説明

建物基礎部の防蟻構造及び防蟻方法

【課題】粒状のスラグを敷き詰めてなる防蟻材を効果的に配設することで、スラグの使用量を削減しながらも、防蟻効果を長期間持続させることができる建物基礎部の防蟻構造を提供する。
【解決手段】この建物基礎部においては、布基礎1の立上り部2の内側面2aと土間コンクリート5の端部下面5cとの間の接合部位8下側の隅部に沿って、粒状のスラグを敷き詰めてなる防蟻材4が接合部位8下側の隅部を覆うようにして配設され、この防蟻材4は、布基礎1の立上り部2の内側面2aに接する垂直面の幅寸法W1を100mm以下好ましくは50mm以下、土間コンクリート5の端部下面5cに接する水平面の幅寸法W2を100mm以下好ましくは50mm以下とした断面略直角三角形状に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、シロアリ等の侵入を防止して建物を保護するための建物基礎部の防蟻構造及び防蟻方法に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅の基礎部としては、布基礎の立上り部の内側面によって囲まれた床下の地盤上に土間コンクリートを施工した構造のものが一般的に知られている。このような基礎部においては、土間コンクリートの経時的な乾燥に伴う収縮によって、布基礎の立上り部の内側面と土間コンクリートの端面との接合部位に隙間(クラック)が生じると、このクラックを伝ってシロアリが侵入して、木質部分に食害を与えるといった問題がある。
【0003】
このため、従来よりシロアリの侵入を防止するための各種防蟻処理が施されており、中でも薬剤を使用する方法が主流である。具体的には、食害を受け易い木質部分に薬剤を直接散布又は含浸させたり、土間コンクリート施工前の地盤上に薬剤を直接散布又は薬剤を含浸させたシート等を敷設するといった方法等が挙げられる。
【0004】
しかしながら、上記のように薬剤を使用する方法では、薬剤の成分による人体や動植物ならびに周辺環境への影響が懸念される。また、建物の解体等の際には、土壌に薬剤が含有されているため、残土を全て処分しなければならない。さらに、薬剤は時間が経つにつれて防蟻効果が消失するので、定期的に防蟻処理を繰り返す必要があるといった不具合があった。
【0005】
そこで、本出願人は、例えば特許文献1に開示されているように、土間コンクリート施工前の地盤上に、鉄鋼副産物である転炉スラグや高炉スラグを敷き詰めることで、薬剤を使用することなく、防蟻効果を長期間持続させて防蟻処理の再施工を原則不要とした防蟻構造を提案している。
【特許文献1】特開2008−121200号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の防蟻構造においては、地盤全面に亘ってスラグを敷き詰めているが、この場合、シロアリが侵入する可能性のない箇所にもスラグが無駄に使用されていて、コスト高の原因となっていた。また、特許文献1の図7及び図8にも示すように、シロアリの侵入経路となり易い布基礎の立上り部と土間コンクリートとの接合部位等に沿って、スラグを局部的に敷き詰めることも提案されており、この場合、地盤全面に亘って敷き詰めるときと比べてスラグの使用量を大幅に削減することができるものの、さらなる使用量の削減に伴う改良が望まれていた。
【0007】
この発明は、上記に鑑み、粒状のスラグを敷き詰めてなる防蟻材を効果的に配設することで、防蟻効果を良好に維持しながらも、スラグの使用量を削減して施工費の低減を図ることができる建物基礎部の防蟻構造及び防蟻方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、この発明の建物基礎部の防蟻構造は、布基礎1の立上り部2の内側面2aによって囲まれた床下の地盤S上に土間コンクリート5が施工されて、前記布基礎1の立上り部2の内側面2aと前記土間コンクリート5の端面5aとが接合された建物基礎部において、前記布基礎1の立上り部2の内側面2aと前記土間コンクリート5の端部下面5cとの間の接合部位8下側の隅部に沿って、粒状のスラグを敷き詰めてなる防蟻材4が前記接合部位8下側の隅部を覆うようにして配設され、前記防蟻材4は、前記布基礎1の立上り部2の内側面2aに接する垂直面の幅寸法W1を100mm以下好ましくは50mm以下、前記土間コンクリート5の端部下面5cに接する水平面の幅寸法W2を100mm以下好ましくは50mm以下とした断面略直角三角形状に形成されていることを特徴としている。
【0009】
また、前記布基礎1の立上り部2の内側面2aと前記土間コンクリート5の端部上面5bとに跨って断熱材6が配設され、前記布基礎1の立上り部2の内側面2aと前記土間コンクリート5の端部上面5bとの間の接合部位8上側の隅部に沿って、前記断熱材6の一部を切り欠いてなる点検用及び防蟻材再施工用の空間部7が形成されている。
【0010】
さらに、前記点検用及び防蟻材再施工用の空間部7は、前記布基礎1の立上り部2の内側面2aと、前記土間コンクリート5の端部上面5bと、これら内側面2aと端部上面5bとに跨る前記断熱材6の傾斜切断面11aとによって囲まれ、前記布基礎1の立上り部2の内側面2aに接する垂直面の幅寸法W3を30mm以下、前記土間コンクリート5の端部上面5bに接する水平面の幅寸法W4を30mm以下とした断面略直角三角形状に形成されている。
【0011】
この発明の建物基礎部の防蟻方法は、布基礎1の立上り部2の内側面2aによって囲まれた床下の地盤Sの基礎際を、前記布基礎1の立上り部2の内側面2aに沿って断面略直角三角形状に掘削して、その掘削部位に防蟻材構成用の粒状のスラグを敷き詰めた後、土間コンクリート5を前記布基礎1の立上り部2の内側面2aに接合するように前記地盤S上に施工して、地盤S及び/又は土間コンクリート5に含まれる水分によって前記スラグを硬化させることで、前記布基礎1の立上り部2の内側面2aと前記土間コンクリート5の端部下面5cとの間の接合部位8下側の隅部に沿って、前記布基礎1の立上り部2の内側面2aに接する垂直面の幅寸法W1を100mm以下好ましくは50mm以下、前記土間コンクリート5の端部下面5cに接する水平面の幅寸法W2を100mm以下好ましくは50mm以下とした断面略直角三角形状の防蟻材4を配設したことを特徴としている。
【0012】
また、前記土間コンクリート5の施工前に、前記スラグに対してその長さ1m当たり4リットル以下の水を散布して、その散布した水と地盤S及び/又は土間コンクリート5に含まれる水分とによって前記スラグを硬化させるようにした。
【0013】
さらに、前記布基礎1の立上り部2の内側面2aと前記土間コンクリート5の端部上面5bとに跨って、傾斜切断面11aを有する断熱材6を配設することで、前記布基礎1の立上り部2の内側面2aと前記土間コンクリート5の端部上面5bとの間の接合部位8上側の隅部に沿って、前記布基礎1の立上り部2の内側面2aと、前記土間コンクリート5の端部上面5bと、これら内側面2aと端部上面5bとに跨る前記断熱材6の傾斜切断面11aとによって囲まれた断面略直角三角形状の点検用及び防蟻材再施工用の空間部7を形成した。
【0014】
さらにまた、前記点検用及び防蟻材再施工用の空間部7を、前記布基礎1の立上り部2の内側面2aに接する垂直面の幅寸法W3を30mm以下、前記土間コンクリート5の端部上面5bに接する水平面の幅寸法W4を30mm以下とした断面略直角三角形状に形成した。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、粒状のスラグを敷き詰めてなる防蟻材を使用して防蟻処理を行っているので、薬剤を使用することなく、鉄鋼副産物の有効利用を図りながら、防蟻効果を長期間持続させて防蟻処理の再施工を原則不要とすることができる。
【0016】
しかも、防蟻材を、その垂直面及び水平面の幅寸法が100mm以下好ましくは50mm以下の断面略直角三角形状として、布基礎の立上り部の内側面と土間コンクリートの端部下面との間の接合部位下側の隅部を覆うように効果的に配設しているので、接合部位に生じるクラックからのシロアリの侵入を確実に防止して防蟻効果を良好に維持しながらも、スラグの使用量を抑えて施工費の低減を図ることができる。
【0017】
また、床下空間からの放熱を抑えて断熱性を高めるために、布基礎の立上り部の内側面と土間コンクリート端部上面とに跨って断熱材を配設しながらも、布基礎の立上り部の内側面と土間コンクリートの端部上面との間の接合部位上側の隅部に沿って、点検用及び防蟻材再施工用の空間部を形成しているので、断熱材を取り外して空間部を確認することで、接合部位に生じたクラックからシロアリが侵入しているか否かの点検が容易に行えるとともに、シロアリが侵入していたときには、空間部にスラグを充填して断熱材を元に戻すことで、防蟻処理の再施工を容易に行うことができ、信頼性の向上を図ることができる。
【0018】
また、点検用及び防蟻材再施工用の空間部を、その垂直面及び水平面の幅寸法が30mm以下の断面略直角三角形状に形成することによって、再施工に際しての空間部に充填するスラグの使用量を必要最小限に抑えて、メンテナンス費の低減を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に、この発明の実施形態を、図面を参照しつつ詳細に説明する。この発明の一実施形態に係る建物基礎部は、図1及び図3に示すように、布基礎1と、この布基礎1によって囲まれた床下の土間部分に配された土間コンクリート5とを備えている。
【0020】
布基礎1は、フーチング部3と、このフーチング部3の上面略中央から立ち上がった立上り部2とから断面逆T字状に形成され、フーチング部3及び立上り部2の下端が地盤Sに埋設されている。
【0021】
土間コンクリート5は、その周端部の端面5aが布基礎1の立上り部2の内側面2aに接合されていて、布基礎1の立上り部2の内側面2aによって囲まれた床下の地盤Sの略全面を覆うようにして、地盤S上に施工されている。
【0022】
そして、布基礎1の立上り部2の内側面2aと土間コンクリート5の端部上面5bとに跨って、断熱材6が床下空間を囲むようにして配設されている。この断熱材6は、布基礎1の立上り部2の内側面2aに張り付けられた例えば発泡樹脂からなる縦方向の基礎側断熱材10と、土間コンクリート5の端部上面5bに張り付けられた例えば発泡樹脂からなる横方向の土間側断熱材11とからなり、基礎側断熱材10の下端面10aと土間コンクリート5の端部上面5bとの間の隙間に、土間側断熱材11の端部が差し入れられることによって断面略L字状に形成されている。
【0023】
上記の建物基礎部においては、布基礎1の内側面2aと土間コンクリート5の端面5aとの接合部位8に生じるクラックからのシロアリの侵入を防止するために、図1及び図4に示すように、布基礎1の立上り部2の内側面2aと土間コンクリート5の端部下面5cとの間の接合部位8下側の隅部に沿って、粒状の転炉スラグを敷き詰めてなる防蟻材4が配設されている。
【0024】
転炉スラグは、転炉で銑鉄から鋼を製造する際に副産物として生成されるものであって、pH11程度の強アルカリ性で、水分の存在下で固まる水硬性を有しており、しかも比重が重いといった特徴を有している。従って、このような転炉スラグを敷き詰めてなる防蟻材4においては、シロアリが掘り進み難く、且つ、すり抜け難くなっている。
【0025】
特に、防蟻材4として、粒径1.18〜4.75mmの範囲内の転炉スラグを70重量%以上含有したものを使用しており、より優れた防蟻性能を発揮させるようにしている。なお、この転炉スラグの粒度分布は、上述した特許文献1に開示されている出願人が行った実験の結果によって導き出された値である。
【0026】
粒径1.18〜4.75mmの範囲内の転炉スラグは、JIS A 1102「骨材のふるい分け試験」において規定された呼び寸法1.18mmのふるいに留まり、且つ、呼び寸法2.36mmのふるいを通過する1.18〜2.36mmの粒度区分の転炉スラグと、JIS A 1102において規定された呼び寸法2.36mmのふるいに留まり、且つ、呼び寸法4.75mmのふるいを通過する2.36〜4.75mmの粒度区分の転炉スラグとを適宜混ぜ合わせることによって構成されている。
【0027】
従って、一般に流通しているJISで規定された粒度区分の転炉スラグを購入して、これらを混ぜ合わせるだけで、上記の粒径が1.18〜4.75mmの範囲内の転炉スラグを簡単に得ることができ、細かな粒径管理を必要とせずに、シロアリが物理的に通過し得ない防蟻性能に優れた防蟻材4を簡単に構成することができる。
【0028】
また、防蟻材4としては、転炉スラグを敷き詰めてなるものだけに限定されず、高炉で銑鉄を製造する際に副産物として生成される粒状の高炉スラグ、具体的には高炉から取り出した溶融状態のスラグを自然冷却させた徐冷スラグや水で急速に冷却させた水砕スラグを敷き詰めてなるものであっても良い。
【0029】
高炉スラグは、pH9程度の弱アルカリ性で、水分の存在下で固まる水硬性を有しており、このような高炉スラグを敷き詰めてなる防蟻材4においては、シロアリが掘り進み難く、且つ、すり抜け難くなっている。
【0030】
なお、防蟻材4としては、必ずしも粒径1.18〜4.75mmの範囲内の転炉スラグ或いは高炉スラグを70重量%以上含有しているものを使用しなくても良く、そのスラグ粒径やスラグ含有量は適宜変更しても良い。
【0031】
上記の防蟻材4は、接合部位8下側の隅部を覆うように配されている。具体的には、図2に示すように、布基礎1の立上り部2の内側面2aに接する垂直面の幅寸法W1を100mm以下好ましくは50mm以下、土間コンクリート5の端部下面5cに接する水平面の幅寸法W2を100mm以下好ましくは50mm以下とした断面略直角三角形状に形成されていて、その直角な角部を接合部位8下側の隅部に合わせるように配されている。より具体的には、防蟻材4の垂直面及び水平面の幅寸法W1、W2を、ともに100mm若しくはともに50mmに設定しているが、垂直面又は水平面の幅寸法W1、W2のうちの一方を100mm、他方を50mmに設定しても良い。これにより、接合部位8の下端付近を防蟻材4によって集中的に効率良く塞ぐことができ、接合部位8に生じるクラックからのシロアリの侵入を確実に防止しながらも、例えば防蟻材4を断面略方形状としたときと比べてスラグの使用量を格段に減らして、スラグの使用量を必要最小限に抑えることができる。
【0032】
なお、シロアリの活性が高い鹿児島県吹上浜にて、屋外暴露実棟実験を行った結果、断面略直角三角形状の防蟻材4における垂直面、水平面の幅寸法W1、W2の一方を100mm、他方を50mmとして、散水を行わずに土間コンクリート5や地盤Sに含まれる水分だけでスラグを硬化させた場合には、少なくとも3年間継続してシロアリの侵入を防止し、また断面略直角三角形状の防蟻材4における垂直面及び水平面の幅寸法W1、W2をともに50mmとして、散水を行わずに土間コンクリート5や地盤Sに含まれる水分だけでスラグを硬化させた場合には、少なくとも1年間継続してシロアリの侵入を防止することが確認されている。
【0033】
このような防蟻材4を使用して防蟻処理を施した建物基礎部においては、防蟻効果を長期間持続させて、防蟻処理の再施工を原則不要とすることができるが、施工不良や地震等によってスラグを敷き詰めた部分に亀裂や隙間が形成されて、この亀裂や隙間を通じて接合部位8に生じるクラックからシロアリが侵入してしまうことが少なからずある。そこで、施工不良や地震等の不慮の事態に備えて、シロアリが侵入しているか否かの点検、シロアリが侵入していたときの防蟻処理の再施工といったメンテナンスにも配慮されている。
【0034】
すなわち、図1及び図2に示すように、布基礎1の立上り部2の内側面2aと土間コンクリート5の端部上面5bとの間の接合部位8上側の隅部に沿って、土間側断熱材11の一部を切り欠いてなる点検用及び防蟻材再施工用の空間部7が形成されている。この空間部7は、布基礎1の立上り部2の内側面2aと、土間コンクリート5の端部上面5bと、これら内側面2aと端部上面5bとに跨る土間側断熱材11の端部に形成された傾斜切断面11aとによって囲まれている。具体的には、図2に示すように、布基礎1の立上り部2の内側面2aに接する垂直面の幅寸法W3を30mm以下、土間コンクリート5の端部上面5bに接する水平面の幅寸法W4を30mm以下とした断面略直角三角形状に形成されていて、その直角な角部を接合部位8上側の隅部に合わせるように配されている。より具体的には、空間部7の垂直面及び水平面の幅寸法W3、W4を、ともに30mmに設定している。
【0035】
次に、上記構成の建物基礎部の施工手順について説明する。まず、図5(a)に示すように、布基礎1の立上り部2の内側面2aによって囲まれた床下の地盤Sの基礎際を、布基礎1の立上り部2の内側面2aに沿って断面略直角三角形状に掘削する。
【0036】
地盤Sの基礎際の掘削後、図5(b)に示すように、その掘削部位に粒状のスラグを敷き詰めて、地盤S及びスラグ配設箇所に対して転圧を行った後、図5(c)に示すように、土間コンクリート5を布基礎1の立上り部2の内側面2aに接合させながら地盤S上に施工して、地盤S及び/又は土間コンクリート5内に含まれる水分によってスラグを硬化させる。また、地盤Sの質等によっては、地盤S及び/又は土間コンクリート5に含まれる水分だけでは、スラグの硬化が十分に進まないおそれがあり、この場合には、直接スラグの上から水を撒くことにより、確実に硬化させるようにしている。詳しくは、土間コンクリート5の施工前に、スラグに対してその長さ1m当たり4リットル以下の水を散布して、その散布した水と地盤S及び/又は土間コンクリート5に含まれる水分とによってスラグを硬化させる。これにより、布基礎1の立上り部2の内側面2aと土間コンクリート5の端部下面5cとの間の接合部位8下側の隅部に沿って、粒状にスラグを敷き詰めてなる断面略直角三角形状の防蟻材4が配設される。
【0037】
その後、図5(d)に示すように、基礎側断熱材10を、布基礎1の立上り部2の内側面2aに接着剤等によって張り付けるとともに、傾斜切断面11aを有する土間側断熱材11を土間コンクリート5の端部上面5bに接着剤等によって張り付ける。これにより、布基礎1の立上り部2の内側面2aと土間コンクリート5の端部上面5bとの間の接合部位8上側の隅部に沿って、布基礎1の立上り部2の内側面2aと、土間コンクリート5の端部上面5bと、これら内側面2aと端部上面5bとに跨る土間側断熱材11の傾斜切断面11aとによって囲まれた断面略直角三角形状の点検用及び防蟻材再施工用の空間部7が形成される。
【0038】
このようにして施工された建物基礎部において、シロアリが侵入しているか否かの点検や、シロアリが侵入していたときの防蟻処理の再施工は、以下のように行っている。すなわち、点検に際しては、図6(a)に示すように、床下空間において土間側断熱材11を取り外して、これにより露出した空間部7を確認することで行われる。
【0039】
そして、シロアリが侵入していなければ、再施工を行わずに土間側断熱材11を元の位置に戻し、シロアリが侵入していれば再施工を行う。この再施工は、図6(b)に示すように、露出した空間部7に粒状のスラグを充填した後、土間側断熱材11を元の位置に戻すことでなされる。これにより、接合部位8下側の隅部に沿って配設した防蟻材4と同様の防蟻材4が、接合部位8上側の隅部に沿って、その隅部を覆うように配設される。この再施工においても、接合部位8の上端付近が防蟻材4によって集中的に効率良く塞がれた状態となって、接合部位8に生じるクラックからのシロアリの侵入を確実に防止しながらも、例えば防蟻材4を断面略方形状としたときと比べてスラグの使用量を格段に減らして、スラグの使用量を必要最小限に抑えることができる。
【0040】
以上にこの発明の具体的な実施形態について説明したが、この発明は上記実施形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で種々変更して実施することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】この発明の一実施形態に係る建物基礎部の防蟻構造を示す縦断面図である。
【図2】同じくその要所縦断面図である。
【図3】同じくその平面図である。
【図4】同じくその土間コンクリート施工前の平面図である。
【図5】同じくその施工手順を示す縦断面図である。
【図6】同じくその点検及び再施工の手順を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0042】
1・・布基礎、2・・立上り部、2a・・内側面、4・・防蟻材、5・・土間コンクリート、5a・・端面、5b・・端部上面、5c・・端部下面、6・・断熱材、7・・空間部、8・・接合部位、11a・・傾斜切断面、S・・地盤、W1・・防蟻材の垂直面の幅寸法、W2・・防蟻材の水平面の幅寸法、W3・・空間部の垂直面の幅寸法、W4・・空間部の水平面の幅寸法

【特許請求の範囲】
【請求項1】
布基礎(1)の立上り部(2)の内側面(2a)によって囲まれた床下の地盤(S)上に土間コンクリート(5)が施工されて、前記布基礎(1)の立上り部(2)の内側面(2a)と前記土間コンクリート(5)の端面(5a)とが接合された建物基礎部において、前記布基礎(1)の立上り部(2)の内側面(2a)と前記土間コンクリート(5)の端部下面(5c)との間の接合部位(8)下側の隅部に沿って、粒状のスラグを敷き詰めてなる防蟻材(4)が前記接合部位(8)下側の隅部を覆うようにして配設され、前記防蟻材(4)は、前記布基礎(1)の立上り部(2)の内側面(2a)に接する垂直面の幅寸法(W1)を100mm以下、前記土間コンクリート(5)の端部下面(5c)に接する水平面の幅寸法(W2)を100mm以下とした断面略直角三角形状に形成されていることを特徴とする建物基礎部の防蟻構造。
【請求項2】
