説明

廃熱回収空調装置及び鉄道車両

【課題】 動力発生ユニット等から発生する廃熱を暖房用の熱源として有効利用することにより、快適な暖房、省資源化及び高加速動力性能の向上を実現させることができる廃熱回収空調装置及びこれを備えた鉄道車両を提供する。
【解決手段】 鉄道車両の動力発生ユニットから発生する廃熱を回収するとともに、回収した廃熱で暖房を行う廃熱回収空調装置8であって、動力発生ユニットを冷却するための冷却水を流通させる冷却水流路11と、冷却水流路11に接続され動力発生ユニットから発生する廃熱により加温された冷却水と熱交換を行って加熱される温水ヒータコア12と、冷媒を流通させる冷媒流路21と、冷却水流路11及び冷媒流路21に接続され動力発生ユニットから発生する廃熱により加温された冷却水と冷媒との間で熱交換を行う水熱交換器13と、水熱交換器13により加温された冷媒と熱交換を行って空気を加熱する室内熱交換器23と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃熱回収空調装置及び鉄道車両に関し、特に、動力発生ユニットや給電ユニットから発生する廃熱の有効利用を実現させる廃熱回収空調装置及びこれを備えた鉄道車両に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、ディーゼルエンジンにより発生する駆動力で車輪を回転駆動する鉄道車両(気動車)が実用化されている。かかる気動車は排気ガスや騒音・振動を発生させるものであるため、環境への悪影響や燃料消費の増大が懸念されている。
【0003】
このため、近年においては、エンジンの回転力で発電機を駆動して電力を発生させるとともに、蓄電装置で回生電力を回収し、これら発電機及び蓄電装置から供給される電力で電動機を駆動し、この電動機の駆動力で車輪を回転駆動するハイブリッド型の鉄道車両が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2004−312953号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前記したような鉄道車両を起動させると、エンジンや発電機から構成される「動力発生ユニット」から、相当量の廃熱が発生する。また、鉄道車両には、各車両のサービス機器(電灯や空調装置等)に電力を供給するための「給電ユニット」が設けられる場合があり、この「給電ユニット」からも相当量の廃熱が発生する。かかる廃熱を暖房用の熱源として有効利用することができれば、暖房用電力の消費を低減することができ、動力発生ユニットで発生した駆動力を車輪の回転駆動力に充分利用することができるため、高加速動力性能の向上が可能となる。また、余分に駆動力を発生させる必要もなくなるので、エンジンの燃料の消費量を削減することもできるため、省資源化が可能となる。
【0005】
しかし、動力発生ユニットや給電ユニットから発生する廃熱は、ユニットの負荷変動に伴って温度が変化し、低温となる場合もあるため、そのままでは暖房用の熱源として利用することはできなかった。一方、電力によって発熱する電熱器を別途設けて電気暖房を行う場合には、その電力相当の駆動力が暖房用に消費されてしまうため、高加速動力性能を十分に得ることができなくなるとともに、燃料の消費量が大きくなるという問題があった。
【0006】
本発明の課題は、動力発生ユニットや給電ユニットから発生する廃熱を暖房用の熱源として有効利用することにより、「快適な暖房」、「省資源化」及び「高加速動力性能の向上」を実現させることができる廃熱回収空調装置及びこれを備えた鉄道車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、
車輪を回転駆動するための駆動力を発生させる動力発生ユニット及び/又は各種サービス機器に供給される電力を発生させる給電ユニットを備える鉄道車両の前記動力発生ユニット及び/又は前記給電ユニットから発生する廃熱を回収するとともに、回収した廃熱で暖房を行う廃熱回収空調装置であって、
