説明

引き込み戸構造

【課題】引き込み戸を構成する引き戸を容易に取り外せるようにして、戸袋内の掃除や戸枠部の掃除を容易に行なえるようにする。
【解決手段】二箇所の上部被案内部12はそれぞれ上部案内溝30から抜き外し操作可能に構成されている。戸先側10の下部被案内部13は、引き戸1によって区分される一方空間側Sにこの引き戸1を戸袋2から引き出した状態からその戸尻側11を回動中心xとして戸先側10を回動させる操作がなされたときに下部案内溝40から抜け出すようになっている。戸袋2の開放部21を構成する内外の壁体20、20の端部22のうち、一方空間側Sに面する壁体20の端部22は引き戸1の回動を妨げないように他方空間側S’に面する壁体20の端部22よりも戸袋2の奥側に後退されている。引き戸1の回動中心xと戸尻との間に位置される箇所16は引き戸1の回動を妨げない形状を持つ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、建物における出入り口に適用される引き込み戸の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
引き込み戸は、引き戸とその戸袋とから構成される。戸袋内の掃除は引き戸が邪魔になるため行い難い。また、両引き戸と異なり引き戸の取り外しは基本的には予定されていないため、引き戸の案内部(戸枠部)の掃除も行い難い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この発明が解決しようとする主たる問題点は、引き込み戸を構成する引き戸を容易に取り外せるようにして、戸袋内の掃除や戸枠部の掃除などを容易に行なえるようにする点にある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記課題を達成するために、この発明にあっては、引き込み戸構造を、戸先側と戸尻側とにそれぞれ上部案内溝に下方から納められて案内される上部被案内部を有すると共に、戸先側と戸尻側とにそれぞれ下部案内溝に上方から納められて案内される下部被案内部を備えた引き戸と、
内外の壁体を有し、この内外の壁体間に前記引き戸を納める戸袋とを備えており、
二箇所の前記上部被案内部はそれぞれ上部案内溝から抜き外し操作可能に構成されており、
戸先側の下部被案内部は、引き戸によって区分される一方空間側にこの引き戸を戸袋から引き出した状態からその戸尻側を回動中心として戸先側を回動させる操作がなされたときに下部案内溝から抜け出すようになっており、
戸尻側の上部被案内部と下部被案内部は前記操作がなされたときの回動中心となるように構成されており、
戸袋の開放部を構成する内外の壁体の端部のうち、前記一方空間側に面する壁体の端部は引き戸の前記回動を妨げないように他方空間側に面する壁体の端部よりも戸袋の奥側に後退されていると共に、
引き戸の前記回動中心と戸尻との間に位置される箇所、又は前記他方空間側に面する壁体における戸袋の開放部側に位置される箇所が、引き戸の前記回動を妨げない形状を持つように構成されているものとした。
【0005】
引き戸を戸袋から引き出しきった状態から、引き戸と戸当たりとの間にやや間隔が開けられる位置まで引き戸を後退させると共に、戸先側の上部被案内部を上部案内溝から抜き外す。次いで、戸先側を一方空間側に移動させる向きに引き戸を操作すると、前記一方空間側に面する壁体の端部の後退と、前記引き戸の回動を妨げない形状とにより、引き戸は戸尻側の上部被案内部と下部被案内部を回動支点として下部案内溝から戸先側の下部被案内部を抜け出させながら一方空間側に回動開き出す。次いで、引き戸の戸尻側の上部被案内部を上部案内溝から抜き外した後に、引き戸をやや上方に持ち上げることで戸尻側の下部被案内部を下部案内溝から抜け出させることができ、これにより引き戸の取り外しが完了される。取り外した引き戸は、以上と逆の手順を踏むことで再び容易に取り付けることができる。
【発明の効果】
【0006】
この発明によれば、引き込み戸を構成する引き戸を容易に取り外して、これを構成する戸袋内の掃除や戸枠部の掃除などを容易に行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1は引き込み戸構造の正面構成図である。
【図2】図2は上部被案内部の構成を示した要部正面構成図(a図)、及び要部断面構成図(b図、c図)であり、b図は上部案内溝に上部被案内部が納められている様子を、c図はこれを抜き外した様子を、それぞれ示している。
【図3】図3は引き戸の戸先側の下部被案内部の構成を示した要部断面構成図であり、a図は下部案内溝にこの下部被案内部が納められている様子を、b図はこれを抜け出させた様子を、それぞれ示している。
【図4】図4は引き戸の戸尻側の下部被案内部の構成を示した要部断面構成図である。
