説明

建物の間仕切壁における通気構造

【課題】良好な通気状態を維持する上で、好適な構成を実現すること。
【解決手段】建物の間仕切壁10に設けられた開口部11には、ドア12が設けられ、開口部11の周縁部にはドア枠体20が設けられている。ドア枠体20の縦枠材21は、間仕切壁10の間仕切壁内周面29に離間対向して設けられた対向板部25と、間仕切壁10の厚み方向における対向板部25の両端部から対向板部25における間仕切壁内周面29との対向面側に延出し、間仕切壁10の壁面27,28に離間対向して設けられる一対の側板部26とを備える。この場合、縦枠材21と間仕切壁10との間に、間仕切壁10により仕切られた両空間の間で通気を可能とする通気通路30が形成されている。そして、縦枠材21の側板部26は、対向板部25に回動可能に取り付けられ、回動することにより間仕切壁10から離間する側へ移動可能となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の間仕切壁における通気構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に住宅等の建物では、間仕切壁の一部に開口部が形成されており、この開口部にドア等の建具が配設されている。この場合、開口部の周縁部にドア枠が設けられ、このドア枠の内側に建具が配設されるようになっている。
【0003】
ここで、間仕切壁の上記開口部を利用して、間仕切壁により仕切られた両空間の間で通気を行う通気構造が各種提案されている。例えば、特許文献1には、間仕切壁における開口側端面と枠体との間に、間仕切壁を挟んだ両空間を連通する通気通路を設けた構成が開示されている。かかる構成について具体的には、枠体は、間仕切壁の開口側端面に対して離間しかつ対向して設けられ、間仕切壁の壁厚み方向における両端部から当該枠体における開口側端面との対向面側に延びる一対の側壁部を備えている。各側壁部はそれぞれ、間仕切壁の壁面と間隙を有して対向している。この場合、側壁部により間仕切壁の開口側端面と枠体との間の隙間が遮蔽されている。これによれば、意匠性が損なわれることを抑制しつつ、間仕切壁により仕切られた両空間の間での通気が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−25291号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記特許文献1の構成では、通気通路が枠体の内側面に沿って略コ字状に形成されているため、通気通路に塵埃が溜まった場合に、その塵埃を除去することが困難であると思われる。特に、通気通路において間仕切壁の開口側端面と枠体との間の隙間部分は側壁部により遮蔽されているため、その隙間部分に溜まった塵埃については除去することが難しいと思われる。したがって、上述の構成では、通気通路内の塵埃により通気性の低下等の不都合が生じ場合に、それを改善することが困難であり、良好な通気状態を維持する上で未だ改善の余地を有しているといえる。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、良好な通気状態を維持する上で、好適な構成を実現することを主たる目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決すべく、第1の発明の建物の間仕切壁における通気構造は、建物の間仕切壁に設けられた開口部に、該開口部を開閉する建具が設けられている建物に適用され、前記建具の枠体は、前記開口部の周縁部に沿って、かつ前記間仕切壁の開口側端面に対向して設けられ、かつ前記間仕切壁の厚み方向における両端部から前記枠体における前記開口側端面との対向面側に延出し、前記間仕切壁の壁面に対向して設けられる一対の延出部を備え、前記枠体が前記間仕切壁から離間して配置されることで、前記枠体と前記間仕切壁との間に、前記間仕切壁により仕切られた両空間の間で通気を可能とする通気通路が形成された建物の間仕切壁における通気構造において、前記枠体は、その少なくとも一部が、前記通気通路に面して設けられ、前記間仕切壁から離間する側へ動作可能な可動枠部となっていることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、枠体の少なくとも一部からなる可動枠部を間仕切壁から離間する側へ動作させることで、可動枠部と間仕切壁との間隔を大きくすることができる。そのため、通気通路の少なくとも一部において通路幅を拡張し通気性の向上を図ったり、通気通路の少なくとも一部を露出させ同通路に溜まる塵埃を除去し易くしたりすることができる。したがって、本発明の構成は、良好な通気状態を維持する上で好適な構成といえる。