前記動力発生ユニット及び/又は前記給電ユニットを冷却するための冷却水を流通させる冷却水流路と、
前記冷却水流路に接続され前記動力発生ユニット及び/又は前記給電ユニットから発生する廃熱により加温された前記冷却水と熱交換を行って加熱される温水ヒータコアと、
を有することを特徴とする。
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、廃熱回収空調装置は、動力発生ユニット及び/又は給電ユニットから発生する廃熱により加温された冷却水と熱交換を行って加熱される温水ヒータコアを有し、この温水ヒータコアによって加熱された空気により暖房を行うことができる。すなわち、動力発生ユニット及び/又は給電ユニットから発生する廃熱のエネルギを温水ヒータコアに蓄え、この温水ヒータコアによって安定した快適な温風暖房を実現させることができる。また、電熱器を別途設けて電気暖房を行う必要がなくなるので、省資源化及び高加速動力性能の向上を実現させることができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、
車輪を回転駆動するための駆動力を発生させる動力発生ユニット及び/又は各種サービス機器に供給される電力を発生させる給電ユニットを備える鉄道車両の前記動力発生ユニット及び/又は前記給電ユニットから発生する廃熱を回収するとともに、回収した廃熱で暖房を行う廃熱回収空調装置であって、
前記動力発生ユニット及び/又は前記給電ユニットを冷却するための冷却水を流通させる冷却水流路と、
冷媒を流通させる冷媒流路と、
前記冷却水流路及び前記冷媒流路に接続され前記動力発生ユニット及び/又は前記給電ユニットから発生する廃熱により加温された前記冷却水と前記冷媒との間で熱交換を行う水熱交換器と、
前記水熱交換器により加温された冷媒と熱交換を行って空気を加熱する暖房用室内熱交換器と、
を有することを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、廃熱回収空調装置は、動力発生ユニット及び/又は給電ユニットから発生する廃熱により加温された冷却水と冷媒との間で熱交換を行う水熱交換器と、水熱交換器により加温された冷媒と熱交換を行って空気を加熱する暖房用室内熱交換器と、を有し、この暖房用室内熱交換器によって加熱された空気により暖房を行うことができる。すなわち、動力発生ユニット及び/又は給電ユニットから発生する廃熱のエネルギを、水熱交換器を介して暖房用室内熱交換器に蓄え、この暖房用室内熱交換器によって安定した快適な温風暖房を実現させることができる。また、電熱器を別途設けて電気暖房を行う必要がなくなるので、省資源化及び高加速動力性能の向上を実現させることができる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の廃熱回収空調装置において、
冷媒を流通させる冷媒流路と、
前記冷却水流路及び前記冷媒流路に接続され前記動力発生ユニット及び/又は前記給電ユニットから発生する廃熱により加温された前記冷却水と前記冷媒との間で熱交換を行う水熱交換器と、
前記水熱交換器により加温された冷媒と熱交換を行って空気を加熱する暖房用室内熱交換器と、を有し、
前記動力発生ユニット及び/又は前記給電ユニットから発生する廃熱により加温された前記冷却水の温度が所定の第1閾値以上である場合には、前記温水ヒータコアによって加熱された空気により暖房を行い、
前記動力発生ユニット及び/又は前記給電ユニットから発生する廃熱により加温された前記冷却水の温度が所定の第2閾値(<第1閾値)以上前記第1閾値未満である場合には、前記温水ヒータコア及び前記暖房用室内熱交換器によって加熱された空気により暖房を行い、
