説明

建具

【課題】下のガイドレールのレール溝に人の足指などがはまり込みづらいし、つまずきにくく、そのレール溝内を清掃し易く、しかもパネル体を小さな圧力で移動できる建具とする。
【解決手段】パネル体1の下部を下のガイドレール3でガイドした建具であって、前記下のガイドレール3は、段部12を境として底面側部分3a―1と当該底面側部分3a−1よりも溝幅Hが小さい開口側部分3a−2を有するほぼ上向きコ字形状のレール溝3aを有し、その開口側部分3a−1で前記パネル体1の下部のガイド部をガイドし、前記底面側部分3a―1に溝閉塞部材20を設け、この溝閉塞部材20の上部21の幅Hを前記底面側部分3a−1の溝幅Hよりも小さく、かつ前記開口側部分3a−2の溝幅Hよりも大きくし、この溝閉塞部材20の上面20aをレール溝3aの実質的な底面として溝の深さを浅くできると共に、ゴミ等が溝閉塞部材20の上面20aに溜まるようにした建具。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の室内間仕切り等として用いる建具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から種々の建具が知られている。例えば、特許文献1に開示された吊り戸が知られている。
この吊り戸は、戸の上部に設けたローラを天井側に設けた上のガイドレールに接することで、その戸の上部を上のガイドレールに沿って移動自在に吊り下げ支持し、前記戸の下部に設けた振れ止め部材を床部に設けた下のガイドレールのレール溝内に挿入して戸の下部が大きく振れ動かないように振れ止めしている。
【0003】
【特許文献1】実公平5−23735号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述した従来の吊り戸に用いる下のガイドレールのレール溝は上向きコ字形状で、そのレール溝の底面を床部の床材取付部(例えば根太)に固着具で固着して取付けるので、そのレール溝の溝深さは床材の厚さに相当する程度に深いものである。
このように、レール溝が深いので人の足指などがレール溝内にはまり込み易く、つまずき易い。また、レール溝内の掃除が困難である。
【0005】
前述のことを解消するために、前述した従来の吊り戸においては、下のガイドレールの開口部の両側を一対の突縁で若干閉塞し、そのレール溝内に弾性体とカバー体を設け、そのカバー体を前記突縁に接して開口部を閉塞し、戸の下部に設けた振れ止め部材がカバー体を押し下げてレール溝内に挿入するようにしている。
【0006】
このようにすれば、人の足指などがレール溝内にはまり込むことがないし、つまづくこともなく、レール溝内の清掃も容易である。
しかし、振れ止め部材がカバー体を押し下げるので、振れ止め部材とカバー体の摺動抵抗が大きく、戸を移動するのに大きな力が必要となる。
【0007】
本発明の目的は、人の足指などが下のガイドレールのレール溝内にはまり込みづらいし、つまずきにくく、レール溝内を清掃し易く、パネル体を小さな力で移動することが可能である建具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、パネル体の下部を下のガイドレールでガイドした建具であって、
前記下のガイドレールは、段部を境として底面側部分と当該底面側部分よりも溝幅の小さい開口側部分を有する略上向きコ字形状のレール溝を有し、
前記開口側部分で前記パネル体の下部のガイド部をガイドし、
前記下のガイドレールのレール溝における底面側部分内に溝閉塞部材が設けてあり、
前記溝閉塞部材の上部の幅は、前記底面側部分の溝幅よりも小さく、かつ前記開口側部分の溝幅よりも大きいことを特徴とする建具である。
【0009】
本発明においては、溝閉塞部材の上部の上面は上向き凹形状とすることができる。
このようにすることで、溝閉塞部材の上面にゴミ等が溜まり易い。
【0010】
本発明においては、溝閉塞部材は、上部の内、少なくとも幅方向両側部分が下部の材質よりも弾性変形し易い材質とすることができる。
このようにすれば、溝閉塞部材をレール溝の底面側部分に簡単に押し込んで設けることができると共に、レール溝から簡単に引き出して取り外しできる。
【0011】