【0009】
第2の発明の建物の間仕切壁における通気構造は、第1の発明において、前記可動枠部は、回動部材により回動可能に軸支されており、回動されることにより前記間仕切壁から離間する側へ移動されることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、可動枠部を回動させることにより、当該可動枠部を容易に間仕切壁から離間させることができる。また、可動枠部が開口部の周縁部に沿って長尺状とされている場合には、可動枠部を当該周縁部の延びる方向に直交する方向へ回動可能とすることが望ましい。そうすれば、例えば、可動枠部を当該周縁部の延びる方向に回動可動とする場合と比べ、可動枠部を回動させる際の移動量を少なくすることができ、その結果回動作業を容易なものとすることができる。
【0011】
第3の発明の建物の間仕切壁における通気構造は、第1又は第2の発明において、前記可動枠部は、前記延出部を含んで構成されており、前記可動枠部が前記間仕切壁から離間する側へ動作されることで、前記通気通路における前記間仕切壁の開口側端面と前記枠体との間の隙間部分が露出されることを特徴とする。
【0012】
通気通路において間仕切壁の開口側端面と枠体との間の隙間部分は枠体の延出部により遮蔽されているため、その清掃がとりわけ困難となっており、それ故塵埃が堆積し易い。この点、本発明によれば、可動枠部を間仕切壁から離間する側に移動させることで、間仕切壁の開口側端面と枠体との間の隙間部分を露出させることができるため、かかる隙間部分の清掃を好適に実施できる。
【0013】
この場合、一対の各延出部をそれぞれ可動枠部の一部として構成し、これら各延出部を含む可動枠部が間仕切壁から離間する側に動作されることで、通気通路における間仕切壁の開口側端面と枠体との間の隙間部分が、間仕切壁により仕切られた両空間の側に露出されるようにすることが望ましい。そうすれば、上記隙間部分に溜まった塵埃を間仕切壁により仕切られた両空間のうちの一方の空間側から他方の空間側に押し出す等、かかる隙間部分における清掃作業をより一層行い易くすることができる。
【0014】
第4の発明の建物の間仕切壁における通気構造は、第1乃至第3のいずれかの発明において、前記可動枠部は、該可動枠部と前記間仕切壁との間隔を大小変化させる方向に移動可能であり、その移動により前記通気通路における通気量が調整可能とされていることを特徴とする。
【0015】
本発明によれば、可動枠部を、間仕切壁との間の間隔を大小変化させる方向に移動させることで、通気通路における通気量を調整できる。これにより、間仕切壁により仕切られた両空間の都度の屋内環境に応じて通気量を上げ下げできる等、好適な通気が可能となる。
【0016】
第5の発明の建物の間仕切壁における通気構造は、第1乃至第4のいずれかの発明において、前記可動枠部として、前記枠体において上部及び下部にそれぞれ設けられた上可動枠部及び下可動枠部を備え、前記上可動枠部及び前記下可動枠部はそれぞれ前記間仕切壁側に水平移動して当該間仕切壁に当接することで、前記通気通路の一部を閉鎖することが可能となっていることを特徴とする。
【0017】
ところで、住宅等の建物では、間仕切壁により仕切られた両空間の間で換気(通気)を行いつつ、両空間のうちの一方で空調装置により冷暖房を行うことがある。この場合、一方の空間において空調装置により冷やされたり暖められたりした空気が通気を行うことで他方の空間へ流出してしまうことが考えられる。そこで、本発明では、この点に着目し、枠体において可動枠部を上部と下部とに配置し、上部に配置された上可動枠部又は、下部に配置された下可動枠部を間仕切壁側に移動させることで、通気通路の上部又は下部を閉鎖できるようにしている。この場合、通気通路の上部及び下部のいずれか一方を閉鎖することで、通気通路の上部及び下部のいずれかのみを通じて通気を行うことが可能となる。そのため、例えば一方の空間で暖房を行っている場合には、通気通路の下部のみを通じて通気を行うことで、一方の空間の上側に滞留する暖かな空気が他方の空間へ流出するのを抑制できる。また、一方の空間で冷房を行っている場合には、通気通路の上部のみを通じて通気を行うことで、一方の空間の下側に滞留する冷たい空気が他方の空間へ流出するのを抑制できる。そのため、間仕切壁により仕切られた両空間のうちのいずれかで冷暖房を行っている場合でも、熱の流出を抑制しつつ通気を行うことが可能である。
