説明

建設工事用仮設物

【課題】現場の1階廻りの動線を制限せずにストックヤード等の仮設設備を設置することで作業効率を向上させることができ、また、仮設設備と作業場との往復時間を短くして生産性を向上させることができる建設工事用仮設物を提供することを目的としている。
【解決手段】工事中の構造物Aに形成された上下方向に複数層に亘って延在する空間Sの中に、工事に使用される仮設設備5…を配設させる建設工事用仮設物1であって、空間S内に架設される上部支持部2と、上部支持部2から吊り下げられた懸垂材3…と、懸垂材3…を介して上部支持部2に吊持された吊り部4…とが備えられ、吊り部4…に仮設設備5…が設置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造物の建設工事や改修工事に用いられる建設工事用仮設物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建築工事現場には、仕上げ材や設備材、電設材等の資材、及び加工道具や施工道具等の機材をストックするためのストック棚(仮設設備)が設置されている(例えば、特許文献1参照。)。また、建築工事現場には、作業員が使用するための仮設トイレ(仮設設備)や、作業員の休憩所として仮設ハウス(仮設設備)が設置される場合が多い。さらに、建築工事現場には、廃材の一次集積場としてコンテナ(仮設設備)が設置される場合もある。上記したストック棚や仮設トイレ、コンテナ等の仮設設備は、通常、現場建物の1階・地下階の部分、若しくは現場建物の周囲の空きスペースに設置される場合が多い。
【0003】
また、近年では、立体駐車場の駐車スペースを資機材のストックヤードとして利用する技術が提案されている。この技術によれば、建物の1階廻りのスペースに余裕がなくても資機材をストックするスペースを確保することができる。(例えば、特許文献2参照。)。
【0004】
また、現場建物の中層階の室内を資機材のストックヤードとして利用する技術も提案されている。この技術によれば、現場建物の上層部で作業する際、資機材の出し入れに要する労力が軽減され、作業効率を向上させることができる(例えば、特許文献3参照。)。
【特許文献1】特開平8−120934号公報
【特許文献2】特開平8−86093号公報
【特許文献3】特開平11−22199号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、現場建物の1階廻りに仮設設備を設置する上記した従来の技術では、建物1階部分の余剰スペースが少ない場合、当該部分に仮設設備を設置することによって、工事車輌や作業員、資機材の移動動線が制約され、作業効率が低下して生産性に悪影響を及ぼす問題が生じる。また、建物の1階部分に仮設設備があると、作業場所と仮設設備とが離れる場合が多く、この場合、作業場所と仮設設備との間の往復に時間を要するという問題が生じる。例えば、資機材をストックするストック棚が現場建物の1階廻りに設置されていると、作業場所と仮設設備との間の往復に時間を要し、資材の供給や機材の出し入れ等に時間がかかることになる。特に、超高層建物の現場では、上記した往復時間の問題の影響が大きく、作業員の労務の歩掛りが低下することになる。また、超高層建物の現場では、現場建物の1階廻りにストック棚があると、小さくて軽量な資機材の運搬等にも工事用エレベータ等を使用する傾向にあり、当該工事用エレベータの使用予定に支障をきたし、本来、工事用エレベータで揚重すべき重量の資機材が予定通りに揚重できなくなる場合がある。
【0006】
また、立体駐車場の駐車スペースをストックヤードとする上記した従来の技術では、現場建物と立体駐車場との間に連絡通路がない場合には、現場建物の工事に使用する資機材を出し入れする際に、一旦1階まで降りてから資機材を出し入れすることになり、その往復に相当の時間を要する。
【0007】
また、現場建物の中層階の室内をストックヤードとする上記した従来の技術では、その中層階における動線を制限することになり、中層階における作業効率が低下する場合があるという問題が生じる。また、中層階の室内を一次的にストックヤードとして利用することは可能であるが、その室内の電気設備工事や内装工事等を行う際には、そこにストックされた資機材等を別の場所に移動させなければならず、余計な労力を要する。通常、建物室内は、複数の工事を順次行うことになるため、工期を考慮すると、中層階の室内を長期間ストックヤードとして利用することは難しい。
