説明

廊下の仕切り構造

【課題】設置コストや設置作業の手間の点で非常に合理的であるとともに、仕切り壁体の利用率の点からも効率がよく、さらに仕切り壁体収納部の数が少なくて済む廊下の仕切り構造を提供する。
【解決手段】廊下Hを複数の位置で仕切る構造であって、廊下の横断方向に仕切り可能な長さを有し長さ方向に屈曲自在な仕切り壁体1と、仕切り壁体の移動を案内するレール2、3とを備え、レールは、複数の廊下横断部S1〜S3と、廊下横断部以外の連繋部R1、R2とを有し、仕切り壁体の数は廊下横断部の数よりも少ないことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、設置コストや設置作業の手間の点で非常に合理的であるとともに、仕切り壁体の利用率の点からも効率がよく、さらに仕切り壁体収納部の数が少なくて済む廊下の仕切り構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ビルや家屋などの廊下を仕切る構造に関する技術として、例えば特許文献1に開示されたものが知られている。
【0003】
特許文献1は、玄関ホールから連続して廊下が設けられた一般の家屋において、玄関ホールからの採光を廊下にまで十分に取り入れることができる、開閉可能な間仕切り部を備えた部屋構造に関するものであって、玄関ホールと廊下との境界部に、床面に設けた下レールと天井面に設けた上レールとの間に滑動自在に設けられた仕切り壁体(「スクリーン」)により、上記境界部を開閉自在に仕切る部屋構造である。上記仕切り壁体は、アルミ材など一定以上の強度を有する枠体と、枠体内に固定される半透明の樹脂板とから構成され、仕切り壁体によって境界部を閉止した状態であっても玄関側から廊下側に採光可能である。
【特許文献1】特開2000−64467号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1に記載された廊下の仕切り構造は、一枚のパネル状の剛体よりなる仕切り壁体が、直線状のレール上を滑動して出し入れされる構造なので、仮に廊下の別の箇所にも仕切りを設ける場合には、レールと仕切り壁体のセットからなる仕切りを追加的に設ける必要があった。一般家屋では廊下を複数の位置で仕切ることは多くないが、例えば病院などの建物では、ある階の廊下の一部を時間によって異なる位置で男性エリアと女性エリアとに区分けするようなことがある。その際上記特許文献1のような、直線的なレールと剛なパネル状の仕切り壁体とからなる仕切り構造では、全ての仕切り位置にレールと仕切り壁体の両方を設ける必要がある。仕切り壁体の数について言えば、必ずレールの数(=廊下の仕切り位置の数)と同数が必要となる。それら複数の、レールと仕切り壁体のセットを設置するための手間やコストは大きい。また、通常、同時に複数の箇所で仕切ることはないため、仕切り壁体を複数設置しておいても、使用される一枚の仕切り壁体以外は常に収納部に収納された未使用の状態にあり、仕切り壁体の利用率の点からも無駄が大きかった。
【0005】
また、直線的な廊下の仕切り位置ごとに、直線的なレールとパネル状の剛体からなる仕切り壁体を設ける、上記特許文献1のような従来の廊下の仕切り構造においては、仕切り壁体と同数の仕切り壁体収納部を部屋側に設ける必要があった。その結果、空間の利用性の点からも無駄が多く、かつ不便であった。病院の例について言えば、廊下を複数の位置で仕切るような場合、廊下に面した診察室や病室が形成される部屋側スペースに突出させて、仕切り壁体の設置位置ごとに仕切り壁体収納部を設けなくてはならず、部屋側スペースの無駄が大きいうえに、その存在が部屋側スペースの設計上の制約となってしまい、居室空間の有効利用の観点からも非常に不都合なものとなっていた。
【0006】
本発明は上記従来の課題に鑑みて創案されたものであって、設置コストや設置作業の手間の点で非常に合理的であるとともに、仕切り壁体の利用率の点からも効率がよく、さらに仕切り壁体収納部の数が少なくて済む廊下の仕切り構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明にかかる廊下の仕切り構造は、廊下を複数の位置で仕切る構造であって、廊下の横断方向に仕切り可能な長さを有し長さ方向に屈曲自在な仕切り壁体と、該仕切り壁体の移動を案内するレールとを備え、該レールは、複数の廊下横断部と、該廊下横断部以外の連繋部とを有し、上記仕切り壁体の数は上記廊下横断部の数よりも少ないことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明にかかる廊下の仕切り構造にあっては、設置コストや設置作業の手間の点で非常に合理的であるとともに、仕切り壁体の利用率の点からも効率がよく、さらに仕切り壁体収納部の数が少なくて済む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に、本発明にかかる廊下の仕切り構造の好適な一実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。本実施形態では、病院のある階の廊下Hを、時間によって異なる仕切り位置で、男子患者専用エリア(以下、男子エリアという)と女子患者専用エリア(以下、女子エリアという)とに区画するための仕切り構造を例示して説明する。本実施形態にかかる廊下の仕切り構造は基本的には、図1から図5に示すように、長さ方向に屈曲自在な一枚の仕切り壁体1と、廊下Hの一部に平面視略S字状に設けられて、仕切り壁体1の移動を案内する上レール2および下レール3と、廊下に面する壁面の一部、具体的には廊下Hと男女兼用病室Aとの間の壁面の一部を窪ませた形(奥側は男女兼用病室Aの一隅に突出した形)で上下レール2、3に連続して設けられ、非使用時の仕切り壁体1が収納される仕切り壁体収納部4とから構成される。
【0010】
男子エリアは、図1における左側に設けられた各部屋の出入り口に面する廊下Hの部分である。すなわち、男子専用病室Fや階段ホールI、面会室Jの各部屋に面する廊下部分H1を含む部分である。女子エリアは図1における右側の各部屋の出入り口に面する廊下Hの部分である。すなわち、診察室Cおよび診察室D、女子専用病室E、そして女子専用病室Hの各部屋に面する廊下部分H4を含む部分である。男女兼用病室A、Bは、ともに男子専用となる時と女子専用となる時があり、男女兼用病室Aに面する廊下部分H2、および男女兼用病室Bに面する廊下部分H3は、それぞれの病室A、Bが男子専用の時は男子エリアとされ、女子専用の時は女子エリアとなる。デイルームGは、常に男女共用である。具体的には、デイルームGには、廊下Hに面する出入り口が二つ設けられており、左側の出入り口Ge1は、常に男子エリアとなる廊下部分H1に面しており、右側の出入り口Ge2は、常に女子エリアとなる廊下部分H4に面しているので、常に男子・女子共に出入りすることができる。
【0011】
上下レール2、3には、廊下Hを横切って左右に仕切る三箇所の仕切り位置である廊下横断部S1、S2、S3が設けられている。図1には、仕切り壁体1が仕切り壁体収納部4から引き出されて、これらの各廊下横断部S1〜S3に仮想的に配置された状態を描いている。ただし図1では、仕切り壁体1がある程度屈曲したままの状態で描いており、完全に延伸された状態で描いてはいない。すなわち、各廊下横断部S1〜S3に完全に展開されて廊下Hを仕切った、仕切り構造となった状態ではない。仕切り壁体1を各廊下横断部S1〜S3に沿って完全に延伸させ、その前端側(仕切り壁体1から見て、仕切り壁体収納部4と反対側:図2参照)および後端側の端部を床面5の下レール3などに固定させると、廊下Hを完全に横断するよう展開されて、廊下Hを左側と右側とに区画するような仕切り構造を形成する。その結果、廊下部分H1を含む、仕切り壁体1の左側廊下部分が男子エリア、廊下部分H4を含む仕切り壁体1の右側廊下部分が女子エリアとなるような仕切り構造が形成される。
