説明

引出及びシステムキッチン

【課題】 底板に凹部を設けたとしても、剛性の低下を抑制することができる引出、及びこれを用いたシステムキッチンを提供する。
【解決手段】
本発明の引出10は、前方に開口を有するキャビネット内に前後方向に出し入れ自在に収納されるものであり、後端部を前方側に切り欠いて形成された、前記キャビネット内の障害物を回避する凹部13を有する底板12と、底板12の前端部に立設された前面板11と、凹部13左右両側の側縁部13aに沿って底板12に立設された一対の凹部側方板16と、凹部側方板16と前面板11の背面11aとを連結する連結手段と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キッチンキャビネット等に用いられる引出、及びこれを用いたシステムキッチンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
システムキッチン等に用いられるキャビネットには、前方に開口を有しその開口から当該キャビネット内に出し入れ自在に収納される引出を有するものがある。
このような引出は、例えば、上部にシンクを有するキャビネットにも適用される場合がある。上部にシンクを有するキャビネットの内部には、通常、排水トラップや生ゴミ等を粉砕するためのディスポーザ等が設置されている。このため、このようなキャビネットに適用される引出には、排水トラップやディスポーザといった障害物を避けるための凹部が当該引出の底板後端部を切り欠いて設けられている。前記引出は、この凹部によって、排水トラップやディスポーザといった障害物に接触するのを回避しつつキャビネット内に出し入れ自在とされていた(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2004−113481号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記底板に設けられる凹部は、当該底板を切り欠いて設けられるため、底板の剛性を低下させて、引出全体としての剛性を低下させてしまう場合がある。
上記引出は、通常、キャビネット左右内側面に設けられたスライドレール等によりその左右側面が支持されてキャビネット内に出し入れ自在とされている。さらにシンクを有するキャビネットは、左右幅が比較的長いため、収納される引出及びその底板もその左右幅が比較的長いものとなる。このため、上記のように剛性が低下すると、比較的重い収納物を載置したときに、底板を含む引出全体が、左右方向に大きく撓み、当該引出のスムーズな出し入れが阻害されたり、前記スライドレールから当該引出が脱落するといった問題が生じるおそれがあった。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、底板に凹部を設けたとしても、剛性の低下を抑制することができる引出、及びこれを用いたシステムキッチンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明は、前方に開口を有するキャビネット内に前後方向に出し入れ自在に収納される引出であって、後端部を前方側に切り欠いて形成された、前記キャビネット内の障害物を回避する凹部を有する底板と、前記底板の前端部に立設された前面板と、前記凹部左右両側の側縁部に沿って前記底板に立設された一対の凹部側方板と、前記凹部側方板と前記前面板の背面とを連結する連結手段と、を備えていることを特徴としている。
【0007】
上記のように構成された引出によれば、凹部左右両側の側縁部に沿って立設された一対の凹部側方板と、前面板の背面とを連結する連結手段を備えているので、底板及びこの底板に立設された一対の凹部側方板がそれぞれ前面板に固定される。この前面板に固定された一対の凹部側方板によって、底板の前面板に対する上下方向への揺動が規制され、凹部が形成されることによる底板の剛性低下を防止することができる。この結果、引出全体としての剛性の低下を抑制することができる。
【0008】
上記引出において、前記連結手段は、前記一対の凹部側方板それぞれを前記凹部前方側の前縁部よりも前方へ延ばすことで形成されその前端部が前記前面板の背面に連結された延長部により構成されていることが好ましい。
【0009】
この場合、連結手段が、一対の凹部側方板を前面板まで延ばしその前端部を前面板の背面に連結した延長部によって構成されているので、連結手段を別部材として設ける必要がなく、簡易な構成で一対の凹部側方板と前面板とを連結することができる。
