説明

建設機械

【課題】運転席を保護する保護体を吊り上げる際に活用される吊り具と、作業装置方向に対する照明を行う作業灯とを備えることを考慮した場合に、作業灯の外側部の保護を少ない部材数で実現させることができる建設機械の提供。
【解決手段】本発明は、例えばミニショベルから成り、旋回体2上に設けた運転席5を囲むように設けられ、運転席5に座ったオペレータを保護するキャノピー6と、このキャノピー6の上部に設けた第1,第2吊り具10a,11a、及び第1,第2作業灯10c,11cとを備えるとともに、第1,第2作業灯10c,11cのそれぞれを、対応する第1,第2吊り具10a,11aの両側部のうちの内側の近傍に配置し、第1,第2作業灯10c,11cの対応するものを保持し、第1,第2吊り具10a,11aの対応するものに固定される第1,第2ブラケット10b,11bを備えた構成にしてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転席を保護する保護体、例えばキャノピーの上部に吊り具を備えたミニショベル等の建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の建設機械として、特許文献1に示されるものがある。この特許文献1には、走行体と、この走行体上に設けられた旋回体と、この旋回体に上下方向の回動可能に設けられ、ブーム、アーム、バケット等を含む作業装置とを備えたミニショベルが開示されている。この従来技術は、旋回体上に配置される運転席を保護する保護体、例えばキャノピー本体の天井部に吊り具を備えており、この吊り具の吊り穴に挿通させたワイヤを介してキャノピー本体を含む車体を吊り下げることができるようになっている。
【0003】
また、ミニショベル等の建設機械にあって、作業装置方向に対する照明を行うライト、すなわち作業灯を備えたものが特許文献2に開示されている。この特許文献2に開示された従来技術は、キャノピーの天井面にライトブラケットを介して作業灯を取り付けた構成となっている。なお、作業灯の両側部のうちの外側部は開放空間に露出した状態となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−273909号公報
【特許文献2】特開2006−322315号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
建設機械において、キャノピー等の運転席を保護する保護体の吊り上げ動作と、作業装置方向に対する照明の確保とを実現させようとする場合、保護体の天井部に特許文献1に示される吊り具と、特許文献2に示される作業灯とを組み合わせて設けることが考えられる。しかし、これらの特許文献1,2に示される従来技術を単に組み合わせただけでは、特許文献2に示される作業灯の外側部は開放空間に露出した状態となることから、旋回等に際して作業灯が周囲の障害物などに接触し、破損する懸念がある。このような懸念を除くためには、作業灯の外側部を保護する部材を設けることが必要になる。すなわち、特許文献1,2に示される従来技術を併せ考慮したものでは、作業灯の破損を防止する保護部材が必要になり、このために当該建設機械の製作費が高くなる虞がある。
【0006】
本発明は、上述した従来技術における実状からなされたもので、その目的は、運転席を保護する保護体を吊り上げる際に活用される吊り具と、作業装置方向に対する照明を行う作業灯とを備えることを考慮した場合に、作業灯の外側部の保護を少ない部材数で実現させることができる建設機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するために、本発明に係る建設機械は、旋回体と、この旋回体に取り付けられる作業装置と、上記旋回体上に設けた運転席と、この運転席を囲むように設けられ、上記運転席に座ったオペレータを保護する保護体と、この保護体の上部に設けられ、上記保護体の吊り上げに際して活用される吊り具と、上記保護体に設けられ、上記作業装置方向に対する照明を行う少なくとも1つの作業灯とを備えた建設機械において、上記作業灯を、上記吊り具の両側方のうちの内側の近傍に配置するとともに、上記作業灯を保持し、上記吊り具に固定されるブラケットを備えたことを特徴としている。
【0008】
