説明

引戸装置及び風除室

【課題】特別な施工工事を行わずに、レイアウト変更が容易な引戸装置を提供する。
【解決手段】開口を画定する三方枠と、開口に出入口30を形成するFIXパネル23,24と、FIXパネル23,24に沿って往復移動自在であって出入口30を開閉する引戸パネル27,28とを備える。FIXパネル23,24は、三方枠に回動可能に支持されて、出入口30の形成位置を変えられるように可動に構成されている。両引き分けモード、両サイド片引きモード両左勝手のモード、両右勝手のモードという4つのパターンを選択可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、引戸装置及び風除室に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の引戸装置は、下記特許文献1にも開示されているように、建物の壁面開口に取り付けられた三方枠にFIXパネルが固定され、このFIXパネルによって形成された出入口を開閉する引戸パネルが設けられている。FIXパネルは固定化されているため、例えば引戸パネルが一対に構成される場合、出入口が中央部(引き分けモード)あるいは左右両側(右勝手、左勝手)に固定されることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−291755号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の引戸装置では、FIXパネルが固定化されているため、出入口位置を変更することはできない。仮に施設管理者等の要望により、出入口位置を変更する必要が生じた場合には再度施工工事を行う必要がある。このため、レイアウト変更等に要望に容易に対処できないという問題がある。
【0005】
そこで、本発明の目的は、特別な施工工事を行わずに、レイアウト変更が容易な引戸装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の目的を達成するため、本発明は、開口を画定する三方枠と、前記開口に出入口を形成するFIXパネルと、前記FIXパネルに沿って往復移動自在であって前記出入口を開閉する引戸パネルとを備え、前記FIXパネルは、前記出入口の位置を変えられるように可動に構成されるとともに回動可能に支持され、前記FIXパネル及び前記引戸パネルの一対が、2つ平行に並んで配置され、両引戸パネルは独立して可動な構成で、前記開口の中央、左右両側、中央右寄りと左端、中央左寄りと右端の4パターンの出入口を形成可能であり、少なくとも一方のFIXパネルには、前記引戸パネルの戸先が当接可能な当接部が設けられ、前記FIXパネルが回動されることによって前記出入口を塞ぎ、かつ回動される前に前記FIXパネルが配置されていた位置が新たな出入口となる引戸装置である。
【0007】
本発明では、FIXパネルが可動に構成されて、出入口の形成位置が可変となっているので、引戸装置の施工後において、特別な施工工事を行わずにレイアウト変更を容易に行うことができる。例えば、引戸装置を施工した後に、その建物の店舗が変わるなど、施設管理者等がレイアウト変更を要望することがあり得るが、その場合であっても、特別な施工工事を行わずにレイアウト変更を容易に行うことができる。
【0008】
また、前記FIXパネルが回動可能に支持されているため、FIXパネルを回動可能に軸支するだけでいい。このため、FIXパネルを可動な構成にするために必要な構成要素の簡素化を図ることができる。すなわち、FIXパネルを引戸式にスライドさせる場合には、FIXパネル用のレールが必要となるが、FIXパネルを回動可能な構成では、それに比べ部品点数を減らすことができる。
【0009】
また、前記FIXパネル及び前記引戸パネルの一対が2つ平行に並んで配置され、両引戸パネルは独立して可動な構成で、前記開口の中央、左右両側、中央右寄りと左端、中央左寄りと右端の4パターンの出入口を形成可能であるため、開口の中央に出入口が形成される両引き分けモード、開口の左右両側にそれぞれ出入口が形成される両サイド片引きモード、開口の中央右寄りと左端に出入口が形成される両左勝手のモード、開口の中央左寄りと右端に出入口が形成される両右勝手のモードという4つのパターンを選択することができる。
