引き込み装置
【課題】 部品点数が少ない簡易な構成で、ユニットを装置本体に確実に位置決めすることができる画像形成装置を提供する。
【解決手段】 ユニットである給紙カセット9を装置本体の所定位置に引き込んで位置決めする引き込み装置Dには、飛び移り座屈をする弾性体としての板バネ3と、板バネ3に設けられた係合部4と、係合部4に係合する被係合部5が設けられている。ユニット9が装置本体に装着される際に、係合部4と被係合部5が係合し、板バネ3が飛び移り座屈をすることより、ユニットが装置本体の所定位置に引き込まれる。
【解決手段】 ユニットである給紙カセット9を装置本体の所定位置に引き込んで位置決めする引き込み装置Dには、飛び移り座屈をする弾性体としての板バネ3と、板バネ3に設けられた係合部4と、係合部4に係合する被係合部5が設けられている。ユニット9が装置本体に装着される際に、係合部4と被係合部5が係合し、板バネ3が飛び移り座屈をすることより、ユニットが装置本体の所定位置に引き込まれる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、引き込み装置および引き込み装置を備えた画像形成装置に関する。特にユニットを装置本体に引き込む引き込み装置およびこの引き込み装置を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シートに画像を形成するプリンタ等の画像形成装置には、画像形成装置本体(以下、装置本体という。)に対して、装着および引き出し可能なユニットが設けられている。このユニットとしては、例えば、シートを収納する給紙カセットや、給紙カセットからシートを給送するためシート給送装置(シート給送ユニット)や、シートに画像を形成するための画像形成部(転写ユニット、定着ユニット等)などがある。
【0003】
これらのユニットは、ユニットを装置本体から引き出した後、装置本体に対して装着するためにユーザが手動でユニットを装置本体に押し込む際に、ユニットが装置本体の所定位置である装着完了位置まで十分に押し込まれて位置決めされない場合がある。画像形成装置においては、ユニットが装置本体の装着完了位置へ位置決めされない場合、様々な問題が生じる。
【0004】
例えば、ユニットが給紙カセットの場合には、シートの位置が適正な位置に無いため、シートに正確に画像が形成されなかったり、シートの給送不良(シートの斜送やジャム)を発生させたりする。また、ユニットが画像をシートに転写する転写ユニット等の場合には、搬送されてくるシートに対して画像の位置が適正な位置に転写できないことがあり、画像品質不良を起こしてしまう。
【0005】
したがって、これらのユニットは、画像形成装置本体に対して、確実に位置決めして装着される必要がある。
【0006】
そこで、従来は、トグル機構を用いて、ユニットを装置本体に対して位置決めする引き込み機構を備えた画像形成装置が提案されている(特許文献1)。
【0007】
引き込み装置101は、図15に示すように、揺動軸107を中心に揺動可能に構成されたトグルアーム106を備えている。このトグルアーム106の揺動端部には、給紙カセットの係止ピン102を係止するための係止溝106aが形成されている。また、装置本体51に設けられた軸110およびトグルアーム106側に設けられた軸109との間に掛けられたトグルバネ108を備えている。また、係止ピン102を係止して案内するガイド部材111を備えている。
【0008】
そして、給紙カセットを装置本体51の収納部1Bに挿入すると、図16に示すように、給紙カセットの係止ピン102がトグルアーム106の係止溝106aに係止され、引き込み装置101により給紙カセットが給紙可能位置まで引き込まれる。
【0009】
トグルバネ108は、バネ力の付勢方向が、中立点を境に時計周り方向から反時計周り方向に反転するようになっており、給紙カセットが挿入される前は中立点付近の中立点より位相の少しずれた待機位置で待機しており、時計周り方向に付勢されている。
【0010】
そして、給紙カセットが挿入されて、係止ピン102がトグルアーム106の係止溝106aに係止され、中立点を超えるまでトグルアーム106が揺動させられると、トグルバネ108の付勢方向が反時計周り方向に反転し、カセットが装置本体に引き込まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2006−151687号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、トグル機構を用いた引き込み装置では、トグルバネによる付勢力の向きを変える揺動部材と、揺動部材に係止する係止部材を案内するガイド部材が必要である。
【0013】
すなわち、図16に示すトグル機構を用いた引き込み装置は、トグルバネ108と、係止ピン102を掴んで給紙カセットを引き込むトグルアーム106と、トグルアーム106の係止溝106aに係止された係止ピン102を案内するガイド部材111が必要となる。
【0014】
しかしながら、近年の画像形成装置は、さらなる低コスト化が望まれており、部品点数が少なく、より簡易な構成で、ユニットを装置本体に確実に位置決めするものが望まれている。
【0015】
本発明の目的は、部品点数が少ない簡易な構成で、ユニットを装置本体に確実に位置決めすることができる画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、「装置本体に装着および引き出し可能なユニットを前記装置本体の所定位置に引き込む引き込み装置であって、
前記装置本体および前記ユニットの一方に設けられ、飛び移り座屈をする弾性体と、前記弾性体に設けられた係合部と、
前記装置本体および前記ユニットの他方に設けられ、前記係合部と係合する被係合部と、を有し、
前記ユニットが前記装置本体に装着される際に、前記係合部と前記被係合部が係合し、前記弾性体が飛び移り座屈をすることにより、前記ユニットを前記装置本体の前記所定位置に引き込むことを特徴とする引き込み装置である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、弾性体の飛び移り座屈現象を利用することでユニットが装置本体の所定位置に引き込まれるので、ユニットを装置本体に対して、確実に位置決めすることができる。また、弾性体の飛び移り座屈により弾性体が発生させる力の向きとユニットを引き込む方向が同一である。したがって、トグル機構を利用した引き込み装置のように揺動部材やガイド部材を別途設ける必要がなく、部品点数を減らすことができ、簡易な構成でユニットを装置本体に引き込むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明が適用された引き込み装置の第1の実施形態を示す図
【図2】本発明の第1の実施形態によるユニットを引き込む動作を示す図
【図3】本発明の第1の実施形態によるユニットを引き出す動作を示す図
【図4】ユニットの装着動作の作用力を示す図
【図5】本発明の引き込み装置が適用された画像形成装置を示す図
【図6】図5に示した画像形成装置の斜視図
【図7】本発明が適用された引き込み装置の第2の実施形態を示す図
【図8】本発明が適用された引き込み装置の第2の実施形態を示す図
【図9】本発明が適用された引き込み装置の第3の実施形態を示す図
【図10】本発明が適用された引き込み装置の板バネの動きを示す図
【図11】本発明が適用された引き込み装置の第4の実施形態を示す図
【図12】本発明の第4の実施形態によるユニットを引き込む動作を示す図
【図13】本発明の第4の実施形態によるユニットを引き出す動作を示す図
【図14】本発明の第1の実施形態の弾性体である板バネをコイルばねに変形した例を示す図
【図15】特許文献1に記載の発明が適用された引き込み装置を示す図
【図16】特許文献1に記載の発明が適用された引き込み装置を示す図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施形態を例示的に説明する。
【0020】
図5(a)は、本発明の引き込み装置が適用された画像形成装置の全体構成を示し、図5(b)は、画像形成装置に設けられている給紙カセット9の断面図を示している。また、図6は画像形成装置の斜視図を示している。
【0021】
図5(a)において、1はフルカラーレーザービームプリンタ(以下、プリンタという)、1Aは画像形成装置本体(プリンタ本体)、1Bはシートに画像を形成する画像形成部、20は定着部である。2は装置本体1Aの上方に略水平に設置された上部装置である画像読取装置であり、この画像読取装置2と装置本体1Aとの間に、シート排出用の排紙空間Sが形成されている。なお、15はトナーカートリッジである。
【0022】