本発明においては、下のガイドレールは、そのレール溝の底面から固着具で固着して取付けられ、
溝閉塞部材の下部は一対の脚部を有し、その一対の脚部がレール溝の底面に固着具の頭部と干渉しないように接するようにできる。
このようにすれば、一対の脚部をレール溝の底面に、固着具の頭部と干渉しないように接して設けることができるので、溝閉塞部材を安定して設けることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、下のガイドレールのレール溝の底面側部分に設けた溝閉塞部材の上面がレール溝の実質的な底面となるので、ガイドレールのレール溝の実質的な深さが浅くなる。
したがって、人の足指などが下のガイドレールのレール溝内にはまり込みづらいし、つまずきにくい。
また、開口側部分から入り込んだゴミ等は溝閉塞部材の上面に溜まり、底面側部分から底面までに入り込むことがないので、レール溝内を清掃し易い。
また、パネル体を小さな力で移動することが可能である。
【0013】
また、溝閉塞部材の上部の幅方向両側部分がレール溝の底面側部分の左右の側面に接することがないので、レール溝内に設けられた状態において溝閉塞部材の上部が変形することがなく、溝閉塞部材はレール溝内で所定の形状を維持するから、前述した機能を損なうことがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1に示すように、戸、障子などのパネル体1の上部を、天井側等に取付けた上のガイドレール2に沿って移動自在に吊り下げ支持し、そのパネル体1の下部を床等に取付けた下のガイドレール3で振れ止めしながらガイドして吊り戸タイプの建具としてある。
例えば、図2に示すようにパネル体1の上部にローラ4を取付け、このローラ4を上のガイドレール2に接して移動自在に吊り下げ支持し、前記パネル体1の下部にガイド部としての振れ止め部材5を取付け、この振れ止め部材5を下のガイドレール3のレール溝内に挿入して振れ止めしながらガイドし、パネル体1を上下のガイドレール2,3に沿って直線状に移動自在とする。
なお、パネル体1を折り畳み自在とした折れ戸タイプの吊り戸でも良い。
【0015】
前記下のガイドレール3は図3に示すように床部6の床材取付部6aに固着具7で固着して取付けられ、そのガイドレール3のレール溝3aの溝深さは床部材6bの厚さに相当する程度に深い。
前記下のガイドレール3のレール溝3aは、図3に示すように左右の側面10,10と底面11で上向きコ字形状で、その左右の側面10間の寸法、つまりレール溝3aの溝幅は、図4に示すように上下中間部を境として下部寄りの溝幅Hが上部寄りの溝幅Hよりも大きく、その境目部分には下向きの段部12を有している。
つまり、レール溝3aは下向きの段部12を境として溝幅Hが大きい底面側部分3a−1と溝幅Hが小さい(H>H)開口側部分3a―2を有する段付き形状である。
【0016】
前記下のガイドレール3のレール溝3aにおける底面側部分3a−1内には溝閉塞部材20が設けてある。
この溝閉塞部材20の上部21の幅Hは、図4に示すように前記開口側部分3a−2の溝幅Hよりも大きく、底面側部分3a−1の溝幅Hよりも小さく、その上部21の幅方向両側部分22はレール溝3aの段部12の下方に位置している。
前記溝閉塞部材20の上部21における幅方向両側部分22は下部23の幅方向両側面23aよりも幅方向側方に突出し、この下部23の幅Hは上部21の幅Hよりも小さく、かつレール溝3aの開口側部分3a―2の溝幅Hよりも小さい。
【0017】
これによって、溝閉塞部材20の上面20aがレール溝3aの実質的な底面となるので、レール溝3aの実質的な深さは開口側溝分3a−2の開口縁端面から溝閉塞部材20の上面20aまでで浅くなる。
したがって、人の足指などが下のガイドレール3のレール溝3a内にはまり込みづらいし、つまづきにくい。
【0018】
また、レール溝3aの開口部(開口側部分3a−2)から入り込んだゴミ等は溝閉塞部材20の上面20aに溜まり、レール溝3aの底面11まで入り込むことがないので、レール溝3a内を清掃し易い。
また、下のガイドレール3内に溝閉塞部材20を設けただけで、部品点数が少なくコストが安いし、組立も容易である。