【0010】
また、少なくとも一方のFIXパネルには、前記引戸パネルの戸先が当接可能な当接部が設けられているため、引戸パネルの閉じ位置を規定する柱を開口に設ける必要がなくなる。
【0011】
また、前記FIXパネル及び前記引戸パネルが、それぞれ一対に設けられる場合において、一方のFIXパネルの方立側及び三方枠の縦枠側にそれぞれ投光器が設けられ、他方のFIXパネルの方立側及び三方枠の縦枠側にそれぞれ受光器が設けられ、前記三方枠のうち、前記一方のFIXパネル側の縦枠に受光器が設けられ、前記三方枠のうち、前記他方のFIXパネル側の縦枠に投光器が設けられているのが好ましい。
【0012】
また、方立側に設けられた受光器若しくは投光器の配置は、方立内のみならずその周囲のいずれに設けられてもよい。
【0013】
この態様では、何れのFIXパネルを回動するかに応じて出入口のパターンが異なるが、どの場合であっても出入口を挟んで両側に投光器と受光器が向かい合うことになる。しかも、投受光器が3セットで済むので、投光器と受光器の個数を低減することができ、FIXパネルへの配線を簡素化することができる。つまり、各FIXパネルがそれぞれ左位置と右位置を取り得るため、合計4箇所の出入口を形成することが可能であるにも拘らず、投受光器を4セット設ける必要がなくなる。このため、投光器と受光器の個数を低減することができる。
【0014】
本発明は、開口を画定する三方枠が互いに間隔をおいて配置されると共に、前記各開口にFIXパネル及び引戸パネルがそれぞれ配設される風除室であって、前記FIXパネル及び前記引戸パネルが、前記引戸装置のFIXパネル及び引戸パネルによって構成されている風除室である。
【0015】
本発明では、出入口が通行者の通行方向に対向するようにFIXパネルを位置させることができる一方、出入口が通行者の通行方向に対向しないようにFIXパネルの位置を変更することも可能である。このため、屋外の天候等に応じて、通行者の導線を優先する出入口配置としたり、風の吹き抜けを抑制する出入口配置としたりすることができる。すなわち、施設管理者等の要望に容易に応じることができる。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明によれば、特別な施工工事を行わずに、レイアウト変更を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態1に係る引戸装置の正面図である。
【図2】前記引戸装置を上から見た断面図である。
【図3】第2FIXパネルを第2状態としたときの図2相当図である。
【図4】前記引戸装置を出入口の幅方向に見た断面図である。
【図5】(a)両引き分けモードの閉じ状態を示し、(b)両引き分けモードの開き状態を示す図である。
【図6】(a)両サイド片引きモードの閉じ状態を示し、(b)両サイド片引きモードの開き状態を示す図である。
【図7】(a)両左勝手モードの閉じ状態を示し、(b)両左勝手モードの開き状態を示す図である。
【図8】(a)両右勝手モードの閉じ状態を示し、(b)両右勝手モードの開き状態を示す図である。
【図9】(a)〜(f)本発明の実施形態2に係る風除室の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0019】
(実施形態1)
図1に示すように、本実施形態に係る引戸装置10は、建物に形成された開口に取り付けられる三方枠12を備えている。三方枠12は、一対の縦枠13,14と、両縦枠13,14の上端部間に架設される無目16と、を有し、床面との間に矩形状の開口を画定している。そして、三方枠12には下枠18が接続されている。下枠18は、両縦枠13,14の下端部間を接続している。図1は、建物の内側から引戸装置10を見たときの状態を示す図である。なお、下枠18は省略可能である。
【0020】
