説明

建設機械の燃料タンク

【課題】戻り燃料に起因して燃料の残量が正しく検出されないといった不具合の発生を未然に防ぐことができる建設機械の燃料タンクを提供する。
【解決手段】燃料タンク本体20の後側板22cの上部に設けられる戻り燃料受入口31に装着される戻り側配管継手33と、燃料タンク本体20に収容される燃料の液面高さの変化に合わせて燃料タンク本体20の内部における中央部20bで所定の軌跡を描いて上下方向に動くフロート29の上下方向の移動量に応じた所定の信号を出力する燃料ゲージ27とを備える油圧ショベル1の燃料タンク13において、戻り側配管継手33は、後側板22cの内側の板面に沿う方向に戻り燃料を吐出する戻り燃料吐出口51〜57を有するものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば油圧ショベルなどの建設機械に装備されて好適な燃料タンクに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、油圧ショベルにおいて、エンジンに供給する燃料を貯留する燃料タンクは、上部旋回体に装備されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−262981号公報
【0004】
図9には、油圧ショベルの上部旋回体に装備される従来の燃料タンクの縦断面図(a)および(a)のC部拡大図(b)がそれぞれ示されている。
【0005】
図9(a)に示される燃料タンク100は、エンジンに供給する燃料の収容部101aを有する燃料タンク本体101を備えている。
図9(b)に示されるように、燃料タンク本体101の後側板102には、エンジンからの戻り燃料を受け入れる戻り燃料受入口103が設けられている。
戻り燃料受入口103は、一般的には後側板102の上部に設けられている。戻り燃料受入口103の位置が低いと燃料タンク100が満タンのときに燃料の自重で戻り燃料が吐出されにくいからである。
戻り燃料受入口103と、戻り燃料が流通される戻り燃料配管(図示省略)とは、戻り側配管継手104によって接続されている。戻り側配管継手104には、燃料タンク本体101の前側板105に向かって開口された戻り燃料吐出口106が設けられている。
【0006】
燃料タンク本体101の前側板105の中央部には、燃料ゲージ107が装着されている。燃料ゲージ107は、燃料タンク本体101に収容される燃料の液面高さの変化に合わせて燃料タンク本体101の内部における中央部101bで所定の軌跡を描いて上下方向に動くフロート108を備えている。燃料ゲージ107においては、フロート108の上下方向の移動量に基づく所定の信号を運転室内のモニタに向かって出力するようにされている。モニタの内部の演算回路は、燃料ゲージ107からの信号に基づいて燃料の残量を演算し、モニタに装備された燃料メータにその演算結果に基づく燃料の残量が表示される。
なお、フロート108を燃料タンク本体101の内部における中央部101bに配する理由は、油圧ショベルが傾いたときにフロート108が燃料の液面の傾きの変化の影響をなるべく受けないようにするためである。
【0007】
ところで、戻り側配管継手104の戻り燃料吐出口106は、燃料タンク本体101の前側板105に向かって開口されているので、戻り燃料吐出口106から吐出される戻り燃料は、図9(a)中記号R矢印で示されるような放射線状の軌跡を描いて燃料タンク本体101の内部における中央部101bにまで届いてしまう。
このため、従来の燃料タンク100では、戻り燃料吐出口106から吐出された燃料が燃料ゲージ107のフロート108に当たり、フロート108の挙動が不規則になり、燃料の残量が正しく検出されないという問題点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前述のような問題点に鑑みてなされたもので、戻り燃料に起因して燃料の残量が正しく検出されないといった不具合の発生を未然に防ぐことができる建設機械の燃料タンクを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明による建設機械の燃料タンクは、
エンジンに供給する燃料の収容部を有する燃料タンク本体と、
前記燃料タンク本体の一側板の上部に設けられ、エンジンからの戻り燃料を受け入れる戻り燃料受入口と、
前記戻り燃料受入口と、前記戻り燃料が流通される戻り燃料配管とを接続する戻り側配管継手と、
前記燃料タンク本体に収容される燃料の液面高さの変化に合わせて前記燃料タンク本体の内部における中央部で所定の軌跡を描いて上下方向に動くフロートの上下方向の移動量に応じた所定の信号を出力する燃料ゲージと、
を備える建設機械の燃料タンクにおいて、
前記戻り側配管継手は、前記一側板の内側の板面に沿う方向に前記戻り燃料を吐出する戻り燃料吐出口を有することを特徴とするものである(第1発明)。
【0010】
本発明において、
前記戻り側配管継手は、前記戻り燃料受入口を通して前記燃料タンク本体の内部に突入される中空状の軸部と、この軸部の端部を塞ぐ端壁部とを有し、
前記戻り燃料吐出口は、前記軸部の外周面に内部と連通する孔を設けることによって形成されるものであるのが好ましい(第2発明)。
【0011】
本発明において、前記戻り燃料吐出口は、前記燃料タンク本体の内部で、下方または側方に向けて開口されるのが好ましい(第3発明)。
【発明の効果】
【0012】
第1発明においては、エンジンからの戻り燃料が戻り燃料配管を介して戻り側配管継手にまで戻される。戻り側配管継手にまで戻された戻り燃料は、戻り側配管継手の戻り燃料吐出口から燃料タンク本体における一側板の内側の板面に沿う方向に吐出される。このため、戻り燃料吐出口から吐出された燃料が燃料ゲージのフロートに当たることがない。したがって、戻り燃料に起因して燃料の残量が正しく検出されないといった不具合の発生を未然に防ぐことができる。
【0013】
第2発明においては、戻り側配管継手における中空状の軸部の端部が塞がれ、かつその軸部の外周に内部と連通する孔が設けられることにより、燃料タンク本体における一側板の内側の板面に沿う方向に戻り燃料を吐出するための戻り燃料吐出口を容易に形成することができる。
【0014】
第3発明においては、燃料タンク本体の内部で戻り燃料吐出口が下方または側方に向けて開口される。つまり、戻り側配管継手には、燃料タンク本体の内部で上方に向けて開口される戻り燃料吐出口が設けられない。これにより、戻り燃料が燃料タンク本体の天板に当たり跳ね返ってフロートに当たるのを確実に防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る燃料タンクを具備する油圧ショベルの全体斜視図
【図2】第1の実施形態に係る燃料タンクの配管説明図
【図3】第1の実施形態に係る燃料タンクの上面図(a)および後面図(b)
【図4】図3(a)のA−A線断面図
【図5】図4のB部拡大図
【図6】戻り側配管継手の右側の全体斜視図(a)および左側の全体斜視図(b)
【図7】第2の実施形態に係る燃料タンクの要部構造説明図
【図8】第3の実施形態に係る燃料タンクの要部構造説明図
【図9】従来の燃料タンクの縦断面(a)および(a)のC部拡大図(b)
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明による建設機械の燃料タンクの具体的な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
なお、以下に述べる実施の形態は、油圧ショベル(建設機械)の上部旋回体に装備される燃料タンクに本発明が適用された例である。しかし、これに限定されるものではなく、油圧ショベル以外の例えばブルドーザ等の建設機械に装備される燃料タンクにも本発明が適用される。また、以下の説明において、前後左右方向は、特段の断りがない限り、上部走行体の前後左右方向に一致させている。
【0017】
<油圧ショベルの概略説明:図1参照>
図1に示される油圧ショベル1は、履帯式走行装置2aを具備する下部走行体2を備えている。
下部走行体2上には、上部旋回体3が旋回自在に設置されている。
上部旋回体3の前部中央部分には、ブーム4、アーム5およびバケット6が互いに回動自在に連結されてなる作業機7が屈曲起伏自在に取り付けられている。
上部旋回体3の前部左側部分には、運転室を構成するキャブ8が設置されている。
上部旋回体3の後部には、最後部に搭載されるカウンタウェイト9との間においてエンジンフード10等のカバー類で区画形成されるエンジンルーム11が設けられている。エンジンルーム11の内部には、エンジン12が格納されている。
上部旋回体3の前後方向中間部における右側部分には、燃料タンク13が搭載されている。
【0018】
<エンジンの概略説明:図2参照>
