説明

建設機械の給脂管の配管構造

【課題】建設機械本体に取り付けられるブームの給脂管の配管構造において、作業者が地上に立った状態で効率的な給脂作業を行うことができる配管構造を提供する。
【解決手段】油圧ショベルのブーム15に設けられた第1〜第3ピン結合部17,19,21にグリスを供給するための第1〜第5給脂管27,37,…が、ブーム15に沿うようにブーム長手方向に延設された給脂管の配管構造である。ブーム15は、先端部15aにアームが回動可能に連結される一方、基端部15bが油圧ショベル1のショベル本体3に起伏可能に取り付けられている。第1〜第5給脂管27,37,…は、一端部に設けられた第1〜第5基端側給脂口が第1〜第3ピン結合部17,19,21に各々接続されている一方、他端部に設けられた第1〜第5先端側給脂口がブーム15の先端部15aに集中配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ショベル等の建設機械のブームに設けられた複数のピン結合部にグリスを供給するための複数の給脂管が、当該ブームに沿うようにブーム長手方向に延設された建設機械の給脂管の配管構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建設機械の本体に起伏可能に取り付けられるブームには、通常、機械本体、ブームシリンダ、アームシリンダ等と、当該ブームとをそれぞれ連結ピンを介して連結する複数のピン結合部が設けられている。これらのピン結合部には、当該ピン結合部に形成された貫通孔の孔壁と連結ピンとの摩擦による作動不良や、これら孔壁及び連結ピンの摩耗を抑えるために、定期的にグリスを供給(給脂)する必要がある。
【0003】
ところで、建設機械のブームでは、被給脂箇所であるピン結合部が当該ブームの長手方向に分散していることから、手動(手差し)給脂を行う作業者は、被給脂箇所間を逐次移動しながら給脂作業を行う必要があり、給脂時の作業性に劣るという問題があった。
【0004】
このような問題を解決するために、近年、複数の給脂管を建設機械のブームに沿うようにブーム長手方向に延設し、当該給脂管の一端部に設けられた給脂口を対応する複数のピン結合部に各々接続するとともに、当該給脂管の他端部に設けられた、外部からグリスを供給するための給脂口を一箇所(ブームの基端部)に集中配置するようにした配管構造が多い(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−137676号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、例えば油圧ショベル(建設機械)のブーム先端側には、当該ブームの先端部に回動可能に連結されたアームを回動させるためのアームシリンダが設けられていることから、外部からグリスを供給するための給脂口は、上述の如く、よりスペースを確保しやすいブーム基端側に設けられる。より詳しくは、当該給脂口は、ブームを起伏させるために当該ブームの左右両側に設けられた左右一対のブームシリンダとの干渉を避けるべく、ブーム基端側の上面に集中配置されている。
【0006】
しかしながら、例えばバケット容量が0.5m級以上の油圧ショベルのような大型の建設機械のブーム基端側の上面に集中配置された給脂管では、以下のような問題がある。すなわち、大型の油圧ショベルでは、下部走行体が大きくなることからブームとショベル本体との連結部の位置が必然的に高くなる。これに伴って、ブームの基端部の上面に集中配置された給脂口の位置が高くなり、作業者が地上に立った状態で、給脂口に外部からグリスを供給することが困難になる。
【0007】
このため、作業者が給脂を行う際には、脚立等の補助具を用意することとなり煩わしさを感じるとともに、給脂時の作業性に劣る(円滑且つ迅速な給脂作業が困難となる)という問題がある。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、建設機械の本体に起伏可能に取り付けられるブームに設けられた複数のピン結合部にグリスを供給するための建設機械の給脂管の配管構造において、作業者が地上に立った状態で円滑且つ迅速な給脂作業を行うことができる給脂管の配管構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために本発明では、ブームと機械本体との連結部の位置が高くなる大型の建設機械であっても、当該ブームの起伏動作(上げ下げ)により地上からの高さを自在に調整できるブームの先端部に、給脂管の給脂口を集中配置するようにしている。
