説明

建設機械

【課題】キャパシタの停止時の寿命劣化を低減しつつ、キャパシタに蓄積したエネルギを有効活用できる簡易な構成の放電手段を備えた建設機械を提供する。
【解決手段】電動モータを含む旋回体20の駆動装置55と、駆動電源となる蓄電デバイス24と、蓄電デバイスの放電手段82と、機械停止検出手段71aとを備えた建設機械において、蓄電デバイス24の電圧値を検出する電圧センサ88と、機械停止検出手段71aからの機械停止検出信号を入力したときから始動するタイマ手段と、機械停止時の蓄電デバイス24の放電特性を予め記憶した記憶部と、電圧センサ88が検出して入力された蓄電デバイス24の電圧値とタイマ手段で計測される停止時間とが、記憶部に記憶された放電特性に合致するように放電指令を演算し、放電指令を蓄電デバイス24の放電手段82へ出力する演算部とを有する放電制御手段80とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械に係り、更に詳しくは、放電機能を有する蓄電装置を備えた建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば油圧ショベルのような建設機械においては、動力源として、ガソリン、軽油等の燃料を用い、エンジンによって油圧ポンプを駆動して油圧を発生することにより油圧モータ、油圧シリンダといった油圧アクチュエータを駆動する。油圧アクチュエータは、小型軽量で大出力が可能であり、建設機械のアクチュエータとして広く用いられている。
【0003】
一方で、近年、電動モータ及び蓄電デバイス(バッテリや電気二重層キャパシタ等)を用いることにより、油圧アクチュエータのみを用いた従来の建設機械よりエネルギ効率を高め、省エネルギ化を図った建設機械が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
電動モータ(電動アクチュエータ)は油圧アクチュエータに比べてエネルギ効率が良い、制動時の運動エネルギを電気エネルギとして回生できる(油圧アクチュエータの場合は熱にして放出)といった、エネルギ的に優れた特徴がある。
【0005】
例えば、特許文献1に示される従来技術では、旋回体の駆動アクチュエータとして電動モータを搭載した油圧ショベルの実施の形態が示されている。油圧ショベルの旋回体を走行体に対して旋回駆動するアクチュエータ(従来は油圧モータを使用)は、使用頻度が高く、作業において起動停止、加速減速を頻繁に繰り返す。このとき、減速時(制動時)における旋回体の運動エネルギは、油圧アクチュエータの場合は油圧回路上で熱として捨てられるが、電動モータの場合は電気エネルギとしての回生が見込めることから、省エネルギ化が図れる。
【0006】
特許文献1のような、いわゆるハイブリッド式油圧ショベルにおいては、蓄電デバイスとして、電気二重層キャパシタ(以下、キャパシタという)が用いられることが多い。キャパシタは、大電流を流すことが可能であり、旋回電動アクチュエータを有するハイブリッド式油圧ショベルにおいて、旋回体を減速(制動)して旋回体の運動エネルギを電気エネルギとして回生するときに発生する大電力を蓄電するのに適している。キャパシタは、他の蓄電デバイスに対して寿命的に優れているが、長期間の使用や過充電等に伴い劣化が進行することが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0007】
キャパシタの満充電状態が長時間継続することを回避し、エネルギを有効活用する為に、補助蓄電装置を備え、キャパシタの電荷を補助蓄電装置で保持するものがある(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−16704号公報
【特許文献2】特開2007−155586号公報
【特許文献3】特開2005−218285号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
一般に、建設機械の稼動パターンは、ユーザーにおける作業量の増減によって異なる。例えば、毎日あるいは短期の停止で稼働する場合もあるし、レンタル用途等では、長期に渡って停止する場合もある。
【0010】
キャパシタはその特性上、印加電圧を高くすると劣化が促進され、寿命が短くなる傾向がある。このため、電動機器を搭載した建設機械を長期に渡って停止する場合には、キャパシタの電荷を放出することが望ましい。このキャパシタの電荷放出により、キャパシタの必要以上の交換が回避されるので、建設機械の運用コストを下げることができる。
【0011】
