説明

廃酸の処理方法とその廃酸中和剤及び廃酸中和物の再資源化方法

【課題】 本発明は、中和処理時間を著しく短縮し、反応温度が低く、有害ガスの噴出の少ない安全性や作業性に優れ、取扱いが容易で、低原価で量産できる廃酸中和剤の提供を目的とする。
【解決手段】 廃酸中和剤は、マグネシウム鉱石の1種であるブルーサイトを800℃〜1100℃で焼成、若しくはマグネサイトを800℃〜1100℃で焼成し、300メッシュ以下に粉砕された微粉状粉末である活性マグネシウムの含有量が80wt%以上、CaO含有量が20wt%未満である構成を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物として排出される濃厚で処理の難しい廃酸を安全に短時間で中和して処理する方法を提供する方法に関するものである。また廃棄物として排出される濃厚で処理の難しい廃酸を従来のアルカリ中和法より少ない使用量で、かつ低温域で簡便に中和することのできる廃酸中和剤を提供するものである。さらに、廃酸中和剤により生じた廃酸中和物から有効資源を回収して省資源化が可能で中和処理の費用を削減できる廃酸中和物の再資源化方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体製造工場ではシリコンウェハの洗浄工程およびエッチング工程でフッ酸を一成分とする酸混合溶液(フッ酸−硝酸系、フッ酸−硝酸−酢酸系など)が使用されており、使用済みの混酸廃液が多量に発生している。
また、太陽電池、FPD製造工場からは、ガラスを溶解するために、塩酸、フッ酸、硝酸、硫酸等の酸混合溶液が高濃度で使用されている。
これらの工場から排出される廃酸はpHが2以下であり処理が難しいとされてきた。
以下、図面を参照しながら、従来の混合廃酸の処理プロセスを説明する。図2は、従来の混合廃酸の処理を示すフローチャートである。まず、それらの工場から発生する廃酸、及び廃酸から生じた沈殿や汚泥類(廃酸スラッジ)を収集する(S1)。次いで、収集した混合廃酸を反応槽ピット内で水酸化ナトリウムによって中和する(S2)。中和液が冷却したら石灰を混入して水分を下げ(S3)、スラッジ化して(S4)中性汚泥として処理されている。
しかしながら、濃厚な酸とアルカリとの中和反応により高熱を発するため、取り扱いが難しく、さらに悪臭や毒性、可燃性を持つガスを発生させることが多いために危険であり取り扱いが難しいという課題を有していた。
また、従来は、中和処理に時間が掛かる上に、生成した中性汚泥を処理するためにさらに時間と費用が掛かるという課題を有していた。
【0003】
近年、これらの課題を解決するため、種々の中和法が検討されている。例えば、
(特許文献1)には鋼帯の製造工程の中の酸洗工程から発生する廃酸を中和するために用いる中和剤として、質量%でMgO:25〜70%、CaO:10〜40%、Al:3 〜10%、SiO:3 〜15%、C:3〜25%を含む粒子からなり、粒径:0.1〜75μmを有する粒子の質量W1の全粒子の総質量WTに対する百分率R(=(W1/WT)×100)が70%以上であることを特徴とする廃酸処理用中和剤が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−307079
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら上記従来の技術においては、以下のような課題を有していた。
(特許文献1)に記載の技術は、
(1)中和は可能だが重量比による中和剤の使用量が多く、廃棄処理等に多大の労力を要する。
(2)CaOの比率が高く水熱反応と酸アルカリ反応が相乗的に進行して200度を越える反応温度になり、安全対策上多くの設備を要する。
(3)反応温度が高いため、塩化水素ガスや亜硫酸ガスなどの発生を増幅させるため、多大の安全設備を要するとともに省力性に欠ける。
【0006】
本発明は上記従来の課題を解決するもので、中和処理時間を著しく短縮し、反応温度が低く、有害ガスの噴出の少ない安全性や作業性に優れた廃酸の中和処理方法の提供、及び取り扱いが容易で、安全性に優れ、低温で反応が進み、ガスの発生など少なく低原価で量産できる廃酸中和剤の提供をすることを目的とする。
また、本発明は、前記廃酸中和剤によって中和することによって発生したスラッジから有効資源を回収し、省資源性に優れる廃酸中和物の再資源化方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記従来の課題を解決するために本発明の廃酸の中和処理方法、廃酸中和剤及び廃酸中和物の再資源化方法は、以下の構成を有している。
請求項1に記載の廃酸中和方法は、廃酸中の酸1重量部に対して、活性マグネシウムを主成分とする微粉状粉末の廃酸中和剤0.5〜1重量部を投入し、攪拌混合する構成を有している。この構成により、以下のような作用が得られる。
(1)酸化マグネシウムを多く含む活性マグネシウムが主成分なので金属マグネシウムと
異なり、酸との反応は穏やかであり、発熱量が少なく取り扱いが容易である。また発熱量が少ないので、従来の方法のように温度が下がるまで待つ時間が不要になり、作業時間を著しく短縮できる。
(2)酸化マグネシウムと酸との反応なので、金属マグネシウムと酸との反応と異なり、水素などの可燃性ガスを発生させないので安全性に優れる。
(3)酸化反応が穏やかであるため、未反応の酸化マグネシウムと廃酸の中和によって生じたマグネシウム塩が共存し、互いに水を奪い合うため、生成した中和スラッジの潮解性が低く取り扱いが容易である。
(4)水酸化ナトリウムと酸との反応と異なりほとんど水を生じないので、濃厚な廃酸を中和した場合に生成する中和物はほとんど水を有しない。よって従来の方法のような石灰の投入による水分含有量を下げる作業が不要であり、作業が簡便であり、設備も少なくて済む。
(5)水酸化ナトリウムと酸の反応と異なりマグネシウムは2価であるので、水酸化ナトリウムの場合の凡そ半分の重量の中和剤を使用することで中和処理ができる。
【0008】
ここで、活性マグネシウムとは酸化マグネシウムを多く含むマグネシウム鉱石あるいは海水などから得た水酸化マグネシウムを800℃以上で焼成したものをいう。一般に800℃〜1100℃で焼成したもの軽焼マグネシア、1100℃以上で焼成したものを重焼マグネシアといい、どちらも酸化マグネシウム(MgO)を主たる成分とする。表面被膜および結晶の構造の違いから、軽焼マグネシアと重焼マグネシアは反応性が異なる。廃酸の中和に用いる活性マグネシウムとしては反応性の高い軽焼マグネシアを使用することが好ましい。
【0009】
廃酸とは工場などからでる酸性の廃棄物のことであるが、特に本願では酸濃度が30容量%を超え、pHが2以下の濃厚な混酸からなる廃酸を処理できることを特徴とする。
【0010】
廃酸と活性マグネシウムを主成分とする廃酸中和剤との反応は穏やかであるので、水酸化ナトリウムによって廃酸を中和する場合のように徐々に中和剤を加える必要はない。
反応ピットに直接微粉状の中和剤を投入して、全体をよく攪拌して放置する。放置する時間は15分〜1時間が好ましい。15分以下では反応が途上である可能性が高く好ましくない。1時間以上掛けても反応がそれ以上進まないので、設備を占有するだけとなり好ましくない。
【0011】
廃酸と廃酸中和剤の攪拌に使用する手段は特に限定しない。全体が均一に混合できればよい。攪拌棒による手動攪拌、プロペラ式の攪拌機や、反応槽自体を回転させる方法などが利用できる。
【0012】
請求項2に記載の廃酸中和剤は、 マグネシウム鉱石の1種であるブルーサイトを800℃〜1100℃で焼成、若しくはマグネサイトを800℃〜1100℃で焼成し、300メッシュ以下に粉砕された微粉状粉末である活性マグネシウムを主成分とした構成を有している。
この構成により、以下のような作用が得られる。
(1)ブルーサイトを800℃〜1100℃で焼成、又は、マグネサイトを800℃〜1100℃で焼成することでマグネシウム鉱石の内部の水酸化物、炭酸化物が酸化物に変化し、酸との反応性が増加して短時間で中和できる。
(2)酸化マグネシウムを多く含む活性マグネシウムが主成分なので、次式のように金属マグネシウムと異なり、酸との反応は穏やかであり、発熱量が少なく、しかも水素を発生させない。
代表的酸である塩酸を例に反応式を説明する。
金属マグネシウムは、
2HCl・HO+Mg→MgCl・2HO+H↑+△H
一方、マグネシアは2段反応なので、反応は緩く、かつ、発熱量も少ない。
MgO+2HCl・HO→Mg(OH)+2HCl+△H
Mg(OH)+2HCl→MgCl+2HO+△H
さらに未反応過剰MgOが存在する場合、塩基性塩化マグネシウム
