説明

延伸仮撚り加工装置および延伸仮撚り加工方法

【課題】合成繊維を延伸仮撚り加工糸を製造するに際し、安定して撚り掛けされた状態の糸条を加熱し、撚りの固定を行うとともに、ボリューム感の良好な布帛を得られ、毛羽、断糸等のない合成繊維の延伸仮撚り加工方法と、延伸仮撚り加工装置を提供する。
【解決手段】撚りの形状を固定する接触型の溝状加熱部を有する合成繊維の延伸仮撚り加工装置において、繊維の走行方向の溝状加熱部の全体の長さが1000mm以上3000mm以下であり、かつ、該溝状加熱部が繊維の走行方向に非接触部である凹部を有することを特徴とする延伸仮撚り加工装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は延伸仮撚り加工糸を製造するにあたり、ボリューム感のある捲縮特性を有し、かつ、従来より優れた製糸性を有する仮撚り、または延伸仮撚り加工装置および延伸仮撚り加工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
延伸仮撚り加工装置は衣料用合成繊維の主な形態である延伸仮撚り加工糸を得るための装置であり、品質、操業安定化のため様々な提案がなされてきた。また、それら延伸仮撚り加工装置は糸条形態を柔らかくするなどの目的で、ピンやベルト、フリクションディスクなどにより、撚り掛けされた状態の糸条を加熱し、撚りを熱固定するために用いられている。
【0003】
加熱装置内で撚り掛け状態にある糸条はその旋回力によりバルーニングを発生しやすく、特に糸条と加熱装置の加熱部が接触する場合は摩擦により糸条が加熱部より飛び出し、撚り掛け性が不安定になる等の品質低下、また、断糸の原因となる等の操業悪化を引き起こすといったことがしばしば見られてきた。
【0004】
特に、近年の熱可塑性合成繊維は様々な機能を付加することを目的に、断面形状の制御や粒子添加をおこなうことや、摩擦の高い共重合したポリマーの高配向未延伸糸を仮撚りまたは延伸仮撚り加工する機会が増えてきている。
【0005】
また、これらの課題を解決する方法として、非接触式加熱装置が一般的に用いられている。例えば、非接触式加熱装置を2分割し、各加熱装置本体の加熱を独立に制御する方法が提案されている。(例えば、特許文献1参照)
しかしながら、非接触加熱装置では、加熱装置内で糸条が振動によるバルーニングを起こして充分な撚り掛け性が行われなかったり、また、振動に伴う風損等のため糸条が不安定状態になり、良好な熱伝達が行われず、品質に影響を与えるという問題があった。
【0006】
また、一つの加熱手段で加熱装置上部にプレートによる加熱部、下部に非接触型加熱部を用いる方法が提案されている。(例えば、特許文献2参照)
しかしながら、接触プレートが非接触加熱部と同等の温度設定となるため、断糸発生時に糸条がこの接触プレート部に融解付着する。この付着物が熱容量の大きな高温液状態となり、再度糸掛けを実施した際に走行糸条に付着し、断糸の原因となる。さらには、加熱装置を2機使用する必要があり、コストや作業性、製糸条件面での制約が大きいといった課題がある。
【特許文献1】特開平9−302542号公報
【特許文献2】特開2003−113542号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述した問題点を解決し、接触型の加熱装置において、ボリューム感のある捲縮特性を有し、かつ、作業性、コスト、製糸条件等の課題を改善し、安定した製糸を行うことを目的とした、延伸仮撚り加工装置とそれを用いた延伸仮撚り加工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上述した目的を達成するため以下の構成を採用する。すなわち、
(1)撚りの形状を固定する接触型の溝状加熱部を有する合成繊維の延伸仮撚り加工装置において、繊維の走行方向の溝状加熱部の全体の長さが1000mm以上3000mm以下であり、かつ、該溝状加熱部が繊維の走行方向に非接触部である凹部を有することを特徴とする仮撚り加工装置。
【0009】
(2)前記溝状加熱部において、接糸部の比率が85%以上95%以下であり、かつ、接糸部の長さが400mm以上800mm以下であり、さらに、非接触部である凹部の長さが10mm以上300mm以下であるとともに、凹部の深さが3mm以上30mm以下であることを特徴とする前記(1)に記載の延伸仮撚り加工装置。
【0010】