【0018】
第6の発明の建物の間仕切壁における通気構造は、第1乃至第5のいずれかの発明において、前記枠体は、前記開口部の側縁部に沿って設けられた縦枠を有しており、前記可動枠部は、前記縦枠の下部に設けられ、前記縦枠の下端から上方に連続して形成されていることを特徴とする。
【0019】
縦枠と間仕切壁との間に通気通路を形成する場合、その通気通路は上下方向に長いものとなる。そのため、縦枠において上下方向全域に延びる長尺状の可動枠部を形成すると、可動枠部を動作させる作業が大掛かりになることが考えられる。その一方、かかる通気通路では塵埃が同通路の底部例えば床面等に溜まり易いことが想定される。そこで、本発明では、これらの点に着目し、縦枠の下部に可動枠部を設け、該可動枠部を縦枠の下端から上方に連続して形成する構成としている。この場合、縦枠の下部に設けられる可動枠部を間仕切壁から離間させる側に動作させることで、通気通路の底部に溜まる塵埃を好適に除去できるため、通気通路の清掃性を確保しながら、可動枠部を動作させる際の作業負荷を軽減できる。
【0020】
第7の発明の建物の間仕切壁における通気構造は、第1乃至第6のいずれかの発明において、前記間仕切壁の下端部には巾木が設けられており、前記枠体は、前記開口部の側縁部に沿って設けられた縦枠を有し、前記間仕切壁の壁面の正面視において、前記巾木の端部が、前記縦枠の前記延出部に連続して設けられており、前記可動枠部は、前記縦枠の下端から上方に連続して形成されていることを特徴とする。
【0021】
間仕切壁の下端部に巾木が設けられる場合には、意匠性の面から、間仕切壁の壁面の正面視において、巾木の端部と縦枠の延出部の下端部とが連続して設けられることが考えられる。かかる構成では、通気通路における空気の出入口となる通路開口の一部が巾木の端部により閉塞され、その結果通気通路の底部に溜まった塵埃が通気通路の外部に流れ出すことが巾木により妨げられるおそれがある。そのため、通気通路の底部において塵埃の堆積が促進されることが想定される。また、通気通路の底部に溜まった塵埃を取り除く際には、巾木が邪魔となり塵埃を取り除くことがより困難になると考えられる。この点、上記の構成によれば、可動枠部を間仕切壁から離間させる側に動作させることで、通気通路の底部に溜まる塵埃を好適に除去できるため、巾木の端部により通気通路の開口の一部が閉塞された構成においても、良好な通気状態を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】ドア及びドア枠体を示す正面図。
【図2】縦枠材及びその周辺の構成を示す縦断面図。
【図3】別例における上枠材及びその周辺の構成を示す斜視図。
【図4】可動枠部の別形態を示す模式図。
【図5】別例におけるドア及びドア枠体を示す正面図。
【図6】縦枠材をスライド可動とした構成を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明を具体化した一実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、図1はドア及びドア枠体を示す斜視図である。
【0024】
図1に示すように、住宅等の建物において、屋内には間仕切壁10が設けられており、この間仕切壁10により居室Xと廊下Yとが仕切られている(図2参照)。間仕切壁10の一部には、開口部11が形成されており、この開口部11を通じて居室Xと廊下Yとの間の行き来が可能となっている。開口部11には、当該開口部11を開閉するドア12が設けられている。ドア12は、片開き構造の開き戸からなる。
【0025】
開口部11の周縁部には、ドア枠体20が設けられている。ドア枠体20は、フラットアーチ状(門形)をなしており、このドア枠体20の内側にドア12が配設されている。ドア枠体20は、左右一対の縦枠材21,22と上枠材23とを備えて構成されており、縦枠材21,22が開口部11の側縁部に沿って配置され、上枠材23が開口部11の上縁部に沿って配置されている。これら各枠材21〜23はそれぞれ、間仕切壁10において開口部11の周縁部に対応する間仕切壁内周面29に固定されている。
【0026】
