説明

建物設計支援システム

【課題】建築対象となる建物の設計を支援するに際し、関係者間における意志の疎通や知識の違いを埋め合わせ且つ設計条件により生じる認識の違いを明確にすることで、時間的及び経済的な損失の少ない安定した設計ができる建物設計支援システムを提供する。
【解決手段】少なくとも、建築対象となる建物の構造種別、使用面積、使用高さ、及び用途を考慮した二次元構図を平面図からなる建物情報として格納する建物情報データベース44と、建物情報データベース44に基づいて建物を設計する際に必要な所定の諸条件を入力する設計条件入力手段41と、設計条件入力手段41で入力された諸条件に基づいて、設計対象となる建物において必要とされる最低限の設備及びその設備が及ぼす影響を設計上の確認事項として確認する設備確認手段42と、設備確認手段42で確認された確認事項を盛り込んだ建物の設計計画として確定する設計計画確定手段43とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力会社内で管理されている屋外式配電用変電所を制御する制御室を建築する際に、当該建築対象となる建物の設計を支援する建物設計支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、建物の設計においては、様々な手法により主要部分の設計が実施されている。例えば、事務所や店舗などの建物を設計する手法としては、事務所建築におけるコアの設計を熟練者でなくても比較的短時間で且つ高品質に行えるようにする事務所建築の設計支援装置(特許文献1参照)、顧客に対して充分な設計情報を提供し、顧客の目的に応じた店舗設計を支援する店舗設計支援システム(特許文献2参照)、及び顧客自らが建物の間取りを作成する場合でも設計建築会社の規格や標準設定等に対応した間取りを作成する建物設計支援システム(特許文献3参照)などが提案されている。
【0003】
このような手法では、例えば、独特な設備を有する建物を設計する場合、又は設計条件が細かく担当者の知識や技能により完成品に差が出てしまうような厳密な設計をする場合などに柔軟に対応することができなかった。具体的には、電力会社において、例えば、電力会社で遂行される業務独特の建物を設計する際に、業務自体又は周辺環境が直接的又は間接的に及ぼす特殊性を踏まえた上で、担当者の技能や知識に関係なく常に安定した設計を行うためのシステムとしてそのまま適用することは困難であった。
【0004】
【特許文献1】特開平07−296036号公報
【特許文献2】特開2003−296372号公報
【特許文献3】特開2001−282862号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はこのような事情に鑑み、建築対象となる建物の設計を支援するに際し、関係者間における意志の疎通や知識の違いを埋め合わせ且つ設計条件により生じる認識の違いを明確にすることで、時間的及び経済的な損失の少ない安定した設計ができる建物設計支援システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための本発明の第1の態様は、電力会社内で管理されている屋外式配電用変電所を制御する制御室を建築する際に、当該建築対象となる建物の設計を支援する建物設計支援システムであって、少なくとも、前記建築対象となる建物の構造種別、使用面積、使用高さ、及び用途を考慮した二次元構図を平面図からなる建物情報として格納する建物情報データベースと、前記建物情報データベースに基づいて前記建物を設計する際に必要な所定の諸条件を入力する設計条件入力手段と、前記設計条件入力手段で入力された諸条件に基づいて、設計対象となる建物において必要とされる最低限の設備及びその設備が及ぼす影響を設計上の確認事項として確認する設備確認手段と、前記設備確認手段で確認された確認事項を盛り込んだ建物の設計計画として確定する設計計画確定手段とを具備することを特徴とする建物設計支援システムにある。
【0007】
かかる第1の態様では、建物を設計する際に必要な所定の緒条件が入力されて、設計対象となる建物において必要とされる最低限の設備及びその設備が及ぼす影響が設計上の確認事項として確認され、その確認事項を盛り込んだ建物の設計計画が確定される。
【0008】
本発明の第2の態様は、前記所定の諸条件とは、少なくとも、設計対象となる建物の建物面積と構造形態、設置される設備の据付面積、寸法、位置、型式、及び特殊な設備の設置有無とその個数であることを特徴とする第1の態様に記載の建物設計支援システムにある。
【0009】
かかる第2の態様では、所定の諸条件が、少なくとも、設計対象となる建物の建物面積と構造形態、設置される設備の据付面積、寸法、位置、型式、及び特殊な設備の設置有無とその個数となる。
【0010】
本発明の第3の態様は、前記設備確認手段は、設計上の基本事項及び実施設計で発生した過去の事例を示す指針情報を参照しながら設計対象となる建物の確認事項を確認することを特徴とする第1又は2の態様に記載の建物設計支援システムにある。
【0011】
かかる第3の態様では、設計上の基本事項及び実施設計で発生した過去の事例を示す指針情報を参照しながら設計対象となる建物の確認事項が確認される。
【0012】
本発明の第4の態様は、前記設計計画確定手段は、前記確認事項に基づいて確定した幾つかの設計計画を所定の条件又は状況に応じて出力することを特徴とする第1〜3の何れかの態様に記載の建物設計支援システムにある。
【0013】
かかる第4の態様では、確認事項に基づいて確定した幾つかの設計計画が所定の条件又は状況に応じて出力される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、建築対象となる建物の設計を支援するに際し、関係者間における意志の疎通や知識の違いを埋め合わせ且つ設計条件により生じる認識の違いを明確にすることで、時間的及び経済的な損失の少ない安定した設計ができる建物設計支援システムを提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を用いて本発明を実施するための最良の形態について説明する。なお、本実施形態の説明は例示であり、本発明の構成は以下の説明に限定されない。
【0016】
本実施形態では、例えば、建築対象となる建物の設計を支援するに際し、関係者間における意志の疎通や知識の違いを埋め合わせ且つ設計条件により生じる認識の違いを明確にすることで、時間的及び経済的な損失の少ない安定した設計ができる建物設計支援システムを実現する。
【0017】
図1は、本発明の実施形態に係る建物設計支援システムのシステム構成を示す図である。なお、本実施形態では、電力会社が管理する屋外式配電用変電所を制御する制御室を建築する場合を想定している。
【0018】
図示するように、本実施形態の建物設計支援システム1は、電力会社内において、主管となる者が操作する主管端末2、設計者が操作する設計者端末3、及び建築対象となる建物の設計を主体的に支援する建物設計支援サーバ4がそれぞれネットワーク10を介して接続されている。ここで、ネットワーク10としては、例えば、社内LAN(Local Area Network)やインターネットなどのネットワーク環境を想定している。このようにして、電力会社で管理する特殊な建物を建築する際の設計が支援されることになる。
【0019】
ここで、建物設計支援サーバ4の構成について説明する。建物設計支援サーバ4は、設計条件入力手段41、設備確認手段42、設計計画確定手段43、及び建物情報データベース44(「DB」と図示する)を含み構成されている。
【0020】
設計条件入力手段41は、後述する建物情報データベース44に基づいて建物を設計する際に必要な所定の諸条件を入力する。ここでいう所定の諸条件とは、少なくとも、設計対象となる建物の建物面積と構造形態(例えば、RC造や鉄骨造)、設置される設備の据付面積、寸法、位置、型式、及び特殊な設備(例えば、便所や洗面所)の設置有無とその個数である。
【0021】
設備確認手段42は、設計条件入力手段41で入力された諸条件に基づいて、設計対象となる建物において必要とされる最低限の設備及びその設備が及ぼす影響を設計上の確認事項として確認する。具体的に、設備確認手段42は、設計上の基本事項及び実施設計で発生した過去の事例を示す指針情報を参照しながら設計対象となる建物の確認事項を確認する。
【0022】
設計計画確定手段43は、設備確認手段42で確認された確認事項を盛り込んだ建物の設計計画として確定する。具体的に、設計計画確定手段43は、確認事項に基づいて確定した幾つかの設計計画を所定の条件又は状況に応じて出力する。ここでいう所定の条件又は状況とは、詳しくは後述するが、例えば、電力会社自体及び電力会社周辺の環境に関連する事態をある程度想定できる基準である。
【0023】
建物情報データベース44は、少なくとも、建築対象となる建物の構造種別、使用面積、使用高さ、及び用途を考慮した二次元構図を平面図からなる建物情報として格納する。
【0024】
ここで、建物情報データベース44に格納される建物情報の一例について具体的に説明する。図2は、本発明の実施形態に係る建物情報の一例を示す図である。
【0025】
図2には、建築対象となる建物の平面図として、建物の上面図及び側面図が具体的にイメージできる程度に示されている。そして、平面図の補足情報として、建物や設備の構造、面積、及び高さなどが例示されている。このような情報により、設計を担当する会社や設計者といった関係者間における意志の疎通や知識の違いを容易に埋め合わせるようにすることができる。
【0026】
次に、電力会社内において建築対象となる建物の設計支援をする際の処理手順について説明する。図3は、本発明の実施形態に係る建物設計支援システムの処理手順を示す通信シーケンスである。なお、ここでの処理は、建物設計支援サーバ4が主体となって実行する処理である。
【0027】
