説明

建物基礎および建物基礎工法

【課題】地震発生時においても震動が伝わり難く、建物基礎下の地盤が液状化するのを抑制できるとともに、低コストで耐久性に富んだ建物基礎および建物基礎工法を提供することを課題とする。
【解決手段】地表に形成された溝4に配設した発泡樹脂材からなる基礎コンクリート形成用の型枠2と、前記型枠2の内枠10上に配設した発泡樹脂材からなる床下型枠3と、前記型枠2の外枠14上に配設した発泡樹脂材からなる布基礎型枠15とで形成される空間8にコンクリートを打設したことを特徴とする建物基礎1により、上記の課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低層建築物用の建物基礎および建物基礎工法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、低層建築物用の建物基礎に関して地震発生時の耐震性を考慮したものとしては、整地した地表に連続した溝を形成し、発泡樹脂材によって定形に形成される基盤材を、該地表及び溝に敷設し、該基盤材の表面を、束部を設けてコンクリート材で被覆敷設して形成することを特徴とする低層建築物用基礎構造が提案されている(例えば、特許文献1参照)。図4は、この低層建築物用基礎構造を示す縦断面図である。かかる建物基礎101では基礎の外縁に排水路102を設けたとしても、基礎中央部の透水層103に溜まった水は、排水路102までの距離が長すぎるため容易に排水できない状況にあった。
【0003】
また、低層建築物用の建物基礎に関して地震発生時の縦揺れ及び横揺れに対する耐震性を考慮したものとしては、地盤上に設けられる建造物の基礎の下部に前記地盤の密度より小さい浮力用基盤を埋設するとともに、前記基礎の周囲を囲繞する緩衝領域を埋設したことを特徴とする建造物における免震基礎構造が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
さらに、低層建築物用の建物基礎に関する地盤沈下対策や不同沈下対策を講じたものとしては、地盤上に設けられる建造物の基礎の下部に前記地盤の密度より小さい浮力用基盤を埋設した建造物における基礎構造であって、前記建造物の基礎の底面全域において、前記基盤の単位面積当りの浮力を、前記建造物及び前記基礎の単位面積当りの荷重から単位面積当りの地盤強度を差し引いた値にほぼ等しくすることを特徴とする建造物における基礎構造が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【特許文献1】特開平9−273160号公報
【特許文献2】特開2005−146611号公報
【特許文献3】特開2003−13460号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した従来技術では、地震発生時における耐震性等を向上させるため、地盤材料の一部として発泡樹脂材を用いている点で共通している。その結果、地震発生時において建物が受けるダメージを一定程度軽減できることは確かであるが、建物基礎下の地盤が液状化することを回避できるものではなかった。地震の揺れによって地盤が液状化すると、建物自体のダメージが少ない場合であっても、建物全体として傾いてしまい、その補修に多大な費用を要することになる。
【0006】
また、布基礎を構築するためには別途型枠を必要とする。そのため、工期短縮やコスト低減を図るにも限界があった。
【0007】
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたものであり、地震発生時においても震動が伝わり難く、建物基礎下の地盤が液状化するのを抑制できるとともに、低コストで耐久性に富んだ建物基礎および建物基礎工法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の発明は、地表に形成された溝に配設した発泡樹脂材からなる基礎コンクリート形成用の型枠と、前記型枠の内枠上に配設した発泡樹脂材からなる床下型枠と、前記型枠の外枠上に配設した発泡樹脂材からなる布基礎型枠とで形成される空間にコンクリートを打設したことを特徴とする建物基礎である。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の建物基礎において、前記基礎コンクリート形成用の型枠の下面に横溝を配設したことを特徴とするものである。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の建物基礎において、前記床下型枠の下面に横溝を配設したことを特徴とするものである。
【0011】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の建物基礎において、前記床下型枠の下面に配設した横溝が布基礎および布基礎型枠を貫通し、外気と連通していることを特徴とするものである。
【0012】
請求項5記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の建物基礎において、前記布基礎型枠の内側面に凹凸を設けたことを特徴とするものである。
【0013】
請求項6記載の発明は、請求項1〜5のいずれか1項に記載の建物基礎において、前記基礎コンクリート形成用の型枠及び/又は床下型枠と地面との間に拘束材により拘束した石材を配設したことを特徴とするものである。
【0014】
請求項7記載の発明は、地表を整地して溝を形成した後、前記溝内に拘束材により拘束した石材と発泡樹脂材からなる基礎コンクリート形成用の型枠を配設し、前記型枠の内枠上に配設した発泡樹脂材からなる床下型枠と前記型枠の外枠上に配設した発泡樹脂材からなる布基礎型枠とで形成される空間にコンクリートを打設することを特徴とする建物基礎工法である。
【発明の効果】
【0015】
請求項1記載の建物基礎によれば、基礎コンクリートが発泡樹脂材で被覆されるので、地震発生時においても地面から伝わる震動が減衰し、建物自体の揺れが小さくなる。
【0016】
請求項2記載の建物基礎によれば、基礎コンクリート形成用の型枠の下面に配設した横溝から型枠の下に溜まった水を排水できるので、地盤の液状化を抑制できる。
【0017】
請求項3記載の建物基礎によれば、床下型枠の下面に配設した横溝から床下型枠の下に溜まった水を排水できるので、地盤の液状化を抑制できる。
【0018】
請求項4記載の建物基礎によれば、床下型枠の下面に配設した横溝から床下型枠の下に溜まった水を排水できるので、地震発生時においても地盤が液状化するのを抑制できる。
【0019】
請求項5記載の建物基礎によれば、布基礎型枠の内側に凹凸を設けたことから、布基礎型枠とコンクリートとの密着性が大きくなり、布基礎型枠とコンクリートとの一体性が向上する。したがって、低コストで耐久性に富む建物基礎を実現できる。
【0020】
請求項6記載の建物基礎によれば、基礎下に拘束材により拘束した石材を配設したことから、地盤強度が高く、耐久性に富む建物基礎を実現できる。その結果、建物基礎の不同沈下を防止することができる。
【0021】
請求項7記載の建物基礎工法によれば、地面から伝わる震動を効果的に減衰し得る建物基礎を構築することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。図1は本発明に係る建物基礎1の実施例を示す縦断面図である。図2は図1中のA−A矢視断面を示すものであり、基礎コンクリート形成用の型枠2(以下、「基礎型枠」という。)の水平断面図である。図3は図1中のB−B矢視断面を示すものであり、床下型枠3の水平断面図である。
【0023】
図1に示すように、建物の基礎コンクリートが配置される地表は掘り下げられ、整地された溝4が形成される。溝4の底面には透水材として砂利や砕石等からなる石材5が敷設される。石材5はそのまま敷設することもできるが、軟弱地盤の場合には拘束材6により拘束した石材5を用いるのが好ましい。拘束材6により拘束した石材5を透水材として用いると、軟弱地盤であっても地盤強度を向上できるとともに、経時的に長期間にわたって良好な透水性能を確保可能な透水材が得られる。なお、拘束材6としては合成樹脂材からなるジオグリッドが知られており、例えば、このようなジオグリッドとしてテンサー(登録商標)を挙げることができる。
【0024】
溝4内に敷設された透水材の上には、発泡樹脂材からなる基礎型枠2が配設される。発泡樹脂材の具体例としては、発泡ポリプロピレン、発泡ポリスチレン、発泡ポリエチレン・ポリスチレン共重合体を挙げることができる。これらの発泡樹脂材は本来的に軽量な性質を有するものであり、単位体積当たりの重量は概略20kg/m程度のものである。したがって、基礎型枠2を構成する型枠部材7を適度な大きさにブロック化することにより、一人でも型枠部材7を運搬して設置することができる。