引戸装置10は、FIXパネル23,24と引戸パネル27,28とを備えている。FIXパネル23,24は、三方枠12によって画定された開口に出入口30を形成し、引戸パネル27,28は、この出入口30を開閉するように往復移動自在である。引戸パネルを往復移動させるための駆動機構32は、例えばベルト駆動方式のものであり、無目16に収納されている(図4参照)。駆動機構32として、第1引戸パネル27を駆動する第1駆動機構と、第2引戸パネル28を駆動する第2駆動機構とが設けられている。
【0021】
本実施形態では、FIXパネル23,24及び引戸パネル27,28はそれぞれ一対となっている。具体的に、FIXパネルとしては、第1FIXパネル23と第2FIXパネル24とが設けられており、第1FIXパネル23は、開口の中央部よりも図1における左側に位置し、第2FIXパネル24は、開口の中央部よりも図1における右側に位置している。また、引戸パネルとしては、第1引戸パネル27と第2引戸パネル28とが設けられている。
【0022】
第1引戸パネル27は、開口の中央部よりも図1における左側に位置し、第1FIXパネル23の屋内側に沿って移動可能である(図2参照)。一方、第2引戸パネル28は、開口の中央部よりも図1における右側に位置し、第2FIXパネル24の屋内側に沿って移動可能である。すなわち、第1引戸パネル27は、開口のうち左半分の領域を往復移動可能であり、第2引戸パネル28は、開口のうち右半分の領域を往復移動可能である。
【0023】
第1引戸パネル27及び第2引戸パネル28は、同じ構成のものであり、それぞれ、矩形状の枠体37,38に透明板39,40が嵌め込まれた構成である。枠体37の下框37a,38aには、それぞれ振れ止め42,42が設けられている。振れ止め42,42は、ドアウェイに沿うように下枠18に設けられたガイド溝44(図4参照)に沿うようになっている。
【0024】
また、三方枠12の下枠18には、鍵受け34が設けられている。この鍵受け34は、引戸パネル27,28のロックボルト(図示省略)を受入れ可能に構成されるものであり、ロックボルトに対応する位置に配設されている。
【0025】
図2にも示すように、第1FIXパネル23と第2FIXパネル24は、それぞれ、矩形状の枠体47,48に透明板49,50が嵌め込まれた構成であるが、左右対称の配置とされている。
【0026】
図1及び図2は、両引き分けモードのときの閉じ位置の状態を示している。具体的には、第1FIXパネル23が開口の左端に位置付けられるとともに、第2FIXパネル24が開口の右端に位置付けられ、両FIXパネル間に形成された出入口30を2つの引戸パネル27,28が閉鎖している状態を示している。すなわち、第1FIXパネル23は、第1引戸パネル27の移動領域のうち、縦枠13側(図1の左側)の半分の領域を塞ぐ外位置の状態にあり、第2FIXパネル24は、第2引戸パネル28の移動領域のうち、縦枠14側(図1の右側)の半分の領域を塞ぐ外位置の状態となっている。
【0027】
第1FIXパネル23及び第2FIXパネル24は、何れも、出入口30の形成位置を変えられるように可動に構成されている。図3は、図2の第1状態にある第2FIXパネル24を反転させることによって出入口30の位置を変えた第2状態を示している。すなわち、図3では、第2FIXパネル24は、第2引戸パネル28の移動領域のうち、開口の中央寄りの半分の領域を塞ぐ内位置の状態となっている。以下、FIXパネル23,24の可動構造について具体的に説明する。
【0028】
まず、第1FIXパネル23の可動構造について説明すると、図1に示すように、無目16及び下枠18には、第1FIXパネル23の縦框47aを回動可能に支持する軸支部52がそれぞれ設けられている。この軸支部52は、第1引戸パネル27の移動領域における中心位置、すなわち開口幅の左端から4分の1の地点に位置する第1FIXパネル23の縦框(方立側の縦框)47aを軸支している。言い換えると、第1FIXパネル23は、第1引戸パネル27が開閉する出入口30側の縦枠13を回動軸として三方枠12に回動可能に支持されている。そして、第1FIXパネル23を外側に向けて回動させることにより、第1FIXパネル23は、第1引戸パネル27の移動領域における中心位置を挟んで両側で固定される位置を取り得ることができ、出入口30の形成位置が変わる。このように、第1FIXパネル23を正転位置から反転位置に移動させた場合でも、第1引戸パネル27の移動方向に直交する方向における第1FIXパネル23の位置は、変わらない。このため、第1FIXパネル23の移動後であっても、第1引戸パネル27は第1FIXパネル23に沿ってスライドできる。
