説明

建築材の塗装方法

【課題】溝加工した建築材の表面を塗装して溝部のケバ立ちを抑え、溝部と溝部を除く表面の塗装色のコントラストを鮮明にして塗装する方法を提供する。
【解決手段】溝加工した建築材の表面を塗装する方法であって、溝部5を含む建築材4の表面全体を塗装して着色する第1塗装工程と、第1塗装工程終了後、形成された着色層1の上に捨て塗りを行い捨て塗り層2を形成する捨て塗り工程と、上記溝部5以外の着色層1と捨て塗り層2とを研摩、除去して生地41を出す研摩工程と、研摩工程終了後、上記生地を仕上げ塗装する本着色工程とを含む建築材の塗装方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築材の塗装方法に関する。さらに詳しくは、表面に溝部が設けられた建築材の塗装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、表面に凹溝を設けてアクセントを付け、装飾感を持たせた建築材については公知であり、例えば、下記特許文献1をあげることができる。下記特許文献1には、合板等の基材の表面に化粧単板を貼着するとともに、基材に設けられた凹溝に沿って化粧単板を凹ませ、上記凹溝の底部で化粧単板を切断分離した後、凹溝を着色することを特徴とする建築材およびその製造方法が開示されている。
【特許文献1】特開2001−88106号公報(第1〜3頁、第1図、第2図、第4図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術は、製造工程のプロセスが多く、手間がかかるとともに、上記方法によって得られた建築材の凹溝と凹溝以外の部分の色は互いに干渉し合ってコントラストが鮮やかではなく、外観的には必ずしも優れたものとはいえない。本発明はこのような問題を解決するためになされたものであって、簡単な工程で溝部の内部までムラ無く着色して、溝部のケバ立ちを抑えるとともに、溝部に施される塗装色と溝部を除く表面の塗装色とのコントラストを鮮明にして塗装し、外観の向上した建築材を得る方法を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために、本発明においては、つぎのような技術的手段を講じている。すなわち、請求項1に記載の発明によれば、溝加工した建築材の表面を塗装する方法であって、溝部を含む建築材の表面全体を塗装して着色する第1塗装工程と、第1塗装工程終了後、形成された着色層の上に捨て塗りを行い捨て塗り層を形成する捨て塗り工程と、上記溝部以外の着色層と捨て塗り層とを研摩、除去して生地を出す研摩工程と、研摩工程終了後、上記生地を仕上げ塗装する本着色工程とを含む建築材の塗装方法が提供される。
【0005】
請求項2に記載の建築材の塗装方法は、請求項1に記載の発明に加えて、上記捨て塗り工程における塗装をUV硬化型塗料による行うことが好ましい。このとき、UV硬化型塗料は着色層の色を隠さないようにクリアないしは淡色とすることが好ましい。また、紫外線照射の時間は数秒ないし数十秒とされる。
【0006】
請求項3に記載の建築材の塗装方法は、請求項1に記載の発明に加えて、上記研摩をサンディングにより行うことが好ましい。
【0007】
請求項4に記載の建築材の塗装方法は、請求項1に記載の発明に加えて、上記溝部をV字型の溝部とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に記載の発明にかかる建築材の塗装方法は上記のとおりであり、溝部を含む建築材の表面全体に着色層を形成し、その上に捨て塗りを行い、その後、上記溝部以外の部分にコーティングされた着色層と捨て塗り層とを研摩、除去して生地を出し、上記生地に仕上げ塗装をして本着色を行うため、溝部の着色を均一にムラ無く行うことができるとともに、コントラスト鮮やかに仕上げ塗装をすることができる。
【0009】
請求項2に記載の建築材の塗装方法は上記のとおりであり、請求項1の建築材の塗装方法の有する効果に加え、上記捨て塗りをUV硬化型塗料による行うため、短時間の紫外線の照射で溝部を含む表面の着色層の上にクリアないしは淡色の塗膜が形成され、着色層を保護するとともに、溝部内においては、木繊維のケバ立ちを抑え、平滑化させてストッキング等の引っ掛かりを防ぐことができる。
【0010】
請求項3に記載の建築材の塗装方法は上記のとおりであり、請求項1の建築材の塗装方法の有する効果に加え、上記研摩をサンディングにより行うため、溝部以外の部分の着色層と捨て塗り層とを効率的に掻き落として生地を出すとともに、生地の荒れを除いて仕上げ塗装における塗料の乗りをよくすることができる。
【0011】
