建具周囲の排水構造
【課題】排水のための複雑な形状の部材を用いることなく、建具の周囲から雨水をスムーズに排水することができる建具周囲の排水構造を提供する。
【解決手段】壁下地1の開口部2の内周に枠状の建具3を取り付ける。建具3の上部に上枠部材4を、建具3の側部に側枠部材5をそれぞれ開口部2よりも屋外側に突出して設ける。上枠部材4の上方に一定の間隙を介して上方外装材6を配設することによって、上枠部材4と上方外装材6との間に上部排水路7を形成する。側枠部材5の側方に一定の間隙を介して側方外装材8を配設することによって、側枠部材5と側方外装材8との間に側部排水路9を上部排水路7と連通させて形成する。側枠部材5の下方に下方外装材10を配設し、側部排水路9の下端から下方外装材10までの間に水切り部材11を設ける。
【解決手段】壁下地1の開口部2の内周に枠状の建具3を取り付ける。建具3の上部に上枠部材4を、建具3の側部に側枠部材5をそれぞれ開口部2よりも屋外側に突出して設ける。上枠部材4の上方に一定の間隙を介して上方外装材6を配設することによって、上枠部材4と上方外装材6との間に上部排水路7を形成する。側枠部材5の側方に一定の間隙を介して側方外装材8を配設することによって、側枠部材5と側方外装材8との間に側部排水路9を上部排水路7と連通させて形成する。側枠部材5の下方に下方外装材10を配設し、側部排水路9の下端から下方外装材10までの間に水切り部材11を設ける。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サッシなどの建具の周囲における排水構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図20にビルなどの建物の外壁50を示す。この外壁50は複数枚の外装材51、51…を縦横に並べて形成されており、外壁50の一部に設けた開口部にはサッシなどの建具52が嵌め込まれている。また、縦横に隣接する外装材51、51は突き合わせ又は嵌合等により接続されており、横方向で隣接する外装材51、51の間には縦目地53が形成されている。この縦目地53には防水性のためにシーリング材などが充填されている。このような外壁50にあっては、経時劣化などによりシーリング材が破れて縦目地53に雨水が浸入することがあるが、この場合、雨水は縦目地53の屋内側にある空間を排水路として排水するようになっている。
【0003】
しかし、縦目地53が建具52の上側に形成されている場合、排水路の下端が建具52の上面で開放されているために、排水路を流れ落ちた雨水は行き場を失って建具52の上側に溜まったり外装材51の内部に侵入したりしていた。従って、建具52や外装材51の劣化が早まるという問題があった。
【0004】
そこで、例えば、特許文献1では、建具の上側に雨水を溜めた後、上横枠や縦枠を通じて排水するようにしているが、この場合、雨水を溜めることでスムーズに排水することができないおそれがあり、また、排水のために中空などの複雑な形状の上横枠や縦枠を用いなければならず、コストアップにつながるという問題があった。
【特許文献1】特開平8−21162号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、排水のために複雑な形状の部材を用いることなく、建具の周囲から雨水をスムーズに排水することができる建具周囲の排水構造を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1に係る建具周囲の排水構造は、壁下地1の開口部2の内周に枠状の建具3を取り付け、建具3の上部に上枠部材4を、建具3の側部に側枠部材5をそれぞれ開口部2よりも屋外側に突出して設け、上枠部材4の上方に一定の間隙を介して上方外装材6を配設することによって、上枠部材4と上方外装材6との間に上部排水路7を形成し、側枠部材5の側方に一定の間隙を介して側方外装材8を配設することによって、側枠部材5と側方外装材8との間に側部排水路9を上部排水路7と連通させて形成し、側枠部材5の下方に下方外装材10を配設し、側部排水路9の下端から下方外装材10までの間に水切り部材11を設けて成ることを特徴とするものである。
【0007】
本発明の請求項2に係る建具周囲の排水構造は、請求項1において、フラッシング材12を上枠部材4の上方から側枠部材5の側方にわたって配設し、フラッシング材12の屋外側に上部排水路7と側部排水路9とを形成して成ることを特徴とするものである。
【0008】
本発明の請求項3に係る建具周囲の排水構造は、請求項2において、フラッシング材12に設けた防水片13を側枠部材5の側面に沿って配置して成ることを特徴とするものである。
【0009】
本発明の請求項4に係る建具周囲の排水構造は、請求項2又は3において、フラッシング材12を防水テープ14で形成して成ることを特徴とするものである。
【0010】
本発明の請求項5に係る建具周囲の排水構造は、請求項2又は3において、フラッシング材12を上枠部材4及び側枠部材5に一体に形成して成ることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明では、上枠部材4の上方に上部排水路7を形成すると共に側枠部材5の側方に側部排水路9を形成するので、排水路を確保するために複雑な形状の部材を用いる必要が無く、しかも、上部排水路7に雨水を溜めることなく側部排水路9へと流下させることができ、建具の周囲から雨水をスムーズに排水することができるものである。
【0012】
請求項2の発明では、フラッシング材12により、上枠部材4及び側枠部材5と壁下地1との隙間を塞ぐことができ、防水性を高めることができるものである。
【0013】
請求項3の発明では、フラッシング材12に設けた防水片13により、側枠部材5と壁下地1との隙間を塞ぐことができ、防水性をさらに高めることができるものである。
【0014】
請求項4の発明では、防水テープ14により、上枠部材4及び側枠部材5と壁下地1との隙間を塞ぐことができ、防水性を高めることができるものである。
【0015】
請求項5の発明では、フラッシング材12と上枠部材4及び側枠部材5との隙間を生じないようにすることができ、防水性をさらに高めることができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0017】