【図5】図5は引き込み戸構造の横断面構成図であり、b図は引き戸を回動させた様子を示している。
【図6】図6は図5と構成の一部を異ならせた引き込み戸構造の横断面構成図であり、b図は引き戸を回動させた様子を示している。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図1〜図6に基づいて、この発明の典型的な実施の形態について、説明する。この実施の形態にかかる引き込み戸構造は、建物における出入り口に適用されるものであり、これを構成する引き戸を容易に取り外せるようにして、戸袋内の掃除や戸枠部の掃除などを容易に行なえるようにしたものである。
【0009】
図中、符号1はかかる構造を構成する引き戸を、符号2は戸袋を、符号5は出入り口5を、符号6は戸当たりを、符号3は上部戸枠部を、符号4は下部戸枠部を、それぞれ示している。
【0010】
戸袋2は、内外の壁体20、20を有し、この内外の壁体20、20間に引き戸1を納めるように構成される。上部戸枠部3には引き戸1に対する上部案内溝30が、下部戸枠部40には引き戸1に対する下部案内溝40が、それぞれ設けられている。
【0011】
引き戸1は、戸先側10と戸尻側11とにそれぞれ上部案内溝30に下方から納められて案内される上部被案内部12を有すると共に、戸先側10と戸尻側11とにそれぞれ下部案内溝40に上方から納められて案内される下部被案内部13を備えている。
【0012】
二箇所の前記上部被案内部12はそれぞれ上部案内溝30から抜き外し操作可能に構成されている。図示の例では、かかる上部被案内部12は、軸状体12aとして構成されている。引き戸1には引き戸1の上端において開放された上部被案内部12の収容孔14が形成されている。上部被案内部12はその上端12bをこの収容孔14から突き出させた位置とこの上端12bを収容孔14内に引き込ませた位置との間に亘る可動可能に収容孔14に納められている。図示の例では、上部被案内部12の側部には符号12cで示す掛合部が形成されていると共に、引き戸1の一面にはこの掛合部12cのガイド溝15が形成されている。ガイド溝15は収容孔14に連通する鉛直部15bとこの鉛直部15bの上端から水平に延びる水平部15aとを備えており、掛合部12cが水平部15aにあるとき上部被案内部12はその上端12b側を収容孔14から突き出させた位置に保持されるようになっている。(図2(a)、(b))そして、この上部被案内部12の突き出された上端12b側が上部案内溝30に入り込んでこれに案内されるようになっている。この状態から、掛合部12cをガイド溝15の鉛直部15bの上端側に移動させるように操作すると、上部被案内部12は収容孔14内で回動して掛合部12cは水平部15aを抜け出して鉛直部15bの上端に移動され、この後に鉛直部15bに沿って掛合部12cを下方に押し下げると上部被案内部12は下方に移動してその上端12bは収容孔14内に引き込まれ、上部被案内部12は上部案内溝30から抜き外されるようになっている。(図2(c))
【0013】
また、戸先側10の下部被案内部13は、引き戸1によって区分される一方空間側Sにこの引き戸1を戸袋2から引き出した状態からその戸尻側11を中心として戸先側10を回動させる操作がなされたときに下部案内溝40から抜け出すようになっている。図示の例では、戸先側10の下部被案内部13は、引き戸1の移動方向に直交する向きに回転中心軸13bを配するようにして引き戸1に備えられた戸車13aとして構成されている。一方、下部案内溝40は、両溝壁41、41を、溝口に近づくに連れて次第に溝幅を大きくするように傾斜させた構成となっている。これにより、引き戸1を前記のように回動操作したときに、戸車13aが下部案内溝40の溝壁41を乗り越えてこの下部案内溝40から抜け出し可能となっている。(図3(a)から(b))
【0014】
また、戸尻側11の上部被案内部12と下部被案内部13は前記操作がなされたときの回動中心xとなるように構成されている。図示の例では、戸尻側11の下部被案内部13は、戸車13cと戸車支持体13dとから構成されている。戸車支持体13dは引き戸1の移動方向に直交する向きに戸車13cの回転中心軸を支持する下部13eと、引き戸1側に取り付けられる上部13fとを備えている。下部13eは上部13fに対し縦軸13gを中心とした回動可能に組み合わされている。この戸車支持体13dの縦軸13gと戸尻側11の上部被案内部12とは、仮想の一つの鉛直線x’上に位置されるようになっている。これにより、引き戸1を前記のように回動操作したときに、戸尻側11の下部被案内部13を下部案内溝40に納めた状態で、前記一つの鉛直線x’を回動中心xとして、引き戸1は回動されるようになっている。
【0015】