【0029】
第2FIXパネル24の可動構造も第1FIXパネル23の可動構造と同様である。すなわち、無目16及び下枠18に、第2FIXパネル24の縦框48aを回動可能に支持する軸支部54が設けられていて、この軸支部54は、第2引戸パネル28の移動領域における中心位置、すなわち開口幅の右端から4分の1の地点に位置する第2FIXパネル24の縦框(方立側の縦框)48aを軸支している。言い換えると、第2FIXパネル24は、出入口30側の縦枠13,14を回動軸として三方枠12に回動可能に支持されている。
【0030】
図2及び図3に示すように、第1FIXパネル23には、第2引戸パネル28が当接可能な当接部55が設けられている。この当接部55は、第1引戸パネル27が開閉する出入口30とは反対側の縦框47b、換言すると第1引戸パネル27の移動領域の端側に位置する縦框(戸尻側の縦框)47bに設けられている。そして、当接部55は、第1引戸パネル27の移動方向と直交する方向に延出しており、その延出長さは、引戸パネルのドアウェイ上に至る程度となっている。ただし、当接部55は、戸尻側の縦框47bが開口の中心側に位置する第2状態のときに、第2引戸パネル(相手側の引戸パネル)28のドアウェイに跨るように形成されており、図2に示す状態、すなわち戸尻側の縦框47bが開口の端側に位置する第1状態では、当接部55は、ドアウェイから離れる方向に第1FIXパネル23から延出される。
【0031】
一方、第2FIXパネル24には、第1引戸パネル27が当接可能な当接部56が設けられている。この当接部56は、第1FIXパネル23の当接部55と同様の構成であり、第2FIXパネル24における戸尻側の縦框48bに設けられている。
【0032】
図1に示すように、引戸装置10には、第1FIXパネル23及び第2FIXパネル24を施錠、解錠するロック手段が設けられている。ロック手段は、第1FIXパネル23を施錠するためのロック部57と、第2FIXパネル24を施錠するためのロック部58とを有する。ロック部57,58は、例えば、FIXパネル23,24の下框47c,48cから下方に突出することにより下枠18に係合する。下枠18には、FIXパネル23,24が第1状態でも第2状態でもロック可能(ロック部57,58を受入れ可能)なように各FIXパネル23,24に対して2個所の受け部(図示省略)が形成されている。
【0033】
第1FIXパネル23には、方立側の縦框47a及び戸尻側の縦框47bにそれぞれ投光器61,61が設けられている。一方、第2FIXパネル24には、方立側の縦框48a及び戸尻側の縦框48bにそれぞれ受光器62,62が設けられている。また、第1FIXパネル23側の縦枠13には、受光器63が配設されており、第2FIXパネル24側の縦枠14には、投光器64が配設されている。これらの投光器61,64及び受光器62,63は、引戸パネル27,28のドアウェイ上の人又は物を検知する補助センサを構成している。第1FIXパネル23及び第2FIXパネル24の何れもが第1状態にある場合には、第2FIXパネル24の方立側縦框48aの受光器62は、第1FIXパネル23の方立側縦框47aの投光器61から出射された光を検知可能である。第2FIXパネル24のみが第2状態であれば、第1FIXパネル23の方立側縦框47aの投光器61からの光を第2FIXパネル24の戸尻側縦框48bの受光器62で検知可能である。一方、第1FIXパネル23のみが第2状態であれば、第1FIXパネル23の戸尻側縦框47bの投光器61からの光を第2FIXパネル24の方立側縦框48aの受光器62で検知可能である。また、第1FIXパネル23側の縦枠13の受光器63は、第2状態にある第1FIXパネル23の方立側縦框47aの投光器61から出射された光を検知可能であり、第2FIXパネル24側の縦枠14の投光器64から出射された光は、第2状態にある第2FIXパネル24の方立側縦框48aの受光器62で検知可能である。
