説明

建材混合物中で膨潤するマイクロ粒子を有する建材用添加剤混合物

本発明は、ポリマー性マイクロ粒子を、水硬性の建材混合物において、その凍結耐久性もしくは凍結融解耐久性の改善のために用いる使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマー性マイクロ粒子を、水硬性の建材混合物において、その凍結耐久性もしくは凍結融解耐久性の改善のために用いる使用に関する。
【0002】
同時に融解剤を作用させた場合での、凍結と凍結融解変化に対するコンクリートの耐久性については、その構造物の密度と、マトリクスの所定の強度と、所定の空隙構造の存在とが決定的である。セメント結合コンクリートの構造物には、毛細管空隙(直径:2μm〜2mm)もしくはゲル空隙(直径:2〜50nm)が通っている。その中に含まれる間隙水は、空隙直径に依存して、その状態において異なる。毛細管空隙中の水は、その通常の特性を維持する一方で、ゲル空隙においては、凝結水(メソ孔:50nm)と吸着結合された表面水(マイクロ孔:2nm)に分類され、それらの凝固点は、例えば−50℃よりはるか低いことがある[M.J.Setzer,Interaction of water with hardened cement paste,"Ceramic Transactions" 16(1991)415−39]。その結果として、コンクリートを低温冷却した場合にも、一部の間隙水は未凍結のままとなる(準安定水)。しかしながら、同じ温度の場合に、氷についての蒸気圧は、水についての蒸気圧よりも低い。氷と準安定水は、同時に並存するので、蒸気圧勾配が生じ、こうして、まだ液状の水が氷へと拡散して、それが氷を形成し、それにより小さい方の空隙からは脱水が起こり、あるいは大きい方の空隙においては着氷が起こる。冷却の結果として起こる前記の水の再分配は、それぞれの空隙系で起こり、空隙分布の種類に決定的に依存している。
【0003】
従って、コンクリート中に微細な空気孔を人為的に導入することで、第一には、膨張する氷と氷水のための、いわゆる応力緩和空間がもたらされる。この空隙において、凍結した間隙水は膨張し、あるいは氷及び氷水の内圧と応力は吸収されるので、微細亀裂が形成されることはなく、それによりコンクリートの凍結損傷が引き起こされることはない。係る空気孔システムの原理的な作用様式は、コンクリートの凍結損傷の機序に関して、多くの概要に記載されている[Schulson,Erland M.(1998)Ice damage to concrete.CRREL Special Report 98−6;S.Chatterji,Freezing of air−entrained cement−based materials and specific actions of air−entraining agents,"Cement & Concrete Composites"25(2003)759−65;G.W.Scherer,J.Chen & J.Valenza,Methods for protecting concrete from freeze damage,米国特許第6,485,560号B1(2002);M.Pigeon,B.Zuber & J.Marchand,Freeze/thaw resistance,"Advanced Concrete Technology"2(2003)11/1−11/17;B.Erlin & B.Mather,A new process by which cyclic freezing can damage concrete − the Erlin/Mather effect,"Cement & Concrete Research"35(2005)1407−11]。
【0004】
凍結融解変化におけるコンクリートの改善された耐久性のための必要条件は、セメント石における各ポイントと人為的な空気孔との距離が所定の値を超えないことである。前記の間隔は、間隔係数とも、又は"パワーズの間隔係数"とも呼称される[T.C.Powers,The air requirement of frost−resistant concrete,"Proceedings ofthe Highway Research Board"29(1949)184−202]。研究室での調査によって、その際、臨界的な"パワーズの間隔係数"500μmを超過すると、凍結融解変化に際してコンクリートに損害が引き起こされることが示された。限られた空気孔率でそれを達成するためには、従って、人為的に導入された空気孔の直径が200〜300μm未満でなければならない[K.Snyder,K.Natesaiyer & K.Hover,The stereological and statistical properties of entrained air voids in concrete:A mathematical basis for air void Systems characterization "Materials Science of Concrete" VI (2001)129−214]。
【0005】
人為的な空気孔システムの形成は、骨材の組成と適合性、セメントの種類と量、コンクリートコンシステンシー、使用されるミキサ、混合時間、温度に決定的に依存するが、また空気孔形成剤の種類と量にも依存する。相応の製造規則を考慮することで、その影響を抑制することはできるものの、多数の不所望な障害がもたらされることがある。この結果として、コンクリート中の所望の空気含有率を超過もしくは下回ることがあり、従ってコンクリートの強度もしくは凍結耐久性に悪影響が及ぼされる。
【0006】
係る人為的な空気孔は、直接的に配分することはできず、いわゆる空気孔形成剤の添加によって、混合によって連行された空気が安定化される[L.Du & K.J.Folliard,Mechanism of air entrainment in concrete "Cement & Concrete Research" 35(2005)1463−71]。商慣習の空気孔形成剤は、大抵は、界面活性剤様の構造であり、混合によって導入された空気を、300μmよりできる限り小さい直径を有する小さい気泡へと破壊し、これらを湿ったコンクリート構造物中で安定化する。その際、2つの種類で区別される。
【0007】
一方の種類は、例えばオレイン酸ナトリウム、アビエチン酸のナトリウム塩もしくはVinsol樹脂、松根からの抽出物であるが、それらは、ニートセメントにおける細孔溶液の水酸化カルシウムと反応し、不溶性のカルシウム塩として沈殿する。これらの疎水性の塩は、水の表面張力を低下させて、セメント粒子、空気及び水の間の界面に集まる。前記塩は、微細な気泡を安定化するので、硬化済みコンクリートにおいて、この空気孔の表面上に観察される。
【0008】
もう一方の種類は、例えばラウリル硫酸ナトリウム(SDS)もしくはドデシルフェニルスルホン酸ナトリウムであるが、それらは、前記のものに対して、水酸化カルシウムと可溶性のカルシウム塩を形成するが、異常な溶解挙動を示す。ある臨界温度未満で、この界面活性剤は、非常に低い可溶性を示し、この温度より高い温度で、非常に良好な溶解性を示す。空気と水との界面層への好ましい集積によって、これらは同様に表面張力を低下させるので、微細な気泡を安定化し、好ましくは硬化済みのコンクリートにおいて前記の空気孔の表面上に観察される。
【0009】
技術水準による前記の空気孔形成剤の使用に際して、多くの問題が生ずる[L.Du & K.J.Folliard,Mechanism of air entrainment in concrete "Cement & Concrete Research" 35(2005)1463−71]。例えば、より長い混合時間、種々のミキサ回転数、レディミックスコンクリートでの配量順序の変更によって、(空気孔中で)安定化された空気が再び追い出されるということが引き起こされることがある。
【0010】
延長された輸送時間と、粗悪な温度調節と、種々のポンプ装置及び搬送装置でのコンクリートの輸送と、並びに前記のコンクリートの打ち込みと、それに付随する変更された後加工、振動挙動及び温度条件は、予め調整された空気孔含有率を大きく変更させることがある。それは、最悪の場合には、該コンクリートが、規定の暴露等級(Expositionsklasse)の必要な限界値をもはや満たさず、従って使用不能になっていることを意味することがある[EN 206−1 (2000),Concrete − Part 1:Specification,performance,production and conformity]。
【0011】
コンクリート中の微細物質(例えば、種々のアルカリ含量を有するセメント、フライアッシュ、シリカ粉もしくは着色添加剤などの混和材)の含分は、同様に空気孔形成を損ねる。また、消泡作用を有する流動剤との相互作用が生ずるため、空気孔が追い出されることもあるが、また追加的に制御されずに導入されることもある。
【0012】
凍結耐久性のコンクリートの製造を困難にする前記の全ての影響を回避できるのは、必要な空気孔システムが、前記の界面活性剤様の空気孔形成剤によって生成されず、空気含量がポリマー性のマイクロ粒子(マイクロ中空球)の混加もしくは固体配量によって由来する場合である[H.Sommer,A new method of making concrete resistant to frost and de−icing salts,"Betonwerk & Fertigteiltechnik" 9(1978)476−84]。マイクロ粒子は大抵は、100μm未満の粒度を有するので、コンクリート構造物中では、人為的に導入された空気孔よりも微細にかつ一様に分布することができる。それによって、コンクリートの凍結融解変化に対する十分な耐久性のためには少量でも十分である。
【0013】
コンクリートの凍結融解変化耐久性の改善のための係るポリマー性マイクロ粒子の使用は、既に技術水準に相応して知られている[DE2229094号A1、US4,057,526号B1、US4,082,562号B1、DE3026719号A1を参照]。それらに記載されるマイクロ粒子は、とりわけ、200μm(直径)未満の中空空間を有し、かつ前記中空コアが空気(もしくは気体状物質)からなることを特徴としている。同様に、100μmスケールの多孔質マイクロ粒子であってそれより小さい多くの中空空間及び/又は細孔を有してよい粒子を含む。
【0014】
コンクリート中への人為的な空気孔形成のために中空なマイクロ粒子を使用する場合に、前記の市場に出回る技術を実施するには、2つの要因が欠点であると見なされる。一方では、技術水準によるマイクロ中空球の製造費用が高すぎることと、もう一方で、比較的多くの配量によってのみ、満足のいくコンクリートの凍結融解変化に対する耐久性が達成されるに過ぎないということである。
【0015】
従って、本発明の課題は、水硬性の建材混合物のための凍結耐久性もしくは凍結融解変化耐久性の改善のための手段であって、比較的少量の配量であってもその完全な作用が展開されるものを提供することであった。更なる課題は、建材混合物の機械的強度を、前記手段によって全くもしくは実質的に損ねないことにある。
【0016】
前記課題並びに他の明示されていないが、本願の冒頭で議論された前後関係から容易に導くことができ又は推定できる課題は、塩基によって膨潤可能なコアを有するコア・シェル型マイクロ粒子であって、前記シェルが50℃未満のガラス転移温度を有するポリマーからなる粒子によって解決される;ガラス転移温度は、30℃未満が好ましく、15℃未満が特に好ましく、5℃未満が最も好ましい。
【0017】
本発明による粒子は、好ましくは乳化重合によって製造される。
【0018】
本発明による粒子は、非常に少ない配量で既に、凍結変化もしくは凍結融解変化に対して良好な耐久性をもたらすために適していることが判明した。
【0019】
本発明の特に好ましい一実施態様においては、建材混合物に未膨潤のコア・シェル型粒子が添加され、その際、前記粒子は、強アルカリ性混合物中で膨潤し、従って中空空間はいわば"インサイチュー"で形成する。
【0020】
本発明によれば、建材混合物の製造方法において、膨潤可能であるが、まだ未膨潤のコア・シェル型粒子を建材混合物の通常の成分と混合し、そして粒子の膨潤が建材混合物中ではじめて起こる。
【0021】
好ましい一実施態様によれば、使用されるマイクロ粒子は、1つのコア(A)と、少なくとも1つのシェル(B)とを有するポリマー粒子からなり、その際、該コア/シェル型ポリマー粒子は塩基によって膨潤させた。
【0022】
前記のポリマー性マイクロ粒子の乳化重合による製造と、例えばアルカリもしくはアルカリ金属水酸化物並びにアンモニアもしくはアミンなどの塩基によるその膨潤は、欧州特許文献EP22633号B1、EP73529号B1並びにEP188325号B1に記載されている。
【0023】
粒子のコア(A)は、該コアの膨潤を可能にする1つ以上のエチレン性不飽和カルボン酸(誘導体)モノマーを含有する;前記モノマーは、好ましくは、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸及びクロトン酸並びにそれらの混合物の群から選択される。アクリル酸及びメタクリル酸が特に好ましい。
【0024】
本発明の特定の一実施態様においては、コアを形成するポリマーは架橋されていてもよい。その際、架橋剤の好ましく使用される量は、0〜10質量%(コア中のモノマーの全量に対して)であり、更に好ましくは0〜6質量%の架橋剤であり、最も好ましくは0〜3質量%である。それぞれの場合において、架橋剤の量は、膨潤が完全に阻止されない程度に選択される。
【0025】
該当する架橋剤のための例としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、ジアリルマレイネート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリットテトラ(メタ)アクリレート又はそれらの混合物が挙げられる。
【0026】
(メタ)アクリレートという表記は、ここでは、メタクリレート、例えばメチルメタクリレート、エチルメタクリレート等並びにアクリレート、例えばメチルアクリレート、エチルアクリレート等並びに双方からの混合物を意味する。
【0027】
シェル(B)は、主に、非イオン性のエチレン性不飽和モノマーからなる。係るモノマーとしては、好ましくは、スチレン、ブタジエン、ビニルトルエン、エチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アクリルニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、(メタ)クリル酸のC1〜C12−アルキルエステル又はそれらの混合物が使用される。
【0028】
モノマーを選択する場合には、本発明によれば、得られるコポリマーのガラス転移温度が、50℃未満であること、好ましくはガラス転移温度が30℃未満であること、特に好ましくはガラス転移温度が15℃未満であること、最も好ましくはガラス転移温度が5℃未満であることが顧慮されるべきである。
【0029】
その際、ガラス転移温度は、便宜上、フォックス式を用いて計算される。
【0030】
フォックスの式とは、本願では、以下の当業者に公知の式を指す:
【数1】

その際、Tg(P)は、計算されるべきコポリマーのガラス転移温度(ケルビン度)を指す。Tg(A)、Tg(B)、Tg(C)などは、動的熱流量示差熱測定(動的走査熱測定,DSC)で測定した、モノマーA、B、Cなどの高分子ホモポリマーのそれぞれのガラス転移温度(ケルビン度)を指す。
【0031】
(それらのホモポリマーについてのTg値は、例えば"Polymer Handbook",Johannes Brandrup,Edmund H.Immergut,Eric A.Grulke;John Wiley&Sons,New York(1999)にも挙げられている)
フォックスの式は、一定の条件下で測定値とずれが生ずる場合にも、ガラス転移温度の見積もりのために有効であることが分かっている。
【0032】
ガラス転移温度の厳密な測定のためには、シェルポリマーを別々に製造することができ、次いでガラス転移温度は、DSCによって測定することができる(第二の加熱曲線から読み取る、加熱もしくは冷却速度10K/分)。
【0033】
上述のモノマーの他に、ポリマーシェル(B)は、該シェルの塩基(ここでは特にイオン性塩基)についての透過性を改善するモノマーを含有してよい。それは、一方で、酸含有モノマー、例えばアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、フマル酸のモノエステル、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、マレイン酸のモノエステル、アクリルアミドグリコール酸、メタクリルアミド安息香酸、ケイ皮酸、ビニル酢酸、トリクロロアクリル酸、10−ヒドロキシ−2−デセン酸、4−メタクリルオキシエチルトリメチル酸、スチレンカルボン酸、2−(イソプロペニルカルボニルオキシ)エタンスルホン酸、2−(ビニルカルボニルオキシ)エタンスルホン酸、2−(イソプロペニルカルボニルオキシ)プロピルスルホン酸、2−(ビニルカルボニルオキシ)プロピルスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、アクリルアミドドデカンスルホン酸、2−プロペン−1−スルホン酸、メタリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、スチレンジスルホン酸、メタクリルアミドエタンホスホン酸、ビニルホスホン酸並びにそれらの混合物であってよい。他方で、透過性は、親水性の非イオン性のモノマーによっても改善することができ、そのうち本願では例として、アクリルニトリル、(メタ)アクリルアミド、シアノメチルメタクリレート、N−ビニルアミド、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニル−N−メチルアセトアミド、N−ビニル−N−メチルホルムアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、ビニルピロリドン、N,N−ジメチルプロピルアクリルアミド、ジメチルアクリルアミド並びに他のヒドロキシ基、アミン基、アミド基及び/又はシアノ基を有するモノマーあるいはそれらの混合物が挙げられるべきである。
【0034】
前記モノマーもしくは前記の箇所で挙げられていない別のモノマーの限定は、本発明によるガラス転移温度が超過されず、かつ該モノマー混合物が粒子の製造及び規則構造を妨げないことによってのみ存在する。
【0035】
通常は、親水性で酸含有のモノマーは、ポリマーシェル(B)の組成の30質量%以下(シェルの全モノマー混合物に対する)を成す;特に好ましくは、0.2〜20質量%の含有率であり、最も好ましくは0.5〜10質量%の含有率である。
【0036】
更に好ましい一実施態様においては、コアとシェルのモノマー組成は、理想的に構築されたコア・シェル型粒子の場合にそうであるように急激に変化せず、2段階以上でもしくはグラジエントの形で徐々に変化する。
【0037】
マイクロ粒子が多重シェル粒子として構築される場合には、コアと外部シェルとの間にあるシェルの組成は、しばしば、それぞれ隣接するシェルに向けられている。つまり、モノマーMxの含有率は、一般に、すぐ次の外側シェル(外部シェルであってもよい)中の含有率M(x+1)と、すぐ次の内側シェル(もしくはコア)中の含有率M(x−1)との間である。しかしながら、そのことは必須ではなく、他の特定の実施態様においては、係る中間シェルの組成は、それが粒子の製造及び規則構造を妨げない限りは自由に選択することもできる。
