説明

引き戸用扉体案内装置

【課題】引き戸に用いられる扉体のガタツキ発生を防止することができ、さらに、扉体間や、扉体と戸袋との間に存在するかぶり代を極小化することが可能な、新たな引き戸用扉体案内装置を提供する。
【解決手段】引き戸用扉体案内装置は、開閉移動自在な扉体(DW1,DW2)と、扉体の開閉移動方向に形成される案内溝17,18と、案内溝の内部に挿入設置されることによって扉体の開閉移動を案内する案内機構20とを備えている。案内機構20は、複数の案内ローラを備えており、この案内ローラは、それぞれが回転軸に対して回転自在に取り付けられ、回転軸の軸線に対して平行な方向で見たときに、隣り合う案内ローラ同士が重畳するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、引き戸に用いられる扉体の開閉移動を案内するための引き戸用扉体案内装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
扉には、竪框に取り付けた丁番などを軸にして回転させる開き扉と、水平方向に動かすことで開閉させる引き戸が存在する。このうち、引き戸には、片引き戸、両引き戸、引き込み戸、引き違い戸などの様々な形式のものが存在しており、引き戸を構成する扉体の個数についても、1個のものから複数個設置されたものまで種々存在している。
【0003】
例えば、二重引き式の引き戸の構成について、図13及び図14を用いて説明すると、図13及び図14に示されているとおり、二重引き式の引き戸は、主動扉DW1及び従動扉DW2と呼ばれる2つの扉体を有しており、これら2つの扉体によって、例えば、建物内の廊下と部屋との間の出入口となっている開口部101を開放及び閉鎖できるようになっている。開口部101は、二重引き式の引き戸の設置されるサッシ巾Wのうち、片面式戸袋を形成している戸袋102の戸先側(閉じ側)の空間によって形成されており、主動扉DW1及び従動扉DW2が同一方向へ移動することによって完全に閉鎖できるようになっている。
【0004】
また、主動扉DW1と従動扉DW2は、それぞれの厚さ方向でずれて配置されており、図13で示すように、2つの扉体(主動扉DW1と従動扉DW2)が閉じ側へ前進して開口部101を閉じたときには、主動扉DW1と従動扉DW2との間でかぶり代K1を有した状態で停止し、従動扉DW2と戸袋102との間でかぶり代K2を有した状態で停止するよう構成されている。
【0005】
一方、図14で示すように、2つの扉体(主動扉DW1と従動扉DW2)が戸袋102側へ開き移動したときには、これらの扉体は厚さ方向で重なって後退位置に達することになる。このとき、主動扉DW1と従動扉DW2の戸尻側(開き側)にはすき間Mが存在しており、また、主動扉DW1の戸先側(閉じ側)には、引残しNが存在するように構成されている。
【0006】
次に、図15を用いて、上述した2つの扉体(主動扉DW1と従動扉DW2)の開閉移動を実現する機構について説明すると、二重引き式の引き戸の場合、戸枠上側には2条の案内レール103,104が設置されている。図15において紙面右側に描かれた案内レール103は、主動扉DW1を案内するための部材である。主動扉DW1は、この案内レール103上を滑動する滑車105を介して案内レール103に取り付けられており、案内レール103の軌道方向に沿った主動扉DW1の開閉移動が可能とされている。
【0007】
一方、図15において紙面左側に描かれた案内レール104は、従動扉DW2を案内するための部材である。従動扉DW2は、この案内レール104上を滑動する滑車106を介して案内レール104に取り付けられており、案内レール104の軌道方向に沿った従動扉DW2の開閉移動が可能とされている。さらに、2つの扉体(主動扉DW1と従動扉DW2)は、詳細な説明を略す接続機構107によって開閉移動時の位置関係が規定されており、主動扉DW1に設置された把手108を操作するだけで、図13で示す閉じ状態と、図14で示す開き状態とを実現することができるようになっている。
【0008】
ところで、以上説明したような引き戸は、その構成上出入り方向のガタツキが出易いために、従来から、扉体の開閉移動を案内するための案内装置を設置することが行われている。そして、従来の一般的な案内装置は、図15に示すような構成を有するものであり、従動扉DW2については、従動扉DW2の開閉移動方向に形成される案内溝110と、床面に設置される案内ローラ112とを用意し、案内溝110の内部に案内ローラ112を挿入設置することによって従動扉DW2の開閉移動を案内し、従動扉DW2のガタツキを抑制することが行われていた。
