性状によって変動するが、窒素負荷1kg−N/日あたりの表面積は10m以上が好ましく、50m以上が特に好ましい。
【0025】
一方、好気処理部13での散気装置15からの曝気処理により、水中に溶解しているアンモニウムイオン(アンモニア性窒素)が酸化されて生成した亜硝酸イオン(亜硝酸性窒素)及び未反応のアンモニウムイオンは、仕切部材12の両側のイオン濃度差に応じて仕切部材12を拡散により通過して好気処理部13から嫌気処理部14に移動する。嫌気処理部14に移動したアンモニウムイオンと亜硝酸イオンとは、嫌気性アンモニア酸化によって窒素ガスを生成し、窒素ガスは気泡となって水中から系外に排出される。
【0026】
亜硝酸化手段である好気処理部13は、アンモニア性窒素を亜硝酸化細菌(アンモニア酸化細菌)により、硝酸が生成しないように亜硝酸化して、亜硝酸アンモニウムを生成させるように構成されており、硝酸が生成しにくい環境を作るためにアルカリ剤によってpHを7以上に保ちながら曝気を行う。また、DOセンサー等を用いて曝気の制御を行うこともできる。このような亜硝酸化手段としては、アンモニア性窒素と亜硝酸化細菌とを好気性下に接触させてアンモニア性窒素を亜硝酸化させるものが採用できる。亜硝酸化細菌は浮遊状態でもよく、スポンジ、樹脂成形体、活性炭等の担体に担持させた状態でもよい。
【0027】
好気処理部13で用いられる亜硝酸化細菌は、従来からアンモニア性窒素の亜硝酸化に用いられている細菌であって、好気性下でアンモニア性窒素を酸化して亜硝酸性窒素に転換する細菌である。このような亜硝酸化細菌は、アンモニア性窒素を含む液を好気性下で酸化することにより発生させることができるが、有機性廃水処理の好気処理手段から採取した汚泥をそのまま、又は、充填層に付着させて使用することができる。また、通常、散気によって好気処理部13内は均一混合状態にあるが、散気による撹拌力が不十分な場合は、撹拌機、循環ポンプ等の撹拌手段を設けることができる。
【0028】
脱窒手段である嫌気処理部14は、亜硝酸化液を嫌気性アンモニア酸化細菌により、アンモニア性窒素と亜硝酸性窒素とを反応させて脱窒するように構成される。嫌気性アンモニア酸化細菌は嫌気性であるため、酸素が供給されない構造が採用される。嫌気性アンモニア酸化細菌は、浮遊状の汚泥として用いてもよく、担体に担持した状態又はグラニュール等の粒状の状態で用いてもよい。あるいは嫌気性アンモニア酸化細菌単独ではなく、嫌気性アンモニア酸化細菌を優先化させた活性汚泥を用いることもできる。このような脱窒手段において、アンモニア性窒素と亜硝酸性窒素とを含む液を嫌気性アンモニア酸化細菌と接触させ、アンモニア性窒素と亜硝酸性窒素とを反応させ、窒素ガスに転換して脱窒を行う。
【0029】
嫌気処理部14で用いられる嫌気性アンモニア酸化細菌は、Planctomycetesに属す細菌であって、従来の脱窒に用いられている従属栄養性の脱窒細菌とは異なり、独立栄養性の細菌である。このため、脱窒に際して、従来の脱窒細菌には必要であったメタノール等の栄養源の添加を必要としない。また、嫌気性アンモニア酸化細菌は、アンモニア性窒素と亜硝酸性窒素とを反応させて直接窒素ガスに変換させるため、アンモニア性窒素及び亜硝酸性窒素を同時に除去でき、しかも、廃棄物を生成し難いという特徴を有している。
【0030】
さらに、嫌気性アンモニア酸化細菌は、アンモニア性窒素を電子供与体、亜硝酸性窒素を電子受容体として、アンモニア性窒素と亜硝酸性窒素とを反応させて直接窒素ガスに変換させるため、酸素及び硝酸性窒素は不要であり、酸素が存在すると、嫌気性アンモニア酸化細菌の脱窒活性は低下する。したがって、嫌気処理部14には、実質的に酸素が含まれていない状態の液(廃水)を供給するべきである。また、嫌気性アンモニア酸化細菌は硝酸を資化できないため、好気処理部13において硝酸性窒素が実質的に生成させないことが好ましい。酸素については、仕切部材12から嫌気処理部14へ移動する間に細菌によって消費されるので、通水部22における嫌気処理部14の入口部分で溶存酸素がなくなるような曝気量を容易に設定することができる。
【0031】
また、嫌気性アンモニア酸化細菌は、アンモニア性窒素と亜硝酸性窒素とをモル比で1:1.32で反応させるが、嫌気処理部14に供給する廃水は、アンモニア性窒素より亜硝酸性窒素の濃度が低くなっており、好気処理部13で生成した亜硝酸が仕切部材12を随時通過して嫌気処理部14で除去される状態となる。
【0032】
好気処理部13に供給する廃水は、アンモニア性窒素濃度が500mg/L以上、好ましくは500〜3000mg/L、さらに好ましくは500〜2000mg/Lの範囲である。アンモニア性窒素濃度が500mg/L未満であると、好気処理部13と嫌気処理部14との間の窒素成分の濃度差が十分ではなく、イオン移動速度が低くなるので好ましくない。なお、亜硝酸性窒素濃度が300mg/L未満であれば存在してもかまわないが、硝酸性窒素濃度が100ppmを超えると除去されずに処理水に残るので好ましくない。また、pHは、pH6.5〜9.0、好ましくはpH7.0〜8.5の範囲が望ましい。
【0033】
好気処理部13及び嫌気処理部14における処理温度は室温以上でよく、特に30℃以上が望ましく、低温時には加温してもよい。また、pH調整剤、栄養剤、その他の添加剤は必要に応じて注入することができる。さらに、汚泥が過剰に生成する場合には、一部を引き抜いて廃棄すればよい。
【0034】
嫌気処理部14では、前述のように、嫌気性アンモニア酸化細菌によって亜硝酸化液中のアンモニア性窒素と亜硝酸性窒素とが反応し、窒素ガスに変換されて脱窒される。このとき、溶存酸素の存在は、嫌気性アンモニア酸化細菌の活性を低下させるため、嫌気処理部14には流入しないことが望まれる。本形態例に示す仕切部材12は、一部に通水部22を設けているが、仕切部材12の全体として溶存酸素が嫌気処理部14に直接流入することを抑制できるため、従来より大流量で嫌気処理を行うことができる。嫌気性アンモニア酸化細菌による反応は、以下の反応式(1)に示され、アンモニア性窒素と亜硝酸性窒素とが略1:1.32で反応する。
【0035】
NH++1.32NO−+0.066HCO+0.13H
→ 1.02N+0.26NO−+0.066CH0.50.15+2.03HO …(1)
【0036】
上記処理では、高アンモニア性窒素濃度及び亜硝酸性窒素の液を好気処理部13及び嫌気処理部14で処理することにより、好気処理部13において硝酸が生成しない条件でアンモニア性窒素を亜硝酸化することができ、嫌気処理部14において無酸素下で高効率で脱窒を行うことができる。
【0037】
好気処理部13では、アンモニア性窒素:亜硝酸性窒素のモル比が近似的に1:1.32の亜硝酸化液を生成させる必要はなく、生成した亜硝酸イオンが仕切部材12を通過して順次嫌気処理部14に移動し、嫌気性アンモニア酸化菌によって窒素ガスへと変換されるため亜硝酸イオンの蓄積も起こらない。また、アンモニア性窒素を亜硝酸性窒素まで酸化すれば良く、従来のように亜硝酸性窒素から硝酸性窒素に酸化する必要はないので、硝化細菌を含む汚泥は不要であり、硝化菌を担持させるための充填材が省略でき、処理槽11の小型化が図れるとともに、酸化に必要な酸素の量(曝気量)も少なくできる。
【0038】
嫌気処理部14では、アンモニア性窒素と亜硝酸性窒素とを略1:1.32のモル比で反応させて脱窒するため、メタノール等の栄養源が不要であり、効率よく脱窒を行うことができる。また、脱窒反応で生成するのは無害な窒素ガスであり、そのまま廃棄できる。さらに、亜硝酸化細菌及び嫌気性アンモニア酸化細菌は増殖速度が小さいので、汚泥の増加量は少なく、余剰汚泥の発生量は少ない。
【0039】
図5は、前記仕切部材12の種々の形状例を示す各正面図であって、図5(a)は通水部22を縦方向に配置したもの、図5(b)は通水部22を横方向に配置したもの、図5(c)は横方向、縦方向に断続的に通水部22を配置したものであり、かつ、仕切部材12を生物固定化担体としている。これにより、汚泥の保持能力が向上し、好気処理部13側では亜硝酸酸化細菌が優先化した汚泥が仕切部材12に付着し、嫌気処理部14側では嫌気性アンモニア酸化細菌が優先化した汚泥が仕切部材12に付着することが考えられる。このようなタイプの仕切部材12を使用することにより、嫌気処理部14側への移動が好ましくない成分であるDOや有機物は嫌気処理部14へ流入する前に生物固定化担体に捕捉され、アンモニウムイオン、亜硝酸性イオンは嫌気処理部14に濃度差によって拡散する。図5(d)は円形の通水部22を多数配置したものであり、汚泥による詰まりがなく、イオンの移動を妨げないので、イオン移動速度を最大にすることができる。
【0040】
図6は、前記仕切部材12の種々の形状例を示す各断面側面図であって、図6(a)は通水部22の好気処理部13側に傾斜板24を設けたもので、このような傾斜板24を用いることにより、汚泥の有効分離面積を増大させることができる。傾斜板24を嫌気処理部14側が上向きにすることにより、好気処理部13で発生した汚泥が傾斜板24の隙間を上昇できず、水やイオンのみを嫌気処理部14に移動させることができる。図6(b)は前述の図5(d)の断面側面図に対応するもので、細かな通水部22を有する材料、例えばパンチングメタル等で形成したものを示している。図6(c)は通水部22の好気処理部13側に邪魔板25を配置したものであって、このように通水部22の前に邪魔板25を設けることにより、水の対流を抑制し、好気処理部13の水が嫌気処理部14へ対流で直接移動しないようにしている。通水部22をこのように形成することによって仕切部材12の面にかかる圧力を軽減し、汚泥を付着しにくくできる。
【0041】
図7は、前記仕切部材12を複数枚設けたときの種々の配置例を示す各断面側面図であって、図7(a)は前記図6(a)に示した傾斜板24を有する仕切部材12を2枚設けたものであって、このように傾斜板24を二枚にすることにより、曝気によって舞い上がって一枚目の傾斜板24で沈殿しなかった汚泥を二枚目で沈殿させることができる。さらに、傾斜板24の間に適度な間隔を設けることによって汚泥の沈殿効率を上げることが可能である。傾斜板24を用いることによって汚泥の有効分離面積を増大させ、リアクタ内を二分割することなく好気・嫌気を区別することも可能である。
【0042】
図7(b)は前記図6(a)に示した傾斜板24を有する仕切部材12aと、平板に通水部22を設けた仕切部材12bとを設けたものであって、傾斜板24と仕切部材12bの間に適度な間隔を設けることによって汚泥の沈殿効率を上げており、傾斜板24によって捕捉できなかった汚泥をこの部分で沈殿させることができる。
【0043】
図7(c)は傾斜板24を有する仕切部材12の嫌気処理部14側に通孔26aを有する固定化担体26を設けたものであって、嫌気処理部14側の仕切部材を固定化担体26にすることによって微生物の保持量を高めることができる。また、好気処理部13側ではDOを消費するようなアンモニア酸化細菌を優先化させ、嫌気処理部14側では嫌気性アンモニア酸化細菌を優先化させるといった微生物の棲み分けが可能になる。また、固定化担体26を嫌気処理部14側の仕切部材として用いることにより、DOや有機物等の嫌気性アンモニア酸化細菌に阻害を与える物質の流入を抑制することが可能である。
