説明

建設工事監視システム

【課題】電源ケーブルの使用を軽減できる建設工事監視システムを提供する。
【解決手段】支持部材48に支持され建設機械20が稼働する作業台24と、建設工事に伴って発生する振動を計測する計測装置38と、作業台24に取り付けられ電源ケーブルを通じて計測装置38へ電力を供給する振動発電装置28と、計測装置38により計測された振動に基づく情報を知らせる情報提供手段44と、を有する建設工事監視システム14により、電源ケーブルの使用を軽減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設工事に伴って発生する振動や音を低減する建設工事監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
新築、改修又は解体工事等の建設工事に伴って発生し、これらの建設工事が行われる建設現場から周辺地域へ伝搬される振動や音を低減することが求められている。
【0003】
例えば、特許文献1には、建設現場内又はその近傍に騒音計を配置し、この騒音計により取得された騒音データの騒音レベルが管理値を超えたときに作業者へ警告を発する、騒音の監視低減方法が開示されている。
【0004】
このような騒音の監視低減方法においては、商用電源から騒音計へ電力を供給する電源ケーブルを敷設しなければならない。しかし、建設現場内で商用電源を確保し、建設作業の邪魔にならないように電源ケーブルを敷設するのは面倒である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−83803号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は係る事実を考慮し、電源ケーブルの使用を軽減できる建設工事監視システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、支持部材に支持され、建設工事を行う建設機械が稼働する作業台と、前記建設工事に伴って発生する振動又は音を計測する計測装置と、前記作業台に取り付けられ、前記作業台に生じる振動を電力に変換し電源ケーブルを通じて該電力を前記計測装置へ供給する振動発電装置と、前記計測装置により計測された振動又は音に基づく情報を知らせる情報提供手段と、を有する建設工事監視システムである。
【0008】
請求項1に記載の発明では、作業台に取り付けられた振動発電装置から計測装置へ電源ケーブルを通じて電力を供給するので、電源を商用電源とする場合よりも、電源ケーブルの長さを短くすることが可能になり、建設工事の邪魔にならないように電源ケーブルを敷設することが可能になる。また、電源ケーブルの敷設手間や盛替手間を軽減することが可能になる。すなわち、電源ケーブルの使用を軽減することができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、前記情報提供手段は、前記計測装置により計測された振動又は音の大きさが所定値以上のときに警告する警告手段である。
【0010】
請求項2に記載の発明では、警告手段により警告することによって、良好な近隣環境や作業環境等を考慮して決められた大きさ以上の振動や音を出さない作業を行う必要があることを、建設作業員等に明確に伝えることができる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、前記支持部材は、弾性体である。
【0012】
請求項3に記載の発明では、弾性体によって作業台を支持することにより、柔らかい弾性体による防振効果が得られるので、建設機械から建設工事現場の周辺地域へ伝達される振動を低減することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明は上記構成としたので、電源ケーブルの使用を軽減できる建設工事監視システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係る建物を示す立面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る建設工事監視システムを示す説明図である。
【図3】本発明の実施形態に係る積込作業階を示す正面図である。
【図4】本発明の実施形態に係る振動発電装置の取り付け構造を示す断面図である。
【図5】本発明の実施形態に係る加速度計及びトリガー装置の取り付け構造を示す断面図である。
【図6】本発明の実施形態に係る作業台を示す正面図である。