【0025】
図2に示す実施例においては、建物基礎の1辺の基礎型枠2を3つの型枠部材7から構成しているが、建物基礎の大きさに応じて適宜な個数の型枠部材7を用いて1辺の基礎型枠2を構成することができる。その結果、単に運搬や施工が容易になるのみならず、予め同一寸法にブロック化した型枠部材7を工場において量産することができ、現場工事期間の短縮とコスト低減を図ることが可能となる。
【0026】
基礎型枠2には、予めその内部に基礎コンクリートとして必要な断面形状を有する空間8が形成されている。図1に示す実施例では、断面形状が逆T字形の空間8が形成されている。
【0027】
また、基礎型枠2の下面には断面形状が半円形の横溝9が複数配設されている。これらの横溝9は水平面内において1方向だけに配設してもよいが、本実施例では水平面内において交差する2方向に配設されている。ここで、横溝9のサイズは大きすぎると基礎型枠2の圧縮強度が低下するし、小さすぎると地盤から噴出する泥等が付着することにより通水効果が低下する。したがって、横溝9のサイズは適正な大きさとする必要がある。半円形状の横溝9の場合、半径5cm程度が好適な大きさである。
【0028】
なお、図示していないが基礎型枠2の下に敷設された透水材の側面には、透水材としての石材5に溜まった地下水を排出するための排水路が設けられている。
【0029】
床下型枠3が配設される地表面も整地された後、拘束材6により拘束した砂利や砕石等からなる石材5が敷設される。このことにより軟弱な地盤であっても必要十分な地盤強度を得ることができる。また拘束材6により拘束した石材5の表面は、基礎型枠2の内枠10の上面と略同一となるように施工される。その後、基礎型枠2の内枠10および拘束材6により拘束した石材5の上に、発泡樹脂材からなる床下型枠3が配設される。
【0030】
床下型枠3の下面には、基礎型枠2と同様にして半円形の断面形状を有する複数の横溝11が設けられている。これらの横溝11は一方向に設けることもできるが、直交する2方向に設けるのが好ましい。そのことにより、横溝11内を流れる水の流路を短縮することができ、排水が容易になる。
【0031】
床下型枠3は全体を一体として形成することもできるが、運搬や施工の便宜を考慮すれば床下型枠3についてもブロック化し、同一物を工場において量産できるようにするのが好ましい。図3は、床下型枠3を多数の型枠部材12により構成したものである。型枠部材12の下部各辺には面取り13が施される。本実施例では各辺に1/4円弧状の面取り13が施されている。このような面取り13が施された多数の型枠部材12を互いに当接して配置すると、当接された型枠部材12の各下辺部には、各辺に沿って断面形状が半円形の横溝11が形成されることになる。基礎型枠2の下面に設けられる横溝9と同様の理由により、床下型枠3に設けられる横溝11のサイズにも適正な値がある。横溝11が半円形断面の場合、横溝11のサイズは半径5cm程度が好適である。
【0032】
本実施例では、床下型枠3をブロック化した多数の型枠部材12から構成するとともに、型枠部材12の下部各辺に1/4円弧状の面取り13を施すことにより横溝11を構成したことから、型枠部材12を工場で量産することができる。その結果、現場工期の短縮と建物基礎のコスト低減を図ることができる。
【0033】
基礎型枠2の外枠上14には発泡樹脂材からなる布基礎型枠15が設けられる。布基礎型枠15の内側面は、基礎型枠の外枠14の内面と一致するように取り付けられる。また、布基礎型枠15の内側面には凹凸16が設けられている。このように布基礎型枠15の内側面に凹凸16を設けることにより、布基礎と布基礎型枠15との接合強度が向上し、布基礎と布基礎型枠15との一体性が高まる。本実施例においては、布基礎型枠15を布基礎から取り外すことなく布基礎型枠15も基礎の一部として構成している。
【0034】
さらに、布基礎型枠15の下面には床下型枠3の下面に設けられた横溝11の延長線上に該当する部位に横溝17が設けられており、床下型枠3の横溝11と布基礎型枠15の横溝17との間は、塩ビ管等のパイプ18により架橋されている。すなわち、床下型枠3の下面に配設した横溝11は、布基礎および布基礎型枠15を貫通し、外気と連通している。
【0035】