【0038】
本発明による粒子のシェルBは、好ましくは該粒子の全質量の10〜96質量%を成し、特に好ましくはシェル割合20〜94質量%である。最も好ましくは、シェル割合は30〜92質量%である。
【0039】
非常に薄いシェルの場合には、粒子のシェルが膨潤時に破裂することがある。しかしながら、この粒子の作用が必ずしもなくなるわけではないことが判明した。本発明の特定の実施態様においては、特に膨潤が建材混合物中で行われる場合には、前記の作用は、シェルの制限なく、より良好な粒子の膨潤が行われうるので好ましいことがある。
【0040】
マイクロ粒子が建材混合物中ではじめて自体膨潤する場合に、明らかにより高い固体含有率(すなわち、分散液の全質量に対するポリマーの質量割合)を有する分散液を製造することが可能である。それというのも、未膨潤の粒子が占有していた容積は、膨潤した粒子のそれよりも当然小さいからである。
【0041】
ポリマー粒子は、少量の塩基によっても膨潤可能であり、かつ建材混合物にはこの部分的に膨潤した状態で添加することもできる。そのことは、いくらか少ない固体含有率の上昇が依然として可能であり、他方で、建材混合物中で膨潤するために予定される時間が短縮できるという意味で妥協案に相当する。
【0042】
使用されるマイクロ粒子のポリマー含有率は、直径及び含水量に依存して、2〜98質量%(水充填された粒子の全質量に対するポリマーの質量)であってよい。
【0043】
好ましくは、ポリマー含有率は、5〜60質量%であり、特に好ましくは、ポリマー含有率は、10〜40質量%である。
【0044】
本発明によるマイクロ粒子は、好ましくは乳化重合によって製造することができ、かつ好ましくは100〜5000nmの平均粒度を有し、特に好ましくは、200〜2000nmの平均粒度である。最も好ましくは、250〜1000nmの平均粒度である。
【0045】
平均粒度の測定は、例えば透過型電子顕微鏡像をもとに統計学的に有意な量の粒子を計数することによって行われる。
【0046】
乳化重合による製造に際して、マイクロ粒子は、水性分散液の形で得られる。相応して、マイクロ粒子を建材混合物へと添加することは、好ましくは、同様に前記の形で行われる。
【0047】
しかしながら、本発明の範囲においては、容易に、水充填されたマイクロ粒子を建材混合物に固体として直接的に添加することも可能である。そのために、マイクロ粒子は、例えば凝集され、かつ通常の方法(例えば濾過、遠心分離、沈殿及び傾瀉)によって水性分散液から単離され、引き続き粒子は乾燥させられる。
【0048】
固体としての添加が望ましく又は加工技術的理由から必須である場合に、他の好ましい乾燥方法は、噴霧乾燥及び凍結乾燥である。
【0049】
水充填されたマイクロ粒子は、建材混合物に、0.01〜5容量%、特に0.1〜0.5容量%の好ましい量で添加される。建材混合物は、例えばコンクリートもしくはモルタルの形であり、この場合に、通常の水硬性の結合剤、例えばセメント、石灰、石膏もしくは硬石膏を含有してよい。
【0050】
水充填されたマイクロ粒子の使用による主たる利点は、コンクリートへの極めて少ない空気連行しか行われないということにある。それによって、明らかに改善されたコンクリートの圧縮強さが達成される。これらは、従来の空気孔形成で得られたコンクリートの圧縮強さよりも約25〜50%高い。従って、実質的により低い水/セメント値(W/Z値)によってしか達成できない強度クラスを達成することができる。しかしながら、他方では、低いW/Z値は、コンクリートの加工性を事情によっては明らかに制限する。
【0051】
更に、より高い圧縮強さは、結果として、コンクリート中で強度発揮に必要なセメントの含量を低減できるので、1m3あたりのコンクリートの価格が明らかに低下することになりうる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー性のコア・シェル型マイクロ粒子を水硬性の建材混合物中で用いる使用であって、前記粒子が、塩基によって膨潤可能なコアを有し、かつそのシェルが、50℃未満のガラス転移温度を有するポリマーからなることを特徴とする使用。
【請求項2】
請求項1に記載のポリマー性のコア・シェル型マイクロ粒子を水硬性の建材混合物中で用いる使用であって、前記粒子のシェルが、30℃未満のガラス転移温度を有するポリマーからなることを特徴とする使用。
【請求項3】
請求項1に記載のポリマー性のコア・シェル型マイクロ粒子の使用であって、前記粒子を建材混合物に添加する前にそのコアが膨潤されることを特徴とする使用。
【請求項4】
請求項1に記載のポリマー性のコア・シェル型マイクロ粒子の使用であって、前記粒子のコアが建材混合物のアルカリ性環境において"インサイチュー"で膨潤されることを特徴とする使用。
【請求項5】
