説明

引出し用レールフレームの後付け方法

【課題】既存のキャビネットに引出しを追加することが容易となる引出し用レールフレームの後付けする方法を提供する。
【解決手段】既存のキャビネットのフレーム体を構成する前側縦フレームと後側縦フレームには係合孔が所定高さ位置に形成されており、レールフレーム12の前後端にそれぞれスライド部材17をスライド可能に差し込んでおき、スライド部材17をスライドさせて、スライド部材17の嵌合突部20a,20bを前側縦フレームと後側縦フレームの係合孔に嵌合させ、前側縦フレームと後側縦フレーム間にレールフレーム12を後付けすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既存のキャビネットに引出しを追加する際に、キャビネットの骨組みを構成するフレーム体に引出し用のレールフレームを後付けすることができる引出し用レールフレームの後付け方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に開示されているように、収納家具における組立枠は、縦枠ジョイント部材に対し直交状態で横枠ジョイント部材が組み合わされて組立枠が形成されており、横枠ジョイント部材は角パイプの端部に挿着した構造となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−365号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に開示されている構造では、横枠ジョイント部材は角パイプに挿着固定されて縦枠ジョイント部材に接合される構造であるため、一度組み立てられたものに対し後付けで横枠を追加することはできないものであり、そのため既存のものに横枠を後付けして引出しを追加するようなことは不可能であり、全体を作り変えなければならないという問題点があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、既存のキャビネットに引出しを追加する際に、キャビネットの骨組みを構成するフレーム体に引出し用のレールフレームを容易に後付けできる引出し用レールフレームの後付け方法の提供を目的とし、この目的の少なくとも一部を達成するために以下の手段を採った。
本発明は、既存のキャビネットに引出しを追加する際に、キャビネットの骨組みを構成するフレーム体に引出し用レールフレームを後付けする方法であって、前記レールフレームの前後端にそれぞれスライド部材をスライド可能に差し込んでおき、前記フレーム体を構成する前側縦フレームと後側縦フレームの所定高さ位置にそれぞれ開口させた係合孔に、前記各スライド部材をスライドさせて、該スライド部材の先端の嵌合突部を嵌合させることにより前記前側縦フレームと後側縦フレーム間に前記レールフレームを前後方向に固定することを要旨とする。
【発明の効果】
【0006】
レールフレームの前後端にスライド部材を差し込んでおき、スライド部材をスライドさせて、スライド部材の嵌合突部を、前側縦フレームと後側縦フレームの係合孔に嵌合させることで、レールフレームを良好に後付けして、既存のキャビネットに引出しを追加することができるものとなる。
【0007】
また、本発明の引出し用レールフレームの後付け方法において、前記各スライド部材を前記前側縦フレームと後側縦フレームに押し付けて、前記前側縦フレームと後側縦フレーム間に前記レールフレームを突っ張らせることとすることもできる。
こうすれば、スライド部材を押し付けて、前側縦フレームと後側縦フレーム間にレールフレームを突っ張らせ、レールフレームをがたつくことなく強固に取り付けできるものとなる。
【0008】
また、本発明の引出し用レールフレームの後付け方法において、前記レールフレームに形成したピン孔と前記スライド部材に形成したピン孔を整合させ、各ピン孔内にピンを差し込んで前記スライド部材を前記レールフレームに固定することとすることもできる。
こうすれば、レールフレームのピン孔とスライド部材のピン孔内にピンを差し込み、スライド部材をレールフレームに固定して、スライド部材を介して前側縦フレームと後側縦フレーム間に強固にレールフレームを後付け固定できるものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】引出しを備えたキッチンキャビネットの斜視構成図である。
【図2】キャビネット本体の前面に開き扉が設けられた既存のキッチンキャビネットの斜視構成図である。
【図3】キッチンキャビネットの骨組みを構成するフレーム体の一例を示す斜視構成図である。
【図4】フレーム体における前側縦フレームと後側縦フレーム間にレールフレームを後付けする際の分解斜視説明図である。
【図5】前側縦フレームに、スライド部材とピンを介してレールフレームを固定した状態の要部斜視構成図である。
【図6】レールフレームとスライド部材とピンの分解斜視図である。
【図7】レールフレーム内にスライド部材を差し込んだ状態の斜視構成図である。
【図8】レールフレーム内にスライド部材を差し込んだ状態の破断斜視構成図である。
【図9】レールフレームにスライド部材を差し込む前の平面半断面構成図である。
【図10】レールフレームに僅かにスライド部材を差し込んだ状態の平面半断面構成図である。
【図11】レールフレームにスライド部材を差し込んだ状態の平面半断面構成図である。
【図12】レールフレームにスライド部材を差し込む前の側面構成図である。
【図13】レールフレームに僅かにスライド部材を差し込んだ状態の側面構成図である。
【図14】レールフレームにスライド部材を差し込んだ状態の側面構成図である。
【図15】図11におけるA−A断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明を実施するための形態を実施例を用いて説明する。
図1は、引出し6,6,6を備えたキッチンキャビネット1の斜視図である。
キッチンキャビネット1は、キャビネット本体2の上面にカウンター3が設けられ、このカウンター3にはシンク4とコンロ5が設けられている。
例えば、図2に示す既存のキャビネット本体2の前面に開き扉2aが設けられて、その奥に収納空間が形成されている場合に、後発的に開き扉2aに代えて引出し6を追加することができるものである。
なお、図1では、3個の引出し6,6,6を備えているが、この引出し6の何れか或いは全部は、既存の開き扉2aのキャビネット本体2に追加することができるものである。
【0011】
キャビネット本体2の骨組みを構成するフレーム体7は、例えば図3に示すような構造となっている。
フレーム体7は、前側の複数の前側縦フレーム8,8,8と、対応する複数の後側縦フレーム9,9,9が、複数本の横フレーム10,10,10で連結され、また、前側縦フレーム8と後側縦フレーム9間には前後方向に前後フレーム11,11,11が組み付けられて枠組みされている。
このようなフレーム体7に、引出し用のレールフレーム12,12,12を後付けすることで、引出し6を後発的にキャビネット本体2に追加することができる。
このレールフレーム12,12は、引出し6を追加したい位置の前側縦フレーム8と後側縦フレーム9間に、前後フレーム11と平行状に後付けされるものである。
【0012】
即ち、図4の要部分解斜視説明図で示すように、前側縦フレーム8と後側縦フレーム9間に前後方向にレールフレーム12を後付けし、このレールフレーム12の側面にレール部材13をビス止めしておけば、このレール部材13を介して引出し6を前後方向に引き出し可能に設けることができる。
【0013】
図5は、前側縦フレーム8にレールフレーム12の前端側を連結固定した状態の斜視構成図である。
レールフレーム12を前側縦フレーム8と後側縦フレーム9間に後付けするために、レールフレーム12の前端側および後端側にそれぞれ図6に示すようなスライド部材17を差し込み、このスライド部材17とピン24を介して、レールフレーム12を前側縦フレーム8と後側縦フレーム9間に後付け固定することができる。
【0014】
なお、予め、前側縦フレーム8と後側縦フレーム9の対向する面には、それぞれ上下方向に所定間隔で、角孔状の第1係合孔8a,9aと第2係合孔8b,9bと第3係合孔8c,9cを形成させておく。
この第1係合孔8a,9aと第2係合孔8b,9bと第3係合孔8c,9cの何れかを、追加する引出し6に対応して選択し使用するものであり、使用しない係合孔は図示しないキャップ部材等を嵌め込んで蓋しておくことができる。
なお、図5において、8eは、前側縦フレーム8の前面側に覆設される蓋部材である。
【0015】
なお、図7は、レールフレーム12の前端に図6のスライド部材17を差し込んだ状態の斜視構成図であり、図8は、スライド部材17を差し込んだ状態の破断斜視図である。
なお、図9は、レールフレーム12にスライド部材17を差し込む前の平面半断面構成図であり、図10は、スライド部材17を僅かに差し込んだ状態の平面半断面構成図であり、図11は、スライド部材17を差し込み終えた状態の平面半断面構成図である。
また図12は、スライド部材17をレールフレーム12に差し込む前の側面構成図であり、図13は、スライド部材17を僅かに差し込んだ状態の側面構成図であり、図14は、スライド部材17を差し込み終えた状態の側面構成図である。また、図15は、図11のA−A線断面図であり、スライド部材17が差し込まれた状態のA−A断面を示す。
【0016】
先ず、レールフレーム12を説明する。
レールフレーム12は、アルミニウム製の角材で構成されており、上片12aと下片12bの左右両端間が側面片12c,12cで連結されて略長方形状の断面に形成され、左右の側面片12c,12cの上下方向中央部には、内側へ凹ませて前後方向に延びる凹溝14が形成されている。この凹溝14は、左右の側面片12c,12cからそれぞれ内側へ略水平に折り曲げて平行状をなす一対の上ガイド片12dと下ガイド片12e間に形成されたものであり、この上ガイド片12dと下ガイド片12eの内側には断面C字状のネジ用C部12fが一体形成されている。
また、レールフレーム12の前端側および後端側の上片12a,下片12bの左右方向中央部には、先端側から切り欠き状に凹部15が形成されており、この凹部15が形成された先端側から距離をおいてピン孔16が上下に貫通形成されており、ピン孔16は上片12aから下片12bに貫通してピン24を差し込み可能な径に形成されている。
【0017】
次に、スライド部材17を説明する。
スライド部材17は、平行に前後方向に延びる側アーム片18a,18bが左右側に設けられ、この側アーム片18a,18bの一端側は連結片19で連結されて、平面コの字状に形成されている。この連結片19の外側の面は前当接面19aとなっており、内側の面は後当接面19bとなっている。前当接面19aの中央部には、凹み状に前記レールフレーム12の凹部15と整合する位置に凹部19cが形成されており、この凹部19cの左右側には、連結片19から外側へ突出して一対の嵌合突部20a,20bが一体形成されている。また、連結片19の後当接面19bの中央部から上方へ立ち上げて立上片21が形成され、立上片21の上端から水平に前後方向に延びて上アーム片22が形成されており、この上アーム片22の他端側には、上下に貫通してピン24を差し込み可能にピン孔22aが形成されている。また、前記左右側の側アーム片18a,18bの他端側には、外側へ突出して摘み部23a,23bが一体形成されている。
【0018】
このような形状のスライド部材17は、上アーム片22をレールフレーム12の上片12aの下側へ配置させ、左右の側アーム片18a,18bをそれぞれレールフレーム12の左右側の凹溝14,14内に先端側から挿入して、レールフレーム12内へ先端側から差し込んでゆくことができ、凹溝14に沿って前後方向にスライドさせることができるものである。
【0019】
即ち、図6,図9,図12の状態から、レールフレーム12の凹溝14,14内にスライド部材17の側アーム片18a,18bをスライドさせて挿入し、図10,図13のように徐々に差し込んでゆくことができ、やがては図11,図14に示すような状態にスライド部材17をレールフレーム12内に差し込むことができる。
なお、レールフレーム12には、凹溝14の先端に、先端側から前後方向に先端切欠孔14aが形成されており、この先端切欠孔14aの奥側の凹溝14の当接面14bにスライド部材17の連結片19の後当接面19bが当接することで差し込みが停止され、この状態では、レールフレーム12の先端とスライド部材17の嵌合突部20a,20bの先端がほぼ同一面となり、レールフレーム12内にスライド部材17が完全に呑み込まれた状態となる。
このように、レールフレーム12の前端および後端にそれぞれスライド部材17,17を完全に呑み込ませて差し込んでおき、この状態で、フレーム体7を構成する前側縦フレーム8と後側縦フレーム9間に、レールフレーム12を前後方向に配置させることができる。
【0020】
なお、レールフレーム12の前後方向寸法を、前側縦フレーム8と後側縦フレーム9間の距離とほぼ同一寸法に設定しておけば、予めスライド部材17を前端および後端に差し込んだ状態でレールフレーム12を前側縦フレーム8と後側縦フレーム9間に良好に配置させることができ、この状態で、スライド部材17の左右側の摘み部23a,23bがレールフレーム12の凹溝14の外側に僅かに突出状態となっているため、この左右の摘み部23a,23bを指で押さえて手でスライド部材17をレールフレーム12の凹溝14に沿って先端側へスライド移動させることができ、スライド部材17の嵌合突部20a,20bを、例えば図5のように縦フレーム8,9の第2係合孔8b,9bに差し込んで、第2係合孔8b,9bに嵌合突部20a,20bを嵌合させることにより、縦フレーム8,9間にレールフレーム12を固定することができる。
【0021】
なお、前側縦フレーム8および後側縦フレーム9には、図4及び図5に示すように縦方向に突条8d,9dが一体形成されており、この突条8d,9dがレールフレーム12の凹部15およびスライド部材17の凹部19c内に嵌まり込むこととなり、これにより、レールフレーム12の左右方向へのがたつきが防がれるものとなる。
【0022】