上述したように配設された基礎型枠2と、床下型枠3と、布基礎型枠15とにより形成される空間にコンクリートを打設すると、基礎コンクリート19、布基礎コンクリート20、スラブコンクリート21を1回のコンクリート打設で構築することができる。したがって、現場施工期間を短縮できるとともに、施工費用も低減することができる。
【0036】
なお、図示していないが、基礎コンクリート19、布基礎コンクリート20、スラブコンクリート21には、適宜補強用鉄筋を配筋して必要強度を満たす建物基礎を構築することができる。
【0037】
本実施例によれば、スラブコンクリート21の上面を除く建物基礎1のすべての面が発泡樹脂材料からなる型枠2,3,15により覆われるので、地震等による地盤からの震動伝達を大幅に減衰させることができる。また、スラブコンクリート21の上面を除く建物基礎1のすべての面が発泡樹脂材料からなる型枠2,3,15により覆われることから、コンクリートの表面が外気と遮断され、風化等による経年劣化を有効に防止することができる。したがって、建物基礎1のコンクリートの耐久性が向上する。
【0038】
以上、本発明を実施例に基づいて説明したが、本発明は種々の変形実施をすることができる。たとえば、上記実施例においては、基礎型枠2及び床下型枠3の下面に配設する横溝9,11の断面形状を半円形状としたが、これらの横溝9,11の断面形状は半円形状に限定されるものではなく、矩形や三角形等であっても構わない。さらに、横溝に替えて横孔とすることとしてもよい。また、上記実施例においては、布基礎型枠15を布基礎から取り外すことなく、そのまま使用する例について説明したが、打設したコンクリートが硬化した後、布基礎型枠15を取り外すようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明に係る建物基礎の縦断面図である。
【図2】図1中のA−A矢視を示す断面図である。
【図3】図1中のB−B矢視を示す断面図である。
【図4】従来技術による建物基礎の縦断面図である。
【符号の説明】
【0040】
1 建物基礎
2 型枠(基礎型枠)
3 床下型枠
4 溝
5 石材(透水材)
6 拘束材
8 空間
9 横溝
10 内枠
11 横溝
14 外枠
15 布基礎型枠
16 凹凸
19 基礎コンクリート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地表に形成された溝に配設した発泡樹脂材からなる基礎コンクリート形成用の型枠と、前記型枠の内枠上に配設した発泡樹脂材からなる床下型枠と、前記型枠の外枠上に配設した発泡樹脂材からなる布基礎型枠とで形成される空間にコンクリートを打設したことを特徴とする建物基礎。
【請求項2】
前記基礎コンクリート形成用の型枠の下面に横溝を配設したことを特徴とする請求項1記載の建物基礎。
【請求項3】
前記床下型枠の下面に横溝を配設したことを特徴とする請求項1または2記載の建物基礎。
【請求項4】
前記床下型枠の下面に配設した横溝が布基礎および布基礎型枠を貫通し、外気と連通していることを特徴とする請求項3記載の建物基礎。
【請求項5】
前記布基礎型枠の内側面に凹凸を設けたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の建物基礎。
【請求項6】
前記基礎コンクリート形成用の型枠及び/又は床下型枠と地面との間に拘束材により拘束した石材を配設したことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の建物基礎。
【請求項7】
地表を整地して溝を形成した後、前記溝内に拘束材により拘束した石材と発泡樹脂材からなる基礎コンクリート形成用の型枠を配設し、前記型枠の内枠上に配設した発泡樹脂材からなる床下型枠と前記型枠の外枠上に配設した発泡樹脂材からなる布基礎型枠とで形成される空間にコンクリートを打設することを特徴とする建物基礎工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−262854(P2007−262854A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−92980(P2006−92980)
【出願日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(501075590)ダイエープロビス株式会社 (7)
【Fターム(参考)】