図2に示されるように、エンジン12は、上部旋回体3の骨組を構成するレボフレーム14のメインフレーム部14aに跨るように設置されている。エンジン12は、エンジン本体15に燃料圧縮ポンプ16やフィルタ装置17等が付設されて構成されている。エンジン12において、燃料圧縮ポンプ16によって圧縮された燃料は、図示されないコモンレール(蓄圧器)で一旦蓄えられ、コモンレールから図示されないインジェクタに送られ、インジェクタからエンジン本体15の燃焼室内へと噴射される。
【0019】
<燃料タンクの概略説明:図2参照>
燃料タンク13は、レボフレーム14の右サイドフレーム部14bに設置されている。燃料タンク13は、燃料タンク本体20を備えている。
【0020】
<燃料タンク本体の説明:図3、図4参照>
図3(b)に示されるように、燃料タンク本体20は、第1折り曲げ板材21と、第2折り曲げ板材22とにより構成されている。
第1折り曲げ板材21は、天板21aの左側および右側にそれぞれ左側板21bおよび右側板21cが左右方向に板面を向けて垂れ下がり状に連設されてなり、上部旋回体3の後側から見て略逆Uの字形状に折り曲げ加工が施されて形成されている。
図4に示されるように、第2折り曲げ板材22は、底板22aの前側および後側にそれぞれ前側板22bおよび後側板22cが前後方向に板面を向けて立ち上がり状に連設されてなり、上部旋回体3の右側から見て略Uの字形状に折り曲げ加工が施されて形成されている。
第1折り曲げ板材21と第2折り曲げ板材22とを互いの内側面を向かい合わせて組み合わせ、互いの突き合わせ部を溶接することにより、エンジン12に供給する燃料の収容部20aを有する燃料タンク本体20が形成される。
図3(b)に示されるように、天板21aには、円筒状部材で構成される給油口23が立設されている。給油口23には、給油キャップ24が装着されている。給油キャップ24を取り外し、給油口23に図示されない給油ノズルを挿入することで燃料を給油することができる。
底板22aには、円筒状部材で構成される送油口25が垂設されている。送油口25には、送り側配管継手26が装着されている。送り側配管継手26は、従来一般的に使用されているエルボと称される配管継手である。
なお、前側板22bと後側板22cとの間には、図示省略される所要のバッフルプレートが架設されている。
【0021】
<燃料ゲージの説明:図4参照>
図4に示されるように、前側板22bの中央部には、燃料ゲージ27が装着されている。燃料ゲージ27は、燃料タンク本体20の内部に配される燃料ゲージ本体27aを備えている。
燃料ゲージ本体27aには、燃料タンク本体20の内部に配されるアーム28の基端部が回転自在に支持されている。アーム28は、燃料ゲージ本体27aを支点として上下方向に揺動自在とされている。
アーム28の先端部には、フロート29が取り付けられている。フロート29は、燃料タンク本体20に収容される燃料の液面高さの変化に合わせて燃料タンク本体20の内部における中央部20bでアーム28の上下方向の揺動運動に従って円弧状の軌跡を描いて上下方向に動くようにされている。なお、フロート29を燃料タンク本体20の内部における中央部20bに配する理由は、油圧ショベル1(図1参照)が傾いたときにフロート29が燃料の液面の傾きの変化の影響をなるべく受けないようにするためである。
燃料ゲージ本体27aには、更に、フロート29の上下方向の移動量と一定の関係にあるアーム28の基端部の回転角を電圧値として変換した信号を出力するポテンショメータ30が付設されている。ポテンショメータ30からの信号は、キャブ8(図1参照)の内部に設けられる図示されないモニタに与えられる。モニタの内部の演算回路は、ポテンショメータ30からの信号に基づいて燃料の残量を演算し、モニタに装備された燃料メータにその演算結果に基づく燃料の残量が表示される。
【0022】
<戻り燃料受入口の説明:図5参照>
図5に示されるように、後側板22cの上部における左右方向中間位置には、エンジン12からの戻り燃料を受け入れる戻り燃料受入口31が設けられている。戻り燃料受入口31は、燃料タンク本体20の後側板22cに丸孔を設けることで形成される。
後側板22cの外側の板面には、戻り燃料受入口31に対応する雌螺子部32aを有する円筒状のボス32が溶接されている。ボス32には、戻り側配管継手33が装着されている。
【0023】
<戻り側配管継手の説明:図5参照>
戻り側配管継手33は、戻り燃料流通路34を備えている。戻り燃料流通路34は、前後方向に水平に延びて後側板22cを貫く第1軸線Oと、後側板22cの外側においてその第1軸線Oに直角に交わって下方に向けて延びる第2軸線Oとに沿って形成されている。
