説明

引戸用指詰防止装置

【課題】引戸や障子(以下引戸)を閉鎖する際、枠体との間に指、手、頭等を挟みこまないよう所定間隙をあけた状態で引戸の移動を停止させるようにした引戸用指詰防止装置を提供する。
【解決手段】枠体1側に、係合部5を有するストップ部材6を設ける。引戸2側には、回動部材7を設ける。この回動部材は、ストップ部材6側に突出する衝突部15とホルダー26に沿って延びる作用アーム部20を有する。回動部材7は衝突部15がストップ部材6の係合部5に係合する方向に付勢され、引戸2を閉鎖するとき係合して回動部材7とストップ部材6がロックされ、引戸2の戸先側と枠体1間に間隙が形成される。引戸を閉める力を弱めると、回動部材7は衝突部15が係合部5から離れる方向に回動しロック状態は解除され、引戸2を閉鎖することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、障子や引戸を開閉する際に枠体との間に指を挟み込まないようにした引戸用指詰防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
引き違い障子、片引き障子、引き違い引戸、片引き引戸(以下単に引戸という)は、近年大型化、複層ガラス化により重量が大幅に増加した一方で、性能向上により開閉操作力は軽くなってきている。そのため、閉鎖時に指、手、特に小さな子供の場合には首、頭等を引戸と戸枠の間に挟み込んで大きな事故に繋がる危険性があり、そのような事故を防ぐための指詰防止装置が求められていた。そこで、引戸が戸枠に近づいたとき一旦引戸の移動を停止させるようにした指詰防止装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1に記載されている指詰防止装置は、引戸の移動速度が所定速度以下のとき、磁石の反発力により戸閉成阻止ユニットが退避して引戸が閉まるようにし、引戸が該ユニットの退避速度を上回る速度で閉められるときは、戸閉成ユニットを引戸に当てて指詰まりを防止しようとするものである。その他、磁石を利用した種々の指詰防止装置が提案されているが、いずれも引戸の速度が遅いときには指詰防止装置が作動せず、一定の速度を超えて引戸が閉められるときに指詰防止装置が作動して、引戸の移動を停止させるよう構成されている。したがって、従来の装置では、磁石の反発力と引戸の移動速度を微妙に調整しなければならないので、現場に設置する際の調整がむずかしく、長期にわたって使用中に狂いを生じるおそれもあり、好ましいものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−82157号公報(請求項1、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の解決課題は、上記のように引戸の移動速度の大小によらず、確実に指詰め防止間隙を存して引戸の移動を停止させ、その後自動的に停止状態を解除して引戸を完全に閉鎖できるようにした引戸用指詰防止装置を提供することである。
なお、指詰防止装置は引戸を閉鎖する場合だけでなく、開放するときにも枠体との間で指等を挟み込むおそれのある場所で使用することができ、また、本発明において、「戸先」とは、引戸を移動する際の先端側をいい、「戸尻」とは引戸を移動する際の後端側をいう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、係合部を有するストップ部材と、一端に該ストップ部材方向に突出する衝突部を有し他端に横方向に延びる作用アーム部を有し上記衝突部がストップ部材側に突出するよう回動方向に付勢された回動部材を具備する本体を有し、該ストップ部材と本体のうちのいずれか一方の部材を枠体側に設け、他方の部材を引戸側に設け、引戸を閉鎖方向若しくは開放方向に移動して上記回動部材の衝突部がストップ部材の係合部に衝突したときこの係合状態をロックして引戸の移動を停止させ、上記引戸を移動する力を緩めたとき上記衝突部が係合部から外れる方向に回動部材が回動してロック状態を解除し引戸を閉鎖若しくは開放できるようにした引戸用指詰防止装置が提供され、上記課題が解決される。