前記動力発生ユニット及び/又は前記給電ユニットから発生する廃熱により加温された前記冷却水の温度が前記第2閾値未満である場合には、前記暖房用室内熱交換器によって加熱された空気により暖房を行うことを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、廃熱回収空調装置は、動力発生ユニット及び/又は給電ユニットから発生する廃熱により加温された冷却水の温度が所定の第1閾値(例えば約80℃)以上である場合に、「温水ヒータコア」によって加熱された空気により暖房を行い、冷却水の温度が所定の第2閾値(例えば約60℃)以上第1閾値(約80℃)未満である場合に、「温水ヒータコア」及び「暖房用室内熱交換器」によって加熱された空気により暖房を行い、冷却水の温度が第2閾値(約60℃)未満である場合に、「暖房用室内熱交換器」によって加熱された空気により暖房を行うことができる。従って、動力発生ユニット及び/又は給電ユニットから発生する廃熱の温度が変動したり低温となったりした場合においても、きわめて安定的な温風暖房を実現させることができる。また、動力発生ユニット及び/又は給電ユニットから発生する廃熱の温度が高い(第1閾値以上)場合には、暖房用室内熱交換器を作動させる必要がないので、その分の電力を削減することができ、省資源化が可能となる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項2又は3に記載の廃熱回収空調装置において、
前記冷媒流路内の冷媒と外気との間で熱交換を行って冷媒を冷却する室外熱交換器と、
前記室外熱交換器により冷却された冷媒と熱交換を行って空気を冷却する冷房用室内熱交換器と、
前記動力発生ユニット及び/又は前記給電ユニットから発生する廃熱により前記冷媒流路内の冷媒が加温されるのを防止する加温防止手段と、
を有することを特徴とする。
【0014】
請求項4に記載の発明によれば、廃熱回収空調装置は、冷媒流路内の冷媒と外気との間で熱交換を行って冷媒を冷却する室外熱交換器と、室外熱交換器により冷却された冷媒と熱交換を行って空気を冷却する冷房用室内熱交換器と、を有しており、この冷房用室内熱交換器によって冷却された空気により冷房を行うことができる。また、廃熱回収空調装置は、動力発生ユニット及び/又は給電ユニットから発生する廃熱により冷媒流路内の冷媒が加温されるのを防止する加温防止手段を有しているので、冷房時に冷媒が加温されることがないため、冷房効率を向上させることができる。
【0015】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の廃熱回収空調装置において、
前記加温防止手段は、
前記動力発生ユニット及び/又は前記給電ユニットから発生する廃熱により加温された前記冷却水が前記水熱交換器に達するのを阻止する温水制御弁を有することを特徴とする
【0016】
請求項6に記載の発明は、鉄道車両であって、
車輪を回転駆動するための駆動力を発生させる動力発生ユニットと、
請求項1から5の何れか一項に記載の廃熱回収空調装置と、
を備えることを特徴とする。
【0017】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の鉄道車両において、
前記動力発生ユニットは、
エンジンと、前記エンジンの回転力で駆動されて電力を発生させる発電機と、を有し、
前記発電機によって発生した駆動電力を前記車輪の回転駆動力に変換する動力変換ユニット備えることを特徴とする。
【0018】
請求項8に記載の発明は、請求項6に記載の鉄道車両において、
前記動力発生ユニットは、
エンジンを有し、
前記エンジンの駆動力を前記車輪に伝達して前記車輪を回転駆動する動力伝達装置を備えることを特徴とする。
【0019】
請求項9に記載の発明は、鉄道車両であって、
各種サービス機器に供給される電力を発生させる給電ユニットと、
請求項1から5の何れか一項に記載の廃熱回収空調装置と、
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、鉄道車両の動力発生ユニット及び/又は給電ユニットから発生する廃熱を暖房用の熱源として有効利用することができ、「快適な暖房」、「省資源化」及び「高加速動力性能の向上」を実現させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0022】
