説明

建設車両用走行路整備支援システム

【課題】走行路路の整備を効率的に行うことができ、そのことによって、積載物が落下したり、車両やタイヤの耐久性が低下したりするのを有効に防止することのできる建設車両用走行路整備支援システムを提供する。
【解決手段】建設車両11に、走行位置センサ1と、加速度センサ2と、車両の走行中これらのセンサから連続的に取得したデータを格納するメモリ3とを取り付けるとともに、メモリ3からこれらのデータを読み出して走行路を図式化し図式化された走行路の要整備部分を特定する制御部5と、図式化された走行路およびこの内から抽出された前記要整備走行路部分を表示する表示部6とを具え、制御部5は、予め定められた所定の加速度条件範囲を外れる加速度データに対応する走行路部分を、前記要整備走行路部分として特定するよう構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設車両が走行する走行路の整備を支援するシステムに関し、特に、走行路路の整備を効率的に行わせることができるものに関する。
【背景技術】
【0002】
鉱山等の採掘現場では、超大型の建設車両を用いて、採掘ポイントで採掘した鉱石を集荷ポイントまで運ぶとともに、採掘に伴ってでる廃棄物を廃棄ポイントまで運搬することが行われている。そして、このような建設車両が走行するための走行路が布設され、また、日々整備されていて、例えば、カーブを有する走行路においては、走行時の遠心力によって車両の左右方向の、カーブ曲率中心から遠ざかる向きに大きな遠心力が作用することにより、積載物が落下したり、車両やタイヤの耐久性が低下したりしないようバンク勾配を設けたり、また、他の例としては、走行路の凸凹がひどくなって、同様の障害が生じないよう整地をすることが行われている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このような整備は、人による感性や過去の経験によって進められているのが通常であり、そのため、緊急度を要する整備が後回しになったり、その必要性を見逃していたりすることが多かった。
【0004】
本発明は、このような問題点を鑑みてなされたものであり、走行路の路面整備を効率的に行うことができ、そのことによって、積載物が落下したり、車両やタイヤの耐久性が低下したりするのを有効に防止することのできる建設車両用走行路整備支援システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
<1>は、建設車両が走行する走行路の整備を支援するシステムであって、
前記建設車両に、この建設車両の走行位置データを連続的に取得する走行位置センサと、この建設車両に加わる加速度データを連続的に取得する加速度センサと、これらのセンサで取得したデータを格納するメモリとを取り付けるとともに、前記メモリから前記走行位置データを読み出して走行路を図式化し、前記加速度データを前記図式化された走行路上にマッピングし、予め定められた所定の加速度条件範囲を外れる加速度データに対応する走行路部分を、要整備走行路部分と特定する制御部を具えてなる建設車両用走行路整備支援システムである。
【0006】
<2>は、<1>において、前記加速度センサを、車両の左右方向の加速度を検出するよう構成してなる建設車両用走行路整備支援システムである。
【0007】
<3>は、<2>において、前記予め定められた所定加速度条件範囲を0.05G以下とする建設車両用走行路整備支援システムである。
【0008】
<4>は、<2>もしくは<3>において、前記制御部は、前記要整備走行路部分について、前記走行位置データに基づいてこの部分の曲率半径を算出し、この算出結果と、予め定められた、この走行路部分を走行する際の規定の車速とに基づいて、車両の左右方向の加速度を前記所定加速度範囲内に収めることのできるバンク傾斜角度を求め、もしくは、バンク傾斜角度と前記曲率半径との新たな組み合わせを計算しなおすよう構成されてなる建設車両用走行路整備支援システムである。
【0009】
<5>は、<1>において、前記加速度センサを、車両の上下方向の加速度を検出するよう構成してなる建設車両用走行路整備支援システムである。
【発明の効果】
【0010】
<1>によれば、前記建設車両に、走行位置センサと、加速度センサと、車両の走行中これらのセンサから連続的に取得したデータを格納するメモリとを取り付けるとともに、前記メモリからこれらのデータを読み出して走行路を図式化し図式化された走行路のうち、要整備走行路部分を特定する制御部と、前記図式化された走行路およびこの内から抽出された前記要整備走行路部分を表示する表示部とを具え、前記制御部は、予め定められた所定の加速度条件範囲を外れる加速度データに対応する走行路部分を、走行路の設計不良もしくは整備不良によるものと判断して、要整備走行路部分として特定するよう構成されているので、要整備走行路部分をデータに基づいて提示することができ、しかも、それを図式化して分かりやすく提示することができるので、走行路の整備を効率的にかつ間違いなく実行させることができる。
【0011】
<2>によれば、前記加速度センサを、車両の左右方向の加速度を検出するよう構成したので、カーブを有する走行路を所定速度で走行する車両の各部分、あるいは、積載物に異常な遠心力が作用する走行路部分を特定することができ、そのカーブのバンク傾斜角度を修正する整備を行う必要がある旨の提示を行うことができる。