ドア12の側端部(具体的には、図1において右側の側端部)には上下に複数のヒンジ15が取り付けられている。ドア12は、当該側端部に隣接する縦枠材22(詳細には後述する対向板部25)に対しこれらのヒンジ15を介して取り付けられることで、ドア枠体20に対し回動可能に軸支されている。また、間仕切壁10の下端部には、巾木17が設けられている。
【0027】
ところで、本実施形態では、間仕切壁10(詳しくはその間仕切壁内周面29)とドア枠体20との間に通気通路が設けられ、この通気通路を通じて居室Xと廊下Yとの間で通気が可能となっている。以下、かかる通気構造の詳細を図2に基づいて説明する。なお、図2は、縦枠材21及びその周辺の構成を示し、(a)が通常状態を示す縦断面図、(b)が縦枠材21の一部を回動させて通気通路を露出させた露出状態を示す縦断面図である。また、図2は、図1のA−A線断面図である。
【0028】
図2(a)に示すように、間仕切壁10は、対向する一対の壁面材31と、これら各壁面材31の間に設けられる下地フレーム32とを備える。下地フレーム32の一部は開口部11の周縁部に沿って配設されており、当該下地フレーム32の開口部11側の面には端部材33が設けられている。この端部材33により間仕切壁内周面29が形成されている。
【0029】
縦枠材21は、略コ字状の横断面を有して形成されており、間仕切壁内周面29に対向する対向板部25と、間仕切壁10の厚み方向における対向板部25の両端部より当該対向板部25における間仕切壁内周面29との対向面側に延びる一対の側板部26とを有している。対向板部25と側板部26とは、共に同じ木質系材料からなる長尺状の板状部材からなり、同じ長さを有して形成されている。対向板部25は、間仕切壁10の厚み方向における長さが間仕切壁10の厚みよりも大きくなっており、それ故対向板部25を挟んで両側に設けられた各側板部26間の内寸(離間距離)が間仕切壁10の厚みよりも大きくなっている。
【0030】
なお、対向板部25と側板部26とは必ずしも木質系材料により形成されている必要はない。例えば対向板部25と側板部26とが、集成材、金属系材料、プラスチック系材料、エラストマ系材料又はガラス系材料により形成されていてもよく、これら各材料のうちいずれか複数の材料を組み合わせた複合材により形成されていてもよい。
【0031】
対向板部25は、間仕切壁内周面29から離間されて設けられている。対向板部25と間仕切壁内周面29との間には、木質系材料により直方体状に形成されたドア枠下地材45が上下に複数設けられており、このドア枠下地材45により対向板部25と間仕切壁内周面29との間には所定の隙間が形成されている。そして、対向板部25は、このドア枠下地材45を介して間仕切壁内周面29にビス等により固定されている。
【0032】
なお、対向板部25を間仕切壁内周面29から離間させた位置に固定するための構成は必ずしも上記の構成に限ることはなく、例えば対向板部25を間仕切壁内周面29から離間させた位置に配置した状態で対向板部25の上端部及び下端部をそれぞれ上枠材23及び床面材(図示略)にアングル部材を介して固定する等、その他の構成であってもよい。
【0033】
対向板部25の固定状態において、各側板部26はそれぞれ間仕切壁10の壁面27,28に対し離間しかつ対向した状態で設けられている。したがって、間仕切壁10(詳しくは間仕切壁内周面29)に対する縦枠材21の固定状態では、対向板部25と間仕切壁内周面29との間、及び各側板部26と間仕切壁10の壁面27,28との間にそれぞれ所定の隙間が形成されており、これらの隙間により居室Xと廊下Yとを連通する通気通路30が形成されている。
【0034】
なお、各側板部26は間仕切壁10の壁面27,28に対向して設けられていることから、通気通路30における対向板部25と間仕切壁内周面29との間の隙間部分47は各側板部26により遮蔽されている。これにより、縦枠材21と間仕切壁10との間に通気通路30を設けながらも、同通路30により縦枠材21周辺の美観が損なわれることが回避されている。
【0035】
各側板部26は、それぞれヒンジ38を介して対向板部25に取り付けられている。ヒンジ38は、各側板部26ごとに上下方向に所定間隔をおいて複数設けられている。これにより、各側板部26はそれぞれ、対向板部25に対して回動可能に支持されている。各側板部26は、間仕切壁10の壁面27(28)と対向配置されることで対向板部25と間仕切壁内周面29との隙間部分47を遮蔽する通常位置(図2(a)参照)と、当該通常位置より間仕切壁10の壁面27(28)から離間する側に回動されることで上記隙間部分47を露出させる露出位置(図2(b)参照)との間で回動可能となっている。
【0036】
回動部材としてのヒンジ38は、2つの平板38a,38bが回動軸(図示略)を介して回動可能に連結されてなるものであり、2つの平板38a,38bのうち一方の平板38aが対向板部25のドア対向面25aに取り付けられ、他方の平板38bが側板部26におけるドア12側の端面に取り付けられている。この場合、ヒンジ38が、縦枠材21においてドア12との対向面側に設けられるため、意匠性に与える影響を抑制することができる。
【0037】
なお、側板部26を回動可能に支持する構成は、必ずしも上記のヒンジ38を用いた構成に限ることはない。例えば、側板部26の上端部には当該上端部より上方に突出する上側ピン部を、側板部26の下端部には当該下端部より下方に突出する下側ピン部を、互いに同軸となるように設ける一方、上枠材23には上側ピン部が挿入される上挿入部を、床面上には下側ピン部が挿入される下挿入部を設ける構成が考えられる。この構成によれば、上側ピン部を上挿入部に挿入し、かつ下側ピン部を下挿入部に挿入することで、側板部26を回動可能に支持することが可能となる。なお、この場合には、側板部26が建物側に支持されることとなる。
【0038】
縦枠材21において対向板部25のドア対向面25aには、戸当り41が取り付けられている。戸当り41は、上下方向に延びる長尺材からなる。
【0039】
縦枠材21の側板部26と間仕切壁10の壁面27(28)との間には巾木17の端部が入り込んでいる。この場合、通気通路30の開口43(44)はその下端部において巾木17により一部閉塞された状態となっている。
【0040】
ドア12の回動基端側に設けられた縦枠材22(図1において右側に配置された縦枠材22)は、上述した縦枠材21と同様の構成からなり、間仕切壁10に対して縦枠材21と同様の取付構造で取り付けられている。したがって、縦枠材22と間仕切壁10との間にも、居室Xと廊下Yとを連通する通気通路30が形成されている。また、上枠材23は、縦枠材21,22と同様に断面コ字状をなしているものの、間仕切壁内周面29に当接して設けられており、したがって、上枠材23と間仕切壁10との間には通気通路が形成されていない。よって、本実施形態では、ドア12を挟んだ左右両側において居室Xと廊下Yとの間で通気が可能となっている。
【0041】
次に、縦枠材21,22と間仕切壁10との間に形成された上述の通気通路30を清掃する際の作業内容について説明する。
【0042】
通気通路30を清掃する際には、まず図2(b)に示すように、縦枠材21の各側板部26をそれぞれ間仕切壁10の壁面27(28)から離間する側に回動させ、対向板部25と間仕切壁内周面29との間の隙間部分47を居室X側及び廊下Y側に露出させる。そして、ブラシ等を用いて隙間部分47に溜まった塵埃を取り除く。この場合、例えば隙間部分47の塵埃を居室X側から廊下Y側に向けて押し出す等して取り除く。これにより、側板部26により遮蔽されているが故に、塵埃が溜まり易く、しかも清掃がしづらい隙間部分47を好適に清掃することができる。
【0043】
続いて、各側板部26の裏面(通気通路30側の面)や、間仕切壁10の壁面27(28)における側板部26との対向部分に付着した塵埃を除去する。
【0044】
次に、縦枠材22側の通気通路30について清掃を行う。かかる通気通路30の清掃は、上述した縦枠材21側の通気通路30の清掃と同じ手順で行う
その後、図2(a)に示すように、各側板部26をそれぞれ間仕切壁10の壁面27(28)側に向けて回動させ、各側板部26により隙間部分47が遮蔽される状態すなわち通常状態とする。これをもって、一連の作業が終了する。
【0045】
以上、詳述した本実施形態の構成によれば、以下の優れた効果が得られる。
【0046】
縦枠材21,22と間仕切壁10との間に、当該間仕切壁10により仕切られた両空間X,Yの間で通気を可能とする通気通路30を形成し、縦枠材21,22の一部に設けられた側板部26を間仕切壁10から離間する側へ動作可能とした。この場合、側板部26を間仕切壁10から離間する側へ移動させることで、側板部26と間仕切壁10との間隔を大きくすることができる。そのため、通気通路30に塵埃が堆積し通気性の低下が生じた場合には、側板部26を間仕切壁10から離間する側へ移動させることで、通気通路30に溜まった塵埃を除去し易くすることができる。したがって、上述の構成は、良好な通気状態を維持する上で好適な構成といえる。
