説明

建設機械のスイベルジョイント

耐塵埃性及び交換時の作業性を向上した建設機械のスイベルジョイントを提供する。 スイベルジョイント11のスピンドル13は上トラックフレーム2aに取り付けられ、ボディ12は旋回体メインフレーム1の開口部15内でストッパ突起部16及びストッパプレート17により旋回体メインフレーム1と一体に回転する。ボディ12の上端面には、旋回体側の配管21が金具22により集約して接続され、スピンドル13の下側部分には走行体側の配管23が金具24により接続されている。ボディ12の側壁は厚肉部31,32を有し、これら厚肉部に複数の円周溝41に連通する複数の軸方向通路33,34を設け、この複数の軸方向通路をボディ上端面で開口させて旋回体側の配管21をボディ上端面に集約接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行体上に旋回可能に設置された旋回体を有する油圧ショベル、油圧クレーンなどの建設機械のスイベルジョイントに関する。
【背景技術】
【0002】
建設機械のスイベルジョイントとは、旋回体に設置された走行モータ制御用の弁装置等の油圧機器と走行体に取り付けられた走行モータ等の油圧機器との連絡配管を回転自在に連結するためのものであり、ボディと、このボディに回転自在に挿入されたスピンドルとを備えている。ボディの内周面とスピンドルの外周面間には複数の円周溝が形成され、スピンドル内には複数の軸方向通路が形成され、それら円周溝と軸方向通路を介してボディに接続される複数の配管とスピンドルに接続される複数の配管の連通状態を維持している。
【0003】
一般的にスイベルジョイントの構造として2タイプあり、1つは、スピンドルが走行体(走行フレーム)に取り付けられ、ボディが旋回体(旋回体メインフレーム)と一体に回転するよう取り付けられたタイプ(スピンドル固定タイプ)であり、他の1つは、ボディが走行体(走行フレーム)に取り付けられ、スピンドルが旋回体(旋回体メインフレーム)と一体に回転するよう取り付けられたタイプ(ボディ固定タイプ)である。前者(スピンドル固定タイプ)は例えば実開平5−64243号公報に記載され、後者(ボディ固定タイプ)は例えば実公平7−26445号公報や特開平9−328778号公報に記載されている。
【0004】
【特許文献1】実開平5−64243号公報
【特許文献2】実公平7−26445号公報
【特許文献3】特開平9−328778号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来技術には次のような問題がある。
【0006】
スピンドル固定タイプのスイベルジョイントにおいて、旋回体メインフレームと一体に回転するボディの側面には、旋回体メインフレームより下側の位置で、走行モータ制御用の弁装置等の旋回体側油圧機器から伸びる複数の配管が金具(アダプタ)により接続され、その配管部分は、旋回体メインフレームの開口部(開口端)とボディとの間の隙間を通って旋回体メインフレーム内部へと引き回されている。このため旋回体メインフレームの開口部とボディの間には配管が通過したり、配管の接続及び取り外しなどの作業を行うためのスペースが必要となり、旋回体メインフレームの開口部とボディとの間に比較的大きな隙間が必要となる。その結果、その隙間(スペース)から土砂、水などの塵埃がボディ下部のスピンドル取り付け部分に落ちて溜まり、ボディ下端部とスピンドルとの摺動隙間に土砂、水などの塵埃が侵入し易い構造となっていた。
【0007】
ボディ下端部とスピンドルとの摺動隙間にはダストシールが設けられ、土砂、水などの塵埃が侵入を防止している。しかし、ダストシールはダストの侵入を防ぐのが主であり、水の侵入を完全に防ぐことは難しい。また、泥水などがボディ下端部とスピンドルの摺動隙間より侵入し、錆によりスイベルジョイントの囓りを発生する場合もある。
【0008】
ボディ固定タイプのスイベルジョイントにおいてもボディ上端とスピンドルトン摺動隙間は土砂、水などの塵埃が侵入し溜まり易い位置にあり、同様に耐塵埃性の点で問題があった。
【0009】
また、スピンドル固定タイプのスイベルジョイントにおいては、ボディと配管接続用の金具は旋回体メインフレームの下側に位置するため、スイベルジョイントの交換時には、作業員は、旋回体メインフレームの開口部とボディ間の隙間から手を入れてボディ側の配管の接続、取り外しを行わなければならず、交換時の作業性が悪いという問題もあった。
