説明

延焼防止装置を有する建物

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は隣接する住戸への火災延焼の防止を図るための延焼防止装置を有する建物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来より、例えば柱、梁、壁及び床からなる多層の一次構造物における各層の床上に二次構造物である戸建住宅を施工する人工土地型住宅が提案されている。この種の住宅において、例えば柱には大規模用に開発されたコンクリート柱が、梁には鉄骨コンクリート大梁が、床や壁にはプレキャストコンクリート板がそれぞれ使用されているものである。戸建住宅の各住戸は、その基礎部を一次構造物の床スラブに、屋根部を天井床スラブにそれぞれアンカー等により固定されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】従来の人工土地型住宅において、実験によると、二次構造物である戸建住宅の外壁開口部から隣接する住戸への火災延焼を防止する対策として、隣戸間の窓の間隔を90cm以上離したり、また戸境に防火区画壁である不燃性のパーテンションを設けても、特に風が強い時等ではベランダ下面に沿って火炎が隣戸に流れて、延焼する危険があることがわかった。
【0004】この発明の目的は、簡単な構成で火炎が隣接する住戸へ流れて延焼するのを防止することができる建物を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】この発明は、通常の多層建物又は一次構造物に面する二次構造物を備えている住宅における隣接する住戸との境界位置にベランダ下面から不燃材からなる垂れ壁を下方に向けて設けてあるものである。建物には、一次構造物に面する二次構造物を備えた建物の他に、一次構造物と二次構造物とに分けることのない通常の建物を含み、前者の建物では垂れ壁は一次構造物のベランダに設ける。
【0006】
【作用】垂れ壁がベランダ下面に沿う火炎の流れを阻止する。
【0007】
【実施例】以下この発明の実施例を図面を参照して説明する。図1及び図3に示す住宅1は、一次構造物2に面して二次構造物3を備えている。一次構造物2は、柱21、壁22、梁23及び床24からなる多層建物である。柱21及び逆梁からなる梁23は場所打ちコンクリートからなり、壁22及び床24はプレキャスト板を使用している。
【0008】二次構造物3は、2層の戸建住宅形式を採用している。二次構造物3においては、図1及び図2に示すように外側にベランダ31を設けてあり、ベランダ端部にコンクンリート製手すり32を設けてある。ベランダ31には、隣接する住戸との境界位置に防火区画壁であるパーテンション4を設けてある。各パーテンション32の真上には上層のベランダ31下面から不燃材からなる垂れ壁5をそれぞれ設けてある。
【0009】図3において、一次構造物2の壁22と二次構造物3の外壁との隙間6であって、二次構造物3の上下階の境界部に全長に亘って不燃材であるグラスウール7を充填してある。すなわち、グラスウール7が二次構造物3の上下階の境界部において天井部33の周囲を囲むように隙間6を塞いでおり、このために下階から生じる火煙が隙間6を通って上階へ伝播することを防止する機能を果す。上記の構成であるから、ある住戸の開口部34,35から噴出する火炎は、ベランダ31の下面に沿って隣接する住戸方向に流れようとすると、垂れ壁5がその流れを阻止して隣接住戸の延焼を防止できる。
【0010】図4及び図5は第2の実施例を示す集合住宅11であり、この集合住宅は一次構造物と二次構造物とを具備していない点で、第1実施例とは区別される。集合住宅11においては、ベランダ11aの下面であって、隣接する住戸の境界位置から垂れ壁15を設けてあり、その真下にはパーテーション14を起立し、このパーテーション上端部は垂れ壁の下面に近接している。11bは開口部である。この例においても、垂れ壁15が隣戸からの火炎の流れを阻止する機能を発揮できる。
【0011】
【発明の効果】この発明によれば、ベランダ下面に沿って隣接する住戸へ流れる火炎を阻止する垂れ壁を設けているので、簡単な構成で火炎による隣戸への延焼を簡単な構成で確実に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施例を示す要部の拡大縦断面図である。
【図2】この発明の一実施例を示す要部の正面図である。
【図3】この発明の一実施例を示す要部の平面断面図である。
【図4】この発明の他の実施例を示す要部の縦断面図である。
【図5】この発明の他の実施例を示し、手すりを省略している要部の正面図である。
【符号の説明】
1 住宅
2 一次構造物
3 二次構造物
31 ベランダ
4 防火区画壁(パーテンション)
5 垂れ壁
11 住宅
11a ベランダ
14 防火区画壁(パーテンション)
15 垂れ壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】 隣接する住戸との境界位置にベランダ下面から不燃材からなる垂れ壁を垂設してあることを特徴とする延焼防止装置を有する建物。
【請求項2】 一次構造物に面する二次構造物を備えている住宅であって、隣接する住戸との境界位置に上記一次構造物のベランダ下面から不燃材からなる垂れ壁を垂設してあることを特徴とする延焼防止装置を有する建物。

【図1】
image rotate


【図2】
image rotate


【図3】
image rotate


【図4】
image rotate


【図5】
image rotate


【特許番号】特許第3481969号(P3481969)
【登録日】平成15年10月10日(2003.10.10)
【発行日】平成15年12月22日(2003.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平5−135089
【出願日】平成5年5月14日(1993.5.14)
【公開番号】特開平6−319824
【公開日】平成6年11月22日(1994.11.22)
【審査請求日】平成12年5月9日(2000.5.9)
【出願人】(000150615)株式会社長谷工コーポレーション (94)
【出願人】(000003621)株式会社竹中工務店 (1,669)
【参考文献】
【文献】特開 平2−308058(JP,A)
【文献】実開 昭61−187809(JP,U)