【0007】
さらに本発明によれば、上記引戸用指詰防止装置において、上記回動部材は、引戸を閉鎖方向若しくは開放方向に移動して上記回動部材の衝突部とストップ部材の係合部が係合したとき相対的に引戸の戸尻方向若しくは戸先方向に移動するよう引戸の開閉方向に移動可能に設けられるとともに引戸の戸先方向若しくは戸尻方向に付勢され、該回動部材が相対的に引戸の戸尻方向若しくは戸先方向に移動した状態から引戸を閉鎖方向若しくは開放方向に移動させるとき、回動部材の衝突部とストップ部材の係合部の係合が外れる方向に回動部材が回動するよう上記回動部材の作用アーム部と本体のホルダーには上記回動部材を回動方向に付勢する上記付勢力より大きな反発力を生じさせる磁石が設けられ、上記衝突部とストップ部材の係合部の係合が外れて引戸を閉鎖方向若しくは開放方向に移動したとき上記回動部材を戸先方向若しくは戸尻方向に付勢する上記付勢力で回動部材を相対的に引戸の戸先方向若しくは戸尻方向に移動すると共に回動方向に付勢する上記付勢力で回動部材を回動して衝突部がストップ部材側に突出した状態に復帰するようにした引戸用指詰防止装置が提供され、上記課題が解決される。
【0008】
また、本発明によれば、上記引戸用指詰防止装置において、上記ストップ部材若しくは本体側に衝撃緩和装置が設けられている上記引戸用指詰防止装置が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明は上記のように構成され、係合部を有するストップ部材と、一端に該ストップ部材方向に突出する衝突部を有し他端に横方向に延びる作用アーム部を有し上記衝突部がストップ部材側に突出するよう回動方向に付勢された回動部材を具備する本体を有し、該ストップ部材と本体のうちのいずれか一方の部材を枠体側に設け、他方の部材を引戸側に設け、引戸を閉鎖方向若しくは開放方向に移動して上記回動部材の衝突部がストップ部材の係合部に衝突したときこの係合状態をロックして引戸の移動を停止させ、上記引戸を移動する力を緩めたとき上記衝突部が係合部から外れる方向に回動部材が回動してロック状態を解除し引戸を閉鎖若しくは開放できるようにしたから、引戸を閉鎖方向に移動して閉鎖する際や開放方向に移動して開放する際、引戸の移動速度の大小によらず、ストップ部材の係合部に回動部材の衝突部が衝突した位置でストップ部材と回動部材がロックされて引戸の移動が停止し、引戸の戸先と枠体間に所定の空間を形成することができ、確実に指、手、頭等を挟み込まないようにすることができる。そして、引戸を移動する力を緩めるとロック状態が解除され回動部材の衝突部がストップ部材から外れて引戸を閉鎖若しくは開放することができるから、使用上、従来の引戸と同じように開閉でき、便利である。
【0010】
また、上記ストップ部材若しくは本体に衝撃緩和装置を設けると、引戸が停止する際の衝撃が緩和され、引戸が跳ね返るおそれがなく、開閉し易い。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】引戸(障子)の説明図。
【図2】本発明の一実施例を示す正面図。
【図3】引戸が閉鎖位置に近づいた状態の説明図。
【図4】衝突部が係合部に衝突した状態の説明図。
【図5】回動部材が移動した状態の説明図。
【図6】回動部材が回動を始めた状態の説明図。
【図7】回動部材がさらに回動して衝突部が係合部から外れた状態の説明図。
【図8】引戸がさらに閉鎖方向に移動した状態の説明図。
【図9】引戸が移動し衝突部がストップ部材から外れるときの説明図。
【図10】引戸が閉鎖状態に至ったときの説明図。
【図11】閉鎖状態から引戸を開き始めてストップ部材に衝突部が当った状態の説明図。
【図12】回動部材が回動を始めた状態の説明図。
【図13】回動部材がさらに回動した状態の説明図。
【図14】回動部材の衝突部が係合部に接する状態に回動した状態の説明図。
【図15】引戸が開放位置に向けて移動する際の説明図。
【図16】他の実施例を示す説明図。
【図17】図16に示す実施例において引戸が移動した状態の説明図。
