説明

建物

【課題】地震が発生した際の応力集中を緩和する。
【解決手段】異なる方向x,xに延設された第1建物部Aと第2建物部Aを連結部Gで連結した構造の建物1において、梁や柱からなる構面C11,C21をそれぞれの建物部A,Aに構築し、それらの構面C11,C21を第1連結部材Eにて連結する。さらに、一方の構面C11と第1連結部材Eとが為す水平角βを90°<β<180°の範囲とし、他方の構面C21と第1連結部材Eとが為す水平角βを90°<β<180°の範囲とする。これにより、地震が発生した場合でも、第1連結部材Eの付近での応力集中を緩和することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数階建ての建物部分である第1建物部と、複数階建ての建物部分である第2建物部と、該第1建物部と該第2建物部とを連結する連結部と、を備えた建物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物の形は多種多様であり、例えば、
・ 図3(a) に示すように内部に吹き抜けHを配置したもの(例えば、特許文献1参照)や、
・ 同図(b) に示すようなスターハウス(例えば、特許文献2参照)や、
・ 同図(c) に示すように“くの字”形状をしたもの(例えば、特許文献3参照)、
などがある。この図3(a) のものは、異なる方向に延設された4つの建物部A41,…を4つの連結部G41,…で連結したものと捉えることができ、同図(b)
のものは、異なる方向に放射状に伸びた3つの建物部A51,…を1つの連結部G51で連結したものと捉えることができ、同図(c)
のものは、異なる方向に延設された2つの建物部A61,A62を1つの連結部G61で連結したものと捉えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−21003号公報
【特許文献2】特開2004−31642号公報
【特許文献3】特開2000−160675号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のように、異なる方向に延設された複数の建物部を連結するようにした構造のものでは、地震が発生した場合には連結部に応力が集中するおそれがあるので、適正な処理が求められていた。
【0005】
本発明は、適正な処理がなされた建物を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、図1(a) (b) に例示するものであって、複数階建ての建物部分である第1建物部(A)と、複数階建ての建物部分である第2建物部(A)と、少なくとも柱(p01,…)及び梁(b01,…)によって構成されると共に前記第1建物部(A)と前記第2建物部(A)とを連結する連結部(G)と、を備えた建物(1)において、
前記第1建物部(A)が、前記連結部(G)から第1の方向(x)に延設され、
前記第2建物部(A)が、前記第1の方向(x)と所定の水平角α(0°<α<180°)を為す第2の方向(x)に前記連結部(G)から延設され、
前記第1建物部(A)における、前記所定の水平角αを挟んで前記第2建物部(A)と対峙する側(図1(b) の符号A11参照)を“第1建物部の内側”とし、前記第2建物部(A)における、前記所定の水平角αを挟んで前記第1建物部(A)と対峙する側(図1(b)
の符号A21参照)を“第2建物部の内側”とした場合に、
複数の柱(p11,…)と複数の梁(b11,…)とによって構築された第1内側構面(C11)が、前記第1の方向(x)に延設された状態で前記第1建物部(A)の内側(A11)に配置され、
複数の柱(p21,…)と複数の梁(b21,…)とによって構築された第2内側構面(C21)が、前記第2の方向(x)に延設された状態で前記第2建物部(A)の内側(A21)に配置され、
前記第1建物部(A)と前記連結部(G)との境界部(D)には、第1連結柱(P)が前記第1内側構面(C11)に連結された状態で配置され、
前記第2建物部(A)と前記連結部(G)との境界部(D)には、第2連結柱(P)が前記第2内側構面(C21)に連結された状態で配置され、
前記第1連結柱(P)及び前記第2連結柱(P)には、梁及び/又は耐震壁からなる第1連結部材(E)が連結されて第1連結部構面(J)が形成され、
該第1連結部材(E)と前記第1内側構面(C11)とが為す水平角である第1挟角βは、
【数1】

の範囲に設定され、前記第1連結部材(E)と前記第2内側構面(C21)とが為す水平角である第2挟角βは、
【数2】

の範囲に設定されていることを特徴とする。
【0007】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、前記第1内側構面(C11)を含む仮想面(V11)と前記第2内側構面(C21)を含む仮想面(V21)とが交差する仮想の交線(V)を“構面交線”とした場合に、
前記第1連結柱(P)は、前記構面交線(V)から前記第1の方向(x)に離間する位置に配置され、
前記第2連結柱(P)は、前記構面交線(V)から前記第2の方向(x)に離間する位置に配置されたことを特徴とする。
【0008】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に係る発明において、前記第1建物部(A)における、該第1建物部の内側(A11)と反対の側(図1(b) の符号A12参照)を“第1建物部の外側”とし、前記第2建物部(A)における、該第2建物部の内側(A21)と反対の側(図1(b)
の符号A22参照)を“第2建物部の外側”とした場合に、
複数の柱(p15,…)と複数の梁(b15,…)とによって構築された第1外側構面(C12)が、前記第1の方向(x)に延設された状態で前記第1建物部の外側(A12)に配置され、
複数の柱(p25,…)と複数の梁(b25,…)とによって構築された第2外側構面(C22)が、前記第2の方向(x)に延設された状態で前記第2建物部の外側(A22)に配置され、
前記第1建物部(A)と前記連結部(G)との境界部には、第3連結柱(P)が前記第1外側構面(C12)に連結された状態で配置され、
前記連結部(G)における、前記第1外側構面(C12)を含む仮想面よりも外側(図1(b) では上側)には第4連結柱(P)が配置され、
これらの第3連結柱(P)及び第4連結柱(P)には、梁及び/又は耐震壁からなる第2連結部材(E)が連結されて第2連結部構面(J)が形成され、
前記第2建物部(A)と前記連結部(G)との境界部には、第5連結柱(P)が前記第2外側構面(C22)に連結された状態で配置され、
前記連結部(G)における、前記第2外側構面(C22)を含む仮想面よりも外側(図1(b) では左側)には第6連結柱(P)が配置され、
これらの第5連結柱(P)及び第6連結柱(P)には、梁及び/又は耐震壁からなる第3連結部材(E)が連結されて第3連結部構面(J)が形成されたことを特徴とする。
【0009】
請求項4に係る発明は、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の発明において、前記第1建物部(A)と前記連結部(G)との境界部(D)には、前記第1連結柱(P)と、梁及び/又は耐震壁(符号b01,b02参照)とからなる第1境界部構面(C)が配置され、
前記第2建物部(A)と前記連結部(G)との境界部(D)には、前記第2連結柱(P)と、梁及び/又は耐震壁(符号b03,b04参照)とからなる第2境界部構面(C)が配置されてなることを特徴とする。
【0010】
請求項5に係る発明は、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の発明において、前記第1連結柱(P)、前記第2連結柱(P)、及び前記第1連結部材(E)は、前記第1挟角βと前記第2挟角βとが略等しくなる位置に配置されたことを特徴とする。
【0011】
請求項6に係る発明は、請求項3に係る発明において、前記第1建物部(A)と前記連結部(G)との境界部(D)には、前記第1連結柱(P)と、梁及び/又は耐震壁(符号b01,b02参照)とからなる第1境界部構面(C)が配置され、
前記第2建物部(A)と前記連結部(G)との境界部(D)には、前記第2連結柱(P)と、梁及び/又は耐震壁(符号b03,b04参照)とからなる第2境界部構面(C)が配置され、前記第4連結柱(P)と前記第6連結柱(P)には、少なくとも1本の梁からなる第4連結部材が連結されて第4連結部構面(J)が形成され、
前記連結部(G)は、少なくともこれらの第1及び第2境界部構面(C,C)と前記第1乃至第4連結部構面(J,J,J,J)とが筒状に連結されて構成されたことを特徴とする。
【0012】
なお、括弧内の番号などは、図面における対応する要素を示す便宜的なものであり、従って、本記述は図面上の記載に限定拘束されるものではない。
【発明の効果】
【0013】
請求項1、2及び5に係る発明によれば、2つの内側構面を前記第1連結部構面により連結しているので、前記第1建物部及び前記第2建物部に生じた横揺れを該第1連結部構面の全体で受けることができ、力の局部的集中を従来に比べて軽減できる。一方、本発明に係る建物は、異なる3つの方向に延設された3つの構面(つまり、前記第1内側構面、前記第2内側構面及び前記第1連結部構面)を備えているので、これら3つの構面によって様々な方向の地震横揺れに抵抗することができ、建物自体の強度を高めることができる。このように屈曲数を増やし、構面方向を90°〜180°の範囲で変化させることにより、各構面の協働効果を図ることができる。抵抗力の弱い方向に対しても、相互に補完しあうことが可能になり、連続した屈曲構面の地震の方向による抵抗力の格差を緩和する効果が得られる。
【0014】
請求項3に係る発明によれば、互いに連結されると共に異なる方向に延設された2つの構面(つまり、前記第1外側構面と前記第2連結部構面、或いは前記第2外側構面と前記第3連結部構面)が、各建物部の外側から連結部の外側に掛けて配置されるので、これらの構面によって様々な方向の地震横揺れに抵抗することができ、建物自体の強度を高めることができる。このように屈曲数を増やし、構面方向を90°〜180°の範囲で変化させることにより、各構面の協働効果を図ることができる。抵抗力の弱い方向に対しても、相互に補完しあうことが可能になり、連続した屈曲構面の地震の方向による抵抗力の格差を緩和する効果が得られる。
【0015】
請求項4に係る発明によれば、互いに連結されると共に異なる方向に延設された5つの構面(つまり、前記第1内側構面、前記第2内側構面、前記第1連結部構面、前記第1境界部構面及び前記第2境界部構面)を少なくとも備えることとなるので、これらの構面によって様々な方向の地震横揺れに抵抗することができ、建物自体の強度を高めることができる。このように屈曲数を増やし、構面方向を90°〜180°の範囲で変化させることにより、各構面の協働効果を図ることができる。抵抗力の弱い方向に対しても、相互に補完しあうことが可能になり、連続した屈曲構面の地震の方向による抵抗力の格差を緩和する効果が得られる。
【0016】
請求項6に係る発明によれば、前記第1建物部と前記第2建物部とを連結する連結部は、前記第1建物部よりも幅広になり(つまり、連結部の幅(前記第1の方向と直交する方向の幅)が前記第1建物部の幅(前記第1の方向と直交する方向の幅)よりも大きくなり)、前記第2建物部よりも幅広になる(つまり、連結部の幅(前記第2の方向と直交する方向の幅)が前記第2建物部の幅(前記第2の方向と直交する方向の幅)よりも大きくなる)。その結果、図4に示す連結部の面積に比べて、本発明における連結部の面積が大きくなり、また、連結部を第1及び第2境界部構面と第1乃至第4連結部構面で筒状に構成することにより、前記第1建物部と前記第2建物部とを強固に連結することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1(a) は、本発明に係る建物の外観の一例を示す斜視図であり、同図(b)は、その水平断面図である。
【図2】図2は、本発明に係る建物の構造の他の例を示す水平断面図である。
【図3】図3(a) 〜(c)は、建物の従来構造の例を示す断面図である。
【図4】図4は、建物の従来構造の他の例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図1及び図2に沿って、本発明の実施の形態について説明する。
【0019】
本発明に係る建物は、図1(a) (b) に符号1で例示するものであって、
・ 複数階建ての建物部分である第1建物部Aと、
・ 複数階建ての建物部分である第2建物部Aと、
・ これらの第1建物部A及び第2建物部Aを連結する連結部Gと、
によって構成されている。また、前記連結部Gは、少なくとも柱p01,p02,…及び梁b01,b02,…によって構成されている。さらに、前記第1建物部Aは、前記連結部Gから一の方向(“第1の方向”とする)xに延設されており、前記第2建物部Aは、前記連結部Gから他の方向(“第2の方向”とする)xに延設されている。そして、前記第1の方向xと前記第2の方向xとは所定の水平角α(但し、0°<α<180°)を為すように設定されている。
【0020】
なお、本発明に係る建物1では、上述のように前記第1の方向xと前記第2の方向xとが所定の水平角α(但し、0°<α<180°)を為すので、前記第1建物部Aの一の側(図1(b) の符号A11参照)は、前記水平角αを挟んで前記第2建物部Aと対峙することとなるが、該第1建物部Aの該一の側A11を「第1建物部の内側」と称することとし、該内側とは反対の側(図1(b)
において符号A12が付された側)を「第1建物部の外側」と称することする。また、前記第2建物部Aにおける、前記水平角αを挟んで該第1建物部Aと対峙する側(図1(b)
の符号A21参照)を「第2建物部の内側」と称することとし、該内側とは反対の側(図1(b) の符号A22が付された側)を「第2建物部の外側」と称することとする。さらに、前記連結部Gにおいて、前記第1建物部A及び前記第2建物部Aによって水平角αで挟まれる側(図1(b) において符号G11が付された側)を「連結部の内側」とし、該側とは反対の側(図1(b) において符号G12が付された側)を「連結部の外側」と称することとする。
【0021】
そして、前記第1建物部Aの内側A11(内側近傍も含む意)には、複数の柱p11,p12,…と複数の梁b11,b12,…とによって構面(“第1内側構面”とする)C11が構築されており、該第1内側構面C11は前記第1の方向xに延設されている。また、前記第2建物部Aの内側(内側近傍も含む意)には、複数の柱p21,p22,…と複数の梁b21,b22,…とによって構面(“第2内側構面”とする)C21が構築されており、該第2内側構面C21は前記第2の方向xに延設されている。
【0022】
さらに、前記第1建物部Aと前記連結部Gとの境界部(図1(b) の符号D参照)には少なくとも1本の柱(“第1連結柱”とする)Pが配置されており、該第1連結柱Pには前記第1内側構面C11が連結されている。またさらに、前記第2建物部Aと前記連結部Gとの境界部(図1(b)
の符号D参照)にも少なくとも1本の柱(“第2連結柱”とする)Pが配置されており、該第2連結柱Pには前記第2内側構面C21が連結されている。また、梁及び/又は耐震壁(“第1連結部材”とする)Eが前記連結部Gの内側G11に配置されており、該第1連結部材Eが第1連結柱Pと第2連結柱Pとを連結して構面(“第1連結部構面”とする)Jが形成されている。そして、該第1連結部材Eと前記第1内側構面C11とが為す水平角(“第1挟角”とする)βは、
【数3】

の範囲に設定され、前記第1連結部材Eと前記第2内側構面C21とが為す水平角(“第2挟角”とする)βは、
【数4】

の範囲に設定されている。
【0023】
例えば図4に示すように、2つの内側構面C01,C02が1本の連結柱Pを介して直接連結されているような構造のものでは、地震が発生して横揺れが起こったような場合にはその連結柱Pに力が集中してしまうので、該連結柱Pを強くしたり、様々な対策を取ったりする必要がある。しかし、本発明の場合には、2つの内側構面C11,C21を前記第1連結部構面Jにより連結しているので、前記第1建物部A及び前記第2建物部Aに生じた横揺れを該第1連結部構面Jの全体で受けることができ、力の局部的集中を従来に比べて軽減できる。一方、本発明に係る建物1は、異なる3つの方向に延設された3つの構面(つまり、前記第1内側構面C11、前記第2内側構面C21及び前記第1連結部構面J)を備えているので、これら3つの構面C11,C21,Jによって様々な方向の地震横揺れに抵抗することができ、建物自体の強度を高めることができる。
【0024】
一方、前記第1内側構面C11を含む仮想面(第1の方向xに延設される仮想面)V11と前記第2内側構面C21を含む仮想面(第2の方向xに延設される仮想面)V21とが交差する仮想の交線Vを“構面交線”とした場合に、前記第1連結柱Pは、前記構面交線Vから離間する位置(つまり、前記第1の方向xに離間する位置。図1(b) では、構面交線Vよりも右側の位置)に配置し、前記第2連結柱Pは、前記構面交線Vから離間する位置(つまり、前記第2の方向xに離間する位置。図1(b)
では、構面交線Vよりも下側の位置)に配置すると良い。
【0025】
なお、前記第1建物部Aと前記連結部Gとの境界部Dには梁及び/又は耐震壁(符号b01,b02参照)を配置して前記第1連結柱Pと共に構面(“第1境界部構面”とする)Cを構築すると良く、前記第2建物部Aと前記連結部Gとの境界部にも梁及び/又は耐震壁(符号b03,b04参照)を配置して前記第2連結柱Pと共に構面(“第2境界部構面”とする)Cを構築すると良い。そのようにした場合には、本発明に係る建物1は、互いに連結されると共に異なる方向に延設された5つの構面(つまり、前記第1内側構面C11、前記第2内側構面C21、前記第1連結部構面J、前記第1境界部構面C及び前記第2境界部構面C)を少なくとも備えることとなるので、これらの構面によって様々な方向の地震横揺れに抵抗することができ、建物自体の強度を高めることができる。
【0026】
一方、前記第1連結柱P、前記第2連結柱P、及び前記第1連結部材Eは、前記第1挟角βと前記第2挟角βとが略等しくなる位置に配置すると良い。
【0027】
ところで、前記第1建物部Aの外側A12(外側近傍も含む意)には、複数の柱p15,p16,…と複数の梁b15,b16,…とによって構面(“第1外側構面”とする)C12が構築されており、該第1外側構面C12は前記第1の方向xに延設されている。また、前記第2建物部Aの外側A22(外側近傍も含む意)には、複数の柱p25,p26,…と複数の梁b25,b26,…とによって構面(“第2外側構面”とする)C22が構築されており、該第2外側構面C22は前記第2の方向xに延設されている。
【0028】
さらに、前記第1建物部Aと前記連結部Gとの境界部(図1(b) の符号D参照)には、前記第1連結柱Pとは別の柱(“第3連結柱”とする)Pを配置し、該第3連結柱Pには前記第1外側構面C12を連結すると良い。またさらに、前記連結部Gにおいては、前記第1外側構面C12を含む仮想面(第1の方向xに延設される仮想面)V12よりも外側に1本の柱(“第4連結柱”とする)Pを配置し、該第4連結柱Pと前記第3連結柱Pとを第2連結部材Eによって連結して構面(“第2連結部構面”とする)Jを形成すると良い。この第2連結部材Eとしては梁及び/又は耐震壁を挙げることができる。また、前記第2建物部Aと前記連結部Gとの境界部(図1(b)
の符号D参照)には前記第2連結柱Pとは別の柱(“第5連結柱”とする)Pを配置し、該第5連結柱Pには前記第2外側構面C22を連結すると良い。さらに、前記連結部Gにおいては、前記第2外側構面C22を含む仮想面(第2の方向xに延設される仮想面)V22よりも外側(連結部の外側)に1本の柱(“第6連結柱”とする)Pを配置し、該第6連結柱Pと前記第5連結柱Pとを第3連結部材Eによって連結して構面(“第3連結部構面”とする)Jを形成すると良い。この第3連結部材Eとしては梁及び/又は耐震壁を挙げることができる。このように構成した場合には、互いに連結されると共に異なる方向に延設された2つの構面(つまり、前記第1外側構面C12と前記第2連結部構面J、或いは前記第2外側構面C22と前記第3連結部構面J)が、各建物部A,Aの外側から連結部Gの外側に掛けて配置されるので、これらの構面によって様々な方向の地震横揺れに抵抗することができ、建物自体の強度を高めることができる。
【0029】
さらに、上述した第4連結柱Pと第6連結柱Pには、梁b31,b32,…や柱p31,…(つまり、少なくとも1本の梁からなる第4連結部材)を連結して第4連結部構面を形成すると良い。そして、少なくともこれらの第1及び第2境界部構面C,Cと前記第1乃至第4連結部構面J1,,J,Jとが筒状に連結されて前記連結部Gを形成すると良い。そのようにした場合には、前記第1建物部Aと前記第2建物部Aとを連結する連結部Gは、前記第1建物部Aよりも幅広になり(つまり、連結部Gの幅(前記第1の方向xと直交する方向の幅)が前記第1建物部Aの幅(前記第1の方向xと直交する方向の幅)よりも大きくなり)、前記第2建物部Aよりも幅広になる(つまり、連結部Gの幅(前記第2の方向xと直交する方向の幅)が前記第2建物部Aの幅(前記第2の方向xと直交する方向の幅)よりも大きくなる)。その結果、図4に示す連結部Gの面積に比べて、連結部Gの面積が大きくなり、前記第1建物部Aと前記第2建物部Aとを強固に連結することができる。
【0030】
ところで、図1(a)
(b) に示す建物1では、2つの建物部A,Aが1つの連結部Gにより連結されているが、もちろんこれに限られるものではない。すなわち、本発明に係る建物は、互いに異なる方向に延設されてなる建物部を2つ以上備え、それらの建物部を連結する連結部を必要な個数だけ備えていれば良く、
・ 3つの建物部が2つの連結部により連結された構造のもの(例えば、水平断面形状が略コ字状となるように配置されたもの)
・ 図2に例示するように、3つの建物部A31,A32,A53が3つの連結部G31,G32,G33により連結された構造のもの
・ 4つの建物部が3つの連結部により連結された構造のもの
・ 4つの建物部が4つの連結部により連結された構造のもの(例えば、水平断面形状が略四角形となるように配置されたもの)
・ 水平断面形状が多角形を為すように5つ以上の建物部が連結部により連結された構造のもの
等も含むものである。
【0031】
なお、上述の建物部(例えば、第1建物部Aや第2建物部A)は板状住宅としても良く、住宅以外の用途に用いても良い。
【符号の説明】
【0032】
1 建物
連結部
第1建物部
11 第1建物部の内側
第2建物部
21 第2建物部の内側
01,…,b11,…,b21,… 梁
11 第1内側構面
21 第2内側構面
第1境界部構面
第2境界部構面
第1連結部材
第1連結柱
第2連結柱
01,…,p11,…,p21,… 柱
11,V21
仮想面
構面交線
第1の方向
第2の方向


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数階建ての建物部分である第1建物部と、複数階建ての建物部分である第2建物部と、少なくとも柱及び梁によって構成されると共に前記第1建物部と前記第2建物部とを連結する連結部と、を備えた建物において、
前記第1建物部が、前記連結部から第1の方向に延設され、
前記第2建物部が、前記第1の方向と所定の水平角α(0°<α<180°)を為す第2の方向に前記連結部から延設され、
前記第1建物部における、前記所定の水平角αを挟んで前記第2建物部と対峙する側を“第1建物部の内側”とし、前記第2建物部における、前記所定の水平角αを挟んで前記第1建物部と対峙する側を“第2建物部の内側”とした場合に、
複数の柱と複数の梁とによって構築された第1内側構面が、前記第1の方向に延設された状態で前記第1建物部の内側に配置され、
複数の柱と複数の梁とによって構築された第2内側構面が、前記第2の方向に延設された状態で前記第2建物部の内側に配置され、
前記第1建物部と前記連結部との境界部には、第1連結柱が前記第1内側構面に連結された状態で配置され、
前記第2建物部と前記連結部との境界部には、第2連結柱が前記第2内側構面に連結された状態で配置され、
前記第1連結柱及び前記第2連結柱には、梁及び/又は耐震壁からなる第1連結部材が連結されて第1連結部構面が形成され、
該第1連結部材と前記第1内側構面とが為す水平角である第1挟角βは、
【数1】

の範囲に設定され、前記第1連結部材と前記第2内側構面とが為す水平角である第2挟角βは、
【数2】

の範囲に設定されている、
ことを特徴とする建物。
【請求項2】
前記第1内側構面を含む仮想面と前記第2内側構面を含む仮想面とが交差する仮想の交線を“構面交線”とした場合に、
前記第1連結柱は、前記構面交線から前記第1の方向に離間する位置に配置され、
前記第2連結柱は、前記構面交線から前記第2の方向に離間する位置に配置された、
ことを特徴とする請求項1に記載の建物。
【請求項3】
前記第1建物部における、該第1建物部の内側と反対の側を“第1建物部の外側”とし、前記第2建物部における、該第2建物部の内側と反対の側を“第2建物部の外側”とした場合に、
複数の柱と複数の梁とによって構築された第1外側構面が、前記第1の方向に延設された状態で前記第1建物部の外側に配置され、
複数の柱と複数の梁とによって構築された第2外側構面が、前記第2の方向に延設された状態で前記第2建物部の外側に配置され、
前記第1建物部と前記連結部との境界部には、第3連結柱が前記第1外側構面に連結された状態で配置され、
前記連結部における、前記第1外側構面を含む仮想面よりも外側には第4連結柱が配置され、
これらの第3連結柱及び第4連結柱には、梁及び/又は耐震壁からなる第2連結部材が連結されて第2連結部構面が形成され、
前記第2建物部と前記連結部との境界部には、第5連結柱が前記第2外側構面に連結された状態で配置され、
前記連結部における、前記第2外側構面を含む仮想面よりも外側には第6連結柱が配置され、
これらの第5連結柱及び第6連結柱には、梁及び/又は耐震壁からなる第3連結部材が連結されて第3連結部構面が形成された、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の建物。
【請求項4】
前記第1建物部と前記連結部との境界部には、前記第1連結柱と、梁及び/又は耐震壁とからなる第1境界部構面が配置され、
前記第2建物部と前記連結部との境界部には、前記第2連結柱と、梁及び/又は耐震壁とからなる第2境界部構面が配置されてなる、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の建物。
【請求項5】
前記第1連結柱、前記第2連結柱、及び前記第1連結部材は、前記第1挟角βと前記第2挟角βとが略等しくなる位置に配置された、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の建物。
【請求項6】
前記第1建物部と前記連結部との境界部には、前記第1連結柱と、梁及び/又は耐震壁とからなる第1境界部構面が配置され、
前記第2建物部と前記連結部との境界部には、前記第2連結柱と、梁及び/又は耐震壁とからなる第2境界部構面が配置され、前記第4連結柱と前記第6連結柱には、少なくとも1本の梁からなる第4連結部材が連結されて第4連結部構面が形成され、
前記連結部は、少なくともこれらの第1及び第2境界部構面と前記第1乃至第4連結部構面とが筒状に連結されて構成された、
ことを特徴とする請求項3に記載の建物。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−241607(P2011−241607A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−114900(P2010−114900)
【出願日】平成22年5月19日(2010.5.19)
【出願人】(000174943)三井住友建設株式会社 (346)
【Fターム(参考)】