説明

引きずり・ジャンピング式鞄

【課題】 従来の車輪付き移動用鞄(鞄の代わりに容器とも呼ぶことにする)で、引っ張る方式の鞄の場合は、重い、あるいは後方にスペースをとる、という欠点があった。また押す方式の鞄は、方向が振らつく、つんのめるという欠点があった。これらは、引っ張るか押すかのどちらかの力の入れ方だけしか使用していなかったためである。
【解決手段】 本発明では、引っ張ることに加え、持ち上げる、という力も利用する。ただし、持ち上げるのは瞬間的である。ジャンプさせるようにする。また、車輪を自在回転型ではなく固定型にすることにより振らつくのを防ぐ。かつ、鞄を持ち上げるために把手を梯子状にして、持ち上げ幅を調節できるようにする。そして鞄を後方ではなく、体のすぐ横において引っ張る、あるいは持ち上げる。そのため、後方のスペースは不要になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、旅行・通勤・買い物などにおいて、運びたい物品をひとまとめにして、路面上を円滑に移動させる容器に関する。
【背景技術】
【0002】
進行方向に並列に2個の車輪をつけて路面上を手で引っ張って、路面に平行に物品を移動する容器が従来より多数使われている。これを図2に示す。
【0003】
また、矩形状に4個の車輪をつけて路面上を路面に平行に手で引きずって物品を移動させる容器も存在している(図3)。
【0004】
さらに、矩形状に4個の車輪をつけて路面上を路面に平行に手で押して物品を移動させる容器も出現している(図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上に述べた従来の、路面上の物品の移動容器の問題点は、つぎのようである。
【0006】
図2のような、進行方向に並列に2輪を配置した移動容器では、矩形状に4輪を配置した移動容器に比べて手に荷重がかかる。これは前者では、物品および容器の重力によって生じる、路面に垂直かつ進行方向に生じるモーメントの下方向きの力が、把手を持つ手にかかってくるためである。
【0007】
図2のような移動容器では、移動容器を水平方向に引っ張る方式であり、かつ進行方向に並列に2輪であるため、移動容器を、持ち人の後ろに位置させざるをえない。そのため、後ろに多くのスペースをとり、後ろを歩く別の人の行動の妨げになることがある。
【0008】
矩形状に4輪を配して、引っ張る移動容器(図3)の場合については、上記2輪の場合と同様、後ろに多くのスペースをとるが、この場合はさらに多くのスペースを必要とせざるをえない。その理由は、図2の容器部分は上下に斜めになっているため、地上面に占める空間は把手および容器の射影部分のみであるのに対して、図3は、把手および容器の底面全面を占めるためである。
【0009】
また、移動方向を変更するとき、車輪の方向を変更しなければならないが、4輪つきの容器を引っ張っている関係上、方向転換が、2輪の場合に比べて行いにくい。それは、路面と車輪との間に発生する摩擦力に影響されるためである。4輪の場合は2輪に比べてその摩擦力は大きくなる。また、矩形状に配置された4輪は、多くの場合、そのうちの2輪2組は、進行方向に対して直列に配置されることになるので、図2のような並列2輪の容器に比べて進行方向を変更しにくくなる。
【00010】
矩形状に4輪を配置して、押していく移動容器(図4)の場合については、押して行くために、路面が滑らかでない場合は、移動容器を直進させようとしても、直進しにくく、右方向に振れて進んだり、左方向に振れて進んだり、あるいは蛇行したりしやすくなる傾向がある。
【00011】
そして凹凸がとくに激しい路面の場合は、蛇行や左右方向に振れるだけではなく、前方につんのめりやすくなる。これは、図4のような移動容器の最上面の部分を押すことにより、モーメントの力が生じ、進行方向に向かって垂直の回転力が発生し、容器がつんのめりやすくなるためである。そのため、凹凸の激しい路面では、矩形状に4輪を配置して、押していく移動容器の走行を諦めざるを得ないことになりかねない。