【0047】
具体的には、側板部26を、対向板部25に対しヒンジ38を介して回動可能に取り付け、当該側板部26を回動させることにより間仕切壁10から離間する側へ移動させるようにした。この場合、側板部26を回動させることにより、側板部26を容易に間仕切壁10から離間させることができる。また、上下に長尺状をなす側板部26を水平方向に回動可能としたため、例えば、側板部26を上下方向に回動可動とする場合と比べ、側板部26を回動させる際の移動量を少なくすることができ、その結果側板部26の回動作業を容易なものとすることができる。
【0048】
巾木17の端部が通気通路30に入り込んでいる構成において、可動枠部としての側板部26を下端から上方に連続して設けた。巾木17の端部が通気通路30に入り込んでいる構成では、通気通路30の底部に溜まった塵埃が通気通路30の外部に流れ出すことが巾木17により妨げられ、通気通路30の底部において塵埃の堆積が促進されることが想定される。また、通気通路30の底部に溜まった塵埃を取り除く際には、巾木17が邪魔となり塵埃を取り除くことが困難と考えられる。この点、上記の構成とすることで、通気通路30の底部に溜まった塵埃を好適に除去することができる。
【0049】
本発明は上記実施形態に限らず、例えば次のように実施されてもよい。
【0050】
(1)上記実施形態では、左右の縦枠材21,22と間仕切壁10との間に通気通路30を形成したが、これら各縦枠材21,22のうちいずれか一方側にのみ通気通路30を形成してもよい。
【0051】
また、上記実施形態では、縦枠材21,22と間仕切壁10との間に通気通路30を形成したが、これに代えて又は加えて、図3に示すように上枠材23と間仕切壁10との間に通気通路を形成してもよい。図3(a)に示す上枠材50は、上記実施形態の縦枠材21,22と同様の構成からなり、かつ、間仕切壁10に対して縦枠材21,22と同様の取付構造で取り付けられている。つまり、上枠材50は、間仕切壁内周面29に対向する対向板部51と、間仕切壁10の厚み方向における対向板部51の両端部から当該対向板部51の間仕切壁内周面29との対向面側に延び、間仕切壁10の壁面27(28)に対向する一対の側板部52とを有している。上枠材50において、対向板部51は間仕切壁内周面29から離間し、各側板部52はそれぞれ間仕切壁10の壁面27,28から離間している。この場合、上枠材50と間仕切壁10との間には居室Xと廊下Yとを連通する通気通路55が形成され、同通路55を通じて居室Xと廊下Yとの間で通気が可能となっている。そして、側板部52は、対向板部51に対しヒンジ38を介して回動可能に取り付けられている。これにより、図3(b)に示すように、上枠材50の各側板部52を間仕切壁10の壁面27,28から離間する側に回動させ、対向板部51と間仕切壁内周面29との間の隙間部分54を露出させることで、当該隙間部分54を含む通気通路55の清掃を好適に行うことができる。
【0052】
(2)上記実施形態では、縦枠材21において一対の各側板部26を対向板部25に対して回動可能としたが、これを変更し、各側板部26のうちいずれか一方の側板部26のみを回動可能とし、他方の側板部26を対向板部25に固定する等して回動不能としてもよい。この場合においても、一方の側板部26を間仕切壁10の壁面27,28から離間する側に回動させることで、通気通路30における対向板部25と間仕切壁内周面29との間の隙間部分47を居室X側及び廊下Y側のいずれかには露出させることができるため、同隙間部分47に溜まった塵埃を取り除くことができる。
【0053】
上記実施形態では、縦枠材21において側板部26全体を対向板部25に対し回動可能としたが、側板部26の一部のみを回動可能としてもよい。例えば、縦枠材21と間仕切壁10との間の通気通路30は上下に長く延びているものであるが、同通気通路30では塵埃が同通路30の底部すなわち床面上に溜まり易いことが考えられる。そこで、この点に着目して、側板部26の下部のみを回動可能としてもよい。具体的には、側板部26を、上下に分割した上側板部及び下側板部により構成し、下側板部を側板部の下端から上方に連続して形成する。そして、上側板部を対向板部25に回動不能に固定する一方、下側板部をヒンジ38を介して対向板部25に回動可能に取り付ける。この場合、通気通路30を清掃するに際し、側板部の一部(下側板部)を回動させればよいため、上下に長尺状をなす側板部26全体を回動させる場合と比べ、側板部を回動させる際の作業負荷を軽減できる。