【0010】
また、前記連結手段は、前記底板に立設され、前記一対の凹部側方板を互いに繋ぐ第一連結板と、前記底板に立設され、前記第一連結板と前記前面板の背面とを連結する第二連結板とによって構成されているものであってもよい。
この場合、連結手段を第一連結板と第二連結板とによって構成することで、一対の凹部側方板と前面板とを連結させる上での自由度を高めることができる。
【0011】
また、前記連結手段は、前記一対の凹部側方板及び前記前面板に固定され両者を連結する箱体によって構成されていてもよい。
連結手段を箱体によって構成することで、底板及び一対の凹部側方板の前面板に対する上下方向への揺動がより強固に規制され、底板の剛性低下をより効果的に防止することができる。
【0012】
また、本発明は、上面にシンクを有するキャビネットと、前記キャビネットの内部に、その前方開口部から前後方向に出し入れ自在に収納された上記引出と、を備えていることを特徴としている。
上記構成のシステムキッチンによれば、上述の引出を備えているので、引出全体としての剛性の低下が抑制されたものとすることができる。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明の引出、及びシステムキッチンによれば、底板に凹部を設けたとしても、剛性の低下を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に、本発明の好ましい実施形態について添付図面を参照しながら説明する。図1は、システムキッチンを示す斜視図である。
このシステムキッチン1は、上面にシンク2が設けられた第一キャビネット3と、上面に加熱器具4が設けられた第二キャビネット5と、両キャビネット3、5の間に設置された第三キャビネット6とを備えている。
【0015】
第一キャビネット3は、前方に開口3aを有しており、本発明の第一の実施形態に係る引出10が、その前面板11によって開口3aを塞ぐように当該第一キャビネット3の内部に収納されている。第一キャビネット3の内部左右側面には、引出10を開口3aから前後方向移動自在に支持するスライドレール(図示せず)が設けられており、引出10は、第一キャビネット3の内部に前後方向に出し入れ自在に収納されている。
また、第一キャビネット3の内部には、シンク2の排水口から下方に突設された排水トラップ2aと、排水トラップ2aの下端からさらに下方に延びる排水管2bとが配置されている。なお、図例では、排水トラップ2a及び排水管2bが配置された態様を示したが、例えば、シンク2の排水口下方には、生ゴミを粉砕するためのディスポーザ等が設置される場合もある。
引出10は、上記排水トラップ2aや排水管2bといった障害物に接触するのを回避しつつ第一キャビネット3内に出し入れ自在とするために、当該引出10の底板12の後端部12aを切り欠いた凹部13が形成されている。
【0016】
図2は、本実施形態の引出10を示す斜視図である。
図2中、引出10は、底板12と、底板12の前端部及び両側端部にそれぞれ立設された前面板11及び側面板14と、底板12の後端部12aに立設された背面板15とを備えている。
底板12には、上述のように、凹部13が形成されており、引出10は、さらに、凹部13左右両側の側縁部13aに沿って底板12に立設された一対の凹部側方板16と、凹部13の前方側の前縁部13bに沿って底板12に立設された凹部前方板17とを備えている。
【0017】
凹部前方板17は、その両端部が一対の凹部側方板16の側面に連結されており、一対の凹部側方板16を互いに繋いでいる。
なお、凹部13は、排水トラップ2aや排水管2bあるいはディスポーザ等の障害物を回避可能な大きさで形成されており、凹部13に沿って立設される一対の凹部側方板16及び凹部前方板17も前記障害物を回避可能に設けられている。
【0018】
また、一対の凹部側方板16は、それぞれ、前端部を凹部13の前縁部13bよりも前方へ延ばすことで形成された延長部16aを有している。延長部16aの前端部は、前面板11の背面11aに連結されており、この延長部16aは、一対の凹部側方板16と前面板11の背面11aとを連結する連結手段を構成している。
【0019】
上記のように構成された引出10によれば、凹部13左右両側の側縁部13aに沿って立設された一対の凹部側方板16と、前面板11の背面11aとを連結する延長部16aとを備えているので、底板12及びこの底板12に立設された一対の凹部側方板16がそれぞれ前面板11に固定される。この前面板11に固定された一対の凹部側方板16によって、底板12の前面板11に対する上下方向への揺動が規制され、凹部13が形成されることによる底板12の剛性低下を防止することができる。この結果、引出10全体としての剛性の低下を抑制することができる。