3MgO・MgCl・nHOとなって硬化する。
また、この反応を利用して、ケイフッ酸、硝酸などの混合酸であっても、ケイフッ化マグネシウム、硝酸マグネシウムとして中和する。
(3)酸化反応が穏やかであるため、未反応の酸化マグネシウムと廃酸の中和によって生じたマグネシウム塩が共存し、互いに水を奪い合うため、生成した中和スラッジの潮解性が低い。
(4)水酸化ナトリウムと酸との反応と異なり水を生じないので、濃厚な廃酸を中和した場合に生成する中和物はほとんど水を有しない。よって従来の方法のような石灰投入による水分含有量を下げる作業が不要であり、作業が簡便であり、設備も少なくて済む。
(5)水酸化ナトリウムと酸の反応と異なりマグネシウムは2価であるので、水酸化ナトリウムの場合の凡そ半分の重量の中和剤を使用することで中和処理ができる。
(6)300メッシュ以下に粉砕されているので、表面積が広く、廃酸との反応が短時間で進み易い。
【0013】
ここで、廃酸中和剤の粉砕サイズが300メッシュを超えて大きいと、廃酸と反応する表面積が狭くなり、中和反応に時間が掛かる傾向があり好ましくない。また粉砕サイズを300メッシュよりさらに細かくすると粉砕のために時間とエネルギーが過剰に必要となり好ましくない。
【0014】
請求項3に記載の廃酸中和剤は請求項2に記載の廃酸中和剤であって、MgO含有量が80wt%以上、CaO含有量が20wt%未満である構成を有している。
この構成により、請求項2の作用に加えて、以下のような作用が得られる。
(1)MgO含有量が80wt%以上、CaO含有量が20wt%未満であるので、廃酸との中和反応が穏やかに進行し、発熱が少なく、安全に取り扱うことができる。
【0015】
ここでMgOの含有量が80wt%未満であると、中和反応に使用する中和剤の量が多くなり、結果として生成する中和スラッジの量が多くなり好ましくない。
CaOはMgOよりも酸との反応性が高いので、CaOの含有量が20wt%を超えると、廃酸と激しく反応して発熱する傾向が高くなり好ましくない。
【0016】
請求項4に記載の廃酸中和物の再資源化法は請求項1に記載の方法で廃酸を中和して得られた廃酸中和物、若しくは請求項2又は3に記載の廃酸中和剤により中和された廃酸中
和物に加水した後、固液分離し、得られた液体に強アルカリ剤を添加して、水酸化マグネシウムを晶析させる構成を有している。
この構成により、以下のような作用が得られる。
(1)加水することで、廃酸中和物中のマグネシウム塩が溶けるので、その他の不溶性の成分から分離できる。これに強アルカリである水酸化ナトリウムを加えることで水酸化マグネシウムが晶析し、分離精製が可能となる。
(2)廃棄物である廃酸中和液及び/又は廃酸中和スラッジから、高濃度の水酸化マグネシウムを得ることができ、その得られた水酸化マグネシウムを有価物として販売することで廃酸の処理コストをさらに下げることができる。
(3)得られた水酸化マグネシウムをマグネシウム鉱石と共に焼結することで廃酸中和剤として再利用することができ、省資源性に優れる。
(4)廃棄物である廃酸中和液及び/又は廃酸中和スラッジの量が減少し、処分費用が削減できる。
【0017】
ここで、廃酸中和物とは廃酸に廃酸中和剤を投入した結果生じた、廃酸中和液及び廃酸スラッジ、廃酸汚泥を含む。
強アルカリ剤としては、NaOH、KOH、NaCO、KCO等の強塩基性剤をいい、これらの1種又は2種以上が用いられる。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明の廃酸の中和処理方法とそれに用いる廃酸中和剤及び廃酸中和物の再資源化方法によれば、以下のような有利な効果が得られる。
請求項1に記載の発明によれば、
(1)発熱量が少なく作業性に優れ、中和が容易で、中和作業時間が著しく短く、更にまた発熱量が少ないので、従来の方法のように温度が下がるまでの時間が短く、処理時間を著しく短縮し作業性を高める廃酸の処理方法を提供できる。
(2)水素などの可燃性ガスを発生させないので安全性に優れた廃酸の処理方法を提供できる。
(3)酸化反応が穏やかであるため、未反応の酸化マグネシウムと廃酸の中和によって生じたマグネシウム塩が共存し、互いに水を奪い合うため、生成した中和スラッジの潮解性が低く取り扱いが容易な廃酸の処理方法を提供できる。
(4)従来の方法のような石灰投入による水分含有量を下げる作業が不要であり、作業が簡便であり、設備も少なくて済む廃酸の処理方法を提供できる。