まず、図1及び図2を用いて、本発明の実施の形態に係る鉄道車両1の全体構成について説明する。
【0023】
鉄道車両1は、車体の前方及び後方に配設された車軸2aを介して設けられた軌道走行用の車輪2、前方に設けられた車輪2を歯車装置3a及び車軸2aを介して回転駆動する電動機3、電動機3に電力変換装置4aを介して電力を供給する発電機4、発電機4を駆動するエンジン5、エンジン5に供給される燃料を貯留する燃料タンク6、回生電力を回収するとともに電動機3に電力変換装置4aを介して電力を供給する蓄電装置7、ヒートポンプ式冷凍サイクル(以下「冷凍サイクル」という)20による冷房を行う一方、発電機4及びエンジン5から構成される動力発生ユニットから発生する廃熱を回収しこの廃熱で暖房を行う廃熱回収空調装置8、等を備えて構成されている。なお、電動機3及び電力変換装置4aは本発明における動力変換ユニットを構成し、発電機3によって発生した駆動電力を車輪2の回転駆動力に変換する。
【0024】
次に、図2を用いて、本実施の形態に係る廃熱回収空調装置8の構成について説明する。
【0025】
廃熱回収空調装置8は、図2に示すように、動力発生ユニット(発電機4及びエンジン5)を冷却するための冷却水を環流させる温水回路10、冷房・暖房両用の冷凍サイクル20、動力発生ユニットから発生する廃熱により加温された冷却水(以下「温水」という)の温度に基づいて冷凍サイクル20の動作を自動的に制御する図示されていない制御装置、等を備えて構成されている。
【0026】
温水回路10は、図2に示すように、動力発生ユニットを冷却するための冷却水を流通させる冷却水流路11に、温水と熱交換を行って加熱される温水ヒータコア12、温水と冷凍サイクル20の冷媒との間で熱交換を行う水熱交換器13、温水を遮断してこの温水が温水ヒータコア12及び水熱交換器13に達するのを阻止する温水制御弁14、温水制御弁14により遮断された温水を動力発生ユニット側に戻すバイパス回路15、水熱交換器13を通過した温水や温水制御弁14により遮断された温水を冷却するラジエータ16、等が設けられてなるものである。
【0027】
温水制御弁14は、動力発生ユニットから発生する廃熱により冷凍サイクル20の冷媒流路21内の冷媒が加温されるのを防止するものであり、本発明における加温防止手段である。また、冷却水流路11には、図2に示すように、温水制御弁14によりバイパス回路15側に流された温水や、水熱交換器13を通過して動力発生ユニット側に戻された温水の温度に応じて、温水の流路を制御するサーモ弁17が設けられている。サーモ弁17は、流入する温水が所定の閾値(例えば70℃)以上の高温である場合には、温水を全てラジエータ16側に流して冷却した上で動力発生ユニットに戻すことにより、動力発生ユニットのオーバーヒートを未然に防止する。一方、サーモ弁17は、流入する温水が所定の閾値(例えば65℃)以下の低温である場合には、温水を全てバイパス回路15に流すことにより、動力発生ユニットの過冷却を未然に防止する。
【0028】
冷凍サイクル20は、図2に示すように、冷媒を流通させる冷媒流路21に、温水と冷媒との間で熱交換を行う水熱交換器13、冷媒と外気との間で熱交換を行って冷媒を冷却する室外熱交換器22、室外熱交換器22により冷却された冷媒と熱交換を行って空気を冷却する一方、水熱交換器13により加温された冷媒と熱交換を行って空気を加熱する冷房・暖房両用の室内熱交換器23、冷媒を圧縮する冷媒圧縮機24、冷房時と暖房時とで冷媒の流路を変更する電動四方弁25、等が設けられてなるものである。かかる冷凍サイクル20により、冷房と暖房との双方を実現させることができる。
【0029】
制御装置は、温水の温度が所定の第1閾値(80℃)以上である場合に、冷凍サイクル20を停止させて、温水回路10の温水ヒータコア12によって加熱された空気により暖房を行う。また、制御装置は、温水の温度が所定の第2閾値(60℃)以上第1閾値未満である場合に、冷凍サイクル20を作動させて、温水回路10の温水ヒータコア12及び冷凍サイクル20の室内熱交換器23によって加熱された空気により暖房を行う。また、制御装置は、温水の温度が第2閾値未満である場合にも冷凍サイクル20を作動させて、冷凍サイクル20の室内熱交換器23によって加熱された空気により暖房を行う。
【0030】
なお、温水の温度は、温水ヒータコア12の出口付近に設けられた図示されていない温度計によって計測され、制御装置に伝送されて冷凍サイクル20の制御に使用される。また、温水ヒータコア12及び/又は室内熱交換器23によって加熱された空気は、図示されていない送風ファンによって外部に排出される。
【0031】
続いて、図3〜図8を用いて、本実施の形態に係る廃熱回収空調装置8の動作について説明する。
【0032】
<暖房運転動作>
最初に、図3〜図6を用いて、廃熱回収空調装置の暖房運転動作について説明する。
【0033】
廃熱回収空調装置8の暖房運転を行う場合には、まず、温水回路10の温水制御弁14を開放し(制御弁開放工程:S1)、温水を図3〜図5の矢印Aの方向に流して温水ヒータコア12及び水熱交換器13に供給する。次いで、制御装置は、温度計を介して温水ヒータコア12の出口付近における温水の温度を計測し、計測した温度が第1閾値(80℃)未満であるか否かを判定する(第1次温度判定工程:S2)。
【0034】
制御装置は、第1次温度判定工程S2において温水温度が第1閾値以上であると判定した場合に、冷凍サイクル20による暖房(ヒートポンプ暖房)が不要であると判断し、冷凍サイクル20の冷媒圧縮機24等を停止させる(冷凍サイクル停止工程:S3)。その後、図3に示すように、温水回路10の温水ヒータコア12は第1閾値以上の温水と熱交換を行って加熱され、この温水ヒータコア12によって加熱された空気が送風ファンによって外部に排出されて、温風暖房が実現される(温水ヒータコア暖房工程:S4)。
【0035】
一方、制御装置は、第1次温度判定工程S2において温水温度が第1閾値未満であると判定した場合に、ヒートポンプ暖房が必要であると判断し、冷凍サイクル20の冷媒圧縮機24等の運転を開始させる(冷凍サイクル運転工程:S5)。冷凍サイクル運転工程S5においては、冷凍サイクル20の電動四方弁25を暖房用に切り替え、冷媒を図4及び図5の矢印Bの方向に循環させ、水熱交換器13で温水と冷媒との間で熱交換を行って冷媒を加温する。そして、加温された冷媒を冷媒圧縮機24で圧縮し、この高圧の冷媒を室内熱交換器23で凝縮させて空気を加熱する。
【0036】
次いで、制御装置は、温度計を介して温水ヒータコア12の出口付近における温水の温度を計測し、計測した温度が第2閾値(60℃)以上であるか否かを判定する(第2次温度判定工程:S6)。
【0037】
制御装置は、第2次温度判定工程S6において温水温度が第2閾値以上であると判定した場合に、温水ヒータコア12による暖房とヒートポンプ暖房との双方が可能であると判断し、冷媒圧縮機24等の作動電力を低減させる。そして、図4に示すように、温水回路10の温水ヒータコア12と、冷凍サイクル20の室内熱交換器23とによって加熱した空気を送風ファンによって外部に排出して、温風暖房を実現させる(併用暖房工程:S7)。
【0038】
一方、制御装置は、第2次温度判定工程S6において温水温度が第2閾値未満であると判定した場合に、温水ヒータコア12による暖房は不可能であると判断し、冷凍サイクル20のみで暖房を行う。すなわち、図5に示すように、冷凍サイクル20の室内熱交換器23によって加熱された空気を送風ファンによって外部に排出して、温風暖房を実現させる(ヒートポンプ暖房工程:S8)。
【0039】
<冷房運転動作>
次に、図7及び図8を用いて、廃熱回収空調装置8の冷房運転動作について説明する。
【0040】