【0009】
一方、主動扉DW1については、主動扉DW1の開閉移動方向に形成される案内溝111と、従動扉DW2の戸先側に設置される案内ローラ113とを用意し、案内溝111の内部に案内ローラ113を挿入設置することによって主動扉DW1の開閉移動を案内し、主動扉DW1のガタツキを抑制することが行われていた(この種の構成については、例えば、下記特許文献1を参照)。
【0010】
ところが、案内溝110,111に対して1つの案内ローラ112,113を設置する従来の案内装置は、各々の案内ローラと案内溝とのすき間の累積によってガタツキを完全に抑制することはできず、特に主動扉DW1側でのガタツキ発生が大きくなってしまうという問題を有していた。
【0011】
そこで、上述した問題を解消すべく、案内溝内に複数の案内ローラを設けることによってガタツキの発生を防止しようとする技術が創案されている(例えば、下記特許文献2参照)。
【0012】
【特許文献1】特開昭58−185884号公報
【特許文献2】特開2005−146831号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、上記特許文献2に記載されるような、案内溝に対して複数の案内ローラを設ける構成は、案内ローラ同士の芯間距離が大きくなってしまうので案内ローラ設置領域を大きく取らざるを得ず、その結果、図13で示した主動扉DW1と従動扉DW2との間で発生するかぶり代K1と、従動扉DW2と戸袋102との間で発生するかぶり代K2とを、大きく取らなければならないという不具合を有するものであった。そして、この不具合は、引き戸にとって最も解消すべき課題となっていた。
【0014】
すなわち、二重引き式等の引き戸は、例えば病院や老人ホームの各部屋に設置されるトイレの出入口に取り付けられることがあるが、このような場合、元々狭いサッシ枠寸法の出入口に対して人が通れる有効開口寸法を極力広く確保したいという要望が存在している。そのため、ガタツキの少ない案内装置を設置した上で、さらに、主動扉DW1と従動扉DW2との間で発生するかぶり代K1と、従動扉DW2と戸袋102との間で発生するかぶり代K2とを、極力小さくすることが要望されていた。
【0015】
しかし、上記特許文献2に代表される従来の案内装置では、ガタツキの発生防止を行うことはできても、出入口の有効開口寸法を極力広く確保したいとする要請に応えることはできなかった。
【0016】
本発明は、上述した課題の存在に鑑みて成されたものであって、その目的は、引き戸に用いられる扉体のガタツキ発生を防止することができ、さらに、扉体間や、扉体と戸袋との間に存在するかぶり代を極小化することが可能な、新たな引き戸用扉体案内装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
以下、本発明について説明する。なお、本発明の理解を容易にするために添付図面の参照番号を括弧書きにて付記するが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
【0018】
本発明に係る引き戸用扉体案内装置は、開閉移動自在な扉体(DW1,DW2)と、前記扉体(DW1,DW2)の開閉移動方向に形成される案内溝(17,18)と、前記案内溝(17,18)の内部に挿入設置されることによって前記扉体(DW1,DW2)の開閉移動を案内する複数の案内ローラ(22,23)と、を備える引き戸用扉体案内装置であって、前記複数の案内ローラ(22,23)は、それぞれが回転軸(24,25)に対して回転自在に取り付けられており、前記回転軸(24,25)の軸線に対して平行な方向で見たときに、隣り合う案内ローラ(22,23)同士が重畳するように構成されていることを特徴とする。
【0019】
本発明に係る別の引き戸用扉体案内装置は、開閉移動自在な扉体(DW1,DW2)と、前記扉体(DW1,DW2)の開閉移動方向に形成される案内溝(17,18)と、前記案内溝(17,18)の内部に挿入設置されることによって前記扉体(DW1,DW2)の開閉移動を案内する複数の案内ローラ(22,23)と、を備える引き戸用扉体案内装置であって、前記複数の案内ローラ(22,23)は、それぞれが回転軸(24,25)に対して回転自在に取り付けられており、前記回転軸(24,25)の軸線に対して垂直な方向で見たときに、隣り合う案内ローラ(22,23)同士が重畳しないように構成されていることを特徴とする。
