説明

廃芳香族ポリカーボネート樹脂から回収した芳香族ジヒドロキシ化合物を用いるポリカーボネート樹脂の製造方法

【課題】廃芳香族ポリカーボネート樹脂をアルカリ金属水酸化物水溶液により分解し、末端停止剤を含む芳香族ジヒドロキシ化合物のアルカリ水溶液を得た後に、芳香族ポリカーボネート樹脂原料の一部、あるいは、全部として再利用する際に、所望の粘度平均分子量を持つポリカーボネート樹脂の簡便な調整方法を提供する。
【解決手段】廃芳香族ポリカーボネート樹脂をアルカリ金属水酸化物水溶液により分解して得られた芳香族ジヒドロキシ化合物のアルカリ水溶液を、芳香族ポリカーボネート樹脂原料の全て、あるいは、一部として再利用する際、該水溶液中に残存する末端停止剤の量を簡便に求め、該芳香族ジヒドロキシ化合物のアルカリ金属塩水溶液中に残存する末端停止剤量に応じて、反応工程に投入する末端停止剤の量を調整する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃芳香族ポリカーボネート樹脂をアルカリ金属水酸化物水溶液により分解して得られた芳香族ジヒドロキシ化合物のアルカリ水溶液を、芳香族ポリカーボネート樹脂の原料の全て、あるいは、一部として再利用する際、該芳香族ジヒドロキシ化合物のアルカリ金属塩水溶液中に残存する末端停止剤量に応じて、反応工程に投入する末端停止剤の量を調整する芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
芳香族ポリカーボネート樹脂(以下、PCと略すことがある)は、優れた機械的性質、電気的性質、耐熱性、耐寒性、透明性等を有しており、透明シートの建築材料、液晶テレビ・プロジェクションテレビ用の拡散板・レンズシート、レンズ、コンパクトディスク等の光ディスク、自動車部品、OA機器のシャーシー、カメラボディー等様々な用途に利用されている材料であり、その需要は年々増加している。PCの需要の増加に伴い、廃棄されるPC製品の多くは焼却、若しくは地中に埋める等の方法で処理される。これは、PCの需要の増加から石油資源の枯渇を加速させるだけでなく、地球環境の悪化を促進する。そこで、廃棄されたプラスチックを再利用(リサイクル)することが重要になってきた。
【0003】
廃プラスチックをリサイクルする方法は、(1)廃プラスチックを熱エネルギーとして回収するサーマルリサイクル、(2)廃プラスチックを製品にある割合で混合し、加工して製品とするマテリアルリサイクル、(3)廃プラスチックを化学的に分解してプラスチックの原材料にまで戻して、プラスチック製造に再使用するケミカルリサイクルがある。サーマルリサイクルは、プラスチックを焼却して熱を取りだすため、二酸化炭素と水が生成し、本質的には地球環境を破壊し、資源を減少させていることになる。マテリアルリサイクルは、資源の消費に関しては、一番環境の負荷が少なく、環境的に望ましいが、混合できる製品が限定されていたり、製品に混入できる割合が少なく、リサイクルできる量が限られる。ケミカルリサイクルは、プラスチックを原材料まで分解するため、そのまま製造に利用することが可能であり、産業上有用なリサイクル方法である。
【0004】
PCをケミカルリサイクルする方法として、過剰のアルカリ水溶液で分解させ、中和して芳香族ジヒドロキシ化合物を生成する方法は昔から知られており、例えば特許文献1には、PCと1〜30%のアルカリ水溶液を耐圧容器に入れ、100℃以上、好ましくは150℃以上で加水分解後、酸性にした後メタノールに溶解し、活性炭処理して着色成分を除去後、再沈殿して白色ビスフェノールを得ている。特許文献2には、ポリカーボネート樹脂のスクラップをバルクまたは溶液でケン化し、未ケン化の成分を分離し、ケン化混合物をホスゲン化し、まったく精製工程および処理工程なしでポリカーボネート樹脂重合工程に用いる方法が示されている。特許文献3には、アルカリ触媒存在下、PCをフェノールで分解し、芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジアリールを回収する方法が示されている。また、特許文献4には、トルエン、キシレン、ベンゼンまたはジオキサン溶剤中で、少量のアルカリを触媒として、エステル交換反応を行い、炭酸ジアルキルと芳香族ジヒドロキシ化合物を得る方法が示されている。また、特許文献5には、PCを塩化アルキル、エーテル類または芳香族炭化水素系溶媒等の溶媒と触媒としての3級アミンの存在下、低級アルコールとエステル交換させて芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジアルキルを得る方法が提案されている。また、特許文献6には、廃芳香族ポリカーボネート樹脂を有機溶媒および金属水酸化物水溶液の存在下解重合反応させ、生成した塩類を含む反応液に水を加えて完全溶解させた後、芳香族ジヒドロキシ化合物を金属水酸化物塩の水溶液として回収し、芳香族ポリカーボネート樹脂の原料として再利用する方法が記されている。また、特許文献7には、廃芳香族ポリカーボネート樹脂を有機溶媒および金属水酸化物水溶液の存在下解重合反応させ、生成した塩類を含む反応液に水を加えた後、芳香族ジヒドロキシ化合物を金属水酸化物塩の水溶液として回収し、さらに、ろ過した後に芳香族ポリカーボネート樹脂の原料として再利用する方法が記されている。また、特許文献8には、廃芳香族ポリカーボネート樹脂を有機溶媒および金属水酸化物水溶液の存在下解重合反応させ、生成した塩類を含む反応液に水を加えた後、芳香族ジヒドロキシ化合物を金属水酸化物塩の水溶液として回収し、ハロゲン化炭化水素化合物有機溶媒と接触させて精製した後に、芳香族ポリカーボネート樹脂の原料として再利用する方法が記されている。
【0005】
しかしながら、特許文献1の方法は薄いアルカリ性水溶液を用いているので反応が高温になり、さらに後処理において非常に多くの水を使い、黄色の着色成分をメタノール/水から再沈殿するので、廃液処理が非常に煩雑である。特許文献2の方法は精製工程なしで重合反応に使用するので、プラスチックにほぼ必須成分として用いられる添加剤、着色剤などをPC製造工程に混入することになり、製品品質に影響を及ぼす。特許文献3〜5の方法は、分解生成物と溶媒の分離回収工程が煩雑になるだけでなく、必要としない副生成物が発生するばかりか、廃有機溶媒から不純物を経済的に、かつ、効率的に取り除き、処理する方法については、何ら言及されていない。さらには、回収処理された廃有機溶媒を自工程内で再利用する事については全く記述されていない。特許文献6〜8の方法は、得られた芳香族ジヒドロキシ化合物水溶液中に残存している末端停止剤の量、さらには、芳香族ポリカーボネート樹脂の原料として再利用した際、かかる末端停止剤による反応工程条件の調整方法についてはなんら言及されていない。
【0006】
【特許文献1】特公昭40−016536号公報
【特許文献2】特開昭54−048869号公報
【特許文献3】特開平06−056985号公報
【特許文献4】特開平10−259151号公報
【特許文献5】特開2002−212335号公報
