説明

建物の床加熱システム

【課題】屋内空間における結露の発生を好適に抑制する。
【解決手段】建物10の外壁には掃出し口としての窓部13が設けられており、窓部13にはサッシ枠31が取り付けられている。サッシ枠31は、窓部13の下端を形成する下枠部37を有しており、下枠部37と床部56の床仕上材58との間には床見切り材60が設けられている。床見切り材60は、下枠部37の下枠延出部46及び床仕上材58の上に載置されている見切り板部61と、見切り板部61から下方に延びている挿入部62,63とを有しており、挿入部62,63は下枠部37と床仕上材58との間に挿し入れられた状態となっている。挿入部62,63の間には電熱線71〜73が設けられている。電熱線71〜73は電流が流れることで発熱し、その熱により床見切り材60を加熱する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の床加熱システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
住宅等の建物において例えば冬期に屋内外での温度差が生じた場合、窓ガラスやサッシ戸の屋内側で結露が発生することがある。そこで、例えば特許文献1には、結露対策として、サッシ枠の下枠部を形成するアングル部に突出縁を設け、発生した結露水がアングル部から床部に流れ出すことを突出縁により防止するという構成が記載されている。この構成によれば、結露水が床面上に流れ込むことを抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−277980号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載された構成では、結露水の発生量によっては、その結露水が突出縁を越えて床部に流れ出すことが懸念される。これは、結露の発生自体を抑制することができないためであり、この場合は、サッシ枠や窓ガラスに付着した結露水によりカーテンなどが濡れるといったことも懸念される。したがって、屋内空間における結露対策に関して改善の余地がある。
【0005】
本発明は、屋内空間における結露の発生を好適に抑制することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、第1の発明の建物の床加熱システムは、建物の外壁部において床部から上方に延びるように設けられた開口部と、前記開口部に取り付けられたサッシ枠と、前記サッシ枠のうち前記開口部の下端となる下枠部と前記床部の床板端部との間において、前記下枠部に沿って設けられた床見切り材と、前記床見切り材に設けられた加熱手段と、を備えていることを特徴とする。
【0007】
第1の発明によれば、床見切り材を使って加熱手段を設けることで、サッシ枠の下枠部と床板端部との間のスペースを用いて加熱手段を容易に設置できる。この場合、加熱手段は、開口部と床部との見切り部(境界部)に設けられており、サッシ枠の下枠部を加熱するのに好適なものとなる。したがって、開口部における結露の発生を好適に抑制できる。
【0008】
なお、床見切り材は、金属材料など熱伝導率の高い材料により形成されていることが好ましい。これにより、加熱手段による床見切り材や床部の加熱効率を高めることができる。また、加熱手段は電熱線により形成されていることが好ましい。
【0009】
第2の発明では、前記加熱手段として、前記サッシ枠の前記下枠部に対応する位置に設けられた第1加熱手段と、前記サッシ枠の縦枠部に対応する位置に設けられた第2加熱手段とを備え、前記第1加熱手段による床加熱と前記第2加熱手段による床加熱とのうちいずれを実施するかを切り替える切替手段が設けられている。
【0010】
サッシ枠において下枠部と縦枠部とは、温度等の環境条件に基づく結露発生の状況が相違すると考えられる。この点、第2の発明のように、下枠部と縦枠部とに各々加熱手段を設け、それら加熱手段による床加熱状態を適宜切り替えることにより、都度の状況に応じて好適なる加熱作動を行わせることができる。例えば、屋内外の温度差が所定値より小さい場合には縦枠部に対応した第2加熱手段により床加熱を行い、所定値以上である場合には下枠部に対応した第1加熱手段により床加熱を行う。上記構成によれば、加熱箇所を必要に応じて切り替えることにより、加熱に要する消費エネルギを低減させることができる。
【0011】
