建物耐震補強構造
【課題】耐震補強用骨組を利用することでコストの削減化、工期の短縮化を図りつつ環境改善装置を構築でき、耐震補強工事と環境改善工事を同時に行なえ、既存建物の商品価値を高めることができる建物耐震補強構造を提供すること。
【解決手段】耐震補強用骨組12を構成する補強用柱14と補強用梁16は、既存建物10の採光面積がそのまま確保されるように、既存建物10の正面10Aに位置する既存柱と既存梁に対向する箇所に設けられている。2本の補強用柱14の双方は、その内部が上下に連通すると共に、換気路20を介して各階内に連通され、太陽熱により温められることでその内部に上昇気流が生じ各階内の空気を吸引して上端開口22から排出するソーラーチムニーとして機能する鋼管柱24として構成されている。
【解決手段】耐震補強用骨組12を構成する補強用柱14と補強用梁16は、既存建物10の採光面積がそのまま確保されるように、既存建物10の正面10Aに位置する既存柱と既存梁に対向する箇所に設けられている。2本の補強用柱14の双方は、その内部が上下に連通すると共に、換気路20を介して各階内に連通され、太陽熱により温められることでその内部に上昇気流が生じ各階内の空気を吸引して上端開口22から排出するソーラーチムニーとして機能する鋼管柱24として構成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境改善装置を備える建物耐震補強構造に関する。
【背景技術】
【0002】
耐震改修の手法として、建物の外側面に対して骨組みを付加することで既存の建物の骨組みを補強する手法が広く用いられている。耐震改修工事は費用がかかる一方で、地震が発生しなければ効力を発揮しないため、そのメリットが明確になりにくい。
また、耐震改修の工事期間を利用して建物内部の温熱環境の改善のために空調設備更新や窓・壁に対する改修を行うこともある。例えば、ソーラーチムニーを設置して自然換気通風を図る場合、ダブルスキンを設置して断熱性能の向上、自然換気通風を図る場合、壁面に植物を設置して壁面緑化を図る場合、ライトシェルフを設置して昼光を室内の照明光として利用する場合などが挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
特開2006−2395号公報
特開2006−222011号公報
特開2008−248592号公報
特開2009−133526号公報
特開2010−161995号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ソーラーチムニーを新たに設けるためには、新たな鋼管を立設することが必要となり、コストおよび工期が掛かる。また、ダブルスキンを新たに設置するためには、ガラスを支持するための骨組みを構築することが必要で、コストおよび工期が掛かる。また、新たに壁面緑化を図るには、壁面に、植物を支持するための金物を複数取り付けていくことが必要で、コストおよび工期が掛かる。また、ライトシェルフを新たに設置するには、壁面にライトシェルフを支持するための頑強な支持部材を取り付けることが必要で、コストおよび工期が掛かる。
本発明は、耐震補強用骨組を利用することでコストの削減化、工期の短縮化を図りつつ環境改善装置を構築でき、耐震補強工事と環境改善工事を同時に行なえ、既存建物の商品価値を高めることができる建物耐震補強構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するため本発明は、鉄筋コンクリート造もしくは鉄骨鉄筋コンクリート造の既存建物の外側面に沿わせて複数の補強用柱と複数の補強用梁からなる耐震補強用骨組を構築し、前記耐震補強用骨組を前記既存建物に連結し地震時に前記既存建物に作用する水平力を前記耐震補強用骨組に負担させ、もって前記既存建物を耐震補強するようにした建物耐震補強構造であって、前記耐震補強用骨組を支持体として前記既存建物の室内の温熱環境または光環境を改善する環境改善装置を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、耐震補強用骨組を支持体として環境改善装置を設けるので、コストの削減化、工期の短縮化を図りつつ環境改善装置を構築できる。また、耐震補強構造は環境改善装置を備えるので、地震が発生しない場合にもその環境改善装置の恩恵が受けられ、既存建物の商品価値を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】既存建物の斜視図である。
【図2】既存建物に耐震補強用骨組を連結した斜視図である。
【図3】既存建物に耐震補強用骨組を連結した斜視図である。
