説明

引出装置

【課題】既存の引き出しに耐震ラッチを取り付けることができる引出装置を提供する。
【解決手段】キャビネット2の側板部5と引き出し体3の側板12との間のインナーレール18の上下の隙間Aに耐震ラッチ本体20およびラッチ受け具51を取り付ける。キャビネット2と引き出し体3との間に隙間Aが存在する既存の引出装置9であれば、引出装置9を加工せずに、キャビネット2に耐震ラッチ本体20を後付けができ、引き出し体3にラッチ受け具51を後付けでできる。容易に耐震機能を施した引出装置9に変更できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャビネットに引き出し可能に引き出し体が挿入された引出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の引出装置に取り付けられているロック装置としては、引き出し体の一方の側板の外側面に突起が設けられており、この突起が設けられている引き出し体の側板と対向するキャビネットの内側面の上側に、所定の振動で回動するように吊り下げられたフックが取り付けられている。そして、地震などによる所定の振動が作用した場合に、フックが回動して引き出し体の突起に引っ掛かって、この引き出し体の移動が規制される。
【0003】
また、このロック装置の突起が取り付けられている引き出しの側板には、この側板の上下方向の中央に引き出し体の移動方向に沿った断面凹溝状の凹部が形成されており、この凹部内に突起が取り付けられた構成が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平10−248659号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したように、上記引出装置では、引き出し体の側板の外側面に設けられている凹部内に突起が設けられているため、この突起やフックを取り付けるスペースを問題とすることなく、これら突起やフックを取り付けることができる。ところが、この種の凹部を有さない引き出しに突起を取り付ける場合には、この突起を取り付けるスペースを確保しなければならず、この突起の取り付けが容易ではない。
【0005】
また、上記ロック装置は、振動がない通常の引き出し時に突起とフックが上下に位置しており、これら突起とフックとが水平に重ならないようにしているため、これら突起およびフックを引き出し体およびキャビネットに取り付けたときのロック装置の水平方向の厚さを薄くできる。ところが、このロック装置の機構上、フックを水平方向に向けて突出させる場合には、このフックと、このフックが係合する突起とが水平方向において重なり合うから、ロック装置全体の水平方向の厚さを薄くすることが容易でない。したがって、このロック装置を引き出し体に取り付けることが容易でないという問題を有している。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みてなされたもので、固定側レールにて形成される空間に容易に取り付けることができる引出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の引出装置は、固定側レールを有するキャビネットと、このキャビネットに挿入した状態で前記固定側レールに沿って案内される案内側レールを有し前記キャビネットに引き出し可能に挿入される引き出し体と、前記キャビネットの内側面に取り付けられ振動感知時に前記キャビネットの内側方向に突出あるいはこの突出した状態が固定されるラッチを有するラッチ本体と、前記引き出し体に取り付けられ前記ラッチ本体の振動感知時に前記ラッチが係合して前記引き出し体の移動を停止させるラッチ受けとを具備し、前記ラッチ本体は、前記固定側レールから上下方向のいずれかの方向に向けて離間した位置に取り付けられているものである。
【0008】
請求項2記載の引出装置は、請求項1記載の引出装置において、引き出し体は、互いに対向する一対の側板を有し、ラッチ受けは、案内側レールから上下方向のいずれかの方向に向けて離間した位置であるとともに、前記キャビネットに前記引き出し体を挿入させた状態でラッチ本体に対向する前記側板の外側面に取り付けられているものである。
【0009】
請求項3記載の引出装置は、請求項1記載の引出装置において、引き出し体は、キャビネットを閉塞する前板を有し、ラッチ受けは、前記前板の裏面に取り付けられているものである。
【0010】
請求項4記載の引出装置は、請求項1または2記載の引出装置において、ラッチ受けは、引き出し体の後端部に取り付けられているものである。
【0011】
請求項5記載の引出装置は、請求項1記載の引出装置において、引き出し体は、この引き出し体の底面を形成する底板を有し、ラッチ受けは、前記引き出し体の底板下面に取り付けられる取付基部と、ラッチに係合する係合部とを有するものである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の引出装置によれば、固定側レールの上下方向のいずれかの方向に形成される空間を利用して、キャビネットの内側面にラッチ本体を取り付けることができるから、引き出し体やキャビネットを加工することなく、振動感知時にキャビネットの内側方向に突出あるいはこの突出した状態が固定されるラッチを有するラッチ本体を、引き出し体の内側面に取り付けることができる。また、固定側レールの上下方向のいずれかの方向に隙間が形成されるキャビネットであれば、ラッチ本体を後付けで取り付けることができるので、容易に耐振機能を有する引出装置にできる。
【0013】
請求項2記載の引出装置によれば、案内側レールから上下方向のいずれかの方向に向けて離間した位置であるとともに、キャビネットに引き出し体を収容させた状態でラッチ本体に対向する側板の外側面にラッチ受けを取り付けたことにより、このラッチ受けを後付けで引き出し体に取り付けできるので、容易に耐振機能を有する引出装置にできる。
【0014】
