説明

引出し型加熱調理器

【課題】ドア内面に沿って流れる下降気流によって加熱の際に調理物から発生した水蒸気がドア内面に触れるのを防止することにより、ドアガラスを通して外部から加熱物収容部内の観察を容易とすることができる引出し型加熱調理器を提供する。
【解決手段】加熱調理器の加熱動作時、横断流送風ファン13の作動によって調理器本体1の前面下部から吸気され加熱室3内に送り込まれた外気は、加熱室3の背面上部から天井部16とスプラッシュカバー17との間の隙間通路18を通じてドア2aのドアガラス10の内面に沿った下降気流F6として流れる。下降気流F6は、加熱物収容部2bの前端部に形成された排気窓部21を通して調理器本体1の排気部33から排出される。調理に伴って加熱物から生じる水蒸気は、下降気流F6のエアカーテン作用によってドアガラス10に触れる機会が無く、ドアガラス10に凝縮・付着して曇らせることがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、加熱調理器の本体内に形成されている加熱室内から、開閉扉の操作によって、加熱物収容部が引出し可能な引出し型加熱調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
図6は、本出願人が従来、提案しているのと同等の引出し式加熱調理器の斜視図である。調理器本体1内には調理物(加熱物)を加熱調理するための加熱室3が形成されている。引出し体2は、加熱室3を開閉するための開閉扉(以下、「ドア」と略す)2aと調理物を載置可能な容器状の形状を有する加熱物収容部2bとを備えている。引出し体2は、スライド機構4によって調理器本体1内でスライド可能に配置されており、調理器本体1の加熱室3内から手前側へ引き出す、又は加熱室3内へ引き込むことができる。スライド機構4は、加熱室3の少なくとも左右外側に配置されているが、加えて下側にも配置させることができる。スライド機構4は加熱室3の外側に設けられているので、加熱室3内を加熱物収容部2b用に広く使うことができるとともに、スライド機構4を構成するための可動レールや固定レール等に高い耐熱性と難燃性を有する高価な部品または材料を用いる必要が無く、また、加熱室3内に照射されるマイクロ波の影響を受けることも、マイクロ波による放電の恐れも無い。ドア2aには、その閉じ状態で外部から加熱室2内を覗くことができるように、マイクロ波を遮断する透明板として金網入りのドアガラス10が嵌め込まれている。
【0003】
スライド機構4は、詳細は図示しないが、調理器本体1側に固定される固定レールと、ドア2aに取り付けられ且つ固定レールに沿ってスライドする可動レールとから構成されており、引出し体2はドア2aからスライド機構4を介して調理器本体1にスライド可能に支持されている。スライド機構4を駆動するため、駆動機構として例えばDCモーターが配設されている。詳細は図示しないが、DCモーターの回転出力を受けて回転するピニオンが可動レールに取り付けられているラックに噛み合い係合しており、ピニオンの回転によってラックが直動動作をすることで、引出し体2がスライド機構4を介して自動で駆動される。引出し体2の自動出し入れは、大型の加熱調理器において特に好適である。
【0004】
加熱物収容部2bは、左右側に側壁と、調理器本体1の加熱室3内に配置される背面側に後壁とを有しており、上方は調理物を出し入れするために開口部となっている。ドア2aは加熱物収容部2bの前方に取り付けられている。引出し体2を加熱室3内に引き込んでドア2aが加熱室3の開口部3aを閉じることにより、加熱室3の内部空間が調理器本体1の内壁面とドア2aによって密閉空間になり、マイクロ波の外部への漏出を防止することができる。なお、調理器本体1側上部に使用者が開閉操作をするための操作部9が設けられており、操作部9には詳細を図示しないが、操作ボタンや制御部、或いは操作内容等を表示する表示部5が設けられている。
【0005】