【図18】ストップ部材を引戸側に設けた一実施例を示す説明図。
【図19】係合部が衝突部に衝突した状態の説明図。
【図20】回動部材が移動した状態の説明図。
【図21】回動部材が回動を始めた状態の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
指詰防止装置は、種々の場所で使用することができるが、図1に示す実施例は、戸枠や窓枠等の枠体1と、この枠体1内で開閉可能に組み込まれた引戸(障子)2間に設けられ、以下引戸を閉鎖する際に、枠体の竪枠3との間に指等を挟み込まない空間(間隙)4を形成した位置で引戸の移動を一時的に停止させ、その後に完全に閉鎖できるようにした実施例につき説明する。
【0013】
図2を参照し、本発明の指詰防止装置は、係合部5を有するストップ部材6と、回動部材7を有する本体8を具備し、これらの部材6、8のうち一方の部材を枠体1に取り付け、他方の部材を引戸2に取り付けてある。図2に示す実施例では、枠体1の上枠9にストップ部材6を取り付け、このストップ部材6に対向する引戸2の上框10に本体8を取り付けてあるが、後記するように枠体1に本体8を取り付け、引戸2にストップ部材6を取り付けることもできる。ストップ部材6は、ブラケット11を介して若しくは直接上記枠体1の上枠9から下方に突出するように固定され、扁平な略直方体形状に形成されている。該ストップ部材6の下面には、図2において引戸の閉鎖方向に向かって水平でもよいが、緩やかに下方に傾斜する案内傾斜面12と、この案内傾斜面12に続いて下方に大きく傾斜する上記係合部5が設けられ、該係合部5の下端に続いて引戸2の上縁に沿って延びるよう水平面13が形成され、該水平面13の端部は角部14を介して上方に延びている。この係合部5には、緩やかな隆起部を形成したり、凹部を設けて回動部材7の後記する衝突部15が、より確実に係合するようにしてもよい。
【0014】
上記本体8は、上記引戸2にねじ16で取り付けられるケース17と、このケース17を覆う蓋体18で箱状に構成され、上記ストップ部材6の係合部5に係合可能するよう斜面19を介して突出する衝突部15と横方向に延びる作用アーム部20を有する上記回動部材7が回動可能に設けられている。該回動部材7は回動軸21の外周に回転自在に遊嵌され、該回動軸21は上記ケース17と蓋体18に形成した長孔22に挿入されて引戸2の開閉方向に往復動可能に遊嵌されると共に引戸の閉鎖方向(戸先側)に向けて横方向に付勢されている。なお、長孔22はケース若しくは蓋体側のいずれか一方に設けることもでき、蓋体を省略することもできる。図2に示す実施例では、ケース17内のばね軸23に捩りコイルばね24の環状部を遊嵌し、該ばね24の一端をケースに形成したブラケットやスリット等の支承部25に当接させ、他端を上記回動軸21の側面に当接させることにより該回動軸21を引戸の閉鎖方向(戸先側)に付勢しているが、引張ばね等を用いて付勢するようにしてもよい。なお、上記長孔22には、潤滑性を有する適宜のプラスチック材料で形成した摺動ガイド部材(図示略)を嵌着したり、上記回動軸に適宜の軸受(図示略)を設けて長孔内を転動若しくはスムーズに左右動できるようにすることもできる。また、回動軸21と回動部材7を一体的に構成してもよい。
【0015】
また、上記回動部材7は上記衝突部15が引戸(装置本体)の上端からストップ部材6方向に突出するよう回動方向にも付勢されている。図2に示す実施例では、上記回動軸21を中心として反時計方向に回転するよう作用アーム部20側の重量を衝突部15側の重量より重く形成してあるが、適宜のばね等の付勢手段を設けて付勢するようにしてもよい(図示略)。また、図2に示すように上記作用アーム部20は衝突部15がストップ部材6に当接していない状態のとき、本体8に設けたホルダー26の上面に着座している。この際、振動、衝撃等で回動部材7が勝手に回動して衝突部15が引戸(装置本体)内に後退しないようこの状態を確保するため、上記作用アーム部20とホルダー26には、磁性により互いに引き合う磁石(極性の異なる磁石)や吸着板を設けることが好ましい。