請求項3記載の引出装置によれば、引き出し体の前板の裏面にラッチ受けを取り付けたことにより、引き出し体の側板の高さが低い場合や、この引き出し体に側板が存在しない場合など、この引き出し体の側板にラッチ受けを取り付けることができない場合であっても、この引き出し体にラッチ受けを取り付けることができる。
【0015】
請求項4記載の引出装置によれば、ラッチ受けを引き出し体の後端部に取り付けたことにより、引き出し体に側板や前板が存在しない場合などであっても、この引き出し体にラッチ受けを取り付けることができる。
【0016】
請求項5記載の引出装置によれば、ラッチ受けが引き出し体の底板下面に取り付けられた取付基部を有するので、引き出し体の側板にラッチ受けを取り付けることができない場合であっても、この引き出し体にラッチ受けを取り付けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の引出装置の第1の実施の形態の構成を図1ないし図5を参照して説明する。
【0018】
図1ないし図5において、1は移動部材停止装置としての耐震ラッチである。この耐震ラッチ1は、各種の家具、例えば事務用家具やキッチンなどの引出装置9に取り付けられている。そして、この引出装置9は、固定部材としての家具本体であるキャビネット2を備えており、このキャビネット2に移動部材としての引き出し体3が引き出し可能に挿入されて取り付けられている。
【0019】
さらに、この耐震ラッチ1は、振動時のキャビネット2に対する引き出し体3の移動を停止させる。具体的に、この耐震ラッチ1は、地震などの振動を感知して、この振動感知時に引き出し体3が振動によってキャビネット2内から引き出されて飛び出ないようにする。
【0020】
ここで、このキャビネット2は、前面が開口した箱状に形成されており、地板としての底面を構成する矩形平板状の底板部4を備えている。そして、この底板部4の両側縁には、矩形平板状の一対の側板部5が所定の間隙を介して立設されて取り付けられている。また、これら一対の側板部5上には、矩形平板状の天板部6が取り付けられている。さらに、これら底板部4、側板部5および天板部6の背面側には、矩形平板状の背板部7が取り付けられている。この背板部7は、底板部4、側板部5および天板部6の背面側を閉塞している。したがって、これら底板部4、側板部5および天板部6の前面側は、開口されて開口部8とされており、この開口部8からキャビネット2内に上下2つの引き出し体3が引き出し可能に収容されている。
【0021】
そして、この引き出し体3は、上面が開口した箱状に形成されており、この引き出し体3の底面を形成する矩形平板状の底板11の両側に矩形平板状の一対の側板12が所定の間隙を介して互いに対向した状態で立設されて取り付けられている。これら一対の側板12の後側には、矩形平板状の背板13が取り付けられている。この背板13は、一対の側板12および底板11の奥側を閉塞している。
【0022】
さらに、これら一対の側板12の前側には、引き出し体3をキャビネット2の開口部8内に収容させた際にこの開口部8の少なくとも一部を閉塞する矩形平板状の前板14が取り付けられている。この前板14は、一対の側板12および底板11の前側を閉塞している。さらに、この前板14は、一対の側板12および底板11それぞれの前端縁に取り付けられ、これら一対の側板12および底板11の前端縁よりも外側に向けて突出している。
【0023】
すなわち、この前板14は、引き出し体3をキャビネット2の開口部8に収容させた際に、この開口部8の周縁に係止されるように構成されている。さらに、この前板14の前側に位置する表面には、引き出し体3をキャビネット2から引き出す際の把持部となる取手15が取り付けられている。さらに、この引き出し体3の上面には、この引き出し体3に所望の収容物を収容させる開口部16が形成されている。
【0024】
ここで、この引き出し体3の各側板12の外側面の下端部には、この引き出し体3の引き出し方向である水平方向に沿って移動部材としての案内側レールである一対のアウトレール17がそれぞれ取り付けられている。さらに、キャビネット2の両側板部5の内側面には、引き出し体3の両側板12に取り付けられているアウトレール17に摺動可能に係合して案内される固定側レールとしてのインナーレール18がそれぞれ取り付けられている。
【0025】
これらインナーレール18は、キャビネット2の各側板部5の内側面に長手方向を水平方向に沿わせた状態で取り付けられている。さらに、これらインナーレール18は、キャビネット2の開口部8内に引き出し体3を引き出し可能に挿入して収容させた際に、各アウトレール17に摺動可能に係合して、この引き出し体3の引き出しおよび押し入れ時にアウトレール17に沿って案内される。そして、これらアウトレール17およびインナーレール18によって、引き出し体3のキャビネット2からの引き出しおよび押し入れを案内する案内部材としての引き出し用のレールであるスライドレール19が構成される。
【0026】
一方、耐震ラッチ1は、キャビネット2の一対の側板12のうち少なくとも一方の内側面上に取り付けられたラッチ本体としての耐震ラッチ本体20を有している。この耐震ラッチ本体20は、側板12に取り付けられているアウトレール17の上側であるとともに、この側板12の前端縁に沿って、このキャビネット2の開口部16寄りに取り付けられている。さらに、この耐震ラッチ本体20は、固定部材としてのケース体21を備えている。
【0027】
そして、このケース体21は、このケース体21の前端面をキャビネット2の一方の側板部5の内側面の前端縁に揃えた状態で、この側板部5の内側面にねじ止め固定されている。さらに、このケース体21は、キャビネット2の一方の側板部5に取り付けられているインナーレール18と、この側板部5の上端縁との間に取り付けられている。すなわち、このケース体21は、キャビネット2の一方の側板部5に取り付けられているインナーレール18から、キャビネット2に対する引き出し体3の引き出し方向に直交する方向である上方に向けて離間させた位置に取り付けられている。
【0028】
さらに、このケース体21の水平方向に沿った厚さ方向の一側面には、側面視矩形状であり断面凹状の収容凹部22が形成されている。このケース体21の幅方向に沿った他側である下側に位置する収容凹部22の下側面には、このケース体21の上方に向けて突出した矩形台状の取付台部23が一体的に設けられている。この取付台部23は、収容凹部22の下側面の幅方向に沿って、この収容凹部22の厚さ方向に亘って設けられている。また、この取付台部23は、収容凹部22の長手方向の中央部よりも、この収容凹部22の長手方向の一端側である後端寄りに設けられている。さらに、この取付台部23の上側面の中央部には、ケース体21の幅方向に沿って開口した円形状の軸支孔24が設けられている。この軸支孔24は、上面視でケース体21の取付台部23の中央部に位置するように設けられている。
【0029】
また、このケース体21の長手方向に沿った他端側である前端側の上端面には、上方に突出した突出片部25が設けられている。この突出片部25には、この突出片部25の上端面からケース体21の下端面までに亘って貫通した貫通孔としての取付孔である軸止孔26が設けられている。この軸止孔26は、ケース体21の上端面から下端面までに亘って、このケース体21の幅方向に沿って貫通している。よって、この軸止孔26は、ケース体21の収容凹部22内にも貫通している。すなわち、この軸止孔26は、ケース体21の収容凹部22内に位置する、この収容凹部22の上側面および下側面のそれぞれに貫通している。
【0030】
ここで、これら軸止孔26のうち、ケース体21の収容凹部22の下面側に設けた軸止孔26の収容凹部22側の開口縁には、一部に傾斜したテーパ面を有する円環状の係合突部27が設けられている。この係合突部27は、後述する付勢機構46の一部を構成する。そして、この係合突部27は、収容凹部22の下面上であるとともに、この収容凹部22の下面側の軸止孔26の同心状に設けられている。
【0031】
一方、ケース体21の収容凹部22内には、地震などの振動で姿勢変化する錘体である感振体としての感震体31が揺動可能に収容されて取り付けられている。この感震体31は、上下方向に沿った中央よりも上方に重心が位置する側面視略三角形平板状の錘本体32を備えている。この錘本体32は、上側から下側に向けて徐々に縮径した形状に形成されている。さらに、この錘本体32の長手方向における両側には、この錘本体32の上端側から上下方向の中央部に亘って設けられた垂直面33aと、この垂直面33aの下側に下端側に向けて内側に傾斜した傾斜面33bとによって構成された作用面33がそれぞれ形成されている。
【0032】
そして、この錘本体32の下端面の中央部には、この錘本体32の下方に向けて垂直に突出した支持部としての細長円柱状の軸体34が一体的に突設されている。この軸体34は、錘本体32がケース体21の収容凹部22内で揺動する際の中心軸となる。さらに、この軸体34は、ケース体21の収容凹部22に感震体31を収容させた状態で、この収容凹部22の軸支孔24に揺動可能に挿入されて、この感震体31を収容凹部22内に取り付けさせる。
【0033】
よって、感震体31は、この感震体31の軸体34をケース体21の軸支孔24に挿入させた状態で、このケース体21の長手方向、すなわち引き出し体3の移動方向に沿って姿勢変化するように、このケース体21の収容凹部22内に揺動可能に収容されている。
【0034】
一方、ケース体21の収容凹部22には、側面視細長矩形状の係止手段としての係止体であるラッチ体41が回動可能に取り付けられて収容されている。このラッチ体41は、ケース体21の収容凹部22内に揺動可能に収容されている感震体31に対して、この感震体31が揺動する方向に直交する位置、すなわちケース体21の厚さ方向に沿った位置に並設されたラッチである。
【0035】
さらに、このラッチ体41の長手方向の一端である先端部には、ケース体21の収容凹部22の一端面に対応した係合面42が形成されている。また、このラッチ体41の長手方向における他端である後端部には、このラッチ体41の上下方向である幅方向に向けて貫通した軸挿通孔43が設けられている。この軸挿通孔43は、ラッチ体41の先端側を水平方向、すなわちこのラッチ体41の厚さ方向に向けて回動可能にする。すなわち、このラッチ体41は、このラッチ体41の回転軸方向と感震体31の揺動方向とが直交するように構成されている。
【0036】
よって、この軸挿通孔43には、この軸挿通孔43の上端および下端のそれぞれをケース体21の軸止孔26に連通させた状態で、回転軸となる細長棒状のピン体44が周方向に摺動可能に挿通されている。このピン体44は、ラッチ体41の軸挿通孔43に摺動可能に挿通された状態で、このピン体44の上端および下端のそれぞれがケース体21の軸止孔26に挿入されて固定されている。したがって、このピン体44は、ラッチ体41の先端側の係合面42をケース体21の収容凹部22内から水平方向に突出するように、このラッチ体41を回動可能にケース体21の収容凹部22に軸支して軸止めさせる。
【0037】
また、このラッチ体41の幅方向である鉛直方向における下面には、ケース体21の係合突部27のテーパ面に対応したテーパ面を一部に有する被係合突部45が突設されている。この被係合突部45は、ラッチ体41の下面へと貫通した軸挿通孔43の開口縁に同心状に設けられている。すなわち、この被係合突部45は、ラッチ体41の自重による作用によってケース体21の係合突部27を摺接して、このケース体21の収容凹部22内にラッチ体41を収容させる、いわゆるグラビティヒンジを構成する。
【0038】
ここで、この被係合突部45は、ラッチ体41をケース体21の収容凹部22内側に付勢する付勢手段としての付勢機構46の一部を構成する。この付勢機構46は、ラッチ体41の係合面42が突出方向の反対側である、このラッチ体41の係合面42をケース体21の収容凹部22内に収容させる方向に向けて、このラッチ体41を付勢するように構成されている。なお、この付勢機構46としては、ラッチ体41をケース体21の収容凹部22の内側に付勢するコイルスプリングなどであってもよい。
【0039】
また、このラッチ体41の厚さ方向における一側面である内側面には、このラッチ体41の上下方向に向けて貫通した凹弧状の当接凹部としての揺動受部48が設けられている。この揺動受部48は、感震体31の長手方向に沿った揺動によって、ラッチ体41の先端側をケース体21の収容凹部22内から突出させる。言い換えると、この揺動受部48は、感震体31の長手方向に沿った揺動によって、ラッチ体41の先端側をキャビネット2の内側方向へと突出させる。さらに、この揺動受部48の幅方向に沿った両側縁には、感震体31の作用面33に対応して傾斜した略円弧状の傾斜面49がそれぞれ設けられている。
【0040】
これら傾斜面49は、引き出し体3の移動方向である、ラッチ体41の長手方向に対して傾斜している。すなわち、これら傾斜面49は、感震体31が長手方向に沿って揺動した際に、この感震体31のいずれか一方の作用面33が当接して、この感震体31の作用面33の当接によってラッチ体41の係合面42をケース体21の収容凹部22内よりも外側に突出させる。さらに、これら傾斜面49は、引き出し体3の移動方向に対して傾斜しているとともに、この引き出し体3が取り付けられるキャビネット2の底板部4に対して垂直な面である。
【0041】
一方、引き出し体3の一対の側板部5のうち少なくとも一方の外側面には、被係止体としての移動部材であるラッチ受け具51が取り付けられている。このラッチ受け具51は、震動感知時に耐震ラッチ本体20のラッチ体41が係合するラッチ受けとしての係止体受け具である。さらに、このラッチ受け具51は、キャビネット2の耐震ラッチ本体20が取り付けられている側の側板部5に対向する引き出し体3の一方の側板12の外側面に取り付けられている。
【0042】
具体的に、このラッチ受け具51は、長手方向の一端部である前端部を引き出し体3の前板14の裏面に当接した状態で、この引き出し体3の一方の側板12の外側面上の上端寄りの位置にねじ止め固定されている。すなわち、このラッチ受け具51は、引き出し体3の一方の側板12の下端縁に取り付けられているアウトレール17から上方に向けて離間した位置に取り付けられている。言い換えると、このラッチ受け具51は、キャビネット2に引き出し体3を引き出し可能に挿入させて収容させた状態で、このキャビネット2の側板部5に取り付けられている耐震ラッチ本体20に対向して対峙する位置に取り付けられている。
【0043】
そして、このラッチ受け具51は、中央が開口した矩形平板状の係合部材としての被係止部材52を備えている。この被係止部材52は、長手方向を引き出し体3の移動方向である引き出し方向に沿わせた状態で、この引き出し体3に取り付けられている。さらに、この被係止部材52の中央部には、この被係止部材52の厚さ方向に向けて貫通した被係止凹部53が形成されている。この被係止凹部53は、ラッチ体41の突出方向に向けて開口している。また、この被係止凹部53は略矩形状に開口しており、この被係止凹部53の先端側である開口後縁の内側面が、この被係止凹部53の幅方向に平行な係合部として直線状の係止縁部54とされている。
【0044】
よって、この係止縁部54は、ラッチ体41の係合面42が係合可能な形状に形成されている。すなわち、この係止縁部54は、ラッチ体41の係合面42よりも若干大きな幅寸法を有している。したがって、この係止縁部54には、耐震ラッチ本体20の感震体31の姿勢変化による、この感震体31の押圧によって回転して突出したラッチ体41の係合面42が係合して、震動感知時に引き出し体3がキャビネット2の開口部8から飛び出さないようにする。
【0045】
次に、上記第1の実施の形態の作用を説明する。
【0046】
非震動感知時においては、図4に示すように、耐震ラッチ本体20の感震体31の軸体34がケース体21の軸支孔24に挿入された状態で、このケース体21の取付台部23上に感震体31が載置された常体姿勢となっている。
【0047】
したがって、ケース体21の係合突部27とラッチ体41の被係合突部45との間にラッチ体41の自重によって作用する力による、ケース体21の収容凹部22内へのラッチ体41の付勢によって、このラッチ体41の係合面42がケース体21の収容凹部22より外側に突出しない状態で、この収容凹部22内にラッチ体41が収容されている。
【0048】
このため、キャビネット2から引き出し体3を引き出す際に、ラッチ受け具51の係止縁部54に耐震ラッチ本体20のラッチ体41の係合面42が係合しないので、このキャビネット2から引き出し体3を自由に引き出したり押し入れたりすることができる。
【0049】
次いで、キャビネット2に引き出し体3を収容した状態で地震が起きると、図5に示すように、震動時に耐震ラッチ本体20の感震体31が引き出し体3の移動方向に沿って揺動して、この感震体31が常体姿勢から所定の傾斜角度に傾斜した状態に姿勢変化する。
【0050】
このとき、この感震体31の引き出し体3の移動方向に沿った姿勢変化によって、この感震体31の作用面33がラッチ体41の傾斜面49に当接して、この傾斜面49を押圧する。
【0051】
この結果、この感震体31の作用面33によるラッチ体41の傾斜面49の押圧によって、この感震体31が引き出し体3の移動方向に沿って倒れようとする力がラッチ体41の傾斜面49にて引き出し体3の移動方向に直交する方向である、このラッチ体41の係合面42を突出させようとする力に変換される。
【0052】
すなわち、感震体31の作用面33によるラッチ体41の傾斜面49の押圧によって、ケース体21の係合突部27とラッチ体41の被係合突部45との間のラッチ体41の自重によって作用する力による、このラッチ体41をケース体21の収容凹部22内に収容させようとする力に抗して、このラッチ体41の係合面42がケース体21の収容凹部22内から外側に向けて突出する。
【0053】
したがって、このケース体21の収容凹部22内から突出したラッチ体41の係合面42が、ラッチ受け具51の係止縁部54に係合して係止される。
【0054】
この結果、この係止縁部54へのラッチ体41の係合面42による係合によって、キャビネット2内から引き出し体3が引き出せない状態となるので、震動によるキャビネット2からの引き出し体3の飛び出しなどが防止される。
【0055】
この状態で、地震などによる振動が納まると、感震体31の自重によって、この感震体31が、いわゆる起き上がりこぼしのように起き上がる。
【0056】
すると、感震体31の作用面33によるラッチ体41の傾斜面49の押圧が解除され、ラッチ体41の自重にて作用する力によって、このラッチ体41がケース体21の収容凹部22内に収容される。
【0057】
この結果、キャビネット2から引き出し体3を引き出す際に、ラッチ受け具51の係止縁部54が耐震ラッチ本体20のラッチ体41の係合面42に係合しなくなるので、このキャビネット2から引き出し体3を引き出したり押し入れたりすることができる。
【0058】
上述したように、上記第1の実施の形態によれば、キャビネット2内に引き出し体3を収容させた状態で、このキャビネット2の側板部5の内側面と引き出し体3の側板12の外側面との間のインナーレール18の上下に形成される隙間Aを利用して、この隙間Aに、震動感知時にラッチ体41が突出する耐震ラッチ本体20や、この耐震ラッチ本体20から震動感知時に突出したラッチ体41が係合するラッチ受け具51のそれぞれを取り付けた。
【0059】
この結果、特殊な引き出し体3を有する引出装置9に限定されることなく、一般的に使用されている引出装置9を加工したりすることなく、この引出装置9のキャビネット2に耐震ラッチ本体20を取り付けることができるとともに、この引出装置9の引き出し体3にラッチ受け具51を取り付けることができる。また、キャビネット2と引き出し体3との間に所定の隙間Aが形成されている既存の引出装置9であれば、この引出装置9のキャビネット2に耐震ラッチ本体20を後付けで取り付けることができるとともに、この引出装置9の引き出し体3にラッチ受け具51を後付けで取り付けることができるから、容易に耐震機能を施した引出装置9に変更できる。
【0060】
さらに、図6および図7に示す第2の実施の形態のように、この耐震ラッチ本体20を、震動感知時にラッチ体41によるケース体21の収容凹部22からの突出が固定される構成とすることもできる。そして、この耐震ラッチ本体20のケース体21の収容凹部22の下側面には、この収容凹部22の下側面より上方に向けて突出した載置台部61が設けられている。この載置台部61は、収容凹部22の下側面の開口側である前端寄りの位置に設けられており、この収容凹部22の奥行方向の略全体に亘って設けられている。
【0061】
また、この載置台部61の上側面には、収容凹部22の長手方向に沿った載置台部61の幅方向の中央部に向けてV字状に傾斜した傾斜面部62が形成されている。この傾斜面部62は、載置台部61の幅方向の中央部が最も低くなるように側面視V字状に形成されている。さらに、この傾斜面部62は、収容凹部22の下側面の幅方向に沿った載置台部61の奥行き方向に沿った略全体に亘って設けられている。
【0062】
さらに、ケース体21の長手方向に沿った一端側である後端側に、図示しない軸止孔が設けられている。
【0063】
一方、ケース体21の収容凹部22内の載置台部61上に、感震体31が回転可能に収容されて載置されている。この感震体31は、円柱状に形成されている。そして、この感震体31は、この感震体31の外周面を収容凹部22の載置台部61の傾斜面部62上に載置させて、この収容凹部22内に回転可能に収容されている。すなわち、この感震体31は、非震動感知時に自重にて載置台部61の傾斜面部62の中央部の基準位置に載置され、震動感知時に自重に抗して載置台部61の傾斜面部62へとケース体21の長手方向に沿って回転する。
【0064】
さらに、ケース体21の収容凹部22に、ラッチ体41が回動可能に取り付けられている。そして、このラッチ体41の基端側が収容凹部22の後端側に回転可能に嵌合されて、この収容凹部22に取り付けられている。また、このラッチ体41は、ケース体21の収容凹部22内に回転可能に収容されている感震体31に対して、この感震体31が回転する方向に直交する位置、すなわちケース体21の厚さ方向に沿った位置に並設されている。
【0065】
そして、このラッチ体41は係止腕部64を有しており、この係止腕部64の長手方向の一端部である先端部の外側に位置する外側面に、断面凹状の係止切欠部65が形成されている。
【0066】
ここで、この係止切欠部65の先端側の内側面には、係止腕部64の外側から内側へと向かう厚さ方向に略沿った垂直面である係止面66が形成されている。
【0067】
また、この係止腕部64の先端側に位置する内側面には、非振動感知時に傾斜面部62の中央部に位置する感震体31が嵌合される嵌合凹部72が設けられ、この嵌合凹部72の両側には係合部としての一対の係合突部71が設けられている。これら係合突部71は、震動感知時に傾斜面部62の中央部から回転移動した感震体31に係合して、ラッチ体41の係止切欠部65の係止面66をケース体21の収容凹部22の開口縁よりも外側に突出させた状態に固定する。
【0068】
さらに、係止腕部64の長手方向における他端である基端部には回転支持部73が一体的に設けられている。そして、この回転支持部73には軸挿通孔43が設けられており、この軸挿通孔43は、図示しないピン体により係止腕部64の先端側を水平方向、すなわちこの係止腕部64の厚さ方向に向けて回動可能にする。このとき、この係止腕部64は、この係止腕部64の回転軸方向と感震体31の回転方向とが直交するように取り付けられている。
【0069】
また、ケース体21とラッチ体41との間には、このラッチ体41の先端側の係止切欠部65の係止面66をケース体21の収容凹部22の外側へと突出させる上述したグラビティヒンジやコイルスプリングなどの付勢機構46が設けられている。よって、ラッチ体41は、付勢機構46による付勢にて、このラッチ体41の係止切欠部65の係止面66を収容凹部22より外側に常に突出させる。
【0070】
この結果、付勢機構46による付勢によってラッチ体41の係止切欠部65の係止面66が収容凹部22より外側に突出している状態が、震動感知時による感震体31のラッチ体41のいずれか一方の係合突部71への係合によって固定されるので、この状態で引き出し体3を引き出そうとしても、この引き出し体3に取り付けたラッチ受け具51の係止縁部54へのラッチ体41の係止面42の係合によって、この引き出し体3の引き出しが邪魔されて、この引き出し体3が震動感知時に飛び出すことが防止される。
【0071】
よって、付勢機構46による付勢にて、このラッチ体41の係止切欠部65をケース体21の収容凹部22の開口縁より外側に突出させる方向に向けて、このラッチ体41の基端部を付勢する構成の耐震ラッチ本体20であっても、この耐震ラッチ本体20をキャビネット2の側板部5と引き出し体3の側板12との間のインナーレール18の上下に形成される隙間Aに取り付けできるので、上記第1の実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0072】
さらに、図8および図9に示す第3の実施の形態のように、ラッチ受け具51を引き出し体3の前板14の裏面に取り付けることもできる。このラッチ受け具51は、取付基部としての矩形平板状の取付片部75を備え、この取付片部75の幅方向の一端縁が被係止部材52の前端縁に一体的に連結されている。さらに、この取付片部75は、この取付片部75の幅方向と被係止部材52の長手方向とが直交する状態で、この被係止部材52に取り付けられている。
【0073】
そして、この取付片部75は、引き出し体3の前板14の裏面の幅方向の一側縁寄りの位置であるとともに、この前板14の裏面の高さ方向の上端寄りの位置に取り付けられている。すなわち、ラッチ受け具51は、このラッチ受け具51の被係止部材52が、引き出し体3の側板12の上端縁より上側に位置するように取り付けられている。さらに、この引き出し体3の側板12は、矩形平板状の底板11の両側縁に、凸弧状に湾曲させた板状体をそれぞれ取り付けることによって構成されている。そして、これら側板は、引き出し体3の前板14の高さ寸法の略2分の1程度の高さ寸法を有しており、これら側板12の下端縁を前板14の下端縁に揃えた状態で、これら側板12の前端縁が前板14の裏面に接続されている。さらに、これら側板12それぞれの下端部には、凹状の取付凹部76が設けられており、これら取付凹部76にアウトレール17が取り付けられている。
【0074】
この結果、引き出し体3の前板14の裏面にラッチ受け具51の取付片部75を取り付ける構成としたことにより、引き出し体3の側板12の高さ寸法が小さい場合や、この引き出し体3の側板12自体が存在しない場合、この引き出し体3の側板12を加工できない場合などの、この引き出し体3の側板12にラッチ受け具51を取り付けることができない場合であっても、既存の引出装置9の引き出し体3にラッチ受け具51を取り付けることができるので、引出装置9の地震時での引き出し体3の飛び出しを防止できるから、上記第1の実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0075】
また、図10に示す第4の実施の形態のように、ラッチ受け具51を分解可能にして、震動感知時に引出装置9のキャビネット2からの引き出し体3の飛び出しが何らかの要因により固定された状態から、この引き出し体3を引き出せるようにすることもできる。このラッチ受け具51は、引き出し体3の前板14の裏面に取り付けて固定される取付部材としての取付基体である固定プレート81を備えている。
【0076】
そして、この固定プレート81の長手方向の一端部である先端部には、この固定プレート81に対してラッチ体41の突出方向に沿って折り曲げられて形成された細長略矩形平板状の取付片部75が一体的に設けられている。この取付片部75は、固定プレート81に対してラッチ体41の突出方向に沿って突出しており、引き出し体3の前板14の裏面に当接された状態で、この前板14の裏面にねじ止めされて固定される。
【0077】
さらに、固定プレート81の取付片部75より基端側には、一対の係止片部83が設けられている。また、これら一対の係止片部83それぞれの先端部の前端側には、側面視凹状の係止凹部84が設けられている。さらに、固定プレート81の長手方向の他端部である基端部には、側面視凹状の切欠凹部85が設けられている。また、この固定プレート81の係止片部83が設けられていない側の裏面には、この固定プレート81の厚さ方向のよれや曲がりなどを防止する補強部材としての補強プレート86が取り付けられている。
【0078】
この補強プレート86は、長手方向の一端部である前端部が直角に屈曲されており、この屈曲させた前端部を引き出し体3の前板14の裏面に当接させて、この補強プレート86を固定プレート81の裏面に加締められて取り付けられている。すなわち、この補強プレート86の前端部の屈曲させた部分は、この補強プレート86に対してラッチ体41の突出方向に向けて折り曲げられて形成されている。
【0079】
一方、固定プレート81の表面側には、震動感知時に耐震ラッチ1にて係止される着脱部材としての係合部材である着脱プレート87が着脱可能に取り付けられている。この着脱プレート87の長手方向の先端部には、固定プレート81の基端側から着脱プレート87を一対の係止片部83間に挿入した際に、この固定プレート81の係止凹部84に着脱可能に係止される着脱操作部88が設けられている。また、着脱プレート87の着脱操作部88より基端側には、この着脱操作部88を固定プレート81の係止凹部84に係止した際に、この固定プレート81の一対の係止片部83の基端側に嵌合されて係止される係止凸部89が設けられている。
【0080】
さらに、この着脱プレート87の表面側の長手方向の他端部である基端部には、係止縁部54が一体的に設けられている。また、この着脱プレート87の裏面には、固定プレート81が嵌合されて、この固定プレート81を位置決めする位置決め凹部91が設けられている。この位置決め凹部91の基端部には、この位置決め凹部91に固定プレート81を嵌合させた際に、この固定プレート81の切欠凹部85が嵌合される着脱係止部92が設けられている。この着脱係止部92は、固定プレート81の切欠凹部85による嵌合によって、この固定プレート81を厚さ方向に位置決め固定する。
【0081】
この結果、震動感知時のキャビネット2の開口部8からの引き出し体3の飛び出しが、耐震ラッチ本体20のラッチ体41によるラッチ受け具51の係止縁部54への係合によって防止された状態で震動が停止した後に、何らかの要因により耐震ラッチ本体20のラッチ体41によるラッチ受け具51の係止縁部54への係合が固定されて、キャビネット2の開口部8から引き出し体3を引き出すことができない場合であっても、ラッチ受け具51の着脱プレート87の着脱操作部88を押して、この着脱プレート87による固定プレート81の係合を解除させることによって、キャビネット2の開口部8から引き出し体3を引き出すことができる。
【0082】
さらに、図11および図12に示す第5の実施の形態のように、引き出し体3の底板11の下面にラッチ受け具51の取付片部75をねじ止めして固定させることもできる。このラッチ受け具51は、被係止部材52の幅方向の下端縁に取付片部75が取り付けられている。この取付片部75は、被係止部材52の幅方向に対して直角に折り曲げられて形成されている。そして、この取付片部75は、引き出し体3の底板11の下面にねじ止めされて固定されている。したがって、ラッチ受け具51の被係止部材52は、引き出し体3の一方の側板12の外側面に対向して取り付けられている。
【0083】
また、引き出し体3は、矩形平板状の底板11の両側縁および後端縁のそれぞれに上端が外側に湾曲した金属製の側板12および背板13がそれぞれ取り付けられて構成されている。さらに、この引き出し体3の両側板12の上端縁の湾曲した部分が加工されてアウトレール17とされている。そして、この引き出し体3は、この引き出し体3の側板12に一体的に設けられているアウトレール17のそれぞれをキャビネット2内のインナーレール18に摺動可能に係合させて、このキャビネット2内に引き出し可能に収容されている。
【0084】
さらに、耐震ラッチ本体20は、キャビネット2の側板部5の内側面上であるとともに、この側板部5に取り付けられているインナーレール18より下方に向けて離間した位置に取り付けられている。すなわち、この耐震ラッチ本体20は、キャビネット2内に引き出し体3を収容させた状態で、この引き出し体3に取り付けられているラッチ受け具51の被係止部材52に対峙する位置に取り付けられている。
【0085】
この結果、ラッチ受け具51が、引き出し体3の底板11の下面に取り付けることができる取付片部75を有するので、側板12にラッチ受け具51を取り付けることができない既存の引き出し体3であっても、このラッチ受け具51の取付片部75を引き出し体3の底板11の下面に取り付けることによって、この引き出し体3にラッチ受け具51を取り付けることができる。この場合、引き出し体3の側板12の上端部が加工されてアウトレール17が形成されているので、このアウトレール17にラッチ受け具51を取り付けるための加工ができない場合に、特に有益である。
【0086】
さらに、図13および図14に示す第6の実施の形態のように、キャビネット2の側板部5の内側面に凹状の埋設凹部94を設けて、この埋設凹部94に耐震ラッチ本体20を嵌合させて埋め込んで取り付けることもできる。この埋設凹部94は、キャビネット2の側板部5の内側面のインナーレール18より下方に離間した位置に設けられている。さらに、ラッチ受け具51は、このラッチ受け具51の被係止部材52の長手方向の両端縁が、取付片部75が設けられている側の反対側に向けて直角に屈曲されて係止縁部54とされている。この係止縁部54は、耐震ラッチ本体20のラッチ体41の突出方向に対向する方向に向けて突出しており、被係止部材52の上下方向に沿って延設されている。
【0087】
すなわち、このラッチ受け具51は、震動感知時に耐震ラッチ本体20のラッチ体41の係止面42がラッチ受け具51の基端側の係止縁部54に係合して、キャビネット2の開口部8からの引き出し体3の飛び出しを防止させる。この結果、キャビネット2の側板部5の内側面に埋設凹部94を設け、この埋設凹部94に耐震ラッチ本体20を嵌合させて埋め込んでも、キャビネット2の開口部8からの引き出し体3の飛び出しを防止できるので、上記第5の実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0088】
さらに、図15および図16に示す第7の実施の形態のように、引き出し体3の長手方向である前後方向の後端部の角部にラッチ受け具51を取り付けることもできる。この場合、キャビネット2の開口部8内には、引き出し体3の底板11が摺動可能に載置される矩形平板状の設置面96が設けられている。この設置面96は、キャビネット2の底板部4および天板部6のそれぞれに対して平行に取り付けられている。そして、この設置面96の幅方向の中央部には、この設置面96の長手方向に沿ってインナーレール18が取り付けられている。さらに、この設置面96から上方に離間させた側板部5の内側面には、震動感知時にラッチ体41の係止面42がケース体21の収容凹部22から突出する耐震ラッチ本体20が取り付けられている。この耐震ラッチ本体20は、キャビネット2の側板部5の内側面の後端寄りに取り付けられている。
【0089】
一方、引き出し体3は、例えば炊飯釜や電子レンジなどが設置される矩形平板状の底板のみで形成されたプレート状の引き出し板である。そして、この引き出し体3の裏面の幅方向の中央部に、この引き出し体3の裏面の長手方向に沿ってアウトレール17が取り付けられている。さらに、この引き出し体3の耐震ラッチ本体20に対峙する側の一側縁と、この引き出し体3の後端縁との角部にラッチ受け具51が取り付けられている。
【0090】
そして、このラッチ受け具51は、引き出し体3の裏面にねじ止めされて固定される略三角形平板状の取付片部75を有している。さらに、この取付片部75の直交する両側縁には、引き出し体3の一側縁に沿って当接されて取り付けられる第1の支持片部97と、引き出し体3の後端縁に沿って当接されて取り付けられる第2の支持片部98とがそれぞれ取り付けられている。これら第1の支持片部97と第2の支持片部98とは、引き出し体3の角部に位置する部分で接合されており、これら第1の支持片部97と第2の支持片部98との接合部分に、軸方向が上下方向に沿った矩形柱状の係止縁部54が取り付けられている。したがって、この係止縁部54は、キャビネット2内に引き出し体3を収容させた状態で、このキャビネット2に取り付けた耐震ラッチ本体20に対峙する位置に設けられている。
【0091】
この結果、ラッチ受け具51を引き出し体3の後端部の角部に取り付けたことにより、側板12や前板14が存在しない既存の引き出し体3などであっても、この引き出し体3にラッチ受け具51を後付けで取り付けることができるから、容易に耐震機能を施した引出装置9に変更できる。さらに、ラッチ受け具51を引き出し体3の後端部に取り付けたことにより、このラッチ受け具51を目立ち難くできる。
【0092】
さらに、図17および図18に示す第8の実施の形態のように、プレート状の引き出し体3の後端部に取り付けたラッチ受け具51に係合する耐震ラッチ本体20を、キャビネット2の側板部5の内側面に設けた埋設凹部94に嵌合させて埋め込んで取り付けることもできる。
【0093】
一方、キャビネット2の両側板部5の内側面のそれぞれにインナーレール18が取り付けられており、引き出し体3の下面の幅方向の両側縁のそれぞれにアウトレール17が取り付けられている。これらアウトレール17は、引き出し体3の幅方向の両側縁より下方に取り付けられている。よって、ラッチ受け具51が引き出し体3の後端部の角部に取り付けられているので、上記第7の実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0094】
なお、上記各実施の形態では、キャビネット2の一方の側板部5にのみ耐震ラッチ本体20を取り付けたが、このキャビネット2の両側の側板部5のそれぞれに耐震ラッチ本体20を取り付けるとともに、これら耐震ラッチ本体20が係合するラッチ受け具51を引き出し体3にそれぞれ取り付けることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本発明の第1の実施の形態の引出装置を示す分解斜視図である。
【図2】同上引出装置の一部を示す説明断面図である。
【図3】同上引出装置のラッチ本体およびラッチ受けを示す説明斜視図である。
【図4】同上引出装置の非振動感知時の状態を示す説明平面図である。
【図5】同上引出装置の振動感知時の状態を示す説明平面図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態の引出装置の非振動感知時の状態を示す説明平面図である。
【図7】同上引出装置の振動感知時の状態を示す説明平面図である。
【図8】本発明の第3の実施の形態の引出装置を示す分解斜視図である。
【図9】同上引出装置の一部を示す説明断面図である。
【図10】本発明の第4の実施の形態の引出装置のラッチ受けを示す分解斜視図である。
【図11】本発明の第5の実施の形態の引出装置を示す分解斜視図である。
【図12】同上引出装置の一部を示す説明断面図である。
【図13】本発明の第6の実施の形態の引出装置を示す分解斜視図である。
【図14】同上引出装置の一部を示す説明断面図である。
【図15】本発明の第7の実施の形態の引出装置を示す一部を切り欠いた説明斜視図である。
【図16】同上引出装置の一部を示す説明断面図である。
【図17】本発明の第8の実施の形態の引出装置を示す一部を切り欠いた説明斜視図である。
【図18】同上引出装置の一部を示す説明断面図である。
【符号の説明】
【0096】
2 キャビネット
3 引き出し体
9 引出装置
11 底板
12 側板
14 前板
17 案内側レールとしてのアウトレール
18 固定側レールとしてのインナーレール
20 ラッチ本体としての耐震ラッチ本体
41 ラッチとしてのラッチ体
51 ラッチ受けとしてのラッチ受け具
54 係合部としての係止縁部
75 取付基部としての取付片部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定側レールを有するキャビネットと、
このキャビネットに挿入した状態で前記固定側レールに沿って案内される案内側レールを有し前記キャビネットに引き出し可能に挿入される引き出し体と、
前記キャビネットの内側面に取り付けられ振動感知時に前記キャビネットの内側方向に突出あるいはこの突出した状態が固定されるラッチを有するラッチ本体と、
前記引き出し体に取り付けられ前記ラッチ本体の振動感知時に前記ラッチが係合して前記引き出し体の移動を停止させるラッチ受けとを具備し、
前記ラッチ本体は、前記固定側レールから上下方向のいずれかの方向に向けて離間した位置に取り付けられている
ことを特徴とする引出装置。
【請求項2】
引き出し体は、互いに対向する一対の側板を有し、
ラッチ受けは、案内側レールから上下方向のいずれかの方向に向けて離間した位置であるとともに、前記キャビネットに前記引き出し体を挿入させた状態でラッチ本体に対向する前記側板の外側面に取り付けられている
ことを特徴とする請求項1記載の引出装置。
【請求項3】
引き出し体は、キャビネットを閉塞する前板を有し、
ラッチ受けは、前記前板の裏面に取り付けられている
ことを特徴とする請求項1記載の引出装置。
【請求項4】
ラッチ受けは、引き出し体の後端部に取り付けられている
ことを特徴とする請求項1または2記載の引出装置。
【請求項5】
引き出し体は、この引き出し体の底面を形成する底板を有し、
ラッチ受けは、前記引き出し体の底板下面に取り付けられる取付基部と、ラッチに係合する係合部とを有する
ことを特徴とする請求項1記載の引出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2007−113314(P2007−113314A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−307235(P2005−307235)
【出願日】平成17年10月21日(2005.10.21)
【出願人】(000137959)株式会社ムラコシ精工 (92)
【Fターム(参考)】