また、パネル体1の振れ止め部材5はレール溝3aの開口側部分3a−2内に挿入して溝閉塞部材20の上面20aと対向すれば良く、その上面20aに押しつける必要がないので、パネル体1を小さな力で移動することが可能である。
【0019】
また、溝閉塞部材20の上部21の幅方向両側部分22、下部23の幅方向両側面23aがレール溝3aの底面側部分3a−1の左右の側面10に接することがないので、溝閉塞部材20が変形することがなく、溝閉塞部材20はレール溝3a内で変形することがなく、その溝閉塞部材20はレール溝3a内で所定の形状を維持するから、前述した機能を損なうことがない。
【0020】
次に、前記下のガイドレール3の具体形状を説明する。
図4に示すように、一対の縦片13,13の下部を連結片14で一体的に連結すると共に、その一対の縦片13の上部にフランジ15を一体的に設けた断面形状で、図3に示すように連結片14を固着具7で床材取付部6aに固着し、各フランジ15を床材6bに押しつけて取付けてある。
なお、下のガイドレール3の開口側部分3a―2は下から上まで同一溝幅であるが、下部よりも上部の溝幅が広い形状であっても良い。
【0021】
次に、前記溝閉塞部材20の具体形状を説明する。
図4に示すように、溝閉塞部材20の上面20aは上向き凹形状である。例えば、幅方向中央部が低く、幅方向両側に向かうにつれて順次高くなった凹面形状である。
このようにすることで、溝閉塞部材20の上面20aにゴミ等が溜まり易い。
【0022】
また、閉塞部材20は、上部21の内、少なくとも幅方向両側部分22が下部23の材質よりも弾性変形し易い材質からなっている。
このようであるから、溝閉塞部材20を下のガイドレール3のレール溝3a内に押し込む時に前述の幅方向両側部分22が弾性変形するので、押し込みし易い。
また、図5に示すように溝閉塞部材20をレール溝3a内に設けた状態から、その溝閉塞部材20を長手方向一端部を持ち上げ、図6に示すように長手方向に順次引き上げるようにして取り外しできる。
また、下部23は弾性変形し難い材質であるから、人が踏みつけた時などに溝閉塞部材20全体がたわみ変形し難い。
【0023】
前記溝閉塞部材20の下部23は、一対の脚片24,24で形成され、この一対の脚片24と上部21で断面ほぼ下向きハ字形状としてある。
このようであるから、図3に示すように一対の脚片24を固着具7の頭部7aと干渉しないように底面11に接することができ、溝閉塞部材20を安定して支持できる。
また、一対の脚片24,24は、下方に向かって広がるハ字形状に形成されているため、レール溝3a内において転ばずに安定した状態で設けることができる。
【0024】
この実施の形態では、溝閉塞部材20の上部21の幅方向両側部分22の厚さ(上下寸法)を上部21の中央付近の厚さに比べて小さくしてより弾性変形し易くしてある。
さらに、幅方向両側部分22の下面を斜面状にしているため、溝閉塞部材20をレール溝3a内に押し込み易い。
また、下部23よりも突出した幅方向両側部分22のみを弾性変形し易い材質で作製することが困難であるので、上部21を幅方向両側部分22を有する上方部分(図4で斜線部分)と下方部分とから形成し、その上方部分を弾性変形し易い材質で作製するようにした。
このようにすることで、溝閉塞部材20を弾性変形し易い軟質樹脂と弾性変形し難い硬質樹脂を用いて2色成形によって容易に成形できると共に、下部23の一対の脚片24,24が上部21の弾性変形し難い下方部分に一体的に形成されているため、一対の脚片24,24を安定した状態でレール溝3a内に設けることができる。
また、上方部分を摺動抵抗の小さい材質で作製することで、振れ止め部材5が仮に上部21の上面に摺接するようなことがあっても、摺動抵抗を小さくすることができる。
前述の軟質樹脂としては、熱可塑性エラストマーなどが用いられる。
前述の硬質樹脂としてはポリプロピレン、ABS樹脂などが用いられる。
【0025】
前記下のガイドレール3は長尺一体であるが、その長尺な下のガイドレール3のレール溝3a内に複数の溝閉塞部材20を長手方向に順次取付けるようにしても良い。
また、下のガイドレール3はアルミ押出形材としてあるが、これに限ることはない。
また、溝閉塞部材20は樹脂製としてあるが、これに限ることはない。