(5)従来法の水酸化ナトリウムの場合の凡そ半分の重量の中和剤を使用することで中和処理ができる廃酸の処理方法を提供できる。
(6)従来法の苛性ソーダは劇薬劇物に指定され、取扱い時に非常に注意を要するが、活性マグネシウムは手で触れても問題なく、取扱いが非常に簡単で、安全性、作業性に優れた廃酸の処理方法を提供できる。
【0019】
請求項2に記載の発明によれば、
(1)低温でかつ短時間で中和できる安全性、作業性に優れた廃酸中和剤を提供できる。
(2)発熱量が少なく、水素等の可燃性ガスを発生させない安全性に優れた廃酸中和剤を提供できる。
(3)酸化反応が穏やかであるため、未反応の酸化マグネシウムと廃酸の中和によって生じたマグネシウム塩が共存し、互いに水を奪い合うため、生成した中和スラッジの潮解性が低く、後処理が容易な廃酸中和剤を提供できる。
(4)水酸化ナトリウムと酸の反応と異なり水を生じないので、濃厚な廃酸を中和した場合に生成する中和物はほとんど水を有しない。よって従来の方法のような石灰投入による水分含有量を下げる作業が不要であり、作業が簡便であり、設備も少なくて済む廃酸中和剤を提供できる。
(5)水酸化ナトリウムと酸の反応と異なりマグネシウムは2価であるので、水酸化ナトリウムの場合の凡そ半分の重量の中和剤を使用することで中和処理ができる廃酸中和剤を提供できる。
(6)300メッシュ以下に粉砕されているので、表面積が広く、廃酸との反応が短時間で進み易い廃酸中和剤を提供できる。
【0020】
請求項3に記載の発明によれば、請求項2に記載の発明によって得られるの効果に加え、
(1)MgO含有量が80wt%以上、CaO含有量が20wt%未満であるので、廃酸との中和反応が穏やかに進行し、発熱が少なく、安全に取り扱うことができる廃酸中和剤を提供できる。
【0021】
請求項4に記載の発明によれば、
(1)加水することで、廃酸中和液及び/又は廃酸中和スラッジ中のマグネシウム塩が溶けるので、その他の不溶性の成分から分離できる。これに強アルカリである水酸化ナトリウムを加えることで水酸化マグネシウムが晶析し、分離精製が可能となる廃酸中和物の再資源化方法を提供できる。
(2)廃棄物である廃酸中和液及び/又は廃酸中和スラッジから、高濃度の水酸化マグネシウムを得ることができ、その得られた水酸化マグネシウムを有価物として販売することで廃酸の処理コストをさらに下げることができる廃酸中和物の再資源化方法を提供できる。
(3)得られた水酸化マグネシウムをマグネシウム鉱石と共に焼結することで廃酸中和剤として再利用することができ、省資源性に優れる廃酸中和物の再資源化方法を提供できる。
(4)廃棄物である廃酸中和液及び/又は廃酸中和スラッジの量が減少し、処分費用が削減できる廃酸中和物の再資源化方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施例1の混合廃酸の中和処理工程模式図
【図2】従来法の混合廃酸の中和処理工程模式図
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は本発明を実施するための混合廃酸の中和処理工程を示す模式図である。
混合廃酸を受け入れ(S1)、混合廃酸1重量部に対し、活性マグネシウムを0.5〜1重量部混合する(S2)。15〜30分間撹拌放置するとスラッジが得られる(S3)。
以上のように、本実施例によれば、従来例のように劇薬である48%NaOHを使用しないので、安全性に優れ、かつ、反応も従来のような過激な中和反応ではなく、緩やかな中和であり、かつ、中和水の生成もないので、石灰を使用する必要もなく作業工程を1工程以上少なくすることができ、作業性に優れる。
【実施例】
【0024】
(実施例1,2)
実施例1:中和剤Aとして平均粒径が5〜30mmのブルーサイトを1100℃で6時間焼成し、次いで粉砕して粒径が20μm以下の活性マグネシウムを得、これにCaOを10wt%添加混合して作製したものを用いた。
実施例2:中和剤Bは、中和剤Aと同様にして作製した活性マグネシウムにCaOを18wt%添加混合して作製した。
そのX線分析結果を(表1)に示した。
【0025】
【表1】

【0026】
廃酸として、フラットパネルディスプレーのガラスの溶解液の廃酸を用いた。このガラス研磨汚泥は、塩酸、フッ酸、硝酸、硫酸等が混合されている。pHは1、粘度は1.5、スラッジ分は25wt%であった。
