説明

建築用硝子板

【課題】蓄熱性と採光性を併せ持つことができる建築用硝子板を提供することである。
【解決手段】透明な無機硝子又は有機硝子で構成された建築用硝子板1であって、カプセル5に封入された蓄熱材4を保持させる。蓄熱材4が樹脂製シート7に保持されており、樹脂製シート7を積層してなるものである。建築用硝子板1の光透過率は、好ましくは30〜70パーセント、より好ましくは40〜60パーセント、さらに好ましくは45〜55パーセントである。また、建築用硝子板1の熱遮断率は、好ましくは65〜90パーセント、より好ましくは75〜85パーセント、さらに好ましくは78〜82パーセントである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築用硝子板に関し、さらに詳細には、蓄熱材を有した建築用硝子板に関する。
【背景技術】
【0002】
ビルやマンション等において、冷暖房の高効率化を図るため、蓄熱材を含んだ窓ガラスが用いられている。これは、外気の急激な温度変化を蓄熱材で緩衝させ、室内の温度を一定に保つことを目的としている。蓄熱材は、固体から液体に相転移する際に「吸熱」し、液体から固体に相転移する際に「発熱」する。つまり、蓄熱材を含んだ窓ガラスは、蓄熱材の「潜熱」を利用したものである。特許文献1には、蓄熱材を含んだ窓ガラスが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2003−520915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の窓ガラスは、暗い色に染色された蓄熱材が、窓ガラスの上から下まで隙間なく充填されている。このことにより、前記窓ガラスは、太陽光等を吸収する効率が高く、熱エネルギーの蓄積に優れている。
【0005】
ところが、暗い色の蓄熱材が窓ガラスの全面を覆っているため、室内に光が入り難い。すなわち、採光が不十分となり、窓ガラス本来の機能を失ってしまう恐れがある。
【0006】
そこで、本発明は、蓄熱性と採光性を併せ持つことができる建築用硝子板の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための請求項1に記載の発明は、透明な無機硝子又は有機硝子で構成された建築用硝子板であって、カプセルに封入された蓄熱材を保持させることを特徴とする建築用硝子板である。
【0008】
本発明の建築用硝子板は、透明な無機硝子又は有機硝子で構成された建築用硝子板であって、カプセルに封入された蓄熱材を保持させるものである。すなわち、蓄熱材をいくつものカプセルに分けて封入可能である。このことにより、蓄熱材をカプセル単位で硝子の中に分散保持させることができる。つまり、カプセルの数量を調節することにより、所望の蓄熱量と光量を併せ持った硝子板となる。本発明の建築用硝子板によれば、カプセルに封入された蓄熱材を保持させることにより、優れた蓄熱性と採光性を併せ持つことができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、前記蓄熱材が樹脂製シートに保持されており、前記樹脂製シートを積層してなることを特徴とする請求項1に記載の建築用硝子板である。
【0010】
本発明の建築用硝子板は、前記蓄熱材が樹脂製シートに保持されており、前記樹脂製シートを積層してなるものである。本発明の建築用硝子板によれば、前記蓄熱材が保持された樹脂製シートと、透明な無機硝子又は有機硝子とを積層するだけで、優れた蓄熱性と採光性を併せ持つことができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の建築用硝子板によれば、カプセルに封入された蓄熱材を保持させることにより、優れた蓄熱性と採光性を併せ持つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態に係る建築用硝子板を示す断面図であり、(a)は蓄熱性フィラーを硝子内に保持したものであり、(b)は蓄熱性フィラーを保持した樹脂製シートが硝子に積層されたものである。
【図2】カプセルに封入された蓄熱材を示す断面図である。
【図3】建築用硝子板が取り付けられた建物の一部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下では、本発明の建築用硝子板の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の説明は、実施形態の理解を容易にするためのものであり、これによって、本発明が制限して理解されるべきではない。
【0014】
まず、本発明の実施形態に係る建築用硝子板1の構成について説明する。
【0015】
図1(a),(b)に示すように、建築用硝子板1は、硝子2と蓄熱性フィラー3を有している。
【0016】
硝子2は、透明な有機硝子や無機硝子で構成されている。有機硝子の例としては,アクリル酸メチル樹脂(PMMA)等のアクリル酸エステル重合体が挙げられる。なお、硝子2は、無色でも有色でも構わない。
【0017】
一方、蓄熱性フィラー3は、粒状である。図1(a)に示すように、蓄熱性フィラー3は、硝子2内に分散保持されている。あるいは、図1(b)に示すように、蓄熱性フィラー3を保持した樹脂製シート7を、硝子2に積層しても構わない。
【0018】
なお、蓄熱性フィラー3は、粒径が1〜50μm(マイクロメートル)程度である。
【0019】
図2に示すように、蓄熱性フィラー3は、蓄熱材4とカプセル5を有している。蓄熱材4は蓄熱性フィラー3の中心に位置し、蓄熱材4はカプセル5で覆われている。
【0020】
蓄熱材4は、蓄熱作用を有する材料であり、室温で容易に融解する材料である。ここで室温とは、摂氏0度〜摂氏35度程度を指すこととする。なお、蓄熱材4の融解温度は、選定する材料に起因する。蓄熱材4は、パラフィン等で構成されることが望ましい。
【0021】
カプセル5は、蓄熱材4への熱伝導を極力妨げない材料であって、容易に損傷しない材料で構成されることが望ましい。カプセル5は、樹脂等で構成されることが望ましい。
【0022】
つぎに、本発明の実施形態に係る建築用硝子板1の特性について説明する。
【0023】
建築用硝子板1の特性は、蓄熱材4の選定と、蓄熱性フィラー3の含量(保持量)によって決まる。
【0024】
建築用硝子板1の光透過率は、好ましくは30〜70パーセント、より好ましくは40〜60パーセント、さらに好ましくは45〜55パーセントである。
【0025】
また、建築用硝子板1の熱遮断率は、好ましくは65〜90パーセント、より好ましくは75〜85パーセント、さらに好ましくは78〜82パーセントである。
【0026】
図3に示すように、建築用硝子板1を取り付けた建物10内の快適さを体感する実験例を示す。建築用硝子板1の光透過率は50パーセントであって、熱遮断率は80パーセントとする。なお、実験は、夏場等の日差しが強い昼間に行うこととする。
【0027】
この実験において、建築用硝子板1では、太陽光並びに熱輻射の緩衝が可能である。つまり、建物10内は快適であって、蓄熱性と採光性の確保を達成できる。
【0028】
一方、建築用硝子板1の代わりに、一般的な無機ガラス20や、すりガラス30を用いた場合は、太陽光並びに熱輻射の緩衝はできない。このため、建物10内は高温となり、不快である。
【0029】
以上のように本発明の実施形態に係る建築用硝子板1では、カプセル5に封入された蓄熱材4を保持させることにより、優れた蓄熱性と採光性を併せ持つことができる。
【0030】
ここで建築用硝子板1は具体的には、屋外と屋内を仕切る開閉窓や仕切り戸の開放部に用いても良いことは当然であるが屋内を仕切る間仕切り、屋内の扉、収納部の扉、浴室の扉等に用いてもよいもので、本発明に包含されるものである。
【符号の説明】
【0031】
1 建築用硝子板
4 蓄熱材
5 カプセル
7 樹脂製シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明な無機硝子又は有機硝子で構成された建築用硝子板であって、カプセルに封入された蓄熱材を保持させることを特徴とする建築用硝子板。
【請求項2】
前記蓄熱材が樹脂製シートに保持されており、前記樹脂製シートを積層してなることを特徴とする請求項1に記載の建築用硝子板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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