【0010】
本発明の目的は、耐塵埃性及び交換時の作業性を向上した建設機械のスイベルジョイントを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)上記目的を達成するために、本発明は、旋回体と一体に回転するボディと、走行体に取り付けられ、前記ボディに回転自在に挿入されたスピンドルとを備え、前記ボディの内周面と前記スピンドルの外周面間に形成された複数の円周溝及び前記スピンドル内に形成された複数の軸方向通路を介して前記ボディに接続される複数の第1配管と前記スピンドルに接続される複数の第2配管とを連通させ、複数の第1配管と複数の第2配管を回転自在に連結する建設機械のスイベルジョイントにおいて、前記ボディの上端面に前記複数の第1配管を集約して接続したものとする。
【0012】
このようにボディの上端面に第1配管を集約して接続することにより、旋回体の底部を構成するメインフレームの開口部とボディとの間に、第1配管が通過したり、配管の接続、取り外しなどの作業を行うためのスペースが不要となり、メインフレームの開口部とボディとの間の隙間(スペース)を極めて小さくすることができる。その結果、その隙間(スペース)よりメインフレームの上方からスイベルジョイントの取り付け部へ落下する土砂は大幅に減少し、その部分での土砂の堆積量も減り、ボディ下端のスピンドルとの摺動部への水、土砂などの塵埃の侵入を大幅に低減する。これによりスイベルジョイントの耐塵埃性は飛躍的に向上する。
【0013】
また、ボディの上端面に第1配管を集約接続し、ボディ側部に配管接続用の金具がない構造としたため、配管接続用の金具の突出量も含めたボディ部分の実質的外径は、従来構造に比べて小さくなり、配管接続部も含めたスイベルジョイント構造を小形化することができる。また、ボディの上端面に集約接続した第1配管はボディの外径範囲内に納めることができるので、配管のコンパクトなレイアウトが可能となる。
【0014】
また、本発明では、ボディの上端面に第1配管を集約接続したため、例えばスイベルジョイントの交換作業時、ボディの上端面より上側の位置で第1配管を取り外すことが可能となり、配管の取り外し作業が容易となり、スイベルジョイントの交換作業が容易となる。
【0015】
(2)上記(1)において、好ましくは、前記ボディの側壁部分に厚肉部を設け、この厚肉部に前記複数の円周溝に連通する複数の軸方向通路を設け、この複数の軸方向通路を前記ボディの上端面で開口させて複数のポートを設け、この複数のポートに前記複数の第1配管を接続する。
【0016】
これにより従来構造に対して僅かな変更を加えることで、ボディの上端面に第1配管を集約して接続することができる。
【0017】
(3)また、上記(1)において、好ましくは、前記ボディの上端面は前記旋回体の底部を構成するメインフレームよりも上方に位置し、前記複数の第1配管は前記メインフレームの底面より高い位置で前記複数のポートに接続されている。
【0018】
これによりスイベルジョイントの交換作業時、ボディの上端面より上側の位置であって、ボディの上端面より上側の位置で第1配管を取り外すことが可能となるため、配管の取り外し作業が更に容易となり、スイベルジョイントの交換作業が更に容易となる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、スイベルジョイントの耐塵埃性及び交換時の作業性を向上することができる。
【0020】
また、配管接続部も含めたスイベルジョイント構造を小形化することができるとともに、配管のコンパクトなレイアウトが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施の形態に係わるスイベルジョイントとその取り付け状態を示す断面図である。
【図2】スイベルジョイントと旋回体メインフレームの開口部を上方から見た状態を示す図である。
【図3】ボディ部を図2のIII−III線で切ったスイベルジョイントの断面構造を示す図である。
【図4】スイベルジョイントが取り付けられる油圧ショベルの外観を示す図である。
【図5】下部走行体のトラックフレーム部分を示す図である。
【図6】従来のスイベルジョイントとその取り付け状態を示す断面図である。
【図7】従来のスイベルジョイントと旋回体メインフレームの開口部を上方から見た状態を示す図である。