【課題を解決するための手段】
【00012】
上記課題[0006]については、本発明では進行方向に対して直列に少なくとも2個の車輪を互いに間隔をおいて配置している(請求項2)ため、物品および容器の重力によって生じる、路面に垂直かつ進行方向に生じるモーメントの下方向きの力を軽減させる。とくに、車輪を矩形状に4個配置すると、物品および容器の重力が把手を持つ手にかかってくる部分は、図3や図4の場合並に軽減される。
【00013】
上記課題[0007]および[0008]について。本発明は、本発明を持つ人の体のすぐ横に持つため(請求項1)、後ろにとるべきスペースは大幅に減少させることができる。
【00014】
上記課題[0009]について。移動方向を変更するとき、本発明は、本発明を上方に持ち上げ(請求項3)、3の車輪と路面との接触をなくすか(図5)、または路面と車輪との間の接触面積を減らすこと(図6)により、摩擦を軽減させて、方向を変える。そのため、路面との摩擦力の影響を受けにくくなる。したがって、必ずしも方向変換は行い難くはない。本発明を持ち上げる高さによっては、矩形状に4輪を配置した図3や、図4よりも方向転換は容易にできうる。
【00015】
上記課題[00010]について。本発明の本容器には、進行方向に直列に少なくとも2個の車輪を配置してある。そして容器を進行方向に向かって引っ張って行く方式である。そのため、押して行く方式に比べて、蛇行や左右の方向に振れる現象は軽減される。とはいえ、路面の凹凸が激しい場合は、本発明といえども蛇行や左右の振れは大きくなる。そのような場合は、本発明を上方に持ち上げる。持ち上げる幅は、本容器に装着した車輪の最下部が路面と接触しない程度(図5)または接触したとしても全面的に接触しない程度(図6)に持ち上げる。そのときの高さは、少なくとも3段階に調整できるようにしてある(請求項3)。その調整は、把手を持ち変えるか、把手の高さを調節する。そして、持ち上げるのは常ではなく、持ち上げたり降ろしたりする。つまり、ジャンピングさせる(請求項1)。こうして蛇行や左右方向への振れを軽減し、またつんのめる現象を回避できる。
【発明の効果】
【00016】
上述のように、本発明の「引きずり・ジャンピング式鞄」は、従来の、進行方向に対して並列に2輪をつけて、引っ張る移動容器や、4輪を矩形状に配置して引っ張る移動容器に比べて、持ち手の後ろのスペースを縮小させることができる。かつ、矩形状に4輪を配置して、押して走行させる移動容器に比べて、蛇行や左右方向への振れを軽減させ、“つんのめり”を回避できる。そして、容器や容器の中に収めた物品の重力を、並列2輪に比べて軽減させ、これらを移動させることができる。その結果、本発明は、旅行用・買い物用の鞄としてたけではなく、通勤用の鞄としても使用することができる。
【発明の実施するための最良の形態】
【00017】
以下、本発明の実施の形態として、一実施例を図1〜図6に基づいて説明する。
【00018】
図1において、把手1は梯子状になっており、3段ある。把手を梯子状に数段階設けることにより、本発明を中空に持ち上げる高さを調節することができる。すなわち、本発明を高く持ち上げたい場合は一番下の把手を持てばよい。路面が階段状になっている場合などには、本発明を中空に持ち上げると、容器や車輪を階段にぶつけなくてすむ。逆に本発明を下に下げたい場合は上段の把手を持てばよい。通常の歩行時は、路面に車輪を接するようにするため、最上段の把手を持つようにする。
【00019】
また図1の場合は、把手が梯子状になっているため、梯子の任意の段に、持つべき把手を片手で持ち変えることができる。つまり、隣同士の把手を片手で辿っていくことにより、片手で任意の把手に持ち変えることができる。これによって、急に激しい凹凸を有する路面に遭遇したときでも、速やかに把手を持ち変えることによって本発明を蛇行や左右への振れを停止させ、またつんのめることなく、常に円滑に進行方向上に移動させることができる。
【00020】
なお、把手は、この図のような梯子状でなくてもよい。把手を1段のみにし、この把手の高さを臨機応変に片手で調節できるようにしてあればよい。
【00021】
また、把手の高さ調節の段階数は、図1のように3段階に限定するものではない。4段階や5段階以上でもよい。
【00022】
車輪3は、路面と容器を接触させる仲介物であり、かつ容器を路面に進行方向に直進的に滑走させる役割を担う潤滑物である。車輪は、路面の凹凸により進行方向が簡単に変化しないように、水平方向の回転がしにくい固定的な車輪をとりつけている。
【00023】
ただし、図1では、この潤滑物として車輪を用いているが、路面上の進行方向に直進的に容器を円滑に移動させる仲介物であれば、これを車輪に限定する必要はない。
【00024】
本発明の実施の形態を総括的に述べると、次のようである。図1のように、本発明は容器を路面上に引きずりながら移動させる。ただし、方向を変更するときは容器をやや上方に持ち上げて、容器と地面が接しないようにするか、または容器と地面の摩擦が軽減するようにする。そして、路面の凹凸が激しくて、滑らかに引きずることができない場合は、容器を路面上にジャンプさせながら、移動させる。容器を路面上にジャンプさせることにより、短時間ではあるが容器を道路の中空中に滑空させることができる。滑空時間の間、慣性により、容器を進行方向に、路面と摩擦なく移動させることができる。
【00025】
以下、上記構成の動作を説明する。通常の歩行をするときは、把手1の最上段の把手を掴んで、進行方向にこれを引く(図1)。すると、容器は路面を進行方向に向かって引きずられることになる。その結果、容器は水平方向に移動する。進行方向を変更するときは、把手を上方に持ち上げるようにしながら進行方向に把手を引く。これによって進行方向を変更することができる。路面の凹凸が激しく、容器を滑らかに引きずることができない場合は、2段目の把手を持ち、容器を路面から上に持ち上げたり、路面上に降ろしたりすることを繰り返しながら、つまり、容器をジャンプさせながら進行方向に容器を移動させる(図6)。この動作により、本発明の手にかかる重力を軽減し、本発明を進行方向に移動させることができる。路面が階段状の場合は、最下段の把手を持ち、本発明を中空に持ち、本発明を中空中で移動させる。
【図面の簡単な説明】
【00026】
【図1】本発明の実施形態を示す移動容器の側面図
【図2】従来の2輪車型の移動容器の側面図
【図3】従来の4輪車型で引っ張る方式の移動容器の斜視図
【図4】従来の4輪車型で押す方式の移動容器の斜視図
【図5】本発明の移動容器を持ち上げたときの側面図
【図6】本発明の移動容器を路面に接したときの側面図
【符号の説明】
1 容器(鞄)の把手
2 容器(鞄)
3 車輪
4 (従来の2輪車の鞄の)把手

【特許請求の範囲】
【請求項1】
持ち人(本容器を持って移動する人)の真横に置き、持ち人が、あるときは上方に持ち上げながら(一時的に上方に持ち上げることをジャンピングとも呼ぶ)、しかし通常は進行方向に路面上を路面に平行に引きずって移動させる車輪3つき容器
【請求項2】
直進する進行方向に向かって、直進方向から逸れた角度に回転または移動することがない、常に一定方向を向いた車輪3(固定型車輪と呼ばれる)を進行方向に直列に少なくとも2個以上、互いに間隔を置いて装着した容器。
【請求項3】
少なくとも3段階の高さを持つ、あるいは3段階の高さに伸縮できる把手1をその上方に結合した容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−72558(P2009−72558A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−274436(P2007−274436)
【出願日】平成19年9月21日(2007.9.21)
【出願人】(507350288)
【Fターム(参考)】