本発明では、まず、図2(a)(b)に示すように、壁下地1の開口部2にサッシ等の建具3を嵌め込んで取り付ける。壁下地1は鉄骨などの構造材を組み合わせて形成することができ、図2(a)のものでは、上下に対向配置された二本の横構造材1a、1aの間に二本の縦構造材1b、1bを架け渡すことにより、横構造材1a、1aと縦構造材1b、1bとで囲まれる空間を開口部2とすることができる。建具3は四角枠状の枠体3aの内側に引き戸等の開閉体3bを一体に取り付けて形成されるものである。尚、図2(a)、図3(a)、図5(a)、図6(a)、図7、図9(a)、図10(a)、図11、図12、図14、図15、図17、図18においては開閉体3bの図示を省略している。
【0018】
上記の建具3の枠体3aには横長の上枠部材4と縦長の側枠部材5とが設けられている。上枠部材4と側枠部材5は枠体3aと同様にアルミニウム等の金属の成型部材で形成することができる。上枠部材4は枠体3aの上部(上枠)の屋外側に横方向の略全長にわたって取り付け、側枠部材5は枠体3aの両方の側部(側枠)の屋外側に縦方向に長く取り付ける。そして、建具3を開口部2の内周に取り付けると、上枠部材4及び側枠部材5は開口部2よりも屋外側に突出して配置される。また、上枠部材4は開口部2の上方開口縁部に沿ってその略全長にわたって配置され、側枠部材5は開口部2の両方の側方開口縁部に沿ってその略全長にわたって配置される。また、上枠部材4には上方に突出する上枠取付片4aが設けられており、上枠取付片4aは横構造材1aの屋外面にビス等で固定される。また、側枠部材5には側方(開口部2と反対側の外方)に向かって突出する側枠取付片5aが設けられており、側枠取付片5aは縦構造材1bの屋外面にビス等で固定される。
【0019】
上記のようにして建具3を取り付けた後、下方外装材10を壁下地1に取り付ける。下方外装材10は外壁材であって、例えば、二枚の金属外皮の間に断熱材を充填して形成される板状の断熱パネル(サンドイッチパネル)などを用いることができる。下方外装材10の上部は嵌合凸部20として形成されており、嵌合凸部20の屋外側面には横方向に長い凹溝21が形成されている。そして、凹溝21の部分にドリルビスなどの固定具45を打ち込むことにより、下方外装材10を壁下地1に取り付けることができる。このとき、嵌合凸部20の上端面と側枠部材5の下端との間には隙間22を設けるようにする。
【0020】
上記のようにして下方外装材10を取り付けた後、図3(a)(b)に示すように、水切り部材11を取り付ける。水切り部材11はカラー鋼板などの金属板を折り曲げ加工などして形成されるものであって、図4に示すように、矩形板状の水受け部11aと、水受け部11aの屋外側端部から下方に向かって突出する排水片11bと、水受け部11aの両側端部の屋内側端部に上方に向かって突設される二つの防水突片11c、11cと、防水突片11c、11cの間において水受け部11aの屋内側端部に沿って立設される立ち上げ片11eと、立ち上げ片11eに貼着されるシーリングテープ11dとを備えて形成されている。そして、水切り部材11を上記の隙間22に屋外側から差し入れ、水受け部11aを下方外装材10の嵌合凸部20の上面に載置すると共に排水片11bを下方外装材10の嵌合凸部20の屋外面に沿わせて配置する。また、防水突片11cは側枠部材5の側方(開口部2と反対側の外方)に配置され、側枠取付片5aの下部の屋外側に重ねられる。防水突片11cは側枠部材5の外側面(開口部2と反対側の面)から縦構造材1bの屋外面を覆い、さらに縦構造材1bの側方(開口部2と反対側)にまで突出するような幅寸法に形成されている。
【0021】
上記のようにして水切り部材11を配設した後、図5(a)(b)に示すように、フラッシング材12を取り付ける。フラッシング材12はカラー鋼板などの金属板で矩形板状に形成されるものである。また、フラッシング材12の幅寸法(短手方向の幅寸法)は、上枠取付片4a及び側枠取付片5aの幅寸法(短手方向の幅寸法)よりも広く、防水突片11cの幅寸法よりも狭く形成されている。そして、まず、側枠部材5の側方(開口部2と反対側)において縦方向に長い側部フラッシング材12aを配設する。この側部フラッシング材12aの下端部は水受け片11aの上面に当接すると共に側部フラッシング材12aの上端部は上枠部材4よりも上側に突出して配置される。また、側部フラッシング材12aは防水突片11c及び側枠取付片5aの屋外側に重ねて取り付けられる。この後、上枠部材4の上方において横方向に長い上部フラッシング材12bを配設する。この上部フラッシング材12bの両側端部は、側部フラッシング材12aの上端部の屋外側に重ねられる。また、上部フラッシング材12bは上枠取付片4aの屋外側に重ねて取り付けられる。
【0022】
上記のようにしてフラッシング材12を取り付けた後、図6(a)(b)に示すように、シーリングを施す。このシーリングとしては、上部フラッシング材12bと上枠部材4との隙間を閉塞する上部内周シーリング26と、側部フラッシング材12aと側枠部材5との隙間を閉塞する側部内周シーリング27と、上部フラッシング材12bの上部にその長辺に沿って配設されるテープ状の上部外周シーリング28と、側部フラッシング材12aの側部(側枠部材5と反対側の側部)にその長辺に沿って配設されるテープ状の側部外周シーリング29とで構成することができる。上部内周シーリング26と側部内周シーリング27は、フラッシング材12と上枠部材4及び側枠部材5との隙間の全長に沿って不定形のシーリング材を打つことにより形成することができる。また、上部外周シーリング28と側部外周シーリング29はシーリングテープをフラッシング材12の全長にわたって貼着することにより形成することができる。そして、上部フラッシング材12bの屋外側で上枠部材4の上側の空間が上部排水路7として形成される。また、側部内周シーリング27と側部外周シーリング29との間において、側部フラッシング部12aの屋外側の空間が側部排水路9として形成される。上部排水路7は横方向に長く、その両端部は側部排水路9の上端と連通している。また、側部排水路9は縦方向に長く、その上端は上部排水路7と連通しており、側部排水路9の下部は側部フラッシング材12aの下端から水切り部材11の水受け部11aの上面及び排水片11bの屋外面に至るまで形成されている。点線Wは上部排水路7と側部排水路9とを流れる雨水を示す。尚、側部フラッシング材12aの側方(側枠部材5と反対側の側方)において、水切り部材11には堰止めシーリング30が設けられている。堰止めシーリング30はシーリングテープを防水突片11cの屋外面から水受け片11aの上面にわたって貼り付けて形成することができる。また、側枠部材5の上端面と上枠部材4の下面との間には不定形のシーリング材31を充填する。