【符号の説明】
【0022】
1 旋回体メインフレーム
2 トラックフレーム
2a 上トラックフレーム
2b 下トラックフレーム
3 旋回輪
3a 内輪
3b 外輪
4 旋回輪支持部
5 内歯歯車
6 旋回モータ
7 ピニオン
8 グリスバス
11 スイベルジョイント
12 ボディ
13 スピンドル
14 取付板
15 開口部
16 ストッパ突起部
17 ストッパプレート
21,23 配管
22,24 金具(アダプタ)
26 開口部
27 カバー
28 カバー
31,32 厚肉部
33,34 軸方向通路
35,36 ポート
41 円周溝
43,44 径方向通路
45 軸方向通路
46 複数の径方向通路
47 ポート
52 ポート
53 軸方向通路
55 ダストシール
56 Oリングシール
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。
【0024】
図1は、油圧ショベルの旋回体と走行体との間に本発明のスイベルジョイントが取り付けられている状態を示す断面図である。
【0025】
図1において、1は旋回体の底部を構成するメインフレームであり、2a,2bは走行体のトラックフレーム2を構成する上トラックフレーム及び下トラックフレームである。メインフレーム1と上トラックフレーム2aとの間には相対回転可能な内輪3aと外輪3bからなる旋回輪3が位置し、内輪3aは上トラックフレーム上に設けられたリング状の旋回輪支持部4にボルトにより固定され、外輪3bはメインフレーム1の下面にボルトにより固定されている。内輪3aの内側には内歯歯車5が切られ、旋回モータ6の出力軸に設けられたピニオン7が噛み合っている。旋回モータ6はボルトによりメインフレーム1に固定され、ピニオン7及び出力軸部分はメインフレーム1の下側に突出している。旋回輪支持部4の上部内側には、内輪3aの歯車5と旋回モータ6のピニオン7の噛み合い部を潤滑するグリスバス8が形成されている。
【0026】
旋回輪3の中心部分には、ボディ12とボディ12に回転自在に挿入されたスピンドル13とからなるスイベルジョイント11が同心的に配置されている。スピンドル13には取付板14が設けられ、スピンドル13はこの取付板14を上トラックフレーム2aの開口部19に下側からボルトにより固定することで上トラックフレーム2aに取り付けられている。ボディ12は旋回体メインフレーム1に開けられた開口部15内に位置し、その上端部は旋回体メインフレーム1の上側に位突出し、ボディ12の上部に設けられたストッパ突起部16をメインフレーム1にボルトにより固定されたストッパプレート17に係合させることにより、旋回体メインフレーム1と一体に回転可能となっている。
【0027】
ボディ12の上端面12aには、旋回体に設置された走行モータ及びブレード制御用の弁装置(方向切換弁)等の油圧機器に至る配管(ホース)21が金具(アダプタ)22により集約して接続され、スピンドル13の取付板14の下側部分には、走行体に設置された走行モータ、ブレードシリンダ等の油圧機器に至る配管(ホース)23が金具(アダプタ)24により接続されている。
【0028】
下トラックフレーム2bのスイベルジョイント11の下側部分には作業用の開口部26が形成され、この開口部26は、下トラック部クレーム2bに下側からボルトにより固定されたカバー27により閉塞されている。カバー27は外部からの石、岩、土砂によるスピンドル13や配管23の損傷を防止したり、スイベルジョイント交換作業を容易にするためのものである。
【0029】
図2にスイベルジョイント11と旋回体メインフレーム1の開口部15を上方から見た状態を示す。
【0030】
スイベルジョイント11のボディ12の上端面12aは概略矩形をしており、その長辺側一側面の中央部にストッパプレート17の溝部18に入り込むようにストッパ突起部16が突設されている。また、配管接続用の金具22は、ボディ12の上端面12aの図示上側と下側に3個ずつ、ストッパ部16と反対側に1個、中央部のカバー28に1個の合計8個、設けられている。
【0031】
