説明

建築物のフローリング用床材の部分補修方法

【課題】単位板の範囲よりも広い損傷に対して、損傷を受けた箇所だけを最小範囲で補修することができる建築物のフローリング用床材の部分補修方法を提供する。
【解決手段】補修用床部材を、第1の補修用床部材と、第2の補修用床部材とで構成し、第1の補修用床部材の外形を、補修対象エリアの外形よりも小さく形成し、第1の補修用床部材を、補修対象エリアに配設する工程では、第1の補修用床部材の外周と、補修対象エリアの周囲に位置するフローリング用床材との間には全周に渡って間隙を持たせ、配設後に、間隙にコーキング剤を充填するコーキング充填工程を有し、第2の補修用床部材を、第1の補修用床部材の上に配設する工程では、第2の補修用床部材の端部を、補修対象エリアの周囲に位置するフローリング用床材に当接させ、第2の補修用床部材が間隙の上面を覆い、間隙では、第2の補修用床部材の下面をコーキング剤に当接させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅などの建築物のフローリング用床材の一部を補修する建築物のフローリング用床材の部分補修方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在の住宅では、例えば特許文献1や特許文献2に開示されているようなフローリング床が多く採用されている。
多くのフローリング床は、平面視で長方形状をした単位板を複数敷設して構成される。この単位板は、合板の一方の面には化粧板を、合板の他方の面には緩衝材を備え、周縁面には実部が形成されている。そして単位板同士は、この実部が嵌めあわされて敷設される。
また、このような単位板には、特許文献3に開示されているような切り込み溝を複数形成したものもある。複数の切り込み溝を形成することで、単位板に荷重が加わった場合に適度に変形させ、単位板同士の接合部への荷重集中を防ぎ、例えば床鳴りなどを防止することができる。
なお、複数の単位板を施工前にあらかじめ連結した標準床部材も多く採用されており、施工現場では標準床部材を単位とした敷設が行われるが、この場合にも、標準床部材の周縁面には実部が形成され、標準床部材同士は、この実部が嵌めあわされて敷設される。
このようなフローリング床を、施工後に補修しなければならない場合も多く、補修用の構造や補修方法が提案されている(特許文献3〜特許文献5)。
ところで、単位板同士を密着させない構成が提案されている。
特許文献6では、単位板の側面を傾斜させることで、単位板同士の下部に空隙を形成させているが、この空隙は、床材の補修を容易にすることを目的としている。
また、特許文献7では、単位板同士の上部に空隙を形成させているが、この空隙は施工後に湿潤に起因する部材の伸びに対応させることを目的としている。
一方、特許文献8では、単位板同士の接合部に樹脂を流し込むことが提案され、床鳴り防止のために、単位板同士の接合部に、軟質合成樹脂材料からなる摺接緩和材を配設し、又はα―シアノアクリルレート系接着剤を充填していたことが開示されている。
他方、特許文献9では、リフォーム用のフローリングシートが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平6−51375号公報
【特許文献2】特開2000−320109号公報
【特許文献3】特開2003−286769号公報
【特許文献4】特開2008−50757号公報
【特許文献5】特開2001−159247号公報
【特許文献6】特開2006−37566号公報
【特許文献7】特開2002−349047号公報
【特許文献8】特開2005−256496号公報
【特許文献9】特開2001−355331号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献3は、床材の下面には合成樹脂被覆層を設け、床下地材には樹脂コーティング層を設け、床材と床下地材とを両面粘着テープで接着することで施工するものである。
特許文献3によれば、床材の張り替え時に剥離が容易となり、床材や床下地材を損傷させることなく張り替え作業ができる。