【0044】
図7(d)は平板に通水部22を設けた仕切部材12を2枚設けたもの、図7(e)は通水部22を設けた仕切部材12の嫌気処理部14側に通孔26aを有する固定化担体26を設けたものを示している。好気処理部13側の一枚目の通孔22から流出した汚泥は、嫌気処理部14側に位置する二枚目の仕切部材12又は固定化担体26との間で沈殿する。通水部22や通孔26aの位置を互い違いにすることで水の対流が抑制され、好気処理部13・嫌気処理部14間のイオンの濃度差による移動が期待できる。
【0045】
図8は本発明の廃水処理装置の他の形態例を示す概略系統図である。なお、脱窒処理は前記形態例と同様にして行われるので、詳細な説明は省略する。
【0046】
本形態例に示す廃水処理装置は、好気処理部となる好気処理槽31と、嫌気処理部となる嫌気処理槽32とを前記仕切部材と同様に形成した連通部33を介して連通させたものであって、嫌気処理槽32内の液を循環経路を介してポンプ34で連通部33内に循環させ、連通部33の内部の嫌気液と外部の好気液との間でアンモニウムイオン及び亜硝酸イオンを移動させるように形成している。このように、ポンプ34によって嫌気処理槽32内に液の流動を発生させることにより、嫌気処理槽32内での反応効率を向上させることができる
【符号の説明】
【0047】
11…処理槽、12…仕切部材、13…好気処理部、14…嫌気処理部、15…散気装置、16…廃水導入手段、17…アルカリ剤添加手段、18…pH計、19…処理水導出手段、21…イオン透過部、22…通水部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンモニア性窒素濃度が500ppm以上の廃水からアンモニアの除去処理を行う廃水処理装置において、
前記廃水を曝気処理して廃水中のアンモニウムイオンを亜硝酸イオンに酸化する好気処理部と、生成した亜硝酸イオンと廃水中のアンモニウムイオンとを嫌気状態で反応させて窒素ガスを生成させる嫌気処理部とを備えるとともに、
前記好気処理部と前記嫌気処理部とを、拡散現象によって前記アンモニウムイオン及び亜硝酸イオンが通過可能なイオン透過部を有する仕切部材で区画し、
該仕切部材の通水抵抗は、圧力10kPaでの通水量が500L/分/m以下である
ことを特徴とする廃水処理装置。
【請求項2】
前記廃水中のBOD濃度が500ppm未満であり、前記好気処理部は前記廃水を導入する手段を有し、かつ、前記嫌気処理部は処理水を導出する手段を有していることを特徴とする請求項1記載の廃水処理装置。
【請求項3】
前記廃水中のBOD濃度が500ppm以上であり、前記好気処理部は、廃水を導入する手段と処理水を導出する手段とを有していることを特徴とする請求項1記載の廃水処理装置。
【請求項4】
前記仕切部材は、金属性通水性板材で形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の廃水処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−235287(P2011−235287A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−158568(P2011−158568)
【出願日】平成23年7月20日(2011.7.20)
【分割の表示】特願2006−339879(P2006−339879)の分割
【原出願日】平成18年12月18日(2006.12.18)
【出願人】(390014074)前澤工業株式会社 (134)
【Fターム(参考)】