図1に戻り、スイベルジョイント11の取り付け部が位置する空間は、下側はスピンドル13の取付板14及び上トラックフレーム2aにより、外周側は旋回輪支持部4及び旋回輪3により閉じられ、上側は開口部15を有する旋回体メインフレーム1により覆われている。また、本実施の形態では、上記のようにボディ12の上端面12aに配管(ホース)21の接続用の金具22を集約配置し、配管21を集約接続したため、旋回体メインフレーム1の開口部15とボディ12との間に、配管121が通過したり、配管121の接続、取り外しなどの作業を行うためのスペースが不要となり、図2に示すようにメインフレーム1の開口部15とボディ12との間の隙間(スペース)は極めて小さくすることができる(後述)。その結果、スイベルジョイント11の取り付け部が位置する空間は、上側においても隙間の少ない閉鎖空間となり、スイベルジョイント11の取り付け部への土砂の落下自体が大幅に低減し、スイベルジョイント11の耐塵埃性やグリスバス8の寿命を飛躍的に向上することができる。
【0032】
図3にボディ部を図2のIII−III線で切ったスイベルジョイント11の断面構造を示す。なお、金具は省略して示している。
【0033】
ボディ12は左右(図2の上側及び下側)の側壁部分12b,12cに厚肉部31,32を有し、厚肉部31,32には、図2に示したボディ12の上端面12aの上側と下側に設けられた3個ずつの配管接続用の金具22に対応して、軸方向通路33,34が3本ずつ形成され(図3では1本ずつのみ図示)、軸方向通路33,34の上端は厚肉部31,32の上端面12aで開口し、配管接続用の金具22が接続されるポート35,36を形成している。スピンドル13の外周面に摺動自在に接するボディ12の内周面には複数(図示の例では7個)の円周溝41が形成され、複数の円周溝41のうち6個の円周溝は厚肉部31,32に形成された軸方向通路33,34に径方向通路43,44を介してそれぞれ連通している。また、スピンドル13内には径方向通路(図示せず)を介して複数の円周溝41とそれぞれ連通する複数(円周溝41が7個の場合は7個)の軸方向通路45が形成され、複数の軸方向通路45はスピンドルの下端側でそれぞれ複数の径方向通路46に連通し、複数の径方向通路46は配管接続用の金具24が接続されるポート47にそれぞれ開口している。
【0034】
また、図示はしないが、図2に示したストッパ部16と反対側の配管接続用の金具22についても、対応するボディ12の断面位置に軸方向通路33,34と同様な軸方向通路が形成され、複数の円周溝41の1つはその軸方向通路に連通している。
【0035】
スピンドル13の上端面はボディ12の上端面12a付近に位置し、位置決めリング51により上端位置を規制されている。また、ボディ12の上端面12a中央部にはカバー28がボルトにより固定され、スピンドル13の上端面はカバー28で閉じられている。カバー28の中央部には配管接続用の金具22が接続されるポート52が形成され、スピンドル13の径方向中央部にはポート52に連通する軸方向通路53が形成され、この軸方向通路53はスピンドル13の下端面で開口し、その開口部(ポート)にも配管接続用の金具24が接続されている。
【0036】
以上の通路構成により、スピンドル13に対してボディ12が回転した場合にあっても、常にボディ12側のポート穴とスピンドル13側のポート穴との連通状態が維持され、それらポート穴に接続されたボディ12側の配管21とスピンドル13側の配管23との連通状態が維持される。また、従来構造に対して僅かな変更で、ボディ12の上端面12aに配管21を集約して接続することができる。
【0037】
ボディ12の内周面下端側にはスピンドル13の外周面に当接するダストシール55が装着され、外部からのボディ12の内周面とスピンドル13の外周面との摺動面に土砂など塵埃が侵入するのを防止している。また、ボディ12の内周面の出すとシール55の上側にはOリングシール56が装着され、摺動面からの油漏れを防止している。以上の構成により、外部からの塵埃についてはダストシール55が密封状態を保持し、内部からの油漏れについてはOリングシール56が密封状態を保持している。
【0038】