戻り側配管継手33は、第1軸線Oと第2軸線Oとの交わりの角部においてその本体部分を構成する配管継手本体35を備えている。配管継手本体35には、第1軸線Oに沿い前方に向かって順に第1雄螺子部36、第1軸部37、第2雄螺子部38および第2軸部39がそれぞれ形成されている。さらに、配管継手本体35には、第2軸線Oに沿い下方に向かって第3雄螺子部40が形成されている。
【0024】
<同上:図5参照>
第1雄螺子部36には、ナット41が装着されている。
第1軸部37の外周には、ナット41側にワッシャ42が、第2雄螺子部38側にOリング43がそれぞれ装着されている。
第2雄螺子部38は、ボス32の雌螺子部32aにねじ込まれる。
【0025】
<同上:図5、図6参照>
図5に示されるように、第2軸部39は、その基端部分(後半部分)がボス32から戻り燃料受入口31に亘る位置に配され、その先端部分(前半部分)が燃料タンク本体20の内部に突入されている。
図5および図6(a)(b)に示されるように、第2軸部39の基端部分には、上下左右のそれぞれの方向に開口された4つの戻り燃料吐出口51,52,53,54が設けられている。また、第2軸部39の先端部分には、下方、左側方および右側方のそれぞれの方向に開口された3つの戻り燃料吐出口55,56,57が設けられている。なお、第2軸部39の先端部分においては、上方に向かって開口される戻り燃料吐出口が設けられない。これにより、戻り燃料が燃料タンク本体20の天板21aに当たり跳ね返ってフロート29に当たるのを確実に防ぐことができる。
第2軸部39に設けられる合計7つの戻り燃料吐出口51〜57は、いずれも第2軸部39の外周面に戻り燃料流通路34と連通する丸孔を設けることによって形成される。
第2軸部39の先端部には、閉鎖プレート58が配されている。閉鎖プレート58は、第2軸部39の先端部の縁をかしめることによって第2軸部39の先端部に固定され、第2軸部39の先端部を塞ぐ端壁部として機能する。
こうして、第2軸部39の端部が塞がれ、かつその第2軸部39の外周面に戻り燃料流通路34と連通する丸孔が設けられることにより、後側板22cの内側の板面に沿う方向に戻り燃料を吐出するための戻り燃料吐出口51〜57を容易に形成することができる。
【0026】
<同上:図5参照>
この戻り側配管継手33においては、第2雄螺子部38がボス32の雌螺子部32aにねじ込まれ、ボス32の開口端縁における環状凹部32bとの間にOリング43およびワッシャ42をそれぞれ挟んだ状態でナット41を締め付けることにより、Oリング43にてシールされた状態でボス32に固定される。
【0027】
<燃料タンクの配管の説明:図2参照>
図2に示されるように、送り側配管継手26は、燃料供給ホース59を介してエンジン12のフィルタ装置17と接続されている。
戻り側配管継手33は、戻り燃料ホース60を介してエンジン12の燃料圧縮ポンプ16に接続されている。なお、戻り側配管継手33と戻り燃料ホース60とは、戻り燃料ホース60の一端部に設けられる袋ナットを戻り側配管継手33の第3雄螺子部40(図5参照)にねじ込むことによって接続される。
【0028】
<燃料の流れの説明:図2、図5、図6参照>
図2に示されるように、燃料タンク13に蓄えられる燃料は、送油口25から送り側配管継手26、燃料供給ホース59を介してフィルタ装置17に送られる。フィルタ装置17を通過した燃料は、エンジン本体15の内部に形成される図示されない燃料流通路(図示省略)を通って燃料圧縮ポンプ16に送られる。燃料圧縮ポンプ16によって圧縮された燃料は、図示されないコモンレール(蓄圧器)で一旦蓄えられ、その後、コモンレールから図示されないインジェクタに送られ、インジェクタからエンジン本体15の燃焼室内へと噴射される。
燃料圧縮ポンプ16によって圧縮されたにも関わらず使用されなかった燃料は、戻り燃料ホース60および戻り側配管継手33を介して燃料タンク13に戻される。この際、戻り燃料は、図5および図6(a)(b)に示されるように、戻り側配管継手33の第2軸部39に設けられる合計7つの戻り燃料吐出口51〜57から吐出される。
【0029】
<本実施形態の作用効果の説明:図4、図5、図6参照>