図2においては、作用アーム部20に磁石27を設け、ホルダー26に異極の磁石28を設け、これらの磁石はそれぞれ取付孔に挿入固定してあるが、ホルダー26側の磁石28の代わりに上面には吸着板を設けてもよい。このホルダー26は、両側に設けたピン若しくはねじ29をケース等に形成した案内溝30に挿入し、本体の下方から調整ねじ31をねじ込み、この調整ねじ31を調整することにより図2において上下方向に移動して作用アーム部20との間隔を調整して磁力を調整できるようにしてある。なお、ホルダー26を用いずに適宜の部材により磁石28や吸着板をケースに保持させるようにしてもよい。
【0016】
上記長孔22の長さは、図2に示すように、引戸2が開放状態にあるとき、回動部材7が回動方向に作用する付勢力により作用アーム部20がホルダー26に着座すると共に上記ばね24により戸先方向に作用する付勢力により回動軸21が閉鎖側(戸先側)の孔端32に当接し、後記するように、衝突部15がストップ部材6の係合部5に係合したとき上記ばね24に抗して引戸2の開放方向(戸尻側)に所定量移動し、開放側(戸尻側)の孔端33に当接する長さに形成してある。そして、このように引戸の開放側(戸尻側)に移動した位置で、上記作用アーム部20に設けた上記磁石27に対向するホルダー26には、該磁石27に近接することにより上記回動方向に回動部材7を付勢する上記付勢力よりも大きな反発力を回動部材7に作用させるよう磁石(同極の磁石)34が設けられている。これにより、回動部材7は上記衝突部15がストップ部材6の係合部5から離れる方向(図2において時計方向)に回動し、ストップ部材6との係合が解除される。
【0017】
上記実施例による引戸を閉鎖する際の作用を説明する。図3は、上記図2の状態で手動若しくは適宜の自動閉鎖装置(図示略)により引戸2に矢印35方向に向かって移動する力、すなわち閉鎖力を作用させて引戸2を閉鎖方向に移動し、ストップ部材6に近づいた状態を示している。そして、図4に示すように、衝突部15がストップ部材6の係合部5に衝突すると、図5に示すように、回動部材7の回動軸21は、ばね24による戸先方向の付勢作用に抗して上記閉鎖力により相対的に引戸2の開放方向(戸尻側)に長孔22内を移動し、回動軸21が戸尻側の孔端33に当った位置で止まる(実際には、回動部材7は移動が拘束されているので、停止しており、本体8のホルダー26側が戸先側に移動している)。なお、この際、上記のようにホルダー26に、上記作用アーム部20側の上記磁石27と引き合う異極の磁石28や吸着板を設けておくと、磁石の作用として吸着方向に引き剥がすには大きな力が必要であるので、引張方向には動きにくいが、せん断方向(横方向)には小さな力で動かすことができるので、作用アーム部20がホルダー26の上面に沿った状態で容易に回動部材7を移動させることができる。したがって、衝突部15が係合部5に当ったときの衝撃で回動部材7の作用アーム部20がホルダー26の吸着板や磁石28から離れる方向に飛び跳ねるようなおそれがなく、図4に示す状態から図5に示す状態に確実に滑らかに移行させることができ、移行中は、回動部材7に設けた磁石27とホルダー26に設けた同極の磁石34による同極面での最大の反発力を受ける直前まで吸着板や磁石28に吸着されながら移動している。そして、引戸2を閉鎖方向に作用する閉鎖力と衝突部15を突出方向に付勢するよう回動部材に付与した回動方向の付勢力により、上記衝突部15が係合部5に押し付けられ、上記回動部材7は衝突部15と係合部5が係合した状態でロックされ、引戸2の移動は停止する。このようにして、ストップ部材6を適宜位置に設けることにより引戸2の戸先と枠体1間には、指詰防止の空間(間隙)4が確保される。
【0018】