図4はスイベルジョイント11が取り付けられる油圧ショベルの外観を示す図である。油圧ショベルは下部走行体70と、上部旋回体71と、フロント作業機72とを有している。下部走行体70は左右の走行モータ73,74を備え、この走行モータ73,74によりクローラ75,76が回転駆動され、前方又は後方に走行する。上部旋回体71には旋回モータ6(図1参照)が搭載され、この旋回モータ6により上部旋回体71が下部走行体70に対して右方向又は左方向に旋回される。フロント作業機72はブーム77、アーム78、バケット79からなり、ブーム77はブームシリンダ77aにより上下動され、アーム78はアームシリンダ78aによりダンプ側(開く側)又はクラウド側(掻き込む側)に操作され、バケット79はバケットシリンダ79aによりダンプ側(開く側)又はクラウド側(掻き込む側)に操作される。下部走行体70の前部にはブレード80が取り付けられ、ブレード80はブレードシリンダ80aにより上下動される。
【0039】
図5は下部走行体70のトラックフレーム部分を示す図である。下部走行体70は前述したトラックフレーム2を有している。トラックフレーム2はセンタフレーム(メインフレーム)82と左右のサイドフレーム83,84とからなり、センタフレーム82は前述した上トラックフレーム2a,下トラックフレーム2bとを備えている。サイドフレーム83,84には図4に示した走行モータ73,74とクローラ75,76とが装着される。上トラックフレーム2aには前述したように旋回輪支持部4が設けられ、旋回輪支持部4に旋回輪3が装着される。下トラックフレーム2bには本発明のスイベルジョイント11が装着される。上下トラックフレーム2a,2bの前部中央部分にはブレード80を上下動可能に連結するための支持部85が設けられている。
【0040】
次に、本実施の形態の効果を従来構造と比較して説明する。
【0041】
図6及び図7に従来のスイベルジョイントとその取り付け状態を示す。図中、図1に示した部材と同等のものには同じ符号を付している。
【0042】
図6において、スイベルジョイント111はボディ112とボディ112に回転自在に挿入されたスピンドル13とからなり、スピンドル13は取付板14を上トラックフレーム2aの開口部19に下側からボルトにより固定することで上トラックフレーム2aに取り付けられ、ボディ112は旋回体メインフレーム1に開けられた開口部115内に位置し、ボディ12に設けられたストッパ突起部116をメインフレーム1にボルトにより固定されたストッパプレート117に係合させることにより、旋回体メインフレーム1と一体に回転可能となっている。
【0043】
ボディ112の側部には、旋回体に設置された走行モータ及びブレード制御用の弁装置(方向切換弁)等の油圧機器に至る配管121が金具122により接続され、スピンドル13の取付板14の下側部分には、走行体に設置された走行モータ、ブレードシリンダ等の油圧機器に至る配管23が金具24により接続されている。
【0044】
図7にスイベルジョイント111と旋回体メインフレーム1の開口部115を上方から見た図を示す。
【0045】
スイベルジョイント111のボディ112の上端面は概略円形をしており、その図示右側の側部にストッパプレート117の溝部118に入り込むようにストッパ突起部116が突設されている。また、配管接続用の金具122は、ボディ112の図示下側の側部に4個、上側の側部に3個(図5では2個のみ図示)、頂部のカバー128に1個の合計8個、設けられている。また、ボディ112の側部に設けられた金具122は旋回体メインフレーム1の底面より下側に位置しかつボディ112の径方向にある長さ突出するため、旋回体メインフレーム1の開口部115は金具122の突出量に合わせて上下に細長い形状をしている。
【0046】
スイベルジョイント111の内部通路は、ボディ112には図3に示した厚肉部31,32はなく、図3に示したボディ12の径方向通路43,44に相当する通路がボディ112に設けられ、その径方向通路がボディ112の側面に直接開口してポートを形成し、そのポートに配管接続用の金具122が接続されている点を除いて、図3に示したものと同等であり、スピンドル113に対してボディ112が回転した場合にあっても、常にボディ112側のポート穴とスピンドル113側のポート穴との連通状態が維持され、ボディ112側の配管121とスピンドル113側の配管123との連通状態が維持される構成となっている。
【0047】
また、ボディ112の内周面下端側には、図3に示したのと同様に、スピンドル113の外周面に当接するようダストシール及びOリングシールが装着され、土砂など塵埃の侵入と内部からの油漏れを防止している。
【0048】
図6及び図7に示した従来構造では、配管接続用の金具122が旋回体メインフレーム1の底面の下側でボディ112の側部に接続されるため、メインフレーム1の開口部115とボディ112との間に、配管121が通過したり、配管121の接続、取り外しなどの作業を行うためのスペースが必要となり、メインフレーム1の開口部115とボディ112との間に大きな隙間(スペース)が必要となる。このためその隙間(スペース)より、旋回体メインフレーム1の上方からスイベルジョイント111の取り付け部であるスピンドル113の取付板114上へ土砂が落ち、その部分に土砂が堆積し、ボディ112下端のスピンドル113との摺動部に水、土砂などの塵埃が侵入し易い構造となっている。
【0049】
ボディ112下端のスピンドル113との摺動部にはダストシールが設けられ、水、土砂などの塵埃が侵入を防止しているが、現実は完全とはいかない場合もある。また、ダストシールは塵埃(ダスト)の侵入を防ぐのが主であり、水の侵入を完全に防ぐことは難しい。泥水などがボディ112下端のスピンドル3と摺動部より侵入し、錆によりスイベルジョイントの囓りを発生した事例も報告されている。
【0050】
また、旋回体メインフレーム1と上トラックフレーム2aとの間のスイベルジョイントの周囲にはグリスバス8が位置し、内輪3aの歯車5と旋回モータ6のピニオン7の噛み合い部を潤滑している。このグリスバス8はその潤滑性能を維持するためにはできるだけ清浄であることが好ましい。しかし、従来構造では、上記のようにメインフレーム1の開口部115とボディ112との間の隙間(スペース)が大きく、その隙間より下方に土砂が侵入するため、その土砂がグリスバス8上にも飛散する。そのため、長期にグリスバス8を清浄に保つのが難しく、比較的短期間でグリスバス8の交換を余儀なくされていた。
【0051】
本実施の形態では、上記のようにボディ12の上端面12aに、旋回体に設置された走行モータ及びブレード制御用の弁装置(方向切換弁)等の油圧機器に至る配管(ホース)21の接続用の金具22を集約配置し、配管21を集約接続したため、旋回体メインフレーム1の開口部15とボディ12との間に、配管121が通過したり、配管121の接続、取り外しなどの作業を行うためのスペースが不要となり、図2に示すようにメインフレーム1の開口部15とボディ12との間の隙間(スペース)は図7に示した従来構造に比べて極めて小さくすることができる。その結果、その隙間(スペース)より旋回体メインフレーム1の上方からスイベルジョイント11の取り付け部であるスピンドル13の取付板14上へ落下する土砂は大幅に減少し、その部分での土砂の堆積量も減り、ボディ12下端のスピンドル13との摺動部への水、土砂などの塵埃の侵入を大幅に低減することができる。これによりスイベルジョイント11の耐塵埃性は飛躍的に向上する。
【0052】
また、グリスバス8上への土砂の飛散も大幅に低減するため、グリスバス8は長期間良好な潤滑性能を維持し、グリスバスの寿命が向上する。
【0053】
また、ボディ12の上端面12aに配管接続用の金具22を集約配置し、配管21を集約接続したため、金具122の突出量も含めたボディ部分の実質的外径は、従来構造に比べて小さくなり、配管接続部も含めたスイベルジョイント構造を小形化することができる。また、金具22及び配管21はボディ12の外径範囲内に納めることができるので、配管21のコンパクトなレイアウトが可能となる。
【0054】
更に、図6及び図7に示す従来構造では、ボディ112と配管接続用の金具は旋回体メインフレーム1の下側に位置するため、スイベルジョイント111の交換時には、作業員は、旋回体メインフレーム1の開口部とボディ112間の隙間から手を入れてボディ112側の配管121の接続、取り外しを行わなければならず、作業性が悪いという問題もある。
【0055】
これに対し、本実施の形態では、ボディ12の上端面12aより上側の位置であって、旋回体メインフレーム1の底面より高い位置でボディ12の上端面12aに配管接続用の金具22を取り付けたため、例えばスイベルジョイント11の交換作業時、旋回体メインフレーム1の底面より高い位置でボディ12側の配管21を取り外すことが可能となり、配管21の取り外し作業が極めて容易となる。また、その後、下トラックフレーム1bに取り付けられたカバー27を取り外し、スピンドル13側の配管23を取り外し、取付板14のボルトを取り外して、スイベルジョイント11を下方に抜くことにより、容易にスイベルジョイント11を取り外すことができる。新たなスイベルジョイントを取り付けるときは、取り外し作業の逆の手順を行えばよい。これによりスイベルジョイントの交換作業が極めて容易となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
旋回体(71,1)と一体に回転するボディ(12)と、走行体(70,2)に取り付けられ、前記ボディに回転自在に挿入されたスピンドル(13)とを備え、前記ボディの内周面と前記スピンドルの外周面間に形成された複数の円周溝(41)及び前記スピンドル内に形成された複数の軸方向通路(45)を介して前記ボディに接続される複数の第1配管(21)と前記スピンドルに接続される複数の第2配管(23)とを連通させ、複数の第1配管と複数の第2配管を回転自在に連結する建設機械のスイベルジョイント(11)において、
前記ボディ(12)の上端面(12a)に前記複数の第1配管(21)を集約して接続したことを特徴とする建設機械のスイベルジョイント。
【請求項2】
請求項1記載の建設機械のスイベルジョイントにおいて、
前記ボディ(12)の側壁部分(12b,12c)に厚肉部(31,32)を設け、この厚肉部に前記複数の円周溝(41)に連通する複数の軸方向通路(33,34)を設け、この複数の軸方向通路を前記ボディの上端面(12a)で開口させて複数のポート(35,36)を設け、この複数のポートに前記複数の第1配管(21)を接続したことを特徴とする建設機械のスイベルジョイント。
【請求項3】
請求項1記載の建設機械のスイベルジョイントにおいて、
前記ボディ(12)の上端面(12a)は前記旋回体(71)の底部を構成するメインフレーム(1)よりも上方に位置し、前記複数の第1配管(21)は前記メインフレーム(1)の底面より高い位置で前記複数のポート(35,36)に接続されていることを特徴とする建設機械のスイベルジョイント。
【請求項4】
下部走行体と、上部旋回体と、この上部旋回体に設置された弁装置等の油圧機器と前記下部走行体に設置された油圧機器との複数の連絡配管を回転自在に連結するためのスイベルジョイントとを有する建設機械において、
前記スイベルジョイントは、前記上部旋回体(71,1)と一体に回転するボディ(12)と、前記下部走行体(70,2)に取り付けられ、前記ボディに回転自在に挿入されたスピンドル(13)とを備え、
前記複数の連絡配管は、前記ボディに接続される複数の第1配管(21)と、前記スピンドルに接続される複数の第2配管(23)とを含み、前記複数の第1配管(21)と前記複数の第2配管(23)とは、前記ボディの内周面と前記スピンドルの外周面間に形成された複数の円周溝(41)及び前記スピンドル内に形成された複数の軸方向通路(45)を介して互いに連通し、
前記複数の第1配管(21)は前記ボディ(12)の上端面(12a)に集約して接続されていることを特徴とする建設機械。
【請求項5】
請求項4記載の建設機械において、
前記ボディ(12)の側壁部分(12b,12c)に厚肉部(31,32)を設け、この厚肉部に前記複数の円周溝(41)に連通する複数の軸方向通路(33,34)を設け、この複数の軸方向通路を前記ボディの上端面(12a)で開口させて複数のポート(35,36)を設け、この複数のポートに前記複数の第1配管(21)を接続したことを特徴とする建設機械。
【請求項6】
請求項4記載の建設機械において、
前記ボディ(12)の上端面(12a)は前記旋回体(71)の底部を構成するメインフレーム(1)よりも上方に位置し、前記複数の第1配管(21)は前記メインフレーム(1)の底面より高い位置で前記複数のポート(35,36)に接続されていることを特徴とする建設機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【国際公開番号】WO2005/061805
【国際公開日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【発行日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−516447(P2005−516447)
【国際出願番号】PCT/JP2004/018156
【国際出願日】平成16年12月6日(2004.12.6)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】