【0023】
上記のようにしてシーリングした後、図7に示すように、側枠部材5の側方(開口部2と反対側の側方)に側方外装材8を取り付ける。側方外装材8は下方外装材10と同様の断熱パネル(サンドイッチパネル)であって、その上端部は嵌合凸部20として形成されていると共に下端部には嵌合凸部20が嵌合可能な嵌合凹部32が形成されている。また、側方外装材8の側端面には縦方向の略全長にわたって目地片33が突設されている。この目地片33は側方外装材8の屋外側金属外皮の側端部を折り曲げるなどして形成することができる。そして、上記のようにして壁下地1に取り付けた下方外装材10の嵌合凸部20に側方外装材8の嵌合凹部32を嵌合した後、側方外装材8の嵌合凸部20の凹溝21の部分にドリルビスなどの固定具を打ち込むことにより、側方外装材8を壁下地1に取り付けることができる。このようにして取り付けた側方外装材8の目地片33の先端は側枠部材5の外側面(開口部2と反対側の側面)に当接又はほとんど隙間無く近接させる。これにより、側枠部材5の側方に目地片33の幅寸法分の間隙を介して側方外装材8の側端面が位置することになり、目地片33の屋内側において、側枠部材5の外側面と側方外装材8の側端面との間に側部排水路9が形成される。また、この側方外装材8の嵌合凸部20は上枠部材4よりも少し上側に突出した状態となる。
【0024】
次に、側方外装材8の上側及び上枠部材4の上側に上方外装材6を配設する。上方外装材6は側方外装材8や下方外装材10と同様の断熱パネル(サンドイッチパネル)であって、その上端部は嵌合凸部20として形成されていると共に下端部には嵌合凸部20が嵌合可能な嵌合凹部32が形成されている。そして、上記のようにして壁下地1に取り付けた側方外装材8の嵌合凸部20に上方外装材6の嵌合凹部32を嵌合した後、上方外装材6の嵌合凸部20の凹溝21の部分にドリルビスなどの固定具を打ち込むことにより、上方外装材6を壁下地1に取り付けることができる。ここで、建具3を挟んで両側に位置する二枚の側方外装材8、8の上端間にわたって、一枚の上方外装材6を配設することができる。また、建具3の上枠部材4の上方で二枚の上方外装材6、6を横方向に隣接させるように配設することもできる。そして、上枠部材4の上面と上方外装材6の下端との間に間隙を設けることにより、この間隙を上部排水路7として形成することができる。
【0025】
次に、建具3の枠体3aの下部の屋外側において建具水切り(サッシ水切り)34を取り付ける。建具水切り34は枠体3aと同様のアルミニウム等の金属の成型部材で形成することができ、図8に示すように、矩形板状のカバー部35とカバー部35の屋外側端部から下方に突出する流水部36とで断面略L字状に形成されている。また、カバー部35の屋内側端部から側端部にわたって上方に向かって突出するバックアップ部37が設けられている。そして、枠体3aの下部の屋外側において、カバー部35を水切り部材11の水受け片11aの上に載置すると共に流水部36を排水片11bの屋外側に配置するようにして、建具水切り34を配設することができる。この後、側枠部材5の下端とカバー部35との間の隙間及び枠体3aの下部とカバー部35との間の隙間を塞ぐように建具シーリング38を施す。
【0026】
次に、図9に示すように、上部枠4と上方外装材6との隙間、側枠部材5及び建具水切り34と側方外装材8との隙間、建具水切り34と下方外装材10との隙間を塞ぐようにして仕上げシーリング39を形成する。ここで、上部枠4と上方外装材6との隙間を仕上げシーリング39で閉塞する場合、上部排水路7が仕上げシーリング39で閉塞されないように、上部排水路7の屋外側において仕上げシーリング39を上部枠4の上面と上方外装材6の表面側下端との間に充填する。また、側枠部材5と側方外装材8との隙間を仕上げシーリング39で閉塞する場合、側方外装材8の目地片33の屋外側に仕上げシーリング39を充填する。また、建具水切り34と側方外装材8との隙間を仕上げシーリング39で閉塞する場合、側部排水路9が仕上げシーリング39で閉塞されないように、側部排水路9の屋外側において仕上げシーリング39を側方外装材8の下部側端面と建具水切り34の側端面との間に充填する。このようにして図1(a)(b)(c)に示すように、建具周囲の排水構造を形成することができる。
【0027】
本発明の排水構造では、一次止水の仕上げシーリング39が経時劣化などで破損した場合であっても、破損した部分から浸入した雨水は上部排水路7及び側部排水路9を通じて下部外装材10の屋外面へと排水することができ、上方外装材6や側方外装材8よりも屋内側に雨水が浸入するのを防止することができる。また、図10(a)(b)に示すように、建具3の上枠部材4の上方で二枚の上方外装材6、6を横方向に隣接させるように配設した場合、隣接する上方外装材6、6の目地片33、33同士が重なった状態となり、その屋外側において隣接する上方外装材6、6の側端面の間に縦目地40が形成され、その縦目地40に仕上げシーリング39が充填されることになる。また、重なった目地片33、33の屋外側において、隣接する上方外装材6、6の側端面の間には縦方向に長い空間が縦排水路42として形成されている。この縦排水路42の下端は上部排水路7と連通している。従って、縦目地40に充填された仕上げシーリング39が経時劣化などで破損した場合であっても、破損した部分から浸入した雨水は縦排水路42から上部排水路7及び側部排水路9を通じて下部外装材10の屋外面へと排水することができ、上方外装材6や側方外装材8よりも屋内側に雨水が浸入するのを防止することができる。尚、図10中の符号1cは上方外装材6を固定するために上側の横構造材1aに立設された柱材、符号43は柱材1cの屋外面に縦方向の全長にわたって取り付けた捨板、符号44は捨板43の屋外面に縦方向の全長にわたって貼着したテープ状のシーリング材である。また、図9、図10(a)に側部排水路9から下部外装材10の屋外面へと排水する雨水Wを部分イで示す。