このように構成した本発明は、吊り具を介して運転席を保護する保護体を吊り上げることができ、また、作業灯によって旋回体に取り付けられた作業装置方向を照らすことができる。また、吊り具に固定されるブラケットを介して、作業灯を吊り具の内側の近傍に配置したことから、吊り具を作業灯の外側部の保護部材として活用することができる。これにより、作業灯の外側部の保護を少ない部材数で実現させることができる。
【0009】
また、本発明は、上記発明において、当該建設機械がミニショベルから成り、上記保護体が、立設部、及びこの立設部に湾曲部を介して連設される水平部を有する支柱を含むキャノピーから成り、上記支柱の湾曲部に上記吊り具を設けたことを特徴としている。
【0010】
このように構成した本発明は、キャノピーの支柱の立設部と水平部を連設させる湾曲部は、キャノピーの天井部付近に位置することから、この天井部付近の湾曲部に設けた吊り具によってキャノピーの安定した吊り上げ動作を実現させることができるとともに、天井部付近の湾曲部に設けた作業灯によって作業装置方向を確実に照らすことができる。
【0011】
また、本発明は、上記発明において、上記吊り具の前後方向の中心線よりも前側位置に上記作業灯を配置し、上記吊り具の上記中心線位置、または上記中心線位置よりも後側位置に、上記キャノピーの吊り上げに際して活用されるワイヤが挿通する吊り穴を設けたことを特徴としている。
【0012】
このように構成した本発明は、キャノピーの吊り上げに際して、吊り具の吊り穴に挿入させたワイヤと作業灯との干渉を防ぐことができる。これにより、キャノピーの安定した吊り上げ動作を実現させることができる。
【0013】
また、本発明は、上記発明において、上記キャノピーは、上記運転席を囲むように左右方向に並設された第1支柱と第2支柱とを有し、上記第1支柱の立設部と水平部を連設させる湾曲部に第1吊り具を設け、上記第2支柱の立設部と水平部を連設させる湾曲部に第2吊り具を設け、上記第1吊り具の内側に第1ブラケットを介して第1作業灯を配置し、上記第2吊り具の内側に第2ブラケットを介して第2作業灯を配置したことを特徴としている。
【0014】
このように構成した本発明は、第1吊り具及び第2吊り具を介してのキャノピーの安定した吊り上げ動作と、第1作業灯及び第2作業灯を介しての作業装置方向に対する良好な照明の確保とを実現させることができるとともに、第1吊り具によって第1作業灯の外側部の保護を、また、第2吊り具によって第2作業灯の外側部の保護を、それぞれ実現させることができる。
【0015】
また、本発明は、上記発明において、上記第1吊り具及び上記第2吊り具のそれぞれは、前部端縁が凸状の湾曲形状に形成され、後部端縁が上記第1支柱及び上記第2支柱のうちの対応する支柱の上記湾曲部の形状に応じた凹状の湾曲形状に形成され、上部端縁が水平方向に沿う直線形状に形成され、全体が平坦状の板部材から成り、上記第1ブラケット及び第2ブラケットのそれぞれは、上記第1吊り具及び上記第2吊り具のうちの対応する吊り具に固定される鉛直部と、上記第1作業灯及び上記第2作業灯のうちの対応する作業灯を保持する水平部とを含むL字形状部材から成ることを特徴としている。
【0016】
このように構成した本発明は、第1ブラケット及び第2ブラケットそれぞれの対応するブラケットが固定される第1吊り具及び第2吊り具のそれぞれが、キャノピーの第1支柱及び第2支柱の湾曲部に応じた形状に形成してあるので、これらの第1吊り具及び第2吊り具のそれぞれを、キャノピーの対応する第1支柱及び第2支柱のそれぞれに安定して取り付けることができる。これにより、第1ブラケット及び第2ブラケットを介して、第1作業灯及び第2作業灯の信頼性の高い取付構造を実現させることができる。また、第1吊り具及び第2吊り具のそれぞれを、平坦状の板部材によって形成し、第1ブラケット及び第2ブラケットのそれぞれを、L字形状部材によって形成してあることから、第1作業灯及び第2作業灯の取付構造を簡単な構成とすることができる。さらに、第1ブラケット及び第2ブラケットのそれぞれをL字形状部材によって形成してあることから、例えば第1ブラケットの向きを変えて第2吊り具に取り付けることにより、この第1ブラケットで第2作業灯を保持させることができ、また、第2ブラケットの向きを変えて第1吊り具に取り付けることにより、この第2ブラケットで第1作業灯を保持させることができる。