一方、毎日あるいは短期の停止で稼働する場合には、次回の稼動に備えて、あるいは機械の起動直後の作業を迅速に開始可能とするために、キャパシタの電荷は保持されている方がよい。キャパシタの電荷を保持する一方策として、特許文献3の従来技術があるがこの従来技術においては、補助蓄電装置をキャパシタと別途配設する必要があるため、電動システムが複雑になってしまうという憾みがある。
【0012】
本発明は上述の事柄に基づいてなされたもので、その目的は、キャパシタの停止時の寿命劣化を低減しつつ、キャパシタに蓄積したエネルギを有効活用できる簡易な構成の放電手段を備えた建設機械を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達成するために、第1の発明は、原動機と、前記原動機により駆動される油圧ポンプと、前記油圧ポンプによって駆動される油圧アクチュエータと、旋回体と、電動モータを含む前記旋回体の駆動装置と、前記電動モータの駆動電源となる蓄電デバイスと、前記蓄電デバイスの放電手段と、機械停止検出手段とを備えた建設機械において、前記蓄電デバイスの電圧値を検出する電圧センサと、前記機械停止検出手段からの機械停止検出信号を入力したときから始動するタイマ手段と、機械停止時の前記蓄電デバイスの放電特性を予め記憶した記憶部と、前記電圧センサが検出して入力された前記蓄電デバイスの電圧値と前記タイマ手段で計測される停止時間とが、前記記憶部に記憶された前記放電特性に合致するように放電指令を演算し、前記放電指令を前記蓄電デバイスの放電手段へ出力する演算部とを有する放電制御手段とを備えたものとする。
【0014】
また、第2の発明は、第1の発明において、前記記憶部は、機械停止後、一定の電圧保持時間だけ、前記蓄電デバイスの電圧を保持する電圧保持領域と、前記電圧保持領域から、前記建設機械が即時稼動可能な前記蓄電デバイスの電圧まで、放電降下させる第1放電領域とを有する前記蓄電デバイスの放電特性を記憶していることを特徴とする。
【0015】
更に、第3の発明は、第2の発明において、前記記憶部は、前記第1放電領域から、機械停止後、一定の最低動作電圧維持時間だけ、前記蓄電デバイスの電圧を保持する一時停止電圧保持領域と、前記一時停止電圧保持領域から、さらに放電降下させる第2放電領域とを有する前記蓄電デバイスの放電特性を更に記憶していることを特徴とする。
【0016】
また、第4の発明は、第2又は第3の発明において、前記記憶部に予め記憶された前記蓄電デバイスの放電特性における電圧保持時間または/および最低動作電圧維持時間は、可変設定可能であることを特徴とする。
【0017】
更に、第5の発明は、第1乃至第4の発明のいずれかにおいて、前記機械停止検出手段は、前記建設機械の運転席に設けたゲートロックレバーと、前記ゲートロックレバーの操作によって作動する検出スイッチとで構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、建設機械の停止時間に応じてキャパシタ電圧を所定電圧に放電制御するので、キャパシタの停止時の寿命劣化を低減しつつ、キャパシタに蓄積したエネルギを有効活用できる簡易な構成の放電手段を備えた建設機械を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の建設機械の一実施の形態を示す側面図である。
【図2】本発明の建設機械の一実施の形態を構成する運転席を示す正面図である。
【図3】本発明の建設機械の一実施の形態を構成する電動・油圧機器のシステム構成図である。
【図4】本発明の建設機械の一実施の形態におけるキャパシタ電圧と停止時間との関係を示す放電特性図である。
【図5】本発明の建設機械の一実施の形態におけるキャパシタ放電シーケンスを示すフローチャート図である。
【図6】本発明の建設機械の他の実施の形態を構成する電動・油圧機器のシステム構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、建設機械として油圧ショベルを例にとって本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。なお、本発明は、作業・建設機械全般に適用が可能であり、本発明の適用は油圧ショベルに限定されるものではない。
【実施例1】
【0021】
図1は本発明の建設機械の一実施の形態を示す側面図である。図1において、油圧ショベルは走行体10と、走行体10上に旋回可能に設けた旋回体20及び多関節形のフロント機構30を備えている。
【0022】
走行体10は、一対のクローラ11a,11b及びクローラフレーム12a,12b(図1では片側のみを示す)、各クローラ11a,11bを独立して駆動制御する一対の走行用油圧モータ13、14及びその減速機構等で構成されている。