【0028】
図11〜13に他の実施の形態を示す。この排水構造では、側部フラッシング材12aとして防水片13を一体に設けて断面略L字状に形成したものを用いている。防水片13は側部フラッシング材12aの一方の側部の全長にわたって屋外側に突出して折り曲げ形成されている。この側部フラッシング材12aは側枠部材5の側方に配設した場合に、側枠部材5の外側面(開口部2と反対側に側面)に沿って防水片13が配置されることになる。また、防水片13の上端は上枠部材4の上面位置にまで達し、防水片13の下端は水受け部11aの上面にまで達している。その他の構成は上記の実施の形態と同様である。
【0029】
この排水構造では、防水片13が設けられているために、上記の実施の形態のように、側部内周シーリング27を設けなくても、防水性を確保することができ、施工を簡素化することができる。
【0030】
図14〜16に他の実施の形態を示す。この排水構造では、金属製のフラッシング材12を用いずに、その代わりに、可撓性の防水テープ14でフラッシング材12を形成したものである。この防水テープ14は塩化ビニル樹脂などの合成樹脂で帯状に形成されるものである。そして、上記の実施の形態において、金属製の上部フラッシング材12bと側部フラッシング材12aを配設する代わりに、防水テープ14を貼り付けてフラッシング材12を形成する。この防水テープ14は側枠部材5の側枠取付片5aと上枠部材4の上枠取付片4aと水切り部材11の防水突片11cとの屋外側に配置されるが、側枠部材5の側面及び上枠部材4の上面に対して防水テープの側部を防水片13として折り曲げ形成して貼着している。その他の構成は上記の実施の形態と同様である。
【0031】
この排水構造では、フラッシング材12を防水テープ14で形成したので、上記の実施の形態のように、上部内周シーリング26や側部内周シーリング27を設けなくても、防水性を確保することとができ、施工を簡素化することができる。
【0032】
図17〜19に他の実施の形態を示す。この排水構造では、フラッシング材12を上枠部材4及び側枠部材5に一体に形成したものである。すなわち、上枠部材4には上枠取付片4aは形成されておらず、その代わりに、上部フラッシング材12bが上枠部材4と同一の材料で一体的に形成されている。また、側枠部材5には側枠取付片5aは形成されておらず、その代わりに、側部フラッシング材12aが側枠部材5と同一の材料で一体的に形成されている。そして、上部フラッシング材12bと側部フラッシング材12aを壁下地1に固定することができる。また、水切り部材11の防水突片11cは側部フラッシング材12aと壁下地1の縦構造材1bとの間に差し込むようにして配置される。その他の構成は上記の実施の形態と同様である。
【0033】
この排水構造では、フラッシング材12を上枠部材4及び側枠部材5に一体に形成したものであるために、上記の実施の形態のように、上部内周シーリング26や側部内周シーリング27を設けなくても、防水性を確保することができ、施工を簡素化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施の形態の一例を示し、(a)は上部の縦断面図、(b)は横断面図、(c)は下部の縦断面図である。
【図2】同上の施工途中を示し、(a)は斜視図、(b)は断面図である。
【図3】同上の施工途中を示し、(a)は斜視図、(b)は断面図である。
【図4】同上の水切り部材を示す斜視図である。
【図5】同上の施工途中を示し、(a)は斜視図、(b)は断面図である。
【図6】同上の施工途中を示し、(a)は斜視図、(b)は断面図である。
【図7】同上の施工途中を示す斜視図である。
【図8】同上の建具水切りを示す斜視図である。
【図9】同上の斜視図である。
【図10】同上の他の実施の形態の一例を示し、(a)は斜視図、(b)は断面図である。
【図11】同上の他の実施の形態を示し、施工途中の斜視図である。
【図12】同上の他の実施の形態を示し、施工途中の斜視図である。
【図13】同上の他の実施の形態を示す一部の横断面図である。
【図14】同上の他の実施の形態を示し、施工途中の斜視図である。
【図15】同上の他の実施の形態を示し、施工途中の斜視図である。
【図16】同上の他の実施の形態を示す一部の横断面図である。
【図17】同上の他の実施の形態を示し、施工途中の斜視図である。
【図18】同上の他の実施の形態を示し、施工途中の斜視図である。
【図19】同上の他の実施の形態を示す一部の横断面図である。
【図20】従来例を示す正面図である。
【符号の説明】
【0035】
1 壁下地
2 開口部
3 建具
4 上枠部材
5 側枠部材
6 上方外装材
7 上部排水路
8 側方外装材
9 側部排水路
10 下方外装材
11 水切り部材
12 フラッシング材
13 防水片
14 防水テープ
【技術分野】
【0001】
本発明は、サッシなどの建具の周囲における排水構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図20にビルなどの建物の外壁50を示す。この外壁50は複数枚の外装材51、51…を縦横に並べて形成されており、外壁50の一部に設けた開口部にはサッシなどの建具52が嵌め込まれている。また、縦横に隣接する外装材51、51は突き合わせ又は嵌合等により接続されており、横方向で隣接する外装材51、51の間には縦目地53が形成されている。この縦目地53には防水性のためにシーリング材などが充填されている。このような外壁50にあっては、経時劣化などによりシーリング材が破れて縦目地53に雨水が浸入することがあるが、この場合、雨水は縦目地53の屋内側にある空間を排水路として排水するようになっている。
【0003】
しかし、縦目地53が建具52の上側に形成されている場合、排水路の下端が建具52の上面で開放されているために、排水路を流れ落ちた雨水は行き場を失って建具52の上側に溜まったり外装材51の内部に侵入したりしていた。従って、建具52や外装材51の劣化が早まるという問題があった。