【図4】耐震補強用骨組を利用してソーラーチムニーを設けた斜視図である。
【図5】耐震補強用骨組を利用してソーラーチムニーを設けた斜視図である。
【図6】ソーラーチムニーの動作説明図である。
【図7】ソーラーチムニーを構成する鋼管柱の一部破断図である。
【図8】耐震補強用骨組を利用してカーテンウォールを設けた斜視図である。
【図9】耐震補強用骨組を利用してガラス板を嵌め込んだ斜視図である。
【図10】ダブルスキンの説明図である。
【図11】ダブルスキンの説明図である。
【図12】耐震補強用骨組を利用して植栽領域を設けた斜視図である。
【図13】植栽領域の説明図である。
【図14】植栽領域の説明図である。
【図15】ライトシェルフの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に本発明の実施の形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1に示す既存建物10は、鉄筋コンクリート造(RC造)ラーメン構造の2階建ての建物である。この既存建物10は、既存柱である鉄筋コンクリート柱(RC柱)と、既存梁である鉄筋コンクリート梁(RC梁)とから成るRC架構を有している。
この例では既存建物10は4つの外側面を有しており、そのうちの一つの外側面は、ガラス板を有し、大きな採光面積が確保された正面10Aとなっており、外側面のうちの他の一つは正面10Aの反対側に位置する背面となっており、残りの二つ外側面は側面となっている。
【0009】
図2、図3に示すように、耐震補強用骨組12は、既存建物10の正面10Aに沿わせて構築されている。
図2に示す耐震補強用骨組12は、補強用柱14と補強用梁16とを含んで構成され、図3に示す耐震補強用骨組12は、補強用柱14と補強用梁16に加え斜材18を含んで構成されている。
補強用柱14と補強用梁16とは、既存建物10の採光面積がそのまま確保されるように、既存建物10の正面10Aに位置する既存柱と既存梁に対向する箇所に設けられている。図2、図3に示す耐震補強用骨組12の補強用柱14は、既存建物10の正面10Aの両側の既存柱に対向させて2本設けられている。
耐震補強用骨組12は既存建物10に連結され地震時に既存建物10に作用する水平力を耐震補強用骨組12に負担させ、もって既存建物10を耐震補強するものである。
そして、この耐震補強用骨組12を支持体として既存建物10の室内の温熱環境または光環境を改善する環境改善装置が設けられている。
【0010】
図4、図5に示す実施の形態では、環境改善装置は、ソーラーチムニー(太陽熱を利用した重力換気用煙突)である。
図4に示す実施の形態では、2本の補強用柱14の双方は、図6に示すように、その内部が上下に連通すると共に、換気路20を介して各階内に連通され、太陽熱により温められることでその内部に上昇気流が生じ各階内の空気を吸引して上端開口22から排出するソーラーチムニーとして機能する鋼管柱24として構成されている。したがって、環境改善装置は鋼管柱24を含んで構成されている。
図5に示す実施の形態では、耐震補強用骨組が、図2に示す耐震補強用骨組12の両側の2本の補強用柱14の中央に配置された補強用柱14をさらに備えており、補強用柱14は既存柱に対向した箇所に位置し、補強用柱14が鋼管柱24からなるソーラーチムニーとして構成されている。
通常の鋼管柱24は、梁との接合部にあるダイアフラムで鋼管の中の空間が仕切られているが、図7に示すように、ダイアフラム26の中央に孔28をあけるか、外ダイアフラム形式とすることで、上階の柱まで通じた空間となり空気が流れ、ソーラーチムニーとして機能する。
【0011】
このような構成によれば、太陽熱を利用した自然の力により、例えば、鋼管柱24の内部に空気の上方への流れが生じ、この流れにより換気路20を介して室内の空気が鋼管柱24の内部に引き込まれ、室内の換気が行なわれる。あるいは、鋼管柱24の内部に室内の空気を引き込むことで、不図示の換気路を介して地下ピットから空気を引き込んだ新鮮で冷涼な空気を室内に取り込んだりすることができる。したがって、夏季に冷房負荷を低減し、少エネを図ることが可能となる。
また、ソーラーチムニー(太陽熱を利用した重力換気用煙突)をわざわざ設置することなく、ソーラーチムニーを構成する鋼管柱24は耐震補強用骨組12を構築する際に同時に構築されるため、ソーラーチムニーを極めて容易に安価に設置でき、環境改善装置のコストの低減化を図る上で有利となる。
したがって、耐震補強と同時にソーラーチムニーを構築でき、室内の換気性を向上して居住性を高め、集合住宅としての商品価値も高めることが可能となる。
【0012】
次に、図8、図9に示す実施の形態について説明する。
