説明

建築用板の製造方法

【目的】特に曲げ強度のばらつきが少ない建築用板を製造する。
【構成】ロックウールなどの無機系繊維および木質繊維などの有機系繊維に、これら繊維同士を結合する液体状結合剤を加えた混合物を均一に散布してマットを形成し、該マットを熱圧成形して建築用板を製造する。複数層からなる建築用板(36,49)を製造する場合は、少なくともその表面層(35,48)を上記方法により成形する。表面層と裏面層との間に挟まれる中間層(34,47)については、無機系発泡体および有機系繊維に、前記無機系発泡体と前記有機系繊維とを結合する液体状結合剤を加えた混合物18を均一に散布してマット17を形成し、該マットを熱圧成形して形成することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として外壁の下地材などに使用される建築用板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
主として外壁の下地材などに使用される建築用板を製造するための従来法として、たとえば、鉱物質繊維に無機粉状体または硬質無機発泡体を加えることが知られている。この建築用板の製造方法は下記特許文献1に記載され、鉱物質繊維、無機粉状体および粉末合成樹脂結合剤を必須成分とする混合物を均一に散布して下層部を形成し、次いで、鉱物質繊維、硬質無機発泡体および粉末合成樹脂結合剤を必須成分を必須成分とする混合物を下層部の上面に均一に散布して中層部を形成し、この中層部の上面に、鉱物質繊維、無機粉状体および粉末合成樹脂結合剤を必須成分とする混合物を均一に散布して上層部を形成した後、加熱状態で圧締して一体化する方法である。
【特許文献1】特許第2825696号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記建築用板の製造方法においては、粉末合成樹脂結合剤の添加工程を必須としているが、粉末合成樹脂結合剤は慎重な添加・混合を行わないと十分に均一な混合物が得られず、その後の混合物の加熱圧締後の板に強度的なばらつきが発生するおそれがある。
【0004】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、機械的強度のばらつき、特に曲げ強度のばらつきを少なくすることを可能にする新規な建築用板の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を達成するため、請求項1にかかる本発明は、無機系繊維および有機系繊維に、前記無機系繊維と前記有機系繊維とを結合する液体状結合剤を加えた混合物を均一に散布してマットを形成し、該マットを熱圧成形することを特徴とする建築用板の製造方法である。
【0006】
請求項2にかかる本発明は、複数層から形成される建築用板の製造方法であって、その少なくとも表面層が、無機系繊維および有機系繊維に、前記無機系繊維と前記有機系繊維とを結合する液体状結合剤を加えた混合物を均一に散布してマットを形成し、該マットを熱圧成形して形成されることを特徴とする。
【0007】
請求項3にかかる本発明は、表面層と裏面層との間に少なくとも一の中間層が配されてなる建築用板の製造方法であって、該中間層が、無機系発泡体および有機系繊維に、前記無機系発泡体と前記有機系繊維とを結合する液体状結合剤を加えた混合物を均一に散布してマットを形成し、該マットを熱圧成形して形成されることを特徴とする。
【0008】
無機系繊維としては、ガラス繊維、ロックウール、スラグ繊維、炭素繊維、窒化ホウ素繊維、シリカ繊維、シリカアルミナ繊維、シリカチタニア繊維、シリコンカーバイト繊維、アルミナ繊維、ジルコニア繊維、金属繊維などを使用することができる。また、無機系繊維に代えてパーライトを使用してもよい。
【0009】
有機系繊維としては、パルプ、木質繊維、木粉などの他にビニロン繊維、アクリル繊維、ポリアミド繊維などの合成樹脂繊維を使用することができる。木質繊維は、松、杉、桧などの針葉樹またはラワン、カポール、栗、ポプラなどの広葉樹をチップにした後、常法に従い解繊したもので、その長さは0.3〜40mm、直径は0.05〜0.5mm(アスペクト比10〜400)程度である。
【0010】
液体状結合剤としては、フェノール系樹脂、ユリア系樹脂、メラミン系樹脂などの水溶性または懸濁性の熱硬化性結合剤を単体または複数を必要に応じて使用する。
【0011】