【0004】
そこで、例えば、特許文献1では、建具の上側に雨水を溜めた後、上横枠や縦枠を通じて排水するようにしているが、この場合、雨水を溜めることでスムーズに排水することができないおそれがあり、また、排水のために中空などの複雑な形状の上横枠や縦枠を用いなければならず、コストアップにつながるという問題があった。
【特許文献1】特開平8−21162号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、排水のために複雑な形状の部材を用いることなく、建具の周囲から雨水をスムーズに排水することができる建具周囲の排水構造を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1に係る建具周囲の排水構造は、壁下地1の開口部2の内周に枠状の建具3を取り付け、建具3の上部に上枠部材4を、建具3の側部に側枠部材5をそれぞれ開口部2よりも屋外側に突出して設け、上枠部材4の上方に一定の間隙を介して上方外装材6を配設することによって、上枠部材4と上方外装材6との間に上部排水路7を形成し、側枠部材5の側方に一定の間隙を介して側方外装材8を配設することによって、側枠部材5と側方外装材8との間に側部排水路9を上部排水路7と連通させて形成し、側枠部材5の下方に下方外装材10を配設し、側部排水路9の下端から下方外装材10までの間に水切り部材11を設けて成ることを特徴とするものである。
【0007】
本発明の請求項2に係る建具周囲の排水構造は、請求項1において、フラッシング材12を上枠部材4の上方から側枠部材5の側方にわたって配設し、フラッシング材12の屋外側に上部排水路7と側部排水路9とを形成して成ることを特徴とするものである。
【0008】
本発明の請求項3に係る建具周囲の排水構造は、請求項2において、フラッシング材12に設けた防水片13を側枠部材5の側面に沿って配置して成ることを特徴とするものである。
【0009】
本発明の請求項4に係る建具周囲の排水構造は、請求項2又は3において、フラッシング材12を防水テープ14で形成して成ることを特徴とするものである。
【0010】
本発明の請求項5に係る建具周囲の排水構造は、請求項2又は3において、フラッシング材12を上枠部材4及び側枠部材5に一体に形成して成ることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明では、上枠部材4の上方に上部排水路7を形成すると共に側枠部材5の側方に側部排水路9を形成するので、排水路を確保するために複雑な形状の部材を用いる必要が無く、しかも、上部排水路7に雨水を溜めることなく側部排水路9へと流下させることができ、建具の周囲から雨水をスムーズに排水することができるものである。
【0012】
請求項2の発明では、フラッシング材12により、上枠部材4及び側枠部材5と壁下地1との隙間を塞ぐことができ、防水性を高めることができるものである。
【0013】
請求項3の発明では、フラッシング材12に設けた防水片13により、側枠部材5と壁下地1との隙間を塞ぐことができ、防水性をさらに高めることができるものである。
【0014】
請求項4の発明では、防水テープ14により、上枠部材4及び側枠部材5と壁下地1との隙間を塞ぐことができ、防水性を高めることができるものである。
【0015】
請求項5の発明では、フラッシング材12と上枠部材4及び側枠部材5との隙間を生じないようにすることができ、防水性をさらに高めることができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0017】
本発明では、まず、図2(a)(b)に示すように、壁下地1の開口部2にサッシ等の建具3を嵌め込んで取り付ける。壁下地1は鉄骨などの構造材を組み合わせて形成することができ、図2(a)のものでは、上下に対向配置された二本の横構造材1a、1aの間に二本の縦構造材1b、1bを架け渡すことにより、横構造材1a、1aと縦構造材1b、1bとで囲まれる空間を開口部2とすることができる。建具3は四角枠状の枠体3aの内側に引き戸等の開閉体3bを一体に取り付けて形成されるものである。尚、図2(a)、図3(a)、図5(a)、図6(a)、図7、図9(a)、図10(a)、図11、図12、図14、図15、図17、図18においては開閉体3bの図示を省略している。
【0018】
上記の建具3の枠体3aには横長の上枠部材4と縦長の側枠部材5とが設けられている。上枠部材4と側枠部材5は枠体3aと同様にアルミニウム等の金属の成型部材で形成することができる。上枠部材4は枠体3aの上部(上枠)の屋外側に横方向の略全長にわたって取り付け、側枠部材5は枠体3aの両方の側部(側枠)の屋外側に縦方向に長く取り付ける。そして、建具3を開口部2の内周に取り付けると、上枠部材4及び側枠部材5は開口部2よりも屋外側に突出して配置される。また、上枠部材4は開口部2の上方開口縁部に沿ってその略全長にわたって配置され、側枠部材5は開口部2の両方の側方開口縁部に沿ってその略全長にわたって配置される。また、上枠部材4には上方に突出する上枠取付片4aが設けられており、上枠取付片4aは横構造材1aの屋外面にビス等で固定される。また、側枠部材5には側方(開口部2と反対側の外方)に向かって突出する側枠取付片5aが設けられており、側枠取付片5aは縦構造材1bの屋外面にビス等で固定される。
【0019】
上記のようにして建具3を取り付けた後、下方外装材10を壁下地1に取り付ける。下方外装材10は外壁材であって、例えば、二枚の金属外皮の間に断熱材を充填して形成される板状の断熱パネル(サンドイッチパネル)などを用いることができる。下方外装材10の上部は嵌合凸部20として形成されており、嵌合凸部20の屋外側面には横方向に長い凹溝21が形成されている。そして、凹溝21の部分にドリルビスなどの固定具45を打ち込むことにより、下方外装材10を壁下地1に取り付けることができる。このとき、嵌合凸部20の上端面と側枠部材5の下端との間には隙間22を設けるようにする。
【0020】