なお、サッシ枠に窓ガラスが取り付けられている場合、サッシ枠と窓ガラスとでは素材の違いなどにより結露の発生状況が異なると考えられる。ここで、窓ガラスは下枠部の上方に存在するため、第1加熱手段と第2加熱手段による床加熱状態を切り替えることは、窓ガラスと縦枠部との加熱状態を切り替えることに相当する。したがって、サッシ枠と窓ガラスとで結露の発生状況が異なる時でも、サッシ枠及び窓ガラスの両者を対象として結露発生を好適に抑制することができる。
【0012】
第3の発明では、前記床見切り材には、該床見切り材の長手方向に延びる仕切部により仕切られた複数の長手空間が設けられており、該複数の長手空間に、前記加熱手段を構成する電熱線と該電熱線とは異なる電気配線とのいずれかが各々収容されて設けられている。
【0013】
第3の発明によれば、床見切り材において、電熱線の配設スペースと電気配線の配設スペースとを床見切り材とを個別に配置できる。
【0014】
第4の発明では、前記サッシ枠に設けられ、該サッシ枠の温度を検出するサッシ枠温度検出手段と、前記サッシ枠温度検出手段の検出結果に基づいて、前記加熱手段による床加熱の実施態様を制御する制御手段と、を備えている。
【0015】
開口部においてはサッシ枠の温度に応じて結露の発生しやすさが変化する。したがって、第4の発明のように、サッシ枠の温度に基づいて加熱手段による床加熱の実施態様が制御されることにより、サッシ枠の温度が結露の発生しやすい温度になっている場合に限って結露の発生を抑止できる。したがって、結露の発生抑制に際して省エネルギ効果を得ることができる。
【0016】
第5の発明では、前記開口部の屋内側の温度を検出する屋内温度検出手段が前記屋内側に設けられており、前記制御手段は、前記サッシ枠温度検出手段及び前記屋内温度検出手段の各検出結果に基づいて前記サッシ枠と前記屋内側との温度差を算出し、該温度差が判定値より大きい場合に前記加熱手段による床加熱を実行させる。
【0017】
開口部において結露は、屋内空間の温かい空気がサッシ枠によって冷やされることで発生する。したがって、第7の発明のように、サッシ枠と屋内空間との温度差に基づいて加熱手段による床加熱の実施態様が制御されることにより、屋内空間及びサッシ枠が結露の発生しやすい状態になっている場合に限って結露の発生を抑制できる。したがって、結露抑制に際しての省エネルギ効果を高めることができる。
【0018】
第6の発明では、前記サッシ枠に結露水が付着していることを検出する結露水検出手段が前記サッシ枠に設けられており、前記制御手段は、前記結露水検出手段により結露水が検出されていない場合に前記実施態様を第1段階に設定し、前記結露水が検出された場合に前記実施態様を、前記加熱手段による床加熱に際しての加熱量が前記第1段階よりも大きい第2段階に設定する。
【0019】
第6の発明によれば、結露が発生していない場合には結露発生を抑制できる制御を行い、結露が発生した場合には結露を除去できる制御を行うことが可能となる。この場合、結露抑制に加えて結露除去を促進することになり、結露水により床材などが劣化することを抑制できる。
【0020】
第7の発明では、前記加熱手段は、前記床見切り材に対して複数設けられており、前記制御手段は、前記サッシ枠温度検出手段の検出結果に基づいて、複数の前記加熱手段の各実施態様を個別に制御する。
【0021】
第7の発明によれば、サッシ枠における結露発生の状況が各部分で相違していても、都度の状況に合わせて複数の加熱手段による床加熱を個別に制御できる。この場合、複数の加熱手段による加熱箇所をきめ細かく切り替えるように制御することにより、結露の抑制に際しての省エネルギ効果をより一層高めることができる。
【0022】
なお、本構成を上記第2の発明に適用し、前記制御手段は、前記サッシ枠温度検出手段の検出結果に基づいて、前記第1加熱手段による床加熱と前記加熱手段による床加熱とのいずれを実施するかを制御することが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本実施形態における床加熱システムの構成を示す概略図。
【図2】床見切り材周辺の構成を示す断面図。
【図3】電熱線の構成を説明するための説明図。
【図4】床見切り材の取り付け手順を説明するための説明図。
【図5】床加熱制御処理の処理手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を具体化した一実施形態について図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、本発明を、建物の床部を加熱する床加熱システムについて具体化している。図1は床加熱システムの構成を示す概略図、図2は床見切り材60周辺の構成を示す断面図、図3は電熱線71〜73の構成を説明するための説明図である。
