説明

建物構築方法

【課題】 少なくとも既存杭を再利用することによって工期の短縮やコストの低減などを図りながら、新設建物の設計自由度が再利用する既存杭によって大きく制約を受けることのない建物構築方法。
【解決手段】 既存建物のうち少なくとも既存杭3を残して既存建物を撤去し、その撤去した既存建物の跡に新設建物1を構築する建物構築方法で、新設建物1の重量を既存杭3に伝達するために多数の長尺部材により構成された骨組構造体7を使用し、その骨組構造体7を既存杭3の上に設置して、その骨組構造体7の上に新設建物1を構築する建物構築方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既存建物のうち少なくとも既存杭を残して前記既存建物を撤去し、その撤去した既存建物の跡に新設建物を構築する建物構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
このような建物構築方法は、既存建物の跡に新設建物を構築するに際し、少なくとも既存杭を再利用することによって工期の短縮やコストの低減などを図るもので、従来、既存杭や既存基礎梁などを残して既存建物を撤去し、既存杭と既存杭の間に新たに新設杭を打設して、その新設杭と既存基礎梁の上に新設建物を構築する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、既存地下躯体である既存基礎底盤およびその上面に一体構築された既存基礎梁を残し、さらに、既存基礎梁上の地下柱や地下2階の床なども残して既存建物を撤去し、地下2階の床の上に新設基礎梁を構築するとともに、その新設基礎梁上に新設柱を立設して新設建物を構築する方法も知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平9−60007号公報
【特許文献2】特開平11−50480号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献1に記載の方法では、既存杭と既存杭の間に新たに新設杭を打設して新設建物を構築するため、新設杭の打設位置が既存杭により制約され、その結果、新設建物の柱位置も制約を受けて、新設建物の設計自由度が低下するという問題がある。
同様に、上記特許文献2に記載の方法でも、新設柱の構築位置が既存の地下柱により制約されるため、やはり新設建物の設計自由度が低下するという問題がある。
【0005】
本発明は、このような従来の問題点に着目したもので、その目的は、少なくとも既存杭を再利用することによって工期の短縮やコストの低減などを図りながら、新設建物の設計自由度が再利用する既存杭によって大きく制約を受けることのない建物構築方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の特徴構成は、既存建物のうち少なくとも既存杭を残して前記既存建物を撤去し、その撤去した既存建物の跡に新設建物を構築する建物構築方法であって、前記新設建物の重量を前記既存杭に伝達するために多数の長尺部材により構成された骨組構造体を使用し、その骨組構造体を前記既存杭の上に設置して、その骨組構造体の上に前記新設建物を構築するところにある。
【0007】
本発明の第1の特徴構成によれば、少なくとも既存杭を残して既存建物を撤去し、新設建物の重量をその既存杭に伝達するために多数の長尺部材により構成された骨組構造体を使用し、その骨組構造体を既存杭の上に設置して、その骨組構造体の上に新設建物を構築するので、骨組構造体の介在によって、その上に構築される新設建物に対して既存杭による制約が緩和される。
そして、新設建物の重量は、骨組構造体によって既存杭に確実に伝達されるので、少なくとも既存杭の再利用により工期の短縮やコストの低減などを図りながら、その新設建物を高い設計自由度のもとで構築することができる。
【0008】
本発明の第2の特徴構成は、前記骨組構造体が、多数の鉄骨により構成されたトラス構造体であるところにある。
【0009】
本発明の第2の特徴構成によれば、骨組構造体が、多数の鉄骨により構成されたトラス構造体であるから、トラス構造体の空間利用が可能となり、かつ、新設建物の重量は、その鉄骨製のトラス構造体を介して既存杭に確実に伝達される。
【0010】
本発明の第3の特徴構成は、前記トラス構造体が、ほぼ水平に配置される上方水平鉄骨と下方水平鉄骨、および、それら両水平鉄骨を連結する多数の斜め鉄骨により構成され、前記下方水平鉄骨を前記既存杭の上に設置し、前記上方水平鉄骨の上に前記新設建物を構築するところにある。
【0011】
本発明の第3の特徴構成によれば、トラス構造体が、ほぼ水平に配置される上方水平鉄骨と下方水平鉄骨、および、それら両水平鉄骨を連結する多数の斜め鉄骨により構成され、下方水平鉄骨を既存杭の上に設置し、上方水平鉄骨の上に新設建物を構築するので、例えば、新設建物の柱を上方水平鉄骨上に自由に立設して、自由度の高い新設建物を構築することができる。
【0012】
本発明の第4の特徴構成は、前記下方水平鉄骨と斜め鉄骨の節点を前記既存杭の上に配置して前記トラス構造体を前記既存杭の上に設置するところにある。
【0013】
本発明の第4の特徴構成によれば、下方水平鉄骨と斜め鉄骨の節点を既存杭の上に配置してトラス構造体を既存杭の上に設置するので、新設建物の重量は、より一層確実に既存杭に伝達される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明による建物構築方法の実施の形態を図面に基づいて説明する。
この建物構築方法は、図1〜図4に示すように、既存建物2を撤去してその跡に新設建物1を構築する方法で、まず、図1に示す既存建物2において、図2に示すように、例えば、地下に設置された既存基礎構造物のうち再利用可能なものを残して上方の既存建物2を解体して撤去する。
この再利用可能な既存基礎構造物には、少なくとも既存杭3が含まれ、再利用可能であれば、既存杭3に加えて、既存基礎梁4、既存底板5、既存外壁6などを残して上方の既存建物2を撤去する。
その後、必要な場合には、再利用する既存基礎構造物に対して増打ちや補強を行い、さらに、補強用の杭を新たに追加して必要な強度を確保する。
【0015】
つぎに、図3に示すように、少なくとも既存杭3を含む既存基礎構造物の上に多数の長尺部材により構成された骨組構造体としてのトラス構造体7を設置する。
このトラス構造体7は、新設建物1の重量を既存杭3などに伝達するためのもので、例えば、ほぼ水平に配置される上方水平鉄骨7aと下方水平鉄骨7b、および、それら両水平鉄骨7a,7bを連結する多数の斜め鉄骨7cにより構成される。ただし、このトラス構造体7に関しては、下方水平鉄骨7bと斜め鉄骨7cの節点8が、できる限り既存杭3の上方に位置するように設計して作製する。
そして、その節点8が既存杭3の上方に位置するようにして、トラス構造体7を既存基礎構造物の上に設置して適宜手段により固定し、図4に示すように、トラス構造体7の上方水平鉄骨7aの上に新設建物1を構築するのである。
【0016】
〔別実施形態〕
(1)先の実施形態では、骨組構造体としてのトラス構造体7を上方水平鉄骨7a、下方水平鉄骨7b、および、斜め鉄骨7cにより構成した例を示したが、トラス構造体7の具体的な構成については種々の変更が可能であり、さらに、トラス構造体の材質についても特に制限はなく、例えば、鉄筋コンクリート製のトラス構造体を使用することもできる。
また、トラス構造体に代えて、ラーメン構造体を骨組構造体7として使用することもでき、その場合にも、使用条件などに応じて、鉄骨製のラーメン構造体や鉄筋コンクリート製のラーメン構造体を適宜選択して使用することができる。
その他、骨組構造体7としては、新設建物1の重量を既存杭3に伝達できるものであればよく、例えば、長尺部材の一例である鉄骨、鉄棒、金属製パイプ材、そして/または、鉄筋コンクリートなどにより適宜組み立てた構造体を骨組構造体7として使用することもできる。
【0017】
(2)先の実施形態では、既存建物2のうち既存杭3、既存基礎梁4、既存底板5、既存外壁6などを残して上方の既存建物2を撤去した例を示したが、要するに、少なくとも既存杭3さえ残せばよく、したがって、既存杭3と既存基礎梁4のみを残して他を撤去したり、既存杭3のみを残して他を全て撤去して実施すこともできる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】既存建物の断面図
【図2】既存建物から基礎構造物を残して上方の建物を撤去した断面図
【図3】既存基礎構造物の上にトラス構造体を設置した断面図
【図4】トラス構造体の上に新設建物を構築した断面図
【符号の説明】
【0019】
1 新設建物
2 既存建物
3 既存杭
7 骨組構造体としてのトラス構造体
7a トラス構造体の上方水平鉄骨
7b トラス構造体の下方水平鉄骨
7c トラス構造体の斜め鉄骨
8 下方水平鉄骨の斜め鉄骨の節点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
既存建物のうち少なくとも既存杭を残して前記既存建物を撤去し、その撤去した既存建物の跡に新設建物を構築する建物構築方法であって、
前記新設建物の重量を前記既存杭に伝達するために多数の長尺部材により構成された骨組構造体を使用し、その骨組構造体を前記既存杭の上に設置して、その骨組構造体の上に前記新設建物を構築する建物構築方法。
【請求項2】
前記骨組構造体が、多数の鉄骨により構成されたトラス構造体である請求項1に記載の建物構築方法。
【請求項3】
前記トラス構造体が、ほぼ水平に配置される上方水平鉄骨と下方水平鉄骨、および、それら両水平鉄骨を連結する多数の斜め鉄骨により構成され、前記下方水平鉄骨を前記既存杭の上に設置し、前記上方水平鉄骨の上に前記新設建物を構築する請求項2に記載の建物構築方法。
【請求項4】
前記下方水平鉄骨と斜め鉄骨の節点を前記既存杭の上に配置して前記トラス構造体を前記既存杭の上に設置する請求項3に記載の建物構築方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−161476(P2006−161476A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−356796(P2004−356796)
【出願日】平成16年12月9日(2004.12.9)
【出願人】(000003621)株式会社竹中工務店 (1,669)
【Fターム(参考)】