請求項1に記載のポリマー性のコア・シェル型マイクロ粒子の使用であって、前記マイクロ粒子が、塩基によって膨潤されたもしくは膨潤可能な、1つ以上の不飽和カルボン酸(誘導体)モノマーを含有するポリマーコア(A)と、主に非イオン性のエチレン性不飽和モノマーからなるポリマーシェル(B)とを含有するポリマー粒子からなることを特徴とする使用。
【請求項6】
請求項5に記載のポリマー性のコア・シェル型マイクロ粒子の使用であって、前記粒子のシェルの非イオン性のエチレン性不飽和モノマーが、スチレン、ブタジエン、ビニルトルエン、エチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アクリルニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリル酸もしくはメタクリル酸のC1〜C12−アルキルエステルからなることを特徴とする使用。
【請求項7】
請求項5に記載のポリマー性のコア・シェル型マイクロ粒子の使用であって、前記粒子のコアAの不飽和カルボン酸(誘導体)モノマーが、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸及びクロトン酸の群から選択されることを特徴とする使用。
【請求項8】
請求項1に記載のポリマー性のコア・シェル型マイクロ粒子の使用であって、マイクロ粒子が、2〜98質量%のポリマー含有率を有することを特徴とする使用。
【請求項9】
請求項1に記載のポリマー性のコア・シェル型マイクロ粒子の使用であって、シェル(B)が、粒子の全質量の10〜96質量%を成すことを特徴とする使用。
【請求項10】
請求項1に記載のポリマー性のコア・シェル型マイクロ粒子の使用であって、前記マイクロ粒子が、100〜5000nmの平均粒度を有することを特徴とする使用。
【請求項11】
請求項10に記載のポリマー性のコア・シェル型マイクロ粒子の使用であって、前記マイクロ粒子が、200〜2000nmの平均粒度を有することを特徴とする使用。
【請求項12】
請求項11に記載のポリマー性のコア・シェル型マイクロ粒子の使用であって、前記マイクロ粒子が、250〜1000nmの平均粒度を有することを特徴とする使用。
【請求項13】
請求項1に記載のポリマー性のコア・シェル型マイクロ粒子の使用であって、前記マイクロ粒子が、建材混合物に対して、0.01〜5容量%の量で使用されることを特徴とする使用。
【請求項14】
請求項13に記載のポリマー性のコア・シェル型マイクロ粒子の使用であって、前記マイクロ粒子が、建材混合物に対して、0.1〜0.5容量%の量で使用されることを特徴とする使用。
【請求項15】
請求項1に記載のポリマー性のコア・シェル型マイクロ粒子の使用であって、建材混合物が、セメント、石灰、石膏及び硬石膏の群から選択される結合剤からなることを特徴とする使用。
【請求項16】
請求項1に記載のポリマー性のコア・シェル型マイクロ粒子の使用であって、建材混合物がコンクリートもしくはモルタルであることを特徴とする使用。
【請求項17】
硬化後に凍結変化もしくは凍結融解変化に対して耐久性の建材混合物の製造方法において、膨潤可能であるが、未膨潤のコア・シェル型粒子を、残りの建材混合物の成分と混合し、その際に、粒子の膨潤が建材混合物中で自発的に行われることを特徴とする方法。

【公表番号】特表2009−528242(P2009−528242A)
【公表日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−556735(P2008−556735)
【出願日】平成19年1月30日(2007.1.30)
【国際出願番号】PCT/EP2007/050882
【国際公開番号】WO2007/099005
【国際公開日】平成19年9月7日(2007.9.7)
【出願人】(390009128)エボニック レーム ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (293)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Roehm GmbH
【住所又は居所原語表記】Kirschenallee,D−64293 Darmstadt,Germany
【出願人】(503343336)コンストラクション リサーチ アンド テクノロジー ゲーエムベーハー (139)
【氏名又は名称原語表記】Construction Research & Technology GmbH
【住所又は居所原語表記】Dr.−Albert−Frank−Strasse 32, D−83308 Trostberg, Germany
【出願人】(390009128)エボニック レーム ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (293)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Roehm GmbH
【住所又は居所原語表記】Kirschenallee,D−64293 Darmstadt,Germany
【Fターム(参考)】