【0034】
ここで、引戸装置10が取り得る4つのモードについて説明する。4つのモードは、両引き分けモード、両サイド片引きモード、両左勝手のモード及び両右勝手のモードである。
【0035】
両引き分けモードは、図5(a)(b)に示すように、開口の中央に出入口30が形成されるモードであり、第1FIXパネル23及び第2FIXパネル24は、共に開口の端側に位置する第1状態にある。このとき、第1FIXパネル23の方立側の縦框47aに配置された投光器61から出射された光は、第2FIXパネル24の方立側の縦框48aに配置された受光器62で受光される。そして、第1引戸パネル27が右側に進出し、第2引戸パネル28が左側に進出した閉じ位置から互いに離れる方向に各引戸パネル27,28が開き位置まで移動することにより、開口の中央で出入口30が開放される。
【0036】
両サイド片引きモードは、図6(a)(b)に示すように、開口の左右両側にそれぞれ出入口30が形成されるモードであり、第1FIXパネル23及び第2FIXパネル24は、共に開口の中央側に位置する第2状態にある。このとき、第1FIXパネル23の方立側の縦框47aに配置された投光器61から出射された光は、第1FIXパネル23側の縦枠13の受光器63で受光される。つまり、第1引戸パネル27が開閉する出入口30を通過する通行人等を検知する。一方、第2FIXパネル24側の縦枠14の投光器64から出射された光は、第2FIXパネル24の受光器62で受光される。つまり、第2引戸パネル28が開閉する出入口30を通過する通行人等を検知する。そして、両引戸パネル27,28は、開口の左右両側に進出した閉じ位置から互いに近づく方向に後退することにより、開口の左右両側でそれぞれ出入口30が開放される。
【0037】
なお、FIXパネル23,24を回動する際には、FIXパネル23,24の方立側の縦框47a,48aが引戸パネル27,28と干渉することを避けるべく、引戸パネル27,28を移動させればよい。
【0038】
両左勝手のモードは、図7(a)(b)に示すように、開口の中央右寄りと左端に出入口30が形成されるモードあり、第1FIXパネル23が第2状態で、第2FIXパネル24が第1状態にある。このとき、第1FIXパネル23の方立側の縦框47aに配置された投光器61から出射された光が、第1FIXパネル23側の縦枠13の受光器63で受光され、第1引戸パネル27が開閉する出入口30を通過する通行人等を検知する。また、第1FIXパネル23の戸尻側の縦框47bに配置された投光器61から出射された光が、第2FIXパネル24の方立側の縦框48aに配置された受光器62で受光され、第2引戸パネル28が開閉する出入口30を通過する通行人等を検知する。そして、両引戸パネル27,28は、それぞれ左側に進出した閉じ位置から右向きに後退することにより、開口の中央右寄りと左端で出入口30が開放される。
【0039】
このモードにおいて、開き位置にある第2引戸パネル28が閉じ位置に向かって前進するときには、第2引戸パネル28は、相手方のFIXパネルである第1FIXパネル23の戸尻側の当接部55に当接して停止する。このため、第2引戸パネル28の閉じ位置が確実に定まる。また、施工時において第2引戸パネル28の閉じ位置を設定するのに、当接部55を用いることができる。
【0040】
両右勝手のモードは、図8(a)(b)に示すように、開口の中央左寄りと右端に出入口30が形成されるモードであり、第1FIXパネル23が第1状態で、第2FIXパネル24が第2状態にある。このとき、第1FIXパネル23の方立側の縦框47aに配置された投光器61から出射された光が、第2FIXパネル24の戸尻側の縦框48bに配置された受光器62で受光され、第1引戸パネル27が開閉する出入口30を通過する通行人等を検知する。また、第2FIXパネル24側の縦枠14の投光器64から出射された光が、第2FIXパネル24の方立側の縦框48aに配置された受光器62で受光され、第2引戸パネル28が開閉する出入口30を通過する通行人等を検知する。そして、両引戸パネル27,28は、それぞれ右側に進出した閉じ位置から左向きに後退することにより、開口の中央と右端で出入口30が開放される。
