説明

建物の換気システム

【課題】建物の屋内空間の換気を行う換気システムにおいて、その設置スペースを容易に確保可能とした上で、屋内空間の換気を効率良く行えるようにする。
【解決手段】建物100の周囲の複数箇所に、建物100の屋内空間の下部領域に外気を供給するための給気タワー10と、建物100の屋内空間の上部領域から空気を排出するための排気タワー20とが設置された構成とする。その際、これら各給気タワー10および各排気タワー20を、建物100の周囲の複数箇所に設置された建物100の耐震補強を図るための耐震補強構体50の各々の設置スペース内に設置された構成とする。これにより、建物の換気システムを設置するための専用スペースを確保する必要をなくす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、建物の屋内空間の換気を行う換気システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、建物の換気システムとして、屋内空間の下部領域に外気を供給するとともに、その上部領域から空気を排出するように構成されたものが広く知られている。
【0003】
このような換気システムを採用した場合には、いわゆる煙突効果によって屋内空間における空気の流れがスムーズになるので、屋内空間の換気効率を高めることができる。
【0004】
「特許文献1」には、このような換気システムにおいて、屋内空間の空気を排出するための排気タワーを備えたものが記載されている。
【0005】
また「特許文献2」には、地中構造物の換気システムとして、地中構造物の本体中央部に設置された排気タワーを介して屋内空間の空気を排出するとともに、本体周囲に形成された給気縦穴を介して屋内空間に外気を供給するように構成されたものが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−194826号公報
【特許文献2】特開平6−117121号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
建物の換気システムとして、建物の周囲の複数箇所に、屋内空間の下部領域に外気を供給するための給気タワーと、屋内空間の上部領域から空気を排出するための排気タワーとがそれぞれ設置された構成とすれば、屋内空間の換気を一層効率良く行うことが可能となり、かつ、既設の建物に対しても換気システムを設置することが容易に可能となる。
【0008】
しかしながら、このようにした場合において、建物の周囲に、複数の給気タワーおよび排気タワーを設置するための専用スペースを確保することは、必ずしも容易でない、という問題がある。
【0009】
特に、建物の周囲の複数箇所に、その耐震補強を図るための耐震補強構体が設置される場合には、複数の給気タワーおよび排気タワーを設置するための専用スペースを確保することは、かなり困難なものとなる、という問題がある。
【0010】
本願発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、建物の屋内空間の換気を行う換気システムにおいて、その設置スペースを容易に確保可能とした上で、屋内空間の換気を効率良く行うことができる建物の換気システムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願発明は、耐震補強構体と関連付けて給気タワーおよび排気タワーが設置された構成とすることにより、上記目的達成を図るようにしたものである。
【0012】
すなわち、本願発明に係る建物の換気システムは、
建物の屋内空間の換気を行う換気システムにおいて、
上記建物の周囲の複数箇所に、上記屋内空間の下部領域に外気を供給するための給気タワーと、上記屋内空間の上部領域から空気を排出するための排気タワーと、がそれぞれ設置された構成を有しており、
上記建物の周囲の複数箇所に、上記建物の耐震補強を図るための耐震補強構体が設置されており、
これら各耐震補強構体の設置スペース内に、上記各給気タワーおよび上記各排気タワーが設置されている、ことを特徴とするものである。
【0013】
上記各「耐震補強構体」の具体的な構成や、その具体的な設置個数あるいは設置箇所等は、特に限定されるものではない。
【0014】
上記各「給気タワー」および上記各「排気タワー」は、各耐震補強構体の設置スペース内に設置された構成となっているが、その際、1つの耐震補強構体の設置スペース内に「給気タワー」および「排気タワー」が共に設置された構成となっていてもよいし、1つの耐震補強構体の設置スペース内に「給気タワー」および「排気タワー」のうちのいずれか一方のみが設置された構成となっていてもよい。また、これら各「給気タワー」および各「排気タワー」は、そのいずれに関しても、各耐震補強構体と別体で構成されたものであってもよいし、各耐震補強構体の一部として構成されたものであってもよい。
【0015】
上記各「耐震補強構体の設置スペース内」とは、平面視において耐震補強構体を設置するのに必要なスペースの範囲内であることを意味するものである。
