説明

建設機械の油圧ホース誤組防止装置

【課題】組付け後の油圧ホースの誤組のチェックを容易にし、種類の異なる油圧ホースの接続ミスによる災害を未然に防止する。
【解決手段】複数種類の油圧ホース13A〜13D,14A〜14Dが種類毎に各種油圧機器等のホース接続部に接続して組付けられる建設機械の油圧ホース誤組防止装置において、前記油圧ホース13A〜13D,14A〜14Dの種類を識別するための識別テープ22,23,24,25を備え、該識別テープ22,23,24,25は各油圧ホース13A〜13D,14A〜14Dの接続端近傍に複数貼り付けられている。又、前記識別テープ22,23,24,25の表面色は、油圧ホース13A〜13D,14A〜14Dの表面色の対照色に設定することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は建設機械の油圧ホース誤組防止装置に関するものであり、特に、複数種類の油圧ホースが各種油圧機器等に組付けられる建設機械の油圧ホース誤組防止装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、此種建設機械は一般に左右の走行モータ、旋回モータ及び複数の油圧アクチュエータ(ブームシリンダ、アームシリンダ、バケットシリンダ)等の作業機械が搭載されている。そして、前記作業機械及び付属装置は、複数種類の油圧ホースによりコントロールバルブ(多連バルブ)、油タンク又は油圧ポンプ等の各種油圧機器に接続されている。
【0003】
例えば、複数種類の油圧ホースは、一箇所に設置されたコントロールバルブのホース接続部に種類毎に組付けられる。又、複数種類の各油圧ホースは、設置条件やホース長さ等により、同一種類の油圧ホース同士がホース継手を介して接続される(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−24858号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術による油圧ホースの接続方式においては、特に、複数種類の油圧ホースを一箇所に設置した油圧機器、たとえば、コントロールバルブの各ホース接続部に組付ける場合、種類の異なる油圧ホースを間違えて組付けて接続されることがある。もし、種類の異なる油圧ホースが接続されたときは、重大な災害を発生させる可能性があり、非常に危険な事態を招来する。
【0005】
これを解決するために、図4に示すように、種類の異なる前記油圧ホース41,42ごとに、該油圧ホース41,42の種類を識別するための識別テープ43,44を油圧ホース41,42接続端側の口金45,46近傍に貼り付ける識別方式が採用されている。
【0006】
前記識別テープ43,44の表面には、油圧ホース41,42の種類に対応する文字を印刷したり、或いは、色分けを施すことにより、種類の異なる油圧ホース41,42同士の誤組(接続ミス)を抑制している。
【0007】
上記の如く、種類の異なる前記油圧ホースごとに識別テープを貼り付けても、ヒューマンエラーによる油圧ホースの誤接続を完全に無くすことは困難であり、種類の異なる油圧ホースが誤って組み付けられることがある。
【0008】
又、油圧ホースの組付け後は、油圧ホースに貼着した識別テープにより、油圧ホースの誤組を十分にチェックすることは困難である。例えば、油圧ホースの接続箇所の周辺には各種機器類やブラケット等が多く存在するために、前記識別テープが機器類等の後方に隠れて確認できないことがある。
【0009】
そこで、組付け後の油圧ホースの誤組のチェックを容易にし、種類の異なる油圧ホースの接続ミスによる災害を未然に防止するために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は上記の目的を達成するために提案されたものであり、請求項1記載の発明は、
複数種類の油圧ホースが種類毎に各種油圧機器等のホース接続部に接続して組付けられる建設機械の油圧ホース誤組防止装置において、前記油圧ホースの種類を識別するための識別テープを備え、該識別テープは各油圧ホースの接続端近傍に複数貼り付けられていることを特徴とする建設機械の油圧ホース誤組防止装置を提供する。
【0011】
この構成によれば、油圧ホースの種類を識別するための識別テープは、各油圧ホースの接続端近傍に複数貼り付けられている。従って、複数種類の油圧ホースを油圧機器などに組み付け後に、油圧ホースの種類を識別テープで識別する際に、識別テープを単数貼り付けた従来例の油圧ホースに比して、チェック者によって複数の識別テープを視認できる範囲が拡大する。
【0012】
そのため、複数の識別テープの一部が機器類などの後方に位置して見えない場合でも、他の部分の識別テープが見えるので、油圧ホースの種類が確実に識別される。
【0013】
請求項2記載の発明は、上記識別テープの表面色が上記油圧ホースの表面色の対照色であることを特徴とする請求項1記載の建設機械の油圧ホース誤組防止装置を提供する。
【0014】
この構成によれば、上記識別テープは、油圧ホースの表面色に対して対照色を有するので、薄暗い環境下でも識別テープの存在が際立って視認される。