【0008】
本発明は、上記した従来の問題が考慮されたものであり、現場の1階廻りの動線を制限せずにストックヤード等の仮設設備を設置することで作業効率を向上させることができ、また、仮設設備と作業場との往復時間を短くして生産性を向上させることができる建設工事用仮設物を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載の発明は、工事中の構造物に形成された上下方向に複数層に亘って延在する空間の中に、前記工事に使用される仮設設備を配設させる建設工事用仮設物であって、前記空間内に架設される上部支持部と、該上部支持部から吊り下げられた懸垂材と、該懸垂材を介して前記上部支持部に吊持された吊り部とが備えられ、該吊り部に前記仮設設備が設置されていることを特徴としている。
【0010】
このような特徴により、工事中において未利用の空間(デットスペース)に、仮設設備が吊られた状態で配設される。
【0011】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の建設工事用仮設物において、前記上部支持部は、前記構造物の躯体間に架け渡すように該躯体上に載せられていることを特徴としている。
【0012】
このような特徴により、クレーン等を用いて、上部支持部と懸垂材と吊り部と仮設設備とを一体で吊り上げることが可能であり、建設工事用仮設物を容易に移動させることができる。
【0013】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の建設工事用仮設物において、前記上部支持部には、前記構造物の躯体間に架け渡される支持ビームが備えられており、該支持ビームは、両端が伸縮又は回動可能な構成になっていることを特徴としている。
【0014】
このような特徴により、本発明に係る建設工事用仮設物を吊り上げる際に、支持ビームの端部を収縮させることで、支持ビームの端部が躯体等に引っ掛かることが防止される。
【0015】
請求項4記載の発明は、請求項1から3のいずれかに記載の建設工事用仮設物において、前記仮設設備と前記構造物のフロアとの間には渡り設備が設けられていることを特徴としている。
【0016】
このような特徴により、仮設設備が構造物のフロアから離れて配置されても、構造物のフロアから仮設設備にアクセスが可能になるとともに、仮設設備と構造物のフロアとの隙間(開口)を塞いで落下防止を図ることができる。
【0017】
請求項5記載の発明は、請求項1から4のいずれかに記載の建設工事用仮設物において、前記仮設設備として、出入口に可動戸が設けられたコンテナを用いることを特徴としている。
【0018】
このような特徴により、本発明に係る建設工事用仮設物を移動させた場合等に、可動戸によってコンテナ内の荷が落下することを防止することができる。また、可動戸付きのコンテナであるため、その中の荷の盗難防止を図ることができるとともに雨養生も兼ねることができる。
【0019】
請求項6記載の発明は、請求項1から5のいずれかに記載の建設工事用仮設物において、前記仮設設備の前方には、構造物のフロア側に開くとともに開いた状態で開閉動がロックされる扉が設けられていることを特徴としている。
【0020】
このような特徴により、開かれた状態で扉がロックされることで、仮設設備の側方に形成される隙間(開口)が当該扉によって塞がれ、扉が開口養生枠となる。また、開かれた状態でロックされた扉が構造物の壁や柱等に掛止されることで当該扉が振れ止めとなり、吊り下げ状態の吊り部(仮設設備)の振れが抑制される。
【0021】
請求項7記載の発明は、請求項1から6のいずれかに記載の建設工事用仮設物において、前記吊り部が上下方向に間隔をあけて複数段設けられていることを特徴としている。
【0022】
このような特徴により、構造物の複数の層に仮設設備をそれぞれ配置させることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る建設工事用仮設物によれば、工事中において未利用の空間に仮設設備が吊られた状態で配設されるため、現場の1階廻りの動線を制限せずにストックヤード等の仮設設備を設置することができ、作業効率を向上させることができる。また、仮設設備を構造物の中層階や上層階に配置させることができるため、仮設設備と作業場との往復時間を短くすることができ、これによって、生産性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明に係る建設工事用仮設物の実施の形態について、図面に基いて説明する。