上記引戸2を閉鎖しようとする力を緩めるか、引戸から手を離し、若しくは自動閉鎖装置併用の場合には引戸2を僅か開放方向に戻して引戸を閉鎖しようとする閉鎖力を一旦少なくし、若しくは消失させると、上記衝突部15を係合部5に押し付けている力が消失若しくは少なくなるので、ロック状態が解除される。そして、引戸2が停止した状態で、上記磁石27と磁石34がほぼ同位置で対向し最大の斥力を生じるように設けてあるから、上記回動部材7は回動方向に付勢している付勢力に打ち勝って上記磁石27、34による反発力により衝突部15がストップ部材6の係合部5から離れる方向(図において時計方向)に自動的に回動し始める(図6)。この回動中も上記回動部材7には、ばね24により戸先方向に付勢力が働いているから、図7に示すように、回動部材7は回動軸21を中心に回動しつつ係合部5から外れた衝突部15がストップ部材6の水平面13を滑りながら、閉鎖方向に移動し、回動軸21が戸先側の孔端32に当接する位置で止まり(図8)、衝突部15とストップ部材6の係合が外れた瞬間から引戸2を閉鎖することができる。上記ホルダー26側からの反発力は、上記磁石34から作用アーム部20の磁石27が離れるので次第に弱くなり、かつ回動部材7に作用する回動方向の付勢力により、図9に示すように、作用アーム部20はホルダー26に近づきつつ引戸の移動により衝突部15がストップ部材6を超え、図10に示すように引戸を閉鎖位置まで移動させることができる。なお、上記のようにホルダー26に作用アーム部20側の磁石27と異極の磁石28や吸着板を設けておけば、回動部材7を図10に示す状態に確実に保持しておくことができ、閉鎖中に引戸が振動、衝撃を受けても回動部材がホルダーから簡単に外れることがない。
【0019】
上記のようにして引戸2を完全に閉鎖した図10の状態から開放する工程を説明すると、図11に示すように、引戸2を開放位置に向けて矢印36方向に移動すると、回動部材7の衝突部15の後面に形成した斜面19がストップ部材6の角部14に当接し徐々に引き剥がすことにより、軽い力で上記磁石27、28による吸着作用を引き剥がしつつ回動部材7は回動方向に付勢する付勢力に抗して時計方向に回動し、衝突部15が水平面13を滑りながら引戸とともに開放方向に移動する(図12)。そして、水平面13を外れると、図13、図14に示すように回動方向に作用する付勢力により反時計方向に回動して衝突部15は係合部5に対向する位置に移動するが、引戸2には開放方向(戸尻側)に力が作用しているので、回動部材7がロックされるおそれはなく、その後は上記図3と同じ状態に復帰する(図15)。
【0020】
引戸2が停止する際に、閉じる速度が著しく速い場合には、回動部材7の衝突部15がストップ部材6の係合部5に当接した際、引戸2が跳ね返ったり、ストップ部材6や回動部材7が破壊するおそれがあるので、衝撃が作用しないよう適宜の元位置に復帰する衝撃緩和装置や制動装置を設けることが好ましい。図16には、ストップ部材6に作用する衝撃力を緩和する緩衝ばね37と、該ばね37によるストップ部材6の復帰動を遅延させるよう制動装置を設けた一実施例が示されている。制動装置(衝撃緩和装置)としては、油圧、空圧等を利用した各種の装置を用いることができるが図16には、粘性流体の抵抗を用いたリニアダンパ38を用いた実施例が示されている。図16において、ストップ部材6は、引戸2の開閉方向に延びるガイドケース39内に摺動可能に設けられており、該ケース39の一端側にはリニアダンパ38が固定され、該リニアダンパ38とストップ部材6の間には緩衝ばね(圧縮コイルばね)37が設けられている。該リニアダンパ38に挿通したスパイラルロッド40の一端は、上記緩衝ばね37の中心を通過してストップ部材6方向に延び、先端にはパイプ41が固着され、該パイプ41をストップ部材6に設けた一方向クラッチ42に挿入し、スパイラルロッド40がストップ部材6と共に軸方向に移動すると共に一方向にのみ回転できるようストップ部材に連結している。
【0021】