【図7】本発明の実施形態に係る建物を示す立面図である。
【図8】本発明の実施形態に係る振動発電装置の取り付け構造の変形例を示す断面図である。
【図9】本発明の実施形態に係る建物を示す立面図である。
【図10】本発明の実施例に係る計測時間に対する振動加速度を示す線図である。
【図11】本発明の実施例に係る計測時間に対する振動加速度を示す線図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。まず、本発明の実施形態に係る建設工事監視システムについて説明する。
【0016】
本発明の実施形態では、図1の立面図に示すように、地盤10の上に建てられた鉄筋コンクリート造の建物12の解体工事を建設工事の一例とし、この解体工事に対して建設工事監視システム14を適用した例を示す。
【0017】
図1には、地上7階の解体作業階16で行われている解体作業によって発生したコンクリート破砕ガラ等の解体廃材18を、解体作業階16に配置されたバックホー100により、地上1階の積込作業階22に設置された作業台24の上へ落とし、作業台24の上へ落とされた解体廃材18を、積込作業階22や建物12の周囲に配置されたバックホー20により、ダンプトラック26へ積み込んで搬出している解体工事の状況が描かれている。
【0018】
図2に示すように、建設工事監視システム14は、作業台24、振動発電装置28、蓄電装置30、バッテリー32、トリガー装置34、切替スイッチ36、計測装置としての加速度計38、制御装置40、及びパトライト42、102によって構成されている。また、加速度計38、制御装置40、及びパトライト42、102によって、情報提供手段としての警告手段44を構成している。
【0019】
図1、3に示すように、作業台24は、鉄板からなり、建物12の積込作業階22に設けられている床版46の上、及び建物12周囲の地盤10の上に、複数敷き並べられている。また、作業台24は、床版46及び地盤10の上に設置された支持部材である弾性体としての自動車用のタイヤ48に支持されている。作業台24の上では、解体工事を行うバックホー20やダンンプトラック26等の建設機械が稼動する。
【0020】
図3、4に示すように、振動発電装置28は、筐体50内に設けられている。筐体50は、上端部が作業台24の下面に固定されて吊り下げられた鋼製のアーム部材52の下端部と、下端部が筐体50の上面に固定されて立設された鋼製のアーム部材54の上端部とを、ボルト56及びナット58で接合することによって、作業台24に取り付けられている。
【0021】
筐体50は、床版46に形成された貫通穴60へアーム部材52を貫通させて設けることによって、床版46の下面よりも下の位置に配置されている。これによって、作業台24への筐体50の取り付け作業(ボルト56及びナット58による、アーム部材52の下端部と、アーム部材54の上端部との接合作業)や振動発電装置28のメンテナンス作業等を、作業台24の設置が完了した後に、地下階62(床版46の下方の空間)において行うことができる。なお、貫通穴60は、作業台24が振動しているときに、アーム部材52、54や筐体50が床版46に接触しないように形成する。なお、上下方向に対して筐体50を出し入れ可能となるように、貫通穴60を形成し、作業台24に筐体50を取り付けた状態で、床版46の上に作業台24を設置するようにしてもよい。
【0022】
振動発電装置28は、作業台24に発生しアーム部材52、54を介して筐体50へ伝達された振動を電力に変換し電源ケーブル(不図示)を通じて、この電力を蓄電装置30へ供給する。
【0023】
振動発電装置28は、コイルばね64、錘66、棒状の磁石68、及びコイル70によって構成された電磁誘導型の発電装置である。錘66は、コイルばね64によって、筐体50の底面上に揺動可能に支持されており、この錘66とコイルばね64とによって、振動増幅機構72を構成している。また、コイル70は、筐体50の天井面に上端部が固定されて吊り下げられており、磁石68は、錘66の上面に下端部が固定されて立設され、上下方向へ移動可能にコイル70に挿入されている。
【0024】
このような構成によって、作業台24に発生しアーム部材52、54を介して筐体50に振動が伝達されると、磁石68が上下方向へ揺動する。これにより、コイル70に対して磁石68が相対移動を繰り返し、電磁誘導の原理によってコイル70から誘導起電力である交流の電力が発生する。コイル70から発生した交流の電力は、筐体50内に設けられた整流回路(不図示)により直流の電力に変換された後に、電源ケーブル(不図示)を通じて蓄電装置30へ送られる。