【発明の効果】
【0016】
上記構成に示すように、本願発明に係る建物の換気システムは、建物の周囲の複数箇所に、その屋内空間の下部領域に外気を供給するための給気タワーと、その屋内空間の上部領域から空気を排出するための排気タワーとがそれぞれ設置された構成を有しているが、これら各給気タワーおよび各排気タワーは、建物の周囲の複数箇所に設置された耐震補強構体の各々の設置スペース内に設置されているので、次のような作用効果を得ることができる。
【0017】
すなわち、給気タワーおよび排気タワーが複数箇所に設置された構成とすることにより、屋内空間の換気を効率良く行うことができる。その際、これら給気タワーおよび排気タワーが建物の周囲に設置された構成とすることにより、既設の建物に対しても換気システムを設置することが容易に可能となる。
【0018】
しかも、これら各給気タワーおよび各排気タワーは、建物の周囲の複数箇所に設置された耐震補強構体の各々の設置スペース内に設置されているので、建物の換気システムを設置するための専用スペースを確保する必要をなくすことができる。
【0019】
このように本願発明によれば、建物の屋内空間の換気を行う換気システムにおいて、その設置スペースを容易に確保可能とした上で、屋内空間の換気を効率良く行うことができる。
【0020】
上記構成において、各給気タワーを鋼管で構成した上で、これら各給気タワーの上端部近傍に、その外表面に対して散水を行うための散水装置が設けられた構成とすれば、次のような作用効果を得ることができる。
【0021】
すなわち、散水装置からの散水による気化潜熱で給気タワーを冷却することができるので、これに伴い給気タワー内の空気も冷却することができ、これにより給気タワー内における下降気流の生成を促進することができる。そしてこれにより、建物の屋内空間の下部領域に外気を供給するための給気タワーとしての機能を高めることができる。
【0022】
上記構成において、各耐震補強構体として、鉛直方向に延びる鋼管と、この鋼管と建物の主体構造とを連結する連結部材とを備えた構成とした上で、各給気タワーおよび各排気タワーを各耐震補強構体の鋼管で構成するようにすれば、次のような作用効果を得ることができる。
【0023】
すなわち、各給気タワーおよび各排気タワー自体が、各耐震補強構体の一部を構成することとなるので、最小限のスペースで、給気タワー、排気タワーおよび耐震補強構体を設置することができる。また、耐震補強構体の構成として、給気タワーや排気タワーが耐震補強構体とは別個に設置されることに配慮したものとする必要がなくなるので、耐震補強構体の構成の自由度を高めることができる。
【0024】
上記構成において、各給気タワーおよび各排気タワーを、給気タワーを下にして上下直列で配置された複合タワーとして構成すれば、給気タワーおよび排気タワーの設置効率を高めることができる。そしてこれにより、耐震補強構体の構成を一定に維持したまま、屋内空間の換気効率をさらに高めることができる。
【0025】
上記構成において、各排気タワーが、各耐震補強構体の上端部に載置固定された構成とすれば、各排気タワーの設置効率を高めることができ、また、その設置コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本願発明の一実施形態に係る建物の換気システムを備えた建物を示す斜視図
【図2】図1のII−II線断面図
【図3】図1のIII 方向矢視詳細図
【図4】図3のIV−IV線断面図
【図5】上記実施形態の第1変形例を示す、図4と同様の図
【図6】上記実施形態の第2変形例を示す、図4と同様の図
【図7】上記実施形態の第3変形例を示す、図4と同様の図
【図8】上記実施形態の第4変形例を示す、図4と同様の図
【図9】上記実施形態の第5変形例を示す、図2と略同様の図
【図10】上記実施形態の第6変形例を示す、図2と略同様の図
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を用いて、本願発明の実施の形態について説明する。
【0028】
図1は、本願発明の一実施形態に係る建物の換気システムを備えた建物100を示す斜視図であり、図2は、図1のII−II線断面図である。
【0029】
これらの図に示すように、本実施形態に係る建物の換気システムは、工場や倉庫等のような大きな屋内空間102を有する建物100に対して、その屋内空間102の換気を行う換気システムであって、屋内空間102の下部領域に外気を供給するための給気タワー10と、屋内空間102の上部領域から空気を排出するための排気タワー20とを備えた構成となっている。
【0030】
建物100は、南北両側に緩やかに傾斜した屋根116を有している。
【0031】
この建物100には、その周囲の6箇所に、建物100の耐震補強を図るための耐震補強構体50が設置されている。
【0032】
この耐震補強構体50は、建物100の北側の側壁112に沿って互いに略等間隔で3箇所に設置されるとともに、建物100の南側の側壁114に沿って互いに略等間隔で、かつ、北側の側壁112に沿って設置された各耐震補強構体50と対向するようにして3箇所に設置されている。