リニアダンパ38内には公知のように上記スパイラルロッド40の周面に形成したスパイラル状の溝や突条にねじ係合する制動板43と油等の制動流体が収納されている。該制動板43は上記スパイラルロッド40が回転せずに軸方向に移動するときはスパイラル部の作用で回転するが、この回転は制動抵抗を受けているのでゆっくりとした回転であり、それによりスパイラルロッド40の移動を制動することができる。スパイラルロッド40が自由に回転できるときには、スパイラルロッド40が軸方向に移動しても、単にスパイラルロッドが回転しながら軸方向に移動するだけで、上記制動板43は回転しない。上記スパイラルロッドと制動板に形成するスパイラルの方向と一方向クラッチの関係は、図16においてスパイラルロッドが引戸の閉鎖方向(戸先側)に移動するときには、一方向クラッチが空転しスパイラルロッドが自由に回転して制動板が回転せず、一方、引戸の開放方向(戸尻側)にスパイラルロッドが移動するときには一方向クラッチがスパイラルロッドの回転を拘束し該スパイラルロッドにねじ係合する制動板が回転してスパイルルロッドの軸方向の移動を制動するよう構成してある。
【0022】
上記の構成により、図16に示すように、引戸が閉鎖方向に移動して回動部材7の衝突部15がストップ部材6の係合部5に衝突すると、回動部材7はばね24に抗して相対的に戸尻方向に移動し、長孔22の戸尻側端部33に回動軸21が当った位置で移動が停止して上述のようにロックされるが、この間に図17に示すように、上記ストップ部材6は衝撃を吸収しつつ緩衝ばね37を圧縮しながら引戸の閉鎖方向(戸先側)に移動するから、衝撃が緩和され、引戸を閉鎖する力と緩衝ばね37の力が釣り合った場所で停止する。このとき、上記スパイラルロッド40は、ストップ部材6と一緒に戸先方向に移動するが、一方向クラッチ42により空転可能状態に支持されているので、自由に回転するからリニアダンパ38内の制動板43を回転させることはなく、自身が回転しながら抵抗なく上記リニアダンパ38内に滑り込む。
【0023】
そして、引戸の移動が停止した状態で引戸に作用する閉鎖力が弱められたり、消失したりすると、上述したように回動部材7は閉鎖方向(戸先側)に移動しながら回動してストップ部材6とのロック状態が解除されるが、ストップ部材6が上記緩衝ばね37の復元力により戸尻側に直ちに強く押された状態であると、ロックの解除に支障を生じるおそれがある。そこで、図17に示す状態から図16の状態に戻るとき、上記一方向クラッチ42によりスパイラルロッド40の回転を拘束し、リニアダンパ38による制動力をスパイラルロッド40に作用させ、リニアダンパ38とスパイラルロッド40間で発生する抵抗によりスパイラルロッド40がゆっくりと移動するようにしてある。これにより、上記ストップ部材6は、緩衝ばね37によりを徐々に戸尻方向に移動するから、上記ストップ部材6が図16に示す状態に戻るまでの間に回動部材7とストップ部材6のロック状態を確実に解除することができる。なお、上記実施例においては、リニアダンパ38の構造に対応してストップ部材6とリニアダンパ38をスパイラルロッド40で連結してあるが、制動装置(ダンパ)の構成や形式等によりリニアダンパではなく通常の空気或いは油圧シリンダーを連結部材として用いることもできる。
【0024】
上記実施例においては、ストップ部材を枠体側に設け、回動部材を引戸側に設けたが、ストップ部材6を引戸2側に設け、回動部材7を枠1側に設けることもできる。図18から図21はこのような実施例を示し、この実施例における構成は基本的に上記実施例と同様であるので、同様の符号を付してあるが、回動部材7は、作用アーム部20側に比べて衝突部15側の重量を重くすることにより、回動軸21を中心として反時計方向に回転して該衝突部15がストップ部材6側に回動するように付勢してある点が相違している。また、回動部材7の回動軸21は、ばね24により引戸2の開放側(戸尻側)に付勢され、長孔22の戸尻側の孔端33に当って停止している。回動部材7の作用アーム部20には、磁石27が設けられ、ホルダー26には該磁石27と異極の磁石28と同極の磁石34が設けられている。そして、図18に示す状態から引戸2を矢印44方向に移動して閉鎖しようとすると、ストップ部材6の係合部5と回動部材7の衝突部15が衝突し(図19)、ストップ部材6に押されて回動部材7は引戸の閉鎖方向(戸先)に移動し、回動軸21が長孔22の戸先側の孔端32に当った位置で停止し、回動部材7とストップ部材6はロックされる(図20)。引戸2の閉鎖力が弱められ若しくは消失すると、該回動部材7は、上記ばね24による開放方向(戸尻方向)の付勢力で引戸2の開放方向(戸尻側)に戻りつつ磁石27、34による反発力で時計方向に回動し(図21)、ロックが解除されるから、その後、閉鎖方向に引戸を閉鎖することができる。以下、上述の実施例をほぼ同様に開閉することができる。