【0020】
本発明に係る他の引き戸用扉体案内装置は、開閉移動自在な扉体(DW1,DW2)と、前記扉体(DW1,DW2)の開閉移動方向に形成される案内溝(17,18)と、前記案内溝(17,18)の内部に挿入設置されることによって前記扉体(DW1,DW2)の開閉移動を案内する複数の案内ローラ(22,23)と、を備える引き戸用扉体案内装置であって、前記複数の案内ローラ(22,23)は、それぞれが回転軸(24,25)に対して回転自在に取り付けられており、隣り合う回転軸(24,25)の軸線間の距離が、前記複数の案内ローラ(22,23)の各半径の合計よりも小さくなるように構成されていることを特徴とする。
【0021】
本発明に係るさらに他の引き戸用扉体案内装置は、開閉移動自在な扉体(DW1,DW2)と、前記扉体(DW1,DW2)の開閉移動方向に形成される案内溝(17,18)と、前記案内溝(17,18)の内部に挿入設置されることによって前記扉体(DW1,DW2)の開閉移動を案内する複数の案内ローラ(22,23)と、を備える引き戸用扉体案内装置であって、前記複数の案内ローラ(22,23)は、それぞれが回転軸(24,25)に対して回転自在に取り付けられており、隣り合う回転軸(24,25)の高さが異なるように構成されていることを特徴とする。
【0022】
本発明に係る引き戸用扉体案内装置は、少なくとも隣り合う案内ローラ(22,23)は同一の台座(21)上に設置されており、前記台座(21)の配置位置を調整自在に構成することができる。
【0023】
また、本発明に係る引き戸用扉体案内装置において、前記扉体(DW1,DW2)は、戸枠上側に設置される案内レール(13,14)を滑動可能な滑車(15,16)を介して吊り下げ設置されており、前記扉体(DW1,DW2)の下方側には前記複数の案内ローラ(22,23)が設置され、前記扉体の上方側には前記案内レール(13,14)に沿った前記扉体(DW1,DW2)の開閉移動を案内するための案内部材(30,40)を設置することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、引き戸に用いられる扉体のガタツキ発生を防止することができ、さらに、扉体間や、扉体と戸袋との間に存在するかぶり代を極小化することが可能な、新たな引き戸用扉体案内装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明を実施するための好適な実施形態について、図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0026】
なお、以下で説明する実施形態は、本発明を二重引き式の引き戸に適用した場合を例示するものであるが、本発明の適用範囲は二重引き式の引き戸に限られるものではなく、例えば、片引き戸、両引き戸、引き込み戸、引き違い戸などの様々な形式のものに適用可能であり、引き戸を構成する扉体の個数についても、1個のものから2個以上設置されたものまで適用可能である。また、背景技術の欄で説明した従来の引き戸用扉体案内装置と同一又は類似する部材については、同一符号を付して説明を省略する場合がある。
【0027】
図1は、本実施形態に係る引き戸用扉体案内装置の全体構成を説明するための側面図である。本実施形態に係る引き戸用扉体案内装置は、主動扉DW1と従動扉DW2という2枚の扉体を備えて構成されている。2枚の扉体(主動扉DW1と従動扉DW2)は、それぞれ上部に取り付け部材11,12を有しており、これら取り付け部材11,12のそれぞれには、さらに扉体の開閉方向に垂直な方向の水平軸線回りで回転可能な滑車15,16が設置されている。
【0028】
一方、戸枠の上側には、2条の案内レール13,14が設置されている。図1において紙面右側に描かれた案内レール13は、主動扉DW1を案内するための部材であり、主動扉DW1の開閉方向に延びて構成されている。主動扉DW1は、この案内レール13に滑車15を介して取り付けられており、案内レール13の軌道方向に沿った主動扉DW1の開閉移動が可能となっている。
【0029】