【0025】
図1に示すように、住宅等の建物10において、屋内空間としての居室11と屋外とを仕切る外壁部としての外壁12には開口部としての窓部13が設けられている。窓部13は掃出し口とされており、床面から上方に延びるように形成されている。
【0026】
窓部13には窓枠としてのサッシ枠31が設けられており、サッシ枠31には水平方向にスライド移動する一対のサッシ戸32が取り付けられている。サッシ枠31は、上下方向に延びる一対の縦枠部35と、それら縦枠部35の上端に連結された上枠部36と、下端に連結された下枠部37とを有しており(図3参照)、アルミニウム等の金属材料により略矩形状に形成されている。縦枠部35は窓部13の側端を形成し、上枠部36は窓部13の上端を形成し、下枠部37は窓部13の下端を形成している。
【0027】
下枠部37は、窓部13の下端において水平方向に延びる長尺材とされている。下枠部37は、床下地材57及び床仕上材58の屋外側の各端部に沿って水平方向に延びる下枠本体41と、下枠本体41から上方に突出したレール部42と、レール部42の屋内側に配置された下枠アングル43とを有している。下枠アングル43は、下枠本体41から上方に向けて起立した下枠起立部45と、下枠起立部45の上端から屋内側に向けて延出した下枠延出部46とを有している。
【0028】
一対のサッシ戸32は引き違い式の窓サッシとされており、それらサッシ戸32は互いに重なる方向にスライド移動することで窓部13を開放し、逆方向にスライド移動することで窓部13を閉鎖する。サッシ戸32は、矩形板状の窓ガラス51と、その窓ガラス51を支持するガラス支持枠52とを有している。ガラス支持枠52は、アルミニウム等の金属材料により矩形状に形成されており、窓ガラス51はガラス支持枠52の枠内に嵌め込まれた状態となっている。なお、下枠部37のレール部42には係止片53が設けられ、ガラス支持枠52には係止片53と係止する被係止部54が設けられており、係止片53が被係止部54に係止していることでレール部42からのサッシ戸32の離脱が防止されている。
【0029】
サッシ枠31の下枠部37の屋内側には床面を形成する床部56が設けられており、床部56は、床根太により下方から支持されている板状の床下地材57と、その床下地材57の上に設けられた床仕上材58とを含んで構成されている。床下地材57は合板等により形成されている。床仕上材58はフローリング等により形成されており、床仕上材58の上面が床部56において床仕上げ面としての床面を形成している。床下地材57及び床仕上材58はサッシ枠31の側方に配置されている。
【0030】
床仕上材58の厚み寸法は床下地材57とサッシ枠31の下枠延出部46との離間距離より大きくされており、床仕上材58の上面は下枠延出部46の上面と同じ高さ又はそれより高い位置に設けられている。この場合、床仕上材58の見切り部分(窓部13側の端部)を下枠延出部46(下枠アングル43)により覆い隠すことができない。そこで、床仕上材58と下枠延出部46との境界部に、床仕上材58の見切り部分を覆い隠す床見切り材60が設けられている。この場合、床見切り材60は床仕上材58と下枠アングル43との境界部に設けられていることになる。
【0031】
図1、図2に示すように、床見切り材60は、アルミニウム等の金属材料により形成された水平方向に延びる長尺材とされており、床仕上材58及び下枠延出部46の上に載置されている板状の見切り板部61と、見切り板部61から下方に向けて延びている板状の挿入部62,63とを有している。見切り板部61は、床仕上材58及び下枠延出部46の各上面に架け渡された状態となっており、床仕上材58の見切り部分に加えて下枠延出部46の見切り部分を覆い隠している。
【0032】
床仕上材58は下枠延出部46から屋内側に離間しており、その離間部分の下方には、床仕上材58よりもサッシ枠31側へ突出した床下地材57がある。ここで、挿入部62,63は、床仕上材58と下枠延出部46との離間部分に上方から挿入された状態で床下地材57の上に載置されている。この場合、挿入部62,63は見切り板部61を下方から支持することになるため、見切り板部61に人が踏むことなどによる外力が加えられた際に見切り板部61の破損を抑制できる。挿入部62,63において、床仕上材58側に配置された床側挿入部62と、サッシ枠31側に配置されたサッシ側挿入部63とは互いに離間して設けられている。