【特許文献6】特開2005−126358号公報
【特許文献7】特開2005−179229号公報
【特許文献8】特開2006−022183号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、廃芳香族ポリカーボネート樹脂をアルカリ金属水酸化物水溶液により分解し、芳香族ジヒドロキシ化合物のアルカリ水溶液を得た後に、芳香族ポリカーボネート樹脂原料の一部、あるいは、全部として再利用する際に、得られた芳香族ジヒドロキシ化合物アルカリ金属塩の水溶液中に残存する末端停止剤の量を簡便に求める方法を提供し、原料として再利用する際の反応条件の調整方法を提供する事である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、これらの問題を解決するために鋭意検討した結果、廃芳香族ポリカーボネート樹脂をアルカリ金属水酸化物水溶液により分解して得られた芳香族ジヒドロキシ化合物のアルカリ水溶液を、芳香族ポリカーボネート樹脂原料の全て、あるいは、一部として再利用する際、該水溶液中に残存する末端停止剤の量を簡便に求める方法を見出し、さらには、該芳香族ジヒドロキシ化合物のアルカリ金属塩水溶液中に残存する末端停止剤量に応じて、反応工程に投入する末端停止剤の量を調整する事により、所望の安定した粘度平均分子量を有する製品が得られる事を見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明によれば、
1.廃芳香族ポリカーボネート樹脂をアルカリ金属水酸化物水溶液により分解し、得られた芳香族ジヒドロキシ化合物のアルカリ金属塩水溶液をポリカーボネート樹脂の製造原料の全て、または一部として再利用して芳香族ポリカーボネート樹脂を製造する方法であって、該芳香族ジヒドロキシ化合物のアルカリ金属塩水溶液中に残存する末端停止剤量を、分解に供する廃芳香族ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量を測定し、その測定値から逆算して求め、且つ所望の粘度平均分子量のポリカーボネート樹脂を得るために必要な末端停止剤の量に応じて、該芳香族ジヒドロキシ化合物のアルカリ金属塩水溶液と共に反応工程に投入する新たな末端停止剤の量を決定することを特徴とする芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法、
2.分解に供する廃芳香族ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量をM´、該廃芳香族ポリカーボネート樹脂を分解して得られた芳香族ジヒドロキシ化合物量をX´モル、該芳香族ジヒドロキシ化合物のアルカリ金属塩水溶液中に残存する末端停止剤量をY´モルとしたときに、予め、高速液体クロマトグラムを使用してY´モルを、分解反応時の反応率からX´モルを求めて、下記式(1)中の係数(α)を算出し、
分解に供する別の廃芳香族ポリカーボネート樹脂原料の粘度平均分子量をM、該別の廃芳香族ポリカーボネート樹脂を分解して得られた芳香族ジヒドロキシ化合物量をXモル、該芳香族ジヒドロキシ化合物のアルカリ金属塩水溶液中に残存する末端停止剤量をYモルとした時に、式(2)により、Yを求めて、
且つ、分解によって得られた該芳香族ジヒドロキシ化合物を原料の全て、または一部として再利用する事によって得られるポリカーボネート樹脂の所望の粘度平均分子量をM、原料として必要な芳香族ジヒドロキシ化合物の全量をXモル、原料として必要な末端停止剤の全量をYモルとし、
該別の廃芳香族ポリカーボネート樹脂を分解して得られた芳香族ジヒドロキシ化合物を再利用する量をXモル、該別の廃芳香族ポリカーボネート樹脂を分解して得られた芳香族ジヒドロキシ化合物のアルカリ金属塩水溶液中に残存する末端停止剤を再利用する量をYモル、該別の芳香族ポリカーボネート樹脂を分解して得られた該芳香族ジヒドロキシ化合物を原料として再利用する割合をK(下記式(3)で示される)とし、
反応工程に投入する新たな芳香族ジヒドロキシ化合物量をXモル、反応工程に投入する新たな末端停止剤量をYモルとしたときに(反応に使用する芳香族ジヒドロキシ化合物量の関係が式(4)、反応に使用する末端停止剤の関係が式(5)で示される)、Y量の範囲を下記式(6)により決定する前項1記載の芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法、
式(1) α=(M´―A)×(Y´)/(X´)
式(2) Y=α/(M―A))×X
式(3) K=X/X=Y/Y
式(4) X=X+X
式(5) Y=Y+Y
式(6) (500/(M―A))×X≦[(Y×K)+Y]≦(1000/(M―A))×X
(式(1)、式(2)、および式(6)中で、A=B×2+26
B:芳香族ポリカーボネート樹脂の製造に使用される末端停止剤の分子量)
3.廃芳香族ポリカーボネート樹脂をアルカリ金属水酸化物水溶液により分解して得られた芳香族ジヒドロキシ化合物のアルカリ金属塩水溶液を、精製した後に、ポリカーボネート樹脂の製造原料の全て、または一部として再利用し、且つ該精製工程により減少した末端停止剤量に応じた減少係数を乗じることによって、該芳香族ジヒドロキシ化合物のアルカリ金属塩水溶液中に残存する末端停止剤量を求める前項1または2記載の芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法、
4.廃芳香族ポリカーボネート樹脂をアルカリ金属水酸化物水溶液により分解して得られた芳香族ジヒドロキシ化合物のアルカリ金属塩水溶液の精製方法が、該芳香族ジヒドロキシ化合物のアルカリ金属塩水溶液と炭化水素化合物溶剤および/またはハロゲン化炭化水素化合物溶剤とを接触させて精製する前項3記載の芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法、および
5.廃芳香族ポリカーボネート樹脂をアルカリ金属水酸化物水溶液により分解して得られた芳香族ジヒドロキシ化合物のアルカリ金属塩水溶液の精製方法が、該芳香族ジヒドロキシ化合物のアルカリ金属塩水溶液と炭化水素化合物溶剤および/またはハロゲン化炭化水素化合物溶剤とを向流接触させて精製する前項3記載の芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法、
が提供される。
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明において、使用される廃芳香族ポリカーボネート樹脂の形状は、特に限定されるものではなく、例えば、パウダー、ペレット、シート、フィルム、成形品(光ディスク等を含む)等、およびそれらの製品を製造する際に発生する品質不良品、廃棄樹脂等が例示される。さらには、取り扱い性を考慮してかかる廃芳香族ポリカーボネート樹脂は粉砕されていてもよい。
【0011】
