説明

廃食油を利用した可燃性廃棄物焼却処理方法

【課題】外食産業などから排出される廃食油を、廃棄物焼却炉6の火焔バーナー用燃料に利用する廃食油の再生方法を提供する。
【解決手段】廃食油を温度20〜80℃に加温しつつ重量比で該廃食油の0.1〜9.9倍の灯油を配合した混合燃料液を、高速度で送給される酸素または空気に混入しながら火
焔バーナー7のノズル孔から噴出させ点火し、可燃性廃棄物を焼却処理する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は外食産業、食品製造業や家庭から出る廃食油を利用した、可燃性廃棄物焼却処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
あらゆる産業から排出される廃油は、引火と可燃性を有するが、故に適切な処理を行わずに廃棄すると海洋や土壌などの環境汚染を招き、災害を引き起こし非常に危険である。一般に廃油と言えば、大量に排出する石油系を想起する。それだけに多くの廃油再生技術が開発されている。例えば、特開平8−261437号公報の「炉内で廃油を大気圧または大気圧以下に維持しつつ、無酸素状態で廃油の熱分解点以上の温度に加熱し、その加熱過程で生成するガスを燃焼する熱エネルギーを、鶏処理場や、澱粉工場から排出される有機汚泥を無公害化処理する熱エネルギーの有効活用を図った廃油処理方法」、特開2000−319644号公報は、「セメント水和物を主成分とするコンクリート廃材で、有機エステル化合物を主成分とする廃油を安価にかつ安全に処理する廃油処理方法」などが多くの特許公報によって紹介されている。
【0003】
しかしながら、廃油の中にも外食産業や食品製造業、さらに家庭から排出される食用油がある。食用油には、植物性食用油(常温で液状のもの)と動物性食用脂(常温で固体の
もの)があるが、外食産業などにおいて揚げ物調理にはダイズから採油したダイズ油、アブラナの種子を圧搾したナタネ油、種子から採取したゴマ油、米糠に含まれる油脂分を採取し精製した米油など多くの種類の植物性食用油が用いられる。そこから出る廃食油は、その多くがゴミ、または適当に処理してから排水管に廃棄、あるいはそのまま回収される。回収された廃食油は、飼料、燃料、ディーゼル燃料、石鹸などに再生される。この中の石鹸は、ご飯やウドンを添加しながら作製するため、COD(海や湖水の水質汚染度合を示す化学的酸素要求量)やBOD(河川の水質汚染度合を示す生物化学的酸素要求量)を高める問題がある。また動物油や植物油の廃油を分解処理する技術が、例えば特開平10−338888号公報によって「廃油を油細分処理液で攪拌して微細粒子に細分化し、その後、微細粒子細分化液と培養液の混合液を作り、さらに該混合液を受収した油脂分解処理槽に空気を吹き込みながら油脂を分解処理する廃油処理方法」を紹介されている。今日においては、産業・生活・資源・エネルギーの効率利用を図る課題から、廃食油は、ディーゼル燃料の代替物、塗料、インキなどへの再生も試みられているが、再生するにも需要の低迷から行き詰まっている現状にあって、最も活用されているのが燃料への再生である。一部の自治体では、廃食油にメタノールとアルカリ触媒を添加して粘性と引火点の低い軽油代替燃料に精製し、公用車やバスの再生燃料として使用される程度である。
【0004】
廃食油の殆どは、適当な処理を施し、家庭から捨てられる紙屑や木屑などの一般廃棄物と同じ様に焼却処理される。焼却は簡単な処理であるが、油が保有するエネルギーを効率
的に使い果たしたわけでもなく、食用油を生産するときの費用から考えると、経済的に大きな損失であると共に、煙や煤などを排出して大気を汚染し、水質まで汚濁し環境を一層悪化する問題があった。
【特許文献1】特開平8−261437号公報
【特許文献2】特開2000−319644号公報
【特許文献3】特開平10−338888号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは外食産業、食品製造業や家庭から出る廃食油を分解処理したり、また単に焼却処理する事なく廃食油が保有する未利用エネルギーを有効的に利用し、かつ紙屑や木屑などの一般廃棄物や生産工場や建築現場から排出されるゴム屑や、発砲スチロールや廃プラスチックなどの産業廃棄物を焼却する高エネルギーの燃焼用燃料に再生し活用する事を目的に種々検討した結果、食用油は、絶えず高温度で空気と接触し水分と共存する条件に晒されるため、空気中の酸素に酸化する事で遊離脂肪酸を発生し、粘りを増し、燃え難しくなる現象を知見した。さらに粘りを低下した廃食油は、灯油に混合しながら使用する事によって、高い熱エネルギーが必要とする火焔バーナー用燃料に改質できる事も知見した。本発明は、これらの知見に基づいて構成したものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明はその目的を達成したもので、その要旨は、廃食油を温度20〜80℃に加温しつつ重量比で該廃食油の0.1〜9.9倍の灯油を配合した混合燃料液を高速度で送給される酸素または空気に混入しながら、火焔バーナーのノズル孔から噴出させ点火し、可燃性廃棄物を焼却処理する、廃食油を利用した可燃性廃棄物の焼却処理方法である。
【発明の効果】
【0007】
各産業において、省資源と省エネルギー化を進める方策、また資源の再利用の促進が叫ばれる中で、外食産業や食品製造業などから排出される大量の廃食油の一部が有効活用され、その大半が惜しげもなく分解処理あるいは、適宜な処理を施した後焼却されているが
、本発明によって今日まで開発されてきた例えば、実開平7−2721号公報や実登第3070256号公報などの焼却炉、またゴミや産業廃棄物の焼却に伴うダイオキシンや焼却灰を発生する事なく燃焼するガス化溶融炉など、多くの種類のゴミ焼却炉の主燃料または副燃料として大量に再利用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の廃食油を利用した可燃性廃棄物の焼却処理方法について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明法を判り易く説明するために掲載した図面である。図1において、1は廃食油収納加温タンクである。廃食油収納加温タンク1は、タンクの側壁に廃食油を加温する電気や湯などの加熱媒体を内蔵したり、また投込みヒーターを設けるなど、収納した廃食油を加温する構造に設けられている。また廃食油収納タンクの廃食油送出側には、廃食油加温タンクを設け流出する廃食油を加温する構造に設けてもよい。本発明法は、廃食油加温構造について特に限定するものでない。つまり、本発明において廃食油収納加温タンク1は、外食産業、食品製造業や家庭から出るダイズ油、ナタネ油やゴマ油などの植物性食用油、あるいは動物性食用油を含む植物性食用油を使用する上で浮遊する揚げ滓や、ラードのごとき不可避的生成物が支障のない程度に除去した廃食油を収納し、温度20〜80℃に加温する。加温は、揚げ物など調理において高温度で空気と水分に接触し粘りを増して流動性の低下し燃え難くなった廃食油の燃焼性を回復させるものであって、20℃未満の低い温度では粘りが残って流動性が無く、また80℃を越える高い温度では、廃食油が沸騰することによりガス化し、内圧を高めて引火性の爆発をおこし、破壊する可能性
がでてくる。従って、1の廃食油収納加温タンクにおける廃食油の加温は20〜80℃とし、中でも好ましい加温は50〜60℃である。2は灯油収納タンクで、家庭暖房用燃料や厨房用燃料また石油発動機用燃料などに使用される灯油を収納する。灯油は、煙が出にくい事や、腐食性物質や悪臭物質を含まないなどの利点を有し、特に流動性がよく燃焼性に優れているため、流動性を低下した廃食油に混合する事によって廃食油の燃焼性を回復させるために使用する。3は燃料源となる廃食油と灯油を混合するタンクである。燃料液混合タンク3は、廃食油収納加温タンク1と灯油収納タンク2が誘導パイプ4および5を介して接続し、また廃食油と灯油の混合燃料液送出側には廃棄物焼却炉6に投入されたゴミや産業廃棄物を焼却する火焔バーナー7が誘導パイプ8を介して接続されている。