廃熱回収空調装置8の冷房運転を行う場合には、まず、冷凍サイクル20の電動四方弁25を冷房用に切り替え、冷媒を図7の矢印Cの方向に循環させる(四方弁切替工程:S11)。次いで、温水回路10の温水制御弁14を閉じ(制御弁閉鎖工程:S12)、温水を図7の矢印Dの方向に流し、バイパス回路15又はラジエータ16を経由させて動力発生ユニットに戻す。この際、サーモ弁17の機能により、高温の温水は全てラジエータ16側に流され冷却された上で動力発生ユニットに戻される一方、低温の温水は全てバイパス回路15に流されて動力発生ユニットに戻されることとなる。
【0041】
次いで、制御装置は、冷凍サイクル20の冷媒圧縮機24等の運転を開始させる(冷凍サイクル運転工程:S13)。冷凍サイクル運転工程S13においては、冷媒圧縮機24により冷媒を圧縮し、この高圧の冷媒を室外熱交換器22で外気により冷却し、この冷却した冷媒を膨張弁26で減圧した後、室内熱交換器23で蒸発させて空気を冷却する。そして、室内熱交換機23によって冷却した空気を送風ファンによって外部に排出して、冷房を実現させる(冷房工程:S14)。
【0042】
以上説明した実施の形態に係る廃熱回収空調装置8は、動力発生ユニットから発生する廃熱により加温された冷却水(温水)と熱交換を行って加熱される温水ヒータコア12を有し、この温水ヒータコア12によって加熱された空気により暖房を行うことができる。すなわち、動力発生ユニットから発生する廃熱のエネルギを温水ヒータコア12に蓄え、この温水ヒータコア12によって安定した快適な温風暖房を実現させることができる。また、電熱器を別途設けて電気暖房を行う必要がなくなるので、省資源化及び高加速動力性能の向上を実現させることができる。
【0043】
また、以上説明した実施の形態に係る廃熱回収空調装置8は、動力発生ユニットから発生する廃熱により加温された冷却水(温水)と冷媒との間で熱交換を行う水熱交換器13と、水熱交換器13により加温された冷媒と熱交換を行って空気を加熱する室内熱交換器23と、を有し、この室内熱交換器23によって加熱された空気により暖房を行うことができる。すなわち、動力発生ユニットから発生する廃熱のエネルギを、水熱交換器13を介して室内熱交換器23に蓄え、この室内熱交換器23によって安定した快適な温風暖房を実現させることができる。また、電熱器を別途設けて電気暖房を行う必要がなくなるので、省資源化及び高加速動力性能の向上を実現させることができる。
【0044】
また、以上説明した実施の形態に係る廃熱回収空調装置8は、動力発生ユニットから発生する廃熱により加温された冷却水(温水)の温度が所定の第1閾値(80℃)以上である場合には、温水ヒータコア12によって加熱された空気により暖房を行い、温水の温度が所定の第2閾値(60℃)以上第1閾値(80℃)未満である場合には、温水ヒータコア12及び室内熱交換器23によって加熱された空気により暖房を行い、温水の温度が第2閾値(60℃)未満である場合には、室内熱交換器23によって加熱された空気により暖房を行うことができる。従って、動力発生ユニットから発生する廃熱の温度が変動したり低温となったりした場合においても、きわめて安定的な温風暖房を実現させることができる。また、動力発生ユニットから発生する廃熱の温度が高い(第1閾値以上)場合には、室内熱交換器23を作動させる必要がないので、その分の電力を削減することができ、省資源化が可能となる。
【0045】
また、以上説明した実施の形態に係る廃熱回収空調装置8は、冷媒流路21内の冷媒と外気との間で熱交換を行って冷媒を冷却する室外熱交換器22と、室外熱交換器22により冷却された冷媒と熱交換を行って空気を冷却する室内熱交換器23と、を有しており、この室内熱交換器23によって冷却された空気により冷房を行うことができる。また、廃熱回収空調装置8は、動力発生ユニットから発生する廃熱により冷媒流路21内の冷媒が加温されるのを防止する加温防止手段(温水制御弁14)を有しているので、冷房時に冷媒が加温されることがないため、冷房効率を向上させることができる。
【0046】
なお、以上の実施の形態においては、温水ヒータコア暖房から併用暖房へと切り替える際の温水の温度(第1閾値)を「80℃」に設定するとともに、併用暖房からヒートポンプ暖房へと切り替える際の温水の温度(第2閾値)を「60℃」に設定したが、これら「第1閾値」及び「第2閾値」は、車両の仕様等に応じて適宜変更することができる。