上記のようにして下方外装材10を取り付けた後、図3(a)(b)に示すように、水切り部材11を取り付ける。水切り部材11はカラー鋼板などの金属板を折り曲げ加工などして形成されるものであって、図4に示すように、矩形板状の水受け部11aと、水受け部11aの屋外側端部から下方に向かって突出する排水片11bと、水受け部11aの両側端部の屋内側端部に上方に向かって突設される二つの防水突片11c、11cと、防水突片11c、11cの間において水受け部11aの屋内側端部に沿って立設される立ち上げ片11eと、立ち上げ片11eに貼着されるシーリングテープ11dとを備えて形成されている。そして、水切り部材11を上記の隙間22に屋外側から差し入れ、水受け部11aを下方外装材10の嵌合凸部20の上面に載置すると共に排水片11bを下方外装材10の嵌合凸部20の屋外面に沿わせて配置する。また、防水突片11cは側枠部材5の側方(開口部2と反対側の外方)に配置され、側枠取付片5aの下部の屋外側に重ねられる。防水突片11cは側枠部材5の外側面(開口部2と反対側の面)から縦構造材1bの屋外面を覆い、さらに縦構造材1bの側方(開口部2と反対側)にまで突出するような幅寸法に形成されている。
【0021】
上記のようにして水切り部材11を配設した後、図5(a)(b)に示すように、フラッシング材12を取り付ける。フラッシング材12はカラー鋼板などの金属板で矩形板状に形成されるものである。また、フラッシング材12の幅寸法(短手方向の幅寸法)は、上枠取付片4a及び側枠取付片5aの幅寸法(短手方向の幅寸法)よりも広く、防水突片11cの幅寸法よりも狭く形成されている。そして、まず、側枠部材5の側方(開口部2と反対側)において縦方向に長い側部フラッシング材12aを配設する。この側部フラッシング材12aの下端部は水受け片11aの上面に当接すると共に側部フラッシング材12aの上端部は上枠部材4よりも上側に突出して配置される。また、側部フラッシング材12aは防水突片11c及び側枠取付片5aの屋外側に重ねて取り付けられる。この後、上枠部材4の上方において横方向に長い上部フラッシング材12bを配設する。この上部フラッシング材12bの両側端部は、側部フラッシング材12aの上端部の屋外側に重ねられる。また、上部フラッシング材12bは上枠取付片4aの屋外側に重ねて取り付けられる。
【0022】
上記のようにしてフラッシング材12を取り付けた後、図6(a)(b)に示すように、シーリングを施す。このシーリングとしては、上部フラッシング材12bと上枠部材4との隙間を閉塞する上部内周シーリング26と、側部フラッシング材12aと側枠部材5との隙間を閉塞する側部内周シーリング27と、上部フラッシング材12bの上部にその長辺に沿って配設されるテープ状の上部外周シーリング28と、側部フラッシング材12aの側部(側枠部材5と反対側の側部)にその長辺に沿って配設されるテープ状の側部外周シーリング29とで構成することができる。上部内周シーリング26と側部内周シーリング27は、フラッシング材12と上枠部材4及び側枠部材5との隙間の全長に沿って不定形のシーリング材を打つことにより形成することができる。また、上部外周シーリング28と側部外周シーリング29はシーリングテープをフラッシング材12の全長にわたって貼着することにより形成することができる。そして、上部フラッシング材12bの屋外側で上枠部材4の上側の空間が上部排水路7として形成される。また、側部内周シーリング27と側部外周シーリング29との間において、側部フラッシング部12aの屋外側の空間が側部排水路9として形成される。上部排水路7は横方向に長く、その両端部は側部排水路9の上端と連通している。また、側部排水路9は縦方向に長く、その上端は上部排水路7と連通しており、側部排水路9の下部は側部フラッシング材12aの下端から水切り部材11の水受け部11aの上面及び排水片11bの屋外面に至るまで形成されている。点線Wは上部排水路7と側部排水路9とを流れる雨水を示す。尚、側部フラッシング材12aの側方(側枠部材5と反対側の側方)において、水切り部材11には堰止めシーリング30が設けられている。堰止めシーリング30はシーリングテープを防水突片11cの屋外面から水受け片11aの上面にわたって貼り付けて形成することができる。また、側枠部材5の上端面と上枠部材4の下面との間には不定形のシーリング材31を充填する。
【0023】
上記のようにしてシーリングした後、図7に示すように、側枠部材5の側方(開口部2と反対側の側方)に側方外装材8を取り付ける。側方外装材8は下方外装材10と同様の断熱パネル(サンドイッチパネル)であって、その上端部は嵌合凸部20として形成されていると共に下端部には嵌合凸部20が嵌合可能な嵌合凹部32が形成されている。また、側方外装材8の側端面には縦方向の略全長にわたって目地片33が突設されている。この目地片33は側方外装材8の屋外側金属外皮の側端部を折り曲げるなどして形成することができる。そして、上記のようにして壁下地1に取り付けた下方外装材10の嵌合凸部20に側方外装材8の嵌合凹部32を嵌合した後、側方外装材8の嵌合凸部20の凹溝21の部分にドリルビスなどの固定具を打ち込むことにより、側方外装材8を壁下地1に取り付けることができる。このようにして取り付けた側方外装材8の目地片33の先端は側枠部材5の外側面(開口部2と反対側の側面)に当接又はほとんど隙間無く近接させる。これにより、側枠部材5の側方に目地片33の幅寸法分の間隙を介して側方外装材8の側端面が位置することになり、目地片33の屋内側において、側枠部材5の外側面と側方外装材8の側端面との間に側部排水路9が形成される。また、この側方外装材8の嵌合凸部20は上枠部材4よりも少し上側に突出した状態となる。
【0024】
次に、側方外装材8の上側及び上枠部材4の上側に上方外装材6を配設する。上方外装材6は側方外装材8や下方外装材10と同様の断熱パネル(サンドイッチパネル)であって、その上端部は嵌合凸部20として形成されていると共に下端部には嵌合凸部20が嵌合可能な嵌合凹部32が形成されている。そして、上記のようにして壁下地1に取り付けた側方外装材8の嵌合凸部20に上方外装材6の嵌合凹部32を嵌合した後、上方外装材6の嵌合凸部20の凹溝21の部分にドリルビスなどの固定具を打ち込むことにより、上方外装材6を壁下地1に取り付けることができる。ここで、建具3を挟んで両側に位置する二枚の側方外装材8、8の上端間にわたって、一枚の上方外装材6を配設することができる。また、建具3の上枠部材4の上方で二枚の上方外装材6、6を横方向に隣接させるように配設することもできる。そして、上枠部材4の上面と上方外装材6の下端との間に間隙を設けることにより、この間隙を上部排水路7として形成することができる。