請求項4に記載の建築材の塗装方法は上記のとおりであり、請求項1の建築材の塗装方法の有する効果に加え、上記溝部がV字型の溝部とされているため、溝部の着色は底部に近づくにしたがって深みが増し、外観に優れたものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して、詳細に説明する。図1は本発明にかかる建築材の塗装方法のプロセスを示す説明図である。以下図1を参照して上記建築材の塗装方法について説明する。図1において、建築材4の表面にはV字型の溝部5が設けられており、上記建築材4の溝部5を含む表面全体は第1塗装工程においてロールコータ法で塗装される。上記第1塗装工程により、溝部5とともに、建築材4の表面全体が着色される。
【0013】
第1塗装工程終了後、ドライヤで乾燥された建築材4は、その表面に着色層1が形成されており、ついで、この着色層1にUV硬化型塗料を塗布して捨て塗りを行う。捨て塗り工程においては、着色層1の上に着色層1の色相を隠さないように、クリアもしくは淡色のUV硬化型塗料が塗布される。上記捨て塗りをされた建築材4は、紫外線を数秒ないし数十秒照射され、硬化したUV硬化型塗料は捨て塗り層2を形成する。
【0014】
このようにして建築材4の溝部5を含む表面全体を着色層1と捨て塗り層2によってコーティングされた建築材4はついで、研摩工程で研摩される。研摩はサンディングにより行われ、建築材4の表面に積層した着色層1と捨て塗り層2の溝部5以外の部分は掻き落され、生地41が出される。この研摩工程によって溝部5の着色層1と捨て塗り層2は残され、着色されたV字型の溝部5は底部に近づくにしたがって色の深みが増し、外観的に優れたものとなる。
【0015】
上記溝部5以外の研摩された生地41の表面は荒れが除かれているため、最終塗装工程で、鮮やかに所定の色に仕上げ塗装される。仕上げ塗装はロールコート、刷毛塗り等公知の方法によって行うが、着色された溝部5が仕上げ塗料によって塗装されないよう、必要に応じて溝部5を養生する等の処置を取り、生地41の上に本着色層3を形成する。
【0016】
このようにして本発明の方法によって塗装された建築材4は、溝部5と周囲の本着色層3とのコントラストが鮮明となり、意匠性の優れたものとなり種々の用途、例えば床材に使用される。図2は、本発明の方法を実施して得られた建築材4を床材Aとして用いた例を示す側断面図である。図2に示されているように、上記床材Aは、その側端に雄実6が、他の側端には雌実7が設けられ、長手方向にV字型の溝部5が設けられている。上記床材Aは溝部5を長手方向に設けた例を示すが、長手方向に限られず、幅方向に設けてもよい。あるいは、格子状にV字型の溝部5を設け、床材Aとして用いてもよい。このように本発明の方法を実施することによって、床材Aに限られず、溝部がムラ無く、鮮やかに着色された種々の形態の建築材4を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明にかかる建築材の塗装方法のプロセスを示す説明図である。
【図2】本発明にかかる建築材を床材として用いた例を示す側断面図である。
【符号の説明】
【0018】
1 着色層
2 捨て塗り層
3 本着色層
4 建築材
41 生地
5 溝部
6 雄実
7 雌実
A 本発明の方法を実施して得られた床材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溝加工した建築材の表面を塗装する方法であって、溝部を含む建築材の表面全体を塗装して着色する第1塗装工程と、第1塗装工程終了後、形成された着色層の上に捨て塗りを行い捨て塗り層を形成する捨て塗り工程と、上記溝部以外の着色層と捨て塗り層とを研摩、除去して生地を出す研摩工程と、研摩工程終了後、上記生地を仕上げ塗装する本着色工程とを含む建築材の塗装方法。
【請求項2】
上記捨て塗りをUV硬化型塗料による行う請求項1に記載の建築材の塗装方法。
【請求項3】
上記研摩をサンディングにより行う請求項1に記載の建築材の塗装方法。
【請求項4】
上記溝部がV字型の溝部である請求項1に記載の建築材の塗装方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−106072(P2007−106072A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−301541(P2005−301541)
【出願日】平成17年10月17日(2005.10.17)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】