説明

廊下灯

【課題】 廊下灯のカバーを引き上げて患者の氏名を確認した後に、看護師が余計な気を使うことなく、患者の氏名を確実に隠すことができるようにする。
【解決手段】 フレーム1の患者氏名表示部1aが隠れるように保護カバー2が自重により下方にスライドされると共に、保護カバー2とフレーム1との衝突時の騒音や衝撃がクッション3により吸収されるので、看護師は、患者の氏名を確認した後に、保護カバー2を元の位置に戻す必要がなくなり、保護カバー2が元の位置に戻る前に保護カバー2から手を放すことができ、余計な気を使うことなく、患者の氏名を確実に隠すことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、病院などの施設における病室の出入口の近傍に設けられ、病室の番号や患者の氏名などを表示する廊下灯に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、病院などの施設では、患者の居る病室の出入口近傍に廊下灯を設けている。この廊下灯には、病室の番号や患者の氏名などが表示されている。また、廊下灯は、ナースセンターなどに設置されたナースコール親機と連動している。病室内のベッド近傍に設置されたナースコール子機により患者が呼出しを行うと、ナースコール子機は、ナースコール親機や看護師が携帯する無線端末装置に呼出しを通知すると共に、廊下灯を点灯させる。また、看護師は、廊下灯の点灯によって、呼出しを行った患者が居る病室を特定することができる。
【0003】
ところで、廊下灯に表示される患者の氏名について、プライバシー保護の観点から改善の要望がある。これに対して、廊下灯の患者の氏名が表示されている表面にスライド式のカバーを取り付け、必要に応じて看護師がカバーをスライドさせることで、通常はカバーにより隠されている患者の氏名を看護師が確認できるようにする技術が知られている(例えば、特許文献1など)。
【特許文献1】特開2004−94764号公報
【0004】
しかしながら、この特許文献1に記載の技術では、カバーをスライドさせて引き上げた場合に、カバーストッパによりカバーの位置が停止してしまうので、看護師は、患者の氏名を隠すためにいちいちカバーを引き下げて元の位置に戻さなくてはいけないという問題点があった。また、特許文献1に記載の技術では、カバーを引き下げる場合に、看護師が途中で手を放してしまうと、カバーが自重で下がって廊下灯のフレームに衝突し、騒音が発生したり、カバーやフレームが傷んだりするので、看護師は、カバーが元の位置に戻るまで手を放すことができないという問題点があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような問題を解決するために成されたものであり、廊下灯のカバーを引き上げて患者の氏名を確認した後に、看護師が余計な気を使うことなく、患者の氏名を確実に隠すことができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明では、フレームに表示された患者の氏名を隠さない位置と患者の氏名を隠す位置との間を上下方向にスライドする保護カバーと、保護カバーが患者の氏名を隠す位置にある場合に、フレーム及び保護カバーの両方又は何れか一方にフレームと保護カバーとの衝突を防止するクッションを取り付けるようにしている。
【0007】
また、本発明の他の態様によれば、フレームに表示された患者の氏名を隠さない位置から患者の氏名を隠す位置にスライドする保護カバーの下方へのスライドの速度を緩和するダンパーを備えるようにしている。
【発明の効果】
【0008】
上記のように構成した本発明によれば、フレームに表示された患者の氏名が隠れるように保護カバーが自重により下方にスライドされると共に、保護カバーとフレームとの衝突時の騒音や衝撃がクッションにより吸収されるので、看護師は、患者の氏名を確認した後に、保護カバーを元の位置(患者の氏名が隠れる位置)に戻す必要がなくなる。また、保護カバーが元の位置に戻る前に保護カバーから手を放すことができる。従って、看護師に余計な気を使わせることなく、患者の氏名を確実に隠すことができる。
【0009】
また、本発明の他の態様によれば、保護カバーが下方に移動する速度がダンパーにより緩和されるので、保護カバーは、下方にゆっくりとスライドする。これにより、保護カバーが元の位置に戻る際に、保護カバーとフレームとの衝突時の騒音や衝撃が緩和される。従って、看護師に余計な気を使わせることなく、患者の氏名を確実に隠すことができる。また、保護カバーが下方にゆっくりとスライドするので、保護カバーを上方に引き上げた場合に、患者の氏名が表示される時間が長くなる。従って、患者の氏名を確認する際に、看護師は、保護カバーを押さえておく必要がなくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1(a)は、本実施形態による廊下灯の構成例を示す正面図であり、図1(b)は、本実施形態による廊下灯の構成例を示す側面図である。図1に示すように、本実施形態による廊下灯は、フレーム1及び保護カバー2を備えて構成されている。また、フレーム1は、患者氏名表示部1a、救護区分表示部1b、スライド用凹条部1cを備えて構成されている。また、保護カバー2は、救護区分表示窓2a、スライド用凸条部2b、クッション3を備えて構成されている。
【0011】
図1において、フレーム1は、患者が在室する病室の出入口近傍の廊下側に図中裏面部分を取り付けている。また、患者氏名表示部1aは、フレーム1の図中表面部に設けられており、病室内のベッドの数と同数が縦横に並べられている(本実施形態では、ベッドの数は4床である)。ここで、患者氏名表示部1aは、ネームプレートなどにより交換自在に取り付けられている。また、救護区分表示部1bは、各患者氏名表示部1aの近傍に設けられており、それぞれ、「担送」、「護送」、「独歩」などの救護区分に対応した色を切り換え表示可能である。
【0012】
フレーム1の表面部には、患者の呼出しに対応して点灯する図示しない点灯部や、患者の呼出し状態を元の状態に復旧させるための図示しない復旧スイッチが設けられている。また、スライド用凹条部1cは、患者氏名表示部1a及び救護区分表示部1bを挟むようにフレーム1に二箇所設けられている。ここで、スライド用凹条部1cは、患者氏名表示部1aや救護区分表示部1bよりも図中前面に設けられている。
【0013】
保護カバー2は、フレーム1の患者氏名表示部1a及び救護区分表示部1bを覆うように、図中前面にスライド自在に取り付けられる。救護区分表示窓2aは、保護カバー2がフレーム1の患者氏名表示部1a及び救護区分表示部1bを完全に覆った状態において、救護区分表示部1bに対応する位置に配置されており、透明性を有する部材により構成されている。ここで、保護カバー2は、患者氏名表示部1aを隠す必要があるので、救護区分表示窓2aを除いて不透明の部材により構成されている。
【0014】
スライド用凸条部2bは、保護カバー2の側面にそれぞれ設けられており、フレーム1のスライド用凹条部1cに挿入される。ここで、スライド用凹条部1cとスライド用凸条部2bとの働きにより、保護カバー2は、図2に示すように、患者氏名表示部1aを見せる(隠さない)第1の位置(図2(a))と患者氏名表示部1aを隠す第2の位置(図2(b))との間をスライド可能である。なお、保護カバー2が第2の位置よりも上方に移動してフレーム1から抜けてしまうのを防止するために、図示しないストッパをフレーム1や保護カバー2に設けても良い。また、本実施形態では、フレーム1にスライド用凹条部1cを設け、保護カバー2にスライド用凸条部を設けるようにしているが、これに限定されない。例えば、フレーム1にスライド用凸条部を設け、保護カバー2にスライド用凹条部を設けるようにしても良い。また、凸条や凹条に限らず、保護カバー2をスライドさせることができれば、どのような構成であっても良い。
【0015】
クッション3は、保護カバー2が患者氏名表示部1aを隠す第2の位置にある場合に、フレーム1と保護カバー2との衝突を緩和するものであり、保護カバー2の上方の突出部2cの下方に設けられている。ここで、クッション3は、ウレタンやスポンジ、ゴムなどにより構成されている。これにより、保護カバー2の突出部2cの下方とフレーム1の上部との衝突を防止することができる。ここで、クッション3がフレーム1の上部と接触している状態で、保護カバー2の下方部分は、フレーム1の下方部分と接触しないようになっている。
【0016】
このように構成した廊下灯は、図2(b)に示す常態において、保護カバー2が下方にスライドした状態となっている。この状態では、保護カバー2により患者氏名表示部1aが隠れている。また、各患者の救護区分については、保護カバー2に設けた救護区分表示窓2aを介して救護区分表示部1bにより確認することが可能である。一方、患者の氏名を確認する場合には、看護師は、図2(a)に示すように、保護カバー2を上方にスライドさせる。そして、看護師が患者の氏名の確認を終えて保護カバー2から手を放すと、保護カバー2は、自重により下方にスライドし、図2(b)に示すように、患者氏名表示部1aを隠す状態となる。また、クッション3により、保護カバー2とフレーム1との衝突を緩和している。
【0017】
以上詳しく説明したように、本実施形態によれば、フレーム1の患者氏名表示部1aが隠れるように保護カバー2が自重により下方にスライドされると共に、保護カバー2とフレーム1との衝突時の騒音や衝撃がクッション3により吸収される。これにより、看護師は、患者の氏名を確認した後に、保護カバー2を元の位置に戻す必要がなくなる。また、看護師は、保護カバー2が元の位置に戻る前に保護カバー2から手を放すことができる。従って、看護師に余計な気を使わせることなく、患者の氏名を確実に隠すことができる。
【0018】
なお、前述した実施形態では、フレーム1にスライド用凹条部1cを設け、保護カバー2にスライド用凸条部を設けるようにしているが、これに限定されない。例えば、図3に示すように、フレーム4に回転式ダンパー5を設け、保護カバー6に回転式ダンパー5に噛み合う凸部群7を設けるようにしても良い。具体的には、フレーム4の患者氏名表示部4a及び救護区分表示部4bを挟むように、スライド用凹条部4cをフレーム4に二箇所設ける。また、回転式ダンパー5は、一方のスライド用凹条部4cの凹部に側面の一部が露出するようにフレーム4内に設けられている。
【0019】
保護カバー6は、患者氏名表示部4aを隠すように下方にスライドした状態で、救護区分表示部4bに対応する位置に透明性を有する救護区分表示窓6aを備えている。また、保護カバー6は、一方の側面に凸部群7を設け、他方の側面にスライド用凸条部6aを設けている。ここで、凸部群7もスライド用凹条部4cに挿入可能である。
【0020】
このように構成した廊下灯は、常態において、保護カバー6が下方にスライドした状態となっている。この状態では、保護カバー6により患者氏名表示部4aが隠れている。また、各患者の救護区分については、保護カバー6に設けた救護区分表示窓6aを介して救護区分表示部4bにより確認することが可能である。一方、患者の氏名を確認する場合には、看護師は、図3に示すように、保護カバー6を上方にスライドさせる。そして、看護師が患者の氏名の確認を終えて保護カバー6から手を放すと、保護カバー6は、自重により下方にスライドし、患者氏名表示部4aを隠す状態となる。
【0021】
ここで、回転式ダンパー5及び凸部群7の働きにより、保護カバー6が下方に移動する速度が緩和されるので、保護カバー6は、下方にゆっくりとスライドする。これにより、保護カバー6が元の位置に戻る際に、保護カバー6とフレーム4との衝突時の騒音や衝撃が緩和される。従って、看護師に余計な気を使わせることなく、患者の氏名を確実に隠すことができる。また、保護カバー6が下方にゆっくりとスライドするので、保護カバー6を上方に引き上げた場合に、患者の氏名が表示される時間が長くなる。従って、患者の氏名を確認する際に、看護師は、保護カバー6を押さえておく必要がなくなる。
【0022】
また、前述した実施形態では、保護カバー2の表面と突出部2cとの境界部分が鋭角を成しているが、これに限定されない。例えば、図4(a)に示すように、側面にスライド用凸条部8aを備えた保護カバー8の表面と突出部8bとの境界部分が曲面を形成するようにしても良い。ここで、クッション9は、突出部8bの下方に設けられている。
【0023】
また、前述した実施形態では、保護カバー2,8の突出部2c,8bが保護カバー2,8の両側面に渡って形成されているが、これに限定されない。例えば、保護カバーの上部の一部に形成されるようにしても良い。
【0024】
また、前述した実施形態では、保護カバー2の上方の突出部2cの下方にクッション3を設けているが、これに限定されない。例えば、図4(b)に示すように、側面にスライド用凸条部10aを備えた保護カバー10の下方にクッション11を設けるようにしても良い。これにより、保護カバー10に突出部が存在しないので、廊下灯を薄型化することができる。
【0025】
また、前述した実施形態では、保護カバー2は、患者氏名表示窓2bを除いて不透明の部材により構成されているが、これに限定されない。例えば、図5に示すように、保護カバー12全体を透明性を有する部材により構成するようにしても良い。ここで、保護カバー12は、側面にスライド用凸条部12aを備えている。また、保護カバー12は、表面に対して平行なスリット部12bを有しており、このスリット部12bに紙などの不透明な部材により構成されたシートを挟むことで不透明となる。
【0026】
シートとしては、病室内のベッドの数に合わせて異なるシートを用意することで、様々な廊下灯に対応することができる。例えば、ベッドの数が4床の場合には、4床用シート14が用いられる。4床用シート14は、図示しないフレームの救護区分表示部に対応する位置に救護区分表示窓14aを備えている。また、ベッドの数が6床の場合には、6床用シート15が用いられる。6床用シート15は、図示しないフレームの救護区分表示部に対応する位置に救護区分表示窓15aを備えている。また、保護カバー12の突出部の下方には、クッション13が設けられている。
【0027】
また、このような場合において、4床用シート14や6床用シート15の表面に絵や写真を印刷しても良いし、4床用シート14や6床用シート15の前面に絵や写真などを挟むようにしても良い。また、このような場合において、絵や写真を見易くするために、保護カバー12の表面をシボ加工しても良い。
【0028】
その他、上記実施形態は、本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその精神、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は、病院などの施設における病室の出入口の近傍に設けられ、病室の番号や患者の氏名などを表示する廊下灯に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本実施形態による廊下灯の構成例を示す図である。
【図2】本実施形態による廊下灯の保護カバーのスライド状態を示す図である。
【図3】本実施形態による廊下灯の変形例を示す図である。
【図4】本実施形態による廊下灯の保護カバーの変形例を示す図である。
【図5】本実施形態による廊下灯の保護カバーの他の変形例を示す図である。
【符号の説明】
【0031】
1,4 フレーム
1a,4a 患者氏名表示部
1b,4b 救護区分表示部
1c,4c スライド用凹条部
2,6,8,10,12 保護カバー
2a,6a 救護区分表示窓
2b,6b,8a,10a,12a スライド用凸条部
2c,8b 突出部
3,9,11,13 クッション
5 回転式ダンパー
7 凸部群
12b スリット部
14 4床用シート
15 6床用シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の面に少なくとも患者の氏名を表示し、他方の面を壁面に取り付けるフレームと、
前記フレームに表示された前記患者の氏名を隠さない第1の位置と前記患者の氏名を隠す第2の位置との間を上下方向にスライドするように前記フレームに取り付けた保護カバーと、
前記保護カバーが前記第2の位置にある場合に、前記フレーム及び前記保護カバーの両方又は何れか一方に前記フレームと前記保護カバーとの衝突を防止するクッションと、
を備えた廊下灯。
【請求項2】
一方の面に少なくとも患者の氏名を表示し、他方の面を壁面に取り付けるフレームと、
前記フレームに表示された前記患者の氏名を隠さない第1の位置と、前記患者の氏名を隠す第2の位置との間を上下方向にスライドするように前記フレームに取り付けた保護カバーと、
前記保護カバーが前記第1の位置から前記第2の位置にスライドする際に、前記保護カバーの下方へのスライドの速度を緩和するダンパーと、
を備えた廊下灯。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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