【0047】
また、以上の実施の形態においては、発電機4及びエンジン5から構成される動力発生ユニットを備えたいわゆる「ハイブリッド型」の鉄道車両1に本発明を適用した例を示したが、図9に示すような気動車(エンジン5Aを有する動力発生ユニットにより発生させた駆動力を動力伝達装置4Aを介して車輪2Aに伝達して車輪2Aを回転駆動する鉄道車両)1Aにも本発明を適用することができる。気動車1Aにおいては、エンジン5A及び図示されていない各種周辺機器を有する動力発生ユニットから発生する廃熱を廃熱回収空調装置8Aで回収して、暖房を行うことができる。廃熱回収空調装置8Aの構成は、前記実施の形態と同一のものを採用することができる。
【0048】
また、以上の実施の形態においては、動力発生ユニットを備えた鉄道車両1に本発明を適用した例を示したが、図10に示すように、各車両のサービス機器9Bに電力を供給するための給電ユニット(発電機4B及びエンジン5Bから構成されるもの)を備えた鉄道車両1Bに本発明を適用することもできる。鉄道車両1Bにおいては、給電ユニットから発生する廃熱を廃熱回収空調装置8Bで回収して、暖房を行うことができる。廃熱回収空調装置8Bの構成は、前記実施の形態と同一のものを採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の実施の形態に係る鉄道車両(ハイブリッド型の鉄道車両)の全体構成を説明するための説明図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る廃熱回収空調装置の構成を説明するためのブロック図である。
【図3】図2に示した廃熱回収空調装置の温水ヒータコア暖房運転を説明するための説明図である。
【図4】図2に示した廃熱回収空調装置の併用暖房運転を説明するための説明図である。
【図5】図2に示した廃熱回収空調装置のヒートポンプ暖房運転を説明するための説明図である。
【図6】図2に示した廃熱回収空調装置の暖房運転の手順を説明するためのフローチャートである。
【図7】図2に示した廃熱回収空調装置の冷房運転を説明するための説明図である。
【図8】図2に示した廃熱回収空調装置の冷房運転の手順を説明するためのフローチャートである。
【図9】本発明の実施の形態に係る廃熱回収空調装置を搭載した他の鉄道車両(気動車)の全体構成を説明するための説明図である。
【図10】本発明の実施の形態に係る廃熱回収空調装置を搭載した他の鉄道車両(給電ユニットを備えた鉄道車両)の全体構成を説明するための説明図である。
【符号の説明】
【0050】
1、1A、1B 鉄道車両
2、2A、2B 車輪
3 電動機(動力変換ユニットの一部)
4 発電機(動力発生ユニットの一部)
4a 電力変換装置(動力変換ユニットの一部)
4A 動力伝達装置
4B 発電機(給電ユニットの一部)
5、5A エンジン(動力発生ユニットの一部)
5B エンジン(給電ユニットの一部)
8、8A、8B 廃熱回収空調装置
9B サービス機器
11 冷却水流路
12 温水ヒータコア
13 水熱交換器
14 温水制御弁(加温防止手段)
21 冷媒流路
22 室外熱交換器
23 室内熱交換器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪を回転駆動するための駆動力を発生させる動力発生ユニット及び/又は各種サービス機器に供給される電力を発生させる給電ユニットを備える鉄道車両の前記動力発生ユニット及び/又は前記給電ユニットから発生する廃熱を回収するとともに、回収した廃熱で暖房を行う廃熱回収空調装置であって、
前記動力発生ユニット及び/又は前記給電ユニットを冷却するための冷却水を流通させる冷却水流路と、
前記冷却水流路に接続され前記動力発生ユニット及び/又は前記給電ユニットから発生する廃熱により加温された前記冷却水と熱交換を行って加熱される温水ヒータコアと、
を有することを特徴とする廃熱回収空調装置。
【請求項2】