燃料液混合タンク3における廃食油と灯油の混合比は廃食油に対し重量比で0.1〜9.9倍の灯油を配合する。この場合、灯油の混合比が0.1未満の少ない配合量では、粘性が高いため極めて流動性が悪く、また不完全燃焼を生じ排煙現象を起こしてしまい、その反対に9.9倍を越える過剰の配合量では殆ど灯油のみの運転となり廃食油の消費量が少なく廃食油燃料とは言い難いので、また粘性や発熱量または、廃食油の燃料化の観点から見ると、混合割合は重量比で0.9〜4.0倍が好ましい。なお、本発明法において燃料液混合タンク3と誘導パイプ4および誘導パイプ8は、廃食油と灯油の混合液の保有温度を低下防止するために、保温構造または加温構造に設けてもよい。また火焔バーナー7は、燃料液混合タンク3から送出される廃食油と灯油の混合燃料を、高速度で送給される酸素または空気に混入しながら、ノズル孔から霧液状に噴出し点火するバーナーである。
【0009】
上記の様な本発明法によって、廃食油と灯油を混合した燃料は捨てられる紙屑や木屑な
どの一般廃棄物、生産工場や建設現場から排出されるゴム、発砲スチロールや廃プラスチ
ックなどの産業廃棄物、あるいはこれらを混合する可燃性廃棄物を焼却処理する際に、従来から使用される灯油の代替燃料として、また灯油の副燃料として同様の取り扱いを受けながら使用される。
【実施例】
【0010】
次に本発明法の実施例について説明する。
木屑とゴムさらには廃プラスチックを混在する可燃性産業廃棄物16kgを投入した低公害焼却処理炉を使用し、本発明法における外食産業から排出されたダイズ油の廃食油と灯油とを各種の重量混合比で配合する焼却用燃料を使用した場合の廃棄物焼却状況を観察し
た。表は、そのときの焼却開始(5分間、15分間)後の廃棄物焼却状況を示す。なお、
比較用に従来から使用される灯油で焼却したときの焼却状況を示した。
【0011】
【表1】

上記の焼却経過後の焼却状況から明らかな様に本発明法は、灯油を使用する従来の焼却法に較べて廃食油を利用する事により、同等の焼却能力を灯油の消費量を極めて少なくでき、なおかつ廃棄物である廃食油を燃料として再利用することにより廃棄物の再資源化を可能にできた。また本発明法では、焼却炉から発生する噴煙は見られず、臭いもなく、20分後には完全に焼却処理された。
【産業上の利用可能性】
【0012】
資源の有効活用や再生技術の探索が叫ばれる中で本発明法は、大量に排出される廃食油を分解処理し廃棄する事なく、可燃性廃棄物の焼却燃料として再利用できる利点から、今後の焼却技術において採用される可能性が極めて高い。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明法を判り易く説明するために、掲載した図を示す。
【符号の説明】
【0014】
1 廃食油収納加温タンク
2 灯油収納タンク
3 燃料液混合タンク
4 誘導パイプ
5 誘導パイプ
6 廃棄物焼却炉
7 火焔バーナー
8 誘導パイプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃食油を温度20〜80℃に加温しつつ重量比で該廃食油の0.1〜9.9倍の灯油を
配合した混合燃料液を、高速度で送給する酸素または空気に混入しながら、火焔バーナー
のノズル孔から噴出させ、点火し、可燃性廃棄物を焼却処理する事を特徴とする廃食油を利用した可燃性廃棄物焼却処理方法。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2008−62212(P2008−62212A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−245367(P2006−245367)
【出願日】平成18年9月11日(2006.9.11)
【出願人】(303004989)
【出願人】(506308242)有限会社 琉球動力 (1)
【Fターム(参考)】