【0033】
本実施形態では、床見切り材60に加熱手段としての電熱線71〜73が取り付けられており、電熱線71〜73により床見切り材60が加熱されることで居室11において窓部13周辺での結露発生を抑制できる。つまり、サッシ枠31や窓ガラス51、ガラス支持枠52に結露水が付着することを抑制できる。
【0034】
電熱線71〜73は、電気伝導体により形成されており、床見切り材60に沿って延びるように設けられている。電熱線71〜73は、電流が流れることで発熱する発熱部としての電熱部75を有している。
【0035】
電熱線71〜73は、見切り板部61の下方であって床側挿入部62とサッシ側挿入部63との間に配置されている。この場合、挿入部62,63の間は電熱線71〜73の配設スペースとされており、その配設スペースにおいて電熱線71〜73は、電熱部75をサッシ側挿入部63に当接させた状態でそのサッシ側挿入部63に対して取り付け固定されている。なお、電熱線71〜73は、電熱部75を見切り板部61、床側挿入部62及びサッシ側挿入部63のうち少なくとも1つに当接させた状態で取り付け固定されていればよい。電熱線71〜73は、蓄電池等の電力供給装置78と電気的に接続されており(図1参照)、電力供給装置78から電熱線71〜73に電力が供給される。
【0036】
図3に示すように、電熱部75の配置は電熱線71〜73ごとに異なっている。電熱線71〜73のうち第1電熱線71においては、電熱部75の長さ寸法がサッシ枠31の下枠部37の長さ寸法と同じ又はそれよりも大きくされており、電熱部75が下枠部37の下方全体において床見切り材60を加熱可能となっている。第2電熱線72においては、電熱部75がサッシ枠31の各縦枠部35の下方に配置されており、その部分にて床見切り材60を加熱可能となっている。第3電熱線73においては、電熱部75が縦枠部35の中間部分の下方に配置されており、その部分にて床見切り材60を加熱可能となっている。つまり、下枠部37の長手方向において第3電熱線73の電熱部75は第2電熱線72の電熱部75の間に配置されていることになる。
【0037】
なお、電熱線71〜73及び電力供給装置78により加熱手段が構成されており、第1電熱線71の電熱部75が第1加熱部に相当し、第2電熱線72の電熱部75が第2加熱部に相当する。
【0038】
また、図3においては、居室11側から見た窓部13の正面図を図示しており、さらに、サッシ枠31及びサッシ戸32に対する電熱線71〜73の各電熱部75の相対位置を示すために電熱線71〜73及び床見切り材60を仮想的に図示している。
【0039】
図1、図2の説明に戻り、床見切り材60は、サッシ側挿入部63のサッシ枠31側のスペースを上下に仕切る上側仕切部82及び下側仕切部83を有している。仕切部82,83はサッシ側挿入部63からサッシ枠31側に向けてそれぞれ突出しており、上側仕切部82はサッシ枠31の下枠延出部46側に配置され、下側仕切部83は床下地材57側に配置されている。上側仕切部82と下側仕切部83との間には、電熱線71〜73とは別の電気配線84が配設されている。電気配線84は電熱線71〜73に電力を供給するための電線とされている。なお、図1においては電気配線84及び連結部86の図示を省略している。
【0040】
床見切り材60は、床側挿入部62の下端寄りの部分とサッシ側挿入部63の下端寄りの部分とを連結する板状の連結部86を有している。連結部86は床側挿入部62とサッシ側挿入部63との間に配置されており、電熱線71〜73の配設スペースを床下地材57に対して仕切った状態となっている。
【0041】
床見切り材60の見切り板部61とサッシ枠31の下枠延出部46との間には防水部材87が設けられている。防水部材87はゴム等の弾性材料により形成されており、見切り板部61の下面及び下枠延出部46の上面に密着することでそれら見切り板部61と下枠延出部46との間から見切り板部61の下方に水が浸入することを抑制する。ここで、防水部材87は床見切り材60に取り付けられており、見切り板部61と下枠延出部46とが離間している場合にそれら見切り板部61と下枠延出部46との隙間を埋める隙間埋め材としての役割を果たす。
【0042】
本実施形態において床見切り材60は、建物10の改装に伴って床面の高さが変更された際に取り付けられている。ここでは、床見切り材60の取り付け手順について図2、図4を参照しつつ説明する。図4は床見切り材60の取り付け手順を説明するための説明図である。なお、図4においては防水部材87の図示を省略している。