【0020】
また本実施形態では、一対の凹部側方板16を前面板11まで延ばしその前端面を前面板11の背面11aに連結した延長部16aによって連結手段を構成したので、一対の凹部側方板16と前面板11とを連結するために別部材を設ける必要がなく、簡易な構成で一対の凹部側方板16と前面板11とを連結することができる。
【0021】
図3は、本発明の第二の実施形態に係る引出の斜視図である。本実施形態と上記第一の実施形態との相違点は、一対の凹部側方板16が、それぞれ、凹部13左右両側の側縁部13aの範囲で底板12に立設されており延長部16aを有していない点、及び、一対の凹部側方板16を互いに繋いでいる凹部前方板17が、連結板18によって前面板11の背面11aに連結されている点である。その他の点については、第一の実施形態と同様である。
【0022】
本実施形態において、一対の凹部側方板16は、第一連結板としての凹部前方板17と、第二連結板としての連結板18とを介して、前面板11の背面11aに連結されており、凹部前方板17と、連結板18とによって連結手段を構成している。
本実施形態では、凹部前方板17と、連結板18とによって一対の凹部側方板16を前面板11に連結しているので、一対の凹部側方板16と前面板11とを連結させる上での自由度が高い。つまり、本実施形態では、連結板18を立設する位置を、ある程度左右方向に幅広く設定することが可能であり、その自由度が高い。
【0023】
一対の凹部側方板16と前面板11の背面11aとを連結するには、連結板18や、延長部16aといった連結するための部材を、引出10の収納空間を仕切るように配置する必要があるが、本実施形態では、立設位置が左右方向に幅広く設定可能な自由度の高い連結板18のみが収納空間を仕切っているので、より収納空間を有効に利用することができる。
【0024】
図4は、本発明の第三の実施形態に係る引出の斜視図である。本実施形態と上記第一の実施形態との相違点は、一対の凹部側方板16が、それぞれ、凹部13の側縁部13aの範囲で底板12に立設されており延長部16aを有していない点、及び、一対の凹部側方板16及び凹部前方板17が、これらと前面板11との間に介在する箱体20によって、前面板11の背面11aに連結されている点である。その他の点については、第一の実施形態と同様である。
【0025】
箱体20は、上面に開口部を有する、ほぼ直方体に形成された部材であり、内部は小物類等を収納するための収納空間とされている。箱体20は、その背面20aに一対の凹部側方板16及び凹部前方板17が固定され、前面20bに前面板11の背面11aが固定されている。これによって、箱体20は、一対の凹部側方板16と前面板11とを連結する連結手段を構成している。
【0026】
本実施形態では、箱体20が、一対の凹部側方板16と、前面板11とを連結しているので、底板12及び一対の凹部側方板16の前面板11に対する上下方向への揺動がより強固に規制され、底板12の剛性低下をより効果的に防止することができる。この結果、引出10全体の剛性低下をより効果的に防止することができる。
また、本実施形態では、一対の凹部側方板16が、これらを繋ぐ凹部前方板17とともに箱体20に連結固定されているので、一対の凹部側方板16を箱体20に対して強固に固定することができる。
【0027】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上記第一の実施形態では、一対の凹部側方板16を互いに繋ぐ凹部前方板17を設けたが、一対の凹部側方板16を延長部16aによって前面板11に連結すれば、底板12の剛性を高めることができるので、例えば、図5に示すように、凹部前方板17を省略する構成とすることもできる。
また、図5に示すように、延長部16aの前端部を繋ぎつつ延長部16aとともに前面板11の背面11aに固定される固定板21を設けてもよい。この固定板21によって、一対の凹部側方板16の延長部16aをより強固に前面板11に連結固定することができる。
さらに、図6に示すように、底板12の凹部13の前縁部13bを固定板21の背面21aと面一とすることもできる。この場合第一キャビネット3内部に配置される障害物が前後方向に大きいものである場合であっても確実に回避できる。
【0028】
また、図7に示すように、凹部前方板17及び上記固定板21の両方を設けてもよい。この場合、一対の凹部側方板16は、凹部前方板17及び上記固定板21によって互いに繋がれることとなり、底板12及び一対の凹部側方板16の前面板11に対する上下方向への揺動がより強固に規制される。この結果、底板12全体の剛性低下をより効果的に防止することができる。
【0029】
また、上記第二の実施形態では、箱体20の背面20aに一対の凹部側方板16を固定し、前面20bに前面板11を固定することで、一対の凹部側方板16と前面板11とを連結したが、図8に示すように、一対の凹部側方板16は、箱体20の側面20cに固定してもよいし、図9に示すように、一対の凹部側方板16と、箱体20とを一体的に形成してもよい。
【0030】
また、連結手段として、図10に示すように、前端部が凹部前方板17によって繋がれた一対の凹部側方板16それぞれを前面板11の背面11aに連結するL型の金具22を用いることもできるし、図11、図12に示すように、連結手段としての棒状部材23を一対の凹部側方板16の前端部又は側面部に固定し、この棒状部材23の前端部を前面板11の背面11aに固定することで、一対の凹部側方板16それぞれを前面板11に連結することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】システムキッチンを示す斜視図である。
【図2】本発明の第一の実施形態に係る引出を示す斜視図である。
【図3】本発明の第二の実施形態に係る引出の斜視図である。
【図4】本発明の第三の実施形態に係る引出の斜視図である。
【図5】第一の実施形態に係る引出の他の態様を示す斜視図である。
【図6】第一の実施形態に係る引出の図5に示すものとは異なる他の態様を示す斜視図である。
【図7】第一の実施形態に係る引出の図5、図6に示すものとは異なる他の態様を示す斜視図である。
【図8】第三の実施形態に係る引出の他の態様を示す斜視図である。
【図9】第三の実施形態に係る引出の図8とは異なる他の態様を示す斜視図である。
【図10】第三の実施形態に係る引出の図8とは異なる他の態様を示す斜視図である。
【図11】一対の凹部側方板と前面板とを金具で連結した引出を示す斜視図である。
【図12】一対の凹部側方板と前面板とを棒状部材で連結した引出を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0032】
1 システムキッチン
3 第一キャビネット
3a 開口
10 引出
11 前面板
11a 背面
12 底板
12a 後端部
13 凹部
13a 側縁部
13b 前縁部
14 側面板
16 凹部側方板
16a 延長部(連結手段)
17 凹部前方板(第一連結板)
18 連結板(第二連結板)
20 箱体
22 金具(連結手段)
23 棒状部材(連結手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前方に開口を有するキャビネット内に前後方向に出し入れ自在に収納される引出であって、
後端部を前方側に切り欠いて形成された、前記キャビネット内の障害物を回避する凹部を有する底板と、
前記底板の前端部に立設された前面板と、
前記凹部左右両側の側縁部に沿って前記底板に立設された一対の凹部側方板と、
前記凹部側方板と前記前面板の背面とを連結する連結手段と、を備えていることを特徴とする引出。
【請求項2】
前記連結手段は、前記一対の凹部側方板それぞれを前記凹部前方側の前縁部よりも前方へ延ばすことで形成されその前端部が前記前面板の背面に連結された延長部により構成されている請求項1に記載の引出。
【請求項3】
前記連結手段は、前記底板に立設され、前記一対の凹部側方板を互いに繋ぐ第一連結板と、
前記底板に立設され、前記第一連結板と前記前面板の背面とを連結する第二連結板とによって構成されている請求項1に記載の引出。
【請求項4】
前記連結手段は、前記一対の凹部側方板及び前記前面板に固定され両者を連結する箱体によって構成されている請求項1に記載の引出。
【請求項5】
上面にシンクを有するキャビネットと、
前記キャビネットの内部に、その前方開口部から前後方向に出し入れ自在に収納された請求項1〜4のいずれか一項に記載の引出と、
を備えていることを特徴とするシステムキッチン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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