前記防蟻材(4)は、前記布基礎(1)の立上り部(2)の内側面(2a)に接する垂直面の幅寸法(W1)を50mm以下、前記土間コンクリート(5)の端部下面(5c)に接する水平面の幅寸法(W2)を50mm以下とした断面略直角三角形状に形成されていることを特徴とする請求項1記載の建物基礎部の防蟻構造。
【請求項3】
前記布基礎(1)の立上り部(2)の内側面(2a)と前記土間コンクリート(5)の端部上面(5b)とに跨って断熱材(6)が配設され、前記布基礎(1)の立上り部(2)の内側面(2a)と前記土間コンクリート(5)の端部上面(5b)との間の接合部位(8)上側の隅部に沿って、前記断熱材(6)の一部を切り欠いてなる点検用及び防蟻材再施工用の空間部(7)が形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の建物基礎部の防蟻構造。
【請求項4】
前記点検用及び防蟻材再施工用の空間部(7)は、前記布基礎(1)の立上り部(2)の内側面(2a)と、前記土間コンクリート(5)の端部上面(5b)と、これら内側面(2a)と端部上面(5b)とに跨る前記断熱材(6)の傾斜切断面(11a)とによって囲まれ、その前記布基礎(1)の立上り部(2)の内側面(2a)に接する垂直面の幅寸法(W3)を30mm以下、前記土間コンクリート(5)の端部上面(5b)に接する水平面の幅寸法(W4)を30mm以下とした断面略直角三角形状に形成されていることを特徴とする請求項3記載の建物基礎部の防蟻構造。
【請求項5】
布基礎(1)の立上り部(2)の内側面(2a)によって囲まれた床下の地盤(S)の基礎際を、前記布基礎(1)の立上り部(2)の内側面(2a)に沿って断面略直角三角形状に掘削して、その掘削部位に防蟻材構成用の粒状のスラグを敷き詰めた後、土間コンクリート(5)を前記布基礎(1)の立上り部(2)の内側面(2a)に接合するように前記地盤(S)上に施工して、地盤(S)及び/又は土間コンクリート(5)に含まれる水分によって前記スラグを硬化させることで、前記布基礎(1)の立上り部(2)の内側面(2a)と前記土間コンクリート(5)の端部下面(5c)との間の接合部位(8)下側の隅部に沿って、前記布基礎(1)の立上り部(2)の内側面(2a)に接する垂直面の幅寸法(W1)を100mm以下、前記土間コンクリート(5)の端部下面(5c)に接する水平面の幅寸法(W2)を100mm以下とした断面略直角三角形状の防蟻材(4)を配設したことを特徴とする建物基礎部の防蟻方法。
【請求項6】
前記防蟻材(4)を、前記布基礎(1)の立上り部(2)の内側面(2a)に接する垂直面の幅寸法(W1)を50mm以下、前記土間コンクリート(5)の端部下面(5c)に接する水平面の幅寸法(W2)を50mm以下とした断面略直角三角形状に形成したことを特徴とする請求項5記載の建物基礎部の防蟻方法。
【請求項7】
前記土間コンクリート(5)の施工前に、前記スラグに対してその長さ1m当たり4リットル以下の水を散布して、その散布した水と地盤(S)及び/又は土間コンクリート(5)に含まれる水分とによって前記スラグを硬化させるようにしたことを特徴とする請求項5又は6記載の建物基礎部の防蟻方法。
【請求項8】
前記布基礎(1)の立上り部(2)の内側面(2a)と前記土間コンクリート(5)の端部上面(5b)とに跨って、傾斜切断面(11a)を有する断熱材(6)を配設することで、前記布基礎(1)の立上り部(2)の内側面(2a)と前記土間コンクリート(5)の端部上面(5b)との間の接合部位(8)上側の隅部に沿って、前記布基礎(1)の立上り部(2)の内側面(2a)と、前記土間コンクリート(5)の端部上面(5b)と、これら内側面(2a)と端部上面(5b)とに跨る前記断熱材(6)の傾斜切断面(11a)とによって囲まれた断面略直角三角形状の点検用及び防蟻材再施工用の空間部(7)を形成したことを特徴とする請求項5乃至7のいずれか記載の建物基礎部の防蟻方法。
【請求項9】
前記点検用及び防蟻材再施工用の空間部(7)を、前記布基礎(1)の立上り部(2)の内側面(2a)に接する垂直面の幅寸法(W3)を30mm以下、前記土間コンクリート(5)の端部上面(5b)に接する水平面の幅寸法(W4)を30mm以下とした断面略直角三角形状に形成したことを特徴とする請求項8記載の建物基礎部の防蟻方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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