【0012】
図2には、仕切り壁体1を廊下横断部S2に沿って完全に延伸させ、仕切り壁体1の前後端を固定した状態を模式的に示している。上下レール2、3については、その中心線のみを示している。また、上下レール2、3の、廊下横断部S1と廊下横断部S2との間部分、および廊下横断部S2と廊下横断部S3との間部分は、仕切り壁体1を移動させるための連繋部R1、R2である。仕切り構造を取り払い、廊下Hの全部分H1〜H4を男女ともに通行可能とするには、仕切り壁体1を仕切り壁体収納部4に収納すればよいが、仕切り構造を一時的に取り払うだけであれば、仕切り壁体1を連繋部R1、R2の部分に配置しておいてもよい。
【0013】
仕切り壁体1の構成は、図3に示すように、主にアルミニウムなどの金属製の枠体6と、枠体6に固定的に配設される約3mm程度の厚さの、透明アクリル板などの樹脂板7とからなる。枠体6は、仕切り壁体1の長さ方向全体にほぼ一定間隔で複数並設された縦長矩形状のフレーム8と、フレーム8の上下の端部に挟持され、枠体6の上下縁辺を構成する横長矩形状の上桟9および下桟10とから形成される。互いに隣接し合う各フレーム8同士の間には、縦長矩形状の上記樹脂板7が挿入され、樹脂板7の左右の縁辺は、左右のフレーム8に設けられた樹脂板挟持部8a(図4参照)に挟持されて固定される。各樹脂板7の上下の縁辺は、上桟9の下縁部、および下桟10の上縁部にそれぞれ設けられた挟持部9a、10a(図5参照)によりそれぞれ挟持されて固定される。図示例にあってはさらに、仕切り壁体1の上下方向中程よりやや下方の位置に、互いに隣接し合う各フレーム8間にそれぞれ渡設されて、補強のための複数の中桟11が設けられ、樹脂板7を挟持している。
【0014】
図4に示すように、各フレーム8は、上下方向に延設された縦長の方形管8bを支点として、その仕切り壁体1の前端側および後端側に樹脂板挟持部8aが回動自在に連結された構成である。その結果、仕切り壁体1は全体として、長さ方向に樹脂板7を単位に屈曲自在となっている。このように長さ方向に屈曲自在な構造の仕切り壁体1は、仕切り壁体収納部4に収納される際には、各樹脂板7同士が互いに重なり合うようにぴったりと折りたたまれて、幅方向にはほぼ樹脂板7の幅寸法と同程度となり、かつ前後方向にも非常にコンパクトな寸法となって収納される。
【0015】
また、仕切り壁体1の、上記のような樹脂板7単位の屈曲自在性により、仕切り壁体1をコーナーRやS字型Rなどの曲線状の上下レール2、3に沿って自在に屈曲させることが可能である。本実施形態の仕切り壁体1においては、廊下横断部S1に固定される場合には前端部がコーナーRに、廊下横断部S2に固定される場合には全体がS字型Rに、廊下横断部S3に固定される場合には後端部が(廊下横断部S1の場合とは反対側に屈曲した)コーナーRを描くように屈曲されて展開され、曲面的な(平面視では曲線的な)仕切り構造を形成する。
【0016】
仕切り壁体1の前後端にはそれぞれ、各フレーム8と同じ上下寸法を有する取っ手枠12が、前端フレーム8のさらに前側端面および後端フレーム8のさらに後ろ側端面に回動自在に連結されて設けられている。これら前後の取っ手枠12は、各フレーム8よりも幅広であって、その中桟11と同じ高さ位置には、仕切り壁体1を前方あるいは後方に移動させる際に手で握持するための取っ手12aが設けられている。また、仕切り壁体1の片面側の各フレーム8表面には、上記方形管8bと重なり合う位置に方形管8bとほぼ同じ形状のリブ8cが設けられており(図4、図5参照)、各フレーム8の上下方向の撓みなどに対する強度を補っている。
【0017】
また、前端側取っ手枠12の前側端面の下方、および後端側取っ手枠12の後ろ側端面の下方、それぞれ床面5に近い位置には、前後端の取っ手枠12を床面5に固定するとともに、廊下横断部S1〜S3における仕切り壁体1を位置決めするための、一般周知技術のフランス落とし13が設けられている。仕切り壁体1をいずれかの廊下横断部S1〜S3に固定する際には、これら前後端の取っ手枠12に設けられたフランス落とし13の操作部13aを操作し、取っ手枠12内に設けられている金属製の落とし棒(図示せず)を、床面5の、下レール3上に設けられた金属製の落とし坪3aに落とし込む。すると、前後端の取っ手枠12が床面5に対して固定され、その結果、仕切り壁体1が前後方向に移動しない固定された状態となる。
【0018】
また、仕切り壁体1のフレーム8のうち数本には、それらの横方向(仕切り壁体1の壁面方向と直交する方向、以下同様)のふれを防止するためのふれ止め落とし14が設けられている。これらのふれ止め落とし14は、上記フランス落とし13と同様の構成の係合機構であって、各フレーム8の内部に設けられた落とし棒(図示せず)が床面5の下レール3上に設けられた落とし坪3aに落とし込まれることによって、そのフレーム8を床面5に対し固定する。これらのふれ止め落とし14は、フレーム8の左右両側面上にその操作部14aが設けられており、仕切り壁体1の左右どちら側からでも操作を行うことができる。従って例えば、廊下横断部S2に仕切り壁体1を固定する際、その固定作業を行う者は、廊下部分H2とH3のどちらかに位置しつつ、まず仕切り壁体1の前後端の取っ手枠12をフランス落とし13により固定するのであるが、その作業を廊下部分H2とH3のどちら側から行っても、その後各ふれ止め落とし14を係合する操作を行うことができる。
【0019】
また、図4に示すように、仕切り壁体収納部4の床面5上には、下レール3と平行に、仕切り壁体1のフレーム8に当接する位置に収まりガイド15が設けられている。この収まりガイド15により、仕切り壁体1を収納する際に、仕切り壁体1がレールの横方向にぶれることが防止され、スムーズな収納操作性が実現されるとともに、折りたたまれた仕切り壁体1が左右方向にずれたりせず直線的に整然と収納される。
【0020】
また、図5に示すように、天井材16に埋設された上レール2は、天井材16よりも上方のスペースに、上レール2と平行に設置されたレール取り付けフレーム17から吊り下げ支持されている。上レール2の内部には、ローラ載置部2aが形成されている。仕切り壁体1の枠体6の、上桟9の上端面には、各フレーム8に対応する位置に複数のローラ部18が設けられており、上レール2のローラ載置部2aにこれらのローラ部18が回転自在に載置されることによって、仕切り壁体1が上レール2に係合される。また、本実施形態における下レール3は、床面5上にフランス落とし13およびふれ止め落とし14用の落とし坪3aが設けられているだけであり、特に溝状のレールなどは設けられていない構成である。フランス落とし13やふれ止め落とし14の落とし棒が係合するための凹部3bを備えた金属製の落とし坪3aは、その凹部3bが床面5から下方に垂下するように床材に埋設されている。仕切り壁体1の下桟10の下端面には、下桟10の全長にわたって、床面5上の下レール3部分に当接された線状封止部材19が設けられている。モヘヤなどの素材からなるこの線状封止部材19は、仕切り壁体1の下部をくぐって埃などが行き来することを防止する。
【0021】
以上の構成を備えた、本実施形態にかかる廊下の仕切り構造の作用について説明する。廊下Hをいずれかの廊下横断部(=廊下の仕切り位置)S1〜S3にて仕切る際には、まず仕切り壁体1を、その前端側の取っ手12aを握持しつつ仕切り壁体収納部4より引き出し、当該廊下横断部S1〜S3の位置にて仕切り壁体1を延伸させ、前後端の取っ手枠12に設けられたフランス落とし13を係合することによって両取っ手枠12を位置決めしつつ固定する。
【0022】
男女兼用病室Aおよび男女兼用病室Bを、ともに女子専用として使用したい場合には、仕切り壁体1を廊下横断部S1に固定すればよい。このようにすれば、廊下横断部S1よりも左側(図1参照、以下同様)の廊下部分H1が男子エリア、廊下横断部S1よりも右側の廊下部分H2、H3、H4が女子エリアとなり、男女兼用病室Aの出入り口に面する廊下部分H2、および男女兼用病室Bの出入り口に面する廊下部分H3は、ともに女子のみが行き来できるエリアとなるからである。
【0023】
また、男女兼用病室Aを男子専用として、男女兼用病室Bを女子専用として使用したい場合には、仕切り壁体1を廊下横断部S2に固定すればよい。このようにすれば、廊下横断部S2よりも左側の廊下部分H1、H2が男子エリア、廊下横断部S2よりも右側の廊下部分H3、H4が女子エリアとなり、男女兼用病室Aの出入り口に面する廊下部分H2は男子のみが行き来できるエリアとなり、男女兼用病室Bの出入り口に面する廊下部分H3は女子のみが行き来できるエリアとなるからである。
【0024】
また、男女兼用病室Aおよび男女兼用病室Bを、ともに男子専用として使用したい場合には、仕切り壁体1を廊下横断部S3に固定すればよい。このようにすれば、廊下横断部S3よりも左側の廊下部分H1、H2、H3が男子エリア、廊下横断部S3よりも右側の廊下部分H4が女子エリアとなり、男女兼用病室Aの出入り口に面する廊下部分H2、および男女兼用病室Bの出入り口に面する廊下部分H3は、ともに男子のみが行き来できるエリアとなるからである。
【0025】
仕切り壁体1を廊下の仕切り構造として使用しない場合には、一時的であれば上下レール2、3の連繋部R1、R2に延伸させた状態で、あるいはある程度もしくは完全に折りたたんで配置しておけばよい。そうでない場合には、仕切り壁体1を、後端側の取っ手12aを握持しつつ仕切り壁体収納部4の入り口まで引き戻し、それから前端側の取っ手枠12を保持して仕切り壁体1を仕切り壁体収納部4へと押し込む。すると、仕切り壁体1は、各フレーム8の樹脂板挟持部8aが方形管8bを中心に順次回動されて、樹脂板7を単位に順次折りたたまれて仕切り壁体収納部4へと収納されてゆく。
【0026】
以上説明した、本実施形態にかかる廊下の仕切り構造にあっては、設置コストや設置作業の手間の点で非常に合理的であるとともに、仕切り壁体1の利用率の点からも非常に効率がよい。具体的には、一枚の仕切り壁体1が、三箇所の廊下横断部S1〜S3を有する一組の上下レール2、3に案内されて自在に移動し、いずれかの廊下横断部S1〜S3に固定されて仕切り構造を形成するので、複数の仕切り壁体や複数の上下レールを設けることなく三箇所の仕切り位置を様々に変更することが可能である。また、廊下横断部S1〜S3の数(=廊下の仕切り位置の数)が三つ設けられているにも関わらず、仕切り壁体1はそれよりも少ない一枚で済むため、設置コストや設置作業の手間の点で非常に合理的であるとともに、仕切り壁体1の利用率の点からも非常に効率がよい。
【0027】
また、本実施形態にかかる廊下の仕切り構造にあっては、仕切り壁体1の収納スペースである仕切り壁体収納部4の数が、廊下の仕切り位置の数(=上下レール2、3の廊下横断部の数)と比較して少なくて済むとともに、その長さ寸法が小さくて済む。具体的には従来の技術例として、直線的な廊下の仕切り位置ごとに、直線的なレールとパネル状の剛体からなる仕切り壁体を設けるような廊下の仕切り構造においては、廊下の仕切り位置の数と同数の仕切り壁体を設ける必要があり、さらに仕切り壁体と同数の仕切り壁体収納部を部屋側に設ける必要があった。その上、仕切り壁体収納部の長さ寸法を仕切り壁体の長さ以上とする必要があった。その結果、空間の利用性の点からも無駄が多く、かつ不便であった。病院の例について言えば、廊下を複数の位置で仕切るような場合、廊下に面した診察室や病室が形成される部屋側スペースに突出させて、仕切り壁体の設置位置ごとに仕切り壁体収納部を設けなくてはならず、部屋側スペースの無駄が大きいうえに、その存在が部屋側スペースの設計上の制約となってしまい、居室空間の有効利用の観点からも非常に不都合なものとなっていた。
【0028】
これに対し、本実施形態の仕切り壁体1は、廊下の仕切り位置である廊下横断部S1〜S3が三箇所設けられているにも関わらず、仕切り壁体1はそれよりも少ない一枚で済むため、仕切り壁体収納部4の数も一つで済む。また、仕切り壁体1は、長さ方向に屈曲自在かつ折りたたみ可能な構造であり、回動自在なフレーム8部分で折りたたまれて非常にコンパクトな寸法となって仕切り壁体収納部4に収納することが可能であるので、仕切り壁体収納部4の長さ寸法も非常に小さくて済む。その結果、上記実施形態においては、廊下H側から見ると壁面内に収納されており、男女兼用病室A側から見るとその一隅に突設した形状の仕切り壁体収納部4によって、部屋側スペースに無駄な空間が大きく生じることがない上、部屋の構成などを考える上で設計上の制約となるおそれも少ないので、居室空間の有効利用を損なうこともない。なお仕切り壁体収納部4は、上記実施形態と異なり、廊下H内に設けることも考えられるが、その場合であっても同様に、非常に小さな寸法で済むためスペースの無駄や設計上の制約を生じるおそれは小さく、居室空間の有効利用を損なうこともない。
【0029】
また、仕切り壁体1は、長さ方向に屈曲自在な構造であるので、上下レール2、3の廊下横断部S1〜S3や連繋部R1、R2がコーナーRやS字型Rなど、平面視で曲線を有する場合であっても、自在に屈曲して沿わせることが可能であり、従って廊下Hの曲線的な仕切り構造に対しても何ら問題なく適合することができる。また、特に本本実施形態における廊下横断部S2のように、仕切り壁体1の前後端部分が廊下Hの壁面に沿うように曲折されている場合には、廊下Hの壁面と仕切り壁体1との間の間隙を少なく設定し、さらに仕切り壁体1の取っ手枠12やフレーム8の一部などに廊下Hの壁面に当接するシール部材などを設けることによって、仕切り壁体1の左右における気密性を図ることも可能である。
【0030】
図6〜8には、上記実施形態の様々な変形例が模式的に示されている。上下レール2、3については、その中心線のみを示している。上記図1〜図5に示した実施形態と異なる部分についてのみ説明する。図6に示す変形例にあっては、上下レール2、3の廊下横断部S4、S5、S6および連繋部R3、R4の構成は上記実施形態と同様であるが、廊下部分H2、H3に面する部屋の配置が異なっている。部屋Kの出入り口は、廊下部分H2に面しており、部屋Kと廊下Hを隔てて反対側に位置する部屋Lの出入り口は、廊下部分H3に面している。
【0031】
このような変形例にあっても、上記図1〜図5に示した実施形態と同様の作用効果を奏することはもちろんである。特にこの変形例にあっては、部屋Kおよび部屋Lを、ともに女子専用として使用したい場合には、仕切り壁体1を廊下横断部S4に固定すればよい。このようにすれば、廊下横断部S4よりも左側(図6参照)の廊下部分H1が男子エリア、廊下横断部S4よりも右側の廊下部分H2、H3、H4が女子エリアとなり、部屋Kの出入り口に面する廊下部分H2、および部屋Lの出入り口に面する廊下部分H3は、ともに女子のみが行き来できるエリアとなるからである。同様に、部屋Kを男子専用、部屋Lを女子専用として使用したい場合には、仕切り壁体1を廊下横断部S5に固定すればよい。また、部屋Kおよび部屋Lを、ともに男子専用として使用したい場合には、仕切り壁体1を廊下横断部S6に固定すればよい。
【0032】
図7に示す変形例にあっては、上下レール2、3が上記の実施形態よりも短く構成されており、廊下横断部は三箇所でなく二箇所(S7、S8)のみ設けられている。廊下Hの同じ側に設けられた三つの部屋M、N、Oの出入り口は、それぞれ廊下部分H1、H2、H3に面している。
【0033】
このような変形例にあっても、上記図1〜図5に示した実施形態と同様の作用効果を奏することはもちろんである。特にこの変形例にあっては、部屋Mは必ず男子専用であって、部屋Oは必ず女子専用となる。部屋Nを、女子専用として使用したい場合には、仕切り壁体1を廊下横断部S7に固定すればよい。このようにすれば、廊下横断部S7よりも左側(図7参照)の廊下部分H1が男子エリア、廊下横断部S7よりも右側の廊下部分H2、H3が女子エリアとなり、部屋Nの出入り口に面する廊下部分H2は、女子のみが行き来できるエリアとなるからである。同様に、部屋Nを、男子専用として使用したい場合には、仕切り壁体1を廊下横断部S8に固定すればよい。
【0034】
図8に示す変形例にあっては、上下レール2、3の廊下横断部が四箇所(S9〜S12)設けられており、一番目〜三番目の廊下横断部S9〜S11は、上記図1〜図5に示した実施形態の廊下横断部S1〜S3と同様の構造であるが、三番目の廊下横断部S11の先で上下レール2、3は仕切り壁体収納部4の側へ戻るように向かい、四番目の廊下横断部S12は二番目の廊下横断部S10と平面視X字型に交差している。部屋は、廊下Hの仕切り壁体収納部4の側に二つ、その反対側に一つ設けられており。仕切り壁体収納部4側に設けられた部屋Pの出入り口は、廊下部分H2に面しており、部屋Qの出入り口は廊下部分H5に面している。廊下Hの反対側に設けられた部屋Rの出入り口は、仕切り壁体1を廊下横断部S10に固定した場合は廊下部分H4に面し、仕切り壁体1を廊下横断部S12に固定した場合は廊下部分H3に面し、それ以外の廊下部分S9、S11で仕切った場合は、廊下部分H3および廊下部分H4の両方に面する。
【0035】
このような変形例にあっても、上記図1〜図5に示した実施形態と同様の作用効果を奏することはもちろんである。特にこの変形例にあっては、廊下部分H1〜H6までを男子専用とするか女子専用とするかという仕切り構造、言い換えれば、各部屋P、Q、Rを男子専用とするか女子専用とするかという仕切り構造を、より複雑に変更することが可能となる。
【0036】
具体的には、仕切り壁体1を廊下横断部S9に固定した場合は、その左側の廊下部分H1は男子エリア、右側の廊下部分H2〜H6は全て女子エリアとなるため、廊下部分H2に面する部屋P、廊下部分H3および廊下部分H4に面する部屋R、廊下部分H5に面する部屋Qは全て女子専用となる。仕切り壁体1を廊下横断部S10に固定した場合は、その左側の廊下部分H1、H2、H3は男子エリア、右側の廊下部分H4、H5、H6は女子エリアとなり、この場合は部屋Rは廊下部分H4に面する。その結果、廊下部分H2に面する部屋Pは男子専用となり、廊下部分H4に面する部屋Rおよび廊下部分H5に面する部屋Qは女子専用となる。仕切り壁体1を廊下横断部S11に固定した場合は、その左側の廊下部分H1〜H5は男子エリア、右側の廊下部分H6は女子エリアとなるため、廊下部分H2に面する部屋P、廊下部分H3および廊下部分H4に面する部屋R、廊下部分H5に面する部屋Qは全て男子専用となる。仕切り壁体1を廊下横断部S12に固定した場合は、その左側の廊下部分H1、H2、H3は男子エリア、右側の廊下部分H4、H5、H6は女子エリアとなり、この場合は部屋Rは廊下部分H3に面する。その結果、廊下部分H2に面する部屋Pおよび廊下部分H3に面する部屋Rは男子専用となり、廊下部分H5に面する部屋Qは女子専用となる。
【0037】
なお、上記の実施形態や変形例にあっては、いずれも上下レールが一連に(一筆書き的に)連続した構成であったが、そのような例に限定されるものではなく、途中に分岐を有する形状であっても構わない。また、いずれの実施形態や変形例にあっても、廊下の仕切り位置である廊下横断部は、廊下の片側壁面から反対側の壁面まで完全に横断し、廊下を完全に左右に分ける(仕切る)構成であったが、そのような例に限定されるものではなく、例えば廊下の片側壁面から廊下中程まで、廊下を部分的に横断するような構成により、部分的に廊下を仕切るような構造としてもよい。
【0038】