【0025】
上記実施例は引戸を閉じるとき指等を挟み込まないよう引戸の戸先と枠体間に空間・間隙を形成した状態でストップ部材と回動部材をロックして一旦引戸の移動を停止し、その後、ロックを自動的に解除して完全に閉鎖できるようにしたが、上述したように、所望により引戸を開放する際に枠体との間に間隙を形成した状態で引戸の移動を一旦停止させるようにすることもできる。このような構成は、上記実施例に基づき当業者には容易に変更できる事項であるので詳細な説明は省略する。
【符号の説明】
【0026】
1 枠体
2 引戸
5 係合部
6 ストップ部材
7 回動部材
8 本体
15 衝突部
20 作用アーム部
21 回動軸
22 長孔
24 捩りコイルばね
26 ホルダー
27、28、34 磁石
37 緩衝ばね
38 リニアダンパ
40 スパイラルロッド
42 一方向クラッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
係合部を有するストップ部材と、一端に該ストップ部材方向に突出する衝突部を有し他端に横方向に延びる作用アーム部を有し上記衝突部がストップ部材側に突出するよう回動方向に付勢された回動部材を具備する本体を有し、該ストップ部材と本体のうちのいずれか一方の部材を枠体側に設け、他方の部材を引戸側に設け、引戸を閉鎖方向若しくは開放方向に移動して上記回動部材の衝突部がストップ部材の係合部に衝突したときこの係合状態をロックして引戸の移動を停止させ、上記引戸を移動する力を緩めたとき上記衝突部が係合部から外れる方向に回動部材が回動してロック状態を解除し引戸を閉鎖若しくは開放できるようにした引戸用指詰防止装置。
【請求項2】
上記回動部材は、引戸を閉鎖方向若しくは開放方向に移動して上記回動部材の衝突部とストップ部材の係合部が係合したとき相対的に引戸の戸尻方向若しくは戸先方向に移動するよう引戸の開閉方向に移動可能に設けられるとともに、引戸の戸先方向若しくは戸尻方向に付勢され、該回動部材が相対的に引戸の戸尻方向若しくは戸先方向に移動して回動部材の衝突部とストップ部材の係合部がロック状態となり、引戸を閉鎖若しくは開放する力を緩めるか消失するとき、回動部材の衝突部とストップ部材の係合部の係合が外れる方向に回動部材が回動するよう上記回動部材の作用アーム部と本体のホルダーには上記回動部材を回動方向に付勢する上記付勢力より大きな反発力を生じさせる磁石が設けられ、上記衝突部とストップ部材の係合部の係合が外れて引戸を閉鎖方向若しくは開放方向に移動したとき上記回動部材を戸先方向若しくは戸尻方向に付勢する上記付勢力で回動部材を相対的に引戸の戸先方向若しくは戸尻方向に移動すると共に回動方向に付勢する上記付勢力で回動部材を回動して衝突部がストップ部材側に突出した状態に復帰するようにした請求項1に記載の引戸用指詰防止装置。
【請求項3】
上記ホルダーには、上記回動部材の衝突部がストップ部材方向に突出しているとき磁力により上記作用アーム部に設けた磁石と吸引する磁石や吸着板が設けられている請求項2に記載の引戸用指詰防止装置。
【請求項4】
上記ストップ部材若しくは本体側に衝撃緩和装置が設けられている上記請求項1から3のいずれかに記載の引戸用指詰防止装置。
【請求項5】
上記衝撃緩和装置は上記ストップ部材の後方に位置する緩衝ばねと、該ストップ部材の移動を制動する制動装置を含み、緩衝ばねによるストップ部材の復帰を遅延させよう上記制動装置とストップ部材を連結部材で連絡した請求項1から4のいずれかに記載の引戸用指詰防止装置。
【請求項6】
上記請求項1〜5のいずれかの指詰防止装置を備えた引戸。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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