しかし、特許文献3では、特許文献3とは異なる構成のフローリング床の補修に適用できるものではない。
これに対して特許文献4では、特許文献1や特許文献2で開示されているような一般的なフローリング床に適用できるリフォーム用床材を提案している。
しかし、特許文献4は、単位板の単位で補修を行うもので、複数の単位板に跨る損傷に対応できるものではない。
特許文献5では、単位板の単位で張り替える場合の不都合に着目し、単位板の一部分に切削凹部を形成し、この切削凹部に嵌着させる補修用ピースを提案している。
【0005】
そこで本発明は、単位板の範囲よりも広い損傷に対して、損傷を受けた箇所だけを最小範囲で補修することができる建築物のフローリング用床材の部分補修方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の本発明の建築物のフローリング用床材の部分補修方法は、コンクリートなどからなる既設床面の上にフローリング用床材が配設されており、前記フローリング用床材が緩衝材と合板と化粧板とを前記既設床面側から順に積層して構成され、前記フローリング用床材の一部を除去して補修対象エリアを形成し、前記補修対象エリアに新たな補修用床部材を配設する建築物のフローリング用床材の部分補修方法であって、前記補修用床部材を、補修用緩衝部材と補修用合板とが積層された第1の補修用床部材と、前記補修用合板の上に配設されて化粧面を形成する第2の補修用床部材とで構成し、前記第1の補修用床部材の外形を、前記補修対象エリアの外形よりも小さく形成し、前記第1の補修用床部材を、前記補修対象エリアに配設する工程では、前記第1の補修用床部材の外周と、前記補修対象エリアの周囲に位置する前記フローリング用床材との間には全周に渡って間隙を持たせ、前記第1の補修用床部材を前記補修対象エリアに配設した後に、前記間隙にコーキング剤を充填するコーキング充填工程を有し、前記第2の補修用床部材を、前記第1の補修用床部材の上に配設する工程では、前記第2の補修用床部材の端部を、前記補修対象エリアの周囲に位置する前記フローリング用床材に当接させることで、前記第2の補修用床部材が前記間隙の上面を覆い、前記間隙では、前記第2の補修用床部材の下面を前記コーキング剤に当接させることを特徴とする。
請求項2記載の本発明は、請求項1に記載の建築物のフローリング用床材の部分補修方法において、前記第1の補修用床部材を、複数の部材で構成し、前記第1の補修用床部材を、前記補修対象エリアに配設する工程では、前記第1の補修用床部材の部材間には部材間間隙を持たせ、前記コーキング充填工程では、前記部材間間隙にも前記コーキング剤を充填し、前記第2の補修用床部材を、前記第1の補修用床部材の上に配設する工程では、前記第2の補修用床部材が前記部材間間隙の上面を覆い、前記部材間間隙では、前記第2の補修用床部材の下面を前記コーキング剤に当接させることを特徴とする。
請求項3記載の本発明は、請求項1又は請求項2に記載の建築物のフローリング用床材の部分補修方法において、前記補修対象エリア内の前記既設床面の凹部に充填剤を埋め込む第1の平坦化処理と、前記第1の平坦化処理を行った前記既設床面に研磨加工を施す第2の平坦化処理とを行い、前記第2の平坦化処理を行った前記既設床面に接着プライマーを塗布し、前記接着プライマーを塗布した前記既設床面に、両面接着シートを用いて前記第1の補修用床部材を接着することを特徴とする。
請求項4記載の本発明は、請求項3に記載の建築物のフローリング用床材の部分補修方法において、前記第2の平坦化処理を行った後、又は前記接着プライマーの塗布の後に、前記第1の補修用床部材を前記補修対象エリアに仮配設する高さ調整工程を有し、前記高さ調整工程では、前記第1の補修用床部材の外周と、前記補修対象エリアの周囲に位置する前記フローリング用床材との高さ寸法差を計測し、前記高さ寸法差が一定となるように高さ調整材を前記第1の補修用床部材と前記既設床面との間に仮配置することを特徴とする。