【0025】
図3に示すように、蓄電装置30及びバッテリー32は、筐体74内に設けられている。筐体74は、床版46の下面に取り付けられている。蓄電装置30は、充電キャパシタ及び充電回路を備え、筐体50の整流回路から送られてきた直流の電力を昇圧又は減圧して、バッテリー32や加速度計38に適した電圧となるように調整する。
【0026】
図3、5に示すように、トリガー装置34、切替スイッチ36、加速度計38、及び制御装置40は、筐体76内に設けられている。筐体76は、上端部が作業台24の下面に固定されて吊り下げられた鋼製のアーム部材78の下端部と、下端部が筐体76の上面に固定されて立設された鋼製のアーム部材80の上端部とを、ボルト82及びナット84で接合することによって、作業台24に取り付けられている。筐体74、76は、筐体50の近くに配置されている。
【0027】
筐体76は、床版46に形成された貫通穴86へアーム部材78を貫通させて設けることによって、床版46の下面よりも下の位置に配置されている。これによって、作業台24への筐体76の取り付け作業(ボルト82及びナット84による、アーム部材78の下端部と、アーム部材80の上端部との接合作業)や、トリガー装置34、切替スイッチ36、加速度計38、及び制御装置40のメンテナンス作業等を、作業台24の敷設が完了した後に、地下階62(床版46の下方の空間)において行うことができる。なお、貫通穴86は、作業台24が振動しているときに、アーム部材78、80や筐体76が床版46に接触しないように形成する。なお、上下方向に対して筐体76を出し入れ可能となるように、貫通穴86を形成し、作業台24に筐体76を取り付けた状態で、床版46の上に作業台24を設置するようにしてもよい。
【0028】
加速度計38への電力は、切替スイッチ36を介してバッテリー32から供給される。これによって、作業台24に発生する振動の振動数や振幅が不十分等の理由により、加速度計38を正常に稼動させることができるだけの電力が振動発電装置28から得られない場合においても、予め電力を蓄えておいたバッテリー32から加速度計38へ、加速度計38を正常に稼動させることができるだけの電力を供給することができる。
【0029】
切替スイッチ36のON/OFFの切り替えは、トリガー装置34から切替スイッチ36へ送られる電圧出力の有無によって行なわれる。トリガー装置34は、先端部に錘88が設けられ末端部が筐体76の内壁鉛直面90に固定された板状の弾性部材92と、弾性部材92の上下面に貼り付けられた圧電素子94、96とを備える圧電バイモルフ型の振動発電装置である。
【0030】
トリガー装置34では、作業台24に発生した振動が筐体76へ伝達されると錘88が上下動して、弾性部材92は、先端部が上方へ向かう曲げ変形と、先端部が下方へ向かう曲げ変形とを繰り返す。これにより、圧電素子94、96に歪が生じてこの圧電素子94、96から高電圧の電流が切替スイッチ36へ出力される。そして、この電流の出力をトリガー信号にして切替スイッチ36がON状態となり、バッテリー32から加速度計38へ電力が供給される。また、筐体76へ振動が伝達されない(トリガー装置34から切替スイッチ36へ高電圧の電流が出力されない)ときには、切替スイッチ36がOFF状態となり、バッテリー32から加速度計38への電力が遮断される。
【0031】
よって、このようなトリガー装置34を用いることによって、解体工事が休止されている時間帯も含めて加速度計38を常に稼働させることによりバッテリー32の電力が足りなくなってしまうことを防ぐことができる。なお、加速度計38や制御装置40等には、省電力タイプのものを用いるのが好ましい。
【0032】
パトライト42は、積込作業階22の天井面(建物12の2階の床版98の下面)に取り付けられており、解体廃材18の積み込み作業を行うバックホー20やダンプトラック26のオペレータ等の作業員(以下、「積込作業員」とする)は、パトライト42の点灯又は消灯の状態を作業中に確認ことができる。また、パトライト102は、解体作業階16の天井面(建物12の屋上階の床版104の下面)に取り付けられており、解体作業階16での解体作業を行うバックホー100のオペレータ等の作業員(以下、「解体作業員」とする)は、パトライト102の点灯又は消灯の状態を作業中に確認ことができる。なお、パトライト42、102は、床版、柱、壁等の取り付け部への取り付け及び取り外しを容易に行うことができ、解体工事の状況に応じて適宜移設する。