【0033】
これら各耐震補強構体50は、鉛直方向に延びる柱状部材52と、この柱状部材52と建物100の主体構造(これについては後述する)とを上下方向の3箇所において連結する連結部材54、56とを備えた構成となっている。
【0034】
そして、北側の側壁112に沿って設置された各耐震補強構体50の設置スペース内に、給気タワー10がそれぞれ2本ずつ設置されるとともに、南側の側壁114に沿って設置された各耐震補強構体50の設置スペース内に、排気タワー20がそれぞれ2本ずつ設置されている。
【0035】
これら各給気タワー10および各排気タワー20は、いずれも円筒状に形成された鋼管で構成されており、建物100が設置されている地面から建物100の屋根116よりも高い位置まで鉛直方向に延びている。
【0036】
次に、これら各給気タワー10および各排気タワー20の具体的な構成について説明する。
【0037】
まず、給気タワー10の構成について説明する。
【0038】
図2に示すように、給気タワー10には、外気を導入するための外気導入口12と、この外気導入口12から導入された外気を下方へ導くための外気通路14と、この外気通路14に沿って下方へ導かれた外気を屋内空間102の下部領域に吹き出すための外気吹出口16とが形成されている。
【0039】
その際、外気導入口12は、給気タワー10の上端部において外気通路14から北向きに開口している。一方、外気吹出口16は、給気タワー10の下端部において外気通路14から南向きに開口しており、北側の側壁112の下端部において屋内空間102と連通している。
【0040】
この給気タワー10には、その外気通路14内に散水をするための散水装置30が配置されている。
【0041】
この散水装置30は、粒子径100〜1000μm程度の細かい水滴を散水するための散水ノズル32と、この散水ノズル32に対する給水制御を行うための給水制御ユニット34とを備えた構成となっている。
【0042】
散水ノズル32は、外気通路14の上端部(すなわち外気導入口12よりもやや下方の位置)において、外気通路14の略中央位置に配置されている。その際、この散水ノズル32は、下向きに開口するように配置されており、水滴を下方へ向けて略円錐状に散水するようになっている。
【0043】
給水制御ユニット34は、給気タワー10の上端部(すなわち外気通路14内の最上端部であって、建物100の屋根116よりも上方の位置)において、給気タワー10の周面壁に支持されている。その際、この給水制御ユニット34は、その一側壁面を給気タワー10の周面壁から南側へ向けて露出させるようにして配置されている。そして、この南側に露出した側壁面は、給水制御のための駆動電力を太陽光により発電する太陽電池パネル34aとして構成されている。
【0044】
次に、排気タワー20の構成について説明する。
【0045】
図2に示すように、排気タワー20には、屋内空間102の空気をその上部領域から該排気タワー20に流入させるための内気流入口22と、この内気流入口22から流入した空気を上方へ導くための内気通路24と、この内気通路24に沿って上方へ導かれた空気を外部空間へ排出するための内気排出口26とが形成されている。
【0046】
その際、内気流入口22は、排気タワー20の上下方向中央部よりもやや上方の位置において内気通路24から北向きに開口しており、南側の側壁114の上端部において屋内空間102と連通している。一方、内気排出口26は、排気タワー20の上端縁において上向きに開口している。
【0047】
この排気タワー20において、内気通路24よりも下方に位置する部分は、内気通路24と同一断面形状で排気タワー20の下端縁まで延びる内気通路延長部24Eとして形成されている。
【0048】
この排気タワー20の下端部には、建物100で発生した廃熱を該排気タワー20の内気通路24に供給するための廃熱供給口28が、内気通路延長部24Eから南向きに開口するように形成されている。この廃熱供給口28には、建物100で使用される空調装置の室外機40が取り付けられており、その排気ファンからの排出熱を、内気通路延長部24Eを介して内気通路24に導くようになっている。
【0049】
次に、耐震補強構体50の具体的な構成について説明する。
【0050】
図3は、図1のIII 方向矢視詳細図であり、図4は、図3のIV−IV線断面図である。
【0051】
これらの図に示すように、建物100には、その屋内空間102における南側の側壁114(図4において2点鎖線で示す)の近傍に、建物100の主体構造120が設置されている。
【0052】
この主体構造120は、鉛直方向に延びる柱状部材122と、この柱状部材122に対して上下方向の複数箇所において端部が接合された梁部材124とを備えた鉄骨架構で構成されている。
【0053】