【0043】
図4(a)に示すように、床部56において床下地材57の上には、床仕上材58よりも厚さ寸法が小さい床仕上材58aが載置されている。床仕上材58aの厚さ寸法は床下地材57と下枠延出部46との離間距離より僅かに小さくされており、床仕上材58aがそれら床下地材57と下枠延出部46との間に入り込んでいる。これにより、床仕上材58aの見切り部分は下枠延出部46(サッシ枠31)により覆い隠されている。
【0044】
そして、図4(b)に示すように、リフォームに伴って床仕上材58aを取り外し、図4(c)に示すように、その床仕上材58に代えて床仕上材58を床下地材57の上に載置する。その後、図4(d)に示すように、床見切り材60の床側挿入部62とサッシ側挿入部63との間に電熱線71〜73を配設するとともに、上側仕切部82と下側仕切部83との間に電気配線84を配設する。また、床見切り材60の挿入部62,63の長さ寸法が床仕上材58の厚さ寸法より大きい場合には、挿入部62,63の下端側を切断し、挿入部62,63の長さ寸法を床仕上材58の長さ寸法と同じに調整する。このため、様々な厚み寸法を有する床仕上材58に対応させて床見切り材60を取り付けることができる。その後、図2に示すように、床見切り材60を床仕上材58とサッシ枠31との境界に対して取り付ける。
【0045】
なお、床仕上材58aを取り外して、床見切り材60をサッシ枠31の下枠部37及び床下地材57に対いて設置し、その後、床仕上材58の端部を床見切り材60の見切り板部61と床下地材57との間に挿し入れつつ、床仕上材58を床下地材57の上に載置するという手順で床見切り材60の取り付け作業を行ってもよい。
【0046】
本実施形態では、電熱線71〜73の加熱制御が床加熱システムにて実行される。ここでは、床加熱システムの電気的な構成について説明する。
【0047】
図1に示すように、床加熱システムにおいて、制御手段としてのコントローラ91は、CPUや各種メモリ等からなるマイクロコンピュータを含んで構成されており、例えば居室11の内壁面に取り付けられている。
【0048】
コントローラ91には、居室11内の温度を検出する屋内温度検出手段としての居室温度センサ92と、屋外の温度を検出する外気温度センサ93と、サッシ枠31の温度を検出するサッシ枠温度検出手段としてのサッシ枠温度センサ94と、サッシ枠31に水が付着しているか否かを検出する結露水検出手段としてのサッシ水センサ95とが接続されており、これらセンサ92〜95は検出信号をコントローラ91に対して出力する。居室温度センサ92は居室11の内壁面に取り付けられており、外気温度センサ93は下枠本体41においてレール部42の屋外側に取り付けられている。サッシ枠温度センサ94は、下枠部37の下枠起立部45の屋内面に取り付けられており、サッシ水センサ95は、下枠本体41においてレール部42の居室11側に取り付けられている。この場合、サッシ枠温度センサ94は、下枠延出部46及び床見切り材60の下方にあるため、居室11から人に視認されることがない。
【0049】
なお、サッシ枠31の縦枠部35など居室11側に露出する部分が合成樹脂材料により形成されている場合、居室温度センサ92はその部分に取り付けられていてもよい。これは、居室11側に露出する部分の熱伝導率が低く、その部分の温度変化が外気温度に依存しにくくなっているためである。
【0050】
コントローラ91には、電力供給装置78と、人による入力操作が行われる操作装置96とが接続されている。電力供給装置78は例えば床下空間に設置されており、コントローラ91は指令信号を出力することにより電力供給装置78の動作制御を行う。電力供給装置78は電力供給を電熱線71〜73ごとに個別に行うことが可能となっている。操作装置96は居室11の内壁面に取り付けられており、入力操作に対応した操作信号をコントローラ91に対して出力する。
【0051】
コントローラ91は、電熱線71〜73により床部56を加熱させる床加熱制御を行う。ここでは、床加熱制御処理の処理手順について図5のフローチャートを参照しつつ説明する。なお、床加熱制御処理は所定周期で繰り返し実行される。
【0052】
図5において、ステップS11では、サッシ枠31にて結露が発生しているか否かを判定する。ここでは、サッシ水センサ95の検出信号に基づいてサッシ枠31の下枠部37に水が付着しているか否かを判定し、水が付着している場合に結露発生として判定する。結露が発生していない場合、ステップS12にて、居室温度センサ92の検出信号に基づいて居室11の温度を取得し、ステップS13にて、サッシ枠温度センサ94の検出信号に基づいてサッシ枠31の温度を取得する。
【0053】
ステップS14では、居室11と屋外との温度差を算出し、その温度差が第1判定値(例えば10℃)より大きいか否かを判定する。温度差が第1判定値より大きい場合、ステップS15に進み、外気温度センサ93の検出信号に基づいて外気温度を取得する。ステップS16では、居室11とサッシ枠31との温度差を算出し、その温度差が第2判定値(例えば10℃)より大きいか否かを判定する。なお、第1判定値と第2判定値とは同じ数値に設定されていてもよく、異なる数値に設定されていてもよい。
【0054】
居室11と屋外との温度差が第1判定値より大きいが、居室11とサッシ枠31との温度差が第2判定値以下である場合、ステップS17に進み、電熱線71〜73のうち第2電熱線72だけに電力供給装置78から電力を供給させる。この場合、第2電熱線72の電熱部75により床見切り材60における縦枠部35の下方部分が加熱され、縦枠部35に沿って上昇する上昇気流などにより縦枠部35が温められる。これにより、縦枠部35の結露が重点的に抑制され、窓ガラス51を含めて窓部13全体の結露を抑制する場合に比べて省エネルギ化を図ることができる。
【0055】
居室11と屋外との温度差が第1判定値より大きく、さらに、居室11とサッシ枠31との温度差が第2判定値より大きい場合、ステップS18に進み、電熱線71〜73のうち第2電熱線72及び第3電熱線73に電力供給装置78から電力を供給させる。この場合、第2電熱線72及び第3電熱線73の各電熱部75によりサッシ枠31全体の下方の床見切り材60が加熱され、サッシ枠31及び窓ガラス51のそれぞれの全体が上昇気流などにより温められる。これにより、窓部13全体においてサッシ枠31及び窓ガラス51の結露発生が抑制される。なお、この場合、居室11とサッシ枠31との温度差が第2判定値以下である場合(ステップS17に進んだ場合)に比べて結露が発生しやすい状況であるため、窓部13全体の結露発生を抑制することが好ましい。
【0056】
サッシ枠31にて結露が発生している場合(ステップS11がNO判定の場合)、ステップS19に進み、電熱線71〜73の全てに電力供給装置78から電力を供給させる。この場合、第2電熱線72及び第3電熱線73の各電熱部75により床見切り材60が加熱された場合に比べて、第1電熱線71の電熱部75の分だけ床見切り材60の温度が高くされる。これにより、サッシ枠31に付着した結露水を蒸発させやすくできる。つまり、結露水を除去しやすくなる。
【0057】
なお、床加熱制御処理においては、ステップS12〜S18の処理が第1段階制御に相当し、ステップS19の処理が第2段階制御に相当する。
【0058】
また、コントローラ91は、操作装置96から操作信号を受信した場合、その操作信号に基づいて電力供給装置78の動作制御を行う。この場合、例えば、電熱線71〜73の各電熱部75をそれぞれ加熱させる旨の操作信号であれば、電力供給装置78から電熱線71〜73のそれぞれに電力供給を行わせ、それぞれの加熱停止の旨の操作信号であれば、電力供給を停止させる。また、夏期においては電力供給装置78からの電力供給を停止させる。
【0059】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の優れた効果が得られる。
【0060】
床見切り材60を使って電熱線71〜73を設けることで、サッシ枠31の下枠部37と床仕上材58の屋外側端部との間のスペースを用いて電熱線71〜73を容易に設置できる。この場合、電熱線71〜73は、窓部13と床部56との見切り部(境界部)に設けられており、サッシ枠31の下枠部37を加熱するのに好適なものとなる。したがって、窓部13における結露の発生を好適に抑制できる。
【0061】
電熱線71〜73はそれぞれ電熱部75を有しており、電熱部75の配置は電熱線71〜73ごとに異なっているため、電力供給装置78からの給電対象とされる電熱線71〜73を選択することにより、結露抑制の対象を窓部13の全体と一部とに切り替えることができる。したがって、サッシ枠31とサッシ戸32の窓ガラス51とサッシ戸32のガラス支持枠52とで、素材の違いや日射量の違いなどにより結露発生の状況が異なっていても、都度の状況に合わせて好適なる加熱作動を電熱線71〜73に行わせることにより、結露発生を好適に抑制できる。
【0062】