【0010】
第1の発明は、建設機械のブームに設けられた複数のピン結合部にグリスを供給するための複数の給脂管が、当該ブームに沿うようにブーム長手方向に延設された建設機械の給脂管の配管構造であって、上記ブームは、先端部にアームが回動可能に連結される一方、基端部が上記建設機械の本体に起伏可能に取り付けられており、上記複数の給脂管は、一端部に設けられた第1給脂口が対応する上記複数のピン結合部に各々接続されている一方、他端部に設けられた第2給脂口が上記ブームの先端部に集中配置されていることを特徴とするものである。
【0011】
第1の発明によれば、複数の給脂管の第2給脂口は、ブームの先端部に集中配置されているので、作業者は被給脂箇所であるピン結合部間を逐次移動する必要がなく、円滑且つ迅速な給脂作業を行うことができる。
【0012】
また、給脂管の第2給脂口は建設機械の本体に取り付けられるブームの基端部ではなく先端部に配置されているので、ブームの先端を下げる(ブームを倒伏させる)と、当該ブームの先端部に配置された第2給脂口の高さが作業者の身長以下の高さとなる。これにより、作業者は脚立等の補助具を用いることなく地上に立った状態で、より円滑且つ迅速な給脂作業を行うことができる。
【0013】
第2の発明は、上記第1の発明において、上記複数の給脂管の第2給脂口は、上記ブームの先端部近傍の一方側の側面に配置されていることを特徴とするものである。
【0014】
ところで、例えば油圧ショベルのブームの上面には、アームを回動させるためのアームシリンダが配設されているため、ブームの先端部近傍の上面に第2給脂口を配置すると、当該アームシリンダが邪魔になり、給脂作業が難しくなる。これを回避するために、給脂管を先端部付近で90度曲げてブーム側面方向に第2給脂口を向けて配置することも考えられるが、給脂配管が急激に曲げられることにより、抵抗となって給脂し難くなるという問題が生じる。
【0015】
ここで、第2の発明によれば、複数の給脂管の第2給脂口をブームの先端部近傍の一方側の側面に配置しているので、アームシリンダが邪魔になることなく、容易に給脂作業が行える。
【0016】
また、給脂対象となる結合ピンがブームの上面に一部位置するため、ブームの上面に給脂配管の一部が配置されることになるが、給脂配管を急激に曲げることなくブーム上面から側面に導くことができるので、著しく給脂抵抗が増すことはない。
【0017】
さらに、ブーム先端部近傍からは、アーム、バケットの給脂対象となる連結ピンが近いため、給脂作業性が向上する。
【0018】
第3の発明は、上記第2の発明において、上記複数の給脂管の第2給脂口は、ブーム長手方向先端側に向けて開口するように配置されていることを特徴とするものである。
【0019】
第3の発明によれば、第2給脂口をブーム長手方向先端側に向けて開口するように配置することにより、配管の曲がりを抑えて給脂抵抗を低減させることができる。
【0020】
なお、本発明において、「第2給脂口」とは、ハンドグリスガン等によりグリスが直接供給されるグリスニップルではなく、給脂管の他端部に設けられた「口金」を意味する。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る建設機械の給脂管の配管構造によれば、複数の給脂管の第2給脂口は建設機械の本体に起伏可能に取り付けられるブームの基端部ではなく先端部に集中配置されているので、ブームを下げることによって当該第2給脂口の位置が低くなることから、作業者は、被給脂箇所であるピン結合部間を逐次移動することなく、地上に立った状態で円滑且つ迅速な給脂作業を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0023】
図1は、本発明に係る建設機械の給脂管の配管構造を有するブームを備えた油圧ショベルの側面図を示し、図2は、ブームの側面図を示し、図3は、ブーム先端側の上面図を示し、図4は、ブーム基端側の上面図を示し、図5は、ブーム先端部の部分詳細図を示す。なお、図3では、図を見易くするために、アームシリンダ55を二点鎖線で示している。
【0024】
図1に示す油圧ショベル1は、バケット容量が0.5m級の油圧ショベルであり、ショベル本体3と、当該ショベル本体3に起伏可能に取り付けられているフロントアタッチメント5とを備えている。なお、図1中の符合Pは、油圧ショベルのメンテナンス等を行う作業者を示す。
【0025】
上記ショベル本体3は、クローラ9aを装着した下部走行体9と、当該下部走行体9の上部に旋回自在に搭載されている、運転室用のキャブ11を備えた上部旋回体7とを有している。