請求項5記載の本発明は、請求項1から請求項4に記載の建築物のフローリング用床材の部分補修方法において、既設の前記フローリング用床材が、複数の標準床部材を組み合わせて構成され、それぞれの前記標準床部材が複数の化粧板、又は視覚的に区分された疑似継ぎ目を有する化粧板で構成されている場合に、前記補修対象エリアを、前記標準床部材間の継ぎ目にかかわらず、前記化粧板同士の継ぎ目、又は前記疑似継ぎ目によって決定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、新たに配設する第1の補修用床部材と、既設のフローリング用床材との間は、コーキング剤によって適度に接合が保たれるとともに、新たに配設する第1の補修用床部材と、既設のフローリング用床材との材料の違いなどによる弾性変形の違いもコーキング剤によって吸収するため、使用時に段差が生じることはなく、床鳴りも生じない。また、第2の補修用床部材はフローリング用床材に当接させているため、補修箇所周辺で間隙は無く、第2の補修用床部材の下面はコーキング剤に当接させているため、第1の補修用床部材が無くても第2の補修用床部材は沈み込むことはなく、またコーキング剤の粘着性によって浮き上がりも発生しない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】部分補修前の建築物のフローリング用床材を示す要部斜視図
【図2】本発明の一実施例による建築物のフローリング用床材の部分補修方法における補修対象エリアを示す要部斜視図
【図3】本発明の一実施例による建築物のフローリング用床材の部分補修方法における補修対象エリアの形成工程を示す要部斜視図
【図4】本発明の一実施例による建築物のフローリング用床材の部分補修方法における補修対象エリア内のフローリング用床材を除去した後の平坦化処理を示す要部斜視図
【図5】本発明の一実施例による建築物のフローリング用床材の部分補修方法における補修対象エリアの型取り工程を示す要部斜視図
【図6】本発明の一実施例による建築物のフローリング用床材の部分補修方法における高さ調整工程を示す要部平面図
【図7】本発明の一実施例による建築物のフローリング用床材の部分補修方法における第2の補修用床部材の製作工程を示す平面図
【図8】本発明の一実施例による建築物のフローリング用床材の部分補修方法における敷設工程を示す平面図
【図9】本発明の他の実施例による建築物のフローリング用床材の部分補修方法における敷設工程を示す平面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の第1の実施の形態による建築物のフローリング用床材の部分補修方法は、補修用床部材を、補修用緩衝部材と補修用合板とが積層された第1の補修用床部材と、補修用合板の上に配設されて化粧面を形成する第2の補修用床部材とで構成し、第1の補修用床部材の外形を、補修対象エリアの外形よりも小さく形成し、第1の補修用床部材を、補修対象エリアに配設する工程では、第1の補修用床部材の外周と、補修対象エリアの周囲に位置するフローリング用床材との間には全周に渡って間隙を持たせ、第1の補修用床部材を補修対象エリアに配設した後に、間隙にコーキング剤を充填するコーキング充填工程を有し、第2の補修用床部材を、第1の補修用床部材の上に配設する工程では、第2の補修用床部材の端部を、補修対象エリアの周囲に位置するフローリング用床材に当接させることで、第2の補修用床部材が間隙の上面を覆い、間隙では、第2の補修用床部材の下面をコーキング剤に当接させたものである。本実施の形態によれば、第1の補修用床部材の外周と、補修対象エリアの周囲に位置するフローリング用床材との間には、全周に渡って間隙が形成され、この間隙にはコーキング剤が充填されているため、新たに配設する第1の補修用床部材と、既設のフローリング用床材との間は適度に接合が保たれるとともに、新たに配設する第1の補修用床部材と、既設のフローリング用床材との材料の違いなどによる弾性変形の違いも吸収するため、使用時に段差が生じることはなく、床鳴りも生じない。また、第2の補修用床部材はフローリング用床材に当接させているため、補修箇所周辺で間隙は無く、第2の補修用床部材の下面はコーキング剤に当接させているため、第1の補修用床部材が無くても第2の補修用床部材は沈み込むことはなく、またコーキング剤の粘着性によって浮き上がりも発生しない。