上記廃芳香族ポリカーボネート樹脂は、芳香族ポリカーボネート樹脂を50重量%以上、好ましくは60重量%以上、より好ましくは80重量%以上、さらに好ましくは90重量%以上含む。実質的に芳香族ポリカーボネート樹脂から構成された廃芳香族ポリカーボネート樹脂が特に好ましい。上記廃芳香族ポリカーボネート樹脂には、樹脂用の添加剤として通常使用される熱安定剤、酸化防止剤、離型剤(脂肪酸エステル等)、滑剤、可塑剤、帯電防止剤、増白剤、紫外線吸収剤、抗菌剤、顔料、染料、充填剤、強化剤、拡散剤、難燃剤等の改質改良剤を適宜添加されていても構わない。
【0012】
また、上記廃芳香族ポリカーボネート樹脂は、芳香族ポリカーボネート樹脂以外の樹脂を含有していてもよい。その含有量に特に制限は無いが、芳香族ポリカーボネート樹脂以外の樹脂が多いと、分解して得られる芳香族ジヒドロキシ化合物の収率が低下するので、50%以下である事が望ましい。芳香族ポリカーボネート樹脂以外の樹脂としては、ポリエステル系樹脂、メラミン系樹脂、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ABS系樹脂等のスチレン系樹脂およびオルガノポリシロキサン系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種以上の樹脂が好ましい。
【0013】
上記廃芳香族ポリカーボネート樹脂製品の具体例としては、液晶ディスプレイや液晶テレビに使用される紫外線吸収能を有する膜で被覆されたポリカーボネート樹脂製光拡散板や表面を保護膜で被覆されたポリカーボネート樹脂製窓ガラス、紫外線吸収能や耐擦傷性を有する保護膜で被覆されたポリカーボネート樹脂製眼鏡レンズ、耐擦傷性を有する保護膜で被覆された自動車用ポリカーボネート樹脂製ヘッドランプレンズ、耐擦傷性を有する保護膜で被覆されたオートバイ用ポリカーボネート樹脂製風防等が示される。また、光ディスクの具体例としては、CD、CD−R、DVD等の光ディスクであり、廃棄されたものや成形不良のものなど不要になった廃光ディスクをそのまま、あるいは印刷膜や金属膜を剥離し除去したもの等が挙げられる。
【0014】
本発明における芳香族ポリカーボネート樹脂は界面重合法や溶融重合法等公知の方法で製造されたものでよく、分子量は粘度平均分子量で1.0×10〜10.0×10の範囲のものが好ましい。ここで、ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(M)は塩化メチレン100mlにポリカーボネート樹脂0.7gを20℃で溶解した溶液から求めた比粘度(ηsp)を次式に挿入して求めたものである。
ηsp/c=[η]+0.45×[η]c(但し[η]は極限粘度)
[η]=1.23×10−4×M0.83
c=0.7
【0015】
該ポリカーボネート樹脂は、ハイドロキノン、レゾルシノール、4,4′−ジヒドロキシジフェニル、1,4−ジヒドロキシナフタレン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス{(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチル)フェニル}メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通称ビスフェノールA)、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチル)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシ)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(3−イソプロピル−4−ヒドロキシ)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3−フェニル)フェニル}プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチルブタン、2,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−イソプロピルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}フルオレン、α,α′−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−o−ジイソプロピルベンゼン、α,α′−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼン、α,α′−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−5,7−ジメチルアダマンタン、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4′−ジヒドロキシジフェニルケトン、4,4′−ジヒドロキシジフェニルエーテルおよび4,4′−ジヒドロキシジフェニルエステル等のジヒドロキシ化合物の単独または2種以上の混合物から既知の方法で製造されたものである。
【0016】
また、末端停止剤(分子量調節剤)としては、1価のフェノール化合物が好ましく用いられ、フェノール、p−クレゾール、p−エチルフェノール、p−イソプロピルフェノール、p−tert−ブチルフェノール、p−クミルフェノール、p−シクロヘキシルフェノール、p−オクチルフェノール、p−ノニルフェノール、2,4−キシレノール、p−メトキシフェノール、p−ヘキシルオキシフェノール、p−デシルオキシフェノール、o−クロロフェノール、m−クロロフェノール、p−クロロフェノール、p−ブロモフェノール、ペンタブロモフェノール、ペンタクロロフェノール、p−フェニルフェノール、p−イソプロペニルフェノール、2,4−ジ(1’−メチル−1’−フェニルエチル)フェノール、β−ナフトール、α−ナフトール、p−(2’,4’,4’−トリメチルクロマニル)フェノール、2−(4’−メトキシフェニル)−2−(4’’−ヒドロキシフェニル)プロパン等のフェノール類等の単独または2種以上の混合物が用いられる。
【0017】
本発明において、まず、廃芳香族ポリカーボネート樹脂を有機溶媒に溶解する工程、続いて、この有機溶媒溶液中のポリカーボネート樹脂をアルカリ金属水酸化物水溶液の存在下に分解する解重合工程が行われる。
この解重合工程では、有機溶媒の存在下で芳香族ポリカーボネート樹脂の分解(解重合反応)が行われる。有機溶媒を使用すると分解反応温度を低く維持し易く好ましい。
【0018】
前記有機溶媒としては25℃における芳香族ポリカーボネート樹脂の溶解度が50g/L以上である溶媒が好ましく、具体的にはジクロロメタン(塩化メチレン)、クロロホルム、ジクロロエタン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、ジクロロエチレン等のハロゲン化炭化水素化合物溶媒が好ましく、ジクロロメタン、ジクロロエタンまたはクロロホルムがより好ましく、ジクロロメタンが特に好ましく用いられる。これらの溶媒は芳香族ポリカーボネート樹脂の良溶媒で、芳香族ポリカーボネート樹脂の製造工程に反応溶媒として用いられており、分解して得られた芳香族ジヒドロキシ化合物にこれらの有機溶媒が残留していても、芳香族ポリカーボネート樹脂の製造に悪影響を及ぼさない利点がある。