【0025】
次に、建具3の枠体3aの下部の屋外側において建具水切り(サッシ水切り)34を取り付ける。建具水切り34は枠体3aと同様のアルミニウム等の金属の成型部材で形成することができ、図8に示すように、矩形板状のカバー部35とカバー部35の屋外側端部から下方に突出する流水部36とで断面略L字状に形成されている。また、カバー部35の屋内側端部から側端部にわたって上方に向かって突出するバックアップ部37が設けられている。そして、枠体3aの下部の屋外側において、カバー部35を水切り部材11の水受け片11aの上に載置すると共に流水部36を排水片11bの屋外側に配置するようにして、建具水切り34を配設することができる。この後、側枠部材5の下端とカバー部35との間の隙間及び枠体3aの下部とカバー部35との間の隙間を塞ぐように建具シーリング38を施す。
【0026】
次に、図9に示すように、上部枠4と上方外装材6との隙間、側枠部材5及び建具水切り34と側方外装材8との隙間、建具水切り34と下方外装材10との隙間を塞ぐようにして仕上げシーリング39を形成する。ここで、上部枠4と上方外装材6との隙間を仕上げシーリング39で閉塞する場合、上部排水路7が仕上げシーリング39で閉塞されないように、上部排水路7の屋外側において仕上げシーリング39を上部枠4の上面と上方外装材6の表面側下端との間に充填する。また、側枠部材5と側方外装材8との隙間を仕上げシーリング39で閉塞する場合、側方外装材8の目地片33の屋外側に仕上げシーリング39を充填する。また、建具水切り34と側方外装材8との隙間を仕上げシーリング39で閉塞する場合、側部排水路9が仕上げシーリング39で閉塞されないように、側部排水路9の屋外側において仕上げシーリング39を側方外装材8の下部側端面と建具水切り34の側端面との間に充填する。このようにして図1(a)(b)(c)に示すように、建具周囲の排水構造を形成することができる。
【0027】
本発明の排水構造では、一次止水の仕上げシーリング39が経時劣化などで破損した場合であっても、破損した部分から浸入した雨水は上部排水路7及び側部排水路9を通じて下部外装材10の屋外面へと排水することができ、上方外装材6や側方外装材8よりも屋内側に雨水が浸入するのを防止することができる。また、図10(a)(b)に示すように、建具3の上枠部材4の上方で二枚の上方外装材6、6を横方向に隣接させるように配設した場合、隣接する上方外装材6、6の目地片33、33同士が重なった状態となり、その屋外側において隣接する上方外装材6、6の側端面の間に縦目地40が形成され、その縦目地40に仕上げシーリング39が充填されることになる。また、重なった目地片33、33の屋外側において、隣接する上方外装材6、6の側端面の間には縦方向に長い空間が縦排水路42として形成されている。この縦排水路42の下端は上部排水路7と連通している。従って、縦目地40に充填された仕上げシーリング39が経時劣化などで破損した場合であっても、破損した部分から浸入した雨水は縦排水路42から上部排水路7及び側部排水路9を通じて下部外装材10の屋外面へと排水することができ、上方外装材6や側方外装材8よりも屋内側に雨水が浸入するのを防止することができる。尚、図10中の符号1cは上方外装材6を固定するために上側の横構造材1aに立設された柱材、符号43は柱材1cの屋外面に縦方向の全長にわたって取り付けた捨板、符号44は捨板43の屋外面に縦方向の全長にわたって貼着したテープ状のシーリング材である。また、図9、図10(a)に側部排水路9から下部外装材10の屋外面へと排水する雨水Wを部分イで示す。
【0028】
図11〜13に他の実施の形態を示す。この排水構造では、側部フラッシング材12aとして防水片13を一体に設けて断面略L字状に形成したものを用いている。防水片13は側部フラッシング材12aの一方の側部の全長にわたって屋外側に突出して折り曲げ形成されている。この側部フラッシング材12aは側枠部材5の側方に配設した場合に、側枠部材5の外側面(開口部2と反対側に側面)に沿って防水片13が配置されることになる。また、防水片13の上端は上枠部材4の上面位置にまで達し、防水片13の下端は水受け部11aの上面にまで達している。その他の構成は上記の実施の形態と同様である。
【0029】
この排水構造では、防水片13が設けられているために、上記の実施の形態のように、側部内周シーリング27を設けなくても、防水性を確保することができ、施工を簡素化することができる。
【0030】
図14〜16に他の実施の形態を示す。この排水構造では、金属製のフラッシング材12を用いずに、その代わりに、可撓性の防水テープ14でフラッシング材12を形成したものである。この防水テープ14は塩化ビニル樹脂などの合成樹脂で帯状に形成されるものである。そして、上記の実施の形態において、金属製の上部フラッシング材12bと側部フラッシング材12aを配設する代わりに、防水テープ14を貼り付けてフラッシング材12を形成する。この防水テープ14は側枠部材5の側枠取付片5aと上枠部材4の上枠取付片4aと水切り部材11の防水突片11cとの屋外側に配置されるが、側枠部材5の側面及び上枠部材4の上面に対して防水テープの側部を防水片13として折り曲げ形成して貼着している。その他の構成は上記の実施の形態と同様である。
【0031】
この排水構造では、フラッシング材12を防水テープ14で形成したので、上記の実施の形態のように、上部内周シーリング26や側部内周シーリング27を設けなくても、防水性を確保することとができ、施工を簡素化することができる。
【0032】