図示するように、まず、建物の設計依頼が発生した場合に、主管端末2で設計依頼の発生が確認される(S1)。そして、主管端末2から設計担当が操作する設計者端末3に対してその旨が通知された後(S2)、主管端末2において建物情報データベース44に格納されている情報に基づき、設計に必要な緒条件が入力される(S3)。ここで入力された緒条件は、建物設計支援サーバ4の建物情報データベース44に格納されて管理される。また、入力される諸条件としては、例えば、設計対象となる建物の建物面積と構造形態(例えば、RC造や鉄骨造)、設置される設備の据付面積、寸法、位置、型式、及び特殊な設備(例えば、便所や洗面所)の設置有無とその個数などが挙げられる。
【0028】
そして、建物設計支援サーバ4では、ステップS3で格納された情報に基づいて、設計上で必要な確認事項が確認される(S4)。続いて、建築対象となる建物の諸条件及び確認事項を満たす設計計画が確定される(S5)。このとき、幾つかの設計計画が確定された場合には、それら設計計画が各種条件又は状況に応じて出力される(S6)。ここでいう各種条件及び状況に応じた出力とは、例えば、電力会社で必要とされる情報をある条件に照らし合わせて出力する又は電力会社やそれを取り巻く状況に応じてその都度必要な情報を出力することを意味する。一方、1つの設計計画のみが確定された場合には、ステップS5において確定した設計計画を出力するようにする。ここで、建物設計支援サーバ4は、主管端末2及び設計者端末3に対して設計計画を通知することで出力処理をする(S7)。
【0029】
そして、設計者端末3では、通知された設計計画に基づいて、設計計画が選定又は承認されて(S8)、選定又は承認がされた旨が主管端末2に対して通知される(S9)。主管端末2では、通知を受けた内容に関する承認が行われ(S10)、その旨を示す承認通知が建物設計支援サーバ4に対して送信される(S11)。
【0030】
上述のような処理により、本実施形態では、建築対象となる建物の設計を支援するに際し、関係者間における意志の疎通や知識の違いを埋め合わせ且つ設計条件により生じる認識の違いを明確に把握することができる。これにより、時間的及び経済的な損失の少ない安定した設計をすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施形態に係る建物設計支援システムのシステム構成を示す図である。
【図2】本発明の実施形態に係る本発明の実施形態に係る建物情報の一例を示す図である。
【図3】本発明の実施形態に係る建物設計支援システムの処理手順を示す通信シーケンスである。
【符号の説明】
【0032】
2 主管端末
3 設計者端末
4 建物設計支援サーバ
10 ネットワーク
41 設計条件入力手段
42 設備確認手段
43 設計計画確定手段
44 建物情報データベース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力会社内で管理されている屋外式配電用変電所を制御する制御室を建築する際に、当該建築対象となる建物の設計を支援する建物設計支援システムであって、
少なくとも、前記建築対象となる建物の構造種別、使用面積、使用高さ、及び用途を考慮した二次元構図を平面図からなる建物情報として格納する建物情報データベースと、
前記建物情報データベースに基づいて前記建物を設計する際に必要な所定の諸条件を入力する設計条件入力手段と、
前記設計条件入力手段で入力された諸条件に基づいて、設計対象となる建物において必要とされる最低限の設備及びその設備が及ぼす影響を設計上の確認事項として確認する設備確認手段と、
前記設備確認手段で確認された確認事項を盛り込んだ建物の設計計画として確定する設計計画確定手段とを具備することを特徴とする建物設計支援システム。
【請求項2】
前記所定の諸条件とは、少なくとも、設計対象となる建物の建物面積と構造形態、設置される設備の据付面積、寸法、位置、型式、及び特殊な設備の設置有無とその個数であることを特徴とする請求項1に記載の建物設計支援システム。
【請求項3】
前記設備確認手段は、設計上の基本事項及び実施設計で発生した過去の事例を示す指針情報を参照しながら設計対象となる建物の確認事項を確認することを特徴とする請求項1又は2に記載の建物設計支援システム。
【請求項4】
前記設計計画確定手段は、前記確認事項に基づいて確定した幾つかの設計計画を所定の条件又は状況に応じて出力することを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の建物設計支援システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−328542(P2007−328542A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−159029(P2006−159029)
【出願日】平成18年6月7日(2006.6.7)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】