また、上面20aを上向き凹形状としたが、これに限ることなく水平形状としても良い。
また、下部23を一対の脚片24,24によりハ字形状で構成したが、コ字形状でも良いし、上部20aの下面及びレール溝3aの底面11との接触面積が大きな1つの脚部から構成しても良い。脚片を3つ以上設けても構わない。
また、下部23の幅Hを上部21の幅Hよりも小さくしたが、下部23の幅Hの大きさを上部21の幅H以上にしても良いし、底面側部分3a−1の溝幅Hや開口側部分3a−2の溝幅H以上にしても良い。
また、レール溝3aを、開口側部分3a―2と開口側部分3a−2よりも溝幅が大きな底面側部分3a−1とで構成したが、少なくともこれらを有していれば良い。つまり、開口側部分3a−2の上方に開口側部分3a―2よりも幅が大きな部分(溝)も有するタイプ、開口側部分3a−2と底面側部分3a−1との間に開口側部分3a−2よりも幅が大きな部分(溝)も有するタイプ、底面側部分3a−1の下方に底面側部分3a−1よりも幅が小さい部分(溝)も有するタイプ、などであっても良い。
また、溝閉塞部材20は、長尺なものを1本用いて構成しても良く、複数本を用いて構成しても良い。
また、実施の形態は吊り戸タイプの建具であるが、これに限らず引戸(パネル体)の下端に設けたガイド部である戸車がガイドレール上を走行することでガイドして引戸を開閉自在に移動するタイプや、引戸(パネル体)の下端面をガイド部として直接ガイドレール上面に摺接させることでガイドしてガイドレール上を引戸が走行するタイプ等の建具でも良い。つまり、本発明は建具のパネル体の移動時にパネル体の下部のガイド部が下のガイドレールでガイドされるものに適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施の形態を示す吊り戸タイプの建具の概略正面図である。
【図2】図1のA−A拡大詳細断面図である。
【図3】下のガイドレール部分の拡大断面図である。
【図4】下のガイドレールと溝閉塞部材の断面図である。
【図5】溝閉塞部材を取付けた下のガイドレールの斜視図である。
【図6】下のガイドレールから溝閉塞部材の一部を引き出した状態の斜視図である。
【符号の説明】
【0027】
1…パネル体、3…下のガイドレール、3a…レール溝、3a−1…底面側部分,3a−2…開口側部分、5…振れ止め部材(ガイド部材)、7…固着具、7a…頭部、12…下向きの段部、20…溝閉塞部材、20a…上面、21…上部、22…幅方向両側部分、23…下部、24…脚部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パネル体の下部を下のガイドレールでガイドした建具であって、
前記下のガイドレールは、段部を境として底面側部分と当該底面側部分よりも溝幅の小さい開口側部分を有する略上向きコ字形状のレール溝を有し、
前記開口側部分で前記パネル体の下部のガイド部をガイドし、
前記下のガイドレールのレール溝における底面側部分内に溝閉塞部材が設けてあり、
前記溝閉塞部材の上部の幅は、前記底面側部分の溝幅よりも小さく、かつ前記開口側部分の溝幅よりも大きいことを特徴とする建具。
【請求項2】
溝閉塞部材の上部の上面は上向き凹形状である請求項1記載の建具。
【請求項3】
溝閉塞部材は、上部の内、少なくとも幅方向両側部分が下部の材質よりも弾性変形し易い材質からなる請求項1又は2記載の建具。
【請求項4】
下のガイドレールは、そのレール溝の底面から固着具で固着して取付けられ、
溝閉塞部材の下部は一対の脚部を有し、その一対の脚部がレール溝の底面に固着具の頭部と干渉しないように接するようにした請求項1又は2又は3記載の建具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−106525(P2008−106525A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−290762(P2006−290762)
【出願日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【出願人】(390005267)YKK AP株式会社 (776)
【Fターム(参考)】