ビルトイン型キッチン機器の一例として、本出願人は、既に、吸気部及び排気部を集約し、吸気及び排気の効率を改善し、電気部品の冷却及び庫内排気を効率よくし、且つキッチン機器の設計及び配置の制約を緩和することができるビルトイン型キッチン機器を提案している(特許文献1参照)。このキッチン機器は、加熱室を手前側に引き出し可能な電子レンジのような引出し式加熱調理器であり、冷却用給排気部のスペースを節約するために、吸気部及び排気部は、吸気部の吸入口及び排気部の排気口を前面側に向けてキッチン機器本体の上下左右の何れかの一辺部に集約されている。また、吸気部と排気部とを一辺部において分離することにより、互いの混合を回避し、吸気及び排気の効率の改善、電気部品の冷却及び庫内排気の効率の良化、並びにキッチン機器の設計及び配置の自由度を高めることを図っている。
【0006】
このキッチン機器では冷却用ファンモータが加熱器本体の奥部に設けられており、冷却用ファンモータが作動すると、加熱器本体の前面から取り入れられた外気は、冷却用ファンモータから一部がマイクロ波発生装置であるマグネトロンに、残る部分がマグネトロンへの高電圧発生装置である高圧トランスに吹き付けられて、それぞれを冷却する。マグネトロンを空冷した気流は加熱室にその背面側から流入し、加熱室内に流入した空気は、調理物を加熱した際に発生する水蒸気を含み込み、加熱室内を前方に移動しながら上昇して調理器本体1の上方の水平ダクトに流れ込む。水平ダクトは加熱室の天井部において後方に向かい、更に下降して加熱器本体の後面下部に達した後加熱器本体の底面部を前方に向かい、加熱器本体の前面下部の排気部から排気される。
【0007】
引出し型加熱調理器では、前記したように調理器本体に取り入れた吸気を庫内背面側から加熱室内に送り込んでいるが、調理物から発生する水蒸気を含んだ気流がこの吸気流れによって前方に配置されているドア内面に向かって流れるので、調理物の蒸気がドアガラスに接触して冷却され、水滴となって凝縮・付着してドアガラスを曇らせ易い。したがって、そうした調理物の蒸気の流れを変えてドアガラスへの接触を防止しない限り、ドアガラスの曇りを防止することは非常に難しい。
【0008】
一般に、電子レンジのような加熱調理機器においては、調理機器の庫内への吸気構造としては左又は右のいずれかの側面から行われている。庫内吸気を、加熱室の左又は右のいずれかの側面から行う場合には、ドアガラスに並行する気流とすることが可能であり、エアカーテン機能を持たせることにより、調理物の蒸気がドアガラスに触れにくい構造とすることができる。しかしながら、加熱室の左及び右側面に引出移動機構と駆動機構を収容している引出し型加熱調理器では、加熱室左又は右からの吸気が極めて困難であるという問題もある。
【特許文献1】特開2008−8547号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、庫内背面側から加熱室内に吸気を送り込んでいる引出し型加熱調理器において、この吸気流れをドアガラスに並行する気流とすることにより、調理物の蒸気に対してエアカーテンとなるように利用して、調理物の蒸気がドアガラスに接触して冷却され、水滴となって凝縮・付着するのを防止する点で解決すべき課題がある。
【0010】
この発明の目的は、ドア内面に沿って流れる外気の流れのエアカーテン作用によって、調理物の蒸気がドア内面に接触して冷却され、水滴となって凝縮・付着するのを防止することにより、調理物である加熱物が調理されて水蒸気が発生するときでも、ドアガラスを通して外部から加熱物収容部内の観察を容易とすることができる引出し型加熱調理器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するため、この発明による引出し型加熱調理器は、前方に開口部で開く加熱室を内部に形成した調理器本体と、前記調理器本体の前記加熱室内に引出し・引き込み可能な引出し体と、前記引出し体を前記加熱室の外側で前記調理器本体にスライド可能に支持するスライド機構とを備え、前記引出し体は、加熱物を載置し引込み状態では前記加熱室内に収容される加熱物収容部と、当該加熱物収容部の前端部に取り付けられ且つ前記引込み状態では前記加熱室の前記開口部を閉止可能であるとともに前記加熱物収容部内を覗くことを可能にする透明板を備えたドアとを有している引出し型加熱調理器であって、前記加熱室背面から前記加熱室内に送り込まれた送気流を、前記ドアの前記透明板の内面に沿った下降気流とし、当該下降気流を前記加熱物を加熱することによって生じる水蒸気とともに前記加熱物収容部の前記前端部に形成された排気窓部を通して前記調理器本体の前端に開口する排気部から排出することを特徴としている。