その際、柱状部材122は、断面形状が比較的大きいH形鋼で構成されており、そのウェブが南側の側壁114と面直となるようにして配置されており、その下端部において地面に固定されている。一方、梁部材124は、断面形状が比較的小さいH形鋼で構成されており、そのウェブが南側の側壁114と平行になるように配置されており、その端部においてガセットプレート126を介して柱状部材122に接合されている。そして、本実施形態においては、南側の側壁114が柱状部材122のフランジに沿って配置された構成となっている。
【0054】
耐震補強構体50の一部を構成する柱状部材52は、主体構造120の柱状部材122から南側の側壁114に対して面直方向に所定距離離れた位置に配置されており、その下端部において地面に固定されている。この柱状部材52は、断面形状が比較的大きいH形鋼で構成されており、そのウェブが南側の側壁114と面直となるようにして配置されている。
【0055】
耐震補強構体50の一部を構成する連結部材54は、耐震補強構体50の柱状部材52と主体構造120の柱状部材122とを連結するようにして配置されている。この連結部材54は、断面形状が比較的小さいH形鋼で構成されており、そのウェブが南側の側壁114と面直でかつ柱状部材52、122を構成する各H形鋼のウェブと面一で鉛直方向に延びるようにして配置されている。そして、この連結部材54は、その両端部において柱状部材52のフランジおよび柱状部材122のフランジに接合されている。
【0056】
耐震補強構体50の一部を構成する連結部材56は、連結部材54の両側に左右対称の位置関係で配置された上下2対のブレース材で構成されており、耐震補強構体50の柱状部材52と主体構造120の梁部材124とを連結するようにして配置されている。その際、これら各連結部材56における柱状部材52側の端部には、その張力を調整するためのターンバックル58が介装されている。
【0057】
これら各連結部材56の柱状部材52への連結は、柱状部材52に取り付けられたガセットプレート62に対してボルト締めすることにより行われている。また、これら各連結部材56の梁部材124への連結は、梁部材124に取り付けられたタブプレート128に対してボルト締めすることにより行われている。
【0058】
耐震補強構体50は、平面視において略二等辺三角形の設置スペースを占有しており、連結部材54とその両側の連結部材56との間には、1対の略直角三角形の遊休スペースが形成されている。そして、これら1対の遊休スペースの各々に位置するようにして、1対の排気タワー20の各々が設置されている。
【0059】
なお、北側の側壁112に沿って設置された耐震補強構体50についても、南側の側壁114に沿って設置された耐震補強構体50と全く同様の構成であり、その1対の遊休スペースの各々に位置するようにして1対の給気タワー10の各々が設置されている点に関しても同様である。
【0060】
次に、本実施形態の作用効果について説明する。
【0061】
本実施形態に係る建物の換気システムは、建物100の周囲の複数箇所に、その屋内空間102の下部領域に外気を供給するための給気タワー10と、その屋内空間102の上部領域から空気を排出するための排気タワー20とがそれぞれ設置された構成を有しているので、屋内空間102の換気を効率良く行うことができ、かつ、既設の建物に対しても換気システムを設置することが容易に可能となる。
【0062】
その際、これら各給気タワー10および各排気タワー20は、建物100の周囲の複数箇所に設置された耐震補強構体50の各々の設置スペース内に設置されているので、建物100の換気システムを設置するための専用スペースを確保する必要をなくすことができる。
【0063】
このように本実施形態によれば、建物100の屋内空間102の換気を行う換気システムにおいて、その設置スペースを容易に確保可能とした上で、屋内空間102の換気を効率良く行うことができる。
【0064】
その際、本実施形態に係る建物の換気システムにおいては、給気タワー10に、その外気通路14内に散水をするための散水装置30が配置されているので、この散水装置30から散水された水滴が自然落下することにより、外気通路14内に下降気流を形成することができる。そしてこれにより、屋内空間102の給気側においても煙突効果を増進させることができるので、屋内空間102の換気効率をさらに高めることができる。
【0065】
しかも、この散水装置30から散水された水滴が自然落下する際、その蒸発冷却作用により外気通路14内の空気を冷却することができる。そして、このようにして冷却された空気が屋内空間102の下部領域に流入することとなるので、これにより屋内空間102の冷却効果を高めることができる。
【0066】
さらに、この散水装置30は、その給水制御ユニット34が建物100の屋根116よりも高い位置に配置されており、その給気タワー10の周面壁から南側へ向けて露出した側壁面は太陽電池パネル34aとして構成されているので、給水制御のための駆動電力を太陽光により発電することが可能となる。
【0067】
また、本実施形態においては、排気タワー20に、建物100で発生した廃熱(具体的には空調装置の室外機40からの排出熱)を、内気通路延長部24Eを介して内気通路24に供給するための廃熱供給口28が形成されているので、この廃熱供給口28から内気通路延長部24E内を上昇する熱により、内気通路24内における上昇気流の形成を促進することができ、その分だけさらに換気効率を高めることができる。
【0068】
上記実施形態においては、耐震補強構体50が、建物100の周囲の6箇所に設置されるとともに、給気タワー10および排気タワー20が、それぞれ3箇所ずつ設置されているものとして説明したが、耐震補強構体50が5箇所以下あるいは7箇所以上に設置された構成とすることも可能である。また、耐震補強構体50の設置箇所すべてに、給気タワー10や排気タワー20が設置された構成とすることは必ずしも必要ではない。
【0069】
上記実施形態においては、換気システムの適用対象が単一の大きい屋内空間102である場合について説明したが、複数の小さい屋内空間に仕切られているような場合においても、これら各屋内空間を換気システムの適用対象として設定すれば、上記実施形態の場合と同様の作用効果を得ることができる。
【0070】
次に、上記実施形態の変形例について説明する。
【0071】
まず、上記実施形態の第1変形例について説明する。
【0072】
図5は、本変形例に係る建物の換気システムの一部を示す、図4と同様の図である。
【0073】
同図に示すように、本変形例に係る建物の換気システムにおいても、その基本的な構成は、上記実施形態の場合と同様であるが、耐震補強構体150の構成が上記実施形態の場合と異なっている。
【0074】
すなわち、本変形例の耐震補強構体150は、鉛直方向に延びる柱状部材152が、上記実施形態の柱状部材52を構成するH形鋼の断面形状をさらに大きくした断面形状を有する変形H形鋼で構成されている。この柱状部材152は、そのウェブ152Wが建物100の南側の側壁114と面直な方向に長く延びており、その一方のフランジ152F1において、建物100の主体構造130における柱状部材122のフランジに、ボルト締めにより直接連結されている。そしてこれにより、この柱状部材152は、上記実施形態の連結部材54としての機能をも兼ね備えた構成となっている。
【0075】
この柱状部材52における他方のフランジ152F2は、上記一方のフランジ152F1よりも広幅で形成されており、このフランジ152F1とウェブ152Wとの間には、左右1対のガセットプレート162が上下方向に所定間隔をおいて複数箇所に取り付けられている。
【0076】
本変形例の耐震補強構体150は、上記実施形態の耐震補強構体50における連結部材56に対応する連結部材156が、ブレース材ではなく山形鋼で構成されている。この連結部材156は、柱状部材52の左右両側において、上記実施形態の連結部材56と略同様の位置関係で、耐震補強構体150の柱状部材152と主体構造130の梁部材134とを連結している。この連結は、柱状部材152の両端部をガセットプレート162と梁部材134に取り付けられたタブプレート138とに対して、それぞれボルト締めすることにより行われている。
【0077】
なお、本変形例においては、建物100の主体構造130を構成する梁部材134が、上記実施形態の梁部材124よりも大きい断面形状で形成されており、また、タブプレート138の形状および配置も、上記実施形態の場合と多少異なっている。そして、本変形例においては、南側の側壁114が梁部材134に沿って配置された構成となっている。
【0078】
本変形例の耐震補強構体150も、上記実施形態の耐震補強構体50と同様、平面視において略二等辺三角形の設置スペースを占有しており、連結部材54とその両側の連結部材56との間には、1対の略直角三角形の遊休スペースが形成されている。そして、これら1対の遊休スペースの各々に位置するようにして、1対の排気タワー20の各々が設置されている。
【0079】
なお、北側の側壁112に沿って設置される耐震補強構体150についても、南側の側壁114に沿って設置された耐震補強構体150と全く同様の構成であり、その1対の遊休スペースの各々に位置するようにして1対の給気タワー10の各々が設置される点に関しても同様である。
【0080】
本変形例の構成を採用した場合においても、上記実施形態の場合と同様の作用効果を得ることができる。
【0081】
しかも、本変形例の構成を採用することにより、耐震補強構体150の構成を簡素化することができる。
【0082】
次に、上記実施形態の第2変形例について説明する。
【0083】
図6は、本変形例に係る建物の換気システムの一部を示す、図4と同様の図である。
【0084】
同図に示すように、本変形例に係る建物の換気システムにおいても、その基本的な構成は、上記実施形態の場合と同様であるが、耐震補強構体250の構成が上記実施形態の場合と異なっており、また、その設置スペース内に単一の排気タワー20が設置されている点でも上記実施形態の場合と異なっている。
【0085】
なお、本変形例においては、建物100の主体構造130および南側の側壁114の配置が上記第1変形例の場合と同様の構成となっている。