【発明の効果】
【0015】
請求項1記載の発明は、油圧ホースに貼り付けた複数の識別テープを視認できる範囲が拡大するので、油圧ホースの組付け後に、識別テープの一部が機器類の陰に隠れて見えなくなっても、油圧ホースの種類を確実に識別することができる。従って、油圧ホースの誤組の発見が容易になるため、該油圧ホースの誤組による重大な災害の発生を未然に防止することができる。
【0016】
請求項2記載の発明によれば、油圧ホースの表面色を油圧ホースの表面色の対照色にすることにより、薄暗い環境下でも識別テープの表面色が際立って視認されるので、組付け後の油圧ホースをチェックする際に、該油圧ホースの誤組を一層容易に発見することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明は、組付け後の油圧ホースの誤組のチェックを容易にし、種類の異なる油圧ホースの接続ミスによる災害を未然に防止するという目的を実現するために、複数種類の油圧ホースが種類毎に各種油圧機器等のホース接続部に接続して組付けられる建設機械の油圧ホース誤組防止装置において、前記油圧ホースの種類を識別するための識別テープを備え、該識別テープは各油圧ホースの接続端近傍に複数貼り付けられていることによって実現した。
【実施例】
【0018】
以下、本発明に係る好適な一実施例を図1乃至図3に従って説明する。本実施例は油圧ショベルに配設された油圧ホースに適用したものであるが、本発明は之に限定されるべきではなく、油圧ショベル以外の建設機械の油圧ホースに適用可能である。
【0019】
更に、本実施例では、複数種類の油圧ホースをコントロールバルブ(多連バルブ)に組付けて接続する場合について説明するが、該油圧ホースの組付け箇所はコントロールバルブ以外の油圧機器、或いは、油圧ホース同士を接続するホース継手であってもよい。
【0020】
図1は本実施例に係る建設機械としての油圧ショベルを示す側面図、図2は油圧ホース
の配管構成を示すブロック図、図3は識別テープが貼り付けられた油圧ホースの接続端近傍部分を示す正面図である。
【0021】
図1において、油圧ショベル1の下部走行体2上には上部旋回体3が旋回自在に旋回フレーム4を介して旋回可能に搭載載置されている。又、上部旋回体3の前方中央部にはブーム5が上下回動可能に設けられていると共に、ブーム5の先端部にはアーム6が上下回動可能に枢着されている。
【0022】
さらに、アーム6の先端部にはバケット7が上下回動自在に取り付けられている。前記ブーム5、アーム6及びバケット7は夫々ブームシリンダ5A、アームシリンダ6A及びバケットシリンダ7Aにより回動制御されている。
【0023】
また、上部旋回体3の前方一側部にはキャビン8が配設され、キャビン8内には運転室が設けられていると共に、該運転室近傍には、右側リモコンバルブ及び左側リモコンバルブ(図2中の符号11及び12参照)が設置されている。
【0024】
図2は本実施例に係る油圧回路を示すブロック図である。同図に示すように、右側リモコンバルブ11及び左側リモコンバルブ12には、複数種類の油圧ホース13A〜13D及び油圧ホース14A〜14Dの一端部が夫々接続され、該油圧ホース13A〜13D及び油圧ホース14A〜14Dの他端部は、コントロールバルブ10側の各ホース接続部に組み付けられている。
【0025】
尚、前記油圧ホース13A〜13D及び油圧ホース14A〜14Dの種類としては、ブームシリンダ5A、アームシリンダ6A及びバケットシリンダ7A等の油圧アクチュエータに接続されるものに限定されず、例えば、図示しない油タンクや油圧ポンプ等の油圧機器に接続されるものでもよい。
【0026】
図3は、互いに種類の異なる油圧ホース13A,13Bの接続端近傍の構成例を示す。同図において、各油圧ホース13A,13Bにおける口金部15,16の接続端側には六角鍔部17,18が夫々固設されていると共に、油圧ホース13A,13Bの接続端部にはナット19,20が夫々回動可能に設けられている。
【0027】
油圧ホース13A,13Bは、前記ナット19,20を図2に示すコントロールバルブ10側のホース接続部に螺着して連結することにより、コントロールバルブ10に油圧ホース13A,13Bが着脱可能に接合して組み付けられている。
【0028】
又、油圧ホース13Aにおける口金部15よりも内側近傍には、2つの識別テープ22,23が貼り付けられている。2つの識別テープ22,23は、油圧ホース13Aの軸芯方向に若干離間するように並設されているとともに、油圧ホース13Aの外周面にリング状に巻回固着されている。前記同様に、油圧ホース13Bの口金部16よりも内側近傍には、2つの識別テープ24,25が貼り付けられている。
【0029】
識別テープ22,23,24,25の表面には、油圧ホース13A,13Bの種類を識別するために、印刷処理(塗装処理を含む)又は着色処理(色分け処理を含む)が施されている。該識別テープ22,23,24,25表面に印刷処理を施す場合は、各油圧ホース13A,13Bの種類に対応する文字、記号又は番号が印刷される。
【0030】
図示例では、識別テープ22,23の表面にはアルファベット「P」が印刷表示され、且つ、識別テープ24,25の表面にはアルファベット「T」が印刷表示されている。従って、識別テープ22,23表面のアルファベット「P」又は識別テープ24,25表面
の「T」によって、油圧ホース13A又は油圧ホース13Bの種類の識別が可能になる。
【0031】
特に、油圧ホース13A,13Bの種類を識別するために、識別テープ22,23又は識別テープ24,25の表面に着色処理を施す場合には、該表面色は、油圧ホース13A又は油圧ホース13Bの表面色の対照色に設定することが好ましい。尚、上述した油圧ホース13A,13B以外の油圧ホース13C、13D,14A〜14Dについても上記同様に識別テープが2又は3以上貼り付けられる。
【0032】
以上の如く本発明によると、個々の油圧ホース13A〜13D,14A〜14Dの接続端近傍に夫々複数の識別テープ22,23,24,25を油圧ホース13A〜13D,14A〜14Dの長さ方向に離間配置して貼着したので、複数種類の油圧ホース13A〜13D,14A〜14Dを組み付けた後に、該油圧ホース13A〜13D,14A〜14Dの種類に適合して正しく接続されているか否かをチェックする際に、識別テープ22,23,24,25を視認できる領域範囲が2倍以上に拡大する。
【0033】
依って、例えば油圧ホース13Aの種類をチャックする際、一方の識別テープ22全体が機器類などの後方に位置して見えない場合でも、他方の識別テープ23を見ることができるので、油圧ホース13Aの種類を正確に識別することが可能になる。
【0034】
斯くして、複数種類の油圧ホース13A〜13D,14A〜14Dの何れかが種類を誤って接続された場合でも、ホース組付け後における誤誤って接続された状態の目視による検知(又は発見)が容易になる。従って、油圧ホース13A〜13D,14A〜14Dの接続ミスによる重大な災害の発生が未然に防止される。
【0035】
特に、識別テープ22,23,24,25の表面色を油圧ホース13A〜13D,14A〜14Dの表面色の対照色に設定した場合は、油圧ホース13A〜13D,14A〜14Dの種類を識別テープ22,23,24,25の表面色によって識別するときに、周囲が薄暗い環境下である場合でも、該識別テープ22,23,24,25の表面色が際立って視認される。依って、識別テープ22,23,24,25の表面色による油圧ホース13A〜13D,14A〜14Dの種類の識別チェックを一層容易かつ確実に行うことができる。
【0036】
本発明は、メータイン制御ライン及び/又はメータアウト制御ラインの油圧ホースの種類をチェックする場合に一層顕著な効果が得られる。即ち、メータイン制御ライン及び/又はメータアウト制御ラインにおいて油圧ホースの接続ミスが発生した場合は、災害の危険度が非常に高くなり、しかも、前記制御ラインでは、一般に油圧ホースのレイアウトの都合上、1つのホース接続箇所にて複数種類の油圧ホースが横方向に並んで配置されているので、識別テープによる油圧ホースの種類の識別による災害防止効果がより顕著に発揮される。
【0037】
尚、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変を為すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の一実施例を示し、建設機械としての油圧ショベルの側面図。
【図2】一実施例に係る油圧回路の構成例を示すブロック図。
【図3】一実施例に係る識別テープが貼り付けられた油圧ホースの接続端近傍部分を示す正面図。
【図4】従来例に係る識別テープが貼り付けられた油圧ホースの接続端近傍部分を示す正面図。
【符号の説明】
【0039】
1 油圧ショベル
2 下部走行体
3 上部旋回体
8 キャビン
10 コントロールバルブ
11 右側リモコンバルブ
12 左側リモコンバルブ
13A〜13D 油圧ホース
14A〜14D 油圧ホース
15,16 口金部
17,18 六角鍔部
19,20 ナット
22〜25 識別テープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数種類の油圧ホースが種類毎に各種油圧機器等のホース接続部に接続して組付けられる建設機械の油圧ホース誤組防止装置において、前記油圧ホースの種類を識別するための識別テープを備え、該識別テープは各油圧ホースの接続端近傍に複数貼り付けられていることを特徴とする建設機械の油圧ホース誤組防止装置。
【請求項2】
上記識別テープの表面色が上記油圧ホースの表面色の対照色であることを特徴とする請求項1記載の建設機械の油圧ホース誤組防止装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−106580(P2010−106580A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−280500(P2008−280500)
【出願日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【出願人】(502246528)住友建機株式会社 (346)
【Fターム(参考)】