すなわち、第1作業灯及び第2作業灯の設置に際して、第1ブラケット及び第2ブラケットのいずれかを選定する注意を払う必要なく、これらの第1作業灯及び第2作業灯を設置することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る建設機械は、作業装置方向に対する照明を行う作業灯を、運転席に座ったオペレータを保護する保護体の吊り上げに際して活用される吊り具の両側方のうちの内側の近傍に配置するとともに、作業灯を保持し、吊り具に固定されるブラケットを備えたことから、運転席を保護する保護体を吊り上げる際に活用される吊り具と、作業装置方向に対する照明を行う作業灯とを備えることを考慮した場合に、吊り具を作業灯の外側部の保護部材として活用でき、作業灯の外側部の保護を少ない部材数で実現させることができる。これにより、保護体を吊り上げる吊り具と、作業装置方向に対する照明を行う作業灯とを備える場合に懸念される当該建設機械の製作費の高騰化を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る建設機械の一実施形態を構成するミニショベルを示す側面図である。
【図2】本実施形態に備えられるキャノピーを示す側面図である。
【図3】本実施形態に備えられるキャノピーを前面側から見た斜視図である。
【図4】本実施形態に備えられるキャノピーを上側から見た斜視図である。
【図5】本実施形態に備えられる作業灯取付構造を示す斜視図である。
【図6】本実施形態に備えられる作業灯取付構造を構成する吊り具及び作業灯を示す図で、(a)図は正面図、(b)図は側面図、(c)図は平面図である。
【図7】本実施形態に備えられるキャノピーを保守点検作業に際して吊り上げた状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る建設機械の実施の形態を図に基づいて説明する。
【0020】
図1は本発明に係る建設機械の一実施形態を構成するミニショベルを示す側面図である。
【0021】
本実施形態に係るミニショベルは、走行体1と、この走行体1上に配置される旋回体2と、この旋回体2に上下方向の回動可能に設けられ、ブーム3a、アーム3b、バケット3cを含む作業装置3とを備えている。走行体1の前側位置にはブレード4を備えている。また、旋回体2上に運転席5を配置してあり、この運転席5を囲むように運転席5に座ったオペレータを保護する保護体、すなわちキャノピー6を備えている。
【0022】
図2,3,4は、本実施形態に係るミニショベルに備えられるキャノピーを示す図で、図2は側面図、図3は前面側から見た斜視図、図4は上側から見た斜視図である。
【0023】
図2に示すように、本実施形態に備えられるキャノピー6は、上述した運転席5が載置される床7に固定してある。この床7上には、側壁8が固定されている。
【0024】
また、キャノピー6は、立設部、及びこの立設部に湾曲部を介して連設される水平部を有する支柱を含んでいる。すなわち、図3,4に示すように、上述した運転席5を囲むように左右方向に並設されたそれぞれ丸パイプより成る第1支柱6aと第2支柱6bとを含んでいる。第1支柱6aは、前側に配置される立設部6a1と、この立設部6a1に湾曲部6a3を介して連設される水平部6a2とを有している。第2支柱6bは第1支柱6aと同等の形状寸法に設定されている。すなわち、この第2支柱6bも、第1支柱6aと同様の立設部6b1、水平部6b2、及びこれらの立設部6b2と水平部6b2を連設させる湾曲部6b3を備えている。また、第1支柱6aの水平部6a2と、第2支柱6bの水平部6b2とに両端部のそれぞれが保持され、天井部を構成する天板6cを備えている。なお、第1支柱6aの立設部6a1には、オペレータの床7への乗り込み動作を容易にさせる把手9を設けてある。
【0025】
同図3,4に示すように、第1支柱6aの湾曲部6a3に第1作業灯取付構造10を設け、第2支柱6bの湾曲部6b3に第2作業灯取付構造11を設けてある。これらの第1作業灯取付構造10及び第2作業灯取付構造11が、本実施形態に係るミニショベルの特徴とするものである。
【0026】
本実施形態に係るミニショベルは、図5に示すように、第1作業灯10c及び第2作業灯11cのそれぞれを、キャノピー6の吊り上げに際して活用される対応する第1吊り具10a及び第2吊り具11aのそれぞれの両側部のうちの内側の近傍に配置するとともに、第1作業灯10cを保持する第1ブラケット10b、及び第2作業灯11cを保持する第2ブラケット11bを備えている。
【0027】
第1作業灯取付構造10に含まれる第1吊り具10aは、キャノピー6の第1支柱6aの湾曲部6a3に例えば溶接により固定してあり、第2作業灯取付構造11に含まれる第2吊り具11aは、キャノピー6の第2支柱6bの湾曲部6b3に例えば溶接により固定してある。なお図4に示すように、第1支柱6aの水平部6a2の後部位置には別の吊り具15を、また、第2支柱6bの水平部6b2の後部位置には別の吊り具16を、それぞれ溶接により固定してある。
【0028】
図6の(b)図に示すように、第1吊り具10aは、キャノピー6の吊り上げに際して活用されるワイヤが挿通する吊り穴10a1を有し、前部端縁10a2が凸状の湾曲形状に形成され、後部端縁10a3が第1支柱6aの湾曲部6a3の形状に応じた凹状の湾曲形状に形成され、上部端縁10a4が水平方向に沿う直線形状に形成され、全体が平坦状の板部材から成っている。上述した第1吊り具10aの上部端縁10a4は、上述した図2等に示すように、例えば天板6cの高さ位置の近傍であって、天板6cよりもわずかに低い高さ位置となるように設定してある。
【0029】
第1作業灯10cを保持する第1ブラケット10bは、図6の(a)(c)図に示すように、ボルト13によって第1吊り具10aに固定される鉛直部10b1と、この鉛直部10b1に連設され、第1作業灯10cを保持する水平部10b2を含むL字形状部材から成っている。図6の(a)図に示すように、第1作業灯10cの下部に設けたねじ部10c1が第1ブラケット10bに形成した穴に挿入された状態で、ねじ部10b1に螺合するナット14を締め付けることによって、第1作業灯10cが第1ブラケット10bの水平部10b2に固定されている。第2作業灯11を保持する第2ブラケット11bは、例えば第1ブラケット10bと同等の形状寸法に設定されている。すなわち、第2ブラケット11bも、第1ブラケット10bにおけるのと同等の鉛直部及び水平部を有するL字形状部材から成っている。
【0030】
図6の(b)(c)図に示すように、第1作業灯10cは、第1吊り具10aの前後方向の中心線12よりも前側位置に配置してあり、第1吊り具10aの吊り穴10a1は、図6の(b)図に示すように、中心線12の位置に設けてある。なお、この吊り穴10a1は、第1吊り具10aの形状を大きく設定した場合などにあっては、中心線12よりもわずかに後方位置に設けるようにしてもよい。図示しないが第2作業灯11cも同様に、第2吊り具11aの前後方向の中心線よりも前側位置に配置してあり、第2吊り具11aの吊り穴11a1は、例えば中心線位置に設けてある。
【0031】
第1作業灯10c及び第2作業灯11cの上面の高さ位置は、図6の(a)(b)図に例示するように、第1吊り具10a及び第2吊り具11aの上部端縁10a4等と略同等の高さ位置に設定してある。
【0032】
このように構成した本実施形態に係るミニショベルにあっては、夜間等の作業に際しては、第1作業灯10c及び第2作業灯11cを点灯させて作業装置3方向を照らすことにより、作業装置3を駆動しての土砂の掘削作業等の所望の作業を支障なく行うことができる。
【0033】
また、例えば本実施形態に係るミニショベルの床7の下方に配置された図示しないコントロールバルブ、あるいはコントロールバルブに接続される配管の保守点検作業等に際しては、図7に示すように、例えば整備工場等の保守点検サービス拠点において、第1作業灯取付構造10に含まれる第1吊り具10aの吊り穴10a1、及び第2作業灯取付構造11に含まれる第2吊り具11aの吊り穴11a1のそれぞれにワイヤ17等を挿通し、図4にも示す別の吊り具15,16のそれぞれの吊り穴にワイヤ18等を挿通した状態で、ワイヤ17等及びワイヤ18等をリング状金具19に掛け、このリング状金具19にクレーン装置のフック20を係合させて、例えばキャノピー6、床7を含む構造体を吊り上げることが行われる。これにより、図示しないコントロールバルブ、及びこのコントロールバルブに接続される配管部分が露出し、所望のコントロールバルブ、あるいは配管部分の保守点検作業等を行うことができる。
【0034】