また、上記の実施形態や変形例にあっては、いずれも上下にレールを設ける構成(下レールはフランス落としやふれ止め落としの落とし坪のみで構成)であったが、仕切り壁体が十分に固定され得る限りにおいて片方のみ、すなわち、上レールのみあるいは下レールのみで仕切り壁体を支持するような構成としてもよい。また、上記の実施形態や変形例にあっては、いずれも廊下壁面から部屋側スペースに突出させて仕切り壁体収納部を設け、仕切り壁体を収納する構成であったが、仕切り壁体収納部を省略することも可能である。その場合、仕切り壁体の非使用時には、上下レールの一部、例えば連繋部の一部やいずれかの廊下横断部の端部などに、折りたたんで収納しておけばよい。このような場合であっても、仕切り壁体は長さ、幅ともに非常にコンパクトな寸法に折りたたむことが可能な構造であるので、収納のためのスペースは非常に小さくて済む。
【0039】
また、上記の実施形態や変形例にあっては、いずれも仕切り壁体を一枚のみ設ける構成であったが、そのような例に限定されるものではなく、一本のレールに案内される仕切り壁体を複数設ける構成とすることも可能である。例えば、レールの廊下横断部の数(=廊下の仕切り位置の数)が十箇所も設けられているような場合は、仕切り壁体を二枚設けることとすれば、二箇所の仕切り位置の組み合わせを自在に変更することによって、より多様な廊下の仕切り構造を実現することができる。このような変形例においても、上記実施形態や上記各変形例と同様に、仕切り壁体の数は廊下横断部の数よりも少ないものとすることができ、設置コストや設置作業の手間の点で非常に合理的であるとともに、仕切り壁体の利用率の点からも非常に効率がよい。また、二枚の仕切り壁体のための仕切り壁体収納部は、レールの始点側および終点側の二箇所に設けるだけでよく、仕切り壁体収納部の数も廊下の仕切り位置の数と比較して少なくて済む。またこの変形例の場合、片方の仕切り壁体を特定の廊下横断部に常時固定して、他方の仕切り壁体のみを移動自在としてもよい。そのような場合、必ずしも廊下を常に二箇所で仕切らなくともよく、他方の仕切り壁体を仕切り壁体収納部に収納することによって、一方の仕切り壁体による一箇所の廊下横断部のみにおいて仕切る構造とすることも可能である。このような場合は、仕切り壁体収納部は他方の仕切り壁体のために一つだけ設ければ済む。またこのような変形例においても、仕切り壁体は屈曲自在かつ折りたたみ可能な構造であるので仕切り壁体収納部の長さ寸法は非常に小さくて済む。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明にかかる廊下の仕切り構造の好適な一実施形態を示す平面図である。
【図2】図1の要部を示す平面図である。延伸させた状態の仕切り壁体は模式的に示している。
【図3】図1の仕切り構造に設けられる仕切り壁体の側面図である。
【図4】図1の仕切り構造の、仕切り壁体収納部を上から見た断面図である。
【図5】図3のA−A線断面図である。上レールよりも上方の部分も示している。
【図6】本発明にかかる廊下の仕切り構造の、変形例を示す模式的な平面図である。
【図7】本発明にかかる廊下の仕切り構造の、別の変形例を示す模式的な平面図である。
【図8】本発明にかかる廊下の仕切り構造の、さらに別の変形例を示す模式的な平面図である。
【符号の説明】
【0041】
1 仕切り壁体
2 上レール
3 下レール
S1〜S12 廊下横断部
R1〜R4 連繋部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廊下を複数の位置で仕切る構造であって、廊下の横断方向に仕切り可能な長さを有し長さ方向に屈曲自在な仕切り壁体と、該仕切り壁体の移動を案内するレールとを備え、該レールは、複数の廊下横断部と、該廊下横断部以外の連繋部とを有し、上記仕切り壁体の数は上記廊下横断部の数よりも少ないことを特徴とする廊下の仕切り構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−161315(P2006−161315A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−350963(P2004−350963)
【出願日】平成16年12月3日(2004.12.3)
【出願人】(000140292)株式会社奥村組 (469)
【Fターム(参考)】