【0025】
図1は本実施の形態における建設工事用仮設物1を側面から観た立面図であり、図2は本実施の形態における建設工事用仮設物1を正面から観た立面図である。図1,図2に示すように、建設工事用仮設物1は、例えば、多層構造物Aの新築工事或いは改修工事において使用される仮設物であって、構造物Aに形成されたエレベータシャフト空間(以下、EVシャフト空間Sと記す。)の中に設置されている。このEVシャフト空間Sは、図示せぬ本設のエレベータの昇降路となる空間であって、構造物Aの各階のフロアF…を貫通して形成された上下方向に複数層に亘って延在する空間である。なお、建設工事用仮設物1は、図示せぬ本設エレベータを設置する前の工事期間中にEVシャフト空間Sに設置される仮設物であり、本設エレベータを設置する際には撤去されるものである。
【0026】
建設工事用仮設物1は、工事期間中のEVシャフト空間Sの中に例えば資機材をストックするためのコンテナ5…(仮設設備)を配設させるものであり、EVシャフト空間S内に架設される上部支持部2と、上部支持部2から吊り下げられた複数の懸垂材3…と、これらの懸垂材3…を介して上部支持部2に吊持された吊り部4…とが備えられた構成からなる。
【0027】
図3は本実施の形態における上部支持部2を側面から観た側面図であり、図4は本実施の形態における上部支持部2を正面から観た側面図である。
図3,図4に示すように、上部支持部2は、構造物Aの上方躯体に建設工事用仮設物1の全荷重を預けるための部位であり、EVシャフト空間S上層部にある大梁Gと小梁Bとの間に架け渡すように当該大梁Gと小梁Bとの上に載せられている。上部支持部2は、大梁Gおよび小梁Bの上に載せられた部分が伸縮可能になっており、具体的な構成としては、大梁Gと小梁Bとの間に架け渡される複数本実施の形態では2本)の支持ビーム6,6と、複数の支持ビーム6,6間に架け渡された複数(本実施の形態では2本)の吊持ビーム7,7とを備えた構成となっている。
【0028】
支持ビーム6は、筒状の本体部6aの両端にロッド状の両端部6b,6bがそれぞれ挿装された構成からなるアウトリガー方式のビーム材であり、その両端部6b,6bが本体部6aの両端に出し入れされる構成からなる。支持ビーム6の両端部6b,6bが大梁Gや小梁Bの上に載置されることで、支持ビーム6が大梁Gと小梁Bとの間に架設されている。
【0029】
吊持ビーム7は、その両端に懸垂材3…を吊持する長尺部材であり、H型鋼等の鋼材からなる本体部7aの両端に三角形状の鋼材からなるブラケット部7b,7bがボルト接合等によって付設された構成からなる。吊持ビーム7,7は、支持ビーム6,6に直交させて配置されており、支持ビーム6,6と吊持ビーム7,7とはロ型(井桁状)に組まれている。なお、吊持ビーム7は、その本体部7aが複数の支持ビーム6,6の本体部6a,6a上に載せられて当該本体部6a,6aにボルト接合や溶接接合等によって固定されることで、支持ビーム6,6上に取り付けられている。また、ブラケット部7b,7bは、支持ビーム6,6から側方に張り出された状態で設けられている。
【0030】
また、支持ビーム6,6の本体部6a,6a間には、支持ビーム6,6間の開口を塞ぐための開口養生部8が形成されている。この開口養生部8は、複数の足場板等を支持ビーム6,6間に敷設した構成からなる。また、両側の支持ビーム6,6の本体部6a,6aの上面には手摺9,9がそれぞれ付設されている。この手摺9,9は、支持ビーム6,6の軸方向に沿って立てられている。
【0031】
図1,図2に示すように、懸垂材3は、吊り部4を吊り下げるための吊り材であり、ネジ鉄筋からなる条材である。この懸垂材3は、複数のネジ鉄筋材3a…同士が連結用スリーブ3b…を介して連結された構成からなり、各々の上端部が上記した上部支持部2に固定されて上部支持部2から吊り下げられ、EVシャフト空間Sの高さ方向に沿って延在されている。具体的には、図3,図4に示すように、吊持ビーム7,7のブラケット部7b…にはそれぞれ図示せぬ貫通孔が形成されており、これらの貫通孔に懸垂材3…の上端がそれぞれ挿通されてロックナット等の固定具10…によって固定され、各吊持ビーム7,7の両端(ブラケット部7b…)から懸垂材3…がそれぞれ吊り下げられている。なお、懸垂材3…として、ネジ鉄筋以の鋼棒や鋼材、ワイヤーロープ、吊りチェーン等を用いることもできる。
【0032】
図5は本実施の形態における吊り部4の断面図であり、図6は本実施の形態における吊り部4の平面図である。
図5,図6に示すように、吊り部4は、コンテナ5を載せるための架台であり、並列に配置された複数(本実施の形態では2本一対)の吊りビーム11,11から構成されている。吊りビーム11は、2本の懸垂材3,3によって両端が吊持された長尺部材であり、H型鋼等の鋼材からなる本体部11aの両端に三角形状の鋼材からなるブラケット部11b,11bがボルト接合等によって付設された構成からなる。吊りビーム11のブラケット部11b,11bには、図示せぬ貫通孔がそれぞれ形成されており、これらの貫通孔に懸垂材3,3がそれぞれ挿通されてロックナット等の固定具12,12によってそれぞれ固定されている。また、上記した構成からなる吊り部4…は、上下方向に間隔をあけて複数段設けられている。具体的には、構造物Aの各フロアF…に対応する位置に吊り部4…がそれぞれ設けられた、つまり、各フロアF…毎に吊り部4…が配設された構成になっている。
【0033】
コンテナ5は、公知の汎用コンテナであり、前面(構造物AのフロアF側の面)の出入口5aにシャッター5b(可動戸)が設けられた構成からなる。このコンテナ5は、吊り部4上に載置されており、具体的には、一対の吊りビーム11,11上に架け渡された状態で設置されている。また、コンテナ5は、吊りビーム11,11に対してボルト接合や溶接等によって固定されている。なお、上記したシャッター5bを開き戸や引き戸等に代えることも可能である。
【0034】
また、建設工事用仮設物1には、各コンテナ5…の前方(構造物AのフロアF側)に配設された扉13…が備えられている。この扉13は、構造物AのフロアF側に開く開き戸であって、コンテナ5の前面両側にそれぞれ配置された上下方向に延在する扉支持用単管14,14と、扉支持用単管14,14に軸支された2枚の扉体15,15とからなる。扉支持用単管14は、下端がその階のコンテナ5を載置する吊り部4の吊りビーム11に固定されているとともに上端が上層階の吊り部4の吊りビーム11に固定されており、上下の吊り部4(前方側の吊りビーム11,11)間に架設されている。扉体15は、その一方の側端部が扉支持用単管14に回転可能に取り付けられており、2枚の扉体15,15は、観音開き式に開閉される。なお、扉13が閉じられた状態のとき、扉体15,15は、コンテナ5の前面に対向配置されてEVシャフト空間Sの内側に配設され、反対に扉13が開けられた状態のとき、両側の扉体15,15は、平面視ハ字状に開かれ、コンテナ5前方にある壁体Wの前方にそれぞれ張り出されて壁体Wにそれぞれ掛止される。また、扉13には、上記開けられた状態で開閉動をロックする図示せぬロック機構(例えばピン式)が備えられており、このロック機構によって、扉体15,15は、開けられた状態のまま動かないようにロックされる。なお、後述するように建設工事用仮設物1を吊り上げる際、扉体15,15は閉じられた状態でロックされる。
【0035】
また、建設工事用仮設物1には、各コンテナ5…と構造物Aの各階のフロアF…との間にそれぞれ設けられた渡り設備16…が備えられている。この渡り設備16は、コンテナ5とフロアFとを繋ぐスロープ状の設備であって、コンテナ5の前方側の一辺に沿って延在する盤状のスロープ部材17からなる。このスロープ部材17は、可倒式の部材であり、吊り部4のフロアF側(前方側)の側部(一対の吊りビーム11,11のうちのフロアF側の吊りビーム11)に鉛直方向に回転可能に取り付けられている。なお、後述するように建設工事用仮設物1を吊り上げる際、スロープ部材17は起こされて、閉じられた扉体15,15の内側に格納される。
【0036】
次に、上記した構成からなる建設工事用仮設物の組立方法について説明する。
【0037】
まず、予め、工場や現場の組立ヤード等で、支持ビーム6,6及び吊持ビーム7,7、開口養生部8、手摺9,9を組み立てて上部支持部2を形成しておく。また、吊り部4及びコンテナ5、扉13、渡り設備16からなるストッカーユニット18を複数準備しておく。ストッカーユニット18は、吊り部4の上にコンテナ5を設置するとともに、前方側の吊りビーム11に扉支持用単管14,14を立設させてコンテナ5の前方に扉13を設け、さらに、前方側の吊りビーム11に渡り設備16を取り付けることで、組み立てられる。
【0038】
次に、組み立てられた上部支持部2に玉掛けワイヤTを玉掛けし、この玉掛けワイヤTを介して上部支持部2を図示せぬクレーン等の揚重装置によって吊り上げ、上部支持部2をEVシャフト空間Sの内部に移動させる。そして、上部支持部2をクレーン等で吊った状態のまま、上部支持部2の吊持ビーム7,7の両端に懸垂材3…を構成するネジ鉄筋材3a…をそれぞれ取り付ける。図示せぬフォークリフト等を用いて、ストッカーユニット18を懸垂材3…に取り付ける。
【0039】
その後、クレーン等で吊った状態のまま、上部支持部2の吊持ビーム7,7の両端から吊り下げられたネジ鉄筋材3a…の下端に連結用スリーブ3b…を介して別のネジ鉄筋材3a…をそれぞれ連結し、懸垂材3…を継ぎ足していくとともに、上記したストッカーユニット18の下方に別のストッカーユニット18…を順次取り付けていく。
また、仕上げ進捗に伴い、各階又は数階ごとに建設工事用仮設物1を盛替える場合も、クレーン等で建設工事用仮設物1を一括で吊り上げて移動させる。
【0040】
上記した構成からなる建設工事用仮設物1によれば、EVシャフト空間S内に架設される上部支持部2と、上部支持部2から吊り下げられた懸垂材3…と、懸垂材3…を介して上部支持部2に吊持された吊り部4…とが備えられ、吊り部4…にコンテナ5…が設置された構成からなるため、工事中において未利用の空間であったEVシャフト空間Sに、コンテナ5…が吊られた状態で配設される。これによって、現場の1階廻りの動線を制限せずに、資機材をストックするためのコンテナ5…を設置することができ、作業効率を向上させることができる。また、コンテナ5…を構造物Aの中層階や上層階に配置させることができるため、小資材や道具を作業階近傍にストックすることができる。これによって、コンテナ5…と作業場との往復時間を短くして資材の供給や道具の出し入れのための時間を大幅に短くすることができる。そして、その分の時間を組立などの実効のある作業時間に振り返ることで、生産性を向上させることができる。また、ある程度まとまった量の小資材を上層階にストックしておくことができるため、1階からの供給頻度が減り、構造物Aが高層建物である場合でも、工事用エレベータの負荷軽減を図ることができる。
【0041】
また、上記した建設工事用仮設物1は、上部支持部2が、構造物Aの躯体である大梁Gと小梁Bとの間に架け渡すように当該大梁G及び小梁B上に載せられた構成になっている。このような構成により、クレーン等を用いて、建設工事用仮設物1を一括で吊り上げることが可能であり、建設工事用仮設物1を容易に移動させることができる。
【0042】
また、上記した建設工事用仮設物1は、上部支持部2に、構造物Aの躯体である大梁Gと小梁Bとの間に架け渡される支持ビーム6,6が備えられており、この支持ビーム6,6の両端が伸縮可能な構成になっている。このような構成により、建設工事用仮設物1を吊り上げる際に、支持ビーム6,6の端部がEVシャフト空間S内の躯体部分に引っ掛かることが防止される。これによって、建設工事用仮設物1の吊り上げ作業をスムーズに行うことができる。
【0043】
また、上記した建設工事用仮設物1は、コンテナ5…と構造物AのフロアF…との間に渡り設備16…が設けられた構成になっている。このような構成により、コンテナ5が構造物AのフロアFから離れて配置されている場合であっても、構造物AのフロアFからコンテナ5にアクセスが可能になる。また、コンテナ5と構造物AのフロアFとの隙間(開口)を塞いでその隙間からの落下や転落を防止することができる。
【0044】
また、上記した建設工事用仮設物1は、吊り部4上に載置させる仮設設備として、出入口出入口5aにシャッター5bが設けられたコンテナ5を用いた構成になっている。このような構成により、建設工事用仮設物1を吊り上げて移動させた時に、シャッター5bによってコンテナ5内の荷が落下することを防止することができる。また、シャッター5b付きのコンテナ5であるため、その中の荷の盗難防止を図ることができ、さらに、雨養生も兼ねることができる。
【0045】
また、上記した建設工事用仮設物1は、コンテナ5…の前方に、構造物AのフロアF側に開くとともに開いた状態で開閉動がロックされる扉13…が設けられた構成になっている。このような構成により、開かれた状態で扉13がロックされることで、コンテナ5の両側方に形成される隙間が当該扉13の扉体15,15によって塞がれて扉13が開口養生枠となる。これによって、上記隙間からの落下や転落を防止することができる。また、開かれた状態でロックされた扉13が構造物Aの壁体Wに掛止されることで当該扉13が振れ止めとなり、吊り下げ状態の吊り部4…やコンテナ5…の振れが抑制される。これによって、地震等のときに、コンテナ5が構造物AのフロアFから離れることを防止することができ、安全性を向上させることができる。
【0046】
また、上記した建設工事用仮設物1は、吊り部4…が上下方向に間隔をあけて複数段設けられた構成になっている。このような構成により、構造物Aの各層にコンテナ5…をそれぞれ配置させることができる。
【0047】
また、コンテナ5は、汎用コンテナを用いることができるため、多岐にわたるEVシャフト空間Sの内法寸法に対応することができ、また、コンテナ5以外の部材も殆ど汎用品であるため、特注部品が殆どいらず、安価に実現することができる。
【0048】
以上、本発明に係る建設工事用仮設物の実施の形態について説明したが、本発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、上記した実施の形態では、EVシャフト空間Sの中に建設工事用仮設物1を設置しているが、本発明は、EVシャフト空間S以外の上下方向に複数層に亘って延在する空間の中に本発明に係る建設工事用仮設物を設置することができ、例えば、構造物に形成された吹き抜け空間の中に本発明に係る建設工事用仮設物を設置してもよい。
【0049】
また、上記した実施の形態では、資機材をストックするためのコンテナ5を吊り部4の上に設置しているが、本発明は、吊り部の上にコンテナ以外の仮設設備を設置してもよく、例えば、廃材等を一次的に集積させる集積用コンテナであってもよく、また、作業員の休憩室となる仮設ハウスでもよく、さらに、作業員が使用する仮設トイレ、仮設シンク、仮設シャワールーム等であってもよい。また、吊り部の上にパレットを載せたり、足場板等を敷設したりして、ストックヤードを形成してもよく、或いは、単管や建枠、アンチ等の仮設材で組まれたストック棚等を吊り部に設置してもよい。
【0050】
また、上記した実施の形態では、4本の懸垂材3…によって吊り部4…が吊持されているが、本発明は、例えば仮設設備や吊り部の重量が大きい等の事情により、5本以上の懸垂材によって吊り部を吊持させてもよく、また、例えば懸垂材としてH型鋼等の鋼材を使用する等して、3本以下の懸垂材によって吊り部を吊持させてもよい。
【0051】
また、上記した実施の形態では、上部支持部2が、大梁Gと小梁Bとの間に架け渡される支持ビーム6,6と懸垂材3…を吊持する吊持ビーム7,7とをロ型に組んだ構成からなるが、本発明は、上記した上部支持部2に限定されるものではなく、例えば、支持ビームと吊持ビームとをH型、コ型或いはその他の形に組んだ構成からなる上部支持部であってもよく、また、躯体間に架設されたビームに懸垂材を直接吊持させる構成からなる上部支持部であってもよい。さらに、本発明は、ビーム部材以外の部材で上部支持部を形成してもよく、例えば、ロッド状或いは板状の部材を立方体状、盤状或いはその他の形状に組んだ構成からなる上部支持部であってもよい。
【0052】
また、上記した実施の形態では、吊り部4は、並列配置された2本の吊りビーム11,11から構成されているが、本発明は、上記した吊りビーム11,11からなる吊り部4に限定されるものではなく、例えば、吊りビームをロ型、H型、コ型或いはその他の形状に組んだ構成からなる吊り部であってもよく、また、板状或いはパレット状の吊り部であってもよい。
【0053】
また、上記した実施の形態では、上部支持部2が大梁Gと小梁Bとの間に架け渡すように載せられているが、本発明は、上部支持部が構造物の躯体に固定されていてもよい。これによって、建設工事用仮設物をそのまま吊り上げることはできなくなるが、地震や不慮の事態によって上部支持部がずれて動くことを防止することができる。
【0054】
また、上記した実施の形態では、支持ビーム6,6の両端部6b,6bが伸縮可能な構成になっているが、本発明は、支持ビームの両端が回動可能になっていてもよく、例えば、上部支持部を構成する支持ビームの両端部が、回転軸を介して支持ビームの本体部に回動可能に取り付けられていてもよい。さらに、本発明は、上部支持部を構成する支持ビームの両端が伸縮しなくてもよい。これによって、安価な支持ビームを使用することができる。
【0055】
また、上記した実施の形態では、建設工事用仮設物1には、扉13や渡り設備16が備えられているが、本発明は、上記した扉や渡り設備が備えられていない構成であってもよく、或いは、上記した扉や渡り設備と異なる構成の扉や渡り設備が備えられていてもよい。例えば、上記した実施の形態では、観音開き式の扉13が設けられているが、本発明は、片側開きの扉が設けられていてもよい。また、上記した実施の形態では、スロープ上の渡り設備16が設けられているが、本発明は、フラットな渡り設備が設けられていてよく、または、階段状の渡り設備が設けられていてもよい。
【0056】
また、上記した実施の形態では、コンテナ5の出入口5aに、可動戸であるシャッター5bが設けられているが、本発明は、可動戸が設けられていないコンテナを用いてもよい。
また、上記した実施の形態では、吊り部4…が上下方向に間隔をあけて複数段設けられており、構造物Aの各フロアF…にコンテナ5…が配設されているが、本発明は、吊り部が1つだけ吊持されている構成であってもよく、或いは吊り部が横並びに複数配設された構成であってもよい。また、吊り部が構造物の複数フロア毎に設けられ、コンテナ等の仮設設備が複数フロア毎に配設されていてもよい。
【0057】
その他、本発明の主旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明に係る実施の形態を説明するための建設工事用仮設物の側面図である。
【図2】本発明に係る実施の形態を説明するための建設工事用仮設物の側面図である。
【図3】本発明に係る実施の形態を説明するための上部支持部の側面図である。
【図4】本発明に係る実施の形態を説明するための上部支持部の側面図である。
【図5】本発明に係る実施の形態を説明するための吊り部の断面図である。
【図6】本発明に係る実施の形態を説明するための吊り部の平面図である。
【符号の説明】
【0059】
1 建設工事用仮設物
2 上部支持部
3 懸垂材
4 吊り部
5 コンテナ(仮設設備)
5a 出入口
5b シャッター(可動戸)
6 支持ビーム
13 扉
16 渡り設備
A 構造物
B 小梁(躯体)
F フロア
G 大梁(躯体)
S EVシャフト空間(空間)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
工事中の構造物に形成された上下方向に複数層に亘って延在する空間の中に、前記工事に使用される仮設設備を配設させる建設工事用仮設物であって、
前記空間内に架設される上部支持部と、該上部支持部から吊り下げられた懸垂材と、該懸垂材を介して前記上部支持部に吊持された吊り部とが備えられ、
該吊り部に前記仮設設備が設置されていることを特徴とする建設工事用仮設物。
【請求項2】
請求項1記載の建設工事用仮設物において、
前記上部支持部は、前記構造物の躯体間に架け渡すように該躯体上に載せられていることを特徴とする建設工事用仮設物。
【請求項3】
請求項2記載の建設工事用仮設物において、
前記上部支持部には、前記構造物の躯体間に架け渡される支持ビームが備えられており、該支持ビームは、両端が伸縮又は回動可能な構成になっていることを特徴とする建設工事用仮設物。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の建設工事用仮設物において、
前記仮設設備と前記構造物のフロアとの間には渡り設備が設けられていることを特徴とする建設工事用仮設物。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の建設工事用仮設物において、
前記仮設設備として、出入口に可動戸が設けられたコンテナを用いることを特徴とする建設工事用仮設物。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の建設工事用仮設物において、
前記仮設設備の前方には、構造物のフロア側に開くとともに開いた状態で開閉動がロックされる扉が設けられていることを特徴とする建設工事用仮設物。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の建設工事用仮設物において、
前記吊り部が上下方向に間隔をあけて複数段設けられていることを特徴とする建設工事用仮設物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−255044(P2007−255044A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−80346(P2006−80346)
【出願日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【Fターム(参考)】