【0023】
旋回体20は、旋回フレーム21と、旋回フレーム21上に設けられた、原動機としてのエンジン22と、エンジン22により駆動されるアシスト発電モータ23と、旋回電動モータ25及び旋回油圧モータ27と、アシスト発電モータ23及び旋回電動モータ25に接続される電気二重層のキャパシタ24と、旋回電動モータ25と旋回油圧モータ27の回転を減速する減速機構26等から構成され、旋回電動モータ25と旋回油圧モータ27の駆動力が減速機構26を介して伝達され、その駆動力により走行体10に対して旋回体20(旋回フレーム21)を旋回駆動させる。
【0024】
また、旋回体20にはフロント機構30が搭載されている。フロント機構30は、ブーム31と、ブーム31を駆動するためのブームシリンダ32と、ブーム31の先端部近傍に回転自在に軸支されたアーム33と、アーム33を駆動するためのアームシリンダ34と、アーム33の先端に回転可能に軸支されたバケット35と、バケット35を駆動するためのバケットシリンダ36等で構成されている。
【0025】
さらに、旋回体20の旋回フレーム21上には、上述した走行用油圧モータ13,14、旋回油圧モータ27、ブームシリンダ32、アークシリンダ34、バケットシリンダ36等の油圧アクチュエータを駆動するための油圧システム40が搭載されている。油圧システム40は、油圧を発生する油圧源となる油圧ポンプ41及び各アクチュエータを駆動制御するためのコントロールバルブ42(図3)を含み、油圧ポンプ41はエンジン22によって駆動される。
【0026】
図2は本発明の建設機械の一実施の形態を構成する運転席を示す正面図である。図2において、89は、オペレータが着座する運転席を示す。運転席89に着座したオペレータの右側部の内側には、例えばブーム31(図1)を駆動するブームシリンダ32(図1)と、バケット35(図1)を駆動するバケットシリンダ36(図1)とを操作する右操作装置、すなわち、右操作レバー73aを有する右コンソール73を配置しており、オペレータの左側部には、例えばアーム33(図1)を駆動するアームシリンダ34(図1)と、旋回体20(図1)を駆動する旋回電動モータ25(図1)とを操作する左操作装置、すなわち、左操作レバー72aを有する左コンソール72を配置している。また、左コンソール72の外側には、ゲートロックレバー71が設けられている。
【0027】
さらに、運転席89に着座したオペレータの前側略中央には、走行体10(図1)の左クローラ11a(図1)を駆動する左走行モータ13(図1)を操作する左走行レバー装置90と左走行ペダル装置90aと、走行体10(図1)の右クローラ11b(図1)を駆動する右走行モータ14(図1)を操作する右走行レバー装置91と右走行ペダル装置91aとを配置している。
【0028】
ゲートロックレバー71は、後述するゲートロック弁と共にゲートロック装置を構成する。ゲートロック装置は、上述した操作装置72a,73a,90,91,90a,91aのそれぞれをオペレータの運転席89への乗り降り動作をしやすくするために、例えば、運転席89の前側側方の所定の操作位置から所定の後方位置(図2に示す位置)に回動させるゲートロックレバー71と、上述したブームシリンダ32等のアクチュエータが駆動しないように、操作装置72a,73a,90,91,90a,91aとアクチュエータを制御するコントロールバルブ42(図3)とを連絡する操作回路を油圧的に遮断するゲートロック弁とを備えている。
【0029】
ゲートロックレバー71の回動部近傍には、ゲートロックレバー71の操作位置と後方位置とを検出するための検出スイッチ71aが配設されている。ゲートロックレバー71を所定の後方位置に回動させた際には、検出スイッチ71aが作動してゲートロック弁が切換えられ、これに伴って操作回路を油圧源から遮断する。通常は、オペレータが運転席89に着座後、ゲートロックレバー71を所定の後方位置から所定の操作位置に回動操作することで、ゲートロック弁が切換えられ、これに伴って操作回路と油圧源が連通し、油圧システムの作動が可能となる。
【0030】
図3は本発明の建設機械の一実施の形態を構成する電動・油圧機器のシステム構成図である。図3において、エンジン22の駆動力は油圧ポンプ41に伝達されている。コントロールバルブ42は、上述した各操作装置72a,73a,90,91,90a,91aからの指令信号(油圧パイロット信号)に応じて、ブームシリンダ32、アームシリンダ34、バケットシリンダ36及び走行用油圧モータ13,14に供給される圧油の流量と方向を制御する。