【0041】
このモードにおいて、開き位置にある第1引戸パネル27が閉じ位置に向かって前進するときには、第1引戸パネル27は、相手方のFIXパネルである第2FIXパネル24の戸尻側の当接部56に当接して停止する。このため、第1引戸パネル27の閉じ位置が確実に定まる。また、施工時において第1引戸パネル27の閉じ位置を設定するのに、当接部56を用いることができる。
【0042】
以上説明したように、本実施形態によれば、FIXパネル23,24が可動に構成されて、出入口30の形成位置が可変となっているので、引戸装置10の施工後において、特別な施工工事を行わずにレイアウト変更を容易に行うことができる。例えば、引戸装置10を施工した後に、その建物の店舗が変わるなど、施設管理者等がレイアウト変更を要望することがあり得るが、その場合であっても、特別な施工工事を行わずにレイアウト変更を容易に行うことができる。つまり、三方枠12に固定されたFIXパネルを取り外し、再び固定するといった面倒な工事が不要となる。
【0043】
しかも本実施形態では、FIXパネル23,24が回動することで出入口30の位置が変わるようになっているので、FIXパネル23,24の回動可能に軸支するだけでよい。このため、FIXパネル23,24を可動な構成にするために必要な構成要素の簡素化を図ることができる。すなわち、FIXパネル23,24を引戸式にスライドさせる場合には、FIXパネル用のレールが必要となるが、FIXパネル23,24を回動可能な構成では、それに比べ部品点数を減らすことができる。
【0044】
また本実施形態では、開口の中央に出入口30が形成される両引き分けモード、開口の左右両側に出入口30が形成される両サイド片引きモード、開口の中央右寄りと左端に出入口30が形成される両左勝手のモード、開口の中央左寄りと右端に出入口30が形成される両右勝手のモードという4つのパターンを選択することができる。このため、ユーザの多様な要望に応え易いものとなっている。
【0045】
しかも本実施形態では、FIXパネル23,24に引戸パネル27,28が当接可能な当接部55,56が設けられているので、引戸パネル27,28の閉じ位置を規定する柱を開口に設ける必要がなくなる。
【0046】
さらに本実施形態では、何れのFIXパネル23,24を回動するかに応じて出入口30のパターンが異なるが、どの場合であっても出入口30を挟んで両側に投光器61,64と受光器62,63が向かい合うことになる。しかも、投受光器が3セットで済むので、投光器61,64と受光器62,63の個数を低減することができ、FIXパネル23,24への配線を簡素化することができる。つまり、各FIXパネル23,24がそれぞれ左位置と右位置を取り得るため、合計4箇所の出入口30を形成することが可能であるにも拘らず、投受光器を4セット設ける必要がなくなる。このため、投光器61,64と受光器62,63の個数を低減することができる。
【0047】
なお、本発明は、前記実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変更、改良等が可能である。
【0048】
(実施形態2)
図9(a)〜(f)に示すように、第2実施形態は、開口を画定する三方枠12が互いに間隔をおいて配置されるとともに、各開口にそれぞれFIXパネル23,24と引戸パネル27,28が配設された風除室である。図9は、風除室を上から見たときの概略図である。
【0049】
両三方枠12の左右両端部間には、通行者が通行する方向に延びる一対の接続壁70が配設されていて、風除室は、三方枠12及び接続壁70によって区画された平面視矩形状に形成されている。各図において、例えば上側が屋内側であり、下側が屋外側であり、この風除室には、屋内側の引戸装置72と、屋外側の引戸装置74とが設けられている。