〈中和実験〉
中和剤A、Bを各々115gずつ用意した。500mlビーカー各々にガラス研磨汚泥200ml(230g)を採取した。反応後、固化物を水で希釈し、リトマス紙で測定した。
〈実験方法〉
実験は、中和剤A、Bを5回に分け、1回につき20〜30gをビーカーに投入撹拌しながら中和を行った。
〈実験結果〉
実験結果を(表2)に示す。
【0027】
(比較例1)
中和剤として従来使用している48%NaOHを用いた。
廃酸は実施例1と同一のもの200ml(230g)を用いた。実験方法は、廃酸に48%NaOHを少量ずつ撹拌しながら注入した。液が室温付近に冷えたら、また少量ずつ注入、を繰り返した。反応が激しく高温の泡が出るため危険だからである。48%NaOHの注入を終えたところ、廃酸のpHは4であった。次いで、消石灰を15g添加して泥状化した。pHを測定したところ、pH=7〜8であった。次いで、市販の吸水ポリマーを20g加え固化した。その結果を(表2)に示した。
【0028】
【表2】

【0029】
(実施例3)
実施例:中和剤として実施例2の活性マグネシウムの中和剤Bを用いた。
廃酸は、実施例2と同じ廃酸を用いた。
中和は2Lの廃酸に1.16kgの中和剤Bを加えて反応させ、固体化した混合スラッジを3kg得た。
これに、水10Lを6回に分けて加水処理し、1回毎に撹拌(10rpm、1時間)した後、静置2時間後、上清液を採取した。
得られた上清液を(表3)に示す条件で、セラミック膜で透過させ10Lの透過液を得た。
【0030】
【表3】

【0031】
〈水酸化反応〉
10Lの透過液にpH12になるまで25%NaOHを添加する。
pH10付近から白色の不溶物が観察された。
pH12に調整した後、水酸化反応をより確実にするために撹拌後2時間静置した。
生成した水酸化マグネシウムを固液分離した。
水酸化マグネシウムの活性マグネシウムに対する収率は約20wt%であった。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本願の請求項1に記載の発明により、シリコン製造工場や太陽電池工場、FDP製造工場などから排出される濃厚な廃酸を、従来よりも短い時間で処理し、取り扱いが容易で、可燃性ガスの発生などがなく取り扱いが安全で少ない作業工程で省力化に優れた廃酸の処理方法を提供することできる。
また、本願の請求項2又は3に記載の発明により濃厚廃酸を、短時間で中和し、取り扱いが容易で、ガスの発生などがなく取り扱いが安全な廃酸中和剤を提供することできる。
さらに本願の請求項4に記載の発明によれば、前記廃酸中和剤によって中和することによって発生した廃酸中和物から有効資源である水酸化マグネシウムを回収し、処理費用を削減できる、再資源化方法を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃酸中の酸1重量部に対して、活性マグネシウムを主成分とする微粉状粉末の廃酸中和剤0.5〜1重量部を投入し、攪拌混合することを特徴とする廃酸の中和処理方法。
【請求項2】
マグネシウム鉱石の1種であるブルーサイトを800℃〜1100℃で焼成、若しくはマグネサイトを800℃で焼成し、300メッシュ以下に粉砕された微粉状粉末である活性マグネシウムを主成分としたことを特徴とする廃酸中和剤。
【請求項3】
MgOの含有量が80wt%以上、CaO、CaCO含有量が20wt%未満であることを特徴とする請求項1に記載の廃酸中和剤。
【請求項4】
請求項1に記載の方法で廃酸を中和して得られた廃酸中和物、若しくは請求項2又は3
に記載の廃酸中和剤により中和された廃酸中和物に加水し、ろ過して得た液体に水酸化ナ
トリウムを添加して、水酸化マグネシウムを晶析させることを特徴とする廃酸中和物の再
資源化法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−35227(P2012−35227A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−179864(P2010−179864)
【出願日】平成22年8月10日(2010.8.10)
【出願人】(309031558)創生ミネラル株式会社 (2)
【Fターム(参考)】