画像形成部1Bは、プロセスカートリッジ11を備えている。プロセスカートリッジ11は、感光体ドラム12と、帯電手段である帯電器13と、現像手段である現像器14を備えている。また、プロセスカートリッジ11の上方には、中間転写ユニット1Cが備えられている。
【0023】
中間転写ベルト16に1次転写ローラ19によって正極性の転写バイアスを印加することにより、感光体ドラム上の負極性を持つトナー像が中間転写ベルト16に転写される。中間転写ユニット1Cの駆動ローラ16aと対向する位置には、中間転写ベルト上に形成されたカラー画像をシートPに転写する2次転写部を構成する2次転写ローラ17が設けられている。さらに、この2次転写ローラ17の上部に定着部20が配置されている。
【0024】
次に、このように構成されたプリンタ1の画像形成動作について説明する。まず、原稿の画像情報を画像読取装置2によって読み取ると、この画像情報は画像処理された後、電気信号に変換されて画像形成部1Bのレーザスキャナ10に伝送される。なお、画像情報はパソコン等の外部機器から画像形成部1Bに入力される場合もある。そして、画像形成部1Bでは、各プロセスカートリッジ11の感光体ドラム12の表面をレーザスキャナ10から射出されたレーザ光により走査する。これにより、帯電器13によって表面が所定の極性・電位に一様に帯電されている感光体ドラム12の表面が順次露光され、各プロセスカートリッジ11の感光体ドラム上に静電潜像が順次形成される。
この後、この静電潜像を各色トナーにより現像して可視化すると共に、1次転写ローラ19に印加した1次転写バイアスにより、各感光体ドラム上の各色トナー像を中間転写ベルト16に順次重ね合わせて転写する。これにより、中間転写ベルト16上にトナー画像が形成される。
【0025】
また、このトナー画像形成動作に並行してシート給送装置30からシートPが送り出される。シート給送装置30は、図7(b)に示すように、シートPを積載する積載板35を備えたシートP給紙カセット9、最上面のシートをピックアップする給紙ローラ31により搬送ローラ32と分離ローラ33から成る分離搬送ローラ対にシートを搬送する構成である。シートPが給送されるのにしたがって減少するのに合わせて、シート積載板35は給紙可能高さにシート面を上昇させる制御がされている。給送されてシートが無くなると、シート有無検知センサ36で検知されて給紙動作が停止して、シート補給の報知をパネルなどにする。給紙カセット9に収納されているシートが無くなった場合には、ユーザは給紙カセット9を引き出して、新たにシートを給紙カセット9に補給して給紙カセット9にシートを収納する。
【0026】
この後、シートPは、レジストローラ対40から2次転写部まで搬送される。この後、2次転写部にて、2次転写ローラ17に印加した2次転写バイアスにより、トナー像がシートP上に転写される。
次に、このようにトナー像が転写されたシートPは、定着部20に搬送され、定着部20において熱及び圧力を受けて、シートPにカラーの画像として定着される。この後、画像が定着されたシートPは、定着部20の下流に設けられた第1排出ローラ対25aによって排出空間Sに排出され、排出空間Sの底面に突出された積載部23に積載される。
【0027】
<第1の実施形態>
次に、本発明の特徴部分である引き込み装置Dの第1の実施形態について、図を用いて説明する。図1において、9は、装置本体1Aに対して装着および引き出し可能なユニットとしての給紙カセットである。Dは、ユニットである給紙カセット9を装置本体1Aの所定位置に引き込んで位置決めする引き込み装置である。3は飛び移り座屈をする弾性体としての板バネであり、4は板バネ3に設けられた係合部であり、5は係合部に係合する被係合部である。被係合部5は、係合部4に係合するピン6と、ピン6を揺動可能に支持するアーム7と、アーム7を回転可能に支持する回転軸8を備えている。本実施形態において係合部4を有する板バネ3は装置本体1Aに取り付けられ、被係合部5は給紙カセット9に取り付けられている。
【0028】
図1に示すように、給紙カセット9が装置本体1Aから引出された状態において、板バネ3は、装置本体1Aに設けられた両端支持部50により、たわませた状態で両端を支持され、係合部4は板バネ3に沿って配置されている。
【0029】
板バネ3は、給紙カセット9の装置本体1Aへの装着方向X,引き出し方向Yに力を加えられると、弾性変形をする。また、板バネ3は、たわませた状態で支持されているので、装着方向X、引き出し方向Yに加えられた力が一定限度を超えると、力が加えられた方向に飛び移り座屈による変形をする。
【0030】
本発明において、飛び移り座屈とは、たわんでいる弾性体に外側から力が加えられた場合に、その力が一定限度以上となると、それ以上の力を加えなくとも、弾性体が急激に変形し、力が加えられた方向(たわんでいる方向と逆方向)に反りかえる現象をいう。また、飛び移り座屈による変形は、弾性変形であり、飛び移り座屈による変形をした弾性体は、逆方向に力が加えられると、その方向に飛び移り座屈をする。
【0031】
なお、本発明の飛び移り座屈をする弾性体に用いることができる材料としてバネ用ステンレス鋼や、バネ用ベリリウム銅・りん青銅・洋白等を使用可能である。なお、板厚が比較的薄い板状の金属が、飛び移り座屈を起こしやすい。
【0032】
次に、引き込み装置Dにより、給紙カセット9を装置本体1Aに装着および引き出す動作について、図2および図3に基づいて説明する。図2(a)〜(c)は、給紙カセット9を装置本体1Aの所定位置である装着完了位置まで装着する際の動作概略図である。図2(a’)〜(c’)は、それらに対応したピン6と板バネ3および係合部4の状態図である。図3(a)〜(c)は、給紙カセット9を装置本体1Aの装着完了位置から引出す際の引き込み装置Dの動作概略図、図3(a’)〜(c’)は、それらに対応したピン6と板バネ3および係合部4の状態図である。
【0033】
まず、給紙カセット9を装置本体1Aに装着する動作について説明する。給紙カセット9を装着方向Xに挿入していくと、図2(a’)に示すように、ピン6は、6aにある位置から6bの位置に移り、係合部4に当接する。さらに、給紙カセット9を装着方向Xに挿入すると、係止ピン6は、係合部4にガイドされてアーム7が揺動し、6cの位置を通って、6dの位置へ移動して板バネ3に当接する。なお、符号6a、6b、6c、6dは、ピン6の移動位置を示す。
【0034】
さらに給紙カセット9を装着方向Xに挿入していくと、ピン6は板バネ3を装置本体1Aの後側板に向かって押し込んでいくと、板バネ3は、図2(b)、(b’)の状態になるまで装着方向Xに弾性変形していく。図2(b)、(b’)の状態から、さらに給紙カセット9を装着方向Xに挿入し、板バネ3に加えられた力が一定限度以上となると、板バネ3は装着方向Xに飛び移り座屈による変形を起こし、図2(c)、(c’)の状態となる。図2(c)は、引き込み装置Dによって給紙カセット9が装置本体1Aに引き込まれて装着された状態の図である。
【0035】
板バネ3は、飛び移り座屈による変形をする際に、装着方向Xに引き込み力を生じる。板バネ3が図2(b)、(b’)の状態から図2(c)、(c’)の状態へ飛び移り座屈をする際に、係合部4とピン6は係合したままであるので、給紙カセット9は、係合部4と被係合部5を介して装置本体1Aに引き込まれる。
【0036】
一般的に、画像形成装置には、ユニットを装置本体への装着方向で位置決めをするための位置決め機構が設けられている。本実施形態での位置決め機構は、図6で示すように、給紙カセット9に設けられている突き当て部材9aと、装置本体1Aに設けられている基準部材21とで構成されている。そして、給紙カセット9が装置本体1Aに装着されて突き当て部材9aが基準部材21に突き当ることにより、給紙カセット9の装着方向の位置決めがされる。
【0037】
給紙カセット9が位置決め機構により位置決めされた状態では、板バネ3は、飛び移り座屈による変形を途中で止められた状態となっている。もし、位置決め機構による給紙カセット9の位置決めがされない場合には、図2(c’)に示すように、点線で示される状態まで板バネ3は飛び移り座屈により変形する。このように、給紙カセット9は、装置本体1Aに装着された状態において、位置決め機構により板バネ3が飛び移り座屈による変形を途中で止めた位置にある。したがって、板バネ3により、給紙カセット9に装着方向Xの力が働き、給紙カセット9は引き込み方向に付勢される。これにより、給紙カセット9は装置本体1Aの装着完了位置で確実に位置決めされる。
【0038】
すなわち、ユーザが給紙カセット9を装置本体1Aに対して装着方向Xに挿入していき、板バネ3に一定限度以上の力が加えられると、給紙カセット9は、装着完了位置である図2(c)の状態へ板バネ3が飛び移り座屈をすることで引き込まれる。したがって、給紙カセット9を装置本体に対して確実に位置決めすることができる。一方、給紙カセット9の挿入による板バネ3に加えられる力が一定限度未満であれば、弾性変形した板バネ3は図2(a)の状態に戻るので、ユーザは給紙カセット9が装着されたと誤認することはない。