【0033】
加速度計38は、解体工事に伴って発生する振動を計測し計測データとしての信号を制御装置40へ出力する。制御装置40は、フィルタ(不図示)及びコンパレータ(不図示)を備えており、加速度計38から出力された信号の内、所定の周波数帯以外の周波数帯成分をフィルタでカットし、カットされて残った信号の大きさが閾値を超えるか否かをコンパレータで判断する。そして、カットされて残った信号が閾値を超える場合には、コンパレータからパトライト42、102へ信号ケーブル(不図示)を介して信号が送られてパトライト42、102が点灯する。
【0034】
すなわち、制御装置40は、加速度計38により計測された振動の大きさが所定値以上のときにパトライト42、102を点灯して、積込作業員及び解体作業員に警告する。これによって、積込作業員及び解体作業員は、解体工事において建物12内に大きい振動が発生したことを知り、良好な近隣環境や作業環境等を考慮して決められた大きさ以上の振動を出さない作業を行うように注意することができる。
【0035】
次に、本発明の実施形態に係る建設工事監視システムの作用と効果についてについて説明する。
【0036】
図1、2に示すように、建物12の解体工事において、作業台24の上でバックホー20が稼動したり、作業台24の上をダンプトラック26が走行したり、又は解体作業階16で行われる解体作業により発生したコンクリート破砕ガラ等の解体廃材18が作業台24の上へ落下したりすることによって、作業台24に振動が発生すると、この振動が筐体50と筐体76とへ伝達される。
【0037】
バックホー20の稼動時における動作としては、作業台24の上での走行動作、作業台24の上へ落とされた解体廃材18の収集動作、作業台24の上へ落とされた解体廃材18のダンプトラック26へ積み込み動作等が挙げられる。
【0038】
作業台24の振動が筐体50へ伝達されることにより、振動発電装置28の磁石68は、上下方向へ揺動しコイル70対して相対移動を繰り返す。これにより、振動発電装置28(コイル70)から誘導起電力である交流の電力が発生し、この電力が整流回路により直流に変換された後に、電源ケーブル(不図示)を通じて蓄電装置30へ送られる。
【0039】
蓄電装置30では、整流回路から送られてきた直流の電力を昇圧又は減圧して、バッテリー32や加速度計38に適した電圧となるように調整した後、この調整された電力をバッテリー32へ送る。これにより、バッテリー32では、充電が行われる。
【0040】
ここで、作業台24の振動が筐体76へ伝達されることにより、トリガー装置34から高電圧の電流が出力されて切替スイッチ36へ送られる。そして、この電流の出力をトリガー信号にして切替スイッチ36がON状態となり、バッテリー32から切替スイッチ36を介して加速度計38へ電力が供給される。なお、作業休憩等による、解体作業階16での解体作業休止や積込作業階22での積み込み作業休止などによって、作業台24に振動が発生しないときには、トリガー装置34から切替スイッチ36へ電流が送られないので、切替スイッチ36はOFF状態となり、バッテリー32から加速度計38への電力が遮断される。すなわち、加速度計38の稼動が停止する。
【0041】
加速度計38では、解体工事に伴って発生する振動(作業台24から筐体76へ伝達される振動)を計測し、計測データとしての信号を制御装置40へ出力する。
【0042】
制御装置40では、加速度計38から出力された信号の内、所定の周波数帯以外の周波数帯成分をフィルタでカットし、カットされて残った信号の大きさが閾値を超えるか否かをコンパレータで判断する。そして、カットされて残った信号(以下、「評価信号」とする)が閾値を超える場合には、コンパレータからパトライト42、102へ信号が送られてパトライト42、102が点灯し、積込作業員及び解体作業員に警告する。
【0043】
閾値は、解体工事において求められている工事振動の管理基準を満たすように適宜決めればよい。例えば、対象とする解体工事において、良好な近隣環境や作業環境等を考慮して決められた許容最大の大きさの振動が作業台24に発生したときに得られる評価信号の値とする。閾値をこのようにすれば、良好な近隣環境や作業環境等を考慮して決められた大きさ以上の振動を出さない作業を行うように積込作業員及び解体作業員が注意することができる。
【0044】
よって、建設工事監視システム14では、図1に示すように、建物12の解体工事において、作業台24の上でバックホー20が稼動したり、作業台24の上をダンプトラック26が走行したり、又は解体作業階16で行われる解体作業により発生したコンクリート破砕ガラ等の解体廃材18が作業台24の上へ落下したりすることによって、作業台24に振動が発生し、この作業台24に取り付けられた振動発電装置28から、加速度計38を稼動させるための電力を得ることができる。
【0045】
また、建物12の解体工事において発生する振動の振動エネルギーを発電エネルギーへ変換して振動エネルギーを消費することにより、この振動を低減することができ、さらには、この振動のエネルギーをシステム(加速度計38)の稼動に有効利用することができる。
【0046】
また、図3に示すように、支持部材としてのタイヤ48によって作業台24を支持することにより、タイヤ48と作業台24とによって1質点系の振動増幅機構が構成される。これにより、作業台24を大きく振動させることができるので、作業台24に取り付けられた振動発電装置28から大きな電力を得ることができる。
【0047】
また、例えば、商用電源と加速度計とを電源ケーブルでつないで、この商用電源から加速度計へ電力を供給する場合、敷設した電源ケーブルは、建設機械の走行や建設作業員の通行によって損傷したり、コネクタが引き抜けたりして、加速度計へ電力が供給されなくなることが懸念される。これに対して建設工事監視システム14では、作業台24に取り付けられた振動発電装置28から加速度計38へ電源ケーブルを通じて電力を供給するので、加速度計38の電源を商用電源とする場合よりも、電源ケーブルの長さを短くすることが可能になり、解体工事の邪魔にならないように電源ケーブルを敷設することが可能になる。また、電源ケーブルの敷設手間や盛替手間を軽減することが可能になる。すなわち、電源ケーブルの使用を軽減することができる。
【0048】
また、例えば、加速度計の電源を電池にした場合、電池切れの確認や電池の交換等の煩雑な作業が必要になり、そのためのコストが掛かってしまう。これに対して建設工事監視システム14では、バッテリー32の交換作業を行うことなく、振動発電装置28から加速度計38へ電力を供給し続けることができる。
【0049】
また、解体工事に伴って発生する振動に基づく情報を、解体作業員や積込作業員などの建設作業員等へ知らせることにより、良好な近隣環境や作業環境等を考慮して定められた大きさ以上の振動を出さない作業を行うように建設作業員等に留意させる。これによって、解体工事に伴って発生する振動を低減することができる。建設工事の中でも解体工事は、大きな振動が発生するものなので、建設工事監視システム14の適用が特に有効となる。
【0050】
また、警告手段44により警告することによって、例えば、良好な近隣環境や作業環境等を考慮して決められた大きさ以上の振動を出さない作業を行う必要があることを、建設作業員等に明確に伝えることができる。
【0051】
また、弾性体であるタイヤ48によって作業台24を支持することにより、柔らかい弾性体による防振効果(支持部材としての弾性を有するタイヤ48と、作業台24とにより構成される振動系において、支持部材のばね定数を小さくして振動系の固有振動数を小さくすることにより振動数比を大きくし、振動系の振動伝達率を小さくする)が得られるので、作業台24に発生し、作業台24が設置された床版46を介して建物12の周辺地域へ伝達される振動を低減することができる。
【0052】
以上、本発明の実施形態について説明した。
【0053】
なお、本発明の実施形態では、作業台24を鉄板により構成した例を示したが、作業台の上で建設機械を稼動させることができ、この稼動によって作業台に振動が発生するものであればよい。例えば、鉄骨組の仮設構台や、複数並べられた角材等によって作業台を構成してもよい。
【0054】
また、本発明の実施形態では、支持部材をタイヤ48とした例を示したが、図6(a)、(b)に示すように、弾性を有するゴムシート106やウレタンシート108を支持部材としてもよい。支持部材をゴムシート106やウレタンシート108とした場合においても、支持部材をタイヤ48とした場合と同様に、ゴムシート106やウレタンシート108と、作業台24とによって1質点系の振動増幅機構が構成されるので、作業台24を大きく振動させることができる。また、弾性体による防振効果を得ることができる。
【0055】
弾性体による防振効果を期待しないのであれば、例えば、図6(c)に示すように、敷き並べられた、破砕ガラ110、石、砂利等を支持部材としてもよい。この場合においても、破砕ガラ110と作業台24とによって1質点系の振動増幅機構を構成することができるが、大きな振動増幅効果は、支持部材を弾性体とした方が期待できる。
【0056】
また、本発明の実施形態では、振動発電装置28を電磁誘導型の発電装置とした例を示したが、振動発電装置は、振動を電力に変換できるものであればよい。例えば、静電誘導型,圧電型等の振動発電装置としてもよい。
【0057】
また、本発明の実施形態では、振動発電装置28(筐体50)を作業台24の下面に取り付けた例を示したが、振動発電装置28(筐体50)は、作業台24に発生した振動が伝達されれば、作業台24のどこに取り付けてもよい。
【0058】
また、本発明の実施形態では、建設工事監視システム14がバッテリー32を備えている例を示したが、加速度計38を稼動させることができる十分な電力を振動発電装置28から得ることができれば、バッテリー32を備えなくてもよい。この場合、トリガー装置34及び切替スイッチ36は不要となる。
【0059】
また、本発明の実施形態では、計測装置を加速度計38とした例を示したが、計測対象を音として、図7の立面図に示す建設工事監視システム134のように、計測装置を、解体工事に伴って発生する音を計測する騒音計112としてもよい。この場合、情報提供手段としての警告手段は、騒音計112により計測された音に基づく情報を知らせる。すなわち、情報提供手段としての警告手段は、騒音計112により計測された音の大きさが所定値以上のときに警告する。
【0060】
具体的には、騒音計112から出力された信号の内、所定の周波数帯以外の周波数帯成分を制御装置40のフィルタでカットし、カットされて残った信号の大きさが閾値を超えるか否かの判断を制御装置40のコンパレータが行う。そして、カットされて残った信号が閾値を超える場合には、コンパレータからパトライト42、102へ信号ケーブル(不図示)を介して信号が送られてパトライト42、102が点灯する。また、この場合、トリガー装置は、音の有無を検知可能なものにする。例えば、トリガー装置を圧電マイクロフォン114としてもよい。
【0061】
また、本発明の実施形態では、計測装置としての加速度計38(筐体50)を作業台24に取り付けた例を示したが、計測装置は、振動や音を評価するのに適した位置に設置すればよく、必ずしも作業台24に取り付けなくてもよい。例えば、解体作業階16又は積込作業階22の天井下面、壁面、床版上面や、建物12が配置された解体現場の敷地と、周辺地域との敷地境界付近等に設置してもよい。
【0062】
また、本発明の実施形態では、圧電素子94、96を備え、圧電効果により電力を発生させる振動発電装置によりトリガー装置34を構成した例を示したが、トリガー装置は、振動を検知して出力信号を送ることができるものであればよい。例えば、振動発電装置28と同じ構成のものでもよい。また、先に述べたように、解体工事に伴って発生する音を計測装置により計測する場合には、トリガー装置は、圧電マイクロフォン114等の音の有無を検知可能なものにする。圧電型の振動発電装置は、高い電圧を出力させることができるので、トリガー装置として適している。
【0063】
また、トリガー装置は、加速度計38や騒音計112等の計測装置が計測すべきときに、この計測すべき振動や音が検知できれば、どの位置に配置してもよい。
【0064】
また、本発明の実施形態では、床版46の上に設置された作業台24の下方に振動発電装置28(筐体50)を配置した例を示したが、地盤の上に設置された作業台24の下方に振動発電装置28(筐体50)を配置する場合には、例えば、図8に示すように、地盤144を掘削して凹部116を形成し、凹部116に枡118を設けて、作業台24の振動が伝達された筐体50が枡118に接触しないように、作業台24の下面に筐体50を取り付ければよい。すなわち、筐体50に生じる振動を阻害しないように、筐体50を配置する。
【0065】
図8では、作業台24に形成された貫通穴120に配置され、下面に筐体50が取り付けられた鋼製の板部材122が、作業台24の一部を構成している。板部材122は、貫通穴120の外縁部に設けられた爪部材124の上に載置することにより貫通穴120に配置され、貫通穴120の外縁部と一体となるように、ボルト等によって爪部材124に取り外し可能に固定されている。よって、図8では、作業台24を地盤144の上に設置した後に、筐体50の作業台24への取り付け及び取り外しができる。
【0066】