【0031】
電動システムは、上述したアシスト発電モータ23、キャパシタ24及び旋回電動モータ25と、パワーコントロールユニット55及びメインコンタクタ56等から構成されている。パワーコントロールユニット55はチョッパ51、インバータ52,53、平滑コンデンサ54等を有し、メインコンタクタ56はメインリレー57、突入電流防止回路58等を有している。キャパシタ24とメインコンタクタ56とを接続する出力母線にはキャパシタ電圧を検出する電圧センサ88が設けられている。電圧センサ88の出力はコントローラ80に入力されている。
【0032】
また、この出力母線には、一端側が出力母線の負極側に接続された放電抵抗82と、放電抵抗82の他端側がその固定接点部81bに接続され、その可動接点部81aを出力母線の正極側に接続した放電リレー81とを有する放電手段が設けられている。放電リレー81が励磁され可動接点81aの閉止動作により、出力母線の正極側と負極側とが放電抵抗82を介して短絡され、放電抵抗82にキャパシタ24からの電流が流れ、キャパシタ24の放電が行われる。
【0033】
キャパシタ24からの直流電力はチョッパ51によって所定の母線電圧に昇圧され、旋回電動モータ25を駆動するためのインバータ52、アシスト発電モータ23を駆動するためのインバータ53に入力される。平滑コンデンサ54は、母線電圧を安定化させるために設けられている。旋回電動モータ25は、減速機構26を介して旋回体20を駆動する。アシスト発電モータ23及び旋回電動モータ25の駆動状態(力行しているか回生しているか)によって、キャパシタ24は充放電されることになる。
【0034】
コントローラ80は、例えば、演算装置及び電気回路から構成される制御装置であり、エンジン22を始動するためのイグニッションキー70の操作によって起動し、上述した各操作装置72a,73a,90,91,90a,91aからの信号を入力し、コントロールバルブ42、パワーコントロールユニット55に対する制御指令を生成し、油圧、電動システム、及びエンジン22の制御を行う。また、キャパシタ24の電圧値やゲートロックレバー71の位置信号を入力し、予め設定された放電特性に従って、キャパシタ24の放電が実施されるように放電手段等の放電制御を行う。75は、コントローラ80からの電気信号を油圧パイロット信号へ変換するデバイスであり、例えば電磁比例バルブに相当する。
【0035】
ゲートロックレバー71の検出スイッチ71aが構成する回路について図3を用いて説明する。
85は図示しないゲートロック弁の電磁操作部で、この電磁操作部85の一端側は制御電源83に接続され、その他端側はゲートロックリレー84の可動接点部84aに接続されている。ゲートロックリレー84の励磁コイル部84cは、ゲートロックレバー71によって操作される検出スイッチ71aを介して制御電源83に接続されている。ゲートロックリレー84の固定側接点部84bは、コントローラ80の入力部に接続されている。
【0036】
87はコントローラ80からの放電指令を増幅する放電指令リレーで、その励磁コイル部87cは、コントローラ80の出力部に接続されている。放電指令リレー87の可動接点部87aは制御電源83に接続され、その他端側は放電リレー81の励磁コイル部81cに接続されている。
【0037】
ここで、ゲートロックレバー71を所定の後方位置に操作すると、検出スイッチ71aが動作し、ゲートロックリレー84の励磁コイル部84cはOFFし、ゲートロック弁の電磁操作部85への通電が無くなる。この結果、ゲートロック弁が動作し、上述した各操作装置72a,73a,90,91,90a,91aからの指令信号(油圧パイロット信号)を例えば、作動油タンクへ連通させて、油圧システムの作動を不能とする。また、コントローラ80への入力信号が消失するので、建設機械の停止を検出することができる。
【0038】
図4は本発明の建設機械の一実施の形態におけるキャパシタ電圧と停止時間との関係を示す放電特性図である。この放電特性は、コントローラ80内の例えば記憶部に記憶されている。
図4において、放電特性図の横軸は建設機械が停止してからの経過時間を示し、縦軸はキャパシタ24の電圧を示す。特性図中の横軸におけるt1は、建設機械が停止した時の電圧を保持する時間であり作業中の休憩等、一時的な機械の停止期間を想定している。特性図中の横軸におけるt2は、最低動作電圧V1を維持する時間であり、例えば週末の休みのように数日単位での機械の停止期間を想定している。このt1,t2はユーザーの使用形態に合わせて可変設定が可能である。ここで、最低動作電圧V1は、休車中に想定される建設機械の回送時に要求される旋回動作を即座に行うために必要な電圧値をいう。