戻り側配管継手33における第2軸部39の基端部分においては、図5および図6(a)(b)に示される上下左右のそれぞれの方向に開口された4つの戻り燃料吐出口51,52,53,54から戻り燃料が吐出され、図5に示されるボス32から戻り燃料受入口31に亘る部分の内周面に衝突した後、燃料タンク本体20の内部に流れ込む。このため、これら4つの戻り燃料吐出口51,52,53,54から吐出された戻り燃料は、図4に示される燃料ゲージ27のフロート29に当たることがない。
また、戻り側配管継手33における第2軸部39の先端部分においては、図5および図6(a)(b)に示される下方、左側方および右側方のそれぞれの方向に開口された3つの戻り燃料吐出口55,56,57から戻り燃料が吐出される。これら3つの戻り燃料吐出口55,56,57からは、図4中記号Q矢印で示されるように、戻り燃料が後側板22cに沿って下方、左側方および右側方のそれぞれの方向に吐出される。このため、戻り燃料吐出口55,56,57から吐出された燃料が燃料ゲージ27のフロート29に当たることがない。
なお、これら3つの戻り燃料吐出口55,56,57のうち、下方に開口された戻り燃料吐出口55から吐出された戻り燃料が燃料の液面に衝突したとしても、液面に衝撃が吸収されるため、液面で跳ね返ってフロート29に当たることがない。
したがって、戻り燃料に起因して燃料の残量が正しく検出されないといった不具合の発生を未然に防ぐことができる。
【0030】
〔第2の実施形態〕
図7には、本発明の第2の実施形態に係る燃料タンクの要部構造説明図が示されている。
なお、第2の実施形態において、第1の実施形態と同一または同様のものについては図に同一符号を付すに留めてその詳細な説明を省略することとし、以下においては、第1の実施形態と異なる点を中心に説明することとする。
【0031】
第2の実施形態において、戻り側配管継手33Aにおける戻り燃料流通路34Aは、前後方向に水平に延びて燃料タンク本体20の後側板22cを貫く第1軸線Oと、後側板22cの外側においてその第1軸線Oに直角に交わって下方に向けて延びる第2軸線Oと、後側板22cの内側においてその第1軸線Oに直角に交わって下方に向けて延びる第3軸線Oとに沿って形成されている。
戻り側配管継手33Aの本体部分を構成する配管継手本体35には、第1軸線Oに沿い前方に向かって順に第1雄螺子部36、第1軸部37、第2雄螺子部38および第2軸部39Aがそれぞれ形成されている。第2軸部39Aには、第1の実施形態では設けられていた7つの戻り燃料吐出口51〜57が設けられていない。第2軸部39Aには、第3軸線Oに沿い下方に向かって第3軸部61が一体的に連設されている。第3軸部61の先端を下方に向けて開口することにより、後側板22cの内側の板面に沿って下方に戻り燃料を吐出する戻り燃料吐出口62が形成される。
なお、戻り側配管継手33Aにおいては、第3軸部61が形成される前の段階で、第2雄螺子部38に溶接接合前のボス32をねじ込んでおき、その後、第2軸部39Aに対し第3軸部61が例えば曲げ加工や溶接加工等によって形成される。そして、戻り燃料受入口31を通して第3軸部61を燃料タンク本体20の内部に突入させ、戻り燃料受入口31に対しボス32を位置決め後、ボス32を後側板22cに溶接する。
第2の実施形態においては、戻り側配管継手33Aの第3軸部61に設けられた戻り燃料吐出口62から戻り燃料が後側板22cに沿って下方に向けて吐出される。このため、戻り燃料吐出口62から吐出された燃料が燃料ゲージ27のフロート29に当たることがない。
したがって、第2の実施形態によっても、第1の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0032】
〔第3の実施形態〕
図8には、本発明の第3の実施形態に係る燃料タンクの要部構造説明図が示されている。
なお、第3の実施形態において、第1の実施形態と同一または同様のものについては図に同一符号を付すに留めてその詳細な説明を省略することとし、以下においては、第1の実施形態と異なる点を中心に説明することとする。
【0033】
第3の実施形態においては、第1の実施形態における戻り側配管継手33の第2軸部39に相当する軸部39Bが予めボス32Bに一体的に形成されている。また、ボス32Bには、従来一般的にエルボと称されて使用されている戻り側配管継手33Bがねじ込まれている。なお、この場合、戻り側配管継手33B、第2ボス32Bおよび軸部39Bを含む構成が本発明の「戻り側配管継手」に相当する。
軸部39Bの基端部分においては、上下左右のそれぞれの方向に開口された4つの戻り燃料吐出口51,52,53,54から戻り燃料が吐出され、ボス33Bから戻り燃料受入口31に亘る部分の内周面に衝突した後、燃料タンク本体20の内部に流れ込む。このため、これら4つの戻り燃料吐出口51,52,53,54から吐出された戻り燃料は、燃料ゲージ27のフロート29に当たることがない。
軸部39Bの先端部分においては、下方、左側方および右側方のそれぞれの方向に開口された3つの戻り燃料吐出口55,56,57(図6(a)参照)から戻り燃料が吐出される。これら3つの戻り燃料吐出口55,56,57からは、戻り燃料が後側板22cに沿って下方、左側方および右側方のそれぞれの方向に吐出される。このため、戻り燃料吐出口55,56,57から吐出された燃料が燃料ゲージ27のフロート29に当たることがない。
したがって、第3の実施形態によっても、第1の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0034】
以上、本発明の建設機械の燃料タンクについて、複数の実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記実施形態に記載した構成に限定されるものではなく、各実施形態に記載した構成を適宜組み合わせる等、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【0035】
なお、フロート29に戻り燃料が当たらないようにバッフルプレートを設けることにより、上記の実施形態と同様の作用効果を得ることも考えられる。しかしながら、このようなバッフルプレートを設けない理由は、バッフルプレートを燃料タンク20の内部に溶接すると、溶接線が燃料タンク20の表面に現れてしまい、外観が悪くなるからである。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明の建設機械の燃料タンクは、戻り燃料に起因して燃料の残量が正しく検出されないといった不具合の発生を未然に防ぐことができるという特性を有していることから、油圧ショベルやブルドーザ、ホイールローダ等の建設機械用の燃料タンクの用途に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0037】
1 油圧ショベル(建設機械)
12 エンジン
13 燃料タンク
20 燃料タンク本体
20a 収容部
22c 後側板(一側板)
27 燃料ゲージ
29 フロート
31 戻り燃料受入口
32B ボス
33,33A,33B 戻り側配管継手
39,39A 第2軸部
39B 軸部
51〜57,62 戻り燃料吐出口
58 閉鎖プレート(端壁部)
60 戻り燃料ホース(戻り燃料配管)
61 第3軸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンに供給する燃料の収容部を有する燃料タンク本体と、
前記燃料タンク本体の一側板の上部に設けられ、エンジンからの戻り燃料を受け入れる戻り燃料受入口と、
前記戻り燃料受入口と、前記戻り燃料が流通される戻り燃料配管とを接続する戻り側配管継手と、
前記燃料タンク本体に収容される燃料の液面高さの変化に合わせて前記燃料タンク本体の内部における中央部で所定の軌跡を描いて上下方向に動くフロートの上下方向の移動量に応じた所定の信号を出力する燃料ゲージと、
を備える建設機械の燃料タンクにおいて、
前記戻り側配管継手は、前記一側板の内側の板面に沿う方向に前記戻り燃料を吐出する戻り燃料吐出口を有することを特徴とする建設機械の燃料タンク。
【請求項2】
前記戻り側配管継手は、前記戻り燃料受入口を通して前記燃料タンク本体の内部に突入される中空状の軸部と、この軸部の端部を塞ぐ端壁部とを有し、
前記戻り燃料吐出口は、前記軸部の外周面に内部と連通する孔を設けることによって形成されるものである請求項1に記載の建設機械の燃料タンク。
【請求項3】
前記戻り燃料吐出口は、前記燃料タンク本体の内部で、下方または側方に向けて開口される請求項1または2に記載の建設機械の燃料タンク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−136051(P2012−136051A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−287780(P2010−287780)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【Fターム(参考)】