【0012】
この引出し型加熱調理器によれば、内部に前方に加熱室を形成する調理器本体の当該加熱室内に引出し・引き込み可能な引出し体は、加熱物を収容可能な加熱物収容部と、当該加熱物収容部の前端部に取り付けられて一体とされたドアとを有している。引出し体の引込み状態では、加熱物収容部は加熱室内に収容され、ドアは加熱室の開口部を閉止可能である。
前記引出し体は、加熱室の外側に設けられたスライド機構によって調理器本体にスライド可能に支持される。調理器の加熱動作は引出し体を引込み状態に置いて行われるが、加熱室内にその背面上部から送り込まれた外気は、ドアガラスの内面に沿った下降気流として流れ、水蒸気の流れに対してエアカーテンのように遮断する作用を果たし、加熱物から生じる水蒸気とともに加熱物収容部の前端部に形成された排気窓部を通して調理器本体の前端に開口する排気部から排出される。加熱物を加熱することによって生じる水蒸気は、透明板に触れる機会が無く、したがって水蒸気が透明板に接触して冷却され、水滴となって凝縮・付着することがない。
【0013】
この引出し型加熱調理器において、加熱室の天井壁との間に空隙を置いて配置されたスプラッシュカバーを備え、送気流が空隙を通じてドアの内側上部に向かって導くことができる。背面上部から加熱室内に送り込まれた外気は、スプラッシュカバーの上面と加熱室天面との間に形成されている空隙を通じて加熱器本体前面に向かう気流となり、更にスプラッシュカバーの前端からドアガラスの内面に沿った下降気流として流れる。
【0014】
前記スプラッシュカバーが設けられた引出し型加熱調理器において、前記引出し体が前記引込み状態を占めるとき、前記スプラッシュカバーの前端は前記ドアの内面に近接した位置を占め、前記ドアの内面との間に前記下降気流が流れ降りるための隙間を形成することができる。スプラッシュカバーの前方終端はドアに接近した位置とすることができるので、加熱室内に送り込まれた気流は、スプラッシュカバーの前端とドアの内面との間に形成される隙間から、確実に透明板の内面に沿った下降気流として流すことができる。
【0015】
この引出し型加熱調理器において、前記排気窓部は、前記下降気流の通過を案内するため、前記加熱物収容部の前記前端部に形成された排気窓の縁部から起立する起立壁を備えることができる。加熱物収容部の前端部には、下降気流を排気するための排気窓部が形成されるが、水蒸気を含む下降気流が排気窓部を通してスムーズに排出されることが望ましく、また、食品(加熱物)から加熱室内に溢水したときに水分が排気窓部から流出しないことが好ましい。加熱物収容部には排気窓の縁部から起立する起立壁を備えることで、こうした要望に応えることができる。
【0016】
この引出し型加熱調理器において、前記調理器本体の前記排気部は、前記引込み状態では前記引出し体の前記排気窓部と対向する前記調理器本体の底部の位置に形成されている排気用入口部と、当該排気用入口部に接続されて前記調理器本体の前記前端に開口する排気用出口部とを備えることができる。引出し体の排気窓部を通じて流れる下降気流は、排気窓部と対向する調理器本体の底部の位置に形成されている排気用入口部に流れ込んで、調理器本体の前端の排気用出口部から手前側に排気される。
【発明の効果】
【0017】