【0039】
次に、引き込み装置Dにより、給紙カセット9を装置本体1Aに装着された状態から引出す動作について、図3に基づいて説明する。図3(a)、(a’)の装着完了位置にある給紙カセット9を引き出し方向Yに引出し始めると、図3(b)、(b’)に示すように、係合部4に係合した被係合部5の係止ピン6が板バネ3を引き出し方向Yに弾性変形させる。
【0040】
図3(b)、(b’)の状態から、さらに給紙カセット9を引き出し方向Yに引き出すと、板バネ3に加えられた力は一定限度以上となるので、板バネ3は挿入した際とは逆向きである引き出し方向Yに飛び移り座屈を起こし、図3(c)、(c’)の状態となる。
【0041】
板バネ3は、飛び移り座屈をする際に引き出し方向Yの向きに力を生じる。板バネ3が図3(b)、(b’)の状態から図3(c)、(c’)の状態へ飛び移り座屈をする際に、係合部4とピン6は係合したままであるので、給紙カセット9は、係合部4と被係合部5を介して引き出される。
【0042】
なお、図3(c’)に示すように、板バネ3が図3(b)から図3(c)へ飛び移り座屈をする過程において、係止ピン6は、係合部4にガイドされてアーム7が揺動し、6aの位置から、6bの位置、6cの位置へと順に揺動していく。そして、飛び移り座屈後は、被係合部との係合が解除され6dの位置となる。
【0043】
以上説明したように、第1の実施形態の引き込み装置Dによれば、弾性体の飛び移り座屈現象を利用することにより、簡易な構成で、ユニットを装置本体1Aに確実に位置決めすることができる。
【0044】
なお、図4は、給紙カセット9の装着および引き出す動作における板バネ3の作用力を表した図である。縦軸は板バネ3が給紙カセット9に作用する力を示し、横軸は給紙カセット9の装置本体1Aの装着完了位置からの距離を示す。作用力が正の値を示す場合は、板バネ3が給紙カセット9を引き出し方向Yに押し出す力を持っていることを示し、負の値を示す場合は板バネ3が給紙カセット9を装着方向Xに引き込む力を持っていることを示す。
【0045】
すなわち、給紙カセット9を挿入するユーザは、給紙カセット9の装着完了位置からの距離が図4(a)から図4(b)のときは、作用力が正の値を示すので、給紙カセット9を装着方向Xに押し込む力が必要である。また、給紙カセット9の装着完了位置からの距離が図4(b)から図4(c)のときは、作用力が負の値を示すので、ユーザが手で押し込まなくとも給紙カセット9は装着方向Xに引込まれる。
【0046】
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態の引き込み装置Dについて説明する。なお、第2の実施形態の引き込み装置Dでは、弾性体に設けられた係合部のみが第1の実施形態と異なり、それ以外の構成は第1の実施形態と同じであるため説明を省略する。第2の実施形態の引き込み装置Dは、図7に示すように、係合部が第1係合部63と第2係合部64の2つを有している。なお、61は弾性体としての板バネである。
【0047】
図8に示すように、ユニットとしての給紙カセットが装着された状態において、第1係合部63と第2係合部64は、給紙カセットに設けられた被係合部であるピン6を両側から挟んだ状態となる。したがって、第2の実施形態の引き込み装置Dは、衝撃等によりピン6が係合部から外れにくいという効果を有する。以下、第2の実施形態の係合部について詳細に説明する。
【0048】
図7に示すように、ユニットが装着されていない状態において、第1係合部63及び第2係合部64は、ギャップL1だけ離間して配置されている。一方、ピン6は幅L2を有している。両者の関係はL1>L2となるよう構成されている。
【0049】
次に、ユニットである給紙カセット9を装置本体1Aに装着する際の、係合部としての第1係合部63および第2係合部64、ならびに被係合部に設けられているピン6の動作について説明する。
【0050】
図7に示すように、給紙カセットを装着方向Xに挿入していくと、ピン6は、71a’の位置から71b’の位置へ移動し、第1係合部63に当接する。さらに、給紙カセットを装着方向Xに挿入していくと、第1係合部63の71c’の位置を通り、第2係合部64の71d’の位置に当接する。さらに、給紙カセットを装着方向Xに挿入していくと、ピン6は71e’の位置へ移動し、板バネ3に当接する。
【0051】
さらに、給紙カセットを装着方向Xに挿入していくと、ピン6は、板バネ3を装着方向Xに向かって押し込んでいき、板バネ3は装着方向Xに弾性変形する。そして、板バネ3に加えられた力が一定限度以上となると、板バネ3は装着方向Xに飛び移り座屈による変形を起こし、図8の状態となる。なお、図8は、給紙カセットが装置本体1Aに装着された状態の図である。
【0052】
また、ユニットが装着された状態においては、第1係合部と第2係合部のギャップL1’はピン6の幅L2より短くなる。したがって、第2の実施形態の引き込み装置Dは、衝撃等が生じた場合でもピン6が外れにくいため、誤作動(引き込み不良等)を防止することができるという効果を有する。
【0053】
<第3の実施形態>
次に、本発明の第3の実施形態の引き込み装置Dについて説明する。なお、第3の実施形態では、引き込み装置Dが弾性体である板バネ3のたわみを制限するたわみ制限部65を有する点のみが第2の実施形態と異なり、それ以外の構成は第2の実施形態と同じであるため説明を省略する。
【0054】
第3の実施形態の引き込み装置Dは、図9に示すように、両端支持部50の一方と第2係合部64の間の位置で、弾性体のたわみを制限するように支持するたわみ制限部65を有する。
【0055】
図10は弾性体である板バネ3の動きを示す図であり、61a乃至61dは、板バネ3の状態を表している。なお、図10において、係合部は不図示である。
【0056】
図10において、61aは、給紙カセットが装着されていない状態の第2の実施形態の板バネ3の形状を表しており、61bは、給紙カセットが装着されていない状態の第3の実施形態の板バネ3の形状を表している。すなわち、第3の実施形態では、たわみ制限部65により、板バネ3のたわみを61aよりも制限した61bの状態に固定支持している。
【0057】
また、61cは、板バネ3が装着方向Xに飛び移り座屈をする直前の状態を示しており、61dは、板バネ3が装着方向Xに飛び移り座屈をした後の状態を示している。
【0058】
以上のように、第3の実施形態の引き込み装置Dによれば、たわみ制限部65により、弾性体のたわみを制限することで、板バネ3を飛び移り座屈をする直前の状態である61cに近い状態である61bの状態にすることができる。
【0059】
その結果、第3の実施形態の引き込み装置Dは、板バネ3を61aの状態から61bの状態まで押し込む力が不要とし、板バネ3が飛び移り座屈をするまでに要する力を小さくできる。したがって、ユーザがユニットを装着する際に要する力を小さくでき、ユニットの着脱操作を行うユーザにとってのユーザビリティが向上する。
【0060】
<第4の実施形態>
次に、本発明の第4の実施形態ついて説明する。なお、第4の実施形態の引き込み装置Dは、ユニットが装置本体に開閉可能に設けられた扉ユニットである点が第2の実施形態と異なり、それ以外の構成は第2の実施形態と同じである。
【0061】
図11に示すように、22は装置本体に装着および開閉可能な扉ユニットである。
第1乃至第3の実施形態と同様に飛び移り座屈をする弾性体としての板バネ3は、たわませた状態で、不図示の装置本体1Aに固定されている。また、板バネ3には第1係合部63と第2係合部64が設けられている。また、扉ユニット22の裏面には係止ピン6と回転軸8を備えたアーム7が設けられている。また、図11(a)、(b)に示すように、扉ユニット22は18a及び18bを軸として、装置本体1Aに対して回動可能である。図11(c)は第4の実施形態が適用された引き込み装置Dの拡大図である。
【0062】
次に、扉ユニット22を装置本体1Aに開ける動作および閉める動作について、図12および13に基づいて説明する。
【0063】
まず、扉ユニット22が開いた状態から装着完了位置まで閉める動作について、図12に基づいて説明する。
【0064】
図12(a)、(b)、(c)は、扉ユニット22を開いた状態から装置本体1Aの所定位置である装着完了位置まで閉める際の動作概略図である。図12(a’)、(b’)、(c’)は、それらに対応した扉ユニット22の上視図である。図12(a”)、(b”)、(c”)は、それらに対応した係止ピン6と板バネ3及び第1係合部63並びに第2係合部64の状態図である。
【0065】