【0050】
各引戸装置72,74の構成は、実施形態1の引戸装置10と同様の構成である。そして、各引き戸装置の動作モードとして、それぞれ、両引き分けモード、両サイド片引きモード、両左勝手のモード及び両右勝手のモードという4つのモードが可能となっている。屋内側の引戸装置72と屋外側の引戸装置74とは、個別にモードの切り替えが可能となっているため、屋内側のFIXパネル23,24と屋外側のFIXパネル23,24とが対向する配置関係(図9(a)(f))、屋内側の両FIXパネル23,24と屋外側の両FIXパネル23,24とがそれぞれ位置ずれした配置関係(図9(d)(e))、屋内側の一方のFIXパネル23,24と屋外側の一方のFIXパネル23,24とが対向するとともに、屋内側の他方のFIXパネル23,24と屋外側の他方のFIXパネル23,24とが位置ずれした配置関係(図9(b)(c))を取り得る。換言すると、図9(a)(f)は、出入口30が通行者の通行方向に対向する配置となっており、図9(d)(e)は、出入口30が通行者の通行方向に対向しない配置であり、図9(b)(c)は、一方の出入口30が通行方向に対向する一方、他方の出入口30が通行方向に対向しない配置となっている。
【0051】
本実施形態では、出入口30が通行者の通行方向に対向するようにFIXパネル23,24を位置させることができる一方、出入口30が通行者の通行方向に対向しないようにFIXパネル23,24の位置を変更することも可能である。このため、屋外の天候等に応じて、通行者の導線を優先する出入口配置としたり、風の吹き抜けを抑制する出入口配置としたりすることができる。すなわち、施設管理者等の要望に容易に応じることができる。
【符号の説明】
【0052】
12 三方枠
13 縦枠
14 縦枠
16 無目
18 下枠
23 第1FIXパネル
24 第2FIXパネル
27 引戸パネル
28 引戸パネル
30 出入口
55 当接部
56 当接部
61 投光器
62 受光器
63 受光器
64 投光器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口を画定する三方枠と、前記開口の所定位置に出入口を形成するFIXパネルと、前記FIXパネルに沿って往復移動自在であって前記出入口を開閉する引戸パネルとを備え、
前記FIXパネルは、前記出入口を塞ぐとともに前記FIXパネルのあった位置が新たな出入口となるように可動に構成されている引戸装置。
【請求項2】
前記FIXパネルは、回動可能に支持されている請求項1に記載の引戸装置。
【請求項3】
前記FIXパネルには、前記引戸パネルの戸先が当接可能な当接部が設けられている請求項2記載の引戸装置。
【請求項4】
前記FIXパネル及び前記引戸パネルは、それぞれ一対に設けられ、
一方のFIXパネルの、方立側及び三方枠の縦枠側にはそれぞれ投光器が設けられ、
他方のFIXパネルの、方立側及び三方枠の縦枠側にはそれぞれ受光器が設けられ、
前記三方枠のうち、前記一方のFIXパネル側の縦枠に受光器が設けられ、
前記三方枠のうち、前記他方のFIXパネル側の縦枠に投光器が設けられている請求項2又は3に記載の引戸装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−29016(P2013−29016A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−220126(P2012−220126)
【出願日】平成24年10月2日(2012.10.2)
【分割の表示】特願2007−284008(P2007−284008)の分割
【原出願日】平成19年10月31日(2007.10.31)
【出願人】(503405689)ナブテスコ株式会社 (737)
【出願人】(000110653)ナブコシステム株式会社 (5)
【出願人】(592251466)ナブコドア株式会社 (4)
【出願人】(507360966)オリエント産業株式会社 (3)
【Fターム(参考)】