【0086】
本変形例の耐震補強構体250は、柱状架構252と、この柱状架構252と主体構造130とを上下方向の複数箇所において連結する連結部材254とで構成されている。
【0087】
柱状架構252は、平面視において矩形の各コーナ部に位置するようにして鉛直方向に延びる4本の山形鋼252Aと、上下方向の複数箇所において、これら4本の山形鋼252Aと外接するようにして井桁に組まれた4本の山形鋼252Bとで構成されている。その際、井桁に組まれた4本の山形鋼252Bは、ボルト締めにより互いに固定されるとともに、鉛直方向に延びる4本の山形鋼252Aの各々に対してボルト締めにより固定されている。
【0088】
連結部材254は、平面視において略W形に配置された4本の山形鋼で構成されている。その際、これら4本の山形鋼のうち、内側の2本の山形鋼は、その両端部が柱状架構252の山形鋼252Bと主体構造130の柱状部材122のフランジに取り付けられたタブプレート236とにそれぞれボルト締めにより連結されており、また、外側の2本の山形鋼は、その両端部が柱状架構252のの山形鋼252Bと主体構造130の梁部材134に取り付けられたタブプレート238とにそれぞれボルト締めにより連結されている。
【0089】
本変形例においては、耐震補強構体250の柱状架構252における井桁に組まれた4本の山形鋼252Bの内側の空間に排気タワー20が設置されている。すなわち、本変形例においても、排気タワー20が耐震補強構体250の設置スペース内に設置されている。ただし、この排気タワー20において、その内気通路24に屋内空間102の空気を流入させるための内気流入口(図示せず)は、主体構造130の柱状部材122を避けた位置において屋内空間102と連通するように形成されている。
【0090】
なお、北側の側壁112に沿って設置される耐震補強構体250についても、南側の側壁114に沿って設置された耐震補強構体250と全く同様の構成であり、その井桁に組まれた4本の山形鋼252Bの内側の空間に単一の給気タワー10が設置される点に関しても同様である。
【0091】
本変形例の構成を採用した場合においても、上記実施形態の場合と同様の作用効果を得ることができる。
【0092】
しかも、本変形例の構成を採用することにより、耐震補強構体250を山形鋼の組合せにより構築することができる。
【0093】
次に、上記実施形態の第3変形例について説明する。
【0094】
図7は、本変形例に係る建物の換気システムの一部を示す、図4と同様の図である。
【0095】
同図に示すように、本変形例に係る建物の換気システムにおいても、その基本的な構成は、上記実施形態の場合と同様であるが、耐震補強構体350の構成が上記実施形態の場合と異なっており、その設置スペース内に単一の排気タワー320が設置されている点でも上記実施形態の場合と異なっている。
【0096】
なお、本変形例においては、建物100の主体構造130および南側の側壁114の配置が上記第1変形例の場合と同様の構成となっている。
【0097】
本変形例の耐震補強構体350は、鉛直方向に延びる鋼管352と、この鋼管352と建物100の主体構造130の柱状部材122とを上下方向の複数箇所において連結する連結部材354とで構成されている。その際、連結部材354は、主体構造120の柱状部材122のウェブと面一になるようにして南側の側壁114と面直な方向に延びている。
【0098】
そして、この耐震補強構体350の鋼管352により、本変形例の排気タワー320が構成されている。その際、この排気タワー320は、耐震補強構体350の構成要素としての剛性を十分に確保するため、上記実施形態の排気タワー20よりも厚肉で形成されている。なお、この排気タワー320において、その内気通路324に屋内空間102の空気を流入させるための内気流入口(図示せず)は、主体構造130の柱状部材122を避けた位置において屋内空間102と連通するように形成されている。
【0099】
なお、北側の側壁112に沿って設置される耐震補強構体350についても、南側の側壁114に沿って設置された耐震補強構体350と全く同様の構成であり、その構成要素としての鋼管352が上記実施形態の給気タワー10よりも厚肉の給気タワーを構成している点に関しても同様である。
【0100】
本変形例の構成を採用した場合においても、上記実施形態の場合と同様の作用効果を得ることができる。
【0101】
しかも、本変形例の構成を採用することにより、各給気タワーおよび各排気タワー320自体が、各耐震補強構体350の一部を構成することとなるので、最小限のスペースで、給気タワー、排気タワー320および耐震補強構体350を設置することができる。また、耐震補強構体350の構成として、給気タワーや排気タワー320が耐震補強構体350とは別個に設置されることに配慮したものとする必要がなくなるので、耐震補強構体350の構成の自由度を高めることができる。
【0102】
次に、上記実施形態の第4変形例について説明する。
【0103】
図8は、本変形例に係る建物の換気システムの一部を示す、図4と同様の図である。
【0104】
同図に示すように、本変形例に係る建物の換気システムにおいても、その基本的な構成は、上記実施形態の場合と同様であるが、耐震補強構体50の設置スペース内に給気タワー10および排気タワー20が共に設置されている点で上記実施形態の場合と異なっており、また、給気タワー10の上端部近傍に、その外表面に対して散水を行うための散水装置460が設けられている点でも上記実施形態の場合と異なっている。
【0105】
すなわち、本変形例においては、上記実施形態と同様の耐震補強構体50を有しているが、連結部材54とその両側の連結部材56との間の1対の遊休スペースに、1対の排気タワー20ではなく、給気タワー10と排気タワー20とが1本ずつ設置されている。
【0106】
そして、散水装置460は、耐震補強構体50における、給気タワー10の上端部近傍に配置された連結部材54に載置固定されている。この散水装置460は、横向きに開口する1対の散水ノズル462および給水制御ユニット464を備えており、その散水ノズル462から給気タワー10の外表面に対して散水を行うようになっている。
【0107】
なお、北側の側壁112に沿って設置される耐震補強構体50についても、南側の側壁114に沿って設置された耐震補強構体50と全く同様の構成であり、また、これら各耐震補強構体50に給気タワー10と排気タワー20とが1本ずつ設置される点および散水装置460が設置される点に関しても同様である。
【0108】
本変形例の構成を採用した場合においても、上記実施形態の場合と同様の作用効果を得ることができる。
【0109】
しかも、本変形例の構成を採用することにより、散水装置460からの散水による気化潜熱で給気タワー10を冷却することができるので、これに伴い給気タワー10の外気通路14内の空気も冷却することができ、これにより外気通路14内における下降気流の生成を促進することができる。そしてこれにより、建物100の屋内空間102の下部領域に外気を供給するための給気タワー10としての機能を高めることができる。
【0110】
なお、本変形例の散水装置460は、上記実施形態の散水装置30の代わりに設けるようにしてもよいし、上記実施形態の散水装置30に追加して設けるようにしてもよい。
【0111】
また、本変形例に係る建物の換気システムのように、耐震補強構体50が、南側の側壁114および北側の側壁112に沿って複数箇所に設置された構成とする代わりに、東側の側壁および西側の側壁に沿って複数箇所に設置された構成とした上で、各耐震補強構体50の設置スペース内に設置される給気タワー10および排気タワー20を、給気タワー10が北側で排気タワー20が南側に位置するようにして設置すれば、日当たりの良い排気タワー20の昇温効果を高めることができるとともに、この排気タワー20の存在によって日陰になる給気タワー10の冷却効果を高めることができる。
【0112】
次に、上記実施形態の第5変形例について説明する。
【0113】
図9は、本変形例に係る建物の換気システムの一部を示す、図2と略同様の図である。
【0114】
同図に示すように、本変形例に係る建物の換気システムにおいても、その基本的な構成は、上記実施形態の場合と同様であるが、各耐震補強構体50の設置スペース内に、給気タワー510および排気タワー520が、給気タワー510を下にして上下直列で配置された複合タワーとして設置されている点で上記実施形態の場合と異なっている。
【0115】
すなわち、排気タワー520は、内気流入口522、内気通路524および内気排出口526が上記実施形態の排気タワー20の場合と同様に配置された構成となっているが、上記実施形態の排気タワー20において内気通路延長部24Eを構成している部分は存在せず、その部分に給気タワー510が組み込まれた構成となっている。
【0116】
その際、給気タワー510は、上記実施形態の給気タワー10と同様、外気導入口512、外気通路514および外気吹出口516が形成された構成となっているが、その外気通路514は、上記実施形態の給気タワー10における外気通路14よりも短くなっている。また、この外気通路514には、下向きに開口する散水ノズル532および給水制御ユニット534を備えた散水装置530が配置されているが、その配置が上記実施形態の散水装置30の場合と多少異なっている。
【0117】
本変形例においては、上記実施形態と同様の耐震補強構体50を有しているが、連結部材54とその両側の連結部材56との間の1対の遊休スペースの各々に、給気タワー510および排気タワー520からなる複合タワーが1本ずつ設置されている。
【0118】
本変形例の構成を採用した場合においても、上記実施形態の場合と同様の作用効果を得ることができる。
【0119】
しかも、本変形例の構成を採用することにより、上記実施形態における各給気タワー10の設置箇所および各排気タワー20の設置箇所に、給気タワー510および排気タワー520を1つの複合タワーとして設置することができるので、その設置効率を高めることができる。例えば、上記実施形態の場合と同様の設置環境であれば、12本の給気タワー510および排気タワー520を設置することができる。