なお、さらにスライド部材17を先端側へ押し出して、前側縦フレーム8および後側縦フレーム9にそれぞれスライド部材17,17を押し付けることで、レールフレーム12に形成したピン孔16とスライド部材17のピン孔22aが整合することとなり、この整合状態で、ピン24をピン孔16,22a内に上方より落とし込んで貫通させ、ピン24の頭部24aをレールフレーム12の上片12aに当接させて配置させる。
これにより、ピン24を介してスライド部材17はレールフレーム12に固定されることとなり、この状態では、前端および後端側のスライド部材17,17を介してレールフレーム12が前側縦フレーム8と後側縦フレーム9間に突っ張った状態で強固に固定され、前後方向のがたつきがなくなるものである。
【0023】
なお、レールフレーム12を前側縦フレーム8と後側縦フレーム9間にがたつくことなく強固に突っ張らせて取り付けるために、図9に示すように、レールフレーム12の先端面とピン孔16の中心間の距離aよりも、スライド部材17の前当接面19a(前側縦フレーム8或いは後側縦フレーム9に当接する面)とピン孔22aの中心間の距離bは長く設定されている。即ち、bはaの寸法よりも0.2mm長い寸法に設定されており、この0.2mmの寸法で突っ張り力を発生させることができる。
【0024】
このように、予めレールフレーム12の前端および後端側にそれぞれスライド部材17,17を差し込んでおき、レールフレーム12を前側縦フレーム8と後側縦フレーム9間に配置させて、この状態で、それぞれスライド部材17をスライドさせて、前側縦フレーム8,後側縦フレーム9に形成されている係合孔8b,9b内に嵌合突部20a,20bを嵌合させ、さらに縦フレーム8,9にそれぞれスライド部材17,17を押し付けてピン孔16,22aを整合させ、ピン孔16,22a内に上方よりピン24を落とし込み状に差し込むことで、強固にレールフレーム12を後付けすることができ、工具を用いることなく手作業で良好にレールフレーム12を後付けして、このレールフレーム12に予めレール部材13をビス止めしておけば、既存のキャビネット本体2に引出し6を後発的に追加できるものである。
なお、レールフレーム12を取り外す際には、ピン24を上方へ抜き取れば良く、作業は簡単であり、容易にレールフレーム12を取り外すことができる。
【符号の説明】
【0025】
1 キッチンキャビネット
2 キャビネット本体
6 引出し
7 フレーム体
8 前側縦フレーム
9 後側縦フレーム
8a,9a 第1係合孔
8b,9b 第2係合孔
8c,9c 第3係合孔
8d,9d 突条
12 レールフレーム
12a 上片
12b 下片
12c 側面片
12d 上ガイド片
12e 下ガイド片
13 レール部材
14 凹溝
14a 先端切欠孔
14b 当接面
15 凹部
16 ピン孔
17 スライド部材
18a,18b 側アーム片
19 連結片
19a 前当接面
19b 後当接面
19c 凹部
20a,20b 嵌合突部
22 上アーム片
22a ピン孔
23a,23b 摘み部
24 ピン
24a 頭部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
既存のキャビネットに引出しを追加する際に、キャビネットの骨組みを構成するフレーム体に引出し用レールフレームを後付けする方法であって、
前記レールフレームの前後端にそれぞれスライド部材をスライド可能に差し込んでおき、
前記フレーム体を構成する前側縦フレームと後側縦フレームの所定高さ位置にそれぞれ開口させた係合孔に、前記各スライド部材をスライドさせて、該スライド部材の先端の嵌合突部を嵌合させることにより前記前側縦フレームと後側縦フレーム間に前記レールフレームを前後方向に固定する
ことを特徴とする引出し用レールフレームの後付け方法。
【請求項2】
前記各スライド部材を前記前側縦フレームと後側縦フレームに押し付けて、前記前側縦フレームと後側縦フレーム間に前記レールフレームを突っ張らせる
ことを特徴とする請求項1に記載の引出し用レールフレームの後付け方法。
【請求項3】
前記レールフレームに形成したピン孔と前記スライド部材に形成したピン孔を整合させ、各ピン孔内にピンを差し込んで前記スライド部材を前記レールフレームに固定する
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の引出し用レールフレームの後付け方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−104174(P2011−104174A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−263333(P2009−263333)
【出願日】平成21年11月18日(2009.11.18)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】