【0026】
上記フロントアタッチメント5は、ショベル本体3におけるキャブ11の右側に配置されており、ショベル本体3に起伏可能に取り付けられるブーム15と、当該ブーム15の先端部15aに回動可能に連結されたアーム25と、当該アーム25の先端部に連結ピン35aを介して回動可能に連結されたバケット35とを有している。なお、図1中の符合69は、基端部がアーム25の先端部近傍に連結ピン69aを介して回動可能に連結されるアイドラリンクであり、符合71は、先端部がバケット35に連結ピン71bを介して回動可能に連結されるバケットリンクである。
【0027】
上記ブーム15は、図2に示すように、上側に円弧状に膨らむ湾曲部15cをその中央部に有する略ブーメラン状をなしている。また、ブーム15には、ショベル本体3、当該ブーム15を起伏させるためのブームシリンダ45,45、上記アーム25を回動させるためのアームシリンダ55及びアーム25と、当該ブーム15とをそれぞれ連結ピン17a,19a,21a,23aを介して連結する4つのピン結合部17,19,21,23が設けられている。
【0028】
より詳しくは、図1〜図4に示すように、ブーム15の基端部15bには、当該ブーム15を上部旋回体7に対してブームフットピン17aを介して起伏可能に連結するための第1ピン結合部17が設けられている。また、ブーム15の湾曲部15cにおけるその側面15d,15eには、ブームシリンダ45,45が連結ピン19aを介して回動可能に連結される第2ピン結合部19が設けられている。このようにブーム15に第1及び第2ピン結合部17,19を設けることにより、ブーム15は、ブームシリンダ45,45の伸長及び縮小に伴って、ブームフットピン17aを中心として起伏動作(上げ下げ)を行うようになっている。
【0029】
一方、ブーム15の湾曲部15c近傍(湾曲部15cよりも先端側)におけるその上面15dには、アームシリンダ55が連結ピン21aを介して回動可能に連結される第3ピン結合部21が設けられている。また、ブーム15の先端部15a、換言すると、上記アーム25を左右から挟むようにブーム15の先端部15aに形成されたブーム側板15g,15gには、アーム25が連結ピン23aを介して回動可能に連結される第4ピン結合部23が設けられている。アーム25の後端部は、アームシリンダ55の連結部55a(シリンダロッド55bの先端部)と回動可能に連結されており、当該アーム25は、アームシリンダ55の伸長及び縮小に伴って、連結ピン23aを中心として回動するようになっている。
【0030】
なお、上記バケット35は、基端部がアーム25に連結ピン65aを介して揺動可能に連結されるとともに先端部がアイドラリンク69に連結ピン69bを介して回動可能に連結されるバケットシリンダ65の伸長及び縮小に伴って、アーム25先端を中心として回動するようになっている。また、本発明で言うところのピン結合部は、第1ピン結合部17、第2ピン結合部19及び第3ピン結合部21に対応する。
【0031】
ところで、上記第1〜第3ピン結合部17,19,21では、ブーム15の起伏動作やブームシリンダ45,45及びアームシリンダ55の回動動作が繰り返し行われることから、第1〜第3ピン結合部17,19,21に形成された貫通孔(図示せず)の孔壁と各連結ピン17a,19a,21aとの摩擦による作動不良や、貫通孔の孔壁及び連結ピン17a,19a,21aの摩耗を抑えるために、これら第1〜第3ピン結合部17,19,21に定期的にグリスを供給(給脂)する必要がある。
【0032】
このため、従来から、複数のピン結合部が設けられたブームには、これらピン結合部に手動でグリスを供給するための給脂管が、図6及び図7に示すように配管されていた。すなわち、ブーム基端部115bのピン結合部117にグリスを供給するための第1及び第2給脂管127,137は、一端部に設けられた給脂口127b,137bがそれぞれピン結合部117の右側及び左側に接続されており、共にブーム115の上面115dに沿ってブーム長手方向先端側に延びるように配設されている。
【0033】
また、左右のブームシリンダ145,145が連結されるピン結合部119にグリスを供給するための第3及び第5給脂管147,167は、一端部に設けられた給脂口147b,167bがそれぞれピン結合部119の左側及び右側に接続され、又、アームシリンダ155基端部のピン結合部121に給脂するための第4給脂管157は、一端部に設けられた給脂口157bがピン結合部121に接続されており、共にブーム115の上面115dに沿ってブーム長手方向基端側に延びるように配設されている。
【0034】
ブーム115の上面115dをブーム長手方向に延びるように配設された上記第1〜第5給脂管127,137,…は、ブーム長手方向におけるブームシリンダ145,145の基端部近傍の位置で右側に略90度屈曲して、ブーム115の右側側縁部まで延びている。そして、第1〜第5給脂管127,137,…の他端部に設けられた口金からなる給脂口127a,137a,147a,157a,167a(各給脂管127,137,…に外部からグリスを供給するための供給口)は、ブーム115の右側側縁部に設けられた固定ブロックによって結束され、ブーム長手方向に等間隔を空けて並ぶように集中配置されている。なお、これら給脂口127a,137a,…には、ストレート形状のグリスニップル127c,137c,147c,157c,167cが取り付けられており、作業者Pはハンドグリスガン等を用いて、ブーム15の右側から給脂を行うようになっている。
【0035】
このように、図6及び図7に示す従来の給脂管の配管構造では、第1〜第5給脂管127,137,…の給脂口127a,137a,…は、ブーム115の基端部115bに集中配置されているので、作業者Pは被給脂箇所であるピン結合部間117,119,121を逐次移動する必要がなく、効率的な給脂作業を行うことが可能となる。
【0036】
しかしながら、従来の建設機械の給脂管の配管構造では、給脂口127a,137a,…の配置位置が、図1で示すA位置に対応する位置(高さ)となるため、作業者Pが地上に立った状態で、給脂口127a,137a,…に外部からグリスを供給することが困難になるという問題があった。
【0037】
そこで、本実施形態の建設機械の給脂管の配管構造では、給脂管27,37,…の給脂口27a,37a,…を、ブーム15の基端部15bの上面15dではなく、ブーム15の上げ下げにより地上からの高さを自在に調整できるブーム15の先端部15aに集中配置することで、作業者Pが地上に立った状態で、給脂口27a,37a,…に外部からグリスを供給することができるようにしている。
【0038】
上記ブーム15には、図3及び図4に示すように、細い金属管等からなり可撓性を有する、上記第1〜第3ピン結合部17,19,21にグリスを供給するための5本の給脂管27,37,47,57,67が配設されている。より具体的には、ブーム15には、その基端部15bに設けられた第1ピン結合部17にグリスを供給するための第1及び第2給脂管27,37と、ブームシリンダ45,45が連結される第2ピン結合部19にグリスを供給するための第3及び第5給脂管47,67と、アームシリンダ55が連結される第3ピン結合部21にグリスを供給するための第4給脂管57と、がブーム長手方向に延設されている。
【0039】
上記第1給脂管27は、一端部に設けられた第1基端側給脂口(第1給脂口)27bが、第1ピン結合部17の右側の上端部に接続されている。この第1給脂管27は、当該接続箇所からブーム15の上面15dを左斜め前方に延びた後、ブーム15の上面15dに沿うように、その中央部を(平面視で)真っ直ぐブーム長手方向先端側に延びている。
【0040】
上記第2給脂管37は、一端部に設けられた第2基端側給脂口(第1給脂口)37bが、第1ピン結合部17の左側の上端部に接続されている。この第2給脂管37は、当該接続箇所からブーム15の上面15dを右斜め前方に延びた後、ブーム15の上面15dの中央部で第1給脂管27と合流し、当該第1給脂管27と共にブーム15の上面15dに配置された各種の油圧配管31,31,…の下を潜るように、(平面視で)真っ直ぐブーム長手方向先端側に延びている。
【0041】
このように、ブームシリンダ45,45よりもブーム基端側に位置する第1ピン結合部17にグリスを供給するための第1及び第2給脂管27,37をブーム15の上面15dに配設することで、ブーム15を起伏させる際に、当該ブーム15の左右両側でブームシリンダ45,45が当該ブーム15に対し相対的に回動して場合にも、第1及び第2給脂管27,37とブームシリンダ45,45とが干渉しないようになっている。
【0042】
上記第3給脂管47は、一端部に設けられた第3基端側給脂口(第1給脂口)47bが第2ピン結合部19の左側の上端部に接続されている。この第3給脂管47は、当該接続箇所から上方且つ後方に膨らむように湾曲した後、ブーム15の上面15dにおける左側の側縁部に沿ってブーム長手方向先端側に延びている。
【0043】