例えば、第2電熱線72の電熱部75を加熱させることにより、窓部13のうちサッシ枠31の縦枠部35を窓ガラス51に比べて重点的に温め、結露発生を抑制することができる。なお、この場合、サッシ戸32のガラス支持枠52のうち縦枠部35に当接した部分を重点的に温め、結露発生を抑制することにもなる。
【0063】
したがって、床見切り材60の加熱箇所を必要に応じて切り替えることにより、電熱線71〜73への供給電力など加熱に要する消費エネルギを低減させることができる。
【0064】
電熱線71〜73による床見切り材60の加熱がコントローラ91により電気的に制御されるため、加熱及び非加熱の制御が容易となる。つまり、結露発生の条件が整っている時に限って床見切り材60を加熱することが容易となる。したがって、結露抑制に際して省エネルギ化を図ることができる。
【0065】
床見切り材60において電熱線71〜73は見切り板部61、挿入部62,63、連結部86により上下左右が囲まれているため、電熱線71〜73が破損することを回避できる。しかも、床見切り材60の取り付けに際して挿入部62,63とともに電熱線71〜73を床仕上材58とサッシ枠31との間に挿し入れる構成において、挿入部62,63の間に電熱線71〜73が配置されているため、挿入部62,63の挿し入れに伴って電熱線71〜73が床仕上材58やサッシ枠31に接触して傷つくということを回避できる。つまり、床見切り材60が取り付けられた状態ではもちろんのこと床見切り材60の取り付け作業時においても電熱線71〜73が破損することを回避できる。
【0066】
床見切り材60においてサッシ側挿入部63を挟んで電熱線71〜73とは反対側において、上側仕切部82と下側仕切部83との間に電気配線84が配設されているため、電気配線84をそれら仕切部82,83やサッシ側挿入部63により保護することができる。したがって、電熱線71〜73と同様に電気配線84が破損することを回避できる。しかも、電気配線84の下側に下側仕切部83が設けられているため、挿入部62,63を床仕上材58とサッシ枠31との間に挿し入れる際に電気配線84が傷つくことを下側仕切部83により回避できる。さらに、電気配線84を通じて電熱線71〜73への電力供給が行われるため、電気配線84が破損して電熱線71〜73への電力供給が停止するということを回避できる。
【0067】
サッシ枠31に結露水が付着している場合、結露水が付着していない場合に比べて床見切り材60の温度が高くなるように電熱線71〜73により温めることができるため、結露水を蒸発させて除去することができる。この場合、結露抑制に加えて結露除去を促進することになり、結露水により床下地材57や床仕上材58が傷むことを回避できる。
【0068】
(他の実施形態)
本発明は上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。
【0069】
(1)床見切り材60は少なくとも見切り板部61を有していればよい。この場合、電熱線71〜73は見切り板部61の下面に対して取り付けられていればよく、床仕上材58やサッシ枠31の下枠部37の上において見切り板部61との間に挟まれた状態で配設されていてもよい。また、電熱線71〜73は床見切り材60に沿って延びるように設けられていなくてもよく、床見切り材60を加熱可能に設けられていればよい。
【0070】
(2)床見切り材60には電熱線71〜73のうち少なくとも1つが設けられていればよい。つまり、電熱線71〜73がそれぞれ有する電熱部75のうち少なくとも1つが設けられていればよい。
【0071】
(3)床見切り材60を加熱する加熱手段としては、電磁誘導により床見切り材60を加熱するコイルや、床見切り材60に沿って湯を流すことで床見切り材60を加熱する配水管、熱風を床見切り材60に吹き付ける送風ファンなどが挙げられる。例えばコイルを加熱手段とした場合、床見切り材60に対するコイルの取り付け位置を設定することにより、床見切り材60を部分的に加熱する第1加熱部及び第2加熱部を形成することが可能となる。
【0072】
(4)電気配線84は、床見切り材60において電熱線71〜73と同様に挿入部62,63の間に配設されていてもよく、床側挿入部62の床側に配設されていてもよい。また、電気配線84は、建物10の改装に伴って新設又は移設された建物設備に接続された電線や電気ケーブルであってもよい。
【0073】
(5)床見切り材60において、挿入部62,63や、仕切部82,83、連結部86は板状に形成されていなくてもよい。例えば、それぞれ見切り板部61の長手方向に複数並べられていてもよい。