図17〜19に他の実施の形態を示す。この排水構造では、フラッシング材12を上枠部材4及び側枠部材5に一体に形成したものである。すなわち、上枠部材4には上枠取付片4aは形成されておらず、その代わりに、上部フラッシング材12bが上枠部材4と同一の材料で一体的に形成されている。また、側枠部材5には側枠取付片5aは形成されておらず、その代わりに、側部フラッシング材12aが側枠部材5と同一の材料で一体的に形成されている。そして、上部フラッシング材12bと側部フラッシング材12aを壁下地1に固定することができる。また、水切り部材11の防水突片11cは側部フラッシング材12aと壁下地1の縦構造材1bとの間に差し込むようにして配置される。その他の構成は上記の実施の形態と同様である。
【0033】
この排水構造では、フラッシング材12を上枠部材4及び側枠部材5に一体に形成したものであるために、上記の実施の形態のように、上部内周シーリング26や側部内周シーリング27を設けなくても、防水性を確保することができ、施工を簡素化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施の形態の一例を示し、(a)は上部の縦断面図、(b)は横断面図、(c)は下部の縦断面図である。
【図2】同上の施工途中を示し、(a)は斜視図、(b)は断面図である。
【図3】同上の施工途中を示し、(a)は斜視図、(b)は断面図である。
【図4】同上の水切り部材を示す斜視図である。
【図5】同上の施工途中を示し、(a)は斜視図、(b)は断面図である。
【図6】同上の施工途中を示し、(a)は斜視図、(b)は断面図である。
【図7】同上の施工途中を示す斜視図である。
【図8】同上の建具水切りを示す斜視図である。
【図9】同上の斜視図である。
【図10】同上の他の実施の形態の一例を示し、(a)は斜視図、(b)は断面図である。
【図11】同上の他の実施の形態を示し、施工途中の斜視図である。
【図12】同上の他の実施の形態を示し、施工途中の斜視図である。
【図13】同上の他の実施の形態を示す一部の横断面図である。
【図14】同上の他の実施の形態を示し、施工途中の斜視図である。
【図15】同上の他の実施の形態を示し、施工途中の斜視図である。
【図16】同上の他の実施の形態を示す一部の横断面図である。
【図17】同上の他の実施の形態を示し、施工途中の斜視図である。
【図18】同上の他の実施の形態を示し、施工途中の斜視図である。
【図19】同上の他の実施の形態を示す一部の横断面図である。
【図20】従来例を示す正面図である。
【符号の説明】
【0035】
1 壁下地
2 開口部
3 建具
4 上枠部材
5 側枠部材
6 上方外装材
7 上部排水路
8 側方外装材
9 側部排水路
10 下方外装材
11 水切り部材
12 フラッシング材
13 防水片
14 防水テープ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁下地の開口部の内周に枠状の建具を取り付け、建具の上部に上枠部材を、建具の側部に側枠部材をそれぞれ開口部よりも屋外側に突出して設け、上枠部材の上方に一定の間隙を介して上方外装材を配設することによって、上枠部材と上方外装材との間に上部排水路を形成し、側枠部材の側方に一定の間隙を介して側方外装材を配設することによって、側枠部材と側方外装材との間に側部排水路を上部排水路と連通させて形成し、側枠部材の下方に下方外装材を配設し、側部排水路の下端から下方外装材までの間に水切り部材を設けて成ることを特徴とする建具周囲の排水構造。
【請求項2】
フラッシング材を上枠部材の上方から側枠部材の側方にわたって配設し、フラッシング材の屋外側に上部排水路と側部排水路とを形成して成ることを特徴とする請求項1に記載の建具周囲の排水構造。
【請求項3】
フラッシング材に設けた防水片を側枠部材の側面に沿って配置して成ることを特徴とする請求項2に記載の建具周囲の排水構造。
【請求項4】
フラッシング材を防水テープで形成して成ることを特徴とする請求項2又は3に記載の建具周囲の排水構造。
【請求項5】
フラッシング材を上枠部材及び側枠部材に一体に形成して成ることを特徴とする請求項2又は3に記載の建具周囲の排水構造。
【請求項1】
壁下地の開口部の内周に枠状の建具を取り付け、建具の上部に上枠部材を、建具の側部に側枠部材をそれぞれ開口部よりも屋外側に突出して設け、上枠部材の上方に一定の間隙を介して上方外装材を配設することによって、上枠部材と上方外装材との間に上部排水路を形成し、側枠部材の側方に一定の間隙を介して側方外装材を配設することによって、側枠部材と側方外装材との間に側部排水路を上部排水路と連通させて形成し、側枠部材の下方に下方外装材を配設し、側部排水路の下端から下方外装材までの間に水切り部材を設けて成ることを特徴とする建具周囲の排水構造。
【請求項2】
フラッシング材を上枠部材の上方から側枠部材の側方にわたって配設し、フラッシング材の屋外側に上部排水路と側部排水路とを形成して成ることを特徴とする請求項1に記載の建具周囲の排水構造。
【請求項3】
フラッシング材に設けた防水片を側枠部材の側面に沿って配置して成ることを特徴とする請求項2に記載の建具周囲の排水構造。
【請求項4】
フラッシング材を防水テープで形成して成ることを特徴とする請求項2又は3に記載の建具周囲の排水構造。
【請求項5】
フラッシング材を上枠部材及び側枠部材に一体に形成して成ることを特徴とする請求項2又は3に記載の建具周囲の排水構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
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【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2009−19366(P2009−19366A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−181199(P2007−181199)
【出願日】平成19年7月10日(2007.7.10)
【出願人】(000207436)日鉄住金鋼板株式会社 (178)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年7月10日(2007.7.10)
【出願人】(000207436)日鉄住金鋼板株式会社 (178)
【Fターム(参考)】
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