上記第4給脂管57は、一端部に設けられた第4基端側給脂口(第1給脂口)57bが第3ピン結合部21の後端部に接続されている。この第4給脂管57は、当該接続箇所から後方に膨らむように湾曲した後、ブーム長手方向先端側に延びて第1及び第2給脂管27,37と合流し、第1給脂管27と第2給脂管37との間で真っ直ぐブーム長手方向先端側に延びている。
【0044】
第5給脂管67は、一端部に設けられた第5基端側給脂口(第1給脂口)67bが第2ピン結合部19の右側の上端部に接続されていて、当該接続箇所から上方且つ後方に膨らむように湾曲した後、第1,第2及び第4給脂管27,37,57を第3給脂管47と共に左右両側から挟むように、ブーム15の上面15dにおける右側の側縁部に沿ってブーム長手方向先端側に延びている。
【0045】
第1,第2及び第4給脂管27,37,57と、第3給脂管47と、第5給脂管67とは、ブーム15の上面15dに倒伏し且つ縮小した状態におけるアームシリンダ55とアーム25との連結部55aよりもブーム基端側の位置で、緩い角度で左斜め前方に曲がりながら合流し、急激に曲げられることなくブームの上面15dから左側側面15eに導かれ、ブーム15の左側側面15eに沿って第4ピン結合部23の手前(ブームの先端部近傍)まで延びている。換言すると、第1〜第5給脂管27,37,…は、ブーム15の上面15dに倒伏し且つ縮小した状態におけるアームシリンダ55とアーム25との連結部55aよりもブーム先端側では、ブーム15の左側側面15eに沿うようにブーム長手方向に延設されている。
【0046】
このように第1〜第5給脂管27,37,…を、ブーム15の上面15dに倒伏し且つ縮小した状態におけるアームシリンダ55とアーム25との連結部からブーム15よりもブーム先端側では、ブーム15の左側側面15eに配置することで、当該アームシリンダ55が邪魔になることなく、容易に給脂作業が行える。また、第1〜第5給脂管27,37,…を急激に曲げることなくブーム上面15dから左側側面15eに導くことができるので、給脂抵抗が著しく増大するのを抑えることができる。
【0047】
図5に示すように、ブーム15の先端部15aに形成された左側のブーム側板15gには、第4ピン結合部23の基端側に上下方向に並ぶ5つの貫通孔が形成された固定ブロック29が設けられている。そして、第1〜第5給脂管27,37,…の口金からなる先端側給脂口27a,37a,…は、ブーム長手方向先端側に向かって開口するように当該固定ブロック29に固定され、上下方向に等間隔を空けて並ぶように集中配置されている。より詳しくは、第1〜第5給脂管27,37,…の先端側給脂口27a,37a,…は、ブーム15の先端部15aに集中配置されており、上から第3給脂管の先端側給脂口47a、第1給脂管の先端側給脂口27a、第4給脂管の先端側給脂口57a、第2給脂管の先端側給脂口37a、第5給脂管の先端側給脂口67aの順で固定ブロック29に固定されている。なお、各先端側給脂口27a,37a,…は、固定ブロック29に形成された孔に挿入されるとともに、当該各先端側給脂口27a,37a,…に螺合するナットで固定ブロック29を基端側及び先端側から挟むように締め付けることにより、当該固定ブロック29に固定されている。また、各先端側給脂口27a,37a,…には、90度屈曲型のグリスニップル27c,37c,47c,57c,67cが取り付けられており、これらグリスニップル27c,37c,…の給脂口はブーム長手直角方向左側に向かって開口している。
【0048】
このように、第1〜第5給脂管27,37,…の先端側給脂口27a,37a,…を、ブーム15の先端部15aに集中配置することで、ピン結合部17,19,21間を作業者Pが逐次移動せずとも、第1〜第5給脂管27,37,…を介して各ピン結合部17,19,21にグリスが供給される。
【0049】
−給脂手順−
上述の如く、ブーム15の上面15d及び左側の側面15eに沿って配設された第1〜第5給脂管27,37,…を介して、第1〜第3ピン結合部17,19,21にグリスを供給する際には、先ず、作業者Pが油圧ショベル1の正面に立ち、運転者に給脂作業を行うことを合図等で伝える。そうして、作業者Pの合図等に従い、バケット35及びアーム25をショベル本体3側に折り畳んで油圧ショベル1のブーム15を伏した状態とする。これにより、第1〜第5給脂管27,37,…の先端側給脂口27a,37a,…の高さが作業者Pの腰の高さとほぼ同じ高さとなる。
【0050】
次いで、作業者Pが、ブーム15の先端部15aに近寄り、ブーム15の左側からブーム15の左側側面15eに対して垂直に不図示のハンドグリスガンやハンドグリスポンプ等を各グリスニップル27c,37c,…の給脂口に押し当て、当該各グリスニップル27c,37c,…を介して第1〜第5給脂管27,37,…に手動でグリスを送り込む。そうすると、当該グリスが第1〜第3ピン結合部17,19,21に各基端側給脂口27b,37b,…を介して供給され、例えば第1ピン結合部17のブームフットピン17aと当該第1ピン結合部17に形成された貫通孔との間を潤滑状態に保持される。
【0051】
なお、アーム25とブーム15との連結ピン23a、アームシリンダ55のロッド側の連結ピン55a、及びバケットシリンダ65のヘッド側の連結ピン65aは、第1〜第5給脂管27,37,…の先端側給脂口27a,37a,…が配置されているブーム15の先端部15aと近いことから、作業者Pは、大きく移動することなく、これらのピン結合部にも給脂を行うことができる。
【0052】
さらに、このようにバケット35及びアーム25をショベル本体3側に折り畳んで油圧ショベル1のブーム15を伏した状態では、アーム25とバケット35との連結ピン35a、アイドラリンク69の連結ピン69a,69b及びバケット35とアーム25との連結ピン71bも、ブーム15の先端部15aと近くなることから、作業者Pは、油圧ショベル1の周りを大きく移動することなく、これらのピン結合部にも給脂することができる。
【0053】
−効果−
本実施形態によれば、第1〜第5給脂管27,37,…の先端側給脂口27a,37a,…は、ブーム15の先端部15aに集中配置されているので、作業者Pは被給脂箇所であるピン結合部17,19,21間を逐次移動する必要がなく、円滑且つ迅速な給脂作業を行うことができる。
【0054】
また、第1〜第5給脂管27,37,…の先端側給脂口27a,37a,…は、油圧ショベル1のショベル本体3に取り付けられるブーム15の基端部15bではなく先端部15aに配置されているので、ブーム15の先端を下げる(ブーム15を倒伏させる)と、当該ブーム15の先端部15aに配置された先端側給脂口27a,37a,…の高さが、作業者Pの身長以下の(作業者Pの腰の)高さとなる。これにより、作業者Pは脚立等の補助具を用いることなく地上に立った状態で、より円滑且つ迅速な給脂作業を行うことができる。
【0055】
さらに、第1〜第5給脂管27,37,…の先端側給脂口27a,37a,…をブーム15の基端部15bではなく先端部15aに配置することにより、給脂作業の際、万が一グリスが飛散した場合にも、キャブ11の窓ガラス等がグリスで汚れるのを抑えて、運転室からの視界を良好に保つことができる。
【0056】
また、第1〜第5給脂管27,37,…の先端側給脂口27a,37a,…をブーム15の先端部15a近傍の左側側面15eに配置しているので、アームシリンダ55が邪魔になることなく、容易に給脂作業が行える。また、給脂対象となる結合ピン21aがブーム15の上面15dに位置するため、ブーム上面15dに第1〜第5給脂管27,37,…の一部が配置されることになるが、第1〜第5給脂管27,37,…を急激に曲げることなくブーム上面15dから左側側面15eに導くことができるので、著しく給脂抵抗が増すことはない。
【0057】
さらに、ブーム先端部15a近傍からは、アーム25、バケット35の給脂対象となる連結ピン23a,55a,65a,…が近いため、給脂作業性が向上する。
【0058】
また、第1〜第5給脂管27,37,…の口金からなる先端側給脂口27a,37a,…をブーム長手方向先端側に向けて開口するように配置することにより、配管の曲がりを抑えて給脂抵抗を低減させることができる。
【0059】
(その他の実施形態)
本発明は、実施形態に限定されず、その精神又は主要な特徴から逸脱することなく他の色々な形で実施することができる。
【0060】
上記実施形態では、本発明に係る建設機械の給脂管の配管構造を油圧ショベル1に適用したが、これに限らず、先端部にアーム25が回動可能に連結される一方、基端部が建設機械本体に起伏可能に取り付けられるブーム15を備えたものであれば、他の建設機械に適用してもよい。
【0061】
さらに、上記実施形態では、本発明に係る建設機械の給脂管の配管構造を、バケット容量が0.5m級の油圧ショベル1に適用したが、これに限らず、バケット容量が0.5m級よりも小さい(例えば、バケット容量が0.45m級の)油圧ショベルや、バケット容量が0.5m級よりも大きい(例えば、バケット容量が0.7m級の)油圧ショベルに適用してもよい。
【0062】
また、上記実施形態では、ブーム15の先端部15aにおける左側の側面15eに給脂管の給脂口を集中配置したが、これに限らず、右側の側面15fに給脂管の先端側給脂口27a,37a,…を集中配置してもよい。
【0063】
さらに、上記実施形態では、少なくとも、ブーム15の上面15dに倒伏し且つ縮小した状態におけるアームシリンダ55とアーム25との連結部55aよりもブーム先端側では、ブーム15の左側の側面に沿うように第1〜第5給脂管27,37,…を延設したが、これに限らず、連結部55aよりもブーム基端側でも(例えば、ブームシリンダ45,45とブーム15との結合部である第2ピン結合部19よりもブーム先端側では)、ブーム15の左側側面15eに沿うように第1〜第5給脂管27,37,…を延設してもよい。
【0064】
また、上記実施形態では、ブーム15の基端部15bの第1ピン結合部17と、ブームシリンダ45,45が連結される第2ピン結合部19と、アームシリンダ55が連結される第3ピン結合部21とに、グリスが供給できるように5本の給脂管を配設したが、これに限らず、ブーム15に設けられる他のピン結合部にグリスを供給できる給脂管を併せて設けてもよい。
【0065】
さらに、上記実施形態では、アーム25の先端部にバケット35を取り付けるようにしたが、これに限らず、例えば油圧破砕機をアーム25の先端部に取り付けるようにしてもよい。
【0066】
このように、上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0067】
以上説明したように、本発明は、建設機械の本体に起伏可能に取り付けられるブームに設けられたピン結合部に手動でグリスを供給するための建設機械の給脂管の配管構造等について有用である。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明に係る油圧ショベルの側面図である。
【図2】ブームの側面図である。
【図3】ブーム先端側の上面図である。
【図4】ブーム基端側の上面図である。
【図5】ブーム先端部の部分詳細図である。
【図6】従来の給脂管の配管構造を示すブーム基端側の上面図である。
【図7】従来の給脂管の配管構造を示すブーム基端側の側面図である。
【符号の説明】
【0069】
1 油圧ショベル(建設機械)
3 ショベル本体(建設機械の本体)
15 ブーム
15a 先端部
15d 上面
15e 左側の側面(一方側の側面)
17 第1ピン結合部(ピン結合部)
19 第2ピン結合部(ピン結合部)
21 第3ピン結合部(ピン結合部)
25 アーム
27 第1給脂管(給脂管)
27a 先端側給脂口(第2給脂口)
27b 基端側給脂口(第1給脂口)
37 第2給脂管(給脂管)
37a 先端側給脂口(第2給脂口)
37b 基端側給脂口(第1給脂口)
47 第3給脂管(給脂管)
47a 先端側給脂口(第2給脂口)
47b 基端側給脂口(第1給脂口)
55a 連結部
57 第4給脂管(給脂管)
57a 先端側給脂口(第2給脂口)
57b 基端側給脂口(第1給脂口)
67 第5給脂管(給脂管)
67a 先端側給脂口(第2給脂口)
67b 基端側給脂口(第1給脂口)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建設機械のブームに設けられた複数のピン結合部にグリスを供給するための複数の給脂管が、当該ブームに沿うようにブーム長手方向に延設された建設機械の給脂管の配管構造であって、
上記ブームは、先端部にアームが回動可能に連結される一方、基端部が上記建設機械の本体に起伏可能に取り付けられており、
上記複数の給脂管は、一端部に設けられた第1給脂口が対応する上記複数のピン結合部に各々接続されている一方、他端部に設けられた第2給脂口が上記ブームの先端部に集中配置されていることを特徴とする建設機械の給脂管の配管構造。
【請求項2】
請求項1記載の建設機械の給脂管の配管構造において、
上記複数の給脂管の第2給脂口は、上記ブームの先端部近傍の一方側の側面に配置されていることを特徴とする建設機械の給脂管の配管構造。
【請求項3】
請求項2記載の建設機械の給脂管の配管構造において、
上記複数の給脂管の第2給脂口は、ブーム長手方向先端側に向けて開口するように配置されていることを特徴とする建設機械の給脂管の配管構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−163824(P2010−163824A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−8197(P2009−8197)
【出願日】平成21年1月16日(2009.1.16)
【出願人】(000246273)コベルコ建機株式会社 (644)
【Fターム(参考)】