無機発泡体としては、パーライト、シラス発泡体、シリカ発泡体、ガラス発泡体などを使用することができる。
【0012】
本発明の建築用板の製造方法において、無機系繊維または無機系発泡体に有機系繊維および液体状結合剤の他に増量剤を加えると良い。増量剤としては、ペーパースラッジ焼却灰(以下、「PS灰」と記す。)、スラグ、フライアッシュ、炭化カルシウム、アルミナなどの無機粉体を加えると良い。増量剤を添加することにより、熱圧成形後の成形体の収縮を抑えて形状を保持するとともに、強度や耐熱性の向上を図ることができる。
【0013】
本発明の好ましい実施においては、無機系繊維または無機系発泡体の量を有機系繊維の量よりも多くする。すなわち、無機系繊維または無機系発泡体50〜80重量%、有機系繊維2〜20重量%、増量剤10〜30重量%、結合剤5〜15重量%を目安として各マット形成のための混合物を調製する。
【0014】
上記混合物には、さらにカップリング剤として0.1重量%程度を添加することができる。カップリング剤としては、ガンマー‐グリシド キシプロピル トリ メトキシ シランなどのシラン系を使用すると良い。カップリング剤は結合剤と無機系繊維または無機系発泡体とが反応し易くする。
【0015】
無機系繊維または無機系発泡体の量が80重量%を越えると、建築用板の硬さが増大するものの、脆くなって曲げに対する抵抗力が減少し割れ易くなる。無機系繊維または無機系発泡体の量が50重量%未満であると、基材としての不燃性能が低下し耐火性・防火性が不十分となる。
【0016】
有機系繊維の量が20重量%を越えると、十分な防火性・耐火性を得ることができない。有機系繊維量の量が2重量%未満であると、無機系繊維に対する有機系繊維の割合が小さく、建築用板の曲げに対する抵抗力が減少し割れ易くなる。
【0017】
増量剤の量が30重量%を越えると、熱圧成形後の収縮が小さく、形状を保持しつつ耐火性・防火性を確保することができるが、無機系繊維の添加量が過大であるときと同様に、脆くなって曲げ性が劣る。増量剤の量が10重量%未満であると、有機系繊維などの使用量が増加し不経済となるので好ましくない。
【0018】
結合剤の量が15重量%を越えると、熱圧成形後の収縮量が大きくなって形状や寸法の保持が困難になる。結合剤の量が5重量%未満であると、無機質繊維と有機質繊維の結合が弱くなり、建築用板としての機械的強度が劣る。
【0019】
本発明による建築用板の製造方法においては、無機系繊維または無機系発泡体、有機系繊維および増量剤に液体状結合剤を加えた混合物を散布することによりマットを形成し、これらのマットを熱圧成形することにより所要の建築用板(単層構成の場合)または建築用板の層(複数層の積層構成の場合)を得る。
【0020】
マットの熱圧成形時の圧力は、10〜30kgf/cm、温度は110〜220°C、時間は3〜20分の各範囲で行われる。熱圧成形時の加圧力、温度、時間などの選定は、無機系繊維または無機系発泡体、有機系繊維の種類、液体結合剤の種類、建築用板または層の厚みなど原材料、大きさ、使用目的、用途などにより最適の条件を決定する。
【0021】
本発明を、複数層の積層構成を有する建築用板の製造に適用する場合、ワンショット法または練り合せ法のどちらを採用しても良い。ワンショット法によるときは、上下熱圧盤の間に各層を形成するマットを順次重ね合わせて積層マットを得、これをホットプレスの上下熱盤間に載置して所定の熱圧条件により熱圧することにより建築用板を製造する。この場合、予め個々に形成した各層のマットを重ね合わせ積層マットとしても良いし、最下層の成分から順次混合物を散布することにより積層マットを形成しても良い。
【0022】
練り合せ方法を採用する場合は、各層を形成するマットごとに熱圧成形して各々に対応する板素材を製造した後、各板素材を接着剤を介して重ね合わせ、熱圧または単に加圧することにより建築用板を製造する。あるいは、上記のようにしてマットを熱圧成形した板素材を表裏層に用い、表裏層に挟まれる中間層には、合板、木質繊維板(MDFなど)、木削片板、単板積層板などの木質系、スチロール樹脂、塩化ビニル樹脂、強化プラスチック、発泡スチロール樹脂、発泡ウレタン樹脂などの各種合成樹脂板、あるいは木質系や合成樹脂系の複合積層板など適宜の板素材を使用して積層一体化して建築用板としても良い。
【0023】