【0120】
そして、このように給気タワー510および排気タワー520の設置効率を高めることができることにより、耐震補強構体50の構成を一定に維持したまま、屋内空間102の換気効率をさらに高めることができる。
【0121】
次に、上記実施形態の第6変形例について説明する。
【0122】
図10は、本変形例に係る建物の換気システムの一部を示す、図2と略同様の図である。
【0123】
同図に示すように、本変形例に係る建物の換気システムにおいては、各排気タワー620が、各耐震補強構体650の上端部に載置固定されている。
【0124】
すなわち、本変形例の耐震補強構体650は、鉛直方向に延びる柱状部材652と、この柱状部材652の上下方向複数箇所において該柱状部材652と建物100の主体構造(図示せず)とを連結する連結部材654とを備えた構成となっている。その際、連結部材654と建物100の主体構造との連結構造は、上記実施形態の場合と同様である。
【0125】
排気タワー620は、上記第5変形例の排気タワー520と同様、内気流入口622、内気通路624および内気排出口626を備えた構成となっている。
【0126】
なお、本変形例に係る建物の換気システムは、建物100の北側においては、上記実施形態の場合と同様、耐震補強構体50および1対の給気タワー10が北側の側壁112に沿って複数箇所に設置された構成となっている。
【0127】
本変形例の構成を採用した場合においても、上記実施形態の場合と同様の作用効果を得ることができる。
【0128】
しかも、本変形例の構成を採用することにより、各排気タワー620の設置効率を高めることができ、また、その設置コストを低減することができる。
【0129】
なお、上記実施形態および各変形例において諸元として示した数値は一例にすぎず、これらを適宜異なる値に設定してもよいことはもちろんである。
【符号の説明】
【0130】
10、510 給気タワー
12、512 外気導入口
14、514 外気通路
16、516 外気吹出口
20、320、520、620 排気タワー
22、522、622 内気流入口
24、324、524、624 内気通路
24E 内気通路延長部
26、526、626 内気排出口
28 廃熱供給口
30、460、530 散水装置
32、462、532 散水ノズル
34、464、534 給水制御ユニット
34a 太陽電池パネル
40 空調装置の室外機
50、150、250、350、650 耐震補強構体
52、152、652 柱状部材
54、56、156、254、354、654 連結部材
58 ターンバックル
62、126、162 ガセットプレート
100 建物
102 屋内空間
112 北側の側壁
114 南側の側壁
116 屋根
120、130 主体構造
122 柱状部材
124、134 梁部材
128、138、236、238 タブプレート
152F1、152F2 フランジ
152W ウェブ
252 柱状架構
252A、252B 山形鋼
352 鋼管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の屋内空間の換気を行う換気システムにおいて、
上記建物の周囲の複数箇所に、上記屋内空間の下部領域に外気を供給するための給気タワーと、上記屋内空間の上部領域から空気を排出するための排気タワーと、がそれぞれ設置された構成を有しており、
上記建物の周囲の複数箇所に、上記建物の耐震補強を図るための耐震補強構体が設置されており、
これら各耐震補強構体の設置スペース内に、上記各給気タワーおよび上記各排気タワーが設置されている、ことを特徴とする建物の換気システム。
【請求項2】
上記各給気タワーが、鋼管で構成されており、
これら各給気タワーの上端部近傍に、該給気タワーの外表面に対して散水を行うための散水装置が設けられている、ことを特徴とする請求項1記載の建物の換気システム。
【請求項3】
上記各耐震補強構体が、鉛直方向に延びる鋼管と、この鋼管と上記建物の主体構造とを連結する連結部材とを備えてなり、
上記各給気タワーおよび上記各排気タワーが、上記各耐震補強構体の鋼管で構成されている、ことを特徴とする請求項1または2記載の建物の換気システム。
【請求項4】
上記各給気タワーおよび上記各排気タワーが、上記給気タワーを下にして上下直列で配置された複合タワーとして構成されている、ことを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の建物の換気システム。
【請求項5】
上記各排気タワーが、上記各耐震補強構体の上端部に載置固定されている、ことを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の建物の換気システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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