図8、図9に示す実施の形態では、耐震補強用骨組12は図2に示すように既存建物10の正面10Aに沿わせて構築され、耐震補強用骨組12は正面10Aに位置する複数の柱に対向する箇所に設けられ補強用柱14と、正面10Aに位置する複数の梁に対向する箇所に設けられた補強用梁16とで構成されている。
また、図8に示すように、複数の補強用柱14と補強用梁16とで仕切られる空間の前面に多数のガラス板が配置されてガラスカーテンウォール30が形成され、あるいは、図9に示すように、複数の補強用柱14と補強用梁16とで仕切られる空間の前面にサッシを介してガラス板32が組み込まれ、既存建物10の正面10Aとそれらガラスカーテンウォール30、ガラス板32によりダブルスキンが形成されている。そして、ダブルスキンにより、断熱性能の向上が図られ、自然換気通風が図られている。
【0013】
図8、図9に示す例では、図10に示すように、既存建物10の正面10Aとガラスカーテンウォール30(あるいはガラス板32)により形成される空間34が各階毎に仕切られる。
そして、各階において、夏季には、空間34内で暖められた空気がガラスカーテンウォール30(あるいはガラス板32)の上部の換気口36から外部に放出され、これによりガラスカーテンウォール30(あるいはガラス板32)の下部の換気口38から外気が空間34内に導かれ、また、室内の空気が窓40の下方の換気口42から空間34内に導かれ、室内の換気が行なわれることで冷房負荷が軽減される。
また、冬季には、図11に示すように、ガラスカーテンウォール30(あるいはガラス板32)の上部の換気口36がダンパー44で閉じられ、空間34内で暖められた空気が窓40から室内に導かれ、これにより室内の冷たい空気が下方の換気口42から空間34内に導かれると共に、ガラスカーテンウォール30(あるいはガラス板32)の下部の換気口38から外気が空間34内に導かれ、暖房負荷が軽減される。
なお、ダブルスキンの換気構造は、上記のように各階毎に行なわずに、空間34を全階にわたって連通させ、最も下位の階の空間34の下部と、最も上位の階の空間34の上部とにそれぞれ換気口を設け、各階の換気を行なうようにしてもよい。
【0014】
このような構成によれば、断熱性能の向上と自然換気通風が図られ、夏季に冷房負荷を低減し、冬季には暖房負荷を低減し、少エネを図ることが可能となる。
また、ガラス板やガラスカーテンウォールを新規に設置する場合と異なり、耐震補強用骨組12を利用してそれらガラスカーテンウォール30やガラス板32を設置できるので、容易に安価にダブルスキンを構築でき、環境改善装置のコストの低減化を図る上で有利となる。
したがって、耐震補強と同時にダブルスキンを構築でき、室内の換気性を向上して居住性を高め、集合住宅としての商品価値も高めることが可能となる。
【0015】
次に、図12に示す実施の形態について説明する。
図12に示す実施の形態では、耐震補強用骨組12は図2に示すように既存建物10の正面10Aに沿わせて構築され、耐震補強用骨組12は正面10Aに位置する複数の柱に対向する箇所に設けられ補強用柱14と、正面10Aに位置する複数の梁に対向する箇所に設けられた補強用梁16とで構成されている。
そして、図12乃至図14に示すように、既存建物10と補強用梁16との間に水平面上を延在する載置部46が設けられている。
載置部46は、例えば、既存建物10の正面10Aに位置する既存梁と補強用梁16との間に施工したコンクリートスラブや、既存梁と補強用梁16との間に敷設した複数のプレキャストコンクリート板などで構成するなど、従来公知の様々な構造が採用可能である。
載置部46上に、日陰を生じさせる植物が栽培される植栽領域48が設けられている。
植栽領域48は、載置部46上に土壌槽をおき、土壌槽に収容した土壌で植物を栽培してもよく、あるいは、植木鉢を用いるなど任意であり、従来公知の様々な植栽方法が採用可能である。
図12に示す実施の形態では、環境改善装置は植栽領域48を含んで構成されている。
【0016】
このような構成によれば、従来の壁面緑化の際に設置される金物を用いることなく、既存建物10の正面10Aで植物を確実に支持でき、安定した状態で植物を植栽できる。
また、従来の壁面緑化の際に設置される金物はその大きさに制限を受けるため、大型の植物を配置することができなかったが、このような構成によれば、耐震補強用骨組12を構築する際に載置部46を追加するといった簡単で安価な構成により大型の植物を支持でき、配置することが可能となる。
したがって、耐震補強と同時に、各種大型、小型の植物により安らぎ感を与えて居住性を向上でき、また、夏季には日陰を作って正面10Aに面する部屋の温度上昇を抑制することが可能となり、また、図14に示すように、冬季に葉が落ちる植物を設置することで冬季には採光でき正面10Aに面する部屋の温度低下を抑制でき、それらにより少エネを図ることが可能となり、集合住宅としての商品価値も高めることが可能となる。
【0017】
次に、図15に示す実施の形態について説明する。
図15に示す実施の形態では、図2、図3に示すように、耐震補強用骨組12は既存建物10の正面10Aに沿わせて構築され、耐震補強用骨組12は正面10Aに位置する複数の柱に対向する箇所に設けられ補強用柱14と、正面10Aに位置する複数の梁に対向する箇所に設けられた補強用梁16とで構成され、あるいは、斜材18を含んで構成されている。
そして、対向する補強用柱14の間でそれぞれ正面10Aに面する各部屋に、太陽光や天空光などの昼光を反射させて導き、照明光として利用するライトシェルフ50が配置されている。
ライトシェルフ50は、ガラス板(窓)40の上縁から下がった箇所に配置され、上面が反射面として形成されている。
ライトシェルフ50は、反射面を上方に向け昼光を部屋に導く使用位置と、反射面を部屋側に向け昼光の部屋内への侵入を阻止する非使用位置との間で傾動調節可能に設けられている。
図15に示す実施の形態では、環境改善装置は、ライトシェルフ50を含んで構成されている。
【0018】
従来、昼光を照明光として利用するには比較的大きなライトシェルフが必要となり、ライトシェルフ単独で設置する場合には頑強な支持部材が必要となるが、上記の構成によれば、耐震補強用骨組12の頑強な補強用柱14や補強用梁16を利用して設置できるため、簡単に安価に設置できる。
また、ライトシェルフ50を補強用柱14や補強用梁16を介して強固に支持できるため、安定した状態でライトシェルフ50を設置できる。
したがって、耐震補強と同時に採光設備を設置でき、居住性を向上させ、また、集合住宅としての商品価値も高めることが可能となる。
【符号の説明】
【0019】
10……既存建物、12……耐震補強用骨組、14……補強用柱、16……補強用梁、18……斜材、24……鋼管柱、30……ガラスカーテンウォール、32……ガラス板、34……空間、46……載置部、48……植栽領域、50……ライトシェルフ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境改善装置を備える建物耐震補強構造に関する。
【背景技術】
【0002】
耐震改修の手法として、建物の外側面に対して骨組みを付加することで既存の建物の骨組みを補強する手法が広く用いられている。耐震改修工事は費用がかかる一方で、地震が発生しなければ効力を発揮しないため、そのメリットが明確になりにくい。
また、耐震改修の工事期間を利用して建物内部の温熱環境の改善のために空調設備更新や窓・壁に対する改修を行うこともある。例えば、ソーラーチムニーを設置して自然換気通風を図る場合、ダブルスキンを設置して断熱性能の向上、自然換気通風を図る場合、壁面に植物を設置して壁面緑化を図る場合、ライトシェルフを設置して昼光を室内の照明光として利用する場合などが挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
特開2006−2395号公報
特開2006−222011号公報
特開2008−248592号公報
特開2009−133526号公報
特開2010−161995号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ソーラーチムニーを新たに設けるためには、新たな鋼管を立設することが必要となり、コストおよび工期が掛かる。また、ダブルスキンを新たに設置するためには、ガラスを支持するための骨組みを構築することが必要で、コストおよび工期が掛かる。また、新たに壁面緑化を図るには、壁面に、植物を支持するための金物を複数取り付けていくことが必要で、コストおよび工期が掛かる。また、ライトシェルフを新たに設置するには、壁面にライトシェルフを支持するための頑強な支持部材を取り付けることが必要で、コストおよび工期が掛かる。
本発明は、耐震補強用骨組を利用することでコストの削減化、工期の短縮化を図りつつ環境改善装置を構築でき、耐震補強工事と環境改善工事を同時に行なえ、既存建物の商品価値を高めることができる建物耐震補強構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するため本発明は、鉄筋コンクリート造もしくは鉄骨鉄筋コンクリート造の既存建物の外側面に沿わせて複数の補強用柱と複数の補強用梁からなる耐震補強用骨組を構築し、前記耐震補強用骨組を前記既存建物に連結し地震時に前記既存建物に作用する水平力を前記耐震補強用骨組に負担させ、もって前記既存建物を耐震補強するようにした建物耐震補強構造であって、前記耐震補強用骨組を支持体として前記既存建物の室内の温熱環境または光環境を改善する環境改善装置を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、耐震補強用骨組を支持体として環境改善装置を設けるので、コストの削減化、工期の短縮化を図りつつ環境改善装置を構築できる。また、耐震補強構造は環境改善装置を備えるので、地震が発生しない場合にもその環境改善装置の恩恵が受けられ、既存建物の商品価値を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】既存建物の斜視図である。
【図2】既存建物に耐震補強用骨組を連結した斜視図である。
【図3】既存建物に耐震補強用骨組を連結した斜視図である。
【図4】耐震補強用骨組を利用してソーラーチムニーを設けた斜視図である。
【図5】耐震補強用骨組を利用してソーラーチムニーを設けた斜視図である。
【図6】ソーラーチムニーの動作説明図である。
【図7】ソーラーチムニーを構成する鋼管柱の一部破断図である。
【図8】耐震補強用骨組を利用してカーテンウォールを設けた斜視図である。
【図9】耐震補強用骨組を利用してガラス板を嵌め込んだ斜視図である。
【図10】ダブルスキンの説明図である。
【図11】ダブルスキンの説明図である。
【図12】耐震補強用骨組を利用して植栽領域を設けた斜視図である。
【図13】植栽領域の説明図である。
【図14】植栽領域の説明図である。
【図15】ライトシェルフの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に本発明の実施の形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1に示す既存建物10は、鉄筋コンクリート造(RC造)ラーメン構造の2階建ての建物である。この既存建物10は、既存柱である鉄筋コンクリート柱(RC柱)と、既存梁である鉄筋コンクリート梁(RC梁)とから成るRC架構を有している。
この例では既存建物10は4つの外側面を有しており、そのうちの一つの外側面は、ガラス板を有し、大きな採光面積が確保された正面10Aとなっており、外側面のうちの他の一つは正面10Aの反対側に位置する背面となっており、残りの二つ外側面は側面となっている。
【0009】
図2、図3に示すように、耐震補強用骨組12は、既存建物10の正面10Aに沿わせて構築されている。
図2に示す耐震補強用骨組12は、補強用柱14と補強用梁16とを含んで構成され、図3に示す耐震補強用骨組12は、補強用柱14と補強用梁16に加え斜材18を含んで構成されている。
補強用柱14と補強用梁16とは、既存建物10の採光面積がそのまま確保されるように、既存建物10の正面10Aに位置する既存柱と既存梁に対向する箇所に設けられている。図2、図3に示す耐震補強用骨組12の補強用柱14は、既存建物10の正面10Aの両側の既存柱に対向させて2本設けられている。
耐震補強用骨組12は既存建物10に連結され地震時に既存建物10に作用する水平力を耐震補強用骨組12に負担させ、もって既存建物10を耐震補強するものである。
そして、この耐震補強用骨組12を支持体として既存建物10の室内の温熱環境または光環境を改善する環境改善装置が設けられている。
【0010】
図4、図5に示す実施の形態では、環境改善装置は、ソーラーチムニー(太陽熱を利用した重力換気用煙突)である。
図4に示す実施の形態では、2本の補強用柱14の双方は、図6に示すように、その内部が上下に連通すると共に、換気路20を介して各階内に連通され、太陽熱により温められることでその内部に上昇気流が生じ各階内の空気を吸引して上端開口22から排出するソーラーチムニーとして機能する鋼管柱24として構成されている。したがって、環境改善装置は鋼管柱24を含んで構成されている。
図5に示す実施の形態では、耐震補強用骨組が、図2に示す耐震補強用骨組12の両側の2本の補強用柱14の中央に配置された補強用柱14をさらに備えており、補強用柱14は既存柱に対向した箇所に位置し、補強用柱14が鋼管柱24からなるソーラーチムニーとして構成されている。
通常の鋼管柱24は、梁との接合部にあるダイアフラムで鋼管の中の空間が仕切られているが、図7に示すように、ダイアフラム26の中央に孔28をあけるか、外ダイアフラム形式とすることで、上階の柱まで通じた空間となり空気が流れ、ソーラーチムニーとして機能する。
【0011】
このような構成によれば、太陽熱を利用した自然の力により、例えば、鋼管柱24の内部に空気の上方への流れが生じ、この流れにより換気路20を介して室内の空気が鋼管柱24の内部に引き込まれ、室内の換気が行なわれる。あるいは、鋼管柱24の内部に室内の空気を引き込むことで、不図示の換気路を介して地下ピットから空気を引き込んだ新鮮で冷涼な空気を室内に取り込んだりすることができる。したがって、夏季に冷房負荷を低減し、少エネを図ることが可能となる。
また、ソーラーチムニー(太陽熱を利用した重力換気用煙突)をわざわざ設置することなく、ソーラーチムニーを構成する鋼管柱24は耐震補強用骨組12を構築する際に同時に構築されるため、ソーラーチムニーを極めて容易に安価に設置でき、環境改善装置のコストの低減化を図る上で有利となる。
したがって、耐震補強と同時にソーラーチムニーを構築でき、室内の換気性を向上して居住性を高め、集合住宅としての商品価値も高めることが可能となる。
【0012】
次に、図8、図9に示す実施の形態について説明する。
図8、図9に示す実施の形態では、耐震補強用骨組12は図2に示すように既存建物10の正面10Aに沿わせて構築され、耐震補強用骨組12は正面10Aに位置する複数の柱に対向する箇所に設けられ補強用柱14と、正面10Aに位置する複数の梁に対向する箇所に設けられた補強用梁16とで構成されている。
また、図8に示すように、複数の補強用柱14と補強用梁16とで仕切られる空間の前面に多数のガラス板が配置されてガラスカーテンウォール30が形成され、あるいは、図9に示すように、複数の補強用柱14と補強用梁16とで仕切られる空間の前面にサッシを介してガラス板32が組み込まれ、既存建物10の正面10Aとそれらガラスカーテンウォール30、ガラス板32によりダブルスキンが形成されている。そして、ダブルスキンにより、断熱性能の向上が図られ、自然換気通風が図られている。
【0013】
図8、図9に示す例では、図10に示すように、既存建物10の正面10Aとガラスカーテンウォール30(あるいはガラス板32)により形成される空間34が各階毎に仕切られる。
そして、各階において、夏季には、空間34内で暖められた空気がガラスカーテンウォール30(あるいはガラス板32)の上部の換気口36から外部に放出され、これによりガラスカーテンウォール30(あるいはガラス板32)の下部の換気口38から外気が空間34内に導かれ、また、室内の空気が窓40の下方の換気口42から空間34内に導かれ、室内の換気が行なわれることで冷房負荷が軽減される。
また、冬季には、図11に示すように、ガラスカーテンウォール30(あるいはガラス板32)の上部の換気口36がダンパー44で閉じられ、空間34内で暖められた空気が窓40から室内に導かれ、これにより室内の冷たい空気が下方の換気口42から空間34内に導かれると共に、ガラスカーテンウォール30(あるいはガラス板32)の下部の換気口38から外気が空間34内に導かれ、暖房負荷が軽減される。
なお、ダブルスキンの換気構造は、上記のように各階毎に行なわずに、空間34を全階にわたって連通させ、最も下位の階の空間34の下部と、最も上位の階の空間34の上部とにそれぞれ換気口を設け、各階の換気を行なうようにしてもよい。
【0014】
このような構成によれば、断熱性能の向上と自然換気通風が図られ、夏季に冷房負荷を低減し、冬季には暖房負荷を低減し、少エネを図ることが可能となる。
また、ガラス板やガラスカーテンウォールを新規に設置する場合と異なり、耐震補強用骨組12を利用してそれらガラスカーテンウォール30やガラス板32を設置できるので、容易に安価にダブルスキンを構築でき、環境改善装置のコストの低減化を図る上で有利となる。
したがって、耐震補強と同時にダブルスキンを構築でき、室内の換気性を向上して居住性を高め、集合住宅としての商品価値も高めることが可能となる。
【0015】
次に、図12に示す実施の形態について説明する。
図12に示す実施の形態では、耐震補強用骨組12は図2に示すように既存建物10の正面10Aに沿わせて構築され、耐震補強用骨組12は正面10Aに位置する複数の柱に対向する箇所に設けられ補強用柱14と、正面10Aに位置する複数の梁に対向する箇所に設けられた補強用梁16とで構成されている。
そして、図12乃至図14に示すように、既存建物10と補強用梁16との間に水平面上を延在する載置部46が設けられている。
載置部46は、例えば、既存建物10の正面10Aに位置する既存梁と補強用梁16との間に施工したコンクリートスラブや、既存梁と補強用梁16との間に敷設した複数のプレキャストコンクリート板などで構成するなど、従来公知の様々な構造が採用可能である。
載置部46上に、日陰を生じさせる植物が栽培される植栽領域48が設けられている。
植栽領域48は、載置部46上に土壌槽をおき、土壌槽に収容した土壌で植物を栽培してもよく、あるいは、植木鉢を用いるなど任意であり、従来公知の様々な植栽方法が採用可能である。
図12に示す実施の形態では、環境改善装置は植栽領域48を含んで構成されている。
【0016】
このような構成によれば、従来の壁面緑化の際に設置される金物を用いることなく、既存建物10の正面10Aで植物を確実に支持でき、安定した状態で植物を植栽できる。
また、従来の壁面緑化の際に設置される金物はその大きさに制限を受けるため、大型の植物を配置することができなかったが、このような構成によれば、耐震補強用骨組12を構築する際に載置部46を追加するといった簡単で安価な構成により大型の植物を支持でき、配置することが可能となる。
したがって、耐震補強と同時に、各種大型、小型の植物により安らぎ感を与えて居住性を向上でき、また、夏季には日陰を作って正面10Aに面する部屋の温度上昇を抑制することが可能となり、また、図14に示すように、冬季に葉が落ちる植物を設置することで冬季には採光でき正面10Aに面する部屋の温度低下を抑制でき、それらにより少エネを図ることが可能となり、集合住宅としての商品価値も高めることが可能となる。
【0017】
次に、図15に示す実施の形態について説明する。
図15に示す実施の形態では、図2、図3に示すように、耐震補強用骨組12は既存建物10の正面10Aに沿わせて構築され、耐震補強用骨組12は正面10Aに位置する複数の柱に対向する箇所に設けられ補強用柱14と、正面10Aに位置する複数の梁に対向する箇所に設けられた補強用梁16とで構成され、あるいは、斜材18を含んで構成されている。
そして、対向する補強用柱14の間でそれぞれ正面10Aに面する各部屋に、太陽光や天空光などの昼光を反射させて導き、照明光として利用するライトシェルフ50が配置されている。
ライトシェルフ50は、ガラス板(窓)40の上縁から下がった箇所に配置され、上面が反射面として形成されている。
ライトシェルフ50は、反射面を上方に向け昼光を部屋に導く使用位置と、反射面を部屋側に向け昼光の部屋内への侵入を阻止する非使用位置との間で傾動調節可能に設けられている。
図15に示す実施の形態では、環境改善装置は、ライトシェルフ50を含んで構成されている。
【0018】
従来、昼光を照明光として利用するには比較的大きなライトシェルフが必要となり、ライトシェルフ単独で設置する場合には頑強な支持部材が必要となるが、上記の構成によれば、耐震補強用骨組12の頑強な補強用柱14や補強用梁16を利用して設置できるため、簡単に安価に設置できる。
また、ライトシェルフ50を補強用柱14や補強用梁16を介して強固に支持できるため、安定した状態でライトシェルフ50を設置できる。
したがって、耐震補強と同時に採光設備を設置でき、居住性を向上させ、また、集合住宅としての商品価値も高めることが可能となる。
【符号の説明】
【0019】
10……既存建物、12……耐震補強用骨組、14……補強用柱、16……補強用梁、18……斜材、24……鋼管柱、30……ガラスカーテンウォール、32……ガラス板、34……空間、46……載置部、48……植栽領域、50……ライトシェルフ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄筋コンクリート造もしくは鉄骨鉄筋コンクリート造の既存建物の外側面に沿わせて複数の補強用柱と複数の補強用梁からなる耐震補強用骨組を構築し、
前記耐震補強用骨組を前記既存建物に連結し地震時に前記既存建物に作用する水平力を前記耐震補強用骨組に負担させ、もって前記既存建物を耐震補強するようにした建物耐震補強構造であって、
前記耐震補強用骨組を支持体として前記既存建物の室内の温熱環境または光環境を改善する環境改善装置を設けた、
ことを特徴とする建物耐震補強構造。
【請求項2】
前記複数の補強用柱のうちの少なくとも一つは、その内部が上下に連通すると共に各階内に連通され、太陽熱により温められることでその内部に上昇気流が生じ各階内の空気を吸引して上端から排出するソーラーチムニーとして機能する鋼管柱として構成され、
前記環境改善装置は前記鋼管柱を含んで構成されている、
ことを特徴とする請求項1記載の建物耐震補強構造。
【請求項3】
前記複数の補強用柱は、前記外側面に位置する複数の柱に対向する箇所に設けられ、
前記複数の補強用梁は、前記外側面に位置する複数の梁に対向する箇所に設けられている、
ことを特徴とする請求項2記載の建物耐震補強構造。
【請求項4】
前記複数の補強用柱は、前記外側面に位置する複数の柱に対向する箇所に設けられ、
前記複数の補強用梁は、前記外側面に位置する複数の梁に対向する箇所に設けられ、
前記外側面はガラス板を含んで構成され、
前記耐震補強用骨組にガラス板を嵌め込んで、あるいは前記耐震補強用骨組にガラスカーテンウォールを形成して前記外側面のガラス板とによりダブルスキンを形成し、
前記環境改善装置は、前記ダブルスキンを含んで構成されている、
ことを特徴とする請求項1記載の建物耐震補強構造。
【請求項5】
前記複数の補強用柱は、前記外側面に位置する複数の柱に対向する箇所に設けられ、
前記複数の補強用梁は、前記外側面に位置する複数の梁に対向する箇所に設けられ、
前記外側面と前記補強用梁との間に水平方向に延在する載置部が設けられ、
前記載置部上に、植物が栽培される植栽領域が設けられ、
前記環境改善装置は、前記植栽領域を含んで構成されている、
ことを特徴とする請求項1記載の建物耐震補強構造。
【請求項6】
前記複数の補強用柱は、前記外側面に位置する複数の柱に対向する箇所に設けられ、
前記複数の補強用梁は、前記外側面に位置する複数の梁に対向する箇所に設けられ、
互いに対向する前記補強用柱の間にそれぞれ前記外側面に面する各部屋に太陽光を導くライトシェルフが配置され、
前記環境改善装置は、前記ライトシェルフを含んで構成されている、
ことを特徴とする請求項1記載の建物耐震補強構造。
【請求項1】
鉄筋コンクリート造もしくは鉄骨鉄筋コンクリート造の既存建物の外側面に沿わせて複数の補強用柱と複数の補強用梁からなる耐震補強用骨組を構築し、
前記耐震補強用骨組を前記既存建物に連結し地震時に前記既存建物に作用する水平力を前記耐震補強用骨組に負担させ、もって前記既存建物を耐震補強するようにした建物耐震補強構造であって、
前記耐震補強用骨組を支持体として前記既存建物の室内の温熱環境または光環境を改善する環境改善装置を設けた、
ことを特徴とする建物耐震補強構造。
【請求項2】
前記複数の補強用柱のうちの少なくとも一つは、その内部が上下に連通すると共に各階内に連通され、太陽熱により温められることでその内部に上昇気流が生じ各階内の空気を吸引して上端から排出するソーラーチムニーとして機能する鋼管柱として構成され、
前記環境改善装置は前記鋼管柱を含んで構成されている、
ことを特徴とする請求項1記載の建物耐震補強構造。
【請求項3】
前記複数の補強用柱は、前記外側面に位置する複数の柱に対向する箇所に設けられ、
前記複数の補強用梁は、前記外側面に位置する複数の梁に対向する箇所に設けられている、
ことを特徴とする請求項2記載の建物耐震補強構造。
【請求項4】
前記複数の補強用柱は、前記外側面に位置する複数の柱に対向する箇所に設けられ、
前記複数の補強用梁は、前記外側面に位置する複数の梁に対向する箇所に設けられ、
前記外側面はガラス板を含んで構成され、
前記耐震補強用骨組にガラス板を嵌め込んで、あるいは前記耐震補強用骨組にガラスカーテンウォールを形成して前記外側面のガラス板とによりダブルスキンを形成し、
前記環境改善装置は、前記ダブルスキンを含んで構成されている、
ことを特徴とする請求項1記載の建物耐震補強構造。
【請求項5】
前記複数の補強用柱は、前記外側面に位置する複数の柱に対向する箇所に設けられ、
前記複数の補強用梁は、前記外側面に位置する複数の梁に対向する箇所に設けられ、
前記外側面と前記補強用梁との間に水平方向に延在する載置部が設けられ、
前記載置部上に、植物が栽培される植栽領域が設けられ、
前記環境改善装置は、前記植栽領域を含んで構成されている、
ことを特徴とする請求項1記載の建物耐震補強構造。
【請求項6】
前記複数の補強用柱は、前記外側面に位置する複数の柱に対向する箇所に設けられ、
前記複数の補強用梁は、前記外側面に位置する複数の梁に対向する箇所に設けられ、
互いに対向する前記補強用柱の間にそれぞれ前記外側面に面する各部屋に太陽光を導くライトシェルフが配置され、
前記環境改善装置は、前記ライトシェルフを含んで構成されている、
ことを特徴とする請求項1記載の建物耐震補強構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2012−52367(P2012−52367A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−196555(P2010−196555)
【出願日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【出願人】(302060926)株式会社フジタ (285)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【出願人】(302060926)株式会社フジタ (285)
【Fターム(参考)】
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