車輪を回転駆動するための駆動力を発生させる動力発生ユニット及び/又は各種サービス機器に供給される電力を発生させる給電ユニットを備える鉄道車両の前記動力発生ユニット及び/又は前記給電ユニットから発生する廃熱を回収するとともに、回収した廃熱で暖房を行う廃熱回収空調装置であって、
前記動力発生ユニット及び/又は前記給電ユニットを冷却するための冷却水を流通させる冷却水流路と、
冷媒を流通させる冷媒流路と、
前記冷却水流路及び前記冷媒流路に接続され前記動力発生ユニット及び/又は前記給電ユニットから発生する廃熱により加温された前記冷却水と前記冷媒との間で熱交換を行う水熱交換器と、
前記水熱交換器により加温された冷媒と熱交換を行って空気を加熱する暖房用室内熱交換器と、
を有することを特徴とする廃熱回収空調装置。
【請求項3】
冷媒を流通させる冷媒流路と、
前記冷却水流路及び前記冷媒流路に接続され前記動力発生ユニット及び/又は前記給電ユニットから発生する廃熱により加温された前記冷却水と前記冷媒との間で熱交換を行う水熱交換器と、
前記水熱交換器により加温された冷媒と熱交換を行って空気を加熱する暖房用室内熱交換器と、を有し、
前記動力発生ユニット及び/又は前記給電ユニットから発生する廃熱により加温された前記冷却水の温度が所定の第1閾値以上である場合には、前記温水ヒータコアによって加熱された空気により暖房を行い、
前記動力発生ユニット及び/又は前記給電ユニットから発生する廃熱により加温された前記冷却水の温度が所定の第2閾値(<第1閾値)以上前記第1閾値未満である場合には、前記温水ヒータコア及び前記暖房用室内熱交換器によって加熱された空気により暖房を行い、
前記動力発生ユニット及び/又は前記給電ユニットから発生する廃熱により加温された前記冷却水の温度が前記第2閾値未満である場合には、前記暖房用室内熱交換器によって加熱された空気により暖房を行うことを特徴とする請求項1に記載の廃熱回収空調装置。
【請求項4】
前記冷媒流路内の冷媒と外気との間で熱交換を行って冷媒を冷却する室外熱交換器と、
前記室外熱交換器により冷却された冷媒と熱交換を行って空気を冷却する冷房用室内熱交換器と、
前記動力発生ユニット及び/又は前記給電ユニットから発生する廃熱により前記冷媒流路内の冷媒が加温されるのを防止する加温防止手段と、
を有することを特徴とする請求項2又は3に記載の廃熱回収空調装置。
【請求項5】
前記加温防止手段は、
前記動力発生ユニット及び/又は前記給電ユニットから発生する廃熱により加温された前記冷却水が前記水熱交換器に達するのを阻止する温水制御弁を有することを特徴とする請求項4に記載の廃熱回収空調装置。
【請求項6】
車輪を回転駆動するための駆動力を発生させる動力発生ユニットと、
請求項1から5の何れか一項に記載の廃熱回収空調装置と、
を備えることを特徴とする鉄道車両。
【請求項7】
前記動力発生ユニットは、
エンジンと、前記エンジンの回転力で駆動されて電力を発生させる発電機と、を有し、
前記発電機によって発生した駆動電力を前記車輪の回転駆動力に変換する動力変換ユニット備えることを特徴とする請求項6に記載の鉄道車両。
【請求項8】
前記動力発生ユニットは、
エンジンを有し、
前記エンジンの駆動力を前記車輪に伝達して前記車輪を回転駆動する動力伝達装置を備えることを特徴とする請求項6に記載の鉄道車両。
【請求項9】
各種サービス機器に供給される電力を発生させる給電ユニットと、
請求項1から5の何れか一項に記載の廃熱回収空調装置と、
を備えることを特徴とする鉄道車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−248275(P2006−248275A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−64115(P2005−64115)
【出願日】平成17年3月8日(2005.3.8)
【出願人】(590003825)北海道旅客鉄道株式会社 (94)
【出願人】(599142590)北海道ジェイ・アール・サイバネット株式会社 (14)