このように構成した本実施形態に係るミニショベルによれば、上述のように、第1,第2吊り具10a,11a、及び別の吊り具15,16を介して運転席5を保護するキャノピー6を吊り上げることができ、また、第1,第2作業灯10c,11cによって旋回体2に取り付けられた作業装置3方向を照らすことができる。また、第1吊り具10aに固定される第1ブラケット10b、及び第2吊り具11aに固定される第2ブラケット11bを介して、第1,第2作業灯10c,11cのそれぞれを、第1,第2吊り具10a,11aの対応するものの内側の近傍に配置したことから、第1,第2吊り具10a,11aを、対応する第1,第2作業灯10c,11cの保護部材として、それぞれ活用することができる。これにより、第1,第2作業灯10c,11cそれぞれの外側部の保護を、少ない部材数で実現させることができる。したがって、キャノピー6を吊り上げる第1,第2吊り具10a,11aと、作業装置3方向に対する照明を行う第1,第2作業灯10c,11cとを備える場合に懸念される当該ミニショベルの製作費の高騰化を抑えることができる。
【0035】
また、キャノピー6の第1,第2支柱6a,6bの立設部6a1,6b1と水平部6a2,6b2を連設させる湾曲部6a3,6b3は、キャノピー6の天井部すなわち天板6c付近に位置することから、この天板6c付近の湾曲部6a3,6b3に設けた第1,第2吊り具10a,11aによってキャノピー6の安定した吊り上げ動作を実現させることができるとともに、天板6c付近の湾曲部6a3,6b3に設けた第1,第2作業灯10c,11cによって作業装置3方向を確実に照らすことができ、作業装置3の駆動による作業を能率良く行うことができる。
【0036】
また、第1,第2吊り具10a,11aの前後方向の中心線12等よりも前側位置に第1,第2作業灯10c,11cを配置し、上述の中心線12位置、または中心線12位置よりも後側位置に、キャノピー6の吊り上げに際して活用されるワイヤ17等が挿通する吊り穴10a1,11a1を設けたことから、第1,第2吊り具10a,11aの吊り穴10a1,11a1に挿入させたワイヤ17等と第1,第2作業灯10c,11cとの干渉を防ぐことができる。これにより、キャノピー6の安定した吊り上げ動作を実現させることができる。
【0037】
また、第1,第2ブラケット10b,11bが固定される第1,第2吊り具10a,11aのそれぞれが、キャノピー6の第1,第2支柱6a,6bの湾曲部6a3,6b3に応じた形状に形成してあるので、これらの第1,第2吊り具10a,11aのそれぞれを、キャノピー6の対応する第1,第2支柱6a,6bのそれぞれに安定して取り付けることができる。これにより、第1,第2ブラケット10b,11bを介して、第1,第2作業灯10c,11cの信頼性の高い取付構造を実現させることができる。また、第1,第2吊り具10a,11aのそれぞれを、平坦状の板部材によって形成し、第1,第2ブラケット10b,11bのそれぞれを、L字形状部材によって形成してあることから、第1,第2作業灯10c,11cの第1,第2取付構造10,11を簡単な構成とすることができ、実用性に富む。
【0038】
さらに、第1,第2ブラケット10b,11bのそれぞれを、形状寸法の等しいL字形状部によって形成してあることから、例えば第1ブラケット10bの向きを変えて第2吊り具11aに取り付けることにより、この第1ブラケット10bで第2作業灯11cを保持させることができ、また逆に、第2ブラケット11bの向きを変えて第1吊り具10aに取り付けることにより、この第2ブラケット11bで第1作業灯10cを保持させることができる。すなわち、第1,第2作業灯10c,11cの設置に際して、第1,第2ブラケット10b,11bのいずれかを選定する注意を払うことなく、これらの第1,第2作業灯10c,11cを保持させることができ、第1,第2作業灯10c,11cを取り付ける作業を簡単に行うことができる。
【0039】
なお、上記実施形態は、2つの作業灯、すなわち第1,第2作業灯10c,11cを設けた構成にしてあるが、1つの作業灯のみによって作業装置3方向を照らすことによって該当する作業を支障なく実施できる場合などにあっては、第1作業灯10cと第2作業灯11cのうちのいずれか1つのみを設ける構成にしてもよい。
【0040】
また、上記では、第1,第2吊り具10a,11aを平坦状の板部材によって形成し、第1,第2ブラケット10b,11bをL字形状部材によって形成したが、本発明は、第1,第2吊り具10a,11a、及び第1,第2ブラケット10b,11bをこのような形状に形成することには限定されない。建設機械の機種に応じて各種の形状に設定することができる。
