説明

建築内装工事の小音施工サービス

【課題】 間仕切り装置の据付け工事等の建築内装工事を行うに際して、発生する騒音を抑えて平日の昼間の工事が可能な建築内装工事サービスの提供。
【解決手段】 必要な場合には顧客に小音施工の提案をし、了解を得られた場合には施工業者へその旨を通知し、建物の壁、天井、床を構成する各部材、又間仕切り装置を構成する間仕切りパネル、床レール、天井レール・・などの各部材を現場へ搬入する。そして防音間仕切りブースを構成する各部材も現場へ搬入し、該現場の適当な場所に防音間仕切りブースを組み立て、上記防音間仕切りブース内で上記建物の壁、天井、床、又は間仕切り装置の各部材を所定の寸法に切断などの加工を施し、加工した各部材を小音工具を用いて組み立てる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は間仕切り装置の据付け工事やその他の建築内装工事を行うに際して発生する騒音を抑制することが出来る小音施工サービスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の建物は1フロアーがオープン状態で構築され、この大きな建物のフロアー内部の空間を所定の大きさに仕切る為に色々な間仕切り装置が据え付けられる。すなわち、間仕切り装置は建物本体から切り離して後で据え付けることが出来、部屋の大きさを自由に設定・変更することが可能であることから、各部屋(オフィス空間)を間仕切り装置にて仕切る場合が多い。
【0003】
又、間仕切り装置にて仕切られた比較的大きなオフィス空間内で、個別の小さな空間を形成する為に背丈の低いパネルで構成されるローパーティションなるものも多用されている。さらに、上記間仕切り装置とは別に石こうボードと軽量鉄骨で構成される壁にて空間を仕切る場合もある。
【0004】
ところで、上記間仕切り装置を据え付ける場合、一般に間仕切りパネル、スタッド、床レール、天井レールなどの各部材が用いられ、床レールは床面に固定され、天井レールは天井面に固定され、間仕切りパネルは床レールと天井レールの間に据付けられる。
【0005】
図6は一般的な間仕切り装置を表しているが、床レール(イ)の所々にはアジャスター(ロ)、(ロ)・・を配置すると共に、該アジャスター(ロ)、(ロ)・・に載って所定の高さに支持される巾木(ハ)に間仕切りパネル(ニ)が載置されている。そして、間仕切りパネル(ニ)の上端は天井レール(ホ)に嵌って位置決めされ、各間仕切りパネル(ニ)、(ニ)・・の間にはスタッド(ヘ)が介在して互いに連結している。
【0006】
このように構成される間仕切り装置によってオフィス空間が仕切られるが、オフィスの大きさ(広さ)を後で変更する場合もあり、このような場合には既存の間仕切り装置を撤去して新たな間仕切り装置を据え付けることで別のオフィス空間を作ることが可能である。すなわち、間仕切り装置は建物本体を改造することなく、オフィス空間を自由に変更可能なように成っている。
【0007】
ところで、既存の間仕切り装置を撤去して新たな間仕切り装置を据え付ける場合、オフィス空間の仕様に応じて間仕切りパネル、床レール、天井レール、スタッドなどを所定の寸法に切断加工し、又これら各部材を所定の場所にビス止めしなければならない。個々の部材は工場で製造されるが、間仕切りの据付け作業は現場作業となり、この際に発生する騒音は非常に大きなものとなる。
【0008】
従来では、間仕切り装置の据付け工事に際して騒音は付きものであり、致し方ないといった考えが現実である。そこで、従来では建物の同一階及び上下階の迷惑にならないように、オフィス空間での間仕切り装置の据付けは休日工事が主であり、又は夜間工事を行っている。従って、施工業者に対しても過酷な労働を強いることになり、このような時間帯を利用して工事することから、工期も長くなる。勿論、内装工事は間仕切り装置だけでなく、建物の壁、天井、床などの一般的な内装工事を行う場合も多く、この際には同じように大きな騒音を伴う。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このように、間仕切り装置の据付け工事等、建物の壁、天井、床を施工する内装工事は休日工事や夜間工事になることが多い為に、上記のごとき問題がある。本発明が解決しようとする課題はこれら問題点であり、建物の同一階及び上下階に迷惑にならないように騒音を抑制することで平日の昼間の工事を可能とする建築内装工事の小音施工サービスを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
間仕切り装置を据付ける場合や建物の壁、天井、床などを施工する場合、最大100dB程度の騒音が発生する。この100dBとは電車が通過する際のガード下の騒音に匹敵する大きさであり、建物の同一階及び上下階の迷惑にならないように、従来では休日工事や夜間工事を行っている。そこで、本発明では、建物の壁や天井の下地となる軽量鉄骨、又は間仕切り装置を構成する床レールや天井レールなどの各部材の現場加工を防音間仕切りブース内で行う。そして、加工した各部材を取付ける際に使用する工具は小音工具を用いる。
【0011】
この防音間仕切りブースを使用しての小音施工サービスは、工事の際に発生する騒音を理由に、平日の昼間における間仕切り装置の据付け工事等の建築内装工事が出来なく、休日工事及び夜間工事を顧客側から依頼された場合に、営業部門から顧客に提案して行われる。そこで、建物の壁、天井、床などの構成部材、及び間仕切り装置を構成する各部材と共に、防音間仕切りブースを構成する部材を現場に搬入し、防音間仕切りブースを適当な場所に組み立てる。そして、この防音間仕切りブース内で各部材の切断、穴あけなどの作業を行い、加工された部材は防音間仕切りブースから搬出して組み立てられる。
【0012】
建物の壁、天井、床などの施工が完了し、又所定の間仕切り装置の据付けが完成したならば、防音間仕切りブースは不要となるために解体され、次の工事現場へ搬送される。ここで、防音間仕切りブースは複数枚の間仕切りパネルを組み立てたもので、出入口ドアを有し、そして内面には防音クロス又は防音シートが貼着された構造としている。ここで、防音クロス及び防音シートの具体的な構成は限定しないことにし、例えば布製で厚めの生地を利用するだけでも音のエネルギーを吸収してそれなりの効果は得られる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る建築内装工事の小音施工サービスは、防音間仕切りブースを現場で組み立て、この防音間仕切りブース内で各部材の加工を行うことが出来る。最も大きな騒音を発する金属の切断加工では約100dBに達するが、防音間仕切りブースの外では約60dBまで低下する。60dBの騒音とは通常のオフィスと同じ程度であり、何ら騒音が気になることはない。一方、防音間仕切りブース内で各部材の加工を行うことで、騒音が抑制されるだけでなく、加工に伴って発生するホコリやチリが建物内に飛散することを防止できる。
【0014】
そして、所定の形状・寸法に加工された各部材を組み立てる際には、小音工具を使用することで、発生する騒音は抑制される。このように、間仕切り装置の据付け工事やその他の建築内装工事で大きな騒音が発生しない為に、従来のような休日工事や夜間工事を行う必要はなく、平日の昼間に工事を行うことが可能となる。その結果、作業労働者にとっては楽な仕事環境となり、工事期間も短縮される。
【実施例】
【0015】
間仕切り装置の据付け工事やその他の建築内装工事を行うに際して、大きな騒音が出ても何ら問題とならない場合もあり、必ずしも防音間仕切りブース内で切断加工などの作業を行う必要のないこともある。以下、本発明における建築内装工事の小音施工サービス手順を具体的に説明する。
(1)顧客への建築内装工事における小音施工サービスの提案。
工事の際に発生する騒音を理由に、平日の昼間における間仕切り装置の据付け工事やその他の建築内装工事が出来なく、休日工事及び夜間工事を顧客側から依頼された場合、営業部門は顧客に小音施工サービスを提案することが出来る。
(2)据付け工事日の決定
小音施工サービスの取決めがなされたならば、その工事日を決定する。勿論、平日の昼間である。
(3)小音施工サービスを行う旨の段取り
営業部門は工事手配部門へ、間仕切り装置の据付け工事やその他の建築内装工事は小音施工サービスで行う旨の指示をし、工事手配部門は小音施工サービスの段取りを行い、施工業者へ指示する。
(4)防音間仕切りブースの構成部材を搬入
建物の壁、天井、床などの構成部材、又は間仕切り装置の構成部材、例えば間仕切りパネル、スタッド、床レール、天井レール、巾木・・などを現場へ搬入し、同時に防音間仕切りブースを構成するに必要な部材も搬入する。
(5)防音間仕切りブースの組み立て
適当な場所に防音間仕切りブースを据え付けるが、この防音間仕切りブースの構造に関しては後で説明する。そして、防音間仕切りブースは複数枚の間仕切りパネルを連結した構造である為に、その大きさ(広さ)の変更は自由である。
(6)部材の加工
防音間仕切りブース内で各部材の切断、穴あけなどの加工を行う。そして、所定の寸法に加工された各部材は小音工具を用いて組み立てられる。
(7)間仕切り装置の据付け工事やその他の建築内装工事の完了
(8)防音間仕切りブースの解体
間仕切り装置の据付けなど、建築内装工事が完了したならば、防音間仕切りブースは用済みとなる為に、解体して搬出される。そして、次の工事現場で再利用される。
【0016】
図1は間仕切り装置や建物の壁、天井、床などの内装構造を構成する各部材を加工する為の防音間仕切りブースの外観を示す具体例である。ここで、施工の対象と成る間仕切り装置の形態及び構造は特に限定するものではなく、ローパーティション、トイレブース、移動間仕切りも広義の間仕切り装置である為に対象とする。そして、その他の建築内装である壁、天井、床なども対象とされる。そして防音間仕切りブースは複数枚の間仕切りパネル1,1・・が組み立てられた構造と成っており、少なくとも一箇所には出入口用のドア2が取付けられている。天井も間仕切りパネル1,1・・が配置された構造である。従って、その大きさは必要に応じて自由に変更出来る構造としている。
【0017】
本発明では、例えば間仕切り装置を据付ける場合、この防音間仕切りブース内で、該間仕切り装置を構成する床レール及び天井レール、又その他の部材を所定の長さに切断する。この防音間仕切りブースは外へ騒音が漏れにくいように、間仕切りパネル1,1・・の内面には防音クロス又は防音シートが貼着されている。部材を切断する際に発生する騒音は約100dBであるが、内面に貼着された防音クロスにて吸収され、外へ漏れる音は非常に小さくなる。
【0018】
図2は上記防音間仕切りブースの横断面の一部を、図3は縦断面の一部を夫々表している。各間仕切りパネル1,1・・の間にはポール3,3・・が介在して互いに連結し、間仕切りパネル1,1・・の内面には側面用防音クロス4,4・・が貼着され、互いに重なり合う部分に隙間が生じないようにマジックテープ(登録商標)5,5・・にて止着されている。ここで、側面用防音クロス4,4・・の止着手段として、上記マジックテープ5,5・・に限定するものではない。
【0019】
ここで、該側面用防音クロス4は防炎加工が施され、間仕切りパネル1のペーパーコアには不燃性材質が使用されている。従って、防音間仕切りブース内での切断作業中に火花が発生した場合でも防音間仕切りブースは燃焼しない。そして、図3の縦断面に示しているように、側面に貼着した側面用防音クロス4はその上端がマジックテープ5,5・・によって落下しないように間仕切りパネル1に固定されている。又、天井にも防炎加工を施した天井用防音クロス6を落下しないように固定している。さらに、床面と間仕切りパネル1の下端との間に生じる隙間7も側面用防音クロス4と巾木8にて塞がれている。そこで、間仕切り装置の据付け工事やその他の建築内装工事が完了して防音間仕切りブースが不要になって解体する場合には、側面用防音クロス4は簡単に取外すことが可能である。
【0020】
このように本発明では、簡単に組み立てることが出来る防音間仕切りブースを現場に据付け、この防音間仕切りブース内で間仕切り装置の各部材や建築内装用部材を加工する。例えば、間仕切りパネル、床レール、天井レール、スタッド、さらには建物の壁や天井を構成する石こうボード、そして該石こうボードを取付ける為の下地材となる軽量鉄骨を所定の寸法に切断しなければならない。又、必要な箇所に穴及びネジ穴、更には溝などの加工を行うことが必要である。
【0021】
ここで、最も大きな騒音を発生する加工が金属の切断加工であり、約100dBの大きさとなる。これは電車が通過する際のガード下の騒音に匹敵し、この騒音が周囲に拡散するならば、建物の同一階及び上下階に迷惑をかけることになる。
【0022】
しかし、上記防音間仕切りブースを現場に据付けてその中で加工するならば、該防音間仕切りブースを通過して外へ漏れる騒音は小さくなり、約60dB程度に低下する。図4、図5はその場合の騒音の大きさを表している。
図4は間仕切り装置の巾木を高速カッターで切断した場合の騒音である。
A:防音間仕切りブースなしの状態で、切断機から3mの位置での騒音は98dBとなる。
B:防音間仕切りブースを使用した場合で、切断機から3mの位置での騒音は76dBに低下する。
C:防音間仕切りブースを使用した場合で、切断機から10mの位置での騒音は66dBとなる。
【0023】
図5は間仕切り装置の巾木を高速カッターで切断した場合で、切断機から5m離れた隣の部屋での騒音である。
A:防音間仕切りブースなしの状態では、82dBとなる。
B:防音間仕切りブースを使用した場合には62dBまで低下する。
防音間仕切りブースを使用するならば、一般には図5のBに示す状態であり、隣のオフィスでの騒音が62dB程度ならば、該騒音が気になることはない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】防音間仕切りブースの外観。
【図2】防音間仕切りブースの一部横断面図。
【図3】防音間仕切りブースの一部縦断面図。
【図4】同室内での騒音状態。
【図5】隣室での騒音状態。
【図6】一般的な間仕切り装置。
【符号の説明】
【0025】
1 間仕切りパネル
2 ドア
3 ポール
4 側面用防音クロス
5 マジックテープ
6 天井用防音クロス
7 隙間
8 巾木

【特許請求の範囲】
【請求項1】
間仕切り装置の据付け工事等の建築内装工事を行うに際して、必要に応じて顧客に小音施工の提案をし、了解を得られた場合には施工業者へその旨を通知し、建物の壁、天井、床を構成する各部材、又間仕切り装置を構成する間仕切りパネル、床レール、天井レール・・などの各部材を現場へ搬入すると共に、防音間仕切りブースを構成する各部材も現場へ搬入し、該現場の適当な場所に防音間仕切りブースを組み立て、そして上記防音間仕切りブース内で上記建物の壁、天井、床、又は間仕切り装置の各部材を所定の寸法に切断などの加工を施し、加工した各部材を小音工具を用いて組み立てることを特徴とする建築内装工事の小音施工サービス。
【請求項2】
上記防音間仕切りブースの内面には、防音クロス又は防音シートを着脱可能な状態で貼着した請求項1記載の建築内装工事の小音施工サービス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−150203(P2009−150203A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−46040(P2008−46040)
【出願日】平成20年2月27日(2008.2.27)
【出願人】(000105693)コマニー株式会社 (105)
【Fターム(参考)】