複数層の建築用板の場合、表裏面層と、この表裏面層に挟まれた中間層(コア)の比重を調整することにより建築用板として最適な比重の板を形成することができる。たとえば、表面層または表裏面層の比重を1、中間層の比重を0.55とし、建築用板としての比重を0.7〜0.85となるように形成することができる。
【0024】
有機系繊維は、これに不燃化薬剤を付着させて不燃化処理を行っても良い。不燃化薬剤は、粒径5〜100μmのもの90重量%の粒径分布でなるリン酸塩系化合物、リン酸エステル系化合物である。リン酸塩系化合物としては、リン酸一アンモニウム(示性式:NH・HPO、以下同じ)、リン酸水素二アンモニウム((NH・HPO)、ポリリン酸アンモン、ポリリン酸アミド、ポリリン酸カルバメート、リン酸三カルシウム(Ca(PO)、リン酸マグネシウム、前記以外のリン酸カルシウム、リン酸バリウム、リン酸アルミニウム、リン酸亜鉛などである。
【0025】
リン酸エステル系化合物としては、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルフェニルホスフェート、トリス(ハロプロピル)ホスフェート、トリス(ハロエチル)ホスフェートなどである。
【0026】
特にリン酸塩化合物は、木質繊維中のセルロースから脱水を行い炭化することにより木質繊維自体を変質させ、不燃性能を付与するものであり、本発明における木質繊維混入により不燃性能が低下することを抑制する性能に優れている。
【0027】
有機系繊維に対する不燃化薬剤の付着量は、有機系繊維に対して15〜50重量%程度とすることが好ましい。不燃化薬剤の付着量が15重量%未満であると、有機系繊維の不燃化性能が不十分となり、建築用板としての防火性・耐火性が不十分となる。不燃化薬剤の付着量が50重量%を越えると、単位有機系繊維当りの不燃化薬剤の使用量が大きくなって不経済となる。
【発明の効果】
【0028】
本発明の建築用板は、建築建物の内外壁、間仕切壁あるいは建具のコア材などに使用できるが、特に、建築用外装板や屋根の下地材として好適に使用できる。また、無機系繊維に混合する有機系繊維を不燃化処理することにより、防火性、耐火性を有する建築用板として使用できる。
【0029】
請求項1にかかる本発明によれば、結合材として液体状結合剤を使用しているため、無機系繊維および有機系繊維に対して液滴、噴霧、攪拌などの操作により該液体状結合剤を均一に分布させたマットを得ることができ、このマットを熱圧成形することにより全体に亘ってこれら繊維の結合のばらつきが少なく、結果として機械的強度、特に曲げ強度のばらつきの少ない建築用板を製造することができる。
【0030】
また、無機系繊維に有機系繊維を混合することにより、無機系繊維単独で形成される板よりも曲げ強度などの機械的強度を向上させることができる。
【0031】
請求項2にかかる本発明によれば、複数層から形成される建築用板を製造するに際して、少なくともその表面層に対応するマットの形成において液体状結合剤を使用するので、無機系繊維および有機系繊維に対して液滴、噴霧、攪拌などの操作により該液体状結合剤を均一に分布させたマットを得ることができ、このマットを熱圧成形することにより全体に亘ってこれら繊維の結合のばらつきが少なく、結果として機械的強度、特に曲げ強度のばらつきの少ない表面層を有する建築用板を製造することができる。
【0032】
また、無機系繊維に有機系繊維を混合することにより、無機系繊維単独で形成する場合よりも曲げ強度などの機械的強度が増大するので、これを表面層に用いることにより曲げ強度などの機械的強度に優れた建築用板を製造することができる。
【0033】
請求項3にかかる本発明によれば、表面層と裏面層との間に少なくとも一の中間層が配されてなる建築用板を製造するに際して、該中間層に対応するマットの形成において液体状結合剤を使用するので、無機系発泡体および有機系繊維に対して液滴、噴霧、攪拌などの操作により該液体状結合剤を均一に分布させたマットを得ることができ、このマットを熱圧成形することにより全体に亘って無機系発泡体と有機系繊維の結合のばらつきが少なく、結果として機械的強度、特に曲げ強度のばらつきの少ない中間層を有する建築用板を製造することができる。
【0034】
また、無機系発泡体に有機系繊維を混合することにより、無機系発泡体単独で形成する場合よりも曲げ強度などの機械的強度が増大するので、これを中間層に用いることにより、無機系発泡体による軽量化を実現するとともに曲げ強度などの機械的強度に優れた建築用板を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下に本発明の好適な実施形態による建築用板の製造方法について、図面を参照して詳述する。
【実施例1】
【0036】
図1は、本発明の実施例1による建築用板の製造方法の初期工程を示す説明図である。この実施例によれば三層から形成される建築用板が製造される。
【0037】
まず、コンベヤー11上に、裏面層33に対応するマット12を形成するための混合物13を散布する。混合物13は、ロックウール1(無機系繊維)および木質繊維2(有機系繊維)に、ロックウールと木質繊維を結合するフェノール樹脂結合剤3(液体状結合剤)およびPS灰4ならびにカップリング剤(図示せず)を加えたものである。混合物13は、ダクト14よりその吹出口15からコンベヤー11上に供給される。混合物13はコンベヤー11上に均一に散布されてマット12を形成する。この際、マット12の厚みを均一にするために、ロール16にてマット12の凹凸部分を削り除去することにより平坦にする。
【0038】
次に、マット12上に、中間層(コア層)34に対応するマット17を形成するための混合物18を散布する。混合物18は、パーライト5(無機系発泡体)および木粉6(有機系繊維)に、パーライトと木粉を結合するフェノール樹脂結合剤3(液体状結合剤)およびPS灰4ならびにカップリング剤(図示せず)を加えたものである。混合物18は、ダクト19よりその吹出口20からマット12上に供給される。混合物18はマット12上に均一に散布されてマット17を形成する。この際、マット17の厚みを均一にするためロール21にてマット17の凹凸部分を削り除去することにより平坦にする。
【0039】
最後に、マット17上に、表面層35に対応するマット22を形成するための混合物23を散布する。混合物23は、混合物13と同じ成分および組成であり、ロックウール1(無機系繊維)および木質繊維2(有機系繊維)に、ロックウールと木質繊維を結合するフェノール樹脂結合剤3(液体状結合剤)およびPS灰4ならびにカップリング剤(図示せず)を加えたものである。混合物23は、ダクト24よりその吹出口25からマット17上に供給される。混合物23はマット17上に均一に散布されてマット22を形成する。この際、マット22の厚みを均一にするためロール26にてマット22の凹凸部分を削り除去することにより平坦にする。
【0040】
次に、コンベヤー11上に形成されたマット12,17,22の積層物を厚さ方向に任意の圧縮率(たとえば50%程度)で圧縮した後、図示のように鋸27により略所定の長さLに切断してマット積層体29とし、コンベヤー28にて次工程に送る。
【0041】
この実施例において、無機系繊維としてはロックウール、無機系発泡体としてはパーライトを使用するが、木質繊維は、松、杉などの針葉樹またはラワン、カポールなどの広葉樹をチップにした後、常法に従い解繊したもので、その長さは0.3〜40mm、直径は0.05〜0.5mm(アスペクト比10〜400)程度である。木粉は上記針葉樹または広葉樹から生成するものを使用する。増量剤としては、PS灰を使用する。さらに、液体状結合剤としてはフェノール樹脂結合剤を使用する。
【0042】
各マットを形成するための混合物の成分割合は、マット12を形成するための混合物13およびマット22を形成するための混合物23については、たとえば、ロックウール55重量%、木質繊維16重量%、PS灰16重量%、フェノール樹脂結合剤13重量%とする。この他にカップリング剤を0.1重量%ほど含む。マット17を形成するための混合物18については、たとえば、パーライト60重量%、木粉3重量%、PS灰30重量%、フェノール樹脂結合剤7重量%とする。この他にカップリング剤を0.1重量%ほど含む。フェノール樹脂結合剤は、ロックウールまたはパーライト、木質繊維、PS灰に対してブレンダーで混合する。
【0043】
図2は、図1に続く実施例1の建築用板の製造工程を示し、(a)は熱圧プレスの上下熱圧盤の間に三層のマット積層体29を載置した状態の断面図、(b)は熱圧成形直後の断面図である。図1に示す工程により得たマット12,17,22の積層体29を、熱圧プレス30の下側熱圧盤32の上に載置した(a)後、上側熱圧盤31を下降して、これら上下熱圧盤31,32間で加熱圧締する。熱圧条件は、たとえば圧力20kgf/cm、温度200°C、時間10分とする。これにより、マット12による裏面層33、マット17による中間層34およびマット22による表面層35からなる3層構成の建築用板36が得られる。
【0044】
この実施例において、少なくとも表面層35となるマット22を形成するための混合物23には、木質繊維に不燃化薬剤を付着させて防火性・耐火性を付与することができる。その方法としては、木質繊維を不燃化薬剤の水溶液または懸濁液に浸漬する方法を採用することができ、たとえばリン酸水素二アンモニウム(示性式:(NHHPO)の水溶液を不燃化薬剤として用いることができる。リン酸水素二アンモニウム水溶液の濃度については、リン酸水素二アンモニウムの水溶液に木質繊維を浸漬し、引き上げて乾燥した後の木質繊維重量に対して凡そ20重量%のリン酸水素二アンモニウムが付着するように調製する。このときの浸漬時間は、30〜90分を目安とする。
【0045】
また、木質繊維の別の不燃化処理として、木質繊維中で第1液と第2液とを反応させることにより不燃性無機化合物を生成させる方法を採用しても良い。すなわち、木質繊維に、水溶性無機塩の水溶液(以下「第1液」)を加えることにより第1液を含浸させた後、木質繊維を乾燥させ木質繊維の表面を乾燥状態にするか、または絶乾状態とし、必要であれば、表面に析出した第1液の成分結晶を除去した後、第1液と反応して水不溶性の不燃性無機化合物を生成するような化合物液(以下「第2液」)をブレンダー、スプレーなどを使って加える。第2液を含浸させ、木質繊維中で第1液と第2液とが反応することにより不燃性無機化合物が生成し、さらにこの化合物が水不溶性のため、細胞孔内および/または繊維外周部に付着(または固着)される。また、この反応は、第2液の添加混合時に加温し、40°C以上好ましくは50°C以上の雰囲気下で行うと反応効率が向上する。
【0046】
第1液としては塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化アルミニウム、塩化バリウム、塩化鉄(III)、塩化鉛(II)、塩化亜鉛、硫酸亜鉛などを用いることができ、第2液としては炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、リン酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、リン酸水素2ナトリウム、アンモニア水素、リン酸アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、硫化アンモニウムなどを用いることができる。
【0047】
このようにして不燃化処理された木質繊維を混合物23に用いてマット22を形成し、これを熱圧して建築用板36の表面層35とすることにより、建築用板36の防火性・耐火性を向上することができる。もちろん、裏面層33となるマット12用の混合物13および/または中間層34となるマット17用の混合物18においても、同様に木質繊維を不燃化処理して用いることができる。
【0048】
以上に説明した方法によれば、ロックウールと木質繊維を結合するため、およびパーライトと木粉を結合するための結合剤としてそれぞれ液体状のフェノール樹脂結合剤3を使用しているため、液滴、噴霧、撹拌などの容易な操作によりロックウール1、木質繊維2、パーライト5、木粉6などに対して均一に分布させたマット12,17,22を得ることができる。したがって、これらのマット12,17,22による積層体29を熱圧成形して得られる建築用板36においても、板素材全体に亘ってロックウールと木質繊維またはパーライトと木粉の結合のばらつきが少なく、その結果として曲げ強度のばらつきの少ないものとなる。
【0049】
また、ロックウールまたはパーライトに木質繊維または木粉を混合することにより、ロックウールまたはパーライト単独の板よりも曲げ強度を大きくすることができる。因みに、ロックウールに木質繊維を加えない場合の建築用板の曲げ強さに対して、ロックウールに木質繊維を10重量%加えた場合の曲げ強さは1.6倍以上であり、ロックウールに木質繊維を20重量%加えた場合の曲げ強さは2.2倍以上であった。このようにロックウールに木質繊維または木粉を加えることにより建築用板自体の曲げ強さを向上させることができる。
【0050】
さらに、中間層34にはパーライトを使用しているので、建築用板36の軽量化を図ることができる。
【実施例2】
【0051】
図3は、実施例2による建築用板の製造工程を示し、(a)は各層を形成するマットを別々に熱圧成形する状態の概略断面図、(b)は熱圧成形された板素材に接着剤を塗布し加圧する状態の概略断面図、(c)は形成された建築用板の断面図である。
【0052】
図3(a)に示すようにマット37,38,39を各別に上下熱盤間(符号なし)にて熱圧成形して板素材40,41,42を製造し、これらを接着剤を介して図3(b)に示すようにプレス43の上下加圧盤44,45間に載置して熱圧または単に加圧することにより、図3(c)に示すように、板素材40からなる裏面層46、板素材41からなる中間層47および板素材42からなる表面層48からなる3層構成の建築用板49を製造する。接着剤としては、フェノール系、ユリア系、メラミン系などの熱硬化性接着剤が好適に使用され、これをたとえば板素材40,41の各上面に塗布して、板素材40,41,42を積層する。
【0053】
裏面層46に対応するマット37、中間層47に対応するマット38および表面層48に対応するマット39は、実施例1におけるマット12,17,22を形成するために用いた混合物13,18,23と略同様の混合物を用いて成形することができる。したがって、実施例1について既述したと同様の作用効果および利点を発揮することができる。
【0054】
さらに、この実施例2の製造方法によれば、各マット37,38,39をそれぞれ別々に熱圧成形して板素材40,41,42を得ているので、各板素材40,41,42の製造に際して、建築用板49における各層46,47,48に付与すべき機能に応じた成分の混合物を用い、且つ、それに応じた熱圧条件で製造することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の一実施形態(実施例1)による建築用板の製造方法の初期工程を示す説明図である。
【図2】図1に続く製造工程を示し、(a)は熱圧プレスの上下熱圧盤の間に三層のマットを載置した状態の断面図、(b)は熱圧成形直後の断面図である。
【図3】本発明の別の実施形態(実施例2)による建築用板の製造工程を示し、(a)は各層を形成するマットを別々に熱圧成形する状態の概略断面図、(b)は熱圧成形された板素材に接着剤を塗布し加圧する状態の概略断面図、(c)は形成された建築用板の断面図である。
【符号の説明】
【0056】
12 裏面層33となるマット
13 マット12形成用の混合物
17 中間層34となるマット
18 マット17形成用の混合物
22 表面層35となるマット
23 マット22用の混合物
29 マット積層体
30 熱圧プレス
33 建築用板の裏面層
34 建築用板の中間層
35 建築用板の表面層
36 建築用板
37 裏面層用板素材40となるマット
38 中間層用板素材41となるマット
39 表面層用板素材42となるマット
40 裏面層用板素材
41 中間層用板素材
42 表面層用板素材
43 プレス
46 建築用板の裏面層
47 建築用板の中間層
48 建築用板の表面層
49 建築用板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機系繊維および有機系繊維に、前記無機系繊維と前記有機系繊維とを結合する液体状結合剤を加えた混合物を均一に散布してマットを形成し、該マットを熱圧成形することを特徴とする建築用板の製造方法。
【請求項2】
複数層から形成される建築用板の製造方法であって、その少なくとも表面層が、無機系繊維および有機系繊維に、前記無機系繊維と前記有機系繊維とを結合する液体状結合剤を加えた混合物を均一に散布してマットを形成し、該マットを熱圧成形して形成されることを特徴とする建築用板の製造方法。
【請求項3】
表面層と裏面層との間に少なくとも一の中間層が配されてなる建築用板の製造方法であって、該中間層が、無機系発泡体および有機系繊維に、前記無機系発泡体と前記有機系繊維とを結合する液体状結合剤を加えた混合物を均一に散布してマットを形成し、該マットを熱圧成形して形成されることを特徴とする建築用板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−63460(P2006−63460A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−244604(P2004−244604)
【出願日】平成16年8月25日(2004.8.25)
【出願人】(390030340)株式会社ノダ (146)
【Fターム(参考)】