また、図1において紙面左側に描かれた案内レール14は、従動扉DW2を案内するための部材であり、上記主動扉DW1用の案内レール13と平行な方向で設置されるとともに、従動扉DW2の開閉方向に延びて構成されている。従動扉DW2は、この案内レール14に滑車16を介して取り付けられており、案内レール14の軌道方向に沿った従動扉DW2の開閉移動が可能とされている。
【0030】
さらに、本実施形態に係る引き戸用扉体案内装置には、2枚の扉体(主動扉DW1と従動扉DW2)の開閉移動を、ガタツキを抑えた状態で案内するための案内機構20が設置されている。この案内機構20は、従来技術にない構成を備えており、有意な作用効果を発揮できるようになっている。
【0031】
そこで、図1乃至図4を用いることにより、本実施形態に係る案内機構20の具体的な構成を説明する。なお、図2は、本実施形態に係る案内機構20の部分縦断面側面図であり、案内機構20を構成する回転軸24,25の軸線に対して垂直な方向で見た場合の図である。また、図3は、本実施形態に係る案内機構20の上面図であり、案内機構20を構成する回転軸24,25の軸線に対して平行な方向で見た場合の図である。さらに、図4は、扉体が有する案内溝17,18への案内機構20の設置状態を示す図である。
【0032】
図1に示すように、本実施形態の従動扉DW2には、その下方に案内溝18が形成されており、この案内溝18は従動扉DW2の開閉移動方向に形成されている。一方、本実施形態の主動扉DW1についても、その下方に案内溝17が形成されており、この案内溝17は主動扉DW1の開閉移動方向に形成されている。それぞれの案内溝17,18の内部には、案内機構20が挿入設置されており、扉体のガタツキ発生を防止している。なお、二重引き式の引き戸の構成上、従動扉DW2の案内溝18内に設置される案内機構20については、床面19に設置されており、主動扉DW1の案内溝17内に設置される案内機構20については、従動扉DW2に固定されたアーム部材29に設置されている。
【0033】
次に、本実施形態で最も特徴的な案内機構20の具体的な構成を説明する。図2及び図3に示すように、本実施形態に係る案内機構20は、平板状に形成される台座21上に立設される2本の回転軸24,25と、この2本の回転軸24,25に対してそれぞれ回転自在な状態で取り付けられる2個の案内ローラ22,23とから構成されている。
【0034】
台座21に対する2本の回転軸24,25の固定手段としては、カシメ固定やねじ止め固定など、公知の固定手段を採用することができる。
【0035】
また、本実施形態に係る案内機構20は、2本の回転軸24,25と2個の案内ローラ22,23との設置位置に特徴を有しており、図2に示すように、隣り合う回転軸24,25の高さが異なるように構成されている。この構成によって、図2のように回転軸の軸線に対して垂直な方向で見たときに、隣り合う案内ローラ22,23同士が重畳しないようになっている。
【0036】
また、本実施形態に係る案内機構20は、図2及び図3から明らかな通り、隣り合う回転軸24,25の軸線間の距離が、案内ローラ22,23の各半径の合計よりも小さくなるように構成されている。これによって、図3のように回転軸24,25の軸線に対して平行な方向で見たときに、隣り合う案内ローラ22,23同士が重畳するように構成されているのである。
【0037】
本実施形態の案内機構20を構成する2本の回転軸24,25と2個の案内ローラ22,23が上記のような構成を有することによって、隣り合う回転軸24,25の軸線間の距離が極小化できる。したがって、本実施形態では、従来技術では不可能であった非常にコンパクトな案内機構20を実現することが可能となっている。
【0038】
なお、案内機構20を図3及び図4のような状態、すなわち、案内溝17,18の側壁に対して2個の案内ローラ22,23が接触していない状態であると、案内溝17,18と案内ローラ22,23との間に発生するすき間の存在によって、扉体にガタツキが発生する原因になってしまう。そこで、本実施形態に係る案内機構20では、案内ローラ22,23をそれぞれ別の側壁に対して接触できるようにする機構を設けている。この機構について、図3乃至図6を用いて説明を行う。なお、図5は、本実施形態に係る案内機構20の上面図であり、案内機構20を構成する回転ローラ22,23を案内溝17,18の側壁に対して接触させた状態の図である。さらに、図6は、扉体が有する案内溝17,18への回転ローラ22,23の接触状態を示す側面図である。
【0039】
本実施形態の案内機構20を構成する平板状の台座21には、扉体の開閉方向に延びる第1の長孔21aと、引き戸の出入り方向に延びる第2の長孔21bとが形成されている。これら2つの長孔21a,21bには、案内機構20の固定を行うためにボルト等の締結手段が挿通可能となっており、この締結手段の固定位置を調整することによって、案内機構20の配置位置を2つの長孔21a,21bの開口範囲内で自由に調整できるようになっている。特に、第1の長孔21aは、案内機構20の開閉方向での位置調整を可能とするために機能し、第2の長孔21bは、案内機構20の出入り方向での位置調整を可能とするために機能する。
【0040】
そして、図5及び図6に示すように、案内機構20を所望の位置で(例えば、傾けて)固定することによって、2個の案内ローラ22,23と案内溝17,18の側壁との確実な接触が実現し、2枚の扉体(主動扉DW1と従動扉DW2)の開閉移動時におけるガタツキの発生を確実に抑えることが可能となっている。
【0041】
本実施形態に係る引き戸用扉体案内装置は、上述した構成を備えているので、従来技術に比べて有効開口寸法を大きく取ることができ、しかも扉体のガタツキ発生を確実に防止することが可能となっている。その効果について図7及び図8を用いて具体的に説明する。ここで、図7は、従来技術に係る引き戸用扉体案内装置を用いた場合の二重引き式引き戸の全閉・全開状態を示す図であり、例えば、上記特許文献2に開示されているような、同一の案内ローラを同じ状態で2個設けた従来の案内装置を示すものである。また、図8は、本実施形態に係る引き戸用扉体案内装置を用いた場合の二重引き式引き戸の全閉・全開状態を示す図である。
【0042】
図7から明らかな通り、従来技術に係る引き戸用扉体案内装置の場合は、扉体間や、扉体と戸袋との間に存在するかぶり代K1,K2が非常に大きいので、扉体を全開状態としたときの有効開口寸法が狭くなっている。一方、本実施形態に係る引き戸用扉体案内装置の場合には、コンパクトに配置された案内機構20の作用によって、扉体間や、扉体と戸袋との間に存在するかぶり代K1’,K2’を極力小さくすることができている。したがって、本実施形態に係る引き戸用扉体案内装置の方が、従来技術に係る引き戸用扉体案内装置の場合に比べて扉体全開時の有効開口寸法を大きく取ることが可能となっている。
【0043】
以上、本実施形態に係る引き戸用扉体案内装置の好適な実施形態について説明した。しかしながら、本実施形態に係る引き戸用扉体案内装置に対しては、さらに安定した扉体の開閉動作を実現するための機構を追加することが好適である。そこで、図9乃至図12を用いて、さらに改良された引き戸用扉体案内装置を説明する。
【0044】
まず、主動扉DW1のための案内部材30について説明する。ここで、図9は、本実施形態に係る主動扉DW1の安定した開閉運動を補助するための案内部材30の設置状態を示す図であり、図10は、図9で示した主動扉DW1用の案内部材30の具体的な構成を説明するための図である。
【0045】
図9及び図10に示される案内部材30は、取り付け枠体31と、この取り付け枠体31に立設する2本の回転軸32,32と、この2本の回転軸32,32に対して回転自在に設置される2個の回転ローラ33,33とによって構成されている。
【0046】
さらに、取り付け枠体31には、合計で4個のボルト孔31a,31bが形成されており、取り付け枠体31の外方側に形成された2個のボルト孔31aは通し孔として形成され、取り付け枠体31の中央側に形成された2個のボルト孔31bはねじ孔として形成されている。そして、取り付け枠体31の外方側に形成された2個のボルト孔31aを用いて取り付け部材11への固定が行われ、取り付け枠体31の中央側に形成された2個のボルト孔31bを用いて回転ローラ33の案内レール13に対する当たり具合の調整が実施できるようになっている。
【0047】
取り付け枠体31の具体的な取付・調整方法を説明すると、まず、中央側に形成された2個のボルト孔31bに螺合されたボルト31cのねじ込み量を調整することによって、案内レール13に対する2個の回転ローラ33,33の当たり具合の調整を行う。好適な当たり具合が確保できたら、外方側に形成された2個のボルト孔31aに対して図示しないボルトを螺合し、案内部材30の取り付け部材11に対する確実な固定を実施する。特に、図9及び図10に示される案内部材30では、始めにねじ込まれる中央側のボルト31cの効果によって、ボルト孔31aを用いたボルト固定をどのような順序や力加減で行ったとしても、安定且つ確実な案内部材30の固定が実現できるようになっている。
【0048】
案内部材30は、以上のようにして取り付け部材11に固定設置されることにより、案内部材30が有する2個の回転ローラ33,33は、戸枠の上側に設置される案内レール13を僅かに押圧するように設置される。つまり、主動扉DW1が開閉動作を行うと、案内レール13側面を2個の回転ローラ33,33が僅かに押圧しながら移動するので、主動扉DW1の上方における安定した開閉動作が実現することになる。
【0049】
なお、主動扉DW1の下方で作用する案内機構20のガタツキ防止効果と、主動扉DW1の上方で作用する案内部材30の開閉補助効果は、累積的に作用することになるので、例えば、主動扉DW1がガタついたり、案内レール13上を滑動する滑車15がレールから脱線したりすることが防止できる。
【0050】
次に、上述した案内部材30とは別の形態の案内部材40について説明する。ここで、図11は、本実施形態に好適に適用することができる案内部材40の設置状態を示す図であり、図12は、図11で示した案内部材40の具体的な構成を説明するための図である。
【0051】
図11及び図12に示される案内部材40は、取り付け枠体41と、この取り付け枠体41に立設する1本の回転軸42と、この回転軸42に対して回転自在に設置される回転ローラ43とによって構成されている。
【0052】
また、この案内部材40には、取り付け枠体41に2個の長孔41aが形成されており、この長孔41aを用いることによって、回転ローラ43の当たり調整が可能となっている。すなわち、案内部材40は、主動扉DW1の上面に対してボルト41bによって取り付けられることになるのであるが、長孔41aに挿入されるボルト41bは、まず始めに途中までねじ込まれ、この状態で案内部材40の位置を調整する。案内部材40の位置調整によって、回転ローラ43の案内レール14に対する当たりが適切な状態に調整されると、この状態を維持しながらボルト41bを完全にねじ込む。このようにすることによって、主動扉DW1の上面に対する適切な位置での案内部材40の固定が実現する。
【0053】
案内部材40が以上のようにして主動扉DW1の上面に固定設置されることにより、案内部材40が有する回転ローラ43は、戸枠の上側に設置される案内レール14の側面を僅かに押圧するように設置される。つまり、主動扉DW1が開閉動作を行うと、案内レール14の側面を回転ローラ43が僅かに押圧しながら移動するので、主動扉DW1の上方における安定した開閉動作が実現することになる。
【0054】
なお、主動扉DW1の下方で作用する案内機構20のガタツキ防止効果と、主動扉DW1の上方で作用する案内部材40の開閉補助効果は、累積的に作用することになるので、例えば、主動扉DW1がガタついたり、主動扉DW1が外れたりすることが防止できる。
【0055】
さらに、上述した2種類の案内部材30,40の両方を設置することによって、さらに安定した主動扉DW1の動作案内が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本実施形態に係る引き戸用扉体案内装置の全体構成を説明するための側面図である。
【図2】本実施形態に係る案内機構の部分縦断面側面図であり、案内機構を構成する回転軸の軸線に対して垂直な方向で見た場合の図である。
【図3】本実施形態に係る案内機構の上面図であり、案内機構を構成する回転軸の軸線に対して平行な方向で見た場合の図である。
【図4】扉体が有する案内溝への案内機構の設置状態を示す図である。
【図5】本実施形態に係る案内機構の上面図であり、案内機構を構成する回転ローラを案内溝の側壁に対して接触させた状態の図である。
【図6】扉体が有する案内溝への回転ローラの接触状態を示す側面図である。
【図7】従来技術に係る引き戸用扉体案内装置を用いた場合の二重引き式引き戸の全閉・全開状態を示す図であり、例えば、上記特許文献2に開示されているような、同一の案内ローラを同じ状態で2個設けた従来の案内装置を示すものである。
【図8】本実施形態に係る引き戸用扉体案内装置を用いた場合の二重引き式引き戸の全閉・全開状態を示す図である。
【図9】本実施形態に係る主動扉の安定した開閉運動を補助するための案内部材の設置状態を示す図である。
【図10】図9で示した主動扉用の案内部材の具体的な構成を説明するための図である。
【図11】本実施形態に好適に適用することができる案内部材の設置状態を示す図である。
【図12】図11で示した案内部材の具体的な構成を説明するための図である。
【図13】二重引き式の引き戸の構成を示す図であり、特に扉体が全閉状態の場合を示している。
【図14】二重引き式の引き戸の構成を示す図であり、特に扉体が全開状態の場合を示している。
【図15】従来技術に係る扉体の開閉移動を実現する機構について説明する図である。
【符号の説明】
【0057】
DW1 主動扉、DW2 従動扉、11,12 取り付け部材、13,14 案内レール、15,16 滑車、17,18 案内溝、19 床面、20 案内機構、21 台座、21a 第1の長孔、21b 第2の長孔、22,23 案内ローラ、24,25 回転軸、29 アーム部材、30 案内部材、31 取り付け枠体、31a,31b ボルト孔、31c ボルト、32 回転軸、33 回転ローラ、40 案内部材、41 取り付け枠体、41a 長孔、41b ボルト、42 回転軸、43 回転ローラ、101 開口部、102 戸袋、103,104 案内レール、105,106 滑車、107 接続機構、108 把手、110,111 案内溝、112,113 案内ローラ、K1,K2,K1’,K2’ かぶり代、W サッシ巾、M すき間、N 引残し。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開閉移動自在な扉体と、
前記扉体の開閉移動方向に形成される案内溝と、
前記案内溝の内部に挿入設置されることによって前記扉体の開閉移動を案内する複数の案内ローラと、
を備える引き戸用扉体案内装置であって、
前記複数の案内ローラは、それぞれが回転軸に対して回転自在に取り付けられており、
前記回転軸の軸線に対して平行な方向で見たときに、隣り合う案内ローラ同士が重畳するように構成されていることを特徴とする引き戸用扉体案内装置。
【請求項2】
開閉移動自在な扉体と、
前記扉体の開閉移動方向に形成される案内溝と、
前記案内溝の内部に挿入設置されることによって前記扉体の開閉移動を案内する複数の案内ローラと、
を備える引き戸用扉体案内装置であって、
前記複数の案内ローラは、それぞれが回転軸に対して回転自在に取り付けられており、
前記回転軸の軸線に対して垂直な方向で見たときに、隣り合う案内ローラ同士が重畳しないように構成されていることを特徴とする引き戸用扉体案内装置。
【請求項3】
開閉移動自在な扉体と、
前記扉体の開閉移動方向に形成される案内溝と、
前記案内溝の内部に挿入設置されることによって前記扉体の開閉移動を案内する複数の案内ローラと、
を備える引き戸用扉体案内装置であって、
前記複数の案内ローラは、それぞれが回転軸に対して回転自在に取り付けられており、
隣り合う回転軸の軸線間の距離が、前記複数の案内ローラの各半径の合計よりも小さくなるように構成されていることを特徴とする引き戸用扉体案内装置。
【請求項4】
開閉移動自在な扉体と、
前記扉体の開閉移動方向に形成される案内溝と、
前記案内溝の内部に挿入設置されることによって前記扉体の開閉移動を案内する複数の案内ローラと、
を備える引き戸用扉体案内装置であって、
前記複数の案内ローラは、それぞれが回転軸に対して回転自在に取り付けられており、
隣り合う回転軸の高さが異なるように構成されていることを特徴とする引き戸用扉体案内装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の引き戸用扉体案内装置において、
少なくとも隣り合う案内ローラは同一の台座上に設置されており、
前記台座の配置位置が調整自在に構成されていることを特徴とする引き戸用扉体案内装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の引き戸用扉体案内装置において、
前記扉体は、戸枠上側に設置される案内レールを滑動可能な滑車を介して吊り下げ設置されており、
前記扉体の下方側には前記複数の案内ローラが設置され、
前記扉体の上方側には前記案内レールに沿った前記扉体の開閉移動を案内するための案内部材が設置されていることを特徴とする引き戸用扉体案内装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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