本発明の第2の実施の形態は、第1の実施の形態による建築物のフローリング用床材の部分補修方法において、第1の補修用床部材を、複数の部材で構成し、第1の補修用床部材を、補修対象エリアに配設する工程では、第1の補修用床部材の部材間には部材間間隙を持たせ、コーキング充填工程では、部材間間隙にもコーキング剤を充填し、第2の補修用床部材を、第1の補修用床部材の上に配設する工程では、第2の補修用床部材が部材間間隙の上面を覆い、部材間間隙では、第2の補修用床部材の下面をコーキング剤に当接させるものである。本実施の形態によれば、特に補修対象エリアが大きな場合には、第1の補修用床部材を、複数の部材で構成することで、運搬や現場施工性を向上させることができ、このように複数部材に分割した場合であっても、部材間には間隙が形成され、この間隙にはコーキング剤が充填されているため、部材間は適度に接合が保たれるとともに、不均一な荷重による弾性変形の違いも吸収するため、使用時に段差が生じることはなく、床鳴りも生じない。また、第2の補修用床部材の下面はコーキング剤に当接させているため、第1の補修用床部材が無くても第2の補修用床部材は沈み込むことはなく、またコーキング剤の粘着性によって浮き上がりも発生しない。
本発明の第3の実施の形態は、第1又は第2の実施の形態による建築物のフローリング用床材の部分補修方法において、補修対象エリア内の既設床面の凹部に充填剤を埋め込む第1の平坦化処理と、第1の平坦化処理を行った既設床面に研磨加工を施す第2の平坦化処理とを行い、第2の平坦化処理を行った既設床面に接着プライマーを塗布し、接着プライマーを塗布した既設床面に、両面接着シートを用いて第1の補修用床部材を接着するものである。本実施の形態によれば、補修対象エリア内の既設床面の平坦化処理を行うことで微妙な高さ調整を正確に行うことができ、接着プライマーの塗布によって平坦化処理で発生する粉体による接着性能の低下を防ぐことができ、両面接着シートによる接着を確実に強固に行うことができる。また、両面接着シートを用いることで、液状接着剤を用いる場合と比較して高さに影響しないために、微妙な高さ調整を行え、段差の無い部分補修を行うことができる。
本発明の第4の実施の形態は、第3の実施の形態による建築物のフローリング用床材の部分補修方法において、第2の平坦化処理を行った後、又は接着プライマーの塗布の後に、第1の補修用床部材を補修対象エリアに仮配設する高さ調整工程を有し、高さ調整工程では、第1の補修用床部材の外周と、補修対象エリアの周囲に位置するフローリング用床材との高さ寸法差を計測し、高さ寸法差が一定となるように高さ調整材を第1の補修用床部材と既設床面との間に仮配置するものである。本実施の形態によれば、現場毎で相違する経年変化による影響にも対応でき、微妙な高さ調整を正確に行うことができる。
本発明の第5の実施の形態は、第1から第4の実施の形態による建築物のフローリング用床材の部分補修方法において、既設のフローリング用床材が、複数の標準床部材を組み合わせて構成され、それぞれの標準床部材が複数の合板で構成され、標準床部材が複数の化粧板、又は視覚的に区分された疑似継ぎ目を有する化粧板で構成されている場合に、補修対象エリアを、標準床部材間の継ぎ目にかかわらず、化粧板同士の継ぎ目、又は疑似継ぎ目によって決定するものである。本実施の形態によれば、傷んだ箇所だけを、最小範囲で補修することができるため、施工性に優れるとともに安価に補修を行うことができる。
【実施例】
【0010】
以下本発明の一実施例による建築物のフローリング用床材の部分補修方法について説明する。
図1は部分補修前の建築物のフローリング用床材を示す要部斜視図である。
コンクリートなどからなる既設床面10の上にフローリング用床材が配設されており、フローリング用床材は、緩衝材11と合板12と化粧板13とを既設床面10側から順に積層した構造となっている。