【0054】
(3)上記実施形態では、縦枠材21において側板部26を回動可能としたが、縦枠材21においてその他の部分を回動可能としてもよい。例えば、図4(a)に示すように、縦枠材60において対向板部25(可動枠部に相当)を一方の側板部26に対して回動可能に取り付けてもよい。また、図4(b)に示すように、縦枠材61において対向板部25及び一方の側板部26を一体化して形成するとともに、その一体化された板部63(可動枠部に相当)を他方の側板部26に対して回動可能に取り付けてもよい。なお、これらの場合には、可動枠部25,63が取り付けられる側板部26を間仕切壁10等に固定することとなる。
【0055】
さらに、図4(c)に示すように、縦枠材62全体(可動枠部に相当)を回動可能としてもよい。この場合、縦枠材62を、一方の側板部26における対向板部25とは反対側の端部において回動可能に軸支する。これら各構成(図4(a)〜(c)の構成)においても、可動枠部25,63,62を間仕切壁10から離間する側に回動させることで、対向板部25と間仕切壁内周面29との間の隙間部分47を露出させることができ、その結果当該隙間部分47を含む通気通路30を好適に清掃することができる。
【0056】
(4)側板部26を回動させることにより、通気通路30の開口43(44)の開口幅を大小調整することで、通気通路30における通気量を調整してもよい。この場合、間仕切壁10により仕切られた両空間X,Yの都度の屋内環境(例えば温度や湿度)に応じて通気量を上げ下げできる等、好適な通気が可能となる。
【0057】
また、こうすることで、通気通路30に塵埃が堆積して通気量が低下した場合に、側板部26を間仕切壁10の壁面27(28)から離間させる側に回動させ通気通路30の開口43(44)の開口幅を大きくすることで、通気量を増大させることができる。そのため、通気通路30に塵埃が堆積した場合でも、通気通路30の清掃を行わずに良好な通気状態を確保することが可能となる。
【0058】
(5)ドア枠体20において上下に複数の可動枠部を設け、それら各可動枠部をそれぞれ間仕切壁10側に水平移動し当該間仕切壁10に当接させることで、通気通路30の一部を閉鎖できるようにしてもよい。例えば、縦枠材21,22において上部及び下部にそれぞれこのような可動枠部を設けることが考えられる。その具体例を図5に示す。
【0059】
図5に示す縦枠材57,58は、各側板部65が上下に複数に分割されており、それら各側板部65のうち上部及び下部に設けられた上側板部66及び下側板部67が対向板部25に対して回動可能とされている一方、中間部に設けられた中間側板部68が対向板部25に回動不能に固定されている。そして、上側板部66及び下側板部67は、間仕切壁10の壁面27(28)側に回動されその回動先端部が同壁面27(28)に当接されることで、通気通路30の一部を閉鎖することが可能となっている。したがって、かかる構成においては、通気通路30における上部及び下部がそれぞれ閉鎖可能となっており、これにより通気通路30の上部及び下部のいずれかのみを通じて通気が可能となっている。
【0060】
かかる構成によれば、例えば居室Xで暖房を行っている場合には、通気通路の下部のみを通じて通気を行うことで、居室Xの上側に滞留する暖かな空気が廊下Yへ流出するのを抑制できる。また、居室Xで冷房を行っている場合には、通気通路の上部のみを通じて通気を行うことで、居室Xの下側に滞留する冷たい空気が廊下Yへ流出するのを抑制できる。そのため、居室Xで冷暖房を行っている場合でも、居室Xからの熱の流出を抑制しつつ通気を行うことが可能である。
【0061】
(6)上記実施形態では、縦枠材21における可動枠部としての側板部26を回動させることにより間仕切壁10から離間させる構成としたが、縦枠材21の可動枠部を間仕切壁10から離間させるための動作は必ずしも回動に限る必要はない。例えば、可動枠部をスライド移動させることにより間仕切壁10から離間させてもよい。図6には、縦枠材71全体を間仕切壁10の横幅方向に沿ってスライドさせることで、対向板部25を間仕切壁内周面29から離間させる構成が示されている。この場合、縦枠材71をスライドさせるための構成としては、例えば縦枠材71の上端部及び下端部に間仕切壁10の横幅方向に延びる案内レールを設け、同レールに沿って縦枠材71をスライドさせる構成が考えられる。
【0062】
また、縦枠材71をスライドさせる構成において、縦枠材71を間仕切壁10の横幅方向にスライドさせることにより、対向板部25と間仕切壁内周面29との間の間隔(通気通路30の隙間部分47の幅)を大小変化させることで、通気通路30における通気量を調整するようにしてもよい。
【0063】
(7)上記実施形態では、開き戸からなるドア12により開閉される開口部11において本発明の通気構造を適用したが、引き戸により開閉される開口部に本発明を適用してもよい。この場合、引き戸の開閉方向閉鎖側に設けられた縦枠材と間仕切壁10との間に通気通路を形成することとなる。
【符号の説明】
【0064】
10…間仕切壁、11…開口部、12…建具としてのドア、17…巾木、20…ドア枠体、21…縦枠としての縦枠材、22…縦枠としての縦枠材、25…対向板部、26…延出部及び可動枠部としての側板部、30…通気通路、47…隙間部分。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の間仕切壁に設けられた開口部に、該開口部を開閉する建具が設けられている建物に適用され、
前記建具の枠体は、前記開口部の周縁部に沿って、かつ前記間仕切壁の開口側端面に対向して設けられ、前記間仕切壁の厚み方向における両端部から前記枠体における前記開口側端面との対向面側に延出し、前記間仕切壁の壁面に対向して設けられる一対の延出部を備え、
前記枠体が前記間仕切壁から離間して配置されることで、前記枠体と前記間仕切壁との間に、前記間仕切壁により仕切られた両空間の間で通気を可能とする通気通路が形成された建物の間仕切壁における通気構造において、
前記枠体は、その少なくとも一部が、前記通気通路に面して設けられ、かつ前記間仕切壁から離間する側へ動作可能な可動枠部となっていることを特徴とする建物の間仕切壁における通気構造。
【請求項2】
前記可動枠部は、回動部材により回動可能に軸支されており、回動されることにより前記間仕切壁から離間する側へ移動されることを特徴とする請求項1に記載の建物の間仕切壁における通気構造。
【請求項3】
前記可動枠部は、前記延出部を含んで構成されており、
前記可動枠部が前記間仕切壁から離間する側へ動作されることで、前記通気通路における前記間仕切壁の開口側端面と前記枠体との間の隙間部分が露出されることを特徴とする請求項1又は2に記載の建物の間仕切壁における通気構造。
【請求項4】
前記可動枠部は、該可動枠部と前記間仕切壁との間隔を大小変化させる方向に移動可能であり、その移動により前記通気通路における通気量が調整可能とされていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の建物の間仕切壁における通気構造。
【請求項5】
前記可動枠部として、前記枠体において上部及び下部にそれぞれ設けられた上可動枠部及び下可動枠部を備え、
前記上可動枠部及び前記下可動枠部はそれぞれ前記間仕切壁側に水平移動して当該間仕切壁に当接することで、前記通気通路の一部を閉鎖することが可能となっていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の建物の間仕切壁における通気構造。
【請求項6】
前記枠体は、前記開口部の側縁部に沿って設けられた縦枠を有しており、
前記可動枠部は、前記縦枠の下部に設けられ、前記縦枠の下端から上方に連続して形成されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の建物の間仕切壁における通気構造。
【請求項7】
前記間仕切壁の下端部には巾木が設けられており、
前記枠体は、前記開口部の側縁部に沿って設けられた縦枠を有し、
前記間仕切壁の壁面の正面視において、前記巾木の端部が、前記縦枠の前記延出部に連続して設けられており、
前記可動枠部は、前記縦枠の下端から上方に連続して形成されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の建物の間仕切壁における通気構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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