この発明による引出し型加熱調理器は、上記のように構成されているので、引出し体が加熱室の外側で調理器本体に対してスライド機構によりスライドされるという大型の加熱調理器に特有の設置条件などから庫内吸気が庫内背面から行われる加熱調理機器において、調理物の容器形状にかかわらず庫内吸気を透明板に沿った下降気流として、調理物から発生される水蒸気を透明板より遮断することができ、調理中の透明板の曇りを防止することができる。また、調理機器に設置されており庫内清掃を容易にするためのスプラッシュカバーを用いる場合には、そのスプラッシュカバーに庫内吸気を下降気流に導いて調理中における透明板の曇り防止に繋がる機能を持たせることができる。即ち、清掃を容易にするためのスプラッシュカバーを利用して、庫内背面から供給される吸気を透明板内面に向かわせる流れとすることができるので、排気用の専用のダクトを設けるなど新たに追加するパーツを必要とすることなく、引出し型加熱調理器の製造コストを抑えることもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、添付した図面に基づいて、この発明による引出し型加熱調理器の実施例を説明する。図1は引出し型加熱調理器の縦断面において気流の流れを説明する説明図、図2は図1に示す引出し型加熱調理器の横断面において気流の流れを説明する説明図、図3は図1に示す引出し型加熱調理器の正面図、図4は図1に示す引出し型加熱調理器の引出し体の側面概略図、図5は図4に示す引出し体の概略平面図である。なお、加熱調理器の構成は、排気流れに関する以外は、図6に従来の加熱調理器として示したものと同等であってよいので、ここでの再度の説明を省略する。
【0019】
本発明による引出し型加熱調理器においては、特に図3に示すように、調理器本体1の前面下部に吸排気グリルが設けられており、幅方向両側に配置されている吸気部31,32と、両吸気部31,32間に渡って設けられている排気部33とを備えている。吸気部31,32は、図1及び図2に示すように、調理器本体1の前後方向に最奥まで延びている吸気ダクト34,35を備えている。吸気部31,32を通して吸い込まれた外気は、吸気ダクト34,35を流れて調理器本体1の後方スペース11に送られる。排気部33の詳細については後述する。
【0020】
調理器本体1の加熱室3の後方スペース11には、高電圧を発生させる高圧トランス12、横断流送風ファン13及び高圧トランス12からの高電圧に基づいてマイクロ波を発生させるマグネトロン14が、この順に下から上へと配置されている。マグネトロン14に接続されてマイクロ波を導く導波管15が調理器本体1の天井部16に延びている。
【0021】
加熱室3の上部、即ち、調理器本体1の天井部16の近傍には、庫内の清掃を容易にするためのスプラッシュカバー17が設けられている。スプラッシュカバー17は天井部16の壁面16aのほぼ全面に対応した広さを有しており、天井部16の壁面16aから所定の距離を置いて設けられている。したがって、天井壁面16aとスプラッシュカバー17の上面17aとの間には隙間通路18が形成されている。また、スプラッシュカバー17は、ドア2aの内側面の近傍まで延びており、スプラッシュカバー17の前端17bとドア2aの内側面との間には隙間19が形成されている。マグネトロン14を通過して加熱室背面部から加熱室3内に送り込まれた送気流れは、隙間通路18を通じて調理器本体1の前方に向かって流れ、ドア2aに遮られたところで方向転換をして隙間19を流れ、隙間19を流れる気流は、加熱室3内でドア2aの内面に沿って下方に向かう下降気流となる。
【0022】
引出し体2の底部20の前方、即ち、加熱物収容部2bの前端部であって隙間19の真下方向に対向する位置には、隙間19からの下降気流を排気するために排気窓部21が設けられている。排気窓部21は、底部20において、加熱物収容部2bがドア2aと連結されるための連結部となる両端部を除いて、底部20の横幅の大部分に渡って延びており、底部20を貫通する排気窓22が形成されている。連結部の幅が底部20の幅に比べて減少することに起因して、引出し体2の底面が閉鎖されている従来構造と比較して、ドア2aと加熱物収容部2bとの結合強度が低下しないように、連結部での結合強度(幅、高さの寸法や、結合金具の強度)の向上を図ることが好ましい。排気窓部21は、底部20を構成する底板の前端部分を切り欠いて、ドア2aの内側面との間に形成してもよい。排気窓部21においては、また、排気窓22の窓縁部分に加熱物収容部内に向かって上方に起立する起立壁23が設けられている。起立壁23は、下降気流の通過を効率良く案内し、水蒸気を含んだ下降気流を、排気窓部21を通してスムーズに排出する機能がある。また、起立壁23を設けることで、食品(加熱物)から加熱室3内に溢水したときに水分が排気窓22から流出することを防ぐことができる。
【0023】
調理器本体1の本体底部25には、引出し体2の引込み状態で、引出し体2の底部20に設けられる排気窓部21に対応した位置に、排気口部26が設けられている。即ち、排気口部26には、引出し体2の加熱室3内への引込み状態で、排気窓22に対向した排気入口が形成されている。加熱室3の底部20に設けられる排気口部26から調理器本体1の前面下部の排気部33に接続される排気ダクト36が設けられている。排気ダクト36は、本体底部25内で屈曲されて形成され且つ出口が外気に開放された排気経路であり、排気口部26に流入した水蒸気を含む気流を外気に放つことができる。
【0024】
以上の構成によれば、引出し体2を調理器本体1に引き込んで加熱室3をドア2aで閉じ、加熱調理器を作動させると、断流送風ファン13が駆動され、調理器本体1の前面下部に設けられている吸気部31,32から吸い込まれた冷却用空気流F1,F1は、調理器本体1の底部内に形成されている吸気ダクト34,35を通じる流れF2,F2となって後方に送られ、吸気ダクト34,35の最奥部分から上方の向きを変える流れF3,F3となって後方スペース11に至る。冷却用空気F3は、横断流送風ファン13に吸い込まれる前に下方に配置されている高圧トランス12を通過することで、高圧トランス12を冷却する。横断流送風ファン13から送り出された気流F4は、その上方に配置されているマグネトロン14を通過することでマグネトロン14を冷却する。したがって、加熱室3内に送り込まれる気流は、高圧トランス12やマグネトロン14を通過する際にある程度熱を受け、高温・乾燥した気流となっている。
【0025】
加熱室3に背面から送り込まれた気流は、天井壁面16aとスプラッシュカバー17の上面17aとの間の隙間通路18を気流F5となって前方に向かって流れる。気流F5は、スプラッシュカバー17の前端17bとドア2aの内面との間に形成されている隙間19を通って、ドア2aの内面に沿った下降気流F6として流れる。下降気流F6は、透明板としてのドアガラス10に沿って流れるので、加熱調理中に加熱物から発生する水蒸気(流れFs1)がドアガラスに接触するのを防止する。
【0026】
ドア2aの内面に沿った下降気流F6は、加熱物から発生する水蒸気を巻き込んで、加熱物収容部2bの底部20に設けられている排気窓部21に流れ込み(水蒸気流れFs2)、更に、調理器本体1の本体底部25に設けられている排気口部26を、更に調理器本体1の前面に設けられている排気ダクト36を通じて、加熱調理器の前面下部グリルの排気部33から排気流F7として外部に排気される。
【0027】
以上、説明したように、庫内背面上部から吸気を行い且つドア2aの内面に沿って下降気流が維持されているため、調理中に食品(加熱物)から発生した水蒸気は、下降気流に促されて排気窓部21を通じて排気部33から流出する。ビルトイン型の加熱調理器では、単体でカウンタートップ設置される加熱調理器やガスレンジ上方に壁面取り付けや戸棚からの吊り下げによって設置されるOTR(Over The Range)設置型加熱調理器などと比較して給排気の通路構造に自由度が少なく、前面下方に配置された給排気グリルから給排気を行う必要性が高くなるが、本引出し型加熱調理器ではそうした制約に対応して、給排気構造を巧みに配置して加熱調理器前方下方より庫外へ排気することが可能になる。
また、ドア2aとの間には、エアカーテン効果を持った下降気流が介在するため、加熱物から発生した水蒸気はドア2aのドアガラス10に結露することが防止される。このように、水蒸気がドアガラス10に接触して冷却され、水滴となって凝縮・付着するのを防止することができ、ドアガラス10は曇りを生じることがなく、加熱調理器の使用者は、外部からドアガラス1を通して加熱物収容部2b内を目視・点検することができる。
また、特許文献1に記載された引出し型加熱調理器と比較して、加熱室からの排気経路が短縮され、かつ、屈曲部が減少しているため、冷却用ファンモータの送風負荷が低減し、電力消費が低減されるので、省エネルギーの面から見ても好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】引出し型加熱調理器の縦断面において気流の流れを説明する説明図。
【図2】図1に示す引出し型加熱調理器の横断面において気流の流れを説明する説明図。
【図3】図1に示す引出し型加熱調理器の正面図。
【図4】図1に示す引出し型加熱調理器の引出し体の側面概略図。
【図5】図4に示す引出し体の概略平面図。
【図6】従来の引出し型加熱調理器の概略斜視図。
【符号の説明】
【0029】
1 調理器本体 2 引出し体
2a 開閉扉(ドア) 2b 加熱物収容部
3 加熱室 3a 開口部
4 スライド機構 5 表示部
9 操作部 9a 操作ボタン
10 ドアガラス(透明板) 11 後方スペース
12 高圧トランス 13 横断流送風ファン
14 マグネトロン 15 導波管
16 天井部 16a 壁面
17 スプラッシュカバー 17a 上面
17b 前端 18 隙間通路
19 隙間 20 底部
21 排気窓部 22 排気窓
23 起立壁 25 本体底部
26 排気口部
31,32 吸気部 33 排気部
34,35 吸気ダクト 36 排気ダクト
F6 下降気流 Fs1,Fs2 水蒸気流れ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前方に開口部で開く加熱室を内部に形成した調理器本体と、前記調理器本体の前記加熱室内に引出し・引き込み可能な引出し体と、前記引出し体を前記加熱室の外側で前記調理器本体にスライド可能に支持するスライド機構とを備え、
前記引出し体は、加熱物を載置し引込み状態では前記加熱室内に収容される加熱物収容部と、当該加熱物収容部の前端部に取り付けられ且つ前記引込み状態では前記加熱室の前記開口部を閉止可能であるとともに前記加熱物収容部内を覗くことを可能にする透明板を備えたドアとを有している引出し型加熱調理器において、
前記加熱室背面から前記加熱室内に送り込まれた送気流を、前記ドアの前記透明板の内面に沿った下降気流とし、当該下降気流を前記加熱物を加熱することによって生じる水蒸気とともに前記加熱物収容部の前記前端部に形成された排気窓部を通して前記調理器本体の前端に開口する排気部から排出することを特徴とする引出し型加熱調理器。
【請求項2】
前記加熱室の天井壁との間に空隙を置いて配置されたスプラッシュカバーを備えており、前記送気流が前記空隙を通じて前記ドアの内側上部に向かって導かれることを特徴とする請求項1に記載の引出し型加熱調理器。
【請求項3】
前記引出し体が前記引込み状態を占めるとき、前記スプラッシュカバーの前端は前記ドアの内面に近接した位置を占め、前記ドアの内面との間に前記下降気流が流れ降りるための隙間を形成していることを特徴とする請求項2に記載の引出し型加熱調理器。
【請求項4】
前記排気窓部は、前記下降気流の通過を案内するため、前記加熱物収容部の前記前端部に形成された排気窓の縁部から起立する起立壁を備えていることを特徴とする請求項1に記載の引出し型加熱調理器。
【請求項5】
前記調理器本体の前記排気部は、前記引込み状態では前記引出し体の前記排気窓部と対向する前記調理器本体の底部の位置に形成されている排気用入口部と、当該排気用入口部に接続されて前記調理器本体の前記前端に開口する排気用出口部とを備えていることを特徴とする請求項1に記載の引出し型加熱調理器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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