【0012】
<3>によれば、前記予め定められた所定加速度条件範囲を0.05G以下としており、この加速度範囲は、積載物が遠心力によってカーブの曲率半径外側に向かって移動させない範囲であるので、積載物が移動して車両の種々の部分にぶつかってそれらを損傷したり壊したりしてしまうのを抑えることができ、また、この加速度範囲においては、タイヤのトレッド面に大きなタイヤ幅方向の力が作用することもないので早期摩耗等も抑えることができる。
【0013】
<4>によれば、前記制御部は、前記要整備走行路部分について、前記走行位置データに基づいてこの部分の曲率半径を算出し、この算出結果と、予め定められた、この走行路部分を走行する際の規定の車速とに基づいて、車両の左右方向の加速度を前記所定加速度範囲内に収めることのできるバンク傾斜角度を求め、もしくは、バンク傾斜角度と前記曲率半径との新たな組み合わせを計算しなおすよう構成されているので、カーブのある走行部分整備する際に、整備目標とするバンク傾斜角度をデータに基づいて正しく設定することができる。
【0014】
前記加速度センサを、車両の上下方向の加速度を検出するよう構成したので、正常な上下方向加速度範囲として、例えば、加速度の変化率か所定範囲内であるように設定することにより、走行路の凹凸の激しい部分を要整備走行路部分として特定することができ、しかも、その加速度変化率の大きさにより、整備の緊急度を判定することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1は、この発明の第一の実施形態に係る建設車両用走行路整備支援システムの構成を示す模式図であり、建設車両用走行路整備支援システム10は、調査用の建設車両11に、走行位置センサ1と、加速度センサ2と、車両の走行中これらのセンサ1、2から連続的に取得したデータを格納するメモリ3とを取り付けるとともに、メモリ3からこれらのデータを読み出して走行路を図式化し図式化された走行路の要整備部分を特定する制御部5と、前記図式化された走行路およびこの内から抽出された前記要整備走行路部分を表示する表示部6とを具えている。
【0016】
そして、制御部5は、予め定められた所定の加速度条件範囲を外れる加速度データに対応する走行路部分を、前記要整備走行路部分として特定するよう構成されている。
【0017】
メモリ3としては、例えば、車両に搭載したコンピュータ12に設けられた半導体メモリやHDDなどを用いることができ、この場合、このコンピュータ12の一部を制御部5として機能させることができ、また、表示部6としては、このコンピュータ12に接続されたディスプレイとすることができる。
【0018】
上記構成の代わりに、制御部5として、ラボ等に設けられたコンピュータを用いることもでき、この場合、メモリ3として、車両に搭載したコンピュータ12に接続可能なUSBメモリやリムーバブルHDDを用いることにより、走行中のデータを格納したメモリ3を、車両に搭載したコンピュータ12から取り外してラボ等に設けられたコンピュータに接続すればよい。
【0019】
ここで、走行位置センサ1としては、GPS(Global Positioning System)を利用したものを用いることができ、この場合、走行中の建設車両の連続的な位置の取得を簡易に行うことができる。
【0020】
第一の実施形態においては、加速度センサ2は、車両の左右方向の加速度を測定するよう構成されていて、図2は、表示部6によって表示された画面の一例を示すものであり、この画面は、カーブ部分を含む走行路M0を示し、その中で、車両左右方向の加速度が所定の範囲外となった走行路部分M1を異なった色で表示している。
【0021】
走行位置センサ1からは、調査用車両11の通過した走行路に沿って、例えば所定時間間隔Δtをもって取得される、緯線方向の位置x(t)、経線方向の位置y(t)、および、高さh(t)を取得することができ、したがって、水平面座標点P(x(t)、y(t))を時刻t0、t0+Δt、t0+2Δt、・・・・について表示部6にプロットすれば、これらのデータから、走行路M0を図式化することができ、また、この走行路M0上の2点間の車速を式(1)によって求めることができる。

【0022】
一方、加速度データα(t)からは、加速度データα(t)が正常範囲として予め定められた範囲の外になった時刻領域ts〜teを知ることができ、この時刻領域ts〜teに対応する水平面座標点P(x(t)、y(t))(t=ts〜te)の全部を、走行路M0上に異なる印でプロットすることにより、異常な加速度領域に対応する走行路部分M1を走行路M0上に表示することができ、これを、バンク傾斜角度の修正が必要な要整備走行路部分の候補として提示することができる。
【0023】
車速をVとしてこの車速Vにおける、車両左右方向の加速度αは、以下の式(2)によって求めることができ、この式から加速度が所定の値以下(例えば、0.05g以下とするのが好ましい)となるようなバンク傾斜角度θ(図3参照)の最小値を求めることができる。

【0024】
なお、式(2)において、Rは、カーブの曲率半径を表し、曲率半径Rは、水平面座標点P(x(t)、y(t))(t=ts〜te)のデータに基づく計算によって求めることができるほか、水平面座標点P(x(t)、y(t))をプロットして図式化したものからも求めることができる。
【0025】
上記の説明では、カーブを有する走行路部分の曲率半径は既存の値Rを使うものとしたが、これに代えて、カーブの曲率半径を大きくすることによっても前記問題を解決することができ、この場合、現状のバンク傾斜角度、もしくは、新しいバンク傾斜角度を設定した上でカーブの曲率半径を求めることになる。
【0026】
以上において、車速Vを予め定められた規定の速度とすると、カーブ通過する際の進入速度がこの制限速度に対してどの程度であったかは、先ほど説明したように、式(1)に基づいて比較することができる。
【0027】
図4は、第二の実施形態において調査車両11を走行させた際の走行路K0を示す図であり、第二の実施形態の建設車両用走行路整備支援システムも、加速度センサとして、車両11の上下方向に作用する加速度α(t)を収集する点を除けば、第一の実施形態と全く同様であり、走行路K0は、調査車両11の走行位置センサ1からのデータを基にした、水平面座標点P(x(t)、y(t))を時刻t0、t0+Δt、t0+2Δt、・・・・についてプロットしたものとして求めることができる。
【0028】
図4おける、走行路K0のうちの、走行路部分K1、および、走行路部分K2における加速度α(t)の時間変化を、時間を横軸にとって示したグラフとして、それぞれ、図5および図6に示す。図4と図5に示した加速度の時間変化は明らかに異なっており、走行路部分K2は滑らかで上下方向の加速度の変化が小さいのに対して、走行路部分K1においては、上下方向の加速度の変化が大きく、これは、走行路部分K1は路面の凸凹が大きく整備の必要があることが分かる。
【0029】
このような凸凹の大きさを表す指標として、例えば、加速度の時間変化の大きさ、単位時間に現れる加速度の最大値等を用いることができ、また、この場合に、整備を要する走行路部分K1の範囲として、前記指標が正常範囲として予め定められた範囲外になった時刻領域ts〜teに対応する水平面座標点P(x(t)、y(t))(t=ts〜te)を、前記走行路K0上に、他の座標点とは異なる印を付けてプロットすることにより、異常な加速度領域に対応する走行路部分K1を表示することができることは先に第一の実施形態について説明した通りである。
【0030】
また、複数の走行路部分に要整備に対応するものであった場合、前記加速度データからそれぞれの走行路部分の凸凹の大きさを判定することができ、どちらの走行路部分を優先的に整備すべきか提示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の第一の実施形態に係る建設車両用走行路整備支援システムの構成を示す模式図である。
【図2】第一の実施形態の表示部によって表示された走行路を示す画面である。
【図3】バンク傾斜角度を説明するための模式図である。
【図4】第二の実施形態の表示部によって表示された走行路を示す画面である。
【図5】走行路部分K1における、加速度センサからの加速度データの時間変化を示すグラフである。
【図6】走行路部分K2における、加速度センサからの加速度データの時間変化を示すグラフである。
【符号の説明】
【0032】
1 走行位置センサ
2 加速度センサ
3 メモリ
5 制御部
6 表示部
10 建設車両用走行路整備支援システム
11 調査車両
12 車両に搭載したコンピュータ
M0 走行路
M1 走行路部分
K0 走行路
K1、K2 走行路部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建設車両が走行する走行路の整備を支援するシステムであって、
前記建設車両に、この建設車両の走行位置データを連続的に取得する走行位置センサと、この建設車両に加わる加速度データを連続的に取得する加速度センサと、これらのセンサで取得したデータを格納するメモリとを取り付けるとともに、前記メモリから前記走行位置データを読み出して走行路を図式化し、前記加速度データを前記図式化された走行路上にマッピングし、予め定められた所定の加速度条件範囲を外れる加速度データに対応する走行路部分を、要整備走行路部分と特定する制御部を具えてなる建設車両用走行路整備支援システム。
【請求項2】
前記加速度センサを、車両の左右方向の加速度データを取得するよう構成してなる請求項1に記載の建設車両用走行路整備支援システム。
【請求項3】
前記予め定められた所定加速度条件範囲を0.05G以下とする請求項2に記載の建設車両用走行路整備支援システム。
【請求項4】
前記制御部は、前記要整備走行路部分について、前記走行位置データに基づいてこの部分の曲率半径を算出し、この算出結果と、予め定められた、この走行路部分を走行する際の規定の車速とに基づいて、車両の左右方向の加速度を前記所定加速度範囲内に収めることのできるバンク傾斜角度を求め、もしくは、バンク傾斜角度と前記曲率半径との新たな組み合わせを計算しなおすよう構成されてなる請求項2もしくは3に記載の建設車両用走行路整備支援システム。
【請求項5】
前記加速度センサを、車両の上下方向の加速度を検出するよう構成してなる請求項1に記載の建設車両用走行路整備支援システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate