説明

建築材のハンマートーン塗装方法

【課題】簡単に、かつ、石目のゴツゴツした感じや素焼き調の肌理の細かい凹凸感を立体的に表現することのできる建築材のハンマートーン塗装方法を提供する。
【解決手段】建築材の表面を下塗り塗装した後、下塗り塗膜2を形成させ、他の塗料成分との親和性に欠ける非親和性成分を含むハンマートーン塗料を用いて中塗り塗装し、中塗り塗膜3が形成する前に振動を付与してハンマートーン模様を現出させ、塗膜形成工程終了後、上塗り塗装を施し、上塗り塗膜4を形成してなる建築材のハンマートーン塗装方法。好ましくは、上記非親和性成分がシリコーン樹脂を含むシリコーンオイルとされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築材の塗装方法に関する。さらに詳しくは、複合建築材の表面にハンマートーン模様を現出させる塗装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プラスチック製シートや金属板、合板等の被塗装物の表面を凹凸模様に仕上げる方法のひとつとして、ハンマートーン塗装が知られている。このハンマートーン塗装は金属の表面をハンマーで叩いたような凹凸模様が規則的に現れ、意匠性を向上させることから、上記した被塗装物を含む様々な分野で用いられている。
【0003】
上記ハンマートーン塗装に用いられる塗料としては、塗料中の他の成分との親和性に乏しい、例えば、シリコーン油を添加したものが知られており、上記塗料を被塗装物の表面に塗布すると、数分後にシリコーン油の非親和性によってハンマートーン模様が現出し、これをそのまま乾燥させるとハンマートーン模様の仕上げができる塗料が知られている。
【0004】
一方、下記特許文献1には、ハンマートーン模様を形成させるために使用する成分として、シリコーン油に替えてビニール系重合体消泡剤を用いたハンマートーン塗料が開示されている。そして、素地との付着性、硬度、耐傷付き性などの塗膜性向上および仕上がり風合いに優れたハンマートーン塗料を提供できると記載されている。
【特許文献1】特開平06−287482号公報(第1〜3頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載のハンマートーン塗料を用いる塗装方法においては、塗装後、そのまま乾燥して塗膜としているため、例えば、複合建築材の表面を塗装した場合、建築材特有の立体感のある凹凸模様が得られにくいという問題がある。
【0006】
本発明は、このような問題を解決して、簡単に、かつ、石目のゴツゴツした感じや素焼き調の肌理の細かい凹凸感を立体的に表現することのできる建築材のハンマートーン塗装方法を提供することを、その課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明においては、つぎのような技術的手段を講じている。すなわち、本願請求項1に記載の建築材のハンマートーン塗装方法は、建築材の表面を下塗り塗装した後、下塗り塗膜を形成させ、他の塗料成分との親和性に欠ける非親和性成分を含むハンマートーン塗料を用いて中塗り塗装し、中塗り塗膜が形成する前に振動を付与してハンマートーン模様を現出させ、塗膜形成工程終了後、上塗り塗装を施し、上塗り塗膜を形成してなることを特徴とするものである。
【0008】
上記建築材としては、とくに限定されず、普通合板や強化合板、パーティクルボード、MDF(中密度繊維板)、集積材等の木質系基板およびこれらを複合させたものをあげることができる。
【0009】
本願請求項2に記載の発明は、上記請求項1記載の建築材のハンマートーン塗装方法において、上記非親和性成分がシリコーン樹脂を含むシリコーンオイルであることを特徴としている。上記シリコーン樹脂としては、例えば、アルコキシシランの加水分解縮合物、シリル基含有ビニル系樹脂等をあげることができる。
【0010】
本願請求項3に記載の発明は、上記請求項1記載の建築材のハンマートーン塗装方法において、上記塗膜形成を紫外線硬化型塗料に紫外線を照射して行うことを特徴としている。塗膜形成の方法としてはハンマートーン塗料成分が溶解された溶剤、例えば、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、t−ブタノール、シクロヘキサン、トルエン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等を乾燥させ、塗膜を形成する方法、およびハンマートーン塗料成分の中にアクリレート系のウレタン樹脂またはアクリレート系のエポキシ樹脂等の紫外線硬化型樹脂を含有させ、該樹脂に紫外線を照射して硬化させて塗膜を形成する方法があるが、本発明においては、塗膜形成を紫外線硬化型塗料に紫外線を照射することにより行われる。
【0011】
本願請求項4に記載の発明は、上記請求項1記載の建築材のハンマートーン塗装方法において、上記振動が水平振動に上下振動が加えることを特徴としている。振動の付与は、公知の振動装置を用いることによって行われる。
【0012】
本願請求項5に記載の発明は、上記請求項1記載の建築材のハンマートーン塗装方法において、上記建築材が複合建築材であることを特徴としている。複合建築材としては、例えば、合板を基材とし、その上にWPB(ウッドプラスチックボード)を複合させた複合建築材をあげることができる。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載の発明にかかる建築材のハンマートーン塗装方法においては、上記のとおりであり、特に、建築材の表面に下塗り塗膜を形成させ、他の塗料成分との親和性に欠ける非親和性成分を含むハンマートーン塗料を用いて中塗り塗装し、中塗り塗膜が形成する前に振動を付与してハンマートーン模様を現出させるため、複合建築材の表面に石目のゴツゴツした感じや、素焼き調の肌理の細かい凹凸感を表現することができる。そして、凹凸感の有る中塗り塗膜の上に、上塗り塗料を塗布して建築材の表面にハンマートーン模様を立体的に現すことができる。
【0014】
請求項2に記載の建築材のハンマートーン塗装方法においては、特に、上記非親和性成分としてシリコーン樹脂を含むシリコーンオイルを用いるため、表面張力が低いシリコーン樹脂が他の塗料成分をはじくことにより、塗料表面に簡単にハンマートーン模様を現せることができる。
【0015】
請求項3に記載の建築材のハンマートーン塗装方法においては、特に、上記塗膜形成を紫外線硬化型塗料に紫外線を照射して行うため、簡単な装置で短時間に塗膜を形成させることができる。
【0016】
請求項4に記載の建築材のハンマートーン塗装方法においては、特に、中塗り塗膜が形成される前に該中塗り塗膜に与える振動を、水平振動と上下振動とで構成するから、該合成振動の振動内容を適宜設定することによって、希望するいろいろの立体的なハンマートーン模様を容易に得ることができる。
【0017】
請求項5に記載の建築材のハンマートーン塗装方法においては、特に、上記建築材を複合建築材とすることにより、WPB(ウッドプラスチックボード)等、木質系の表面材に自然な感じでハンマートーン模様を付与することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。図1は、本発明にかかる建築材のハンマートーン塗装方法の工程を示す工程図である。本実施形態においては、建築材として、合板を基材とし、その上にWPB(ウッドプラスチックボード)を複合させた複合建築材を用いる。
【0019】
まず、複合建築材の表面にプライマー処理、シール処理等の下塗り処理を行う。本実施形態においては、アクリレート系のウレタン樹脂を含む紫外線硬化型塗料を用いて下塗り塗装し、所定時間、紫外線を照射して下塗り塗膜を形成させた。
【0020】
ついで、中塗り塗装をシリコーンオイルを含む中塗り塗料を用いて行う。このシリコーンオイルは、他の塗料成分との親和性に欠ける非親和性成分としてシリコーン樹脂を含んでおり、シリコーン樹脂の表面張力が低いことを利用して、他の塗料成分をはじくことにより、塗料表面でハンマートーン模様を現出させる。
【0021】
また、中塗り塗料の主成分は、紫外線硬化型のアクリレート系のウレタン樹脂またはアクリレート系のエポキシ樹脂等であり、上記シリコーン樹脂が上記紫外線硬化型の樹脂および他の成分をはじいて0.1〜0.5mmの球形もしくは回転楕円形またはこれが数個つながった独立気泡が破れた後固化したようなクレーター状凹部が密に接してなる凹凸模様を形成する。
【0022】
他の成分としては、アルミや銅等のメタルフレーク、雲母片にチタンコーティングしてなるパール粉、顔料等が用いられる。この顔料の例としては、カーボンブラック、酸化チタン、べんがら、オーカー(黄色酸化鉄)フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、キナクリドン系赤顔料、イソインドリノン系黄顔料、沈降性硫酸バリウム、タルク、炭酸カルシウム、クレー、シリカ等がある。
【0023】
上記のようにして中塗り塗料を塗布された複合建築材は、公知の振動装置によって上下左右に微少な振動が与えられる。この振動によって、上記ハンマートーンの模様が速やかに形成され、さらに上下の微振動によって、縦方向の凹凸模様の形成が促進されて立体感のあるハンマートーン模様を得ることができる。そして、複合建築材の表面材であるWPB(ウッドプラスチックボード)に石目のゴツゴツした感じを立体的に表現することができ、微振動の振動数を変えることにより、素焼き調の肌理の細かい凹凸感も表現することも可能となる。
【0024】
中塗り塗装後の複合建築材は、ついで、所定時間、紫外線を照射して中塗り塗料中の主成分である紫外線硬化型樹脂を硬化させ、塗膜を形成させる。このようにして形成され、ハンマートーン模様が現れた中塗り塗膜の上に仕上げ用の上塗り塗料を塗布する。上塗り塗料としては、ビスフェノールA型、ノボラック型、ポリブタジエン型のエポキシ(メタ)アクリレート、ポリエーテル型のウレタン(メタ)アクリレート等の紫外線硬化型の樹脂を含む公知の上塗り塗料が用いられる。
【0025】
上記上塗り塗料を塗布した後、所定時間、紫外線を照射して上塗り塗料を硬化させることにより、望まれる硬度や光沢、耐汚染性、耐傷付き性に優れた上塗り塗膜を得ることができる。図2はこのようして得られた本発明にかかる方法によって表面にハンマートーン模様が付与された建築材Aを示す断面図である。
【0026】
図2に示すように、合板11を基材とし、その上にWPB(ウッドプラスチックボード)12を複合させた複合建築材1の表面には下塗り塗膜2が形成され、さらに中塗り塗膜3が形成されている。この中塗り塗膜3には凹凸で模式的に示すように、ハンマートーン模様が形成され、さらに中塗り塗膜3の上には上塗り塗膜4がトップコート層として設けられている。
【0027】
このようして、表面材として用いられたWPB(ウッドプラスチックボード)12の上には石目のゴツゴツした感じや素焼き調の肌理の細かい凹凸感を表すことが可能となり、かくしてハンマートーン模様が立体的に表現された建築材を提供することができる。なお、本実施形態においては、合板11を基材とし、その上にWPB(ウッドプラスチックボード)12を複合させた複合建築材を用いたが、これに限られず、合板11を基材とし、その上にMDF(中密度繊維板)またはパーティクルボードを複合させた複合建築材を用いてもよい。このように、本発明は設計変更自在であり、特許請求の範囲を逸脱しない限り、本発明の技術的範囲に属する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明にかかる建築材のハンマートーン塗装方法の工程を示す工程図である。
【図2】本発明にかかる方法によって表面にハンマートーン模様が付与された建築材を示す断面図である。
【符号の説明】
【0029】
A 表面にハンマートーン模様が付与された建築材
1 複合建築材
11 合板
12 WPB(ウッドプラスチックボード)
2 下塗り塗膜
3 中塗り塗膜
4 上塗り塗膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築材の表面を下塗り塗装した後、下塗り塗膜を形成させ、他の塗料成分との親和性に欠ける非親和性成分を含むハンマートーン塗料を用いて中塗り塗装し、中塗り塗膜が形成する前に振動を付与してハンマートーン模様を現出させ、塗膜形成工程終了後、上塗り塗装を施し、上塗り塗膜を形成してなる建築材のハンマートーン塗装方法。
【請求項2】
上記非親和性成分がシリコーン樹脂を含むシリコーンオイルである請求項1に記載の建築材のハンマートーン塗装方法。
【請求項3】
上記塗膜形成を紫外線硬化型塗料に紫外線を照射して行う請求項1に記載の建築材のハンマートーン塗装方法。
【請求項4】
上記振動が水平振動に上下振動が加えられたものである請求項1に記載の建築材のハンマートーン塗装方法。
【請求項5】
上記建築材が複合建築材である請求項1に記載の建築材のハンマートーン塗装方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−50778(P2009−50778A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−218607(P2007−218607)
【出願日】平成19年8月24日(2007.8.24)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】