図12(a)、(a’)、(a”)に示すように、扉ユニット22を装着方向Xに押して閉めていくと、アーム7が重力下向きに傾いているため係止ピン6は第1係合部63に当接する。さらに、扉ユニット22を装着方向Xに押していくと、係止ピン6は、第2係合部64と第1係合部63にガイドされてアーム7が揺動し、板バネ3に当接する。さらに、扉ユニット22を装着方向Xに押していくと、係止ピン6は板バネ3を装着方向Xに押しこんでいき、板バネ3は図12(b)、(b’)、(b”)の状態になるまで装着方向Xに弾性変形していく。
【0066】
さらに、扉ユニット22を装着方向Xに押していき、板バネ3に加えられた力が一定限度以上となると、板バネ3は装着方向Xに飛び移り座屈による変形を起こし、図12(c)、(c’)、(c”)となる。
【0067】
板バネ3は、飛び移り座屈による変形をする際に、装着方向Xに引き込み力を生じる。板バネ3が図12(b)、(b’)、(b”)の状態から図12(c)、(c’)、(c”)の状態へ飛び移り座屈をする際に、第1係合部63および第2係合部64とピン6は係合したままである。したがって、扉ユニット22は、係合部と被係合部を介して装置本体1Aに引き込まれる。
【0068】
なお、第4の実施形態の引き込み装置Dは第1の実施形態の引き込み装置Dと同様に、扉ユニット22は、位置決め機構により、装置本体1Aの装着完了位置で確実に位置決めされる。
【0069】
次に、扉ユニット22が装着完了位置にある閉められた状態から開ける動作について図13に基づいて説明する。
【0070】
また、図13(a)、(b)、(c)は、扉ユニット22を装置本体1Aの所定位置である装着完了位置から開ける際の動作概略図である。図13(a’)、(b’)、(c’)は、それらに対応した扉ユニット22の上視図である。図13(a”)、(b”)、(c”)は、それらに対応した係止ピン6と板バネ3及び第1係合部63並びに第2係合部64の状態図である。
【0071】
図13(a)、(a’)、(a”)の装着完了位置から扉ユニット22を引き出し方向Yに開け始めると、図13(b)、(b’)、(b”)に示すように、第1係合部63および第2係合部64に係合した係止ピン6が板バネ3を引き出し方向Yに弾性変形させる。
【0072】
図13(b)、(b’)、(b”)の状態から、さらに扉ユニット22を引き出し方向Yに開けると、板バネ3に加えられた力は一定限度以上となる。そして、挿入した際とは逆向きである引き出し方向Yに板バネ3が飛び移り座屈を起こし、図13(c)、(c’)、(c”)の状態となる。
【0073】
板バネ3は、飛び移り座屈をする際に引き出し方向Yの向きに力を生じる。板バネ3が図3(b)、(b’)、(b”)の状態から図3(c)、(c’)、(c”)の状態へ飛び移り座屈をする際に、第1係合部63および第2係合部64とピン6は係合したままであるので、扉ユニット22は、係合部と被係合部を介して引き出される。
【0074】
なお、本第4の実施形態において、上述した第3の実施形態の構成を適用してもよい。
【0075】
以上説明したように、本第4の実施形態の引き込み装置Dによれば、扉ユニット22を用いた第4の実施形態においても、第1の実施形態の引き込み装置Dと同様に、簡易な構成で、ユニットを装置本体に確実に位置決めすることができる。
【0076】
<変形例>
以上の第1乃至4の実施形態で示す引き込み装置Dでは、弾性体が装置本体1Aに設けられているが、本発明はこれに限らず、ユニットに飛び移り座屈をする弾性体が設けられていても良い。すなわち、装置本体およびユニットの一方であるユニットに弾性体を設け、装置本体およびユニットの他方である装置本体に被係合部を設けてもよい。なお、弾性体がユニットに設けられる場合には、被係合部は装置本体1Aに設けられる。この場合、ユニットを装置本体に装着する際に、係合部と被係合部が係合し、弾性体が飛び移り座屈をすることでユニットが装置本体1Aの所定位置に引き込まれる動作は、第1乃至4の実施形態と同じである。
【0077】
また、第1乃至4の実施形態で示す引き込み装置Dでは、弾性体として板バネを用いているが、図14のようにコイルバネ3’を用いてもよい。図14(a)は、ユニットを装着する前のコイルバネ3’および係合部4の状態を示し、図14(b)は、ユニットが装着方向Xに挿入され、不図示の装置本体1Aに装着された状態の図を示している。なお、ユニット側に設けられている被係合部5の構成は第1実施形態と同じであるので、説明および図示を省略する。また、被係合部と係合部が係合し、弾性体であるコイルバネ3’が飛び移り座屈をする動作についても第1実施形態と同じであるので、説明を省略する。
【0078】
なお、図14(c)に示すように、係合部4が設けられたコイルバネ3’は、装置本体1Aの両端支持部50にたわませた状態で支持されるが、第1乃至4の実施形態と同様に、弾性体であるコイルバネ3’はユニット側に設けられてもよい。その場合は、被係合部は装置本体に設けられる。
【0079】
また、ユニットとして、第1乃至3の実施形態では給紙カセットを、第4の実施形態では扉ユニットを用いているが、本発明はこれに限られず、転写ユニットや定着ユニット等を用いてもよい。これにより、転写ユニットや定着ユニット等が確実に装置本体内に引き込まれて位置決めがされ、安定した画像形成処理が行える。
【符号の説明】
【0080】
D 引き込み装置
1A 装置本体
3 板バネ
4 係合部
5 被係合部
6 係止ピン
7 アーム
8 回転軸
9 給紙カセット
22 扉ユニット
50 両端支持部
63 第1係合部
64 第2係合部
65 たわみ制限部
【技術分野】
【0001】
本発明は、引き込み装置および引き込み装置を備えた画像形成装置に関する。特にユニットを装置本体に引き込む引き込み装置およびこの引き込み装置を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シートに画像を形成するプリンタ等の画像形成装置には、画像形成装置本体(以下、装置本体という。)に対して、装着および引き出し可能なユニットが設けられている。このユニットとしては、例えば、シートを収納する給紙カセットや、給紙カセットからシートを給送するためシート給送装置(シート給送ユニット)や、シートに画像を形成するための画像形成部(転写ユニット、定着ユニット等)などがある。
【0003】
これらのユニットは、ユニットを装置本体から引き出した後、装置本体に対して装着するためにユーザが手動でユニットを装置本体に押し込む際に、ユニットが装置本体の所定位置である装着完了位置まで十分に押し込まれて位置決めされない場合がある。画像形成装置においては、ユニットが装置本体の装着完了位置へ位置決めされない場合、様々な問題が生じる。
【0004】
例えば、ユニットが給紙カセットの場合には、シートの位置が適正な位置に無いため、シートに正確に画像が形成されなかったり、シートの給送不良(シートの斜送やジャム)を発生させたりする。また、ユニットが画像をシートに転写する転写ユニット等の場合には、搬送されてくるシートに対して画像の位置が適正な位置に転写できないことがあり、画像品質不良を起こしてしまう。
【0005】
したがって、これらのユニットは、画像形成装置本体に対して、確実に位置決めして装着される必要がある。
【0006】
そこで、従来は、トグル機構を用いて、ユニットを装置本体に対して位置決めする引き込み機構を備えた画像形成装置が提案されている(特許文献1)。
【0007】
引き込み装置101は、図15に示すように、揺動軸107を中心に揺動可能に構成されたトグルアーム106を備えている。このトグルアーム106の揺動端部には、給紙カセットの係止ピン102を係止するための係止溝106aが形成されている。また、装置本体51に設けられた軸110およびトグルアーム106側に設けられた軸109との間に掛けられたトグルバネ108を備えている。また、係止ピン102を係止して案内するガイド部材111を備えている。
【0008】
そして、給紙カセットを装置本体51の収納部1Bに挿入すると、図16に示すように、給紙カセットの係止ピン102がトグルアーム106の係止溝106aに係止され、引き込み装置101により給紙カセットが給紙可能位置まで引き込まれる。
【0009】
トグルバネ108は、バネ力の付勢方向が、中立点を境に時計周り方向から反時計周り方向に反転するようになっており、給紙カセットが挿入される前は中立点付近の中立点より位相の少しずれた待機位置で待機しており、時計周り方向に付勢されている。
【0010】
そして、給紙カセットが挿入されて、係止ピン102がトグルアーム106の係止溝106aに係止され、中立点を超えるまでトグルアーム106が揺動させられると、トグルバネ108の付勢方向が反時計周り方向に反転し、カセットが装置本体に引き込まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2006−151687号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、トグル機構を用いた引き込み装置では、トグルバネによる付勢力の向きを変える揺動部材と、揺動部材に係止する係止部材を案内するガイド部材が必要である。
【0013】
すなわち、図16に示すトグル機構を用いた引き込み装置は、トグルバネ108と、係止ピン102を掴んで給紙カセットを引き込むトグルアーム106と、トグルアーム106の係止溝106aに係止された係止ピン102を案内するガイド部材111が必要となる。
【0014】
しかしながら、近年の画像形成装置は、さらなる低コスト化が望まれており、部品点数が少なく、より簡易な構成で、ユニットを装置本体に確実に位置決めするものが望まれている。
【0015】
本発明の目的は、部品点数が少ない簡易な構成で、ユニットを装置本体に確実に位置決めすることができる画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、「装置本体に装着および引き出し可能なユニットを前記装置本体の所定位置に引き込む引き込み装置であって、
前記装置本体および前記ユニットの一方に設けられ、飛び移り座屈をする弾性体と、前記弾性体に設けられた係合部と、
前記装置本体および前記ユニットの他方に設けられ、前記係合部と係合する被係合部と、を有し、
前記ユニットが前記装置本体に装着される際に、前記係合部と前記被係合部が係合し、前記弾性体が飛び移り座屈をすることにより、前記ユニットを前記装置本体の前記所定位置に引き込むことを特徴とする引き込み装置である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、弾性体の飛び移り座屈現象を利用することでユニットが装置本体の所定位置に引き込まれるので、ユニットを装置本体に対して、確実に位置決めすることができる。また、弾性体の飛び移り座屈により弾性体が発生させる力の向きとユニットを引き込む方向が同一である。したがって、トグル機構を利用した引き込み装置のように揺動部材やガイド部材を別途設ける必要がなく、部品点数を減らすことができ、簡易な構成でユニットを装置本体に引き込むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明が適用された引き込み装置の第1の実施形態を示す図
【図2】本発明の第1の実施形態によるユニットを引き込む動作を示す図
【図3】本発明の第1の実施形態によるユニットを引き出す動作を示す図
【図4】ユニットの装着動作の作用力を示す図
【図5】本発明の引き込み装置が適用された画像形成装置を示す図
【図6】図5に示した画像形成装置の斜視図
【図7】本発明が適用された引き込み装置の第2の実施形態を示す図
【図8】本発明が適用された引き込み装置の第2の実施形態を示す図
【図9】本発明が適用された引き込み装置の第3の実施形態を示す図
【図10】本発明が適用された引き込み装置の板バネの動きを示す図
【図11】本発明が適用された引き込み装置の第4の実施形態を示す図
【図12】本発明の第4の実施形態によるユニットを引き込む動作を示す図
【図13】本発明の第4の実施形態によるユニットを引き出す動作を示す図
【図14】本発明の第1の実施形態の弾性体である板バネをコイルばねに変形した例を示す図
【図15】特許文献1に記載の発明が適用された引き込み装置を示す図
【図16】特許文献1に記載の発明が適用された引き込み装置を示す図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施形態を例示的に説明する。
【0020】
図5(a)は、本発明の引き込み装置が適用された画像形成装置の全体構成を示し、図5(b)は、画像形成装置に設けられている給紙カセット9の断面図を示している。また、図6は画像形成装置の斜視図を示している。
【0021】
図5(a)において、1はフルカラーレーザービームプリンタ(以下、プリンタという)、1Aは画像形成装置本体(プリンタ本体)、1Bはシートに画像を形成する画像形成部、20は定着部である。2は装置本体1Aの上方に略水平に設置された上部装置である画像読取装置であり、この画像読取装置2と装置本体1Aとの間に、シート排出用の排紙空間Sが形成されている。なお、15はトナーカートリッジである。
【0022】
画像形成部1Bは、プロセスカートリッジ11を備えている。プロセスカートリッジ11は、感光体ドラム12と、帯電手段である帯電器13と、現像手段である現像器14を備えている。また、プロセスカートリッジ11の上方には、中間転写ユニット1Cが備えられている。
【0023】
中間転写ベルト16に1次転写ローラ19によって正極性の転写バイアスを印加することにより、感光体ドラム上の負極性を持つトナー像が中間転写ベルト16に転写される。中間転写ユニット1Cの駆動ローラ16aと対向する位置には、中間転写ベルト上に形成されたカラー画像をシートPに転写する2次転写部を構成する2次転写ローラ17が設けられている。さらに、この2次転写ローラ17の上部に定着部20が配置されている。
【0024】
次に、このように構成されたプリンタ1の画像形成動作について説明する。まず、原稿の画像情報を画像読取装置2によって読み取ると、この画像情報は画像処理された後、電気信号に変換されて画像形成部1Bのレーザスキャナ10に伝送される。なお、画像情報はパソコン等の外部機器から画像形成部1Bに入力される場合もある。そして、画像形成部1Bでは、各プロセスカートリッジ11の感光体ドラム12の表面をレーザスキャナ10から射出されたレーザ光により走査する。これにより、帯電器13によって表面が所定の極性・電位に一様に帯電されている感光体ドラム12の表面が順次露光され、各プロセスカートリッジ11の感光体ドラム上に静電潜像が順次形成される。
この後、この静電潜像を各色トナーにより現像して可視化すると共に、1次転写ローラ19に印加した1次転写バイアスにより、各感光体ドラム上の各色トナー像を中間転写ベルト16に順次重ね合わせて転写する。これにより、中間転写ベルト16上にトナー画像が形成される。
【0025】
また、このトナー画像形成動作に並行してシート給送装置30からシートPが送り出される。シート給送装置30は、図7(b)に示すように、シートPを積載する積載板35を備えたシートP給紙カセット9、最上面のシートをピックアップする給紙ローラ31により搬送ローラ32と分離ローラ33から成る分離搬送ローラ対にシートを搬送する構成である。シートPが給送されるのにしたがって減少するのに合わせて、シート積載板35は給紙可能高さにシート面を上昇させる制御がされている。給送されてシートが無くなると、シート有無検知センサ36で検知されて給紙動作が停止して、シート補給の報知をパネルなどにする。給紙カセット9に収納されているシートが無くなった場合には、ユーザは給紙カセット9を引き出して、新たにシートを給紙カセット9に補給して給紙カセット9にシートを収納する。
【0026】
この後、シートPは、レジストローラ対40から2次転写部まで搬送される。この後、2次転写部にて、2次転写ローラ17に印加した2次転写バイアスにより、トナー像がシートP上に転写される。
次に、このようにトナー像が転写されたシートPは、定着部20に搬送され、定着部20において熱及び圧力を受けて、シートPにカラーの画像として定着される。この後、画像が定着されたシートPは、定着部20の下流に設けられた第1排出ローラ対25aによって排出空間Sに排出され、排出空間Sの底面に突出された積載部23に積載される。
【0027】
<第1の実施形態>
次に、本発明の特徴部分である引き込み装置Dの第1の実施形態について、図を用いて説明する。図1において、9は、装置本体1Aに対して装着および引き出し可能なユニットとしての給紙カセットである。Dは、ユニットである給紙カセット9を装置本体1Aの所定位置に引き込んで位置決めする引き込み装置である。3は飛び移り座屈をする弾性体としての板バネであり、4は板バネ3に設けられた係合部であり、5は係合部に係合する被係合部である。被係合部5は、係合部4に係合するピン6と、ピン6を揺動可能に支持するアーム7と、アーム7を回転可能に支持する回転軸8を備えている。本実施形態において係合部4を有する板バネ3は装置本体1Aに取り付けられ、被係合部5は給紙カセット9に取り付けられている。
【0028】
図1に示すように、給紙カセット9が装置本体1Aから引出された状態において、板バネ3は、装置本体1Aに設けられた両端支持部50により、たわませた状態で両端を支持され、係合部4は板バネ3に沿って配置されている。
【0029】
板バネ3は、給紙カセット9の装置本体1Aへの装着方向X,引き出し方向Yに力を加えられると、弾性変形をする。また、板バネ3は、たわませた状態で支持されているので、装着方向X、引き出し方向Yに加えられた力が一定限度を超えると、力が加えられた方向に飛び移り座屈による変形をする。
【0030】
本発明において、飛び移り座屈とは、たわんでいる弾性体に外側から力が加えられた場合に、その力が一定限度以上となると、それ以上の力を加えなくとも、弾性体が急激に変形し、力が加えられた方向(たわんでいる方向と逆方向)に反りかえる現象をいう。また、飛び移り座屈による変形は、弾性変形であり、飛び移り座屈による変形をした弾性体は、逆方向に力が加えられると、その方向に飛び移り座屈をする。
【0031】
なお、本発明の飛び移り座屈をする弾性体に用いることができる材料としてバネ用ステンレス鋼や、バネ用ベリリウム銅・りん青銅・洋白等を使用可能である。なお、板厚が比較的薄い板状の金属が、飛び移り座屈を起こしやすい。
【0032】
次に、引き込み装置Dにより、給紙カセット9を装置本体1Aに装着および引き出す動作について、図2および図3に基づいて説明する。図2(a)〜(c)は、給紙カセット9を装置本体1Aの所定位置である装着完了位置まで装着する際の動作概略図である。図2(a’)〜(c’)は、それらに対応したピン6と板バネ3および係合部4の状態図である。図3(a)〜(c)は、給紙カセット9を装置本体1Aの装着完了位置から引出す際の引き込み装置Dの動作概略図、図3(a’)〜(c’)は、それらに対応したピン6と板バネ3および係合部4の状態図である。
【0033】
まず、給紙カセット9を装置本体1Aに装着する動作について説明する。給紙カセット9を装着方向Xに挿入していくと、図2(a’)に示すように、ピン6は、6aにある位置から6bの位置に移り、係合部4に当接する。さらに、給紙カセット9を装着方向Xに挿入すると、係止ピン6は、係合部4にガイドされてアーム7が揺動し、6cの位置を通って、6dの位置へ移動して板バネ3に当接する。なお、符号6a、6b、6c、6dは、ピン6の移動位置を示す。
【0034】
さらに給紙カセット9を装着方向Xに挿入していくと、ピン6は板バネ3を装置本体1Aの後側板に向かって押し込んでいくと、板バネ3は、図2(b)、(b’)の状態になるまで装着方向Xに弾性変形していく。図2(b)、(b’)の状態から、さらに給紙カセット9を装着方向Xに挿入し、板バネ3に加えられた力が一定限度以上となると、板バネ3は装着方向Xに飛び移り座屈による変形を起こし、図2(c)、(c’)の状態となる。図2(c)は、引き込み装置Dによって給紙カセット9が装置本体1Aに引き込まれて装着された状態の図である。
【0035】
板バネ3は、飛び移り座屈による変形をする際に、装着方向Xに引き込み力を生じる。板バネ3が図2(b)、(b’)の状態から図2(c)、(c’)の状態へ飛び移り座屈をする際に、係合部4とピン6は係合したままであるので、給紙カセット9は、係合部4と被係合部5を介して装置本体1Aに引き込まれる。
【0036】
一般的に、画像形成装置には、ユニットを装置本体への装着方向で位置決めをするための位置決め機構が設けられている。本実施形態での位置決め機構は、図6で示すように、給紙カセット9に設けられている突き当て部材9aと、装置本体1Aに設けられている基準部材21とで構成されている。そして、給紙カセット9が装置本体1Aに装着されて突き当て部材9aが基準部材21に突き当ることにより、給紙カセット9の装着方向の位置決めがされる。
【0037】
給紙カセット9が位置決め機構により位置決めされた状態では、板バネ3は、飛び移り座屈による変形を途中で止められた状態となっている。もし、位置決め機構による給紙カセット9の位置決めがされない場合には、図2(c’)に示すように、点線で示される状態まで板バネ3は飛び移り座屈により変形する。このように、給紙カセット9は、装置本体1Aに装着された状態において、位置決め機構により板バネ3が飛び移り座屈による変形を途中で止めた位置にある。したがって、板バネ3により、給紙カセット9に装着方向Xの力が働き、給紙カセット9は引き込み方向に付勢される。これにより、給紙カセット9は装置本体1Aの装着完了位置で確実に位置決めされる。
【0038】
すなわち、ユーザが給紙カセット9を装置本体1Aに対して装着方向Xに挿入していき、板バネ3に一定限度以上の力が加えられると、給紙カセット9は、装着完了位置である図2(c)の状態へ板バネ3が飛び移り座屈をすることで引き込まれる。したがって、給紙カセット9を装置本体に対して確実に位置決めすることができる。一方、給紙カセット9の挿入による板バネ3に加えられる力が一定限度未満であれば、弾性変形した板バネ3は図2(a)の状態に戻るので、ユーザは給紙カセット9が装着されたと誤認することはない。
【0039】
次に、引き込み装置Dにより、給紙カセット9を装置本体1Aに装着された状態から引出す動作について、図3に基づいて説明する。図3(a)、(a’)の装着完了位置にある給紙カセット9を引き出し方向Yに引出し始めると、図3(b)、(b’)に示すように、係合部4に係合した被係合部5の係止ピン6が板バネ3を引き出し方向Yに弾性変形させる。
【0040】
図3(b)、(b’)の状態から、さらに給紙カセット9を引き出し方向Yに引き出すと、板バネ3に加えられた力は一定限度以上となるので、板バネ3は挿入した際とは逆向きである引き出し方向Yに飛び移り座屈を起こし、図3(c)、(c’)の状態となる。
【0041】
板バネ3は、飛び移り座屈をする際に引き出し方向Yの向きに力を生じる。板バネ3が図3(b)、(b’)の状態から図3(c)、(c’)の状態へ飛び移り座屈をする際に、係合部4とピン6は係合したままであるので、給紙カセット9は、係合部4と被係合部5を介して引き出される。
【0042】
なお、図3(c’)に示すように、板バネ3が図3(b)から図3(c)へ飛び移り座屈をする過程において、係止ピン6は、係合部4にガイドされてアーム7が揺動し、6aの位置から、6bの位置、6cの位置へと順に揺動していく。そして、飛び移り座屈後は、被係合部との係合が解除され6dの位置となる。
【0043】
以上説明したように、第1の実施形態の引き込み装置Dによれば、弾性体の飛び移り座屈現象を利用することにより、簡易な構成で、ユニットを装置本体1Aに確実に位置決めすることができる。
【0044】
なお、図4は、給紙カセット9の装着および引き出す動作における板バネ3の作用力を表した図である。縦軸は板バネ3が給紙カセット9に作用する力を示し、横軸は給紙カセット9の装置本体1Aの装着完了位置からの距離を示す。作用力が正の値を示す場合は、板バネ3が給紙カセット9を引き出し方向Yに押し出す力を持っていることを示し、負の値を示す場合は板バネ3が給紙カセット9を装着方向Xに引き込む力を持っていることを示す。
【0045】
すなわち、給紙カセット9を挿入するユーザは、給紙カセット9の装着完了位置からの距離が図4(a)から図4(b)のときは、作用力が正の値を示すので、給紙カセット9を装着方向Xに押し込む力が必要である。また、給紙カセット9の装着完了位置からの距離が図4(b)から図4(c)のときは、作用力が負の値を示すので、ユーザが手で押し込まなくとも給紙カセット9は装着方向Xに引込まれる。
【0046】
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態の引き込み装置Dについて説明する。なお、第2の実施形態の引き込み装置Dでは、弾性体に設けられた係合部のみが第1の実施形態と異なり、それ以外の構成は第1の実施形態と同じであるため説明を省略する。第2の実施形態の引き込み装置Dは、図7に示すように、係合部が第1係合部63と第2係合部64の2つを有している。なお、61は弾性体としての板バネである。
【0047】
図8に示すように、ユニットとしての給紙カセットが装着された状態において、第1係合部63と第2係合部64は、給紙カセットに設けられた被係合部であるピン6を両側から挟んだ状態となる。したがって、第2の実施形態の引き込み装置Dは、衝撃等によりピン6が係合部から外れにくいという効果を有する。以下、第2の実施形態の係合部について詳細に説明する。
【0048】
図7に示すように、ユニットが装着されていない状態において、第1係合部63及び第2係合部64は、ギャップL1だけ離間して配置されている。一方、ピン6は幅L2を有している。両者の関係はL1>L2となるよう構成されている。
【0049】
次に、ユニットである給紙カセット9を装置本体1Aに装着する際の、係合部としての第1係合部63および第2係合部64、ならびに被係合部に設けられているピン6の動作について説明する。
【0050】
図7に示すように、給紙カセットを装着方向Xに挿入していくと、ピン6は、71a’の位置から71b’の位置へ移動し、第1係合部63に当接する。さらに、給紙カセットを装着方向Xに挿入していくと、第1係合部63の71c’の位置を通り、第2係合部64の71d’の位置に当接する。さらに、給紙カセットを装着方向Xに挿入していくと、ピン6は71e’の位置へ移動し、板バネ3に当接する。
【0051】
さらに、給紙カセットを装着方向Xに挿入していくと、ピン6は、板バネ3を装着方向Xに向かって押し込んでいき、板バネ3は装着方向Xに弾性変形する。そして、板バネ3に加えられた力が一定限度以上となると、板バネ3は装着方向Xに飛び移り座屈による変形を起こし、図8の状態となる。なお、図8は、給紙カセットが装置本体1Aに装着された状態の図である。
【0052】
また、ユニットが装着された状態においては、第1係合部と第2係合部のギャップL1’はピン6の幅L2より短くなる。したがって、第2の実施形態の引き込み装置Dは、衝撃等が生じた場合でもピン6が外れにくいため、誤作動(引き込み不良等)を防止することができるという効果を有する。
【0053】
<第3の実施形態>
次に、本発明の第3の実施形態の引き込み装置Dについて説明する。なお、第3の実施形態では、引き込み装置Dが弾性体である板バネ3のたわみを制限するたわみ制限部65を有する点のみが第2の実施形態と異なり、それ以外の構成は第2の実施形態と同じであるため説明を省略する。
【0054】
第3の実施形態の引き込み装置Dは、図9に示すように、両端支持部50の一方と第2係合部64の間の位置で、弾性体のたわみを制限するように支持するたわみ制限部65を有する。
【0055】
図10は弾性体である板バネ3の動きを示す図であり、61a乃至61dは、板バネ3の状態を表している。なお、図10において、係合部は不図示である。
【0056】
図10において、61aは、給紙カセットが装着されていない状態の第2の実施形態の板バネ3の形状を表しており、61bは、給紙カセットが装着されていない状態の第3の実施形態の板バネ3の形状を表している。すなわち、第3の実施形態では、たわみ制限部65により、板バネ3のたわみを61aよりも制限した61bの状態に固定支持している。
【0057】
また、61cは、板バネ3が装着方向Xに飛び移り座屈をする直前の状態を示しており、61dは、板バネ3が装着方向Xに飛び移り座屈をした後の状態を示している。
【0058】
以上のように、第3の実施形態の引き込み装置Dによれば、たわみ制限部65により、弾性体のたわみを制限することで、板バネ3を飛び移り座屈をする直前の状態である61cに近い状態である61bの状態にすることができる。
【0059】
その結果、第3の実施形態の引き込み装置Dは、板バネ3を61aの状態から61bの状態まで押し込む力が不要とし、板バネ3が飛び移り座屈をするまでに要する力を小さくできる。したがって、ユーザがユニットを装着する際に要する力を小さくでき、ユニットの着脱操作を行うユーザにとってのユーザビリティが向上する。
【0060】
<第4の実施形態>
次に、本発明の第4の実施形態ついて説明する。なお、第4の実施形態の引き込み装置Dは、ユニットが装置本体に開閉可能に設けられた扉ユニットである点が第2の実施形態と異なり、それ以外の構成は第2の実施形態と同じである。
【0061】
図11に示すように、22は装置本体に装着および開閉可能な扉ユニットである。
第1乃至第3の実施形態と同様に飛び移り座屈をする弾性体としての板バネ3は、たわませた状態で、不図示の装置本体1Aに固定されている。また、板バネ3には第1係合部63と第2係合部64が設けられている。また、扉ユニット22の裏面には係止ピン6と回転軸8を備えたアーム7が設けられている。また、図11(a)、(b)に示すように、扉ユニット22は18a及び18bを軸として、装置本体1Aに対して回動可能である。図11(c)は第4の実施形態が適用された引き込み装置Dの拡大図である。
【0062】
次に、扉ユニット22を装置本体1Aに開ける動作および閉める動作について、図12および13に基づいて説明する。
【0063】
まず、扉ユニット22が開いた状態から装着完了位置まで閉める動作について、図12に基づいて説明する。
【0064】
図12(a)、(b)、(c)は、扉ユニット22を開いた状態から装置本体1Aの所定位置である装着完了位置まで閉める際の動作概略図である。図12(a’)、(b’)、(c’)は、それらに対応した扉ユニット22の上視図である。図12(a”)、(b”)、(c”)は、それらに対応した係止ピン6と板バネ3及び第1係合部63並びに第2係合部64の状態図である。
【0065】
図12(a)、(a’)、(a”)に示すように、扉ユニット22を装着方向Xに押して閉めていくと、アーム7が重力下向きに傾いているため係止ピン6は第1係合部63に当接する。さらに、扉ユニット22を装着方向Xに押していくと、係止ピン6は、第2係合部64と第1係合部63にガイドされてアーム7が揺動し、板バネ3に当接する。さらに、扉ユニット22を装着方向Xに押していくと、係止ピン6は板バネ3を装着方向Xに押しこんでいき、板バネ3は図12(b)、(b’)、(b”)の状態になるまで装着方向Xに弾性変形していく。
【0066】
さらに、扉ユニット22を装着方向Xに押していき、板バネ3に加えられた力が一定限度以上となると、板バネ3は装着方向Xに飛び移り座屈による変形を起こし、図12(c)、(c’)、(c”)となる。
【0067】
板バネ3は、飛び移り座屈による変形をする際に、装着方向Xに引き込み力を生じる。板バネ3が図12(b)、(b’)、(b”)の状態から図12(c)、(c’)、(c”)の状態へ飛び移り座屈をする際に、第1係合部63および第2係合部64とピン6は係合したままである。したがって、扉ユニット22は、係合部と被係合部を介して装置本体1Aに引き込まれる。
【0068】
なお、第4の実施形態の引き込み装置Dは第1の実施形態の引き込み装置Dと同様に、扉ユニット22は、位置決め機構により、装置本体1Aの装着完了位置で確実に位置決めされる。
【0069】
次に、扉ユニット22が装着完了位置にある閉められた状態から開ける動作について図13に基づいて説明する。
【0070】
また、図13(a)、(b)、(c)は、扉ユニット22を装置本体1Aの所定位置である装着完了位置から開ける際の動作概略図である。図13(a’)、(b’)、(c’)は、それらに対応した扉ユニット22の上視図である。図13(a”)、(b”)、(c”)は、それらに対応した係止ピン6と板バネ3及び第1係合部63並びに第2係合部64の状態図である。
【0071】
図13(a)、(a’)、(a”)の装着完了位置から扉ユニット22を引き出し方向Yに開け始めると、図13(b)、(b’)、(b”)に示すように、第1係合部63および第2係合部64に係合した係止ピン6が板バネ3を引き出し方向Yに弾性変形させる。
【0072】
図13(b)、(b’)、(b”)の状態から、さらに扉ユニット22を引き出し方向Yに開けると、板バネ3に加えられた力は一定限度以上となる。そして、挿入した際とは逆向きである引き出し方向Yに板バネ3が飛び移り座屈を起こし、図13(c)、(c’)、(c”)の状態となる。
【0073】
板バネ3は、飛び移り座屈をする際に引き出し方向Yの向きに力を生じる。板バネ3が図3(b)、(b’)、(b”)の状態から図3(c)、(c’)、(c”)の状態へ飛び移り座屈をする際に、第1係合部63および第2係合部64とピン6は係合したままであるので、扉ユニット22は、係合部と被係合部を介して引き出される。
【0074】
なお、本第4の実施形態において、上述した第3の実施形態の構成を適用してもよい。
【0075】
以上説明したように、本第4の実施形態の引き込み装置Dによれば、扉ユニット22を用いた第4の実施形態においても、第1の実施形態の引き込み装置Dと同様に、簡易な構成で、ユニットを装置本体に確実に位置決めすることができる。
【0076】
<変形例>
以上の第1乃至4の実施形態で示す引き込み装置Dでは、弾性体が装置本体1Aに設けられているが、本発明はこれに限らず、ユニットに飛び移り座屈をする弾性体が設けられていても良い。すなわち、装置本体およびユニットの一方であるユニットに弾性体を設け、装置本体およびユニットの他方である装置本体に被係合部を設けてもよい。なお、弾性体がユニットに設けられる場合には、被係合部は装置本体1Aに設けられる。この場合、ユニットを装置本体に装着する際に、係合部と被係合部が係合し、弾性体が飛び移り座屈をすることでユニットが装置本体1Aの所定位置に引き込まれる動作は、第1乃至4の実施形態と同じである。
【0077】
また、第1乃至4の実施形態で示す引き込み装置Dでは、弾性体として板バネを用いているが、図14のようにコイルバネ3’を用いてもよい。図14(a)は、ユニットを装着する前のコイルバネ3’および係合部4の状態を示し、図14(b)は、ユニットが装着方向Xに挿入され、不図示の装置本体1Aに装着された状態の図を示している。なお、ユニット側に設けられている被係合部5の構成は第1実施形態と同じであるので、説明および図示を省略する。また、被係合部と係合部が係合し、弾性体であるコイルバネ3’が飛び移り座屈をする動作についても第1実施形態と同じであるので、説明を省略する。
【0078】
なお、図14(c)に示すように、係合部4が設けられたコイルバネ3’は、装置本体1Aの両端支持部50にたわませた状態で支持されるが、第1乃至4の実施形態と同様に、弾性体であるコイルバネ3’はユニット側に設けられてもよい。その場合は、被係合部は装置本体に設けられる。
【0079】
また、ユニットとして、第1乃至3の実施形態では給紙カセットを、第4の実施形態では扉ユニットを用いているが、本発明はこれに限られず、転写ユニットや定着ユニット等を用いてもよい。これにより、転写ユニットや定着ユニット等が確実に装置本体内に引き込まれて位置決めがされ、安定した画像形成処理が行える。
【符号の説明】
【0080】
D 引き込み装置
1A 装置本体
3 板バネ
4 係合部
5 被係合部
6 係止ピン
7 アーム
8 回転軸
9 給紙カセット
22 扉ユニット
50 両端支持部
63 第1係合部
64 第2係合部
65 たわみ制限部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置本体に装着および引き出し可能なユニットを前記装置本体の所定位置に引き込む引き込み装置であって、
前記装置本体および前記ユニットの一方に設けられ、飛び移り座屈をする弾性体と、前記弾性体に設けられた係合部と、
前記装置本体および前記ユニットの他方に設けられ、前記係合部と係合する被係合部と、を有し、
前記ユニットが前記装置本体に装着される際に、前記係合部と前記被係合部が係合し、前記弾性体が飛び移り座屈をすることにより、前記ユニットを前記装置本体の前記所定位置に引き込む
ことを特徴とする引き込み装置。
【請求項2】
前記装置本体および前記装置本体に装着および引き出し可能なユニットの一方に設けられ、前記弾性体をたわませるように両端を支持する両端支持部を有することを特徴とする請求項1に記載の引き込み装置。
【請求項3】
前記両端支持部の一方と前記係合部の間の位置で、前記弾性体のたわみを制限するたわみ制限部を有することを特徴とする請求項2に記載の引き込み装置。
【請求項4】
前記装置本体に装着および引き出し可能なユニットを前記装置本体の所定位置で位置決めするための位置決め機構を備え、前記ユニットが前記位置決め機構により前記装置本体の所定位置で位置決めされた状態では、前記弾性体は、飛び移り座屈による変形が途中で止められた状態で支持されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の引き込み装置。
【請求項5】
前記弾性体は、板状の金属またはコイルバネであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の引き込み装置。
【請求項6】
装置本体に開閉可能なユニットを前記装置本体の所定位置に引き込む引き込み装置であって、
前記装置本体および前記ユニットの一方に設けられ、飛び移り座屈をする弾性体と、前記弾性体に設けられた係合部と、
前記装置本体および前記ユニットの他方に設けられ、前記係合部と係合する被係合部と、を有し、
前記ユニットが前記装置本体に閉じられる際に、前記係合部と前記被係合部が係合し、前記弾性体が飛び移り座屈をすることにより、前記ユニットを前記装置本体の前記所定位置に引き込む
ことを特徴とする引き込み装置。
【請求項7】
前記装置本体および前記装置本体に開閉可能なユニットの一方に設けられ、前記弾性体をたわませるように両端を支持する両端支持部を有することを特徴とする請求項6に記載の引き込み装置。
【請求項8】
前記両端支持部の一方と前記係合部の間の位置で、前記弾性体のたわみを制限するたわみ制限部を有することを特徴とする請求項7に記載の引き込み装置。
【請求項9】
前記装置本体に開閉可能なユニットを前記装置本体の所定位置で位置決めするための位置決め機構を備え、前記ユニットが前記位置決め機構により前記装置本体の所定位置で位置決めされた状態では、前記弾性体は、飛び移り座屈による変形が途中で止められた状態で支持されていることを特徴とする請求項6乃至8のいずれか1項に記載の引き込み装置。
【請求項10】
前記弾性体は、板状の金属またはコイルバネであることを特徴とする請求項6乃至9のいずれか1項に記載の引き込み装置。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか1項に記載の引き込み装置を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項1】
装置本体に装着および引き出し可能なユニットを前記装置本体の所定位置に引き込む引き込み装置であって、
前記装置本体および前記ユニットの一方に設けられ、飛び移り座屈をする弾性体と、前記弾性体に設けられた係合部と、
前記装置本体および前記ユニットの他方に設けられ、前記係合部と係合する被係合部と、を有し、
前記ユニットが前記装置本体に装着される際に、前記係合部と前記被係合部が係合し、前記弾性体が飛び移り座屈をすることにより、前記ユニットを前記装置本体の前記所定位置に引き込む
ことを特徴とする引き込み装置。
【請求項2】
前記装置本体および前記装置本体に装着および引き出し可能なユニットの一方に設けられ、前記弾性体をたわませるように両端を支持する両端支持部を有することを特徴とする請求項1に記載の引き込み装置。
【請求項3】
前記両端支持部の一方と前記係合部の間の位置で、前記弾性体のたわみを制限するたわみ制限部を有することを特徴とする請求項2に記載の引き込み装置。
【請求項4】
前記装置本体に装着および引き出し可能なユニットを前記装置本体の所定位置で位置決めするための位置決め機構を備え、前記ユニットが前記位置決め機構により前記装置本体の所定位置で位置決めされた状態では、前記弾性体は、飛び移り座屈による変形が途中で止められた状態で支持されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の引き込み装置。
【請求項5】
前記弾性体は、板状の金属またはコイルバネであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の引き込み装置。
【請求項6】
装置本体に開閉可能なユニットを前記装置本体の所定位置に引き込む引き込み装置であって、
前記装置本体および前記ユニットの一方に設けられ、飛び移り座屈をする弾性体と、前記弾性体に設けられた係合部と、
前記装置本体および前記ユニットの他方に設けられ、前記係合部と係合する被係合部と、を有し、
前記ユニットが前記装置本体に閉じられる際に、前記係合部と前記被係合部が係合し、前記弾性体が飛び移り座屈をすることにより、前記ユニットを前記装置本体の前記所定位置に引き込む
ことを特徴とする引き込み装置。
【請求項7】
前記装置本体および前記装置本体に開閉可能なユニットの一方に設けられ、前記弾性体をたわませるように両端を支持する両端支持部を有することを特徴とする請求項6に記載の引き込み装置。
【請求項8】
前記両端支持部の一方と前記係合部の間の位置で、前記弾性体のたわみを制限するたわみ制限部を有することを特徴とする請求項7に記載の引き込み装置。
【請求項9】
前記装置本体に開閉可能なユニットを前記装置本体の所定位置で位置決めするための位置決め機構を備え、前記ユニットが前記位置決め機構により前記装置本体の所定位置で位置決めされた状態では、前記弾性体は、飛び移り座屈による変形が途中で止められた状態で支持されていることを特徴とする請求項6乃至8のいずれか1項に記載の引き込み装置。
【請求項10】
前記弾性体は、板状の金属またはコイルバネであることを特徴とする請求項6乃至9のいずれか1項に記載の引き込み装置。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか1項に記載の引き込み装置を備えることを特徴とする画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2013−35643(P2013−35643A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−171999(P2011−171999)
【出願日】平成23年8月5日(2011.8.5)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月5日(2011.8.5)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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