【0019】
有機溶媒の使用量は、廃芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に対し40〜2000重量部が好ましく、200〜1000重量部の範囲がより好ましい。有機溶媒の使用量が40重量部より少ないと芳香族ポリカーボネート樹脂が十分に溶解せず不溶部が増え収量が低下し、2000重量部より多いと分解反応時に分解速度が低下し分解反応時間が長くなり、また溶媒の回収コストも高くなる。なお、光ディスク等の成形品、あるいは、廃棄樹脂で塊状のもの等は、あらかじめ0.1〜2cm程度の大きさに粉砕し、この粉砕物を溶解すると溶解時間が短縮されるため好ましい。
【0020】
芳香族ポリカーボネート樹脂を有機溶媒に溶解した有機溶媒溶液はそのまま分解反応に使用してもよく、あるいはろ過してその濾液を分解反応に使用してもよい。有機溶媒にポリカーボネート樹脂を溶解させた場合、有機溶媒に溶解しない不純物、例えば成型品中に含まれる添加剤、金属膜、コーティング剤、充填剤等をろ過し、除去することが可能である。除去しないで分解反応を行った場合、これらの不純物も分解され、芳香族ジヒドロキシ化合物金属塩水溶液に混入し、不純物分解物が混ざったままポリカーボネート樹脂製造工程に該水溶液を使用すると、製品のポリカーボネート樹脂の品質に悪影響を及ぼす可能性があるので、あらかじめ不溶物を除去することが好ましい。
【0021】
廃芳香族ポリカーボネート樹脂をアルカリ金属水酸化物水溶液で分解した後に残存する末端停止剤の量の測定方法としては、高速液体クロマトグラフを使用して、一定測定条件での流出時間位置のピーク高さより求める方法が挙げられる。一般に、高速液体クロマトグラフの測定機器は高価である事、および、日常的な保守作業が必要である事より、高速液体クロマトグラフを使用した測定は、経済的な方法とはいいがたい。また、測定に先立って、サンプルの前処理が必要である事より、日常的に使用する上で簡便な方法とは言いがたい。
【0022】
ここで、前述の式(1)で示される係数αは、廃芳香族ポリカーボネート樹脂を分解した際に、廃芳香族ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量、分解後の該芳香族ジヒドロキシ化合物のモル数、および、分解後の末端停止剤モル数の関係を表すものであり、連続式や回分式といった生産方式の違い、あるいは反応時間、反応温度等といった反応条件等の各重合系列の特性に応じて決まる。すなわち、同じ系列で生産された廃芳香族ポリカーボネート樹脂を原料として分解に供する場合は、一旦、測定して計数αを決めれば、その後の測定は、以下に述べる計算法によって求めればよい。
【0023】
かかる計算法としては、前記廃芳香族ポリカーボネート樹脂を有機溶媒に溶解する工程で、溶解後の有機溶媒溶液を取り出し、その溶液中に含まれる芳香族ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量を測定し、その測定値から逆算して、末端停止剤濃度を求める方法である。この方法は、前述の高速液体クロマトグラフを使用しない為、経済的で、かつ簡便である。溶解前の芳香族ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量の測定値では、粘度平均分子量の異なる廃芳香ポリカーボネート樹脂混合物を廃材原料として使用した場合、解重合反応される芳香族ポリカーボネート樹脂の必要な粘度平均分子量を必ずしも反映できない可能性があるため、溶解後の溶液を使用して粘度平均分子量を求める方法が望ましい。
【0024】
粘度平均分子量から末端停止剤量(Y)を求める方法は、次の計算式(式2)を使用して行う。
式2: Y=α/(M―A))×X
ここで、Y:廃芳香族ポリカーボネート樹脂を分解して得られた芳香族ジヒドロキシ化合物のアルカリ金属塩水溶液中に残存する末端停止剤量(モル)
:分解に供する廃芳香族ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量
:廃芳香族ポリカーボネート樹脂を分解して得られた芳香族ジヒドロキシ化合物量(モル)
(式(1)で、A=B×2+26、B:芳香族ポリカーボネート樹脂の製造に使用される末端停止剤の分子量)
【0025】
一方、前述の理由により係数αは決定されるので、異なる重合系列で生産された廃芳香族ポリカーボネート樹脂を新たに原料として分解に供する場合は、高速液体クロマトグラフで測定し、各重合系列に応じた係数αを求めることが望ましい。
【0026】
解重合工程で、アルカリ金属水酸化物は水溶液の状態で使用する。アルカリ金属水酸化物の濃度は、30重量%〜55重量%が好ましく、35重量%〜55重量%がより好ましい。30重量%より低いと分解速度が遅くなり、55重量%を超えるとアルカリ金属水酸化物が析出しスラリーになりやすく、スラリーになった場合かえって反応が遅くなる。
【0027】
また、使用されるアルカリ金属水酸化物としては、調達コスト、水溶液調整の容易さ等の点で、水酸化ナトリウムおよび/または水酸化カリウムの使用が好ましい。これらは、どちらか一方のみを使用しても、併用して使用してもよい。
【0028】
本発明において、分解反応を行う温度は30℃〜80℃が好ましく、30℃〜50℃がより好ましい。30℃未満の場合は分解反応時間が長くなり、処理効率が著しく劣ることがある。また、80℃を越えるとポリカーボネート樹脂以外の樹脂成分(特に塩素化化合物有機溶媒に溶解し、ろ液中に存在するアクリル系樹脂やメタクリル系樹脂が例示される)が分解反応を起こすことがあり、分解したアクリルモノマーやメタクリルモノマーが分解反応後の芳香族ジヒドロキシ化合物金属塩水溶液に混入し、不純物となり芳香族ジヒドロキシ化合物の純度が低下することがある。また、加熱エネルギーが多く必要となり、さらに分解処理中に溶液の色が褐色に着色し易くなり、品質の良い芳香族ジヒドロキシ化合物のアルカリ金属塩水溶液が得られなくなることがある。
【0029】
分解反応中に生成した芳香族ジヒドロキシ化合物は、塩基性条件下では酸化されやすいので、反応溶液中に酸化防止剤を添加することが好ましい。また、工程内の酸素濃度を不活性ガスにより、低減しておくことも有効である。
【0030】
酸化防止剤として、重亜硫酸ナトリウム(Na)、亜硫酸ナトリウム(NaSO)、ハイドロサルファイトナトリウム(Na)等が挙げられる。これらを1種または2種以上混合して用いても差し支えない。酸化防止剤の使用量は芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に対し、0.05〜10.0重量部が好ましく、0.5〜5重量部がより好ましい。0.05〜10.0重量部の範囲であると酸化防止効果があり、また、コスト的に有利で、分解反応速度が低下せず好ましい。
不活性ガスの種類として、窒素、アルゴン等が挙げられる。窒素がコスト的に有利であり好ましい。
【0031】
本発明における芳香族ポリカーボネート樹脂の分解方法は、界面反応であり、塩素化化合物有機溶媒に溶解、または膨潤している芳香族ポリカーボネート樹脂がアルカリ金属水酸化物水溶液と攪拌され、界面で接触して分解される。この反応は不可逆であり、芳香族ポリカーボネート樹脂のカーボネート結合が切れ、芳香族ジヒドロキシ化合物のアルカリ金属塩と炭酸金属塩に分解する。
【0032】
アルカリ金属水酸化物水溶液相と塩素化化合物有機溶媒相とをデカンター等の液液分離器で分離してアルカリ金属水酸化物水溶液相(水相)を回収する。この回収した芳香族ジヒドロキシ化合物のアルカリ金属塩の水溶液をそのまま芳香族ポリカーボネート樹脂の製造工程に再利用できる。液液分離器において分離が不十分であると、水相に粒状に浮遊している有機溶媒相が混入し、この水相をポリカーボネート樹脂の製造工程に使用した場合、得られるポリカーボネート樹脂の品質に影響を及ぼすので、水相をさらに精製して有機溶媒相中に含まれる樹脂添加剤等の残存物質を可能な限り除去することが好ましい。この方法としては、向流接触洗浄の他に、撹拌機、遠心分離機などによる公知の接触洗浄方法が使用できる。使用される溶媒は、炭化水素化合物溶剤およびハロゲン化炭化水素化合物溶剤が好適に使用され、特に、ハロゲン化炭化水素化合物溶剤の使用が望ましい。また、動力費用、保全費用等の経済的な理由から向流式の洗浄塔の使用が望ましい。使用される炭化水素化合物溶剤としては、トルエン、ベンゼン等の芳香族炭化水素溶剤、およびヘキサン、リグロイン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素溶剤が例示される。
【0033】
前述の精製工程により、芳香族ジヒドロキシ化合物金属塩の水溶液中の残存する末端停止剤の一部は除去されて減少する場合があるため、精製後の芳香族ジヒドロキシ化合物金属塩水溶液中の残存末端停止剤量を求める際は、前述の芳香族ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量から逆算して求めた末端停止剤量に、精製工程の特性に応じた一定の減少係数をかける(乗ずる)必要がある。
【0034】
この精製操作前後での末端停止剤濃度の減少係数を求める時は、高速液体クロマトグラフを使用して値を求める必要がある。また、前述の精製工程毎に、各減少係数は異なる為、各精製工程に応じた精製前後の末端停止剤減少係数を求める必要がある。ハロゲン化炭化水素化合物との向流接触式洗浄塔の場合では、減少係数の一例として、0.5以上、1.0以下の値が、完全混合槽の場合では、0.4以上、1.0以下の値が挙げられる。
【0035】
このようにして芳香族ポリカーボネート樹脂を分解して得られた芳香族ジヒドロキシ化合物の金属塩水溶液を芳香族ポリカーボネート樹脂の製造に再利用する方法は、購入した芳香族ジヒドロキシ化合物を調合した水溶液と任意の割合で混合して、芳香族ポリカーボネート樹脂の製造工程に使用することができる。ここで、反応工程に投入する末端停止剤の量は、再利用する芳香族ジヒドロキシ化合物の金属塩水溶液中に残存する末端停止剤の量を減して、投入する必要がある。減じて投入しない場合は、所望の粘度平均分子量を有する芳香族ポリカーボネート樹脂を得る事が出来ない。
【0036】
具体的な計算法としては、廃芳香族ポリカーボネート樹脂を分解して得られた芳香族ジヒドロキシ化合物量をXモル、該芳香族ジヒドロキシ化合物のアルカリ金属塩水溶液中に残存する末端停止剤量をYモル、分解によって得られた該芳香族ジヒドロキシ化合物を原料の全て、または一部として再利用する事によって得られるポリカーボネート樹脂の所望の粘度平均分子量をM、原料として必要な芳香族ジヒドロキシ化合物の全量をXモル、原料として必要な末端停止剤の全量をYモルとし、廃芳香族ポリカーボネート樹脂を分解して得られた芳香族ジヒドロキシ化合物を再利用する量をXモル、廃芳香族ポリカーボネート樹脂を分解して得られた芳香族ジヒドロキシ化合物のアルカリ金属塩水溶液中に残存する末端停止剤量を再利用する量をYモル、廃芳香族ポリカーボネート樹脂を分解して得られた該芳香族ジヒドロキシ化合物を原料として再利用する割合をK(式(3)で示される)とし、反応工程に投入する新たな末端停止剤量をYモルとした時に、次式(6)によりY量を決定する。
式(1) α=(M´―A)×(Y´)/(X´)
式(2) Y=α/(M―A))×X
式(3) K=X/X=Y/Y
式(4) X=X+X
式(5) Y=Y+Y
式(6) 500/(M―A))×X≦[(Y×K)+Y]≦1000/(M―A))×X
(式(1)式(2)および、式(6)中で、A=B×2+26
B:芳香族ポリカーボネート樹脂の製造に使用される末端停止剤の分子量)
【0037】
本発明の製造方法で得られるポリカーボネート樹脂には、熱安定剤、酸化防止剤、離型剤(脂肪酸エステル等)、滑剤、可塑剤、帯電防止剤、増白剤、紫外線吸収剤、耐候剤、抗菌剤、顔料、染料、充填剤、強化剤、他樹脂やゴム等の重合体、難燃剤等の改質改良剤を適宜添加して用いることができる。
【0038】
上記熱安定剤としてはリン系の熱安定剤が好ましく用いられ、例えば亜リン酸、リン酸、亜ホスホン酸、ホスホン酸およびこれらのエステル等が挙げられ、具体的には、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、トリメチルホスフェート、4,4’−ビフェニレンジホスフィン酸テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)等が好ましく使用される。これらは単独又は2種以上を混合して使用できる。これらの熱安定剤の配合量は、ポリカーボネート樹脂100重量部に対して、好ましくは0.001〜0.1重量部、より好ましくは0.002〜0.05重量部である。
【0039】
前記熱安定剤をポリカーボネート樹脂に配合する方法としては、重合反応後のポリカーボネート樹脂溶液に添加する方法、ポリカーボネート樹脂パウダーに添加する方法のいずれの方法で加えてもよい。特に、重合反応後のポリカーボネート樹脂溶液に添加する方法が得られるポリカーボネート樹脂の色相および熱安定性がより向上し好ましく、精製終了後のポリカーボネート樹脂溶液に添加する方法または温水で造粒する際に温水中に添加する方法が好ましい。熱安定剤は、溶媒に溶解してあるいはそのまま添加しても構わない。
【0040】
また、本発明の製造方法により得られるポリカーボネート樹脂は、色相および熱安定性に優れることから、例えば光磁気ディスク、各種追記型ディスク、デジタルオーディオディスク(いわゆるコンパクトディスク)、光学式ビデオディスク(いわゆるレーザディスク)、デジタル・バーサイル・ディスク(DVD)等の光学ディスク基板用の材料、シリコンウエハー等の精密機材収納容器の材料として好適に使用できる。また、光拡散板、窓ガラス、眼鏡レンズ、自動車用ヘッドランプレンズ、オートバイ用風防等のポリカーボネート樹脂製成形品としてリサイクルして使用することができる。
【発明の効果】
【0041】
本発明によれば、廃芳香族ポリカーボネート樹脂をアルカリ金属水酸化物水溶液により分解し、芳香族ジヒドロキシ化合物のアルカリ水溶液を得た後に、芳香族ポリカーボネート樹脂原料の一部、あるいは、全部として再利用する際に、得られた芳香族ジヒドロキシ化合物アルカリ金属塩の水溶液中に残存する末端停止剤の量を簡便に求める方法、および、経済的な反応条件の調整方法が提供される、さらには、安定した所望の粘度平均分子量を有する芳香族ポリカーボネート樹脂を得る方法が提供され、本発明の奏する工業的効果は格別である。
【実施例】
【0042】
以下に実施例を挙げて本発明を更に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。特に断り書きのない場合、部は重量部を表す。なお、評価は次に示す方法で行った。
【0043】
(1)ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量
粘度平均分子量は塩化メチレン100mlにポリカーボネート樹脂0.7gを20℃で溶解した溶液から求めた比粘度(ηsp)を次式に挿入して求めた。
ηsp/c=[η]+0.45×[η]×c (但し[η]は極限粘度)
[η]=1.23×10−4×M0.83
c=0.7
M=粘度平均分子量
【0044】
(2)塩化メチレン溶液中ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量
溶解操作後のポリカーボネート樹脂の塩化メチレン溶液を回転式エバポレーターに投入し、約7kPaの減圧下、約1時間かけて、溶媒の塩化メチレンを取り除いた。得られた固形分(ポリカーボネート樹脂が主成分)を真空式乾燥機に投入し、約0.2kPaの減圧下、30分かけて、さらに残留している塩化メチレンを取り除いた。その後、前(1)項の測定方法を使用して粘度平均分子量を求めた。
【0045】
(3)ビスフェノールAナトリウム塩水溶液中のp−tert−ブチルフェノールナトリウム塩(末端停止剤)濃度
前処理として、撹拌機付きフラスコに、解重合操作により得られたビスフェノールAナトリウム塩水溶液を投入した。その後、塩酸を加えて、pHを2以下に調整し、ビスフェノールAを主たる成分とする固体を得た。得られた固体を取り分け、充分に乾燥させた。
充分乾燥させた後、Waters社製 2690型高速液体クロマトグラムに、Waters社製 474型蛍光式検出部を組み合わせて使用し、該サンプル0.2gに内部標準としてo−クレゾールを添加したアセトニトリル1mLを加え、溶解し、アセトニトリル/0.2%酢酸水溶液を展開溶媒としてクロマトグラフを得、あらかじめ作成した検量線により、p−tert−ブチルフェノールの濃度を求めた。
【0046】
(4)溶解操作後のポリカーボネート樹脂塩化メチレン溶液中のポリカーボネート樹脂濃度
ケット科学研究所製赤外線式水分計FD−240を使用して、溶解操作後のポリカーボネート樹脂の塩化メチレン溶液10mlを140℃、120秒加熱して、その重量変化より測定した。
γ=(加熱後の重量)/(加熱前の重量)
【0047】
(5)解重合分解反応により得られたビスフェノールAナトリウム塩のモル数
後述する[ポリカーボネート樹脂の解重合操作全般]の解重合操作後の液の一部をサンプルとして取り出した。これを20分間静置して重液と軽液に分けた後、分液ロートを使用して、重液側を分離した。次に、ケット科学研究所製赤外線式水分計FD−240を使用して分離した重液10mlを140℃、120秒加熱した後の減量率(β)を測定した。
ここで、β=((加熱前の重量)×γ―(加熱後の重量))/((加熱前の重量)×γ)である。
また、該式中のγは、上記(4)溶解操作後のポリカーボネート樹脂塩化メチレン溶液中のポリカーボネート樹脂濃度を表している。
本測定結果を次式に代入し、解重合分解反応により得られたビスフェノールAナトリウム塩のモル数(X)を求めた。
X=((分解に使用した廃芳香族PC量(g))×0.899×β)/226
【0048】
[ポリカーボネート樹脂の解重合操作全般]
(溶解操作)
末端停止剤としてp−tert−ブチルフェノールを使用しているポリカーボネート樹脂100部と塩化メチレン800部を攪拌槽に投入し、室温下、6時間攪拌して溶解操作を実施した。
【0049】
(解重合操作)
次に、予め窒素で気相部を置換してある、温度計、撹拌機、還流冷却器および水浴を備えた反応器に移し、該ポリカーボネート樹脂の塩化メチレン溶液900部(ドープ濃度11%)、50%水酸化ナトリウム水溶液193部(ポリカーボネート樹脂のカーボネート結合1モルに対し6.0モル)、ハイドロサルファイトナトリウム7部を投入し、攪拌した。その後、水浴温度を40℃に調節したところ、8分後に激しく還流が始まり、20分後に激しさは収まった。反応5時間後、内部は固体が析出しており、固体を一部取り分析したところ、ビスフェノールAナトリウム塩と炭酸ナトリウムであった。水浴の温度調節を止めて、900部の純水を投入し、1時間攪拌を継続して固体を溶解した。
【0050】
(分液操作)
分液ロートに反応混合物を移し、1200部の水相と800部の有機相に分離した。水相はアルカリ性水溶液であり、ビスフェノールAナトリウム塩を107部含んでおり、その他に、炭酸ナトリウムを42部、水酸化ナトリウムを32部含んでいた。
【0051】
[ポリカーボネート樹脂の製造操作]
(A)温度計、撹拌機、還流冷却器、循環器付き反応器に、イオン交換水650部、塩化メチレン13部およびハイドロサルファイト0.34部を加えた。また、所定量の25%水酸化ナトリウム水溶液、購入ビスフェノールA、また、解重合して得られたビスフェノールAナトリウム塩水溶液を加え、循環しながら温度を30℃に保持し40分間で溶解し、ビスフェノールA水溶液を調合した。
【0052】
(B)温度計、撹拌機および還流冷却器付き反応器に、(A)で調合したビスフェノールA水溶液367部を仕込み、塩化メチレン181部を加え、撹拌下15〜25℃でホスゲン28.3部を40分要して吹込んだ。ホスゲン吹き込み終了後、48%水酸化ナトリウム水溶液7.2部および所定量の固体のp−tertーブチルフェノールを加え、乳化せしめた後、10分後にトリエチルアミン0.06部を加え、さらに28〜33℃で1時間撹拌して反応を終了した。反応終了後生成物に塩化メチレン400部を加え混合した後、攪拌を停止し、水相と有機相とを分離して、ポリカーボネート樹脂濃度14.5重量%有機溶媒溶液を得た。
【0053】
この有機溶媒溶液に水150部を加えて攪拌混合した後、攪拌を停止し、水相と有機相とを分離した。この有機相にpH3の塩酸水200部を加え、攪拌混合しトリエチルアミン等を抽出した後、攪拌を停止し、水相と有機相とを分離した。次いでさらに分離した有機相にイオン交換水200部を加え攪拌混合した後、攪拌を停止し、水相と有機相とを分離した。この操作を水相の導電率がイオン交換水と殆ど同じになるまで(4回)繰返した。得られた精製ポリカーボネート樹脂溶液をSUS304製の濾過精度1μmフィルターで濾過した。
【0054】
次に、軸受け部に異物取出口を有する隔離室を設けた内壁の材質がSUS316L製の1000Lニーダーにイオン交換水100Lを投入し、水温42℃にて該有機溶媒溶液を滴下して、塩化メチレンを蒸発させて粉粒体とし、該粉粒体と水との混合物を水温95℃にコントロールされた攪拌機付熱水処理槽を有した熱水処理工程の熱水処理槽に投入し、粉粒体25部、水75部の混合比で30分間攪拌機混合した。この粉粒体と水との混合物を遠心分離機で分離して塩化メチレン0.5重量%、水45重量%を含有する粉粒体を得た。次に、この粉粒体を140℃にコントロールされているSUS316L製伝導受熱式溝型2軸攪拌連続乾燥機に50kg/h(ポリカーボネート樹脂換算)で連続供給して、平均乾燥時間3時間の条件で乾燥して粉粒体を得た。
【0055】
[実施例1]
重合系列Aで、ビスフェノールAとホスゲンとを溶液法で回分式により生産されたポリカーボネート樹脂を原料としてシートを加工した際に発生した廃シートを使用して、前記の解重合操作全般(溶解、解重合、分液)を行った。分解に使用した該廃シートの量、分解操作前に測定した該廃シートの粘度平均分子量、解重合反応率、解重合後に得られた水相部に存在するビスフェノールAナトリウム塩(BPA−Na)のモル数、解重合後に得られたビスフェノールAナトリウム塩を含む水相部に残存する末端停止剤であるp−tert−ブチルフェノールナトリウム塩量を液体クロマトグラフで測定した結果、および、それらの値を使用して得られた係数αを表1に記した。
【0056】
[実施例2]
重合系列Aで生産されたポリカーボネート樹脂を原料として、溶融押出成形した際に発生するエクストールーダーの吐出屑を使用した以外は、実施例1と同様に解重合分解操作を実施、得られた結果を表1に記した。
【0057】
[実施例3]
重合系列Bで、ビスフェノールAとホスゲンとを溶液法で連続式により生産されたポリカーボネート樹脂を原料として、シートを加工した際に発生した廃シートを使用した以外は、実施例1と同様に解重合分解操作を実施、得られた結果を表1に記した。
【0058】
[実施例4]
重合系列Bで生産されたポリカーボネート樹脂を原料として、溶融押出成形した際に発生するエクストールーダーの吐出屑を使用した以外は、実施例1と同様に解重合分解操作を実施、得られた結果を表1に記した。
表1から判るように、同じ重合系列で生産された廃ポリカーボネート樹脂を使用した場合は、同様の係数αが得られる。
【0059】
【表1】

【0060】
[実施例5]
ポリカーボネート樹脂を原料として、重合工程Aで生産されたペレットを使用し、前述の解重合操作全般操作(溶解、解重合操作、分液操作)を行った。尚、溶解操作後の塩化メチレン溶液中ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は20.0×10であり、この値および実施例1および2で求めた重合系列Aの係数αを使用して求めた水相部中の精製前のp−tert−ブチルフェノールナトリウム塩量を表2に記した。
該解重合操作によって得られたビスフェノールAナトリウム塩を含む水相部をそのまま精製することなく使用して、表2の仕込み条件で、前述のポリカーボネート樹脂の製造操作により、粉粒体を得た。
【0061】
なお、ビスフェノールAナトリウム塩を含む水相部中に目標の粘度平均分子量23.0×10に対する本重合工程で必要なp−tert−ブチルフェノール添加量は、表2に記載している通りであり、この量、および、逆算により求めた水相部中のp−tert−ブチルフェノール量から、新たに本重合工程に投入するp−tert−ブチルフェノール量を求めた。
得られた粉粒体の粘度平均分子量は、23.1×10であり、所望の粘度平均分子量を持つポリカーボネート樹脂を得る事が出来た。
【0062】
[実施例6]
実施例5において、ポリカーボネート樹脂原料として、重合工程Aで生産された廃シート材料を使用した以外は、実施例5と同様の操作を行って、ポリカーボネート樹脂の粉粒体を得た。目標の粘度平均分子量28.0×10に対して、得られた粉粒体の粘度平均分子量は、28.1×10であり、所望の粘度平均分子量を持つポリカーボネート樹脂を得る事が出来た。
【0063】
[実施例7]
実施例5において、ポリカーボネート樹脂原料として、重合工程Bで生産されたペレットを使用した以外は、実施例5と同様の操作を行って、ポリカーボネート樹脂の粉粒体を得た。目標の粘度平均分子量30.0×10に対して、得られた粉粒体の粘度平均分子量は、30.0×10であり、所望の粘度平均分子量を持つポリカーボネート樹脂を得る事が出来た。
【0064】
[比較例1]
実施例5において、ポリカーボネート樹脂の製造操作で投入するp−tert−ブチルフェノールの量を調整せずに、通常所定量を使用したこと以外は、実施例5と同様の操作を行って、ポリカーボネート樹脂の粉粒体を得た。目標の粘度平均分子量23.0×10に対して、得られた粉粒体の粘度平均分子量は、22.1×10であり、所望の粘度平均分子量を持つポリカーボネート樹脂を得る事が出来なかった。
【0065】
【表2】

【0066】
[実施例8]
実施例5において、分解操作後のビスフェノールAナトリウム塩水溶液を塩化メチレンで完全混合により精製した以外は、実施例5と同様の操作を行って、ポリカーボネート樹脂の粉粒体を得た。目標の粘度平均分子量23.0×10に対して、得られた粉粒体の粘度平均分子量は、23.1×10であり、所望の粘度平均分子量を持つポリカーボネート樹脂を得る事が出来た。精製操作前後のビスフェノールAナトリウム塩水溶液中のp−tert−ブチルフェノールナトリウム塩濃度減少係数は0.75であった。精製条件および結果を表3に記した。
【0067】
[実施例9]
実施例6において、分解操作後のビスフェノールAナトリウム塩水溶液をトルエンで完全混合により精製した以外は、実施例5と同様の操作を行って、ポリカーボネート樹脂の粉粒体を得た。目標の粘度平均分子量28.0×10に対して、得られた粉粒体の粘度平均分子量は、27.9×10であり、所望の粘度平均分子量を持つポリカーボネート樹脂を得る事が出来た。精製操作前後のビスフェノールAナトリウム塩水溶液中のp−tert−ブチルフェノールナトリウム塩濃度減少係数は0.80であった。精製条件および結果を表3に記した。
【0068】
[実施例10]
実施例7において、分解操作後のビスフェノールAナトリウム塩水溶液を塩化メチレンで向流接触により精製した以外は、実施例5と同様の操作を行って、ポリカーボネート樹脂の粉粒体を得た。目標の粘度平均分子量30.0×10に対して、得られた粉粒体の粘度平均分子量は、30.0×10であり、所望の粘度平均分子量を持つポリカーボネート樹脂を得る事が出来た。精製操作前後のビスフェノールAナトリウム塩水溶液中のp−tert−ブチルフェノールナトリウム塩濃度減少係数は0.85であった。精製条件および結果を表3に記した。
【0069】
[比較例2]
実施例8において、分解操作後のビスフェノールAナトリウム塩水溶液を塩化メチレンで向流接触によりポリカーボネート樹脂の製造操作で投入するp−tert−ブチルフェノールの量を調整せずに、通常所定量を使用したこと以外は、実施例6と同様の操作を行って、ポリカーボネート樹脂の粉粒体を得た。目標の粘度平均分子量23.0×10に対して、得られた粉粒体の粘度平均分子量は、22.2×10であり、所望の粘度平均分子量を持つポリカーボネート樹脂を得る事が出来なかった。
【0070】
【表3】

【0071】
[比較例3]
実施例5において、解重合後の水相中に残留するp−tert−ブチルフェノールの量を計算する際に、実施例1で使用した係数のα値ではなく、異なる係数のα値(550)を使用した以外は、実施例5と同様の操作を行って、ポリカーボネート樹脂の粉粒体を得た。目標の粘度平均分子量23.0×10に対して、得られた粉粒体の粘度平均分子量は、22.0×10であり、所望の粘度平均分子量を持つポリカーボネート樹脂を得る事が出来なかった。精製条件および結果を表4に記した。
【0072】
[比較例4]
実施例8において、解重合後の水相中に残留するp−tert−ブチルフェノールの量を計算する際に、実施例1で使用した係数のα値ではなく、異なる係数のα値(550)を使用した以外は、実施例8と同様の操作を行って、ポリカーボネート樹脂の粉粒体を得た。目標の粘度平均分子量23.0×10に対して、得られた粉粒体の粘度平均分子量は、22.3×10であり、所望の粘度平均分子量を持つポリカーボネート樹脂を得る事が出来なかった。精製条件および結果を表4に記した。
【0073】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃芳香族ポリカーボネート樹脂をアルカリ金属水酸化物水溶液により分解し、得られた芳香族ジヒドロキシ化合物のアルカリ金属塩水溶液をポリカーボネート樹脂の製造原料の全て、または一部として再利用して芳香族ポリカーボネート樹脂を製造する方法であって、該芳香族ジヒドロキシ化合物のアルカリ金属塩水溶液中に残存する末端停止剤量を、分解に供する廃芳香族ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量を測定し、その測定値から逆算して求め、且つ所望の粘度平均分子量のポリカーボネート樹脂を得るために必要な末端停止剤の量に応じて、該芳香族ジヒドロキシ化合物のアルカリ金属塩水溶液と共に反応工程に投入する新たな末端停止剤の量を決定することを特徴とする芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法。
【請求項2】
分解に供する廃芳香族ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量をM´、該廃芳香族ポリカーボネート樹脂を分解して得られた芳香族ジヒドロキシ化合物量をX´モル、該芳香族ジヒドロキシ化合物のアルカリ金属塩水溶液中に残存する末端停止剤量をY´モルとしたときに、予め、高速液体クロマトグラムを使用してY´モルを、分解反応時の反応率からX´モルを求めて、下記式(1)中の係数(α)を算出し、
分解に供する別の廃芳香族ポリカーボネート樹脂原料の粘度平均分子量をM、該別の廃芳香族ポリカーボネート樹脂を分解して得られた芳香族ジヒドロキシ化合物量をXモル、該芳香族ジヒドロキシ化合物のアルカリ金属塩水溶液中に残存する末端停止剤量をYモルとした時に、式(2)により、Yを求めて、
且つ、分解によって得られた該芳香族ジヒドロキシ化合物を原料の全て、または一部として再利用する事によって得られるポリカーボネート樹脂の所望の粘度平均分子量をM、原料として必要な芳香族ジヒドロキシ化合物の全量をXモル、原料として必要な末端停止剤の全量をYモルとし、
該別の廃芳香族ポリカーボネート樹脂を分解して得られた芳香族ジヒドロキシ化合物を再利用する量をXモル、該別の廃芳香族ポリカーボネート樹脂を分解して得られた芳香族ジヒドロキシ化合物のアルカリ金属塩水溶液中に残存する末端停止剤を再利用する量をYモル、該別の芳香族ポリカーボネート樹脂を分解して得られた該芳香族ジヒドロキシ化合物を原料として再利用する割合をK(下記式(3)で示される)とし、
反応工程に投入する新たな芳香族ジヒドロキシ化合物量をXモル、反応工程に投入する新たな末端停止剤量をYモルとしたときに(反応に使用する芳香族ジヒドロキシ化合物量の関係が式(4)、反応に使用する末端停止剤の関係が式(5)で示される)、Y量の範囲を下記式(6)により決定する請求項1記載の芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法。
式(1) α=(M´―A)×(Y´)/(X´)
式(2) Y=α/(M―A))×X
式(3) K=X/X=Y/Y
式(4) X=X+X
式(5) Y=Y+Y
式(6) (500/(M―A))×X≦[(Y×K)+Y]≦(1000/(M―A))×X
(式(1)、式(2)、および式(6)中で、A=B×2+26
B:芳香族ポリカーボネート樹脂の製造に使用される末端停止剤の分子量)
【請求項3】
廃芳香族ポリカーボネート樹脂をアルカリ金属水酸化物水溶液により分解して得られた芳香族ジヒドロキシ化合物のアルカリ金属塩水溶液を、精製した後に、ポリカーボネート樹脂の製造原料の全て、または一部として再利用し、且つ該精製工程により減少した末端停止剤量に応じた減少係数を乗じることによって、該芳香族ジヒドロキシ化合物のアルカリ金属塩水溶液中に残存する末端停止剤量を求める請求項1または2記載の芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法。
【請求項4】
廃芳香族ポリカーボネート樹脂をアルカリ金属水酸化物水溶液により分解して得られた芳香族ジヒドロキシ化合物のアルカリ金属塩水溶液の精製方法が、該芳香族ジヒドロキシ化合物のアルカリ金属塩水溶液と炭化水素化合物溶剤および/またはハロゲン化炭化水素化合物溶剤とを接触させて精製する請求項3記載の芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法。
【請求項5】
廃芳香族ポリカーボネート樹脂をアルカリ金属水酸化物水溶液により分解して得られた芳香族ジヒドロキシ化合物のアルカリ金属塩水溶液の精製方法が、該芳香族ジヒドロキシ化合物のアルカリ金属塩水溶液と炭化水素化合物溶剤および/またはハロゲン化炭化水素化合物溶剤とを向流接触させて精製する請求項3記載の芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法。

【公開番号】特開2008−101054(P2008−101054A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−282490(P2006−282490)
【出願日】平成18年10月17日(2006.10.17)
【出願人】(000215888)帝人化成株式会社 (504)
【Fターム(参考)】