また、戸袋2の開放部21を構成する内外の壁体20、20の端部22のうち、前記一方空間側Sに面する壁体20の端部22は引き戸1の前記回動を妨げないように他方空間側S’に面する壁体20の端部22よりも戸袋2の奥側に後退されている。図示の例では、図5及び図6の下側が前記一方空間側Sであり、図5及び図6の上側が前記他方空間側S’であり、一方空間側Sに面する壁体20の端部22と戸当たり6との間の距離は引き戸1の幅寸法に略等しく、他方空間側S’に面する壁体20の端部22と戸当たり6との間の距離は引き戸1の幅寸法よりも小さくなるようにしてある。図中符号7で示すのはモールである。
【0016】
また、図5に示される例では、引き戸1の前記回動中心xと戸尻との間に位置される箇所16が、引き戸1の前記回動を妨げない形状を持つように構成されている。また、図6に示される例では、前記他方空間側S’に面する壁体20における戸袋2の開放部21側に位置される箇所23が、引き戸1の前記回動を妨げない形状を持つように構成されている。
【0017】
具体的には、図5に示される例では、引き戸1における他方空間側S’に面する面17と、引き戸1の戸尻となる端面18とは、直接接し合って直角の隅部を形成するようにはなっておらず、両者の間には両者にいずれも鈍角に交わるテーパー面19が形成されている。そして、図5に示される例では、このテーパー面19が他方空間側S’に面する壁体20の内面に平行をなす位置まで引き戸1を前記のように回動できるようにしてある。(図5(b))
【0018】
また、図6に示される例では、引き戸1における他方空間側S’に面する面と、引き戸1の戸尻となる端面とは、直接接し合って直角の隅部を形成している。一方、他方空間側S’に面する壁体20の内面には彫り込み24が形成されており、この彫り込み24により、戸袋2の開放部21側に位置されるこの壁体20の内面はその余の箇所よりも他方空間側S’に位置されるようになっている。そして、図6に示される例では、この彫り込み24に引き戸1の前記隅部を逃げ込ませることで、引き戸1を前記のように回動できるようにしてある。(図6(b))
【0019】
引き戸1を戸袋2から引き出しきった状態から、引き戸1と戸当たり6との間にやや間隔が開けられる位置まで引き戸1を後退させると共に、(図5(b)及び図6(b)において想像線で示す位置)戸先側10の上部被案内部12を上部案内溝30から抜き外す。次いで、戸先側10を一方空間側Sに移動させる向きに引き戸1を操作すると、前記一方空間側Sに面する壁体20の端部22の後退と、前記引き戸1の回動を妨げない形状とにより、引き戸1は戸尻側11の上部被案内部12と下部被案内部13を回動支点として下部案内溝40から戸先側10の下部被案内部13を抜け出させながら一方空間側Sに回動開き出す。(図5(b)及び図6(b)において実線で示す位置)次いで、引き戸1の戸尻側11の上部被案内部12を上部案内溝30から抜き外した後に、引き戸1をやや上方に持ち上げることで戸尻側11の下部被案内部13を下部案内溝40から抜け出させることができ、これにより引き戸1の取り外しが完了される。取り外した引き戸1は、以上と逆の手順を踏むことで再び容易に取り付けることができる。
【符号の説明】
【0020】
1 引き戸
10 戸先側
11 戸尻側
12 上部被案内部
13 下部被案内部
16 箇所
2 戸袋
20 壁体
21 開放部
22 端部
30 上部案内溝
40 下部案内溝
S 一方空間側
S’ 他方空間側
x 回動中心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
戸先側と戸尻側とにそれぞれ上部案内溝に下方から納められて案内される上部被案内部を有すると共に、戸先側と戸尻側とにそれぞれ下部案内溝に上方から納められて案内される下部被案内部を備えた引き戸と、
内外の壁体を有し、この内外の壁体間に前記引き戸を納める戸袋とを備えており、
二箇所の前記上部被案内部はそれぞれ上部案内溝から抜き外し操作可能に構成されており、
戸先側の下部被案内部は、引き戸によって区分される一方空間側にこの引き戸を戸袋から引き出した状態からその戸尻側を中心として戸先側を回動させる操作がなされたときに下部案内溝から抜け出すようになっており、
戸尻側の上部被案内部と下部被案内部は前記操作がなされたときの回動中心となるように構成されており、
戸袋の開放部を構成する内外の壁体の端部のうち、前記一方空間側に面する壁体の端部は引き戸の前記回動を妨げないように他方空間側に面する壁体の端部よりも戸袋の奥側に後退されていると共に、
引き戸の前記回動中心と戸尻との間に位置される箇所、又は前記他方空間側に面する壁体における戸袋の開放部側に位置される箇所が、引き戸の前記回動を妨げない形状を持つように構成されていることを特徴とする引き込み戸構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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