また、本発明の実施形態では、パトライト42、102の点灯により、積込作業員及び解体作業員に警告する例を示したが、音、振動、映像等を用いた方法によって、積込作業員及び解体作業員に警告してもよい。
【0067】
また、本発明の実施形態では、情報提供手段を警告手段44とした例を示したが、警告手段44は、加速度計38や騒音計112等の計測装置により計測された振動又は音の大きさが所定値以上のときに警告するものであればよい。例えば、以下の(a)〜(e)のようにしてもよい。また、情報提供手段は、加速度計38や騒音計112等の計測装置により計測された振動又は音に基づく情報を知らせるものであればよい。例えば、以下の(f)〜(j)のようにしてもよい。
【0068】
(a)解体作業階16や積込作業階22等の建設作業空間(以下、「建設作業空間」とする)内に配置したスピーカーや、建設機械のオペレータ等の建設作業員が装着しているイヤホンから、警告音を鳴らす。
【0069】
(b)建設作業空間内に配置したスピーカーや、建設機械のオペレータ等の建設作業員が装着しているイヤホンから、警告用の音声や音楽を流す。
【0070】
(c)建設作業空間内や建設機械の運転席に配置した警告灯を点灯させて警告する。
【0071】
(d)建設作業空間内や建設機械の運転席に配置したモニターに、警告用のメッセージを表示する。
【0072】
(e)建設機械のオペレータ等の建設作業員の装着したベストやヘルメットを振動させて警告する。
【0073】
(f)建設作業空間内に配置したスピーカーや、建設機械のオペレータ等の建設作業員が装着しているイヤホンから、計測装置により計測した振動や音のレベルの大きさに応じて数種の音から1つを選択して鳴らす。
【0074】
(g)建設作業空間内に配置したスピーカーや、建設機械のオペレータ等の建設作業員が装着しているイヤホンから、計測装置により計測した振動や音のレベルの数値を音声で伝える。
【0075】
(h)建設作業空間内に配置したスピーカーや、建設機械のオペレータ等の建設作業員が装着しているイヤホンから、計測装置により計測した振動や音のレベルの大きさに応じて数種の音声や音楽から1つを選択して流す。
【0076】
(i)建設作業空間内や建設機械の運転席に配置した数種の(点灯色の異なる)警告灯から、計測装置により計測した振動や音のレベルの大きさに応じて1つを選択し点灯させる。
【0077】
(j)建設作業空間内や建設機械の運転席に配置したモニターに、計測装置により計測した振動や音のレベルの数値を表示したり、振動や音のレベルの大きさに応じて数種の画面(例えば、メッセージ、○×△等のマーク、色など)から1つを選択して表示したりする。
【0078】
また、本発明の実施形態では、パトライト42、102の点灯により、積込作業員及び解体作業員に警告する例を示したが、情報提供手段により知らされる情報を警告以外(例えば、建設機械の稼動を自動的に停止する、建設機械のエンジンの回転数を自動的に落とす等)に利用してもよい。
【0079】
また、本発明の実施形態では、建物12の解体工事を建設工事の一例とし、この解体工事に対して建設工事監視システム14を適用した例を示したが、新築工事や改修工事に適用してもよい。また、作業台24は、これらのさまざまな工事において、さまざまな場所に設置することができる。
【0080】
例えば、解体工事においては、本発明の実施形態で示した積込作業階22の床版46上の他に、解体作業階の床版上、解体建物周囲の地盤上に作業台24を設置してもよい。建物の1階部分を解体する際や、低い建物を解体する際には、解体する建物周囲の地盤上に作業台24を設置し、この上で解体作業を行う建設機械を稼動させることが考えられる。
【0081】
また、例えば、新築工事においては、施工が完了した階の床版上、施工中の建物周囲の地盤上、作業ヤードの地盤上に作業台24を設置してもよい。施工中の建物内で資材の搬送作業を行う際には、施工が完了した階の床版上に作業台24を設置し、この作業台24の上に、資材の搬送作業を行うトラック等の搬送車を走行させることが考えられる。また、施工中の建物外で資材の搬送作業を行う際には、施工中の建物周囲の地盤上に作業台24を設置し、この作業台24の上に、資材の搬送作業を行うトラック等の搬送車を走行させることが考えられる。また、バックホーによる開削工事、法面工事、土砂積み込み工事等や、杭打ち機による杭打ち工事を行う際には、作業ヤードの地盤上に作業台24を設置し、この作業台24の上で、バックホーや杭打ち機を稼動させることが考えられる。
【0082】
また、本発明の実施形態では、制御装置40のコンパレータからパトライト42、102へ信号ケーブル(不図示)を介して信号を送る例を示したが、図9の建設工事監視システム146に示すように、無線によって、制御装置40のコンパレータからパトライト132へ信号を送るようにしてもよい。図9では、制御装置40のコンパレータから信号ケーブル130を介して無線送信機126へ送られた信号が、無線送信機126から、バックホー20、100に搭載された無線受信機128へ無線で送られることにより、バックホー20、100に搭載されたパトライト132が点灯する。
【0083】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【0084】
(実施例)
【0085】
本実施例では、実物実験により検証した、本発明の実施形態の建設工事管理システム14を構成する作業台24の効果について説明する。実験は、地盤上に設置した作業台24としての敷鉄板の上に12tonのバックホー(以下、「実験用バックホー」とする)を稼動させ、このときに敷鉄板から水平方向へ10m離れた地点(以下、「計測地点」とする)に発生した振動を加速度計で計測して行った。
【0086】
図10(a)、(b)の値136、138は、敷鉄板上でバックホーを走行させたときに、計測地点に設置された加速度計で計測した振動の値である。横軸に計測時間が示され、縦軸に計測時間に対する加速度が示されている。図10(a)の実験では、支持部材を介さずに地盤上に敷鉄板が直接載置されており、図10(b)の実験では、地盤上に設置されたタイヤに敷鉄板が支持されている。
【0087】
図11(a)、(b)の値140、142は、敷鉄板上でバックホーのアームを旋回させたときに、計測地点に設置された加速度計で計測した振動の値である。横軸に計測時間が示され、縦軸に計測時間に対する加速度が示されている。図11(a)の実験では、支持部材を介さずに地盤上に敷鉄板が直接載置されており、図11(b)の実験では、地盤上に設置されたタイヤに敷鉄板が支持されている。
【0088】
図10(a)、(b)、及び図11(a)、(b)から、バックホーの走行時及びバックホーのアーム旋回時共に、地盤上に設置されたタイヤに敷鉄板が支持されている方が、振動加速度が低減されていることがわかる。すなわち、弾性体であるタイヤによって作業台24を支持することにより防振効果が得られ、作業台24に発生し、作業台24が設置された地盤を介して敷鉄板の周辺へ伝達される振動を低減することができることがわかる。
【符号の説明】
【0089】
14、134 建設工事監視システム
20 バックホー(建設機械)
24 作業台
26 ダンプトラック(建設機械)
28 振動発電装置
38 加速度計(計測装置)
44 警告手段(情報提供手段)
48 タイヤ(支持部材)
106 ゴムシート(支持部材)
108 ウレタンシート(支持部材)
110 破砕ガラ(支持部材)
112 騒音計(計測装置)












































【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持部材に支持され、建設工事を行う建設機械が稼働する作業台と、
前記建設工事に伴って発生する振動又は音を計測する計測装置と、
前記作業台に取り付けられ、前記作業台に生じる振動を電力に変換し電源ケーブルを通じて該電力を前記計測装置へ供給する振動発電装置と、
前記計測装置により計測された振動又は音に基づく情報を知らせる情報提供手段と、
を有する建設工事監視システム。
【請求項2】
前記情報提供手段は、前記計測装置により計測された振動又は音の大きさが所定値以上のときに警告する警告手段である請求項1に記載の建設工事監視システム。
【請求項3】
前記支持部材は、弾性体である請求項1又は2に記載の建設工事監視システム。





































【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−83518(P2013−83518A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−222927(P2011−222927)
【出願日】平成23年10月7日(2011.10.7)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.パトライト
【出願人】(000003621)株式会社竹中工務店 (1,669)
【Fターム(参考)】