【0039】
放電特性曲線において、Aで示す部分は電圧保持領域を示す。この電圧保持領域Aは、停止時のキャパシタ24電圧が最低動作電圧V1以上である際に通過する領域であり、キャパシタ24の放電動作は実施せず、キャパシタ24の電荷保持を目的とする。この領域は作業中の休憩等、一時的な休車を想定している。この領域では、キャパシタ24が蓄電するエネルギの有効利用のため、キャパシタ24の電圧は保持される。
【0040】
放電特性曲線において、Bで示す部分は第1放電領域を示す。この第1放電領域Bは、キャパシタ24の電圧が過大な場合に、キャパシタ24の劣化を防止するために、キャパシタ24の電圧を速やかに基準電圧V2まで低下させる。ここで、基準電圧V2は、最低動作電圧V1より高い電圧であり、後述の一時停止電圧保持領域Cにおける自然放電による電圧降下のマージンをみて、最低動作電圧V1より若干高い電圧に設定されている。
【0041】
放電特性曲線において、Cで示す部分は一時停止電圧保持領域を示す。この一時停止電圧保持領域Cにおいては、建設機械が起動された後、即時に動くことができるように、即時稼動に必要なだけの電圧にキャパシタ24の電荷を保持する。但し、キャパシタ24自体の自然放電により、キャパシタ24の電圧は徐々に降下するが、最低動作電圧V1は確保されている。
【0042】
放電特性曲線において、Dで示す部分は第2放電領域を示す。この第2放電領域Dは、建設機械が停止してからt2の時間が経過した後に通過する領域である。ここにおいて停止した建設機械は休車(長期不稼動)状態に入ったと判断し、キャパシタ24の放電を実施する領域である。なお、キャパシタ24の放電は、放電終了電圧V3を目標として実施される。
【0043】
図5は本発明の建設機械の一実施の形態におけるキャパシタ放電シーケンスを示すフローチャート図である。
まず、スタートの状態としては、例えば、オペレータが油圧ショベルのキースイッチ(図示せず)をONにした状態とする。
【0044】
ステップ(S101)では、建設機械の停止の有無を判断する。具体的には、機械停止時にゲートロックレバー71が、所定の操作位置から所定の後方位置に回動操作されたことを検出して、建設機械の停止を判断する。建設機械が停止したと判断すれば、ステップ(S102)に進み、建設機械が停止していないと判断すれば、ステップ(S111)へ進む。
【0045】
ステップ(S102)では、建設機械停止時間の計測を開始する。具体的には、タイマT1とタイマT2が動作を開始する。
【0046】
ステップ(S103)では、キャパシタ24の電圧値が設定値である基準電圧V2を超えているかどうかを判断する。具体的には、電圧センサ88から入力されるキャパシタ24の電圧値と基準電圧V2との大小で判断する。キャパシタ24の電圧値が基準電圧V2を超えていない場合にはNOと判断されてステップ(S106)へ進み、同様に超えている場合にはYESと判断されてステップ(S104)へ進む。
【0047】
ステップ(S104)では、タイマT1が建設機械の停止した時の電圧保持時間t1を経過したか否かを判断する。タイマT1が電圧保持時間t1を経過した場合には、YESと判断されステップ(S105)へ進み、経過していない場合にはNOと判断されてステップ(S104)に戻る。
【0048】
ステップ(S105)では、放電制御が開始される。具体的には、放電手段の放電抵抗82を出力母線に接続してキャパシタ24の放電を行う。ステップ(S105)で放電を開始した後は、ステップ(S103)に戻る。ステップ(S105)による放電制御の結果、キャパシタ24の電圧値が減少し、キャパシタ24の電圧値が基準電圧V2以下となった場合にはステップ(S103)でNOと判断されてステップ(S106)へ進む。
【0049】
ステップ(S106)では、放電制御が終了される。具体的には、放電手段の放電抵抗82を出力母線から切り離してキャパシタ24の放電を終了させる。ステップ(S106)で放電を終了した後は、ステップ(S107)に進む。
【0050】
ステップ(S107)では、タイマT2が建設機械の停止した時の最低動作電圧維持時間t2を経過したか否かを判断する。タイマT2が最低動作電圧維持時間t2を経過した場合には、YESと判断されステップ(S108)へ進み、経過していない場合にはNOと判断されてステップ(S107)に戻る。
【0051】
ステップ(S107)では、放電制御が開始される。具体的には、放電手段の放電抵抗82を出力母線に接続してキャパシタ24の放電を行う。ステップ(S107)で放電を開始した後は、ステップ(S109)に進む。
【0052】
ステップ(S109)では、キャパシタ24の電圧値が設定値である放電終了電圧V3を超えているかどうかを判断する。具体的には、電圧センサ88から入力されるキャパシタ24の電圧値と放電終了電圧V3との大小で判断する。キャパシタ24の電圧値が放電終了電圧V3を超えている場合にはNOと判断されてステップ(S109)へ戻り、同様に超えていない場合にはYESと判断されてステップ(S110)へ進む。
【0053】
ステップ(S110)では、放電制御が終了される。具体的には、放電手段の放電抵抗82を出力母線から切り離してキャパシタ24の放電を終了させる。ステップ(S110)で放電を終了した後はリターンとなりスタートへ戻る。
【0054】
ステップ(S101)で、建設機械が停止していないと判断されて、ステップ(S111)に進む場合、ステップ(S111)では、建設機械停止時間の計測を終了させる。具体的には、動作開始しているタイマT1とタイマT2をリセットする。ステップ(S111)でタイマT1とタイマT2をリセットした後は、ステップ(S112)に進む。
【0055】
ステップ(S112)では、放電制御が終了される。具体的には、放電手段の放電抵抗82を出力母線から切り離してキャパシタ24の放電を終了させる。ステップ(S112)で放電を終了した後はリターンとなりスタートへ戻る。ステップ(S111)とステップ(S112)とを設けたことにより、放電制御が実行されている場合であっても、オペレータがゲートロックレバー71を所定の後方位置に操作すると、即時にタイマT1とタイマT2をリセットすると共に、放電抵抗82が切り離される。これにより、放電操作はオペレータの意志により中止することが可能である。
【0056】
次に、具体的な動作について図3乃至図5を用いて説明する。まず。図3において、オペレータがゲートロックレバー71を所定の後方位置に操作すると、検出スイッチ71aの動作により接点開放されるので、ゲートロックリレー84の励磁コイル部84cへの印加電圧が消去する。この結果、コントローラ80へ入力されていたゲートロックリレー84の可動接点84aの閉止信号がOFFし、コントローラ80は、機械が停止したと判断し、内部のタイマT1とT2との動作を開始する。図5におけるステップ(S101)及びステップ(S102)に該当する。
【0057】
コントローラ80は、電圧センサ88が検出したキャパシタ24の電圧を入力し、基準電圧V2と大小比較をする(ステップ(S103)に該当)と共に、タイマT1が建設機械の停止した時の電圧保持時間t1を経過したか否かを判断する(ステップ(S104)に該当)。キャパシタ24の電圧が基準電圧V2を超えていて、タイマT1が電圧保持時間t1を経過している場合には、放電開始指令を出力する。この結果、放電指令リレー87の励磁コイル部87cへ電圧が印加され、可動接点部87aが閉止する。
【0058】
放電指令リレー87の可動接点部87aが閉止すると、放電リレー81の励磁コイル部81cへ電圧が印加され、可動接点部81aが閉止する。このことにより、可動接点部81aを介して放電抵抗82が出力母線の正極と負極とを短絡するように接続される。この結果、放電抵抗82にキャパシタ24からの電流が流れ、キャパシタ24に残留した電荷が消費される放電が行われる(ステップ(S105)に該当)。
【0059】
キャパシタ24の放電が進行することで、キャパシタ24の電圧値は降下していく。コントローラ80は、電圧センサ88が検出したキャパシタ24の電圧値と基準電圧V2とを比較し、基準電圧V2がキャパシタ24の電圧値を超えた場合には、放電終了指令を出力する(ステップ(S106)に該当)。この結果、放電指令リレー87の励磁コイル部87cへの印加電圧が解除され、可動接点部87aが開放される。
【0060】
放電指令リレー87の可動接点部87aが開放されると、放電リレー81の励磁コイル部81cへの印加電圧が解除され、可動接点部81aが開放される。このことにより、放電抵抗82は出力母線の正極と負極とから遮断される。この結果、放電抵抗82へのキャパシタ24からの電流が遮断され、キャパシタ24の放電が中断される(ステップ(S106)に該当)。
【0061】
コントローラ80は、タイマT2が建設機械の停止した時の最低動作電圧維持時間t2を経過したか否かを判断する(ステップ(S107)に該当)。タイマT2が最低動作電圧維持時間t2を経過している場合には、放電開始指令を出力する。この結果、放電指令リレー87の励磁コイル部87cへ電圧が印加され、可動接点部87aが閉止する。
【0062】
放電指令リレー87の可動接点部87aが閉止すると、放電リレー81の励磁コイル部81cへ電圧が印加され、可動接点部81aが閉止する。このことにより、可動接点部81aを介して放電抵抗82が出力母線の正極と負極とを短絡するように接続される。この結果、放電抵抗82にキャパシタ24からの電流が流れ、キャパシタ24に残留した電荷が消費される放電が行われる(ステップ(S108)に該当)。
【0063】
上述した本発明の建設機械の一実施の形態によれば、建設機械の停止時間に応じてキャパシタ24の電圧を所定電圧に放電制御するので、キャパシタ24の停止時の寿命劣化を低減しつつ、キャパシタ24に蓄積したエネルギを有効活用できる簡易な構成の放電手段を備えた建設機械を提供することができる。
【実施例2】
【0064】
以下、本発明の建設機械の他の実施の形態を図面を用いて説明する。図6は本発明の建設機械の他の実施の形態を構成する電動・油圧機器のシステム構成図である。図6において、図1乃至図5に示す符号と同符号のものは同一部分であるので、その詳細な説明は省略する。
本実施の形態においては、放電リレー81、放電抵抗82、放電指令リレー87を設けていない点が、上述した一実施の形態と異なる。その他の構成設備等は一実施の形態と同一である。本実施の形態においては、パワーコントロールユニット55を制御しているコントローラ80にキャパシタ24の放電制御手段を設けている。この結果、キャパシタ24に残留した電荷を消費させることができる。
【0065】
本実施の形態における、具体的動作について図4乃至図6を用いて説明する。まず。図6において、オペレータがゲートロックレバー71を所定の後方位置に操作すると、検出スイッチ71aの動作により接点開放されるので、ゲートロックリレー84の励磁コイル部84cへの印加電圧が消去する。この結果、コントローラ80へ入力されていたゲートロックリレー84の可動接点84aの閉止信号がOFFし、コントローラ80は、機械が停止したと判断し、内部のタイマT1とT2との動作を開始する。図5におけるステップ(S101)及びステップ(S102)に該当する。
【0066】
コントローラ80は、電圧センサ88が検出したキャパシタ24の電圧を入力し、基準電圧V2と大小比較をする(ステップ(S103)に該当)と共に、タイマT1が建設機械の停止した時の電圧保持時間t1を経過したか否かを判断する(ステップ(S104)に該当)。キャパシタ24の電圧が基準電圧V2を超えていて、タイマT1が電圧保持時間t1を経過している場合には、放電開始指令を出力する。
【0067】
この放電開始指令により、パワーコントロールユニット55を通じてメインコンタクタ56が励磁されメインリレー57が閉止し、旋回用電動モータ用インバータ52またはアシスト発電モータ用インバータ53を力行駆動制御する。この結果、旋回用電動モータ25またはアシスト発電モータ23のコイルにキャパシタ24から電流が流れ、キャパシタ24に残留した電荷が消費される放電が行われる(ステップ(S105)に該当)。
【0068】
キャパシタ24の放電が進行することで、キャパシタ24の電圧値は降下していく。コントローラ80は、電圧センサ88が検出したキャパシタ24の電圧値と基準電圧V2とを比較し、基準電圧V2がキャパシタ24の電圧値を超えた場合には、放電終了指令を出力する(ステップ(S106)に該当)。
【0069】
この放電終了指令により、パワーコントロールユニット55を通じてメインコンタクタ56が非励磁されメインリレー57が開放されると共に、旋回用電動モータ用インバータ52またはアシスト発電モータ用インバータ53への力行駆動制御が中止される。この結果、キャパシタ24の正極と負極とがパワーコントロールユニット55から遮断され、キャパシタ24の放電が中断される(ステップ(S106)に該当)。
【0070】
コントローラ80は、タイマT2が建設機械の停止した時の最低動作電圧維持時間t2を経過したか否かを判断する(ステップ(S107)に該当)。タイマT2が最低動作電圧維持時間t2を経過している場合には、放電開始指令を出力する。
【0071】
放電開始指令により、パワーコントロールユニット55を通じてメインコンタクタ56が励磁されメインリレー57が閉止し、旋回用電動モータ用インバータ52またはアシスト発電モータ用インバータ53を力行駆動制御する。この結果、旋回用電動モータ25またはアシスト発電モータ23のコイルにキャパシタ24から電流が流れ、キャパシタ24に残留した電荷が消費される放電が行われる(ステップ(S108)に該当)。
【0072】
上述した本発明の建設機械の他の実施の形態によれば、上述した一実施の形態と同様な効果を得ることができるとともに、放電抵抗82を設ける必要がないので、より簡易な構成の放電手段を備えた建設機械を提供することができる。
【0073】
なお、本発明においては、放電手段を、放電抵抗82を設けた場合と、旋回電動モータ25等を駆動する場合とで説明しているが、これに限るものではない。
【0074】
以上において、本発明を油圧ショベルに適用した場合の実施の形態を説明したが、油圧ショベル以外の電動システム、蓄電デバイスを有する車両や建設機械全般に本発明は適用可能である。
【符号の説明】
【0075】
10 走行体
11 クローラ
12 クローラフレーム
13 左走行用油圧モータ
14 右走行用油圧モータ
20 旋回体
21 旋回フレーム
22 エンジン
23 アシスト発電モータ
24 キャパシタ
25 旋回電動モータ
26 減速機
30 フロント機構
31 ブーム
33 アーム
35 バケット
40 油圧システム
41 油圧ポンプ
42 コントロールバルブ
51 チョッパ
52 旋回電動モータ用インバータ
53 アシスト発電モータ用インバータ
54 平滑コンデンサ
55 パワーコントロールユニット
56 メインコンタクタ
57 メインリレー
58 突入電流防止回路
71 ゲートロックレバー
71a 検出スイッチ
72a 左操作レバー
73a 右操作レバー
80 コントローラ
81 放電リレー
82 放電抵抗
83 制御電源
84 ゲートロックリレー
85 ゲートロック弁の電磁操作部
87 放電指令リレー
88 電圧センサ
89 運転席
90 放電手段
90 左走行レバー装置
90a 左走行ペダル装置
91 右走行レバー装置
91a 右走行ペダル装置
A 電圧保持領域
B 第1放電領域
C 一時停止電圧保持領域
D 第2放電領

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原動機と、前記原動機により駆動される油圧ポンプと、前記油圧ポンプによって駆動される油圧アクチュエータと、旋回体と、電動モータを含む前記旋回体の駆動装置と、前記電動モータの駆動電源となる蓄電デバイスと、前記蓄電デバイスの放電手段と、機械停止検出手段とを備えた建設機械において、
前記蓄電デバイスの電圧値を検出する電圧センサと、
前記機械停止検出手段からの機械停止検出信号を入力したときから始動するタイマ手段と、
機械停止時の前記蓄電デバイスの放電特性を予め記憶した記憶部と、
前記電圧センサが検出して入力された前記蓄電デバイスの電圧値と前記タイマ手段で計測される停止時間とが、前記記憶部に記憶された前記放電特性に合致するように放電指令を演算し、前記放電指令を前記蓄電デバイスの放電手段へ出力する演算部とを有する放電制御手段とを備えた
ことを特徴とする建設機械。
【請求項2】
請求項1記載の建設機械において、
前記記憶部は、機械停止後、一定の電圧保持時間だけ、前記蓄電デバイスの電圧を保持する電圧保持領域と、
前記電圧保持領域から、前記建設機械が即時稼動可能な前記蓄電デバイスの電圧まで、放電降下させる第1放電領域とを有する前記蓄電デバイスの放電特性を記憶している
ことを特徴とする建設機械。
【請求項3】
請求項2に記載の建設機械において、
前記記憶部は、前記第1放電領域から、機械停止後、一定の最低動作電圧維持時間だけ、前記蓄電デバイスの電圧を保持する一時停止電圧保持領域と、
前記一時停止電圧保持領域から、さらに放電降下させる第2放電領域とを有する前記蓄電デバイスの放電特性を更に記憶している
ことを特徴とする建設機械。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の建設機械において、
前記記憶部に予め記憶された前記蓄電デバイスの放電特性における電圧保持時間または/および最低動作電圧維持時間は、可変設定可能である
ことを特徴とする建設機械。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の建設機械において、
前記機械停止検出手段は、前記建設機械の運転席に設けたゲートロックレバーと、前記ゲートロックレバーの操作によって作動する検出スイッチとで構成した
ことを特徴とする建設機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−241370(P2012−241370A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−110761(P2011−110761)
【出願日】平成23年5月17日(2011.5.17)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】