(3)前記(1)または(2)に記載の延伸仮撚り加工装置を用い、動摩擦係数が2.0μd以下の合成繊維糸条を延伸仮撚り加工することを特徴とする延伸仮撚り加工方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、以下に説明するとおり、延伸仮撚り加工時の加熱装置部における糸条の走行状態の安定性に優れ、ついては製糸性、品質に優れた延伸仮撚り糸を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の撚りの形状を固定する接触型の溝状加熱部を有する仮撚りまたは延伸仮撚り加工装置は、繊維の走行方向の溝状加熱部全体の長さが1000mm以上3000mm以下であるものである。全体の長さが1000mmを下回ると、撚りの形状を固定する際の熱量不足により、布帛にした時に所望のボリューム感が得られにくくなる。また、全体の長さが3000mmを越えると設備の大型化によるコストアップ、作業性悪化等の問題が発生する。
【0013】
また、本発明の撚りの形状を固定する接触型の溝状加熱部は繊維の走行方向に非接触部を有するとともに、該非接触部を2カ所以上設ける形態が好ましく、2カ所以上4カ所以下設ける形態がさらに好ましいが、上述条件を満たす範囲で適宜選択すればよい。非接触部を形成する手段としては、溝状加熱部に凹部を形成することが好ましいが、凹部形状等は特に限定されるものではない。
【0014】
また、前記溝状加熱部の接触部(接糸部)の溝状加熱部全体に対する長さ比率は85%以上95%以下にすることが好ましい。この比率が85%未満になると溝状加熱部長が短い(1000mm)時には接糸部長が850mm未満になることから、熱量不足により布帛にした時に所望のボリューム感が得られにくくなる等の品質問題が発生するので好ましくない。また、この比率が95%を越えると溝状加熱部が長い(3000mm)時には接糸部長が2850mmを越えることになることから、繊維糸条にダメージを与え、毛羽、断糸の発生を引き起こすという問題が発生するので好ましくない。
【0015】
また、前記溝状加熱部の接触部(接糸部)個々の長さWは400mm以上800mm以下にすることが好ましい。800mmを越えると、撚掛時の糸の旋回力と接糸部の摩擦力により加熱装置の加熱部から糸の飛び出しが発生し、製糸性、糸質が大幅に低下するという問題が発生するので好ましくない。400mmを下回ると、ヒーター長が長い場合に凹部の個数が増加することから製作コストが上がるという問題が発生するので好ましくない。また、接糸部個々の長さは、同一の長さにすることが好ましいが、上述条件を満たす範囲であればこの限りではない。
【0016】
また、前記溝状加熱部の非接触部の個々の長さYは10mm以上30mm以下にすることが好ましい。長さが10mmを下回ると清掃が困難になるという問題が発生し、30mmを越えると熱量不足により所望の捲縮特性等の品質が得られにくくなるので好ましくない。
【0017】
また、前記溝状加熱部の非接触部となる凹部の深さZについては、3mm以上10mm以下にすることが好ましい。3mm以下では糸条が凹部に接触するという問題が発生し、本発明の効果が得られにくくなり好ましくない。また、10mmを越えると熱量不足により布帛にした時に所望のボリューム感が得られない等の品質問題が発生しやすくなり好ましくない。
【0018】
また、溝状加熱部の形状については、特に限定されるものではないが、U字型にするのが好ましく、溝状加熱部の幅Vは2mm以上6mm以下、深さDは3mm以上30mm以下にするのが好ましい。溝状加熱部の幅Vは2mm未満では溝状加熱部の清掃が困難になるといった作業性の低下を招く場合がある。一方、6mmより大きくなると仮撚時の糸の飛び出しが起こりやすくなり、製糸性および糸質の低下を招く場合がある。また、溝状加熱部の深さDが3.0mm未満では本発明を用いても、仮撚時の糸の飛び出しが起こりやすくなり、製糸性・糸質の低下を招く場合がある。一方、Dが30mmより大きくなると加熱部の清掃が困難になるといった作業性の低下を招く場合がある。
【0019】
本発明の延伸仮撚装置を用いることによる糸の飛び出し防止効果は、動摩擦係数が好ましくは2.0μd以下、より好ましくは0.3〜2.0μdの仮撚加工糸を製造する場合に特に効果が大きくなる。動摩擦係数が0.3μd未満のものでもよいが、動摩擦係数が0.3μd未満のものは、本発明の延伸仮撚加工機を用いなくとも延伸仮撚りは可能となる。一方、動摩擦係数が2.0μdより大きくなると、接糸部での抵抗が大きくなり、仮撚加工を行っても期待通りの糸質の延伸仮撚加工糸は得られない場合がある。
【0020】
本発明の延伸仮撚装置を用いることによる糸の飛び出し防止効果は、カチオン可染仮撚加工糸を製造する場合に特に効果が大きくなる。カチオン可染仮撚加工糸は、カチオン染料に可染の、例えば、5−ソジウムスルホイソフタレート単位を含むポリエチレンテレフタレートよりなるポリエステル繊維などであり、カチオン可染仮撚加工糸はスルホン酸塩共重合成分を含むため動摩擦係数が大きくなり(動摩擦係数は2μd以下)、従来の接触型加熱装置をもった仮撚装置では糸の飛び出しが発生する。一方で、本発明の延伸仮撚り装置を用いることにより製糸性、糸質に優れたカチオン可染仮撚加工糸を得ることが可能となる。
【0021】
以下、本発明において詳細に説明する。本発明で加工し得る合成繊維は、ポリエステルやポリアミドなどの溶融紡糸できる合成繊維であれば特に限定されるものではない。例えば、顔料、染料、艶消し剤、防汚材、蛍光増白材、難燃剤、安定剤、紫外線吸収剤、滑剤等を含んでいてもよい。
【0022】
本発明で用いられる合成繊維は、単一成分で構成しても、複数成分で構成してもよく、複数成分の場合には、例えば、芯鞘、サイドバイサイド型等の複合繊維の構成が挙げられる。また、繊維断面の形状は、丸、三角、扁平等の異形状や中空であってもよい。
【0023】
本発明において対象とする合成繊維、単繊維繊度、フィラメント数は、目的に応じて適宜選択される。
【0024】
本発明で用いられる動摩擦係数2.0μd以下の合成繊維は、上述した条件を満たし、通常の紡糸法により得られた糸条に、高分子ポリエーテルを主体とした紡糸油剤などを付着させることにより得られる。
【0025】
以下、本発明の合成繊維の延伸仮撚り加工装置、延伸仮撚り加工方法の一実施例について、図面により説明する。
【0026】
図1において、延伸仮撚り装置は、第1フィードローラー2、接触式加熱装置5、接触式冷却装置6、仮撚り部材7、第2フィードローラー8、非接触式第2加熱装置9、交絡付与装置11、油剤付与装置12を備えている。
【0027】
合成繊維高配向未延伸糸1は第1フィードローラー2、第2フィードローラー8の間で接触式加熱装置5、接触式冷却装置6、仮撚り部材7を介し、延伸、捲縮特性を付与し、交絡付与装置、油剤付与装置を通過後、延伸仮撚り加工糸10として巻き取られる。
【0028】
上記の装置において、本発明における接触式加熱装置5は、図2に示すとおり、溝状加熱部13を有し、かつ、繊維の走行方向に非接触部を設けることを目的とした凹部14を有している。ところで、延伸仮撚り加工をする際、接触式加熱装置5内の溝状加熱部13上では、合成繊維糸条は撚り掛け状態にあり、その旋回力によるバルーニングの発生、摩擦により、合成繊維糸条が溝状加熱部から飛び出すといった現象がみられ、布帛にした時に所望のボリューム感が得られない等の品質悪化、断糸発生等の操業性悪化を引き起こしていた。
【0029】
これらの現象を抑制するために、本発明では、図2に示すように、溝状加熱部13の合成繊維の走行範囲に非接触部を設けることを特徴とした摩擦を軽減させる凹部を与え、摩擦により、溝状加熱部から飛び出そうとする現象を抑制するものである。
【0030】
ここで使用する溝状加熱部13の全体の長さXは、前記したように、1000mm以上3000mm以下にするものである。また、ここで用いられる溝状加熱部の表面は、毛羽発生等の問題があることから、JIS B0601:2001に準じて測定される表面粗度Rが0.3μm以上0.8μm以下のものを用いることが好ましい。0.3μm未満では表面の加工精度が困難となる場合があり、0.8μmより大きくなると、本発明の効果が得られにくくなることから好ましくない。
【0031】
また、前記したように、溝状加熱部の接触部の溝状加熱部全体に対する比率は85%以上95%以下にすることが好ましい。
【0032】
また、溝状加熱部の接触部個々の長さは400mm以上800mm以下にすることが好ましい。
【0033】
また、前記したように、溝状加熱部の非接触部の個々の長さYは10mm以上30mm以下にすることが好ましい。
【0034】
また、前記したように、凹部の深さZは3mm以上30mm以下であることが好ましい。
【0035】
本発明の仮撚装置を用いることによる糸の飛び出し防止効果は、前記したように、動摩擦係数が0.3〜2.0μdの延伸仮撚り加工糸を製造する場合に特に効果が大きくなる。特に、5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジメチルを共重合したポリエチレンテレフタレートポリマーを用いた合成繊維糸条を加工する際に好適である。5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジメチルの共重合割合は1〜10モル%であることが好ましい。
【実施例】
【0036】
以下実施例により本発明をさらに詳細に説明する。なお、実施例中の測定、評価項目は以下に述べる方法で測定した。
(1)動摩擦係数
英光産業(株)製ME−T03を用い、摩擦体である金属筒(鏡面)上に糸条を摩擦角45°、測定速度55m/分、30秒間走行させ、摩擦体入りの張力をT1、摩擦体出の張力をT2とし、下記式において動摩擦係数(μd)を算出し、試料数4本の平均を動摩擦係数(μd)とした。
動摩擦係数(μd)= (1/0.25π)×In(T2/T1)
(2)溝状加熱部からの飛び出しによる断糸発生
200錘で同時に高配向未延伸糸の延伸仮撚りを行い、溝状加熱部からの飛び出しによる断糸発生がないものを○、1件以上発生したものを×の2段階で評価し、○は合格、×を不合格とした。
(3)ボリューム感
布帛でのボリューム感について5人の検査員による官能試験を実施し、「5人全員が良好」と判断したものは○、「3人以上、4人未満が良好」と判断したものは△、「2人以下が良好」と判断したものは×の3段階で評価し、○が合格、△がやや劣るが合格、×が不合格とした。
(4)毛羽
東レエンジニアリング(株)製 MULTI POINT FLY COUNTER MODEL−1110を用い、糸速400m/minで5分間測定した。0個以下を○、1個を△、2個以上を×とし、○が合格、△がやや劣るが合格、×が不合格とした。
(5)操業性
200錘で同時に高配向未延伸糸の延伸仮撚を行い、24時間延伸仮撚する間の断糸回数を測定し、操業性(=(200−糸切れ数)/200)が98.0%以上のものを○、95.0以上98.0未満を△、95%未満を×の3段階で評価し、○が合格、△がやや劣るが合格、×が不合格とした。
(6)作業性
延伸仮撚りに使用する接触型加熱装置の清掃において、溝状加熱部1錘の汚れを金属棒や布等により除去する作業に要する時間について、1分未満を○、1分以上2分未満を△、2分以上を×とし、○が合格、△がやや劣るが合格、×が不合格とした。
【0037】
実施例1〜4および比較例1〜3
5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジメチルを2.0モル%共重合したポリエチレンテレフタレートポリマーを用いた高配向未延伸糸をポリウレタン製のフリクションディスクを用い、加工速度を500m/min、延伸倍率1.50倍、加熱温度180℃で延伸仮撚りする際に、溝状加熱部の全長、凹部の有無、溝状加熱部の表面粗度Rを異ならせ、溝状加熱部よりの飛び出し、捲縮特性、毛羽、操業性、作業性についての結果を表1に示す。
【0038】
【表1】

【0039】
表1の結果から、実施例1〜4は、捲縮特性、毛羽、操業性、作業性について良好な結果が得られ、良好なカチオン可染延伸仮撚り加工糸が得られた。比較例1〜3は溝状加熱部よりの飛び出し、捲縮特性、毛羽、操業性、作業性について良好な結果が得られず、良好なカチオン可染延伸仮撚り加工糸が得られなかった。
【0040】
実施例5〜12
5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジメチルを2.0モル%共重合したポリエチレンテレフタレートポリマーを用いた高配向未延伸糸をポリウレタン製のフリクションディスクを用い、加工速度を500m/min、延伸倍率1.50倍、加熱温度180℃で延伸仮撚りする際に、溝状加熱部の接糸部比率を異ならせ、また、個々の接糸部長、凹部の長さ、および深さを異ならせ、溝状加熱部よりの飛び出し、捲縮特性、毛羽、操業性、作業性についての結果を表2に示す。
【0041】
【表2】

【0042】
表2の結果から、実施例5〜12は、溝状加熱部よりの飛び出し、捲縮特性、毛羽、操業性、作業性について良好な結果が得られ、良好なカチオン可染延伸仮撚り加工糸が得られた。
【0043】
実施例13〜19
5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジメチルを2.0モル%共重合したポリエチレンテレフタレートポリマーを用いた高配向未延伸糸をポリウレタン製のフリクションディスクを用い、加工速度を500m/min、延伸倍率1.50倍、加熱温度180℃で延伸仮撚りする際に、溝状加熱部の幅、深さ、および溝状加熱部表面粗度Rを異ならせ、溝状加熱部よりの飛び出し、捲縮特性、毛羽、操業性、作業性についての結果を表3に示す。
【0044】
【表3】

【0045】
表3の結果から、実施例13〜19は、溝状加熱部よりの飛び出し、捲縮特性、毛羽、操業性、作業性について良好な結果が得られ、良好なカチオン可染延伸仮撚り加工糸が得られた。これに対して、比較例5は溝状加熱部よりの飛び出し、操業性の悪化が見られた。
【0046】
実施例20〜23
5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジメチルを2.0モル%共重合したポリエチレンテレフタレートポリマーを用いた高配向未延伸糸をポリウレタン製のフリクションディスクを用い、加工速度を500m/min、延伸倍率1.50倍、加熱温度180℃で延伸仮撚りする際に、凹部の深さを異ならせ、溝状加熱部よりの飛び出し、捲縮特性、毛羽、操業性、作業性についての結果を表4に示す。
【0047】
【表4】

【0048】
表4の結果から、実施例20〜23は、溝状加熱部よりの飛び出し、捲縮特性、毛羽、操業性、作業性について良好な結果が得られ、良好なカチオン可染延伸仮撚り加工糸が得られた。
【0049】
実施例24〜27
5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジメチルを2.0モル%共重合したポリエチレンテレフタレートポリマーを用いた高配向未延伸糸および、動摩擦係数の異なる高配向未延伸をポリウレタン製のフリクションディスクを用い、加工速度を500m/min、延伸倍率1.50倍、加熱温度180℃で延伸仮撚りし、溝状加熱部よりの飛び出し、捲縮特性、毛羽、操業性、作業性についての結果を表5に示す。
【0050】
【表5】

【0051】
表5の結果より、実施例24〜27は、溝状加熱部よりの飛び出し、捲縮特性、毛羽、操業性、作業性について良好な結果が得られ、良好なカチオン可染延伸仮撚り加工糸が得られた。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の延伸仮撚加工機の一実施態様を示す概略工程図である。
【図2】本発明の延伸仮撚加工機で用いられる溝状加熱部の一実施態様を示す正面側の平面図である。
【図3】本発明の延伸仮撚加工機で用いられる溝状加熱部の一実施態様を示す側面側の平面図である。
【符号の説明】
【0053】
1:高配向未延伸糸
2:第1フィードローラー
3:延伸開始点
4:加熱開始点
5:接触型加熱体
6:冷却装置
7:仮撚り部材
8:第2フィードローラー
9:非接触型加熱体
10:延伸仮撚加工糸
11:交絡付与装置
12:油剤付与装置
13:溝状加熱部
14:非接触部を有するための凹部
D:溝状加熱部の深さ
V:溝状加熱部の幅
W:個々の接糸部の長さ
X:溝状加熱部の全体の長さ
Y:凹部の長さ
Z:凹部の深さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撚りの形状を固定する接触型の溝状加熱部を有する合成繊維の仮撚り加工装置において、繊維の走行方向の溝状加熱部の全体の長さが1000mm以上3000mm以下であり、かつ、該溝状加熱部が繊維の走行方向に非接触部である凹部を有することを特徴とする延伸仮撚り加工装置。
【請求項2】
前記溝状加熱部において、接糸部の比率が85%以上95%以下であり、かつ、接糸部の長さが400mm以上800mm以下であり、さらに、非接触部である凹部の長さが10mm以上300mm以下であるとともに、凹部の深さが3mm以上30mm以下であることを特徴とする請求項1に記載の延伸仮撚り加工装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の延伸仮撚り加工装置を用い、動摩擦係数が2.0μd以下の合成繊維糸条を延伸仮撚り加工することを特徴とする延伸仮撚り加工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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