説明

建築材の製造方法と建築材

【課題】無垢感があり、木質外観の向上した建築材を製造し、提供すること。
【解決手段】基材2の表面に化粧材3が設けられた建築材1の表面側の側辺部に形成された面取り部6の表面を化粧材の色調および柄に合わせて化粧印刷する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木質外観を有する建築材の製造方法とこの製造方法により製造される建築材に関する。
【背景技術】
【0002】
図4に示したように、床材などの木質外観を有する建築材1については、合板、中密度繊維板(MDF)、パーティクルボード、集成材などの木質系の基材2の表面に、木目柄などの木質特有の外観を有する突き板や化粧シートなどの化粧材3が貼着などにより設けられたものが知られている。
【0003】
このような建築材1には、通常、対向する側端部の一方に雌実4が、他方に雌実4に嵌合する雄実5が設けられ、隣接する2枚の建築材1間で雄実5を雌実4に嵌合させて接合し、建築材1は床などに配設される。また、建築材1には、小割感などを表現し、意匠性を高めるとともに、滑らかな表面として靴下などが引っ掛からないようにするなどのために、表面側の側辺部が建築材1の内側から外側に向かって斜め下方に切り欠かれ、面取り部6が形成されている。さらに、建築材1の表面部には断面略V字形状などの溝部7が形成されることもある。溝部7が形成された建築材1では、隣接する2枚の建築材1の突き合わせにより2つの面取り部6が合体して溝部7と同一形状の凹部が形成されるように、面取り部6の形状を溝部7の略半分の形状としている。このような面取り部6および溝部7には、耐水性や意匠性などの向上のために塗料8が塗布される
特許文献1には、化粧材3として非塩化ビニル系の化粧シートを用いた床材において、面取り部6および溝部7に塗布した塗料と化粧シートとの接着性が不安定でばらつくことに起因する塗料の剥げ落ちおよび色落ち、その結果として起こる耐水性の低下および膨潤という問題を解決するために、面取り部6および溝部7の塗装に先立ち、コロナ放電処理などの易接着処理を行うことが記載されている。
【特許文献1】特開2004−300758号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、木質外観を有する建築材1には無垢感が要求される。あたかも木材単板であるような無垢感を表現することが木質外観には非常に重要である。この無垢感は、一般に、面取り部6において現出されるものであり、単に塗料8を塗布するだけでは表現することはできない。したがって、特許文献1に記載された易接着処理は塗料8の塗着強度を高めるのに有効ではあっても、良好な木質外観を有する建築材1とするには改善が必要とされる。
【0005】
そこで、面取り部6の表面まで突き板や化粧シートなどの化粧材3を巻き込むように設けることが行われているが、この場合、建築材1の表面が木口の一部を形成する面取り部6の表面まで色調および柄が全く同一であるため、木材単板のような自然感が得られず、結局、無垢感を十分に表現し切れていない。
【0006】
本発明は、以上の通りの事情に鑑みてなされたものであり、無垢感があり、木質外観の向上した建築材を製造することのできる建築材の製造方法とこの製造方法により製造される建築材を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の建築材の製造方法は、上記の課題を解決するために、以下のことを特徴としている。
【0008】
第1に、基材の表面に化粧材が設けられた建築材の表面側の側辺部に形成された面取り部の表面を化粧材の色調および柄に合わせて化粧印刷する。
【0009】
第2に、上記第1の特徴において、化粧印刷に先立ち、面取り部の表面をあらかじめ目止め処理する。
【0010】
第3に、上記第1または第2の特徴において、化粧印刷後に印刷面の表面仕上げを行う。
【0011】
本発明の建築材は、第4として、上記第1ないし第3いずれか一つの特徴を有する建築材の製造方法によって製造されることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
上記第1の発明によれば、突き板、化粧シートなどの化粧材の色調および柄に合わせて面取り部の表面を化粧印刷するので、面取り部の印刷面の色調および柄が化粧材の色調および柄に対応したものとなり、木口に不自然感がなく、面取り部において無垢感を表現することができ、木材単板に匹敵する良好な木質外観を有する建築材が得られる。
【0013】
上記第2の発明によれば、上記第1の発明の効果に加え、印刷面である基材の表面を目止めすることができ、印刷品質を十分確保することができる。
【0014】
上記第3の発明によれば、上記第1または第2の発明の効果に加え、印刷面の耐久性が向上し、インクの剥げ落ち、色褪せなどを抑制することができる。
【0015】
上記第4の発明によれば、無垢感があり、木質外観の向上した建築材が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1は、本発明の建築材の一実施形態を示した斜視図である。図2は、図1に示した建築材の断面図である。
【0017】
図1に示した建築材1は床材1aである。床材1aは、平面視略矩形形状を有する板体である。隣接する一対の長辺9側の側端部および短辺10側の側端部に雌実4、雄実5がそれぞれ形成され、対向する長辺9側の側端部の一方に雌実4が配置され、他方に雄実5が配置されている。同様に、対向する短辺10側の側端部の一方に雌実4が、他方に雄実5が配置されている。床材1aは、隣接する2枚において雄実5を雌実4に嵌合させて接合し、床に敷設され、床面を形成する。
【0018】
床材1aは、合板、中密度繊維板(MDF)、パーティクルボード、集成材などの木質系の基材2の表面に、木目柄などの木質特有の外観を有する突き板や化粧シートなどの化粧材3が貼着されて形成されており、木質外観を有している。表面側の側辺部、すなわち、四辺部は、床材1aの内側から外側に向かって斜め下方に切り欠かれ、面取り部6が形成されている。
【0019】
面取り部6の表面は、図1に示したように、化粧印刷されている。化粧印刷は、化粧材3の色調および柄に合わせて行われている。つまり、面取り部6の表面は、床材1aが1枚の木材単板であると仮定したときに面取り部6に現れるであろう色調および柄に化粧印刷され、広葉樹または針葉樹の樹種に応じた表面が形成されている。具体的には、床材1aにおいて化粧材3は柾目調の色調および柄を有しており、したがって、長辺9側の面取り部6には化粧材3の色調および柄に等しい柾目調に化粧印刷が施され、一方、短辺10側の面取り部6には柾目を繊維の向きに対し垂直に切った断面に相当する色調および柄に化粧印刷が施されている。このため、面取り部6の色調および柄が化粧材3の色調および柄に対応したものとなり、敷設した床において露出する木口に不自然感がなく、面取り部6において無垢感を表現することができ、床材1aは、木材単板に匹敵する良好な木質外観を有する。
【0020】
そのような化粧印刷は、インクジェットなどに代表される精密印刷により行うことができる。その場合の印刷解像度は、印刷する柄などにもよるが、一般的には360dpi以上が好ましい。また、印刷品質を良好にするためには、図2に示したように、面取り部6の立ち上がり角度θ、すなわち、面取り部6の表面と基材2の雌実4および雄実5を除く側端面とのなす角度を60°以内とし、面取り部6の厚みtを5mm以内とするのが好ましい。立ち上がり角度θがそれより大きく、厚みtが厚くなると、印刷品質が低下する場合がある。
【0021】
化粧印刷は、基材2の表面に化粧材3を貼着し、表面側の四辺部を削って面取り部6を形成した後に化粧材3の色調および柄に対応するように行ったり、化粧材3の貼着以前に基材2の表面側の四辺部を削り、面取り部6を形成した後に、貼着する化粧材3の色調および柄を見込んで行ったりすることができる。前者の場合には、図2に示したように、化粧材3の側辺部にも化粧印刷が可能であり、無垢感がより高まる。
【0022】
いずれの場合にも、化粧印刷に先立ち、面取り部6の表面をあらかじめ目止め処理することが好ましい。目止め処理によって印刷面である基材2の表面をたとえばシーラーなどを用いて目止めすることができ、くっきりとした化粧印刷が実現され、印刷品質を十分確保することができる。また、化粧印刷後には印刷面の表面仕上げを行うことも有効である。表面仕上げによって印刷面の耐久性が向上し、インクの剥げ落ち、色褪せなどを抑制することができる。表面仕上げは、たとえばUV硬化型の塗料を塗布し、硬化させるなどによって行うことができる。
【0023】
床材1aを含む木質外観を有する建築材1については、図3に示したように、建築材1の表面部に溝部7が形成されることがあり、溝部7は化粧材3の配設後に形成され、溝部7の底部は基材2の表面部に達することがある。このように形成される溝部7に対して上記の通りの化粧印刷を行うことは、無垢感を表現するのに有効である。したがって、溝部7の内面を、建築材1が木材単板であると仮定した場合に溝部7の内面に現れるであろう色調および柄となるように、化粧材3の色調および柄に合わせて化粧印刷する。
【0024】
溝部7の内面の化粧印刷も、面取り部6の表面の化粧印刷と同様に、インクジェットなどに代表される精密印刷により行うことができ、その場合の印刷解像度も360dpi以上とし、溝部7の内面の立ち上がり角度λ、すなわち、溝部7の内面が建築材1の表面に対して垂直な面となす角度を、面取り部6の表面の立ち上がり角度θと同様の60°以内とし、溝部7の深さdを面取り部6の厚さtと同様の5mm以内とすることが好ましい。このようにすることで、溝部7の内面の印刷解像度を良好にすることができ、また、印刷品質を良好に保つことができる。
【0025】
なお、溝部7が形成された建築材1では、隣接する2枚の建築材1の突き合わせにより2つの面取り部6が合体して溝部7と同一形状の凹部が形成されるように、面取り部6の形状を溝部7の略半分の形状とすることができる。
【0026】
このような建築材1は、床材1aばかりでなく、壁材、天井材などとすることもできる。
【0027】
以下に、本発明の建築材の製造方法と建築材の実施例を示す。
【実施例】
【0028】
5.5mm厚で平面視略矩形形状のMDFを基材とし、その表面に、水性ビニルウレタン接着剤(塗布量100g/m)を用いて、ポリオレフィンから形成された厚み200μmの木目印刷シートを0.5MPaのプレス圧力を2時間かけて貼着した。その後、表面側の四辺部に、面取りかんなを用いてC2.5で面取り加工を行った。
【0029】
試料No.1については、面取り部の表面に塗布量30g/mでアクリルウレタンシーラーを塗布し、10時間かけて風乾して目止め処理を行い、次いで印刷解像度360dpiのインクジェットにより木目印刷シートに対応する色調および柄に化粧印刷を行った。その後、印刷面に塗布量80g/mでUVアクリルウレタン塗料を塗布し、UV硬化させて表面仕上げを行った。
【0030】
得られた試料について、面取り部の表面を目視により評価するとともに、面取り部の表面に粘着テープを貼り、速やかに引っ張って剥離し、インクの剥げ落ちを目視により評価するテープ剥離試験を行った。その結果を表1に示す。
【0031】
【表1】

試料No.1は、無垢感のある良好な木質外観を有している。また、印刷面の耐久性が十分高い。
【0032】
試料No.2は、試料No.1の製造において目止め処理を省略して得られたものである。面取り部の表面の柄がややぼやけており、印刷品質を十分確保するために目止め処理が有効であることが確認される。
【0033】
試料No.3は、試料No.1の製造において表面仕上げを省略して得られたものである。目止め処理によって印刷品質が良好ではあるが、インクの剥げ落ちしたものがあり、印刷面の耐久性にやや欠けている。印刷面の耐久性を十分確保するために表面仕上げが有効であることが確認される。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の建築材の一実施形態を示した斜視図である。
【図2】図1に示した建築材の断面図である。
【図3】本発明の建築材の一実施形態を示した断面図である。
【図4】木質外観を有する建築材一般について示した断面図である。
【符号の説明】
【0035】
1 建築材
2 基材
3 化粧材
6 面取り部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の表面に化粧材が設けられた建築材の表面側の側辺部に形成された面取り部の表面を化粧材の色調および柄に合わせて化粧印刷することを特徴とする建築材の製造方法。
【請求項2】
化粧印刷に先立ち、面取り部の表面をあらかじめ目止め処理することを特徴とする請求項1に記載の建築材の製造方法。
【請求項3】
化粧印刷後に印刷面の表面仕上げを行うことを特徴とする請求項1または2に記載の建築材の製造方法。
【請求項4】
請求項1ないし3いずれか一項に記載された建築材の製造方法により製造されたことを特徴とする建築材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−156893(P2008−156893A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−346613(P2006−346613)
【出願日】平成18年12月22日(2006.12.22)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】