【0074】
(6)湿度を検出する湿度センサがサッシ枠31や居室11内に設けられていてもよい。この構成では、コントローラ91が湿度センサの検出信号に基づいて湿度を算出し、その湿度が所定値より大きい場合に、結露が発生しやすいとして電熱線71〜73により床見切り材60を加熱させる。具体的には、湿度が60%に達した場合に、居室11と屋外との温度差が10℃(例えば、居室11が25℃、屋外が15℃)であれば、床見切り材60を加熱させて結露発生を抑制する。
【符号の説明】
【0075】
10…建物、12…外壁部としての外壁、13…開口部としての窓部、31…サッシ枠、35…縦枠部、37…下枠部、56…床部、60…床見切り材、71…加熱手段を構成する電熱線としての第1電熱線、72…加熱手段を構成する電熱線としての第2電熱線、73…加熱手段を構成する電熱線としての第3電熱線、91…制御手段としてのコントローラ、92…屋内温度検出手段としての居室温度センサ、94…サッシ枠温度検出手段としてのサッシ枠温度センサ、95…結露水検出手段としてのサッシ水センサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の外壁部において床部から上方に延びるように設けられた開口部と、
前記開口部に取り付けられたサッシ枠と、
前記サッシ枠のうち前記開口部の下端となる下枠部と前記床部の床板端部との間において、前記下枠部に沿って設けられた床見切り材と、
前記床見切り材に設けられた加熱手段と、
を備えていることを特徴とする建物の床加熱システム。
【請求項2】
前記加熱手段として、前記サッシ枠の前記下枠部に対応する位置に設けられた第1加熱手段と、前記サッシ枠の縦枠部に対応する位置に設けられた第2加熱手段とを備え、
前記第1加熱手段による床加熱と前記第2加熱手段による床加熱とのうちいずれを実施するかを切り替える切替手段が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の建物の床加熱システム。
【請求項3】
前記床見切り材には、該床見切り材の長手方向に延びる仕切部により仕切られた複数の長手空間が設けられており、該複数の長手空間に、前記加熱手段を構成する電熱線と該電熱線とは異なる電気配線とのいずれかが各々収容されて設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の建物の床加熱システム。
【請求項4】
前記サッシ枠に設けられ、該サッシ枠の温度を検出するサッシ枠温度検出手段と、
前記サッシ枠温度検出手段の検出結果に基づいて、前記加熱手段による床加熱の実施態様を制御する制御手段と、
を備えていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の建物の床加熱システム。
【請求項5】
前記開口部の屋内側の温度を検出する屋内温度検出手段が前記屋内側に設けられており、
前記制御手段は、前記サッシ枠温度検出手段及び前記屋内温度検出手段の各検出結果に基づいて前記サッシ枠と前記屋内側との温度差を算出し、該温度差が判定値より大きい場合に前記加熱手段による床加熱を実行させることを特徴とする請求項4に記載の建物の床加熱システム。
【請求項6】
前記サッシ枠に結露水が付着していることを検出する結露水検出手段が前記サッシ枠に設けられており、
前記制御手段は、前記結露水検出手段により結露水が検出されていない場合に前記実施態様を第1段階に設定し、前記結露水が検出された場合に前記実施態様を、前記加熱手段による床加熱に際しての加熱量が前記第1段階よりも大きい第2段階に設定することを特徴とする請求項4又は5に記載の建物の床加熱システム。
【請求項7】
前記加熱手段は、前記床見切り材に対して複数設けられており、
前記制御手段は、前記サッシ枠温度検出手段の検出結果に基づいて、複数の前記加熱手段の各実施態様を個別に制御することを特徴とする請求項4乃至6のいずれか1項に記載の建物の床加熱システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−144925(P2012−144925A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−4811(P2011−4811)
【出願日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(504093467)トヨタホーム株式会社 (391)
【Fターム(参考)】