図において、化粧板13aは、1枚の合板12に張り合わされており、表面に疑似継ぎ目14aを形成することで視覚的には2つの平板で化粧板13aが構成されているように見える。化粧板13b、13c、13dについても同様である。
化粧板13aが張り合わされた合板12と、化粧板13bが張り合わされた合板12とは、一つの部材からなる緩衝材11で接合されて標準床部材が構成されている。化粧板13cが張り合わされた合板12と、化粧板13dが張り合わされた合板12についても同様である。
そして、化粧板13a及び化粧板13bを有する標準床部材と、化粧板13c及び化粧板13dを有する標準床部材とは、施工現場で組み合わされる。標準床部材の側面には、実15が形成され、標準床部材同士は、この実15を嵌めあわせることで接合される。
図1では、痛み部17は、化粧板13b及び化粧板13cに発生していることを示している。
【0011】
図2は本発明の一実施例による建築物のフローリング用床材の部分補修方法における補修対象エリアを示す要部斜視図である。
図2では、補修対象エリア18を、エリア18a、エリア18b、エリア18cとしている。ここで、エリア18aは、化粧板13b全てではなく、疑似継ぎ目14aで区分される化粧板13bの片側だけである。なお、エリア18b及びエリア18cは、化粧板13cに対応している。
化粧板13a及び化粧板13bによって一つの標準床部材が構成されているが、補修対象エリア18は、化粧板13a及び化粧板13bを有する標準床部材単位ではなく、化粧板13aと化粧板13bとの継ぎ目14bで区切り、化粧板13bを補修対象エリア18とするとともに、化粧板13bの疑似継ぎ目14aで区切ってエリア18aを補修対象エリア18としている。
また、化粧板13c及び化粧板13dによって一つの標準床部材が構成されているが、補修対象エリア18は、化粧板13c及び化粧板13dを有する標準床部材単位ではなく、化粧板13cと化粧板13dとの継ぎ目14bで区切ってエリア18b、エリア18cを補修対象エリア18としている。
このように本実施例によれば、標準床部材間の継ぎ目にかかわらず、化粧板13同士の継ぎ目14b、又は疑似継ぎ目14aによって補修対象エリア18を決定することで、傷んだ箇所だけを、最小範囲で補修することができるため、施工性に優れるとともに安価に補修を行うことができる。
【0012】
図3は本発明の一実施例による建築物のフローリング用床材の部分補修方法における補修対象エリアの形成工程を示す要部斜視図である。
補修対象エリア18の周囲に位置するフローリング用床材には、補修対象エリア18を塞がないようにテープ19が貼られる。そして、テープ19の内周側となる補修対象エリア18をカッターで切断する。
カッターで補修対象エリア18の周囲に切れ込みを入れた後に、ノミを用いて補修対象エリア18内のフローリング用床材を除去する。
【0013】
図4は本発明の一実施例による建築物のフローリング用床材の部分補修方法における補修対象エリア内のフローリング用床材を除去した後の平坦化処理を示す要部斜視図である。
図4(a)(c)は、補修対象エリア18内のフローリング用床材を除去した状態を示している。この状態では、同図(c)に示すように、補修対象エリア18内の既設床面10には、大小多数の凹部が発生している。なお、図4(b)はフローリング用床材を除去する前の状態を示している。
図4(d)は、第1の平坦化処理によって、既設床面10に発生している凹部に充填剤20を埋め込んだ状態を示している。
充填材20で凹部を埋めた後に、サンドペーパーなどを用いて第2の平坦化処理として研磨加工を施す。そして、第2の平坦化処理を行った既設床面10に接着プライマーを塗布する。
【0014】
図5は本発明の一実施例による建築物のフローリング用床材の部分補修方法における補修対象エリアの型取り工程を示す要部斜視図である。なお、型取り工程は、図3で説明した補修対象エリアの形成工程の後であればよく、図4で説明した平坦化処理を行った後でなくてもよい。
補修対象エリア18を覆うように型取り紙21を配置し、補修対象エリア18と同一形状の型21aを製作する。
第1の補修用床部材30は、あらかじめ所定の大きさに緩衝材11と合板12とを積層した標準補修用床部材31から、型21aを用いて製作される。ただし、第1の補修用床部材30は、型21aの大きさ、すなわち補修対象エリア18の外形よりも小さくしている。
従って、図6に示すように、第1の補修用床部材30は、補修対象エリア18に配設した状態では、第1の補修用床部材30の外周には、2mm〜3mmの間隙40を形成している。
【0015】
図6は本発明の一実施例による建築物のフローリング用床材の部分補修方法における高さ調整工程を示す要部平面図である。
高さ調整工程は、第2の平坦化処理を行った後、又は接着プライマーの塗布の後に行う。
高さ調整工程では、第1の補修用床部材30を補修対象エリア18に仮配設する。仮配設の場合にも、間隙40が均等に形成されるように第1の補修用床部材30を配設する。そして、第1の補修用床部材30の外周と、補修対象エリア18の周囲に位置するフローリング用床材との高さ寸法差(同図(b)におけるa1、b1)を計測し、一定の高さ寸法差(同図(c)におけるa2、b2)となるように高さ調整材50を第1の補修用床部材30と既設床面10との間に仮配置する。
【0016】
図7は本発明の一実施例による建築物のフローリング用床材の部分補修方法における第2の補修用床部材の製作工程を示す斜視図である。
同図において、(a)は化粧シート61を、(b)は化粧基材62を示し、(c)は化粧シート61を化粧基材62に貼り合わせて製作した第2の補修用床部材60の表面を、(d)は同裏面を示している。
化粧シート61は、裏面に粘着剤を有しており、化粧基材62の平面寸法より大きなものが用いられる。第2の補修用床部材60は、化粧シート61によって化粧基材62の表面を全て覆うとともに、化粧基材62の側面で折り曲げられ、化粧基材62の裏面の周囲面にも貼り付けられることで構成されている。
このように、化粧シート61を化粧基材62の裏面にわたって貼り付けることで、第2の補修用床部材60の敷設後に、化粧シート61が剥がれることを防止することができる。
ここで第2の補修用床部材60は、エリア18a、18b、18cに対応してそれぞれ製作され、それぞれの第2の補修用床部材60の大きさもエリア18a、18b、18cと同じ外形寸法で製作される。
なお、本実施例では、化粧シート61によって化粧基材62の表面を全て覆うことで第2の補修用床部材60を構成しているが、第2の補修用床部材60は、無垢材料に塗料を塗って化粧面を形成したものでもよい。
【0017】
図8は本発明の一実施例による建築物のフローリング用床材の部分補修方法における敷設工程を示す平面図である。
まず、同図(a)に示すように、高さ調整材50を既設床面10に配置して接着する。ここで高さ調整材50と既設床面10との接着には両面粘着シートを用いることが好ましく、高さ調整部材50の裏面にあらかじめ両面粘着シートを貼付しておく。
次に、同図(b)に示すように、第1の補修用床部材30を既設床面10に配置して接着する。ここで第1の補修用床部材30と既設床面10との接着には両面粘着シートを用いることが好ましく、第1の補修用床部材30の裏面にあらかじめ両面粘着シートを貼付しておく。
また、この段階で第1の補修用床部材30の表面の外縁に沿ってテープ19を貼付しておくことが好ましい。
第1の補修用床部材30を補修対象エリア18に貼付した状態では、第1の補修用床部材30の外周に間隙40が形成されており、この間隙40にコーキング剤70を充填する。
ここで、コーキング剤70としては、柔軟性と接着性の両者を併せ持つようなシリコンコーキング剤が適しており、その他のコーキング剤としては、1液型ウレタン樹脂系充填剤、アクリル樹脂系エマルジョン形充填剤、1液速硬化型変成シリコーン樹脂系充填剤を用いることができる。
同図(c)では、間隙40にコーキング剤70が充填されている状態を示している。
同図(d)では、フローリング用床材及び第1の補修用床部材30に貼付していたテープ19を剥がした状態を示している。間隙40からはみ出したコーキング剤70は、テープ19とともに取り除かれる。
同図(e)では、両面粘着シートを用いて第1の補修用床部材30の表面に、第2の補修用床部材60を貼付する。このとき、第2の補修用床部材60を、第1の補修用床部材30の上に配設する工程では、第2の補修用床部材60の端部を、補修対象エリア18の周囲に位置するフローリング用床材に当接させることで、第2の補修用床部材60が間隙40の上面を覆い、間隙40では、第2の補修用床部材60の下面をコーキング剤70に当接させている。
【0018】
本実施例によれば、接着プライマーを塗布した既設床面10に、両面接着シートを用いて第1の補修用床部材30を接着することで、液状接着剤を用いる場合と比較して高さに影響しないために、微妙な高さ調整を行え、段差の無い部分補修を行うことができる。
また本実施例によれば、第1の補修用床部材30の外周と、補修対象エリア18の周囲に位置するフローリング用床材との間には、全周に渡って間隙40が形成され、この間隙40にはコーキング剤70が充填されているため、新たに配設する第1の補修用床部材30と、既設のフローリング用床材との間は適度に接合が保たれるとともに、新たに配設する第1の補修用床部材30と、既設のフローリング用床材との材料の違いなどによる弾性変形の違いも吸収するため、使用時に段差が生じることはなく、床鳴りも生じない。
また、本実施例によれば、第2の補修用床部材60はフローリング用床材に当接させているため、補修箇所周辺で間隙は無く、第2の補修用床部材60の下面はコーキング剤70に当接させているため、第1の補修用床部材30が無くても第2の補修用床部材60は沈み込むことはなく、またコーキング剤70の粘着性によって浮き上がりも発生しない。
【0019】
図9は本発明の他の実施例による建築物のフローリング用床材の部分補修方法における敷設工程を示す平面図である。
前記実施例では、第1の補修用床部材30を一つの部材として説明したが、本実施例では第1の補修用床部材30を2つの部材31、32で構成したものであり、2つの部材31、32を敷設する場合に、2つの部材31、32間に部材間間隙41を持たせている。なお、他の工程や部材については前記実施例と同じであるために説明を省略する。
本実施例において、第1の補修用床部材30を、補修対象エリア18に配設する工程では、第1の補修用床部材30の部材31、32間には部材間間隙41を持たせ、その後のコーキング充填工程では、部材間間隙41にもコーキング剤を充填し、第2の補修用床部材60を、第1の補修用床部材30の上に配設する工程では、第2の補修用床部材60が部材間間隙41の上面を覆い、部材間間隙41では、第2の補修用床部材60の下面をコーキング剤に当接させる。
本実施例によれば、特に補修対象エリア18が大きな場合には、第1の補修用床部材30を、複数の部材31、32で構成することで、運搬や現場施工性を向上させることができ、このように複数の部材31、32に分割した場合であっても、部材間間隙41を形成し、この部材間間隙41にもコーキング剤が充填されているため、部材31、32間は適度に接合が保たれるとともに、不均一な荷重による弾性変形の違いも吸収するため、使用時に段差が生じることはなく、床鳴りも生じない。また、第2の補修用床部材60の下面はコーキング剤に当接させているため、第1の補修用床部材30が無くても第2の補修用床部材60は沈み込むことはなく、またコーキング剤の粘着性によって浮き上がりも発生しない。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明は、住宅におけるフローリング用床材の一部を補修する場合の他、その他の建築物におけるフローリング用床材の一部の補修に適用できる。
【符号の説明】
【0021】
18 補修対象エリア
20 充填材
30 第1の補修用床部材
40 間隙
41 部材間間隙
50 高さ調整材
60 第2の補修用床部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリートなどからなる既設床面の上にフローリング用床材が配設されており、前記フローリング用床材が緩衝材と合板と化粧板とを前記既設床面側から順に積層して構成され、前記フローリング用床材の一部を除去して補修対象エリアを形成し、前記補修対象エリアに新たな補修用床部材を配設する建築物のフローリング用床材の部分補修方法であって、
前記補修用床部材を、補修用緩衝部材と補修用合板とが積層された第1の補修用床部材と、前記補修用合板の上に配設されて化粧面を形成する第2の補修用床部材とで構成し、
前記第1の補修用床部材の外形を、前記補修対象エリアの外形よりも小さく形成し、
前記第1の補修用床部材を、前記補修対象エリアに配設する工程では、前記第1の補修用床部材の外周と、前記補修対象エリアの周囲に位置する前記フローリング用床材との間には全周に渡って間隙を持たせ、
前記第1の補修用床部材を前記補修対象エリアに配設した後に、前記間隙にコーキング剤を充填するコーキング充填工程を有し、
前記第2の補修用床部材を、前記第1の補修用床部材の上に配設する工程では、前記第2の補修用床部材の端部を、前記補修対象エリアの周囲に位置する前記フローリング用床材に当接させることで、前記第2の補修用床部材が前記間隙の上面を覆い、
前記間隙では、前記第2の補修用床部材の下面を前記コーキング剤に当接させることを特徴とする建築物のフローリング用床材の部分補修方法。
【請求項2】
前記第1の補修用床部材を、複数の部材で構成し、
前記第1の補修用床部材を、前記補修対象エリアに配設する工程では、前記第1の補修用床部材の部材間には部材間間隙を持たせ、
前記コーキング充填工程では、前記部材間間隙にも前記コーキング剤を充填し、
前記第2の補修用床部材を、前記第1の補修用床部材の上に配設する工程では、前記第2の補修用床部材が前記部材間間隙の上面を覆い、
前記部材間間隙では、前記第2の補修用床部材の下面を前記コーキング剤に当接させることを特徴とする請求項1に記載の建築物のフローリング用床材の部分補修方法。
【請求項3】
前記補修対象エリア内の前記既設床面の凹部に充填剤を埋め込む第1の平坦化処理と、前記第1の平坦化処理を行った前記既設床面に研磨加工を施す第2の平坦化処理とを行い、前記第2の平坦化処理を行った前記既設床面に接着プライマーを塗布し、
前記接着プライマーを塗布した前記既設床面に、両面接着シートを用いて前記第1の補修用床部材を接着することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の建築物のフローリング用床材の部分補修方法。
【請求項4】
前記第2の平坦化処理を行った後、又は前記接着プライマーの塗布の後に、前記第1の補修用床部材を前記補修対象エリアに仮配設する高さ調整工程を有し、
前記高さ調整工程では、前記第1の補修用床部材の外周と、前記補修対象エリアの周囲に位置する前記フローリング用床材との高さ寸法差を計測し、前記高さ寸法差が一定となるように高さ調整材を前記第1の補修用床部材と前記既設床面との間に仮配置することを特徴とする請求項3に記載の建築物のフローリング用床材の部分補修方法。
【請求項5】
既設の前記フローリング用床材が、複数の標準床部材を組み合わせて構成され、それぞれの前記標準床部材が複数の化粧板、又は視覚的に区分された疑似継ぎ目を有する化粧板で構成されている場合に、
前記補修対象エリアを、前記標準床部材間の継ぎ目にかかわらず、前記化粧板同士の継ぎ目、又は前記疑似継ぎ目によって決定することを特徴とする請求項1から請求項4に記載の建築物のフローリング用床材の部分補修方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−62729(P2012−62729A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−209652(P2010−209652)
【出願日】平成22年9月17日(2010.9.17)
【出願人】(506340312)株式会社 インテックデコ (2)
【Fターム(参考)】