【0041】
また、上記では、第1,第2吊り具10a,11aの他に、キャノピー6の第1,第2支柱6a,6bの水平部6a2,6b2の後部位置にも別の吊り具15,16を設け、ワイヤ17等及びワイヤ18等を介して四点吊りでキャノピー6を吊り上げる構成にしてあるが、重量バランスを確保し得る場合には、別の吊り具15,16を設けることなく、第1,第2吊り具10a,11aを介しての二点吊りでキャノピー6を吊り上げる構成にしてもよい。
【0042】
また、上記では建設機械をキャノピー6を有するミニショベルによって構成してあるが、運転席5に座ったオペレータを保護する保護体が、運転室すなわちキャブより成るミニショベルによって構成してもよい。この場合には、キャブの前面側の天井部の上に、あるいは天井部付近に、上述した第1作業灯取付構造10及び第2作業灯取付構造11に相応した構成のものを取り付けるようにすればよい。さらに、本発明は、ミニショベルによって構成することには限られず、旋回体上に運転席に座ったオペレータを保護する保護体を有する各種の建設機械によって構成することができる。
【符号の説明】
【0043】
1 走行体
2 旋回体
3 作業装置
5 運転席
6 キャノピー(保護体)
6a 第1支柱
6a1 立設部
6a2 水平部
6a3 湾曲部
6b 第2支柱
6b1 立設部
6b2 水平部
6b3 湾曲部
6c 天板
10 第1作業灯取付構造
10a 第1吊り具
10a1 吊り穴
10a2 前部端縁
10a3 後部端縁
10a4 上部端縁
10b 第1ブラケット
10b1 鉛直部
10b2 水平部
10c 第1作業灯
11 第2作業灯取付構造
11a 第2吊り具
11a1 吊り穴
11b 第2ブラケット
11c 第2作業灯
12 中心線
17 ワイヤ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
旋回体と、この旋回体に取り付けられる作業装置と、上記旋回体上に設けた運転席と、この運転席を囲むように設けられ、上記運転席に座ったオペレータを保護する保護体と、この保護体の上部に設けられ、上記保護体の吊り上げに際して活用される吊り具と、上記保護体に設けられ、上記作業装置方向に対する照明を行う少なくとも1つの作業灯とを備えた建設機械において、
上記作業灯を、上記吊り具の両側方のうちの内側の近傍に配置するとともに、上記作業灯を保持し、上記吊り具に固定されるブラケットを備えたことを特徴とする建設機械。
【請求項2】
請求項1に記載の建設機械において、
当該建設機械がミニショベルから成り、
上記保護体が、立設部、及びこの立設部に湾曲部を介して連設される水平部を有する支柱を含むキャノピーから成り、
上記支柱の湾曲部に上記吊り具を設けたことを特徴とする建設機械。
【請求項3】
請求項2に記載の建設機械において、
上記吊り具の前後方向の中心線よりも前側位置に上記作業灯を配置し、上記吊り具の上記中心線位置、または上記中心線位置よりも後側位置に、上記キャノピーの吊り上げに際して活用されるワイヤが挿通する吊り穴を設けたことを特徴とする建設機械。
【請求項4】
請求項3に記載の建設機械において、
上記キャノピーは、上記運転席を囲むように左右方向に並設された第1支柱と第2支柱とを有し、
上記第1支柱の立設部と水平部を連設させる湾曲部に第1吊り具を設け、上記第2支柱の立設部と水平部を連設させる湾曲部に第2吊り具を設け、
上記第1吊り具の内側に第1ブラケットを介して第1作業灯を配置し、上記第2吊り具の内側に第2ブラケットを介して第2作業灯を配置したことを特徴とする建設機械。
【請求項5】
請求項4に記載の建設機械において、
上記第1吊り具及び上記第2吊り具のそれぞれは、前部端縁が凸状の湾曲形状に形成され、後部端縁が上記第1支柱及び上記第2支柱のうちの対応する支柱の上記湾曲部の形状に応じた凹状の湾曲形状に形成され、上部端縁が水平方向に沿う直線形状に形成され、全体が平坦状の板部材から成り、
上記第1ブラケット及び第2ブラケットのそれぞれは、上記第1吊り具及び上記第2吊り具のうちの対応する吊り具に固定される鉛直部と、上記第1作業灯及び上記第2作業灯